〔論 文〕
コロナ禍における特別活動指導の
意識変化についての考察
―公立小学校教員インタビュー調査から―
鶴 田 麻也美
Changes in Awareness of the Meaning of Tokkatsu (Extra-curricular Activities) under the COVID-19 Pandemic: An Analysis of Interviews with Public Elementary School Teachers
Mayami TSURUTA This study was conducted to analyze the changes of awareness of elementary school teachers with regard to teaching Tokkatsu under the COVID-19 pandemic. Data from interviews with four teachers conducted in September, 2020, were analyzed using a modified grounded theory approach (M-GTA). The analysis lead to the creation of 43 concepts, 19 subcategories, and 7 categories. The interviews revealed that during the COVID-19 pandemic, elementary school teachers gave priority to subject instruction because they were requested to guarantee learning. Tokkatsu, which focuses on areas such as collectiveness, sociality, experience, independence, practicality, and autonomy was, consequently, deemphasized. But reviewing their experience teaching during the pandemic, teachers felt the need for Tokkatsu, and they are implementing a new teaching method suitable for the current situation.
Key words: Tokkatsu (特別活動), COVID-19 pandemic (コロナ禍), teacher’s awareness of guidance (教員 の指導意識) I はじめに 令和 2 年 2 月 27 日,新型コロナウイルス( COVID-19, 以下,新型コロナ)感染症拡大により,安倍晋三首 相(当時)から全国の小中学校と高校,特別支援学 校(以下,学校)に臨時休業の要請が下った。あく まで「要請」であり,公立学校においては各地方自 治体の長にその判断は任されたが,3 月 4 日の時点 で全国 99%の小中学校で休業措置となった1(これ 以降,11 月現在に至る新型コロナ感染症対策を求められ ている状況下を「コロナ禍」と呼ぶ)。 小中学校では,3 月末の修業に向け学級経営はま とめの時期に入り,学校生活を振り返り充実した時 間を過ごすはずであった。しかし,首相の要請に応 える形で,全国で教育活動が一斉に停止するという 前代未聞の事態を迎えることとなった。こうして小 学校では予定されていた 6 年生を送る会も,卒業遠 足も,学校においては大きな節目の式である卒業式 すら中止や変更を余儀なくされていった。それでも, この時点では多くの学校関係者が,4 月になれば学 校は再開し,新学期が迎えられると考えていた。し かし,期待に反して 4 月 6 日には緊急事態宣言が発 令され,休業中にもかかわらず新年度が始まるとい う異常事態を迎えることとなった。 休業措置の始まった 2 月末から学校再開の 5 月末 (東京都の場合)までの間,例年であれば多くの学校 で予定されていた,卒業式,入学式,始業式,運動 会等は中止や無期限延期となった。これらは,学校 教育を支える節目の学校行事であるとともに,児童 生徒の成長を確認できる大切な教育活動でもあった。 また,緊急事態宣言による休業措置が始まった 4 月 上旬は学級開きの時期である。児童生徒は新しい仲 間や担任教員と新たな信頼関係を築き,自分の居場 所を作る学級経営上の大切な期間でもある。各学校 が混乱を極めたことは容易に想像できる。 授業が再開された現在の様子を岩瀬(2020)は, 学習内容を履修させることに注力している学校現場 学苑・人間社会学部紀要 No. 964 63~76(2021・2)
を危惧し,「授業時数確保のための長期休業期間の 短縮,行事削減,土曜授業や 7 時間授業の実施,教 科書の内容を授業と家庭学習に分けて家に持ち帰ら せるなど「通常」に戻るための知恵を絞っているよ うにみえる」と述べている。また,田村(2020)は 課題に追われる児童生徒の受け身の学習の様子を 「言わなければやらないという,きわめて受動的な姿 勢を育ててしまっている可能がある。」と述べている2。 ところで,平成 28 年度版学習指導要領における 特別活動の目標の中には,あえて「集団決定」を 「合意形成」に書き換え,多様性や違いを超える話 合いが求められている。これは,学級会などで,単 に賛否を述べ合いその数で決定するような安易な集 団決定になっている場合が少なくないためである。 また,これまでも特別活動では「自己決定」に重き を置いて指導を行ってきたが,内発的動機付けに基 づく「自己決定」にならない場合が多くみられてい た。そこから,改訂により学級活動の「(2)日常生 活や学習への適応及び健康安全」「(3)一人一人の キャリア形成と自己実現」において,児童生徒が自 己の課題について,自分で解決方法を決められるよ う求められている3。現在,コロナ禍において,求 められるような特別活動の指導が行われているとは 考えにくい。教育現場では,教科学習の指導に追わ れ,学級活動,児童会・生徒会活動,クラブ活動,学 校行事を通して指導を行う特別活動を軽視する傾向 が生まれ,特別活動で育てる資質・能力が身に付か ないことを不安視しているのではないかと推測した。 コロナ禍における教育課題を述べている論文や著 書は徐々に発表されているが,特別活動について書 かれているものは見つからない。 以上を踏まえ,本研究の目的を,コロナ禍の令和 2 年 6 月の学校再開後から今日(インタビュー当日で ある 9 月下旬)までの間に,小学校における特別活 動の指導に関して教員にどのような意識が生まれ, 変化していったのかについて,そのプロセスを明ら かにすることとする。 II 問題の背景 本章では,新型コロナ感染症対策により,これま でと異なる対応を国から求められている小学校の現 状を取り上げる。