栄養教諭
が
行
った
担任
への
食育
サポートとその
効果
要旨
佐久間直緒美1),2)、名倉秀子3)、山本 茂3) 1)横浜市立大岡小学校、2)神奈川工科大学大学院情報工学専攻、3)十文字学園女子大学大学院食物栄養専攻 受付日:2019年11月22日、受理日:2020年12月15日 連絡責任者:佐久間直緒美 〒232 - 0054 横浜市南区大橋3 - 49 TEL:045 - 711 - 0818 FAX:045 - 711 - 3563 E-mail:naomi 12077 @gmail.comNutrition education support provided by nutrition teachers to homeroom teachers and its effects
Naomi Sakuma1),2), Hideko Nagura3), Shigeru Yamamoto3) 1)Yokohama Municipal Ohka Elementary School
2)Kanagawa Institute of technology Graduate School of Engineering Department of Information and Computer Sciences
3)Department of Food and Nutrition Sciences, Graduate School of Human Life Sciences, Jumonji University
文部科学省から『栄養教諭を中核としたこれからの学校の食育』が 2017 年 3 月に交付され、 全国で食育が推進されている。本研究は、栄養教諭が行った担任への食育サポートによる 効果を検証することを目的とした。対象は児童数約 600 人、一般級担任(以下、担任)18 人の小学校とし、栄養教諭が業務上作成した記録簿の食育に関する項目について、2014 年度から 3 年間を調査した。意欲的に食育に取り組んだ担任数は、2015 年度の 3 人(16.7%) から2016年度の11人(61.1%)と有意に増加した(p<0.01)。異動の無かった12人のうち、 食に関する指導実践「有り」の担任数は、2014年度の2人(16.7%)が2016年度に12人(100%) と有意に増加した(p<0.001)。また、同担任の学級残食率2%以下は、2014年度の1人(8.3%) が 2016 年度に 11 人(91.7%)と有意に増加した(p< 0.001 )。栄養教諭が担任に食育サポー トしたことにより、意欲的に食育を行う担任数と食に関する指導実践担任数が増加し、給 食の残食率が減少することが明らかになった。 キーワード:栄養教諭、担任、連携、給食、残食
事例・症例報告
神面や食事行動に影響が出ている3 )。また、経済状況で 貧困基準以下といわれる世帯の子ども群では、それ以外 の子ども群より魚介類や果物類、野菜類の摂取量が少な いと報告されている4 )。 文部科学省実施の全国の『教員意識調査』では「食習慣 に関する指導は、保護者などがすべきと思っている」が 48.1%5 )で、食育は家庭でやるべきと思っている教員が 約半数であることが報告されている。また、長崎県の学 校における現代的な健康課題解決支援事業の中では「給 食の時間を、単なる児童生徒と食事を共にする時間と 思っている」等、教育の一環として行われている給食指 導の重要性や意識の低さ等が指摘されている6 ),7 )。この ように栄養教諭と担任が一丸となって食育を行う学校が 少なく、教員の意識がまだ足りていない。 さらに近年は、団塊の世代の教員が大量退職し、経験 を積んだ教員から若手教員へ食育を含む教育全般に関す る指導が減ってきている。また、小学校の教員免許取得 希望の学生における野菜と魚類の名称調査結果の正答率 が低く8 )、教員採用後の初任者研修に含まれる給食指導 研修が極めて希薄であるという課題もある9 )。文部科学 省の教員養成部会では、教員は養成課程で給食指導につ いて勉強をしていないため、理解が図られていないとい う報告もされている10 )。 『食育基本法』が制定されてから、栄養教諭が積極的 に食育の推進を構築している11 )。学校における食育は、 主に給食時に行う給食指導、学級活動や教科連携等での 食に関する指導があり、いずれも栄養教諭が中心となり 実施している。これらの結果、学童期に食育の指導を受 けた近年の大学生は「野菜の摂取が多い」という報告が ある12 )。また、担任が給食指導時に参考にしているこ とは、自分自身が家庭で受けた食教育、小学校時代の担 任の給食指導、校内の学校栄養士に相談等が挙げられて いる13 )。