交通容量の確率的変動が道路ネットワークの移動時間に与える影響に関する研究
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(2) 土木学会論文集D Vol.66 No.4,431-441,2010.10. では,確率的交通容量の推計法を示す.第 3 章では,第. 率的交通容量( C )の分散( σ C2 )は,式(1)で与えられ. 2 章で推計される平均交通容量を前提とした,リンクパ. る.. フォーマンス関数のパラメータの推計法を示す.第 2 章. σ C2 = σ ε2 + 2 ⋅ σ ε , p + σ 2p .. に示す方法を適用することによって,道路・路面状態が. (1). ここで σ ε , p は,要因 ε と p に起因する共分散である.. 一定と想定しても問題が少ないと考えられる無積雪時, 積雪時および夏期における確率的交通容量を推計するこ. 形式的に確率的交通容量を C = C (ε , p ) と表現しよう.. とはできるが,道路・路面状態が一定とはならない冬期. C に 1 次のテーラー展開を施すと, C = a ⋅ ε + b ⋅ p + c. の確率的交通容量は,直接推計することができない.そ. (a, b, c: 係数)と近似表現できる.また, ε , p 自体の分. のため,第 4 章では,無積雪時および積雪時の交通容量. 散をそれぞれ σˆ ε2 , σˆ 2p ,さらに,それらの共分散を σˆ ε , p. から冬期の確率的交通容量を推計する方法を示す.第 5. と仮定すると,以下の関係式が成立する.. 章では,交通流観測データを用いて,夏期と冬期の確率. σ C2 = a 2 ⋅ σˆ ε2 + 2 ⋅ a ⋅ b ⋅ σˆ ε , p + b 2 ⋅ σˆ 2p. 的交通容量を推計する.さらに,筆者らが提案した交通 量配分モデルを適用し,確率的交通容量が道路ネットワ. = σ ε2 + 2 ⋅ σ ε , p + σ 2p. ーク上の移動時間に与える影響を定量化する.第 6 章で. したがって,C の関数形に関わらず,式(1)に示した関係. は,研究のまとめを行なう.. が成立することがわかる.したがって,確率的交通容量. 2.確率的交通容量の推定法. は,その平均をc とすると,式(2)に示す正規分布に従う ことを仮定する.. (. (1) 仮定・仮説. ). C ~ c, σ C2 .. 本研究では,自動車の追従方程式の一般化形と位置づ. (2). けられる GM モデルから導かれるマクロ交通流モデル. 本研究では,積雪寒冷地における夏期と冬期の確率的. を交通流観測データに適用し,確率的交通容量を推計す. 交通容量の推計を 1 つの目的としているが,積雪時の確. る.具体的には,GM モデルでは,ドライバーの追従行. 率的交通容量に関して以下に示す仮説を立てた.. 動は,いくつかのパラメータにより特徴付けられるが,. 積雪時において,ある路面状態の下で計測される. はじめに,交通流観測データにマクロ交通流モデルを当. 確率的交通容量は,無積雪時のものと比較した場. てはめることにより,これらのパラメータを推計する.. 合,平均は低下するが,分散は変化しない.. 次に,推計されたパラメータをマクロ交通流モデルに代. 積雪寒冷地では,積雪時には,平均移動時間が増加する. 入することにより,確率的交通容量の平均を推計する.. だけではなく,移動時間のばらつきも大きくなることが,. 一方,確率的交通容量の分散に関しては,以下に示す仮. 経験的に知られている.こうした現象は,交通容量の分. 定に基づき推計することにする.はじめに,交通容量の. 散は路面状態に関係なく一定であっても,平均交通容量. 変動(分散)に影響を与える要因を特定する必要がある. が低下することによって説明可能であり,上記の仮説は,. が,考えられる要因としては,以下に示す 3 つが想定さ. 冬期の交通状況に矛盾するものではない.もし,上記の. れる.. 仮説が成立する場合,あるリンクを対象として,無積雪. ・ 各ドライバーが異なる追従行動に関するパラメータ. 時あるいは積雪時の確率的交通容量の分散を一度推計す. を持つこと.. れば,異なる路面状態では,確率的交通容量の平均のみ. ・ 追従行動に影響を及ぼすが,追従方程式において表. を推計することによって,その状態での確率的交通容量. 現されていないパラメータがあること(以下では,. を同定することができる.さらに,第 4 章で示されるよ. 要因 ε と呼ぶことにし,それによる交通容量の変動. うに,冬期の気象状況,道路・路面管理の影響も考慮し. を σ ε によって表すことにする).. た確率的交通容量の推計が可能となり,分析の効率性・. 2. 汎用性を高めることが可能となる.この仮説の検証は,. ・ 追従方程式において表現されているパラメータ自体. 第 5 章に示す数値計算例の中で行うことにする.. が確率変数となっていること(以下では,要因 p と呼ぶことにし,それによる交通容量の変動を σ 2p. (2) 未知パラメータによる交通容量の変動. によって表すことにする).. GM モデルにいくつかの境界条件を与えることにより,. 本研究では,上記の変動要因のうち,最初の要因は考慮. 密度( k )と空間速度( v )(以下では単に速度とす. しないことにする.すなわち,ドライバーはすべて同一. な追従行動に関するパラメータを有するものと仮定する. る)の平均値の関係を表すマクロ交通流モデル( k − v 式)は,式(3)で与えられる. 以上の仮定から,道路ネットワーク上のあるリンクの確. 432.