このことは,現在特別活動の指導 について影響を与えている大きな要因だと考える。 3 月の感染症拡大による全国一斉休業要請から 9 月 現在に至る文部科学省初等中等教育局(以下,文科 省)の調査や通知,依頼等から,コロナ禍で学校教 育に求められた事柄について概観する。 1 子どもの居場所としての役割 (休業要請から 6 月の学校再開まで) 文科省・厚労省「新型コロナウイルス感染症防止 のための小学校等の臨時休業に関連した放課後児童 クラブ等の活用による子どもの居場所の確保につい て(依頼)4」によると,放課後児童クラブ等や学校 での低学年児童の居場所確保が要請されたことがわ かる。また,「新型コロナウイルス感染症対策のた めの小学校等の臨時休業に関連した子供の居場所の 確保等に関する各自治体の取組状況等について5」 によると,令和 2 年 3 月 10 日時点で子どもの居場所 として校内を開放した割合は全国で 63%を超えて いる。子ども達に対応したのはその学校の教職員で あり,利用した児童生徒は年齢が低いほど多かった。 2 在宅での学習指導 (休業要請から 6 月の学校再開まで) 文科省から通知された「新型コロナウイルス感染 症対策のための臨時休業等に伴い学校に登校できな い児童生徒の学習指導について(通知)6」では, 「臨時休業期間中における児童生徒に対する学習指 導については,児童生徒が自宅等にいる状況であっ ても,規則正しい生活習慣を身に付け学習を継続す るとともに,学校の再開後も見据え,学校と児童生 徒との関係を継続することができるよう,可能な限 りの措置をとること」が重要とされ,「家庭学習と, 登校日の設定や家庭訪問の実施,電話の活用等を通 じた教師による学習指導や学習状況の把握の組合せ により,児童生徒の学習を支援するための必要な措 置を講じること」と伝えられた。これにより,同省 の取り組み状況の調査7によると,日本全国のすべ ての学校で教科書や学校で作ったプリントを用いた 在宅学習が進められたことがわかった。また,休業 期間中は電話やメール等で健康状態の確認や進捗状
況を確認したり,テレビ会議システムなどの ICT を用いて授業を行ったり,登校日を設定し時差登校 で授業を行った学校もみられた。 3 三密を避ける指導の徹底 (学校再開の 6 月から 9 月現在) 同省から出された「新型コロナウイルス感染症に 対応した小学校,中学校,高等学校及び特別支援学 校等における教育活動の実施等に関する Q & A8」 によると,「3 つの条件(換気の悪い密閉空間,多くの 人が密集,近距離での会話や発声)が同時に重なる場 を避けることはもちろんのこと,1 つ 1 つの条件が 発生しないよう配慮することが必要」とあり,この 通知を根拠に「三密を避ける指導」が行われるよう になった。児童生徒にマスクの着用を求める指導や, 換気,消毒作業の徹底も,教員の役割となっていった。 4 特定の活動の中止または禁止 (学校再開の 6 月から 9 月現在) 前節の同省同通知により 5 月 21 日時点で「◦音 楽科における狭い空間や密閉状態での歌唱指導や身 体の接触を伴う活動/◦家庭科,技術・家庭科にお ける調理等の実習/◦体育科,保健体育科における 児童生徒が密集する運動や児童生徒が近距離で組み 合ったり接触したりする場面が多い運動/◦児童生 徒が密集して長時間活動するグループ学習/◦運動 会や文化祭,学習発表会,修学旅行など児童生徒が 密集して長時間活動する学校行事」は「当分行わない こと」とした。しかし,これらの活動は,同省 6 月 5 日 付「別添 2 新型コロナウイルス感染症対策に伴う児 童生徒の「学びの保障」総合対策パッケージ9」(以 下,「「学びの保障」総合対策パッケージ」と略す)内の中 学校 3 年生の例示によって,十分な対策を行うこと を条件に規制が緩和されたと認識できるものもある。 5 心のケア (臨時休業中から 9 月現在) 「新型コロナウイルス感染症に対応した小学校, 中学校,高等学校及び特別支援学校等における教育 活動の実施等に関する Q & A」ならびに「別添 1 新型コロナウイルス感染症に対応した持続的な学校 運営のためのガイドライン9」では,休業中そして, 学校再開後についても児童生徒及びその保護者と連 絡を密にし,児童生徒の心身の健康状況を把握する こと,新型コロナウイルス感染症に起因する様々な 悩みやストレス等に関し,必要に応じて養護教諭や スクールカウンセラー等による支援を行うことを教 員に求めている。また,児童虐待のリスクも踏まえ, 休業中であっても電話等で定期的に(概ね 2 週間に 1 回以上)児童生徒の状況を把握し,分散登校を行う 場合であっても,登校日の設定等についてきめ細か な対応のための工夫を行うよう求めている。 6 差別や偏見への指導 (令和 2 年 4 月から 9 月現在) 差別や偏見の防止については,同省が「新型コロ ナウイルス感染症の感染者等に対する偏見や差別の 防止等の徹底について(通知)10」を 4 月 16 日付で 通知していたが,感染者や医療従事者への差別や偏 見に関する事件が相次いだため,8 月,萩生田光一 文部科学大臣(当時)は緊急メッセージを出した。 大臣のメッセージは,児童生徒のみならず,教職員, 保護者・地域に向けられていた。教職員に向けたメ ッセージ11の中で,児童生徒等の指導に当たって例 を示している。感染予防のために生活のリズムを整 えること,三密を避けること,正確な情報に基づい た行動をとること,感染者,濃厚接触者やその家族 に対する差別や偏見を行わないこと,高齢者や基礎 疾患がある方に接するときは注意をすること,医療 従事者への敬意や感謝の気持ちをもつこと。これら を指導することを求めた。 7 児童生徒の学習の遅れに伴う学習保障 (学校再開の 6 月から 9 月現在) 同省は前出の「「学びの保障」総合対策パッケー ジ」の中で,基本的な考えとして,①臨時休業中も, 学びを止めない。②速やかに,できるところから学 校での学びを再開する。③あらゆる手段を活用し, 学びを取り戻す。④柔軟な対応の備えにより,学校 ならではの学びを最大限確保する。以上 4 点を挙げ ている。このことが,時数確保のための夏季休業期 間短縮と土曜授業の実施,学校行事の重点化や準備 時間の縮減等へとつながっていった。 8 新学習指導要領の実施 (学校再開の 6 月から 9 月現在) 「新型コロナウイルス感染対策に伴う児童生徒の