担任にとって「食育は、栄養教諭と一緒に指導 する際に、栄養教諭を頼ることができる時間や場であ る」ともいわれている14 )。このように栄養教諭は、児童、 りが大きい。学校給食の残食は、喫食時間が短いことや、 児童の偏食や食体験の少なさ、嗜好が合わない等で増加 すると報告されている16 )-18 )。給食指導を行う担任の食 育に対する指導意欲や指導方法等による環境要因も影響 すると考えられる。 学校に位置付けられている食に関する指導の時間は、 『学習指導要領』の「健康や安全に関する学級活動(2)」に 学校給食を通した食育の時間として、また、教育活動全般 で指導することが示されている19)。2017年3月に文部科学 省は栄養教諭が在籍していることを前提とした『栄養教諭 を中核としたこれからの学校の食育』を全国の小中学校に 交付し、教育活動全般で食育推進することを公表した20)。 そこで本研究は、食育推進の中核となる栄養教諭が、 児童と一番身近な担任に教育活動全般で行われている食 育のサポート(以下、食育サポート)をすることにより、 意欲的に食育を行う担任数と食に関する指導実践担任数 が増加し、指導成果の1 指標と考えられる給食残食量の 減少へつながることについて検証することを目的とした。
Ⅱ.方法
1
.対象 調査対象は、都市圏の児童数約 600 人、自校式の給食 施設付帯の小学校とした。調査は 2019 年に行い、調査 対象物は過去にさかのぼった 2014 年 4 月から 2017 年 3 月 までの 3 年間の記録簿とした。記録簿は、栄養教諭が業 務上使用している食に関する指導実践、給食の生産量、 提供量、喫食状況の把握、残食量が記録されている簿冊 や PC データとした。調査対象者は、一般級担任(以下、 担任)18 人と 3 年間異動の無かった担任 12 人とした。 本研究は、十文字学園女子大学の「人を対象とする研究 倫理委員会」の承認(承認番号:2018-029 )を得て行った。2
.食育サポートの環境整備 1 )『学校経営計画書』 ( 1 ) 食育年間計画 栄養教諭が食育年間計画を作成し、『学校経営計画書』に組み入れ、担任に対して食育サポートを行った。 ( 2 ) 「給食指導の標準化マニュアル」 栄養教諭が「給食指導の標準化マニュアル」を作成し た。内容は、①教室備品、②給食費、③給食数、④児童 が持参する物、⑤給食時間、⑥準備、⑦運搬、⑧配膳・ 食事中、⑨食後・片付け・返却、⑩その他の 10 項目とし、 A4サイズ4ページに示した。なお、給食時間については、 食事時間の短縮が残食量を増やすことにつながる16 )-18 ) ことから、45 分間の給食時間設定のうち、中・高学年 は最低 20 分間、低学年では 25 分間を食事の時間として 確保することとした。配膳については、偏食を理由に児 童が苦手なおかずや食材を勝手に減らさない、担任は児 童が苦手な物も少しずつ食べられるように指導する、飲 用牛乳は乳アレルギーがある児童以外には必ず 1 人に 1 本配る等、適切な配膳方法等を含めた。 ( 3 )4 月の給食開始前に栄養教諭が行う給食指導研修 毎年 4 月の給食開始前に、管理職、学級を担当しない 職員を含む教職員を対象に「給食指導の標準化マニュア ル」に基づく研修を実施した。 ( 4 )食に関する指導 食に関する指導は、担任が児童の実態に沿った食の課 題を決め、その課題解決を目的とした。栄養教諭は、各 教科や特別活動等の指導の際に、指導案の作成や教材研 究、教材提供等のサポートをした。たとえば、「夏の飲 み物とおやつ」について授業の流れや絵カード、具体的 な飲み物例や授業の時間配分等を提案した。食に関する 指導案のサポートは、1 年担任には年に 2 回以上、2 〜 4 年担任には 1 〜 3 回以上、5 〜 6 年担任には 1 〜 2 回以上 行い、各回の授業の事前打ち合わせは、15 〜 60 分行った。 その食育学習指導案を図 1 に示した。 図1 食に関する指導:食育学習指導案の例 食育(特別活動)学習指導案 指導者:担任(T1) 指導者:栄養教諭(T2) 1 学級・日時: 2年3組・7月14日(木)第3校時 2 場所:教室 3 食育の題目とねらい「夏の飲み物とおやつ」 暑い夏に役立つからだによい飲み物やおやつのとり方を知り、夏休みにできる目標を立てる 4 6つの食育の目標:食事の重要性、心身の健康、食品を選択する力、食文化 5 本時展開 学習内容 指導上の留意点 1 暑い夏にどんなおやつを食べたいか(食べている か)発表する。5分 2 ジュースやかき氷には、どのくらいの砂糖が入っ ているか、また、砂糖の多い水分の取り過ぎは身 体にどんな影響を与えるか、考える。