二肢強制選択課題における視線手がかり効果
Gaze cueing effect in two-alternative forced choice task
○満田 隆、田中 晴哉 Takashi Mitsuda and Hareruya Tanaka
(立命館大学情報理工学部)
key words:視線手がかり、好意度、事前手がかり; gaze cueing, preference, precueing
他者が視線を向けた対象の好意度は他者が目を逸らした対 象の好意度よりも高くなることが知られている(Bayliss et al., 2006)。しかし、近年、この効果の大きさは小さく(Tipples and Pecchinenda, 2018)、矢印が対象を向いた場合でも視線と 同様に好意度が変化することが報告されている(Mitsuda, Otani, and Sugimoto, 2019)。これらの研究報告は、他者視線 と1つの評価対象が同時に提示された後で、対象の好意度を実 験参加者が回答する実験に基づいている。一方、筆者はこれま で、他者視線を挟むように二つの対象を左右に並べて提示し、 二者択一で選好を行う実験では比較的大きな効果を観測して きた。これらの研究間の相違を鑑みると、二肢強制選択の選好 課題で観測されたバイアスは、好意度とは関わりなく生じる選 択のバイアスであった可能性がある。 そこで本研究では、二肢強制選択課題における他者視線の影 響の大きさを、選好課題、選嫌課題、客観的課題で比較した。 他者視線が好意度と関わりなく選択にバイアスを生じさせる のであれば、これらの課題間でバイアスの大きさに差は生じな いはずである。また、本研究では実験参加者の視線の動きを計 測し、視線の向きと選択の関係を調べた。 方法 実験参加者 男子大学生18名 実験装置 24インチの液晶ディスプレイにPsychopy3のプログ ラムを用いて画像を表示した。 刺激 CG顔画像生成ソフトFaceGenで作成した魅力的な東アジ ア人女性の顔画像(H8.4×V8.4 deg)を他者視線刺激として用 いた。評価対象には、8つのカテゴリ(花、海、砂漠、山、青空、 川、田園、夕日)の風景画像160枚と、閉曲線の無意味図形80枚 を用いた。いずれの画像も同じ大きさ(H8.4×V8.4 deg)で、他 者視線を挟むように異なる2枚の画像を左右に並べて提示した。 風景画像は、2枚の画像のうち好きなほうを選択する選好課題 と、嫌いなほうを選択する選嫌課題に使用した。無意味画像は 閉曲線内の面積が大きいほうを選択する客観課題に使用した。 図1に実験で提示した画像の例を示す。 図1 実験で提示した画面の例(夕日) 手続き 画面中央に十字型の注視マーク(H1.6×V1.6 deg) を1000 ms提示したあと、正面を向いた顔画像を1000 ms提示し、 その後、視線が左右のいずれかに向いた顔画像の両脇に2枚の ターゲット画像を提示した。参加者は左右いずれかの画像を選 択して、選択結果をキーボードで回答した。顔画像とターゲッ ト画像はキーが押されるまで表示された。 選好課題、選嫌課題、客観課題はそれぞれ40試行ずつ、参加 者毎にランダムな順序で行った。各風景画像は選好課題と選嫌 課題のいずれかで1回だけ提示され、各無意味図形は客観課題 で1回だけ提示された。視線の向きと画像の組み合わせは被験 者間でカウンターバランスをとった。 結果 各課題で他者視線が向いた方向の画像を選択した確率を図 2に示す。選好課題では、視線方向の画像がチャンスレベル (0.5)よりも有意に高く選択された(p =.014)。しかし、仮説と 異なり、選嫌課題と客観課題では有意なバイアスは観測されな かった(選嫌; p =.66, 客観; p =.37)。また、他者視線が提示 された後、初めに視線方向の画像を見た割合は3つの課題でほ ぼ等しかったが(選好; .71, 選嫌; .70, 客観; .69)、初めに 見た画像を選択した割合は選好課題のみチャンスレベルより 有意に高かった(選好;M=.57, p =.03,選嫌;M=.54, p =.24, 客 観; M=.50, p =.98)。 図2 視線方向画像の選択率 エラーバーは標準誤差を示す。 考察 選嫌課題では負のバイアスが見られなかったことから、他者 視線が画像の好意度に与える影響には課題依存性があると考 えられる。 参考文献
Bayliss, A. P., Paul, M. A., Cannon, P. R., & Tipper, S. P. (2006). Gaze cuing and affective judgments of objects: I like what you look at.
Psychonomic Bulletin & Review.
Tipples, J. & Pecchinenda, A. (2018). A closer look at the size of the gaze-liking effect, Advanced online publication. Cognition & Emotion. Mitsuda, T., Otani, M., & Sugimoto, S. (2019). Gender and Individual Differences in Cueing Effects: Visuospatial Attention and Object Likability.
Attention, Perception, & Psychophysics.
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日本認知心理学会第18回大会© 日本認知心理学会