「学びの保障」のための学習指導について12」(6 月 9 日付)では,教育課程を見直し新学習指導要領の趣 旨を踏まえて,教育課程を編成することを求めてい る。留意点として,「何ができるようになるか」(育 成を目指す資質・能力)を意識した上で,「何を学ぶ か」(指導すべき内容)を明確化し,「どのように学 ぶか」(指導方法)を柔軟に見直すこと。知・徳・体 にわたる「生きる力」を子どもたちに育むため,資 質・能力の三つの柱をバランスよく育成すること。 「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた指導 方法の工夫・改善を図ること。地域や家庭の協力も 得て学習効果を最大化できるよう,カリキュラム・ マネジメントを行うこととした。 これらを踏まえ,令和 2 年 3 月~5 月の休業中か ら 9 月現在に至るまで以下のようなことが通常の学 校教育の学習指導,生徒指導の他に,学校教育に求 められていたことがわかる。 ◦ 学校が子どもたちの精神的,物理的な居場所で あること ◦ 児童生徒の生活リズムについて指導を行うこと ◦ 家庭学習であっても,学習指導や学習状況の把 握により,児童生徒の学習を適切に支援する こと ◦ 三密を避ける指導とマスク着用の徹底,衛生管 理を行うこと ◦ 特定の教育活動の禁止や変更が行われたこと ◦ 専門スタッフの手を借りながらストレスからの 心のケアを行うこと ◦ 差別や偏見を防止するための指導を行うこと ◦ 休業期間中の学習を補うための保障を行うこと その際には協働的な学びを実現すること ◦ 新学習指導要領の実施のためのカリキュラム・ マネジメントを行うこと このような要請がある中,特別活動はどのように 実践されているのであろうか。 特別活動は,学級・学校文化を創造する活動であ り,集団性,社会性,体験性,自主性,実践性,自 治制などの特質を有している。これらの特質によっ て児童生徒の人間形成が行われるのが本来の特別活 動の指導である。上記の内容から推測すると,居場 所としての学校は,物理的な空間の共有だけでなく 学級での所属感が重要であるため学級文化の創造と 関連が深く,差別や偏見を防止する指導,衛生指導 は「学級活動(2)日常の生活や学習への適応と自 己の成長及び健康安全13」(2019 年度版)で取り扱う 内容となる。また特別活動は協働的な学びが生み出 される土壌であるため,これらの要請は特別活動の 領域内で行われることに矛盾はない。しかし,一方 で「三密を避ける指導」の行き過ぎは「話合い活 動」の阻害要因にもなり得るし,差別や偏見を生み やすい環境をつくりだす可能性がある。また,学校 行事の中止や内容変更は学校行事で育てる資質・能 力が身に付かず,特別活動の軽視につながっていく 危険があると推測した。 以上のことから,コロナ禍で学校教育の求められ ていたものは,子どもの居場所づくりやいかなる状 況下でも学びを保障すること,三密を避ける指導, 差別や偏見の指導,心のケア,新学習指導要領の実 施であったと言える。 コロナ禍における特別活動の指導は,子ども達に 変化の激しい時代を生き抜く資質や能力を育てる重 要なものであると考える。しかし,学校現場では 「持続的な学校運営のためのガイドライン」や「「学 びの保障」総合対策パッケージ」を受け,「学びを 止めない」ための教科指導に重点が置かれており, 三密を避ける意味から集団性,社会性,体験性,自 主性,実践性,自治制を重視する特別活動の実施は 困難だと感じる状況になっていると推測される。 そこで本研究では,一斉休業が明けた東京都内の 令和 2 年 6 月初旬から 9 月下旬までの約 3 か月間の 小学校教員の行動や思考を研究対象とし,特別活動 の指導の視点から行動と思考のプロセスを分析する。 この分析は,今後繰り返されると予想される休業措 置後の学校再開時において,特別活動の早期実施を 提案する根拠となると考える。
III 研究の方法 1 対象 対象は,東京都の公立小学校教員 4 名である。全 員が特別活動の主任経験があり,2019 年度は高学 年の担任をしている。 2 データの収集方法と質問事項 2020 年 9 月 13 日から 19 日に,半構造化インタ ビューを行った。データ収集は,個別にテレビ会議 システム(Zoom)や学校内の会議室で落ち着いた 環境を整え行った。インタビューガイドに基づき, 緊急事態宣言による一斉休業後の「特別活動の指導 内容の変化」「先生方の特別活動への意識」「子ども の変化や影響」について尋ねた。インタビューの内 容は,対象者の許可を得て IC レコーダーに録音し, 逐語録として文書に起こした。時間は 1 名あたり概 ね 1 時間であった。 3 研究による倫理的配慮 対象者に文書ならびに口頭で研究の目的,方法, 研究の参加並びに中断における個人の自由意志の尊 重,プライバシーの保持,データの使用範囲につい て説明をし,口頭,文書での承諾を得たうえで実施 した。逐語録及び研究結果については,後日対象者 に内容の確認を依頼した。 4 分析方法 本研究では,コロナ禍における特別活動の指導へ の意識変化のプロセスを分析するため,実証的・帰 納的研究法である修正版グラウンデッド・セオリ ー・ア プ ロ ー チ14(以 下,M-GTA)を 用 い た。 M-GTA はデータに密着した分析から独自の概念を 創りだす分析法であり,社会的相互作用に関係し人 間行動の説明と予測することに優れたプロセス性の ある理論を生成する質的研究方法である。 分析にあたっては,4 名へのインタビュー中,3 名のデータで飽和化した。 5 結果 M-GTA の分析により,43 の概念と 18 のサブカ テゴリー,8 のカテゴリーを生成した。概念同士や カテゴリー同士の関係を検討しながら,「コロナ禍 の学校再開時における特別活動の指導に関わる思考 プロセス」を結果図として図 1 に表し,ストーリー ラインを記述した。生成された概念,(サブカテゴ リー),【カテゴリー】,明らかになったプロセス で 示した。 コロナ禍の学校再開時における特別活動の指導に 関わる思考プロセスについて述べていく。 まず,どのような状況下でも教員が学級経営で 【コロナ禍でも変わらずに大切にしている教育理念】 があった。それは(子ども同士の関わりを重視), 人権や主体性といった学級経営の基本となる(普遍 的なテーマ)を大切にしており,どのような時も (児童の生活を守る)ことに注力しているというこ とであった。 「I 緊急事態宣言解除・分散登校」の時期につい ては,【教科指導を進めたい使命感と葛藤】が生ま れたことがわかる。学校全体に(教科指導優先の空 気)があり,取りこぼされていく児童を認識しつつ, それでも(教科指導を進める葛藤)があったと思わ れる。加えて(特別活動の軽視)に気付きながらも, 学級活動を考える余裕がない,話合い活動や係活動 は後回しになる状況に追い込まれていった可能性が 考えられる。ここには,文科省からの通達「学びの 保障」のもと 教科指導が最優先 であると捉えた教 員の姿があったことが推測される。これは,学習の 遅れを危惧する【保護者の期待】とも一致する。 「II 通常授業開始~夏季休業期間」には,【特別 活動における対応の変化】の様子がみられる。(学 級活動は新型コロナ対策指導)となり三密を避ける 指導を含む衛生指導の徹底や喋らない給食指導に追 われたと推測される。しばらくすると感染対策のた め活動内容に(制約のかかるクラブ・委員会活動) が実施され,また(縦割り活動を見合わせる決断) もされたようであった。異なる学年が混ざり合うの は怖いという心情があり,縦割り活動はできなくて も仕方がないという雰囲気が生まれた可能性がある。 【保護者の期待】として感染防止の徹底もあげられ ていたことがわかる。このような背景から 感染を 恐れ教育活動が委縮 していったと考えられる。こ のころから【学校行事が実施できない不安】が教員 間で広がってきたようである。(文科省・教育委員