5分 3 「お砂糖、どのくらい入っているかな?」クイズに 答える。5分 4 よく食べるスナック菓子はからだによいか、よく ないか予想する。3分 5 どんなおやつにして、どのような食べ方がよいか 考える。【グループで話し合い】12分 1であげたおやつについて、話し合う。 6 発表する。5分 7 ワークシートであみだくじをし、夏休みにできる からだによいおやつの食べ方の目標を立てる。10分 ・子どもの意見を板書する。(絵カード利用)(T1) アイス、ジュース、氷、麦茶、おせんべい、ラム ネ等 ・ 500 mLの清涼飲料水やアイス、かき氷に多くの砂 糖が含まれていることに気付くように話す。(T2) ・砂糖の多い水分の取り過ぎは、からだをだるくさ せたり、むし歯になりやすくさせたりする話をする。 ・クイズを進行する。(T1・T2) ・スナック菓子は砂糖の他に、油も含まれ、取り過 ぎに注意することに気付くようにする。( T2) ・机間指導。(T1・T2) ・麦茶、すいか、桃、きゅうり、メロン等、砂糖の 少ない飲み物や季節の果物や野菜を食べるのがか らだによいことを指導する。(絵カード利用)(T1) ・文部科学省「たのしい食事つながる食育」p7活用 (T1) 評価 事後指導 からだによい飲み物やおやつを考えて食べることができる。 備考 ・食育健康だよりで、保護者に学習内容を知らせ、夏休みに家庭で実践で きるよう呼び掛ける。 ・ワークシートの保護者欄に家庭での 実践の様子を記入してもらう。 夏休みの後、ワークシートに振り返り を記入する。 PRACTICE REPORT
2 )担任による食に関する指導実践有無の調査 栄養教諭の「食に関する指導実践記録簿」より、2014 年度から 3 年間異動の無かった担任 12 人を対象に、各年 度の食に関する指導実践有無を調査した。 3 )担任別残食率調査 栄養教諭の「担任別残食率記録簿」より、2014 年度か ら 3 年間異動の無かった担任 12 人を対象に、各年度の担 任別残食率を調査した。 給食室での料理配缶時は、栄養教諭が学年・児童当た りの配膳量を計算し、調理員が料理配缶表を使って学年・ 学級ごとに行った。料理配缶表は、学年・児童当たりの 配膳量と学年・学級当たりの配缶量を示した。計量はか りは、デジタルはかり〔 SL - 20K、SL - 2000D、検査有り (株式会社エー・アンド・デイ)〕を使用した。全校の配 缶後は、当日の各学級の欠席数を栄養教諭が配慮し、児 童当たりに大きな誤差が出ないように過不足を調整し、 調理員が配缶した。 最終配缶調整後に、学年・児童当たりの配膳量と全校・ 児童当たりの配膳量を求め、小数第一位を四捨五入した 整数を調理指示書に記録した。残食量計量は、給食返却 時に調理員が行い、記録表に記入し、記録表から栄養教 諭が残食率を計算した。 学年・児童当たりの配膳量は、1 カ月ごとに配膳量合 計を出し、担任別残食率を算出する際に使用した。全校・ 児童当たりの配膳量は、全校の残食率を算出する際に使 用した。 3年間異動の無かった12人の担任別残食率は、月・学級 当たりの料理残食量を学級児童数で割り、月・学級・児 童当たりの残食量を求め、月・学年・児童当たりの配膳 量合計で割った。残食計量は、毎日学級別・料理別(1日 平均 2.8 品)に実施した。さらに、全校分の残食量を集 計した。おひたし等の野菜料理は、水分しか残らない場 合があり、その場合の残食量は 0 とした。主食と飲用牛 乳は毎月 19 日(食育の日)に学級別に量り、それ以外の 日は全校分をまとめて量った。 は、児童一人ひとりの毎日の給食の状況を「給食巡回記 録簿」につづっていった。担任が給食指導の方法につい て悩んでいるときには、給食指導前日に助言をした。担 任と連携で行う児童への給食指導内容は、配膳方法、児 童の偏食・小食・咀嚼嚥下改善指導や、箸の正しい使い 方の指導方法等、児童一人ひとりの食の課題改善になる ようにした。
3