(3) 土木学会論文集D Vol.66 No.4,431-441,2010.10. 1. 1. k l −1 1− m v(k ) = v f ⋅ 1 − j . k . 0 v cε = max(q ) = k j ⋅ v 0 ⋅ 1 − v ˆf . (3). ここで k j は,飽和密度であり,本研究では定数と仮定 であり,これらは,後に示すように非線形最小二乗法に より推計されるモデルパラメータである.いま,交通流. ( v i , k i , q i )と表現することにする.速度( v i )は, 要因 ε の影響により変動し,式(4)で与えられるものと仮 定する.. (. where ε i ~ 0, σ. i. ) (i = 1,..., n). (i ≠ j ) .すなわち, v. i. (10). 式(12)に示す正規分布に従うことになる.. v = v k +ε , 2. (9). ( k 0 )は,式(11)で与えられる. c k 0 = ε0 . (11) v その結果,確率的臨界速度は,式(7)に示した関係から,. 得られているものとし, i 番目のデータセットを. ( ). lˆ−1 . . また,確率的交通容量の平均においては,臨界密度. 観測データセットは n 個あり,速度,密度,交通流率が. i. 1− mˆ. ここで v 0 は,式(10)を満たす臨界速度である. ∂q = 0. ∂v v =v 0. する.また, v f は自由走行速度, l , m はパラメータ. i. . ( ) (( ) ) (. (4). ( )= 0 ~ (v (k ), σ ) か. and cov ε , ε i. は,確率変数 V. i. i. ). V k 0 ~ v k 0 , σˆ 2 = v 0 , σˆ 2 .. j. (12). 一方,交通量保存則と式(12)に示した関係から,要因 ε. 2. らのランダムサンプリングと考えることにする.ここで,. σ 2 は回帰による変動の分散であり,その推計値 ( σˆ 2 )は,式(5)に示す非線形最小二乗法を解いて得ら. による確率的交通容量( Cε )は,式(13)で表現するこ とができる.. ( ). Cε = k 0 ⋅ V k 0 .. れるパラメータの推計値( vˆ f , lˆ , mˆ )を用いて,式(6)で. (13). 以上から, Cε は,式(14)に示す正規分布に従うことに. 与えられる.. なる.. ∑ (v n. min. i. ). − v(k i ) , 2. (. ). ( ). Cε ~ cε , σ ε2 = cε , k 0 . (5). i =1. 2. ⋅ σˆ 2 . . (14). 式(14)に示した結果は,交通流率の分散は,密度の二乗 subject to. に比例することも意味している.これは,交通状況を. v f , l and m .. 踏まえた場合,実現象から乖離した仮定となっている. ∑ (v n. σˆ 2 =. i. (. − v k i ; vˆ f , lˆ, mˆ. )). 可能性がある.この原因は,式(7)に示したように,確. 2. 率的速度の分散は,その平均値に関係なく一定と仮定. i =1. .. n−3. (6). しているためである.これは,実際には,速度の平均 値が高い場合,その分散も大きくなる傾向があるにも. 以上から,確率的速度 V (k ) は,密度の関数として表現. 関わらず,式(4)に示した要因 ε による誤差項( ε i )に. され,式(7)に示す正規分布に従う.. (. 互いに独立で同一の正規分布を設定していることによ. ). V (k ) ~ v(k ), σˆ . 2. る.しかしながら,確率的交通容量の分散を推計する. (7). という目的に関しては,上述した仮定を設けたとして. 一方,交通量保存則( q = k ⋅ v )と式(3)に示した関係か. も,それほど大きな影響があるとは考えにくい.それ. ら,交通流率と速度の平均値の関係を表す q − v 式は,. は,分散が極端な値をとるのは, k − v 式において密度. 式(8)で与えられる.. v q (v ) = k j ⋅ v ⋅ 1 − v f . が定義域の端点に位置する場合であり,交通容量を考. . 1 1− m l −1. . .. えた場合,臨界密度( k 0 )はその中間付近に位置する 2 ため,式(14)で正規分布の分散を示す k 0 ⋅ σˆ 2 は,交. ( ). (8). 通流率の平均的な分散を表していると考えられるから である.. 平均交通量が式(8)によって与えられることを仮定する と,要因 ε による確率的交通容量の平均( cε )は,式. (3) 確率的パラメータによる交通容量の変動. (9)で与えられる.. 前節で推計されたマクロ交通流モデルのパラメータは, 確率変数の平均値であると捉えることができる.ここで は,パラメータの分布から,確率的パラメータによる交. 433.