概念 ( )サブカテゴリ― 【 】カテゴリー は影響を及ぼす流れ 2020年コロナ禍の小学校再開時における 特別活動の指導に関わる思考プロセス 明らかになったプロセス 【教科指導を進めたい使命感と葛藤】 (子ども同士の関わりを重視) 友達との関わり 子どもが物理的な距離を縮めていくことを容認 (普遍的なテーマ) 主体性 人権意識 (子どもの生活を守る) 子どもたちのこれまでの生活リズムを守りたい 【ネットを介した新しいつながり】 教科指導が最優先 子ども同士の関わり を大切にしてほしい 【特別活動で身に付く資質・能力に期待】 【保護者の期待】 感染防止の徹底 (教科指導優先の空気) 未履修を防ぐために授業を前に進めたい (教科指導を進める葛藤) 学校行事を行いたい 取りこぼされる児童の存在 (特別活動の軽視) 特別活動の時数削減 学級活動を考える余裕がない (特別活動の必要感) 特別活動を行ってこなかった後悔 これから揺り戻しがくる不安 (新しい生活様式にあった特別活動の模索) 感染対策をして行うクラブ・委員会活動 新しいルールで行う異学年活動 (新しいつながり) ネットを通してつながりを求める子どもたち ゲームの中の暴言・暴力 ネット世界の指導のむずかしさ 【特別活動における対応の変化】 (学級活動は新型コロナ対策指導) 衛生指導の徹底 喋らない給食指導 (制約のかかるクラブ・委員会活動) 本来の活動はできない クラブ活動実施の悩み (縦割り活動を見合わせる決断) 異なる学年が混ざり合う怖さ 縦割り活動はできなくても仕方がないというあきらめ (縦割り活動で育つロールモデル) ロールモデル不在の不安 ロールモデルを育成する必要感 新しい生活様式での 特別活動の指導の展開 【学校行事が実施できない不安】 (文科省・教育委員会からの通達や指導) (戸惑う教員たち) 学級活動や教科指導で学校行事の補填 学校行事のねらいが見失われる焦燥感 変更に次ぐ変更 様々な制約 前年踏襲のこだわりが捨てられない 思考が停止する (安易な代替え案) 「追究」「協働」「対話」の困難 「人間関係形成」「社会参画」「自己実現」 に取り組めていない不安 (新指導要領実施上の課題) (児童に見られ始めた変化) 人間関係を調整する力がつかない 学校に通う価値を見い出せない 何事にも受け身 承認欲求の高まり 6月から9月現在までの指導の省察 【コロナ禍でも変わらずに大切にしている教育理念】 これまでと同質の学級活動の実施 【現れ始めた課題】 学習の取り戻し 感 染 を 恐 れ 活 動 が 委 縮 Ⅲ 夏 季 休 業 期 間 後 〜 9 月 下 旬 Ⅱ 通 常 授 業 開 始 〜 夏 季 休 業 期 間 Ⅰ 緊 急 事 態 宣 言 解 除 ・ 分 散 登 校 図 1 2020 年コロナ禍の小学校再開時における特別活動の指導に関わる思考プロセス(筆者作成)
表 1 【教科指導を進めたい使命感と葛藤】のサブカテゴリ―,概念,概念の定義,バリエーション サブカテゴリー 概 念 概念の定義 バリエーション(代表的なもの) 教科指導優先の 空気 教科の未履修を防ぐために授業 を前に進めたい 教科指導を優先 する教員の様子 学習に関しては未履修に対して,物凄く敏感です。市教育委員会もそうですし,文科省も声を上げているので,先生方も かなり意識をして,詰め込みじゃないですけれども,今年度 中に全ての授業学習内容が終わるように取り組んでいます。 教科指導を進め る葛藤 学校行事を行いたい 学校行事を行うために授業時数 に読み替えを考 える学校の様子 行事時数で落としているものは,ほとんどありません。落と しているのは,保健関係 避難訓練,あと始業式・終業式く らい。10 月に実施する遠足は生活科見学として生活科で読 み替える。社会科見学も社会で全部読み替えていいというこ とになった。そういう意味での目減りはあるのだろうなと思 うが,多分教科で納めてしまうのだと思います。 取りこぼされる 児童の存在 教科指導優先で取りこぼしが出 る心配をしてい る 多分 4,5 年生が大変だと思います。6 年生は教える内容って 実はそんなに多くない。指導内容が多い 4 年 5 年があっぷあ っぷしています,でもそれが時数がどうこうだからって話で はない。私も,どうやって進めていけるか分からない。4,5 年生は,ただきついのだろうなと。わっーって進めたがる人 もいるのだけど,それをしたら大変だよって,ちょっと釘を 刺しているんだけど分かってくれているのかどうか分からな いです。 会からの通達や指導)によって,学校行事は変更に 次ぐ変更があり,できたとしても制約が多く従来通 りの実施が困難だと判断された可能性がある。それ により多くの(戸惑う教員たち)が出てきたようだ。 先の見通しを立てようにも思考が停止するように感 じたり,前年踏襲へのこだわりを捨てられない教員 たちから(安易な代替え案)が起案されたり,その 内容は,学級活動や教科指導で学校行事を補填する もので,学校行事のねらいが見失われていく焦燥感 を感じていたと推察される。 「II 通常授業開始~夏季休業期間」「III 夏季休 業期間後~9 月現在」にかけて,児童の間に【ネッ トを介した新しいつながり】がみられた様子がわか る。児童はネットゲームでつながり,ゲームの中で 暴言暴力が振るわれていたと思われ,教員たちはネ ット世界の指導の難しさを感じていたと思われる。 他にも,コロナ禍で【現れ始めた課題】に教員たち は気付き始めたと推測する。(新指導要領実施上の 課題)については,「追究」「協働」「対話」を取り 入れた活動が困難であることや特別活動の三つの柱 である「人間関係形成」「社会貢献」「自己実現」に 取り組めていない不安を感じていたようだ。学校に 通う価値を見い出せない児童が現れ始めたこと,児 童が何事にも受け身になっていること,児童の承認 欲求の高まりや児童に人間関係を調整する力が身に 付かないと教員は感じ,改めて通常授業が再開された 6 月から 9 月までの指導の省察 を行うことになった。 「III 夏季休業期間後~9 月下旬」に入り,教員 には【特別活動で身につく資質・能力に期待】する 心情が生まれてきたようだ。(新しい生活様式にあ った特別活動の模索)の中で,新しいルールで行う 異学年活動や感染症対策をして行う新しい内容のク ラブ・委員会活動,感染予防対策をしてこれまでと 同質の学級活動が実施されてきていることがわかる。 これらは児童の課題に気付き(特別活動の必要感) から生み出されていると考えられる。しかし,学校 行事や異学年活動が十分にできないため高学年を (ロールモデルとして育成できない・ロールモデル 不在)の不安は残り,教員の間では 新しい生活様 式での特別活動の指導の展開 を望む機運が生じた と推察する。 調査で明らかになった(図 1 参照)カテゴリーに ついて,サブカテゴリー,概念,概念の定義,概念 を生成したデータ(バリエーション)の代表例を以 下の表 1~5 に示す。