.給食管理 献立は、『学校給食摂取基準』21 )に沿って作成された 市統一献立を主に活用した。市統一献立は、中学年の全 体配膳量の目安を、おおよそ「ご飯の日で 650 g 前後」、「パ ンの日で 500 〜 600 g 」にしており、この研究の 3 年間に 大きな献立の差は無かった。 食材は、発注した量が正確に届いているか、調理員が 納品時に検収し、大幅に多いときは、その場で業者に返 却し、不足が生じた場合は栄養教諭が不足分の再配達を 依頼した。廃棄が出る野菜については、毎日下処理後に 純使用量が確保できているかを確認し、腐りや傷みで純 使用量不足が生じた場合も再配達を依頼して、純使用量 と献立の計画量に差異が生じないようにした。 給食室での配缶量は、中学年を 100%とし、1 年生は 80%、2 年生は 90%、3 年生は 95%、4 年生は 105%、5 年生は 110%、6 年生は 120%にし、学年別に配缶表を作 成した。ただし、学級の児童数の1割以上が欠席した日は、 学級別の配缶量から欠席分を差し引く調整をした。教室 での配膳ルールは、「給食指導の標準化マニュアル」に 沿い、担任が全体量を均等に配ることを基本に指導し、 給食当番児童が行った。担任と栄養教諭で相談し、配膳 量に配慮を要する全児童の 3 〜 5%には、主食の量を中 心に 0.5 倍や 1.5 倍等に調整した。4
.調査内容 1 )担任の食育に対する指導意欲調査 栄養教諭が、担任 18 人を対象にした指導意欲調査を 2016 年 4 月に行った。「教育活動全般で食育を意欲的に 取り組んだか」を質問し、前年度の 2015 年度について無〜 2%」、2 =「3 〜 4%」、3 =「5%以上」とスコアリングし、 各スコアの担任数を集計後、各スコアの人数に差がある かを年次比較するために Kruskal - Wallis 検定後、Bon-ferroni で多重比較した。いずれの検定においても統計 的有意水準を 5%未満(両側検定)とした。 全校の残食率は、主食の料理別、主菜の食品群別、副 菜の食品群別、副副菜の果実類、その他の飲用牛乳・乳 製品に分けて集計し、平均±標準偏差(%)で示した。 2014年度から2016年度の3年間の年次比較をするために、 一元配置分散分析を行い、その後の検定として Tukey の多重比較を行い、有意水準 5%未満を有意差有りとし た。統計解析には、IBM SPSS Statistics Ver.26(日本ア イ・ビー・エム株式会社)を使用した。
Ⅲ.結果
1
.担任の食育に対する指導意欲の年次比較 図 2 に、担任の食育に対する指導意欲の年次比較を示 した。2015 年度は意欲的に取り組んだ担任が 3 人だった が、2016 年度は 11 人になり、意欲的に取り組んだ担任 数が増加した(p< 0.01 )。 図2 担任の食育に対する指導意欲の年次比較 Mann-WhitneyのU検定 **p<0.01 図中の数字は担任数を示す 2015年度 3 11 4 11 6 1 0% 20% 40% 60% 80% 100% ■意欲的に取り組んだ ■少し取り組んだ ■ほとんど取り組んでいない 2016年度 =18 ** n2
.担任による食に関する指導実践有無の年次比較 図 3 に、3 年間異動の無かった担任による食に関する 指導実践有無の年次比較を示した。2014 年度の実践有 りは2人、2015年度は6人、2016年度は12人となり、2014 年度と 2016 年度の比較で増加した(p< 0.001 )。 残食の対象料理は、重量単位で配膳する料理(主菜・ 副菜)とした。主食と飲用牛乳・果実類等個数分配する 料理は除いた。この集計を、夏休みで給食提供の無い 8 月を除く 11 カ月分をまとめて年平均値を求め、小数第 一位を四捨五入し整数にした。さらに 2014 年度から 3 年 間を年次比較した。 4 )全校残食率の調査 全校残食率算出の際は、全校の1割以上の欠席があっ た場合に児童当たりの配膳量を増やした。たとえば、全 校600人のうち急な感染症の学級閉鎖等で60人欠席があっ た場合は、1人分の配膳量を1.1倍にして計算した。欠席 が全校の1割以上になることは、3年間で9日あった。個 数分配のパンや飲用牛乳、果実類等の残食数は、欠席分 をどのように教室で配膳したかを担任に聞き、配らずに 欠席分がそのまま残った場合は残食率に含めなかった。 全校残食率は、料理別に次式により求めた。 全校残食率= (全校の残食量÷喫食人数)÷(全校・児 童当たり配膳量)× 100 料理別に、小数第一位を四捨五入した整数を調理指示 書に記録し、2014 年度から 3 年間に、年 188 回実施され た料理別年平均残食率を求めた。なお、料理別の分類は、 主食をご飯・変わりご飯・パン・麺類、主菜を魚介類・ 肉類・卵類、副菜を野菜類・いも類・藻類・豆類・豆製 品類、副副菜を果実類、その他を飲用牛乳・乳製品とし、 実施回数の少なかった変わりご飯は除外した。複数の食 材が入る料理は、使用量の多い食材の分類で分けた。た とえば、いもの多い肉じゃがは「いも類」、肉の多い肉じゃ がは「肉類」とした。複数回提供されている同一献立料 理は、全てを延べ料理数としてカウントした。5