(4) 土木学会論文集D Vol.66 No.4,431-441,2010.10. (s )2 = δ T (Z T Z ). 通容量の分散を推計することにする.はじめに,パラメ. −1. ータ値の分散共分散行列を推計することにする.そのた. δ.. (22). め,式(3)をパラメータ v f , l , m に関して偏微分したもの. ここで,式(21)の δq δv f は,式(8)に示した関係から,. を考えると,それらは,それぞれ式(15)-(17)で与えられ. 式(23)で与えられる.. る.. (. ∂v = 1 − ω l −1 ∂v f ∂v =− ∂l. ). 1 1− m ,. (. v f ⋅ ln (ω ) ⋅ 1 − ω l −1. ). m 1− m. ⋅ ω l −1. ,. 1− m. (. δq ∂q ∂q ∂v = + ⋅ δv f ∂v f ∂v ∂v f. (15). )(. l −1 ⋅ 1 − ω l −1 ∂v v f ⋅ ln 1 − ω = ∂m (1 − m )2. ). =. (16). f. ,i. ,. ∂q ∂v. (17). zˆm,1 zˆm, 2 . M zˆm, n . zˆl ,1 zˆl ,2 M zˆl , n. δq ∂q = δl ∂l (18). (24). ,. (25). v = v 0 ,v f = vˆ f ,l =lˆ, m = mˆ. δq ∂q = . δm ∂m v =v 0 ,v f =vˆ f ,l =lˆ,m = mˆ. (19)によって推計される 13).. V = σ l ,v f σ v ,m f. = 0. v =v 0 ,v f = vˆ f ,l =lˆ, m = mˆ. (26)で与えられる.. パラメータの分散共分散行列( V )は, Z を用いて式. σ v2f. (23). 同様に,式(21)の δq δl , δq δm は,それぞれ式(25),. , zˆl ,i , zˆm, i と表. し,これらを用いて式(18)に示す行列 Z を定義する.. zˆv f ,1 zˆv , 2 Z= f M zˆv , n f. , v =v ,v f = vˆ f ,l =lˆ, m = mˆ 0. since. 1 1− m. where ω = k k j . ま た , 式 (15)-(17) に お い て , k = k i. (i = 1,..., n ) としたものをそれぞれ, zˆv. ∂q ∂v f. v = v 0 ,v f =vˆ f ,l =lˆ,m = mˆ. (26). 以上の式で用いられる,式(8)をパラメータ v f , l , m に関. σ v f ,l σ v f ,m . して偏微分した項は,それぞれ式(27)-(29)で表される.. (. σ l2. σ l ,m = Z T Z. σ l ,m. σ m2. . ). −1. ⋅ σˆ 2 .. (. ∂q (1 − m ) ⋅ v 2 ⋅ µ −m ⋅ 1 − µ 1−m = ∂v f v f 2 ⋅ (l − 1). (19). ( ). ここで,上付きの T は,ベクトルの転置操作を表して. (. ). −l + 2 l −1. ⋅k. j. ). ∂q v ⋅ 1 − µ 1− m l −1 ⋅ ln 1 − µ 1−m ⋅ k j =− , ∂l (l − 1)2. いる.式(19)は,最小二乗法におけるモデル式が線形の 場合のみに成立すると考える読者もいるかもしれないが, 非線形の場合でも成立することに注意が必要である.非. (. 線形最小二乗法の解法には,未知パラメータに関して一 次近似したモデル式を想定し,それに線形最小二乗法の 解法を適用することを繰り返して解くものがある.非線. (. 1. ). ). ,. (27). (28). −l + 2. ∂q v ⋅ µ 1−m ⋅ 1 − µ 1−m l −1 ⋅ ln (µ ) ⋅ k j = , (l − 1) ∂m. (29). µ = v vf .. (30). where. 形最小二乗法を解いて最適パラメータが得られた時,そ のパラメータ値において一次近似されたモデル式と元の 非線形なモデル式の値は一致している.このことを考え. 以上から,要因 p による確率的交通容量は,その平均. ると,式(19)が非線形モデルの場合にも成立することが. を c p (= cε ) とすると,式(31)に示す正規分布に従う.. 直観的にわかる.さらに,パラメータが正規分布に従う. C p ~ c p , σ p2 = c p , (s )2 ⋅ σˆ 2 .. (. と仮定すると,要因 p による確率的交通容量( C p )の. ) (. ). (31). 分散は,式(20)によって推計される.. σ 2p = δ T Vδ = (s )2 ⋅ σˆ 2 ,. (4) 確率的交通容量の変動. (20). 以上では,要因 ε と p ,それぞれによる確率的交通 容量の分布の推計法を示した.ここでは,2 つの要因を. where. δq δ= δv f . δq δl. 同時に考えた確率的交通容量の分布の推計法を考えるこ. T. δq , δm . とにする.前節で示したように, cε = c p となるが,こ. (21). 434.
(5) 土木学会論文集D Vol.66 No.4,431-441,2010.10. (. ). れを c = cε = c p で表すことにする.さらに, Cε と C p の分散に共通した項 σˆ 2 が含まれることを考えると, (32). Cp = c + s ⋅ε,. (33). (. (34). (. (. )(. [. ) を想定し,それを線形変換した確率変数. (v ]= ∑ n. E ε a1 ⋅ ε a2. 式(32),(33)に示した関係は,正規分布に従う確率変数. X ~ 0, σ. ) ). ). ) [. ). (39). ]. where. ε ~ 0, σˆ 2 .. 2. (( ((. )]. = k a01 + s a1 ⋅ k a02 + s a2 ⋅ E ε a1 ⋅ ε a2 ,. where. ). )(. k a0 + s a ⋅ ε a + c a − c a ⋅ 1 1 1 1 1 = E k a0 + s a ⋅ ε a + c a − c a 2 2 2 2 2. Cε , C p は,それぞれ式(32),(33)で表現できる. Cε = c + k 0 ⋅ ε ,. ) [(. (. σ aC1 ,a2 = cov C a1 , C a2 = E C a1 − c a1 ⋅ C a1 − c a1. i =1. i a1. ( )) (. ( )). − v k ai 1 ⋅ v ai 2 − v k ai 2 n−3. .. (40). Y = a ⋅ X + b ( a, b: パ ラ メ ー タ ) を 考 え る と ,. (. ). 