山口 明啓
三枝 峻也 ,桜井 郁也 岡田 育夫 内海 裕一
兵庫県立大学 高度産業科学技術研究所
名古屋大学 シンクロトロン光研究センター
あいちシンクロトロン光センター
界面と表面は、非常にありふれた身近な領域である。
界面と表面は、物理・化学反応の最前線であり、非常
に重要な研究領域である。これら界面と表面での各種
反応に関する研究開発は、電子、フォトニクス、触媒、
バイオテクノロジーなど、現代の最先端科学技術のす
べての分野に関連している重要な問題であり、数多く
の研究が報告されてきた。例えば、電気化学反応にお
けるサイクリックボルタンメトリ測定などは、その固液界
面における典型的な例である。固体と固体の界面では、
トンネル効果や粒界による磁気ピニングなどの物理現
象などの例もある。
最近、光励起による電気化学反応が特に固液界面
で着目されている。新しい化学反応素励起の可能性
や
次元造形への展開で注目を集めるようになったか
らである。これまでに報告されている光源としては、
レーザーや電子ビーム、 線及びγ線などが利用され
ており、金属水溶液中からの金属あるいは金属酸化物
粒子の生成が報告されている。
金属水溶液として酢酸銅水溶液を用いた実験研究
では、直鎖アルキルアルコールの直鎖長によって、生
成する粒子形状やサイズが変化することが報告されて
いる。また、
変化によっても粒子形状が大きく変化
する。これらの光励起化学反応について理解を深める
ことができれば、その制御が可能となり、所望の領域に
次元造形を施すことも可能となることが期待される。さ
らに、金属や酸化物を作り分けることも可能になるので、
金属/酸化物界面なども形成でき、機能性材料の創
製も期待できる。
上述したように、新材料創製や構造体形成プロセス
の確立において、固液界面での反応過程の理解は非
常に重要である。よって、本研究では、 線照射による
光励起化学反応における液浸した基板による粒子生
成や凝集の違いに着目して研究を行った。
線の照射実験は、あいちシンクロトロン光センター
の
を用いた。
のリングから放
射される
線は、約
から
にブロードな
ピ ー ク を 有 す る 。 こ こ で は 、 酢 酸 銅 水 溶 液
を
準備して、
を取り出して、
のメタノールを加えた溶液を調
30 2020 9整して、表
に記載した各種基板を液浸させた状態で、
常温大気中にて
線照射を
分間行った。照射後、
治具から基板を取り出して、純水で洗浄し、走査型電
子顕微鏡と
分析および顕微ラマン分光法による
組成分析等を行った。
ここでは、典型的な粒子観察結果について、図
か
ら に結果を示す。それぞれ、表 の基板番号
に対応する。この つの図を比較すると、すぐに気が
付くように、基板の種類を変えると、生成する粒子形状、
サイズ、表面状態などが基板に依存している様子が分
かる。例えば、図
のように
基板では、粒子が
まばらに生成し固着化している一方で、基板を銅に変
えると図 のように空間に隙間なく粒子が生成し、基板
表 面 を蔽 い かぶ さってい る 様 子 が 分 かる 。基 板 を
に変えると、生成した粒子形状が歪んでいる様
子が分かる。これらの結果は、基板が粒子生成、成長、
凝集等に深く関与していることを示唆している。
30 2020 9の分析結果から、生成した粒子が酸化物あるい
は金属であることが分かった。さらに、組成を同定する
ために顕微ラマン分光法によって、測定を行ったところ、
図
に示す結果が得られた。銅酸化物には、 種類の
組成があり、
が存在している。
それぞれの組成成分に由来するラマンピークと測定し
た結果を比較すると、
及び
基板上に生成した
粒子が主に
を主成分とする粒子であることが分か
る。
では、
の他に
が含まれていること
が分かる。
基板の場合には、
は、ほとんど測定
されず、
と
に由来するラマンピークが得ら
れている。このことは、
及び
、
、
の順で、
の酸化度が異なっていることが分かる。すなわち、
及び
表面では、より酸化された
を主成分
とする粒子が生成・固着される傾向にあるが、
で
はあまり酸化が進行せず、
が主成分となっている。
銅はちょうどその中間に位置するが、表面観察の結果
では、表面全体を生成・固着した粒子で覆われており、
他の基板との表面形状がまったく異なる。酸化度に関
して考えると、基板から酸素が提供されていると考える
のが妥当である。
然り、
基板においても表面に
は酸化アルミニウムが形成されているので、この酸素
成分が粒子生成時に寄与したものと考えあれる。逆に
では、酸素を供給する起源がなく、液中の溶存
酸素からの寄与のみと考えるのが自然である。
最後に、
基板では、簡単に述べてきた
とい
う珍しい組成比の銅粒子が生成していることに言及す
る。
この組成比の銅酸化物は、通常の加熱や酸化
というプロセスでは生成させるのが難しいことが良く知
られている。自然界にはほとんど存在しない組成比で
あるが、近年、マイクロ波加熱等の方法によって合成
に至っている。この放射光を用いた
線照射による光
励起化学反応においても、基板を
にすることで得ら
れることから、非平衡な化学反応過程が進行している
ことが推察できる。銅酸化物は、抗菌性の観点からも
注目されており、ナノ・マイクロ構造体で酸化銅を主成
分とした抗菌構造体の創製などへの展開も期待できる。
以上のように、酢酸銅水溶液に
線照射を行う場合
において、液浸している基板の種類によって、生成・
固着する粒子の組成や形状が大きく異なることが分
かった。このことは、基板表面の結晶構造や電子状態
が粒子の結晶成長に大きな影響を及ぼすことを示唆し
ている。今後、固液界面での非平衡反応過程の理解
をさらに深めることで、新しい反応系や材料創製及び
それらの生成物を効率的に生成するための制御機構
の機構と応用が進められると期待できる。
酢酸銅水溶液にメタノールを添加した水溶液において、
線照射による光化学反応の液浸基板依存性につい
て研究を行った。様々な基板に生成・固着した粒子の
形状及び組成が基板の種類に依存することが分かっ
た。基板を変えれば、ある程度、酸化銅の組成比を操
作できることも分かった。
線照射によるナノ・マイクロ
粒子構造の生成と固着化を所望の領域にて行う事が
可能であるので、 次元造形への展開も期待できる。
また、酸化銅には半導体や抗菌性という機能性があり、
次元造形と組み合わせることで、機能性ナノ・マイク
30 2020 9ロ構造体への展開も期待できる。固液界面反応の基
礎的な研究だけではなく、応用研究についても興味深
い指針を示すものと考えられる。
本研究の一部は,公益財団法人 科学技術交流財
団 「知の拠点あいち重点研究プロジェクト」及び科学
研究費補助金 基盤研究
を受けて
行われた。
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Candy-like Cu4O3 Microstructure: Facile Wet Chemical
Synthesis, Formation Mechanism, and Good Long-Term ASC Appl. Mater. Interfaces, vol. 10, pp. 37287 37297, 2018. 連絡先氏名 山口 明啓 所属機関 兵庫県立大学 高度産業科学技術研究所 所在地 〒678-1205 兵庫県赤穂郡上郡町光都 3-1-2 電話番号 (0791)58-0041 FAX 番号 (0791)-58-0041 E-mail [email protected] 30 2020 9