.集計と統計解析 担任 18 人の「食育に対する指導意欲」は、2015 年度と 2016 年度の回答を、1 =「意欲的に取り組んだ」、2 =「少 し取り組んだ」、3 =「ほとんど取り組んでいない」とス コアリングし、各スコアの回答人数をそれぞれ集計し た。スコアの人数に差があるかを年次比較するために、 Mann - Whitney の U 検定を用いた。3 年間異動の無かっ た担任 12 人の「食に関する指導実践有無」は、2014 年度 から 3 年間を集計し、2014 年度と 2016 年度を、Fisher の 正確確率検定を用いて比較した。担任別残食率は、残食 率について小数第一位を四捨五入して整数とし、1 =「 0 PRACTICE REPORTした(p< 0.01 )。豆類は、2014 年度の 4.9%から 2016 年 度の 2.1%に減少した(p< 0.01 )。飲用牛乳は、2014 年 度の1.3%から2015年度の1.6%に増加した(p<0.01)が、 2016 年度には 1.3%に減少した(p< 0.01 )。
4
.全校残食率の年次比較 表 1 に、全校残食率の年次比較を示した。主食のご飯、 主菜の魚介類、副菜の野菜類、藻類、豆類、その他の飲 用牛乳は、2014 年度から 2016 年度の 3 年間に有意な差が 認められた(p< 0.05 )。 図3 3年間異動の無かった担任による食に関する指導実践有無の年次比較 Fisherの正確確率検定 ***p<0.001 図中の数字は担任数を示す 2014年度と2016年度のみを比較した 2014年度 2015年度 2 10 6 6 12 0% 20% 40% 60% 80% 100% ■実践有り ■実践無し 2016年度 =12 *** n 図4 3年間異動の無かった担任別残食率の年次比較 Kruskal-Wallis検定(Bonferroniによる多重比較調整済み有意確率) **p<0.01 ***p<0.001 図中の数字は担任数を示す 残食対象料理と食品は、重量単位で配膳する料理(主菜・副菜)とし、毎日担任別に残食 計量していない主食と飲用牛乳・個数分配する料理は除外した 2014年度 2015年度 1 9 2 1 1 10 1 11 0% 20% 40% 60% 80% 100% ** n.s ■0~2% ■3~4% ■5%以上 2016年度 =12 *** n 表1 全校残食率の年次比較 残食率(平均値±標準偏差) 年度 2014年度 2015年度 2016年度 主食 ご飯* 5.5±13.6 a (106) 3.9±4.5 b (106) 2.5±2.5 c (111) パン 4.4±5.7 ( 75) 3.8±3.0 ( 77) 3.5±5.8 ( 74) 麺類 2.1±2.6 ( 21) 2.7±2.7 ( 18) 1.3±0.8 ( 16) 主菜 魚介類* 3.3±7.8 a ( 69) 2.2±2.7 b ( 72) 1.9±2.1 b ( 59) 肉類 2.0±2.2 ( 25) 1.2±1.2 ( 25) 1.0±0.9 ( 23) 卵類 2.9±2.6 ( 21) 2.1±1.9 ( 23) 1.6±3.3 ( 27) 副菜 野菜類* 3.4±2.3 a (210) 2.5±1.5 b (215) 1.8±1.6 c (204) いも類 3.0±6.4 ( 31) 2.0±2.6 ( 26) 2.0±1.7 ( 28) 藻類* 4.3±9.9 a ( 32) 2.4±3.7 b ( 26) 1.8±2.4 b ( 31) 豆類* 4.9±11.0 a ( 35) 3.0±5.9 b ( 35) 2.1±3.0 b ( 38) 豆製品類 2.4±2.4 ( 25) 1.8±0.7 ( 21) 1.4±1.6 ( 20) 副副菜 果実類 2.4±4.4 ( 31) 2.4±3.2 ( 23) 1.7±2.1 ( 35) その他 飲用牛乳 * 1.3±0.5 a (178) 1.6±0.3 b (174) 1.3±0.3 a (171) 乳製品 1.1±1.3 ( 20) 0.7±0.9 ( 16) 0.5±0.5 ( 17) ( )内の数値:1年間の延べ料理数 *:一元配置分散分析により年次間に有意差有り *p<0.05 a, b, c:同じ行の異なるアルファベット間で多重比較(Tukey)により有意差有り *p<0.05残食率については、個数分配する飲用牛乳や魚介類が 徐々に減少した。その理由は、「給食指導の標準化マニュ アル」に、「アレルギー以外の児童には、飲用牛乳や魚 介類の個数分配するものを必ず 1 人分配膳すること」を 明記したため、最初はこれらを苦手とする児童の残食が 目立った。