3.リンクパフォーマンス関数のパラメータの推計 法. Y ~ b, a 2 ⋅ σ 2 となることから導かれる.以上の関係 を用いると, Cε と C p の共分散( σ ε , p )は,式(35)から 求めることができる.. [. ]. σ ε , p = cov(Cε , C p ) = E (C ε −cε ) ⋅ (C p − c p ). [(. ). ]. = E k 0 ⋅ ε + c − c ⋅ (s ⋅ ε + c − c ). [ ]. 前章では,交通流観測データから交通容量の分布を推 計する方法を示した.ここでは,交通量配分モデルへの. (35). 適用を念頭に置き,交通量と移動時間の関係を記述する. = k 0 ⋅ s ⋅ E (ε )2 = k 0 ⋅ s ⋅ σˆ 2 .. リンクパフォーマンス関数のパラメータの推計法を考え. したがって,式(1)に示した確率的交通容量の分散. ることにする.本研究では,式(41)に示す BPR 関数をリ. ( σ C2 )は,式(36)で与えられる.. ンクパフォーマンス関数として適用する.. σ C2. = σ ε + 2 ⋅σ ε,p + σ 2. ( ). = k 0 . 2. (. 2 p. + 2 ⋅ k 0 ⋅ s + (s )2 ⋅ σˆ 2 . λ q t (q ) = t 0 ⋅ 1 + γ ⋅ . c . (36). ). ここで γ , λ は,パラメータであり,また t 0 は,リンク. 2. = k 0 + s ⋅ σˆ 2 .. の自由移動時間であり,リンクの延長が d である場合,. 以上から,式(2)に示した確率的交通容量は,式(37)に示. 式(42)で与えられる.. す正規分布に従うことになる.. (. ). (41). (. ). C ~ c, σ C2 = c, k 0 + s ⋅ σˆ 2 . 2. (37). t0 =. d . vˆ f. (42). 式(36)では, Cε と C p の共分散を考慮しているため,厳. 静的な交通量配分に適用される BPR 関数は,非渋滞領. 密には, C は正規分布に従う保証はないが,式(2)は,. 域の交通量と移動時間の関係を表現する.これを式(8). 今後の議論を容易にするために置いた仮定である.. に示した q − v 式の関係から考えていくことにする.. q − v 式を対象とした場合,非渋滞領域は,速度 v の範 囲が v 0 ≤ v ≤ vˆ f となり,この範囲の交通量との関係を 考えればよい(図-1 上).ここで,式(8)の q − v 式は速 度の関数 f によって表わされていると仮定すると, q = f (v ) と表現できる.したがって,ある交通量 ( q )が与えられた場合,非渋滞領域にある速度 vu (q ) は,式(43)で与えられる.. (5) リンク間の共分散 本研究で仮定する交通容量は,多変量正規分布によっ て表現されるため,以下では,リンク間の共分散を推計 する方法を考えてみる.道路ネットワーク上のリンクの 集合を A と表わすと,あるリンク a1 ∈ A の確率的交通 容量は,以上の結果を踏まえると,式(38)で表現するこ とができる.. C a1 =. (. k a01. ). + s a1 ⋅ ε a1 + c a1 .. vu (q ) = max f (38). ここで f. −1. −1. (q ).. (43). は, f の逆関数であり,二値関数となるが,. 式(43)はその最大値をとることを示している.式(43)を用 いると交通量と非渋滞領域の移動時間( tˆ(q ) )の関係. ここで,各変量に付された下付きの a1 は,その変量が リンク a1 に関するものであることを意味する.式(38)に. は,式(44)で与えられる.. 示した関係を用いると,2 本のリンク a1 , a 2 ∈ A の確率. tˆ(q ) =. 的交通容量の共分散は,式(39)で与えられる.. 435. d. vu (q ). .. (44).
(6) 土木学会論文集D Vol.66 No.4,431-441,2010.10. 4.冬期の確率的交通容量の推計法. 以上の関係を用いると,BPR 関数のパラメータ値は,た とえば,以下の最適化問題を解くことによって推計でき る(図-1 下).. 積雪寒冷地における冬期の確率的交通容量は,気象状 cˆ. (. 況と道路・路面管理作業の影響を受けて変動するため,. ). 2 min ∫ t (q ) − tˆ(q ) dq,. (45). ある一時点の交通流観測データを用いて推計される積雪. 0. 時の確率的交通容量は,冬期の確率的交通容量とみなす. with respect to γ and λ , subject to γ > 0 and λ > 1.0, where cˆ = ω ⋅ c (0 ≤ ω ≤ 1). (46). ことはできない.また,冬期間すべてをカバーするデー. こ こ で , 式 (46) の ω は , 図 -1 下 に お い て , ∂tˆ(q ) ∂q = ∞ となり,積分範囲を 0 ≤ q ≤ c とした. 考えられない.ここでは,2.(1)に示した仮説が成立す. 場合,当てはまりの良いパラメータ値が得られない可能. たとえば,除排雪作業直後の状態が考えられる)と,一. タを収集することは,時間・費用の観点から効率的とは る場合,積雪時の路面状態の一番いい状態(状態 b とし,. q =c. 性があるために導入した積分範囲の調整係数である.式. 番悪い状態(状態 w とし,たとえば,除排雪直前の状. (45)に示した問題は,図-1 下において, 0 ≤ q ≤ cˆ におけ る t (q ) と tˆ(q ) によって囲まれる面積の二乗を最小化する. 態が考えられる)の交通流観測データが得られると,そ. パラメータを求めるものであり,最小二乗法を連続変数. ことにする.また,道路の種類によって,冬期の道路・. に拡張したものとなっている.. 路面管理レベルが決定されるため,ここでは,各状態で. れらから冬期の確率的交通容量を推定する方法を考える. の確率的交通容量の分布は一定であると考えることにす る.. v v u (q ). vˆ f vu (q ). 状態 b での確率的交通容量の平均を c b ,状態 w での それを c w と表現すると,冬期の確率的交通容量の平均 は,図-2 に示すように推移すると想定される.