号
7
ページ
47-55
発行年
2021-03-20
保育実践に向けてのウクレレの導入と指導方法
Introduction of ukulele and trial of guidance for childcare practice
手良村 昭 子
*要 約
日本の保育現場において、保育者に求められる音楽技能の代表的なものにピアノによる弾き歌いが あげられる。古くからピアノによる弾き歌いの技能は必須のものとして考えられてきたが、昨