飲用牛乳の 2015 年度の残食平均値 1.6%は、 2014 年度の平均値 1.3%より増加したが、これは、2015 年度入学の 1 年生に牛乳嫌いが多かったことが影響して いる。しかし、指導を継続すると次第に飲めるようにな り、2016 年度には 1.3%に下がった。残食率を下げよう とするあまり、ある料理が好きな児童には大盛り、嫌い な児童には配らない、または小盛りにし、好きな児童が 必要量より多く牛乳を飲んだり魚を食べたりすることを 担任が容認すれば、残食率は下がる。しかし、それでは、 一人ひとりの成長に必要な栄養摂取を行う学校給食とし て本末転倒の結果となる。肥満とるい痩の二重負荷の原 因にもなり得る。 本研究の限界としては、都市圏の 1 校の調査であるこ と、教室での配膳は児童が実施し、はかりを使用せず目 分量で行ったため、重量配膳の正確性に欠けることが挙 げられる。また、栄養教諭の経験年数や学校環境の違い 等で、全国の栄養教諭配置校全てに当てはまるものでは ない。今後はより多くの栄養教諭の食育サポートを調査 し、栄養教諭の全校配置が進むことを願っている。 本 研究の課 題として、学 年別の給 食 配 缶 量を1年生 80%、2 年生 90%、3 年生 95%、4 年生 105%、5 年生 110%、 6 年生 120%としたが、それが適切であるかの検証をし ていなかった。今後、推定エネルギー必要量や身体活動 レベルをより適正に活用する方法を考え、さらに望まし い配缶量を検証していくことが必要だと考える。また、 担任別残食率調査の対象は、重量単位で配膳する料理と し、個数分配する料理は除外していた。個数分配する飲 用牛乳や果実類は、本研究の「全校残食率記録簿」より、 行事や研究授業等の忙しい日に残食率が増えていた。こ れは、給食時間を十分に確保できないことが問題として 考えられるため、個数分配する料理も今後調査し、担任 への食育サポート方法を考えていきたい。
Ⅴ.結論
食育推進の中核となる栄養教諭が、担任に食育サポーⅣ.考察
2017 年に文部科学省から『栄養教諭を中核としたこれ からの学校の食育』が公表された20 )。栄養教諭を中核と する食育推進は、指定を受けたスーパー食育スクール ( SSS )22 )を中心に広がっているが、食育推進の指定を 受けていない学校では、担任の行う食育が推進しにく い10 )。しかし、指定を受けていない学校でも栄養教諭 が担任に食育サポートを行うことにより、担任の食育に 対する指導意欲が向上し、食に関する指導実践担任数が 増加し、児童の給食残食率は減少していった。 2005年に『食育基本法』が制定されたが、教員養成大学 の授業で、学生に食育方法を指導している大学は少なく、 学生の食育に関する知識も豊かでないと報告されている7)。 また、教員採用後の初任者研修での食育研修も、極めて 希薄であると報告されている9)。このような学生が、栄養 教諭から食育サポートを受け、食育の教育的価値を理解 し、それが児童の給食残食量に影響したと考えられる。 児童の楽しい食事は「食事の内容」、つまり、食品や 料理の好き嫌いの影響が大きいとされていること23 )や、 貧困基準以下の児童は、魚介類や果物類、野菜類が不足 がちという報告4 )から、成長期の児童には「楽しい食事 =好きな食品や料理を食べる」より、まず「健康」を考え、 家庭で不足がちなビタミン・ミネラル・食物繊維24 )を 給食でバランス良く摂取すること等、学校給食の意義25 ) を理解した上で指導にあたることが重要であると考える。 食育サポートにおいて、食事改善の実行にも影響を及 ぼすセルフ・エフィカシー(自己効力感)26 ),27 )を高める には、給食を「全部食べられるか」よりも「苦手なもので も食べてみよう」、「一口でも多く食べられるように頑張 ろう」と思えることが重要だと考えている。本研究の食 育サポートでは、食に関した行動が少しでも改善できた 際に、行動変容が継続するよう「褒める指導」を中心に 行った。また、本研究校は学級カリキュラムを組んでお り、生活科や総合的な学習の授業テーマが学級ごとに異 なるため、生活科や総合的な学習で「食」や「栄養」をテー マとしている学級へのサポート回数が多くなっていた。 1 年生の給食指導も、給食中の食事の課題が他学年より 多いため、サポート回数が多くなっていた。このような 理由で全ての学級で同回数のサポートが行われていない。 