この図. v0. では,確率的交通容量の平均は,気象の影響を受けるた. vl (q ). め,変化は一定ではないが,減少傾向にあり, c w にな ると,除排雪作業により, c b まで回復する様子を表し q. t. c t (q ) =. tˆ(q ) =. d vˆ f. ている.2.(1)に示した仮説が成立する場合,すなわち,. q. どの時点においても確率的交通容量の分散は一定となる. λ q ⋅ 1 + γ ⋅ c . 場合を考える.このとき,冬期にドライバーが経験する. (. ムサンプリングとなり,さらに,正規分布に従う誤差項. (. d v u (q ). cˆ. c. q. 図-1 BPR関数のパラメータ推定. cb cw. (. 0, σ C2. ). 0, σ C2 を伴って,表現されると考えることにする. 図-2 において,各除雪作業間の平均交通容量の推移に 着目すると,一定ではない天候影響を受けるため,一様 分布を仮定することは妥当性に欠けると考えられるが, 複数の除雪が行われる冬期全体を考えた場合,一様分布 を想定しも問題は少ないと考えられる.その場合,冬期 交通容量の確率密度関数は,一様分布と正規分布の畳み 込み積分によって,式(47)で与えられる 14).. d vˆ f. c cs. ). f (u ) =. (. 0, σ C2. ). ((. ) ) ((. 期. ) ),. Ψ u − c w σ C2 − Ψ u − c b σ C2 b. c −c. w. (47). where. 除排雪 冬. ). 確率的交通容量は,一様分布 Uni c w , c b からのランダ. 夏. Ψ (x ) =. 期 t. 図-2 確率的交通容量の平均の推移(冬期+夏期). 436. 1 2π. x. ∫e. −∞. −t 2 / 2. dt.. (48).
(7) 土木学会論文集D Vol.66 No.4,431-441,2010.10. d = 5 (km) , ω = 0.8 として推計された無積雪時と積雪 時の BPR 関数を示す.表-1 には,推計されたパラメー タ値を示す.図-3~6 より, k − v 曲線に関しては,無 (1) 確率的交通容量と BPR 関数のパラメータの推計 積雪時,積雪時ともに当てはまりの良い曲線が得られて ここでは,交通流観測データを本研究で提案したモデ いるように見えるが, q − v 曲線に関しては,無積雪時 ルに適用した結果を示す.交通流の観測は,北海道の国 においては,非渋滞領域のデータがほとんどであったた 道 230 号(2 車線道路)を対象として行い,ビデオカメ ラを設置して得られた画像に画像処理を施し,走行速度, め,平均交通容量付近のデータ数が少なく,十分な結果 は得られなかった.しかしながら, k − v 関係が式(3)に 交通量を求めた.ビデオカメラを設置した区間は,札幌 示す連続関数で表現可能であり,さらに,飽和密度が 市の郊外部に位置し,付近には信号交差点や商業施設等 120 (pcu/km) となるという仮定が成立する場合に限って がないため,交通干渉が少なく,さらに,見通しの良い は,渋滞領域にあるデータ数が少なくても,ある程度の 直線区間(約 1.5km)である.したがって,マクロ交通 精度を有する確率的交通容量は推計できる可能性はある 流モデルを適用するのに理想的な交通状況下にあると考 と考えられる.飽和密度は一般的に,120~150 (pcu/km) えられる.また,この区間は札幌から定山渓あるいは洞 の値をとることが知られている 15).推計可能性の検証に 爺湖等の観光地をつなぐ道路であり,主に観光目的のト 関しては,たとえば,交通流観測データから,渋滞領域 リップが利用している.上述した 2 変量に関しては,車 にあるデータの一部を削除して得られる確率的交通容量 頭間隔が 3 秒以下にある車両を追従挙動下にある 1 つの と全データを用いて得られるものとを比較する等の検証 車群と仮定し,その車群を対象に計算している.ここで が必要となるが,これは本稿の域を出るため,これ以上 得られる走行速度は地点速度となるが,その分散値を用 議論はしないことにする.さらに,2007 年 11 月 11 日 いて,空間速度を推計した.空間速度推計においては, (日)(無積雪時)に観測したもう 1 組の無積雪時の交 分散値を適用するため,車群を構成する車両数が 5 台以 通流データを用いて,同様の計算を行ったところ,確率 上のデータのみを計算の対象とした.交通密度に関して 的交通容量の平均,分散がそれぞれ 1902 (veh/hr),2272と は,直接観測するのが困難であったため,オキュパンシ 推計された.積雪時に関しては,表-1 で計算対象とし ーを計測する方法も考えられるが,本研究では,交通量 たレーンの逆方向のデータを対象に同様の計算を行った と空間速度の関係から簡便的に推計した.観測は,路面 ところ,確率的交通容量の平均,分散がそれぞれ 1489 上に積雪のない 2007 年 11 月 10 日(土)(無積雪時と (veh/hr),1952 と推計された.積雪時に関しては,逆方向 想定),および積雪のある 2008 年 1 月 24 日(木)(積 のレーンであるため,異なる交通特性を持つ可能性は否 雪時と想定)に行なった.無積雪時の観測日は,紅葉観 定できないが,概ね 2.(1)に示した確率的交通容量に関 光のシーズンにある休日であり,交通量が多くなってい する等分散仮説が成立することが確認された.そこで以 ることを条件に選択した.無積雪時の路面状態は,その 下では,冬期の確率的交通容量を推計することにする. 年度の除雪が行われておらず,観測日以前には降雪が観 図-9 には,無積雪時と積雪時の交通容量の分布,さら 測されたものの,図-2 における夏期に近い状態となっ に無積雪時の状態を b ,積雪時の状態を w として式(47) ていた.しかしながら,費用と時間の制約から,長期間 に渡る観測ができなかったため,以下の数値計算例では, から推計される分布(畳み込み積分による分布),さら には,この分布に正規分布を当てはめたときの分布(冬 図-2 において, c b = c s となることを仮定して分析を行 期の確率的交通容量とする)を示す.この図からも明ら うことにする.すなわち,無積雪時の交通容量は,夏期 かなように,畳み込み積分による分布は,ここで示した と除雪直後の交通容量を表わすものと仮定する.