特別活動の軽視 特別活動の時数 削減 特別活動の指導時間が減ってい る現状 授業は時数の 8 割で良し。特活については曖昧になっていま す。8 割やらなくてもいいんじゃないかな? 学級活動の指導 を考える余裕が ない 新年度学級活動 についての学級 担任の考え 学級活動については話合い活動が主になりますが,それほど 時間が取れていません。喫緊としては,とにかく授業を前に 進めたいので,ゴールの授業が今年度中に終わるという,め どを立てたい。どうしてもそれ以外の教科については後回し になることが多いです。 表 2 【特別活動における対応の変化】のサブカテゴリー,概念,概念の定義,バリエーション サブカテゴリー 概 念 概念の定義 バリエーション(代表的なもの) 学級活動は新型 コロナ対策指導 衛生指導の徹底 衛生指導を徹底する教員 色々言われていることを,全部守らせようっていうのはやめています。とにかく手を洗えしか言ってない。でも本当にそ れだけは大事。必ず朝来たら手を洗って教室に入る。休み時 間も終わったら,戻ってきた後は手を洗う。図書室や音楽室 に行く前は基本的に手を洗う。いっぱい喋る(伝達)だけは 徹底しようと。そうじゃないと安全確保できないから。 喋らない給食指 導 給食指導で行っていること 手洗い,マスク,給食の時は喋らない。手袋をしている人しか食缶をさわれないとか,配り始めたら,喋らないとか。 制約のかかるク ラブ・委員会活 動 本来の委員会活 動はできない 委員会活動の実態 私,図書委員会担当なんですけど,図書室が利用できず,活動できない状況です。ふだんなら子どもたちがバーコードリ ーダーで本の貸し出しをしていたんですが,子どもたちにや らせられないということで,図書室にいる司書さんがやって くれています。 自由に借りにいけたのが,何曜日は何年生 という割り振りになっています。すべて図書室の司書さんが 対応しています。 クラブ活動実施 の悩み クラブ活動の実態 卓球クラブとかってラケットがたくさん入っているところから取っていくでしょ? 個人持ちの子はもってくるからいい けど,そうじゃない子はクラブのラケットをその子用にする と消毒する手間もないし。そんな感じのことはやっています。 共有はなるべくさせないように。 縦割り活動を見 合わせる決断 異なる学年が混ざり合う怖さ 縦割り活動をやめた理由 同学年以外の人とはできるだけ関わらないスタイルで,学校生活で行われている縦割り班活動についてもストップしてい ます。 縦割り活動はで きなくても仕方 がないというあ きらめ 活動の特性上活 動は無理と判断 やめました。特活のいろんなものをやめたと同時に。私(特活主任)が決断しました。 表 3 【学校行事が実施できない不安】のサブカテゴリー,概念,概念の定義,バリエーション サブカテゴリー 概 念 概念の定義 バリエーション(代表的なもの) 文科省・教育委 員会からの通達 や指導 変更に次ぐ変更 通達のたびに変 更になる学校 いろんなことが決定されていく中で,時数確保が一番大きなネックになってくるんですけれども,時数が確保できる,行 事も通常通りできそうだぞ,となった後で,今度はコロナに 対する対応,密になっちゃいけない,親を集めちゃいけない という通達で行事がどんどんなくなっていく状況でした。特 活に対してというよりも,いま学校では行事にどう取り組ん でいくのかっていうのは大きな課題ですけど,とにかくなく なっていくので,何かがどう変わろうと,(けっきょくは) 何もできなくなってきた,というのが実感です。
様々な制約 学校行事遂行の 配慮 コロナ対策を前提に考えなければならない。これから運動会があるんですけど,様々な制約が出てきていることや,4 年 生は臨海学校があるんですけど,それも中止になってしまっ たので,様々なことが変わってきています。 戸惑う教員たち 前年踏襲のこだ わりが捨てられ ない 前年踏襲が一番 良いという思い 「運動会ができていたら,6 年生のすごい演技を見せられたから,よかったんだろうな」とか,なくなったものの幻想を 追い続けちゃう人たちがいる。 思考が停止する 振り回される教 員の心情 学校行事に関しては,中止という決定がどういう形でなされたかによって先生たちの受け止め方が違って,中止になって 代替えの行事を考えましょうという風なスタイルなのか,中 止です,やりませんという決定なのかによって,全然違うと 思うんですが,中止ですと言われてやりませんという風にな った場合,多分多くの学校が,うちもそうですけれども,も うその行事については「なかったもの」というような認識で 先に進んでいってしまっているんです。 安易な代替え案 学級活動や教科 指導で学校行事 の補填 学校行事がなく なったことを補 おうとする学校 の姿 ここで行事が次々となくなっていっているので,管理職から も学級活動の充実をという話が出てきていて,学校全体とし ても行事に代わる何かを学級活動で補填できないかというよ うな流れになりつつあります。 学校行事のねら いが見失われる 焦燥感 「楽しみの創出」 ととらえられる 特別活動 行事がなくなったから,それを学級活動の時間でなんかでき ないかなって考えた時に,行事の目的から出発するんじゃな くて,「行事がなくなって子どもたちの楽しみがなくなった よね,じゃあ,お楽しみはどこでやるの? 学校楽しいなって どこで思わせるの? 学活の時間があるじゃん,学級活動で 何か楽しいことやろうよ,子どもたちもなんか楽しくなるん じゃないの」っていうところでまだ止まってんのかなって。 表 4 【現れ始めた課題】のサブカテゴリー,概念,概念の定義,バリエーション サブカテゴリー 概 念 概念の定義 バリエーション(代表的なもの) 新指導要領実施 上の課題 「追究」「協働」「対話」の困難 求められる活動が困難になって いる実情 国語とか何かの教科に限らずなんでしょうけど,学習の中で, 皆で何か追求する,考え合うこと,みんなで結論をみつける みたいな作業が奪われてしまっているのは間違いなくて,そ ういう細かいことで子どもたちが成長していたというのがよ く分かる。 「人間関係形成」 「社会参画」「自 己実現」に取り組 めていない不安 特別活動で育つ はずの力が育た ない不安 特別活動で本来育つはずであろう子どもたちの心とか気持ち とか,付くであろう力というのが全てなかったものにされる というか,育たないで終わってしまう,未履修のまま終わっ てしまうんじゃないかなっていうのはとても心配です。 児童に見られ始 めた変化 人間関係を調整する力がつかな い 未熟なままの人 間関係に留まる 子どもの姿 6 年生の彼らが幼いまま止まってしまった。自己中心的だっ たり低学年をさしおいてブランコに乗りたがったりするよう な幼い子どもたちが多い中で,ちょっとそういう成長がなく なったのはとっても残念。ものすごく痛い。 学校に通う価値 を見い出せない 学校に失望する子どもの姿 行事が早々に取りやめになることが決まって,あるお母さんが泣きながら「我が子が帰ってきて「これから半年何を励み に学校に行けばいいんだ」と言った」って。少しでも気持ち をあげてやりたいと思っていた行事が全部消えてしまった。 そういう意味でもやさぐれることが止められない。 何事にも受け身 主体性を失って いる子どもの姿 受け身。自分で考える,自分で工夫して自分で動くっていう特活が,本当にできない。ちょっとした話合い活動でもそう だけど,特活だったんですね。すごくそれを感じる。 承認欲求の高ま り 自信がもてない子どもの姿 自信がないから人に関わろうとしなかったり,攻撃したり勝手なことを言ってしまったり,自信があればもっと余裕をも って人と関われるんだろうなと思うし,自分でこうしたいと いう思いを伝えられるだろうし。それができないんだと思う。