PRACTICE REPORT育学会誌, 25, 12-20(2017) 14)沖本久恵,川人潤子,北林佳織:小学校における食育推進に関する栄養 教諭と他教諭の関係性―広島県内の食育推進校における調査から―, 比 治山大学紀要, 24, 239-248(2018) 15)環境省:学校給食から発生する食品ロス等の状況に関する調査結果につ いて(お知らせ), https://www.env.go.jp/press/100941.html(2018年9月 15日) 16)木口智美, 石原由香, 多田由紀, 他:小学校給食における喫食時間と残食 率の関連性の検討, 日本栄養士会雑誌, 55, 415-422(2012) 17)外山未來, 安部景奈, 赤松利恵:中学校給食の食べ残しに関連する要因 の検討, 栄養学雑誌, 71, 350-356(2013) 18) 安部景奈, 赤松利恵:小学校における給食の食べ残しに関連する要因の 検討, 栄養学雑誌, 69, 75- 81(2011) 19)文部科学省:学習指導要領, 第1節、総論、各教科等における食に関 する指導の展開, 74-76(2019) 20) 文部科学省:栄養教諭を中核としたこれからの学校の食育(平成29年3 月), https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/1385699.htm (2020年3月27日) 21)文部科学省:学校給食摂取基準(2008) 22)文部科学省:平成28年度スーパー食育スクール事業の内容について, https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/1353368.htm (2020年3月27日) 23)半田彩実, 細江容子:中学生時期の食事状況が生活充実感に及ぼす影響 ―日本と中国山東省の大学生の比較を通して―, 日本食生活学会誌, 25, 105-114(2014) 24)野末みほ, Jun Kyungyul, 石原洋子, 他:小学5年生の学校給食のある日 とない日の食事摂取量と食事区分別の比較, 栄養学雑誌, 68, 298-308 (2010) 25)文部科学省:学校給食法, 第二条, 学校給食の目標(2008年6月18日法 律第73号), https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_ search/lsg0500/detail?lawId=329AC0000000160(2020年3月27日) 26) 赤松利恵:「栄養」教育から「食行動」教育へ―体重管理における誘惑場 面の対策に関する基礎と実践的研究―, 行動医学研究, 21, 63-68 (2015)
27) Vereecken CA, Damme WV, Maes L:Measuring attitudes, self-efficacy, and social and environmental influences on fruit and vegetable consumption of 11- and 12-year-old children:reliability and validity,Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics, 105, 257– 261(2005) 本研究にご理解ご協力をいただいた学校長をはじめと する担任の先生方、調理スタッフの皆さんに感謝申し上 げる。
利益相反
利益相反に相当する事項はない。文献
1) 総務省統計局:家計調査年報(家計収支編)2018年(平成30年), https:// www.stat.go.jp/data/kakei/2018np/index.html(2020年3月27日) 2)野口潤子:現代日本における食の環境と食卓の変化―子どもと家族に焦 点を当てて, 佛教大学大学院紀要, 社会学研究科篇, 38, 37-54(2010) 3)足立己幸:共食がなぜ注目されているか―40年間の共食・孤食研究と実 践から, 名古屋学芸大学健康・栄養研究所年報, 6, 43-56(2014) 4)硲野佐也香, 中西明美, 野末みほ, 他:世帯の経済状態と子どもの食生活 との関連に関する研究, 栄養学雑誌, 75, 19-28(2017) 5)株式会社リクルートマネジメントソリューションズ:平成18年度文部科 学省委嘱調査「教員意識調査」「保護者意識調査」報告書<抜粋版>, https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyuyo/07061801/002.pdf (2020年3月27日) 6)長崎県体育保健課:学校における現代的な健康課題解決支援事業,学校給 食の手引き第1章第1節学校給食の意義と役割, https://www.pref.naga