積雪時 計算例では,正規分布によって近似可能であり,このこ の観測日に関しては,路面上に積雪があることを条件に とは,分布の適合度検定を行なった結果からも裏付けら 選択したが,その時の路面状態は,除雪直前に近い状態 れた.冬期の確率的交通容量は,平均,分散がそれぞれ, であった.観測を行った道路区間は,国道上にあり,除 1693,2452で与えられる正規分布となる. 雪開始基準は他の道路よりも高く設定されている. はじめに,無積雪時と積雪時の確率的交通容量,およ (2) 確率的交通容量が移動時間に与える影響 びそれらを用いた BPR 関数のパラメータ推計を行なう ここでは,確率的交通容量が道路ネットワーク上の移 ことにする.図-3,4 に,それぞれ無積雪時と積雪時の 動時間に与える影響を調べるため,内田 1)で使用されて 推計された k − v 曲線を示す.ここでは, k − v 式で用い いる札幌市の主要幹線を模して作成した仮想ネットワー る飽和密度( k j )を 120 (pcu/km) と仮定した.また,図 ク(図-10)を対象に,数値実験を行った結果を示す. -5,6 にこれら 2 つの図に対応する無積雪時と積雪時の 数値実験は,夏期と冬期の確率的交通容量を想定して行 q − v 曲線を示す.さらに,図-7,8 にそれぞれ,. 5.数値計算例. 437.
(8) 土木学会論文集D Vol.66 No.4,431-441,2010.10. 図-3. 図-4. k − v 曲線(無積雪時). 図-7 BPR関数(無積雪時). k − v 曲線(積雪時). 図-8 BPR関数(積雪時). 2.0E-03. 無積雪時 積雪時. 確率密度. 1.5E-03. 畳み込み 冬期. 1.0E-03 5.0E-04 0.0E+00 700 900 1100 1300 1500 1700 1900 2100 2300 2500 2700. 交通量(pcu/hr). 図-9 推計された確率的交通容量 図-5. q − v 曲線(無積雪時) 表-1 推計されたパラメータ値. 交通容量. パラメータ ( k − v 式). vˆ f 平均 分散 (veh/hr) (km/hr) 無雪 1910 2112 69.6 積雪 1476 2152 57.0. パラメータ (BPR 関数). lˆ. mˆ. γ. λ. 2.1 1.8. 0.2 0.0. 0.6 0.7. 2.0 1.5. なった.本研究で適用する交通量配分モデルは,内田. 1). により提案されているモデルのうち,交通容量の確率変 動のみを反映したものである.この配分モデルでは,交 図-6. 通容量が確率変数として表現されるため,得られる移動. q − v 曲線(積雪時). 時間も確率変数として表現されることになる.さらに, OD 間の平均移動時間が均衡する状態を計算するが,こ. 438.
(9) 土木学会論文集D Vol.66 No.4,431-441,2010.10. の配分モデルは,通常の利用者均衡配分と等価な問題構 造を持つため,大規模なネットワークにも適用可能であ. 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 14. 15. 16. 17. 18. 19. 20. 21. 22. 23. 24. 25. 26. 27. 28. 29. 30. 31. 32. 33. 34. 35. 36. 37. 40. 41. 45. 46. 47. 50. 51. 1). る.配分モデルの詳細に関しては,内田 を参照された. 札幌新道. 環状. い.各リンクの自由移動時間は,札幌市の主要幹線のリ ンク長および法定速度を参考に算出した値を用いた.ま た,各リンクの平均交通容量は,一律片側 12,000 (pcu/day) として与え,夏期の BPR 関数のパラメータは,. 表-1 に示した無積雪時のものを用いた.冬期において. 38. 39. 42. 43. 44. 48. 49. 52. 53. は,各リンクの自由移動時間の設定には,表-1 に示し た無積雪時および積雪時の自由走行速度から,積雪時の 低下率を求め,これを用いて法定速度を補正した値を用. 54. 図-10 テストネットワーク. いた.また,各リンクの平均交通容量は,無積雪時と冬 期の平均交通容量から冬期の低減率を求め,夏期の平均. 表-2 条件設定. 交通容量を補正したものを用いた.冬期の BPR 関数の. 交通容量 平均 変動 係数 12,000 0.11 10,700 0.14. パラメータは,表-1 に示した積雪時のものを用いた. 確率的交通容量の分散に関しては,冬期と表-1 に示し た無積雪時の確率的交通容量の変動係数の関係から設定. 夏期 冬期. した.ここで,リンク間の確率的交通容量の相関は,夏. BPR 関数. γ. λ. 0.6 0.7. 2.0 1.5. vˆ f (km/hr) 69.6 57.0. 期,冬期ともに 0.5 と仮定した.以上をまとめたものを 50 40. Travel time (min). 表-2 に示す.OD 交通量は,OD ペアの組 (1, 54),(5, 52), (8, 50) , (33, 39) に対して,それぞれ双方向に 30,000 (pcu/day) として与えた.中長期の都市圏交通計画策定に. おいては,日単位の交通量配分結果が必要となる.こう した問題への適用を念頭に置き,これまでの議論では,. 総移動時間の平均 標準偏差. 30 20 10. 54 → 1. 52 → 5. 50 → 8. 39 → 33. 33 → 39. 計算例は,日交通量を扱う日配分を想定している.日配. 8→ 50. 1→ 54. 5→ 52. 0. 時間交通量を対象としていたのに対し,ここで示す配分. OD pair. 分を行うためには,本稿で推計を行った時間単位の交通 容量や BPR 関数を合理的仮定に基づいて日単位のもの. 図-11 ODペア間の移動時間の平均と標準偏差(夏期). に変換する必要がある.そのための手法は,既にいくつ 50. を参照されたい.こうした手法を適用することにより,. 40. Travel time (min). か提案されている.たとえば,溝上ら 16)や松井・藤田 17) 本稿で推計される時間単位の確率的交通容量や BPR 関 数を日配分への入力データして用いることが可能となる. 図-11,12 は,それぞれ夏期および冬期における各. 総移動時間の平均 標準偏差. 30 20 10. 1 54 →. 52 → 5. 50 → 8. 33 39 →. 33 → 39. 50 8→. 5→. 1→ 54. 標準偏差を示している.これらの図から,冬期の移動時. 52. 