表 5 【特別活動で身に付く資質・能力に期待】のサブカテゴリー,概念,概念の定義,バリエーション サブカテゴリー 概 念 概念の定義 バリエーション(代表的なもの) 特別活動の必要 感 特別活動を行ってこなかった後 悔 特別活動の価値 を再認識したエ ピソード 今日,移動教室の話し合いをさせたんですけど,子どもたち の話し合い活動が全然成り立たなくて。これまでの先生(担 任が交代した)も話合い活動をしてこなかった,そういうみ んなでどうしようかっていう活動が足りてなかったので,あ あこの経験ってすごい大事なんだってやっと目に見えてわか った感じがする。 これから揺り戻 しがくる不安 (特別活動)を考新しい学校行事 えようとする思 考とそれを回避 しようとする思考 「コロナ禍でも,こんなこともできる」と新しい試みに舵を 切った人たちと,「コロナが終息したらこれまで通りの特別 活動に戻そう」と考える人がいる。ある程度おさまったあと には,教員間の温度差で色々な議論が起こると思う。 新しい生活様式 の特別活動の模 索 新しいルールで 行う異学年活動 新しいルールを作った異学年活 動 日常を取り戻すということもあって,9 月から 6 年生が 1 年 生の教室に限定的に人数を絞って手伝いに行くというような ことで,活動が始まっています。お掃除も毎日特定の 6 年生 4 人で一週間なり 1 か月なりで行くということで,手伝いに 行っています。 感染対策をして 行うクラブ・委 員会活動 新型コロナ感染 対策をして行っ ているクラブや 委員会 例えば,集会委員は集会があっての集会委員。環境委員や, 保健委員会の子は普段通り仕事をしていますが,集会はつら いところであったのだけど,このあいだ TeamS を使って集 会をやって,これも新しい形かもしれないって思いました。 これまでと同質 の学級活動の実 施 これまでの学級 活動を取り戻し ていっている様 子 今までのお楽しみ会だったり学級活動での活動に関しては多 分例年と同じ形で動いているはず。どこの学級であっても, それは例年やってるからというような流れもあるし,今まで の流れもあるからそのまま動いてるんだと思う。 縦割り活動で育 つロールモデル ロールモデルを育成する必要感 ロールモデルの育成が必要だと 感じた場面 先週からソーラン節を始めたんですけど普段やさぐれてる子 たちが一生懸命話を始める,6 年生が 5 年生に教えている姿 を見て特活が必要だったと感じましたね。 ロールモデル不 在の不安 ロールモデルがいないことで不 安に感じたこと 人間関係形成にも課題が残るし,自己実現のところで大きな 行事を通して(こうなりたい),他の学年を見て(こういう 風になりたい),再来年は(それをやりたい)っていうよう なものが育っていたものがなくなっている。例えば運動会で 「みんなで協力する」とか「来年は僕は応援団長やりたいん だ」「リレーの選手になりたいんだ」「あんな競技をやるん だ」って思いながら次の年を迎える,あるいはみんなと調整 しながら何かを作っていくっていうようなものが全くなくな ってしまったので,そういったイメージが,これがなくなっ てしまうだけじゃなくてそういった力が全くついてないんだ ろうなっていう気がします。 IV 考 察 本章では,分析の中で明らかになったプロセスを 時系列に従って, 1 教科指導が最優先,2 感染 を恐れ活動が委縮,3 6 月から 9 月現在までの指 導の省察,4 新しい生活様式での特別活動の指導 の展開,の順に考察を行う。 1 教科指導が最優先 (I 緊急事態宣言解除・分散登校) このプロセスは,【教科指導を進めたい使命感と 葛藤】(表 1)【特別活動における対応の変化】(表 2) 【保護者の期待】のカテゴリーからできている。 【教科指導を進めたい使命感と葛藤】は(教科指 導優先の空気)(教科指導を進める葛藤)(特別活動 の軽視)の 3 つのサブカテゴリーで構成され,緊急 事態宣言解除直後の教員の意識が教科指導を進めて
いかなければならない使命感とそれだけでよいのか と悩む葛藤について語られている。 (教科指導優先の空気)では教育委員会をはじめ 学校現場は,教科指導の時数や内容について未履修 にならないよう神経を使っていたことがわかる。年 度内に教科指導の内容を終える目途を付けたいとい う思いで,授業進行に気を配っていた。文科省は次 年度への学習内容の積み残しを認めたものの,教育 現場では約 2 か月の休業期間を差し引いた概ね通常 の年間時数の 8 割程度で 1 年間の学習指導が完了す るようカリキュラム・マネジメントを行っていた。 (教科指導を進める葛藤)では,これまで学校行事 や学級活動の時間として行っていた特別活動につい ても教科指導の時数を使って実施することを口頭で 許可されている様子が読み取れる。強迫的に授業を 進める一方で,取りこぼしを危惧する声も出ていた。 (特別活動の軽視)からは,他の教科指導は 8 割の 時数を確保しようとしているが特別活動については 除外されていること,学級活動にそれほど時間がと られていないことが語られた。 【特別活動における対応の変化】は,(学級活動は 新型コロナ対策指導)(制約のかかるクラブ・委員 会活動)(縦割り活動を見合わせる決断)のサブカ テゴリーで構成されている。 (学級活動は新型コロナ対策指導)からは,学級 活動の内容が衛生指導,給食指導になっていること が分かる。また,三密を避ける指導や手洗い指導に おいては児童の実態に合わせ,緩急をつけて指導を 行っていたことが読み取れた。しかし,給食指導に ついてだけはどの教員からも徹底した指導を行って いるという話があった。これは,学校内において新 型コロナの濃厚接触者と認定される基準が「同室内 でマスクを取って給食を一緒に食べた」ことによる ものとされており,そのことが影響していると推測 される。 (制約のかかるクラブ・委員会活動)からは,こ の時期の委員会活動やクラブ活動はほぼ停止状態と なり,実施できたとしてもこれまでのような活動は できず膠着していたことが語られた。 (縦割り活動を見合わせる決断)は,縦割り活動 は異なった学年が混ざり合って活動する性質から指 導する側も恐怖感があり,当面計画できないことを 「仕方ない」と考えていたことや,年内は実施しな いと決めた学校もあったことが分かった。 (保護者の期待)にも,学習の(遅れの)取り戻し を期待する声が教員には届いたことも教科指導を優 先させる使命感に拍車をかけた。 