saki.jp/bunrui/kanko-kyoiku-bunka/gakkokyoiku/kenko/(2018年9 月9日) 7)鈴木洋子:教員養成課程における学校給食に関する指導の必要性―教員 志望学生及び小学校教員の給食指導に対する意識からの検討―, 奈良教育 大学紀要, 64, 155-159(2015) 8)金子俊, 丸井英二:教員志望学生の食育知識の実態(Ⅰ)―野菜と魚類の 識名調査結果―『教育学部紀要』文教大学教育学部, 41, 43-51(2007) 9)鈴木洋子:小学校初任者研修の手引き等における学校給食・給食指導の 扱い, 奈良教育大学次世代教員養成センター研究紀要, 4, 223-227(2018) 10)文部科学省:教員養成部会栄養教諭免許制度の在り方に関するワーキ ン グ グ ル ー プ( 第7回 )議 事 要 旨, http://www.mext.go.jp/b_menu/ shingi/chukyo/chukyo3/007/gijiroku/1212772.htm(2019年5月4日 )Abstract
The Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT) issued the "Dietary Education in Fu-ture Schools with Diet and Nutrition Teachers as the Core" in March 2017, promoting dietary education nation-wide. The purpose of this study was to examine the effects of dietary education support provided by nutrition teachers to homeroom teachers. The three years survey was conducted from 2014 with approximately 600 ele-mentary school children and 18 general class teachers (hereafter referred to as "homeroom teachers") on items related to the record books on dietary education created by nutrition teachers at work. The number of home-room teachers who were willing to engage in dietary education increased significantly from 3 (16.7%) in 2015 to 11 (61.1%) in 2016 (p<0.01). Among the 12 homeroom teachers who stayed in the same school for the three years, the number of them who applied dietary teaching in their classes increased significantly from 2 (16.7%)
in 2014 to 12 (100%) in 2016 (p<0.001). The number of the same homeroom teachers with less than 2% lefto-ver food in the classroom increased significantly from 1 (8.3%) in FY2014 to 11 (91.7%) in FY2016 (p<0.001). It was found that nutrition teachers provided dietary education support to homeroom teachers, which increased the number of homeroom teachers who were willing to provide dietary education and also who practiced die-tary teaching at school, as well as the decreasing rates of the school lunch leftover.
Keywords:nutrition teacher, homeroom teacher, collaboration, school lunch, leftover