0. OD ペア間のある経路に関する確率的移動時間の平均と. OD pair. 間は,夏期のものと比較した場合,平均だけではなく標. 図-12 ODペア間の移動時間の平均と標準偏差(冬期). 準偏差も大きくなり,移動時間に関する不確実性も高ま ることが示された.図-13 は,夏期と冬期の確率的総移. 9.0E-07. が正規分布に従うと仮定して描いた確率密度関数である. 図-11,12 に示した結果は OD ぺアに着目したドライバ ー個人の移動時間信頼性指標と位置付けられるのに対し て,図-13 に示した結果は,ネットワーク全体の移動時 間信頼性を表わしている.図-13 からも,冬期には移動. Probability density. 動時間(∑リンクリンク交通量×確率的リンク移動時間). 6.0E-07. 3.0E-07. 0.0E+00 4.0E+06. 時間に関する遅れだけではなく,不確実性も増大するこ. 夏期 冬期. 6.5E+06. とが改めて示された.確率的総移動時間が正規分布に従 図-13 総移動時間の分布. 439. 9.0E+06 (min*veh).
(10) 土木学会論文集D Vol.66 No.4,431-441,2010.10. うという仮定は,夏期と冬期における総移動時間の平均. 必要があり,この判断法の設定によっては,異なる結果. および分散の変化をわかりやすく表示するために置いた. が得られることになる.以上から,確率的交通容量推計. ものである.より,正確な確率密度関数を知りたい場合. 法には,未だ改良の余地があり,今後,さらに研究を進. には,たとえば,Clark & Watling19)に示されている Curve. める必要があると考えられる.. fitting 手法(Johnson Curves)を適用すれば,推計可能で. 実データを用いた検証においてもデータの制約から,. あるが,この方法に関しては,本稿の域を出るため,こ. 十分な検証がなされたとは言い難い点も否定できない.. れ以上議論はしないことにする.. 特に重要な点は,冬期の交通容量も議論しているにも関 わらず,積雪時に関しては,1 地点,1 時点のみのデー タを用いているため,さまざまな積雪状態が生起する冬. 6.まとめ. 期の道路交通状況を解析するのに十分な検証がなされた とは言い難いことである.さらに,特に無積雪時の検証. 本研究では,マクロ交通流モデルを適用した確率的交 通容量の推計法を示した.積雪寒冷地では,冬期の移動. では,渋滞領域のデータがほとんど含まれていないため,. 時間信頼性評価の重要性が高いという考えから,冬期の. 交通容量推計において信頼性の高い結果が示されたとも. 気象状況,道路・路面管理作業を考慮した確率的交通容. 言い難い.本研究では,マクロ交通流モデルにうまく適. 量の推計法も示した.また,交通流観測データを用い,. 用できる道路区間を先に選択し,そこで得られた交通流. 実際に夏期と冬期の確率的交通容量の推計を行ない,さ. データのみを用いているが,このことが十分な検証がで. らに,確率的交通容量が道路ネットワーク上の移動時間. きなかった原因である.すなわち,モデルへの適用可能. に与える影響を定量的に示した.移動時間信頼性評価の. 性を優先して選択した道路区間は 1 区間であり,北海道. 重要性は,近年,世界的に高まりつつあり ,確率的交. という地域特性も関係していると考えられるが,そこで. 通容量からのアプローチは,ネットワークモデルでの取. は,大きな渋滞が発生しなかった.また,リンク間の共. り扱いの容易性から,実規模の道路ネットワークを対象. 分散を推計する方法も提案しているが,これを検証する. とした評価に適用可能である 1).しかしながら,確率的. ためのデータも現段階では観測できていない.以上,モ. 18). 交通容量をどのように交通観測データから推計するのか, デル構造,モデルの検証の両面において,未だ課題が残 されていると考えられる.しかしながら,移動時間信頼 さらには,推計された平均交通容量と整合的な BPR 関 数のパラメータをどのように推計するのか等,いくつか. 性のネットワークレベルでの計量化およびその評価は,. の課題が残されていた.これらは,これまで交通容量を. 積雪寒冷地のみならず,すべての地域における重要課題. 扱う研究,ネットワークモデルを扱う研究は,それぞれ. であり,本研究で示したフレームワークは,いくつかの. が独立的に行なわれており,両者を有機的に関係付ける. 課題が残されているものの,その一助になり得るものと. 試みが少なかったことに起因するものと考えられるが,. 考えられる.上述した課題については,今後も継続して. 重要な研究課題であったと捉えられる.本研究は,これ. 取り組んでいく所存である.. らの研究を補完・補間することを念頭に行なわれた基礎 参考文献. 的研究である.. 1). 本研究で示した確率的交通容量の推計法では,交通観 測データに k − v 式を当てはめ,モデルパラメータを推 計するアプローチをとり,そこでは,誤差項に互いに独. 2). 立で同一な正規分布を仮定した.このことは,交通流率 の分散は,密度の二乗に比例することを意味し,実現象 からから乖離した仮定となっている可能性がある.この. 3). ことは,交通容量のみを考える場合,それほど問題にな らないことは前述の通りであるが,より論理的な方法を 考える必要があると考えられる. q − v 式に誤差項を想. 4). 定して,本研究で示したものと同様なアプローチをとる 方法も考えられるが,こうした方法では,モデルの当て. 5). はまりの良さ,および解の安定性に問題があることが指 摘されているため,あまり採用されていない.また, Brilon ら 7)が提案している確率的交通容量の推定法は,. 観測データが交通容量であるかどうかを事前に判断する. 6). 440. 