以上のことから,小学校では「学びの保障」であ る教科指導が最優先とされ,子ども同士が活動を通 して関わり合い,よりよい人間関係を構築すること を目的とする特別活動については実施が困難だと教 員が考えていたことが分かる。 2 感染を恐れ活動が委縮 (II 通常授業開始~夏季休業期間) 通常授業開始から夏季休業期間までの間の,感染 を恐れ活動が委縮していくプロセスは【学校行事が 実施できない不安】(表 3)前述の【特別活動におけ る対応の変化】【保護者の期待】のカテゴリーから できており,【学校行事が実施できない不安】は, (文科省・教育委員会からの通達や指導)(戸惑う教 員たち)(安易な代替え案)の 3 つのサブカテゴリ ーから構成されている。(文科省・教育委員会から の通達や指導)では,II 章で説明した様々な通達 によって学校教育が翻弄されていく様子が語られて いる。通達が発令されるたびに教育計画を変更しな ければならず,感染拡大を防ぐために徐々に制約が 増えていく傾向にあった。当初は,これまで同様の 学校行事にこだわり切り替えられなかったり,コロ ナ禍であっても新しい学校行事を生み出していこう とするエネルギーをもっていた教員達もいたが,変 更に次ぐ変更で思考停止に陥り,次第に学校行事に (戸惑う教員たち)が見られたことがわかる。一方, 学校行事が次々と中止になっていくことから,本来 のねらいとは異なる(安易な代替え案)も生み出さ れていった。小学校行事の再検討について保護者や 児童から強い要望が出てきたことに由来すると推測 される。小学校では,異学年との関わりや大勢の保 護者の来校を絶つ活動にならざるを得なかったため, 学校行事ではなく学級活動であれば通常の授業と同 様に実施できると考えたのである。また,これまで
特別活動として時数カウントされていた活動が,教 科時数で公然と読み替えられていくことも現場教員 間での話題に上がった。これらは学校行事のねらい である「地域や自然との関わりや,多様な文化や人 との触れ合いを通して,学校文化をつくる」ことと は異質の内容であり,単なる児童の「気晴らしにな る」と捉えると,本来の力が育成できないと考えて いたことが語られた。 【保護者の期待】のカテゴリーでは,感染防止を 強く訴える保護者の存在が少なからずあり,教員の 思考に影響を及ぼしていること,【特別活動におけ る対応の変化】ではサブカテゴリーからも分かるよ うに,新型コロナ感染を恐れるために多くの活動に 制限がかかり,活動の幅が小さくなっていったこと が分かった。 3 6 月から 9 月現在までの指導の省察 (III 夏季休業期間~9 月下旬) 9 月に入ると,教員達はこれまでの指導を振り返 り省察する様子がみられる。このプロセスは【現れ 始めた課題】(表 4)【学校行事が実施できない不安】 の 2 つのカテゴリーでできている。 教員達は夏季休業前に【学校行事が実施できない 不安】を感じ,また変更に次ぐ変更で身動きが取れ なくなっていた。しかし,感染拡大は一進一退を繰 り返し,委縮していく学校教育に疑問をもった世論 から,感染対策を行った上で学校行事の実施を求め る風潮が生まれていった。学校現場ではここで改め て,学校行事や特別活動の取り組みを再検討する必 要が出てきたと推察する。 一方,児童の様子にも変化を感じる教員の様子が みられる。【現れ始めた課題】は,(新指導要領実施 上の課題)(児童に見られ始めた変化)の 2 つのサ ブカテゴリーで構成されている。 インタビューでは,新指導要領で特に重点が置か れている「追究」「協働」「対話」活動について指導 が困難になっている状況が語られた。特別活動につ いても同様で 3 つの資質・能力の育成に対して,活 動が十分にできないために育たずに終わる不安を抱 えていることが分かった。コロナ禍の小学校では (新指導要領実施上の課題)が山積している様子が 伝わってきた。 コロナ禍で(児童に見られ始めた変化)として, 人間関係を調整する力の不足や受け身になっている 児童の実態がわかる。児童の自己有用感や自己実現 をかなえる活動ができないため自信を失っている児 童たちが,心の「荒れ」を見せ始めている。このこ とから教員は児童の承認欲求が高まっていることを 感じ取っている。また,不登校やいじめの増加が心 配されているように,学校行事がなくなり学校に通 う価値を見い出せない児童も出てきたことが分かる。 こうして,学校ではコロナ禍に合わせた特別活動 の在り方を考えざるを得なくなっていったと考えら れる。 4 新しい生活様式での特別活動の指導の展開 (III 夏季休業期間後~9 月下旬) 児童に変化が現れたことで,特別活動の重要性を 改めて感じ始めた教員たちは,新しい生活様式での 特別活動の指導を展開しようと動き始めたことが分 かる。このプロセスは,【現れ始めた課題】と【特 別活動で身に付く資質・能力に期待】(表 5)の 2 つ のカテゴリーでできている。 【特別活動で身に付く資質・能力に期待】は,(特 別活動の必要感)(新しい生活様式の特別活動の模 索)(縦割り活動で育つロールモデル)の 3 つのサ ブカテゴリーで構成されている。 コロナ禍で児童に様々な力が身に付いていないと 実感した教員たちは,人間関係形成能力や自己実現 の力は,これまでの特別活動を中心とした話合い活 動等によるところが大きいと考え,そこで,感染対 策をしながら新しいルールで特別活動を行う方法を 編み出していったと推測される。交代の少ない当番 活動や,オンラインシステムを使った委員会活動な ど,これまでにはない活動内容や方法が挙げられて いた。 またしかし,異学年活動が十分にできていないこ とには変わりがなく,これまで 6 年生の活躍を見て 「社会参画」の姿を学んでいた下学年児童への影響 は大きいと感じている。決まった学年との間で少し ずつ交流活動を始めながら,そこでの異学年の児童 とのふれあいから成長を感じそれに安堵している教
員の様子がうかがえる。異学年活動を切望する意見 は今回インタビューを行ったすべての教員から聞い た願いであった。 5 本研究の成果と課題 本研究は,「東京都」の「公立」「小学校」教員に 限定されており,感染者の数が少ない地域やそれぞ れの地域がもつ学校文化,私立小学校,さらに中 学・高校では,異なった概念が生まれる可能性があ る。これらの研究課題を残しているものの,本研究 は,緊急事態宣言解除後の特別活動の指導のプロセ スや課題について,現場教員の教育実践から結果を 導いた点で意義が大きい。 また,教科指導優先になっていたことから,児童 の人間関係形成や社会参画,自己実現を柱とする特 別活動の指導が置き去りとなり,現在これらの能力 の獲得に不安が出てきていることが明らかとなった ことは,「いじめ」や「不登校」の増加が予想され る現在の状況と関連があると推測される。本研究で 示したプロセスは,今後繰り返されると予想される 休業措置後の学校再開時において,特別活動の早期 実施を提案する根拠となると考える。 V 結 論 本研究は,コロナ禍の中で学校が再開された令和 2 年 6 月から 9 月下旬までの期間の,小学校教育に おける特別活動の指導意識の変化プロセスを明らか にすることを目的とし,都内公立小学校教員 4 名に 半構造化インタビューを行い,データを M-GTA により分析した。 その結果,43 の概念と 18 のサブカテゴリー,8 のカテゴリーを生成し 4 段階のプロセスが明らかと なった。 緊急事態宣言が解除された 6 月からインタビュー 調査実施の 9 月までの約 3 か月間における特別活動 の指導意識の変化のプロセスは概ね次のとおりであ る。授業再開直後,小学校教員は「学びの保障」を 求められたことで教科指導を優先し,集団性,社会 性,体験性,自主性,実践性,自治制などの特質を 有している特別活動は縮小せざるを得なかったが, この 3 か月の指導を省察することで特別活動の必要 性を感じ,新しい生活様式に則応した指導を展開す る段階に至っていることが明らかになった。また, (児童に見られ始めた変化)として人間関係を調整 する力がついていない,学校に通う意味を見い出せ ない児童が出ていること,何事にも受け身になって いて指示を待つ傾向にあること,承認欲求が高まっ たことを教員は感じており,それらの改善のために 特別活動で育つ資質・能力に期待し,活動を再開し ているという傾向が明らかとなった。 引用文献 01 文部科学省 「新型コロナウイルス感染症対策のため の小・中・高等学校等における臨時休業の状況につ い て(令 和 2 年 3 月 4 日(水)8 時 時 点・暫 定 集 計)」 https://www.mext.go.jp/content/20200304 -mxt_ kouhou02 -000004520_1.pdf(アクセス日 2020/10/15) 02 岩瀬直樹 「ポスト・コロナの学校を描く」 田村学 「「コロナ」だから探究する」「教職研修」編集部『ポ スト・コロナの学校を描く―子どもも教職員も楽し い豊かに学べる場をめざして―』 教育開発研究所, 2020 年 03 杉田洋 「内容の改善と充実」 日本特別活動学会 〔編〕『三訂 キーワードで拓く新しい特別活動』 東 洋館出版,2019 年 04 文部科学省 「新型コロナウイルス感染症防止のため の小学校等の臨時休業に関連した放課後児童クラブ 等の活用による子どもの居場所の確保について(依 頼)」https://www.mext.go.jp/content/20200303 -mxt _kouhou01 -000004520_01.pdf(アクセス日 2020/10/15) 05 文部科学省 「新型コロナウイルス感染症対策のため の小学校等の臨時休業に関連した子供の居場所の確 保 等 に 関 す る 各 自 治 体 の 取 組 状 況 等 に つ い て」 https://www.mext.go.jp/content/20200317 -mxt_ kouhou02 -000004520_1.pdf(アクセス日 2020/10/15) 06 文部科学省 「新型コロナウイルス感染症対策のため の臨時休業等に伴い学校に登校できない児童生徒の 学習指導について(通知)」https://www.mext.go.jp /content/20200410 -mxt_kouhou01 -000004520_1 .pdf(アクセス日 2020/10/15) 07 文部科学省 「新型コロナウイルス感染症対策のため の学校の臨時休業に関連した公立学校における学習 指導等の取組状況について」https://www.mext.go
.jp/content/20200421 -mxt_kouhou01 -000006590_1 .pdf(アクセス日 2020/10/15) 08 文部科学省 「新型コロナウイルス感染症に対応した 小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等にお ける教育活動の実施等に関するQ & A」https://www .mext.go.jp/content/20200521 -mxt_kouhou01 -000006270_2.pdf(アクセス日 2020/10/15) 09 文部科学省 「新型コロナウイルス感染症に対応した 持続的な学校運営のためのガイドライン及び新型コ ロナウイルス感染症対策に伴う児童生徒の「学びの 保障」総合対策パッケージについて(通知)」別添 1, 2 https://www.mext.go.jp/content/20200605_mxt_ kouhou02_000007000 -1.pdf(アクセス日 2020/10/15) 10 文部科学省 「新型コロナウイルス感染症の感染者等 に対する偏見や差別の防止等の徹底について(通知)」 https://www.mext.go.jp/content/20200421 -mxt_ kouhou01 -000004520_5.pdf(アクセス日 2020/10/15) 11 文部科学省 文部科学大臣からのメッセージ「教職 員 を は じ め 学 校 関 係 者 の 皆 様 へ」https://www .mext.go.jp/content/20200825 -mxt_kouhou01 -000009569_2.pdf(アクセス日 2020/10/15) 12 文部科学省 「新型コロナウイルス感染症対策に伴う 児童生徒の「学びの保障」のための学習指導について」 https://www.mext.go.jp/content/20200609 -mxt_ syoto01 -000007788_1.pdf(アクセス日 2020/10/15) 13 文部科学省 「小学校学習指導要領 第 6 章 特別活 動 第 2 各活動・学校行事の目標及び内容〔学級活動〕」 https://mext.go.jp/component/a_menu/education /micro_detail/_icsFiles/afieldfile/2018/09/05 /1384661_4_3_2.pdf(アクセス日 2020/10/15) 14 木下康仁 『ライブ講義 M-GTA 実践的質的研究法 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチのす べて』 弘文堂,2007 年 参考文献 木下康仁『ライブ講義 M-GTA 実践的質的研究法 修正 版グラウンデッド・セオリー・アプローチのすべて』 弘文堂,2007 年 原 美穂子他 「自然災害時に子どもの心のケアに携わる 教員のニーズに関する研究: 関東圏で東日本大震災 を体験した教員のインタビュー調査」 武蔵野大学心 理臨床センター紀要,2014 年 杉田洋,稲垣孝章 『特別活動で,日本の教育が変わる! 特活力で,自己肯定感を高める』 小学館,2020 年 文部科学省国立教育政策研究所教育課程研究センター 『みんなで,よりよい学級・学校生活をつくる特別活 動 小学校編』 文溪堂,2019 年 謝辞 本研究にあたり,コロナ禍の対応でお忙しい中,イン タビュー調査を快くお引き受けいただいた小学校の先生 方に心から感謝申し上げます。 (つるた まやみ 初等教育学科)