内田 賢悦:需要・供給・認知の確率変動を反映した 利用者均衡配分,土木学会論文集 D, Vol. 65, No. 3, pp. 386-398, 2009. Elefteriadou, L., Roess, R. P., Mcshane, W. R.: Probabilistic nature of breakdown at freeway merge junction, Transportation Research Record, Vol. 1484, pp. 80-89, 1995. Lorenz, M., Elefteriadou, L.: A probabilistic approach to defining freeway capacity and breakdown, Fourth International Symposium on Highway Capacity, Hawaii, 2000. Van Aede, M.: A single regime speed-flow-density relationship for freeways and arterials, Proceedings of the 74th TRB annual meeting, Washington D.C., 1995. Van Aerde, M. and Rakha, H.: Multivariate calibration of single regime speed-flow-density relationships, Proceedings of the vehicle navigation and information systems (VNIS), conference, Seattle, Washington, 1995. 大口敬:高速道路単路部渋滞発生解析-追従挙動モ.
(11) 土木学会論文集D Vol.66 No.4,431-441,2010.10 デルの整理と今後の展望-,土木学会論文集, No.660/IV-49, pp.39-51,2000. 7) Brilon, W., Geistefeldt, J. and Regler, M.: Randomness of capacity – Idea and application, Proceedings of the 5th International Symposium on Highway Capacity and Quality of Service, pp. 147-157, 2006. 8) Chandler, R. E., Herman, R. and Montroll, E. W.: Traffic Dynamics: Studies in Car Following, Operations Research, Vol. 6, pp. 165-184, 1958. 9) Herman, R., Montroll, E. W., Potts, R. B. and Rothey, R. W.: Traffic Dynamics: Analysis of Stability in Car Following, Operations Research, Vol. 7, pp. 86-106, 1959. 10) Gazis, D. C., Herman, R. and Potts, R. B.: Car Following Theory of Steady State Traffic Flow, Operations Research, Vol. 7, pp. 499-505, 1959. 11) Herman, R. and Potts, R. B.: Single Lane Traffic Theory and Experiment, Proceedings of the Symposium on Traffic Flow Theory, Research Laboratories, General Motors, New York: Elsevier, pp. 147-157, 1959. 12) Gazis, D. C., Herman, R. and Rothey, R. W.: Non Linear Follow the Leader Models of Traffic Flow, Operations. Research, Vol.9, Issue 4, pp. 545-567, 1961. 13) Norman, R. D., Harry, S.: Applied Regression Analysis, Wiley Series in Probability and Statistics, John Wiley & Sons, 1998. 14) Brandt, S.: Data Analysis: Statistical and Computational Methods for Scientists and Engineers, Springer, 1998. 15) 飯田恭敬編著:交通工学,国民科学社,1992. 16) 溝上障志,松井寛,可知隆:日交通量配分に用いる リンクコスト関数の開発,土木学会論文集, No.401/IV-10,pp.99-107,1989. 17) 松井寛,藤田素弘:大都市圏道路網を対象とした拡 張型利用者均衡配分モデルの開発とその実用化,土 木計画学研究・論文集,No.17, pp.15-28, 2001. 18) SACTRA: Transport and the Economy, HMSO, London, 1999. 19) Clark, S. D. and Watling, D. P.: Modelling network travel time reliability under stochastic demand, Transportation Research B, Vol.39, pp.119-140, 2005. (2009. 12. 7 受付). A STUDY ON IMPACT OF STOCHASTIC TRAFFIC CAPACITY ON TRAVEL TIMES OF A ROAD NETWORK Kenetsu UCHIDA In this study, a model which estimates stochastic traffic capacity from observed traffic data is presented. Stochastic capacities during winter and summer in cold region are then estimated by using observed traffic data by a model which is also presented in the present study. A traffic assignment model which has been developed by the authors is used for examining the impact of stochastic capacity on travel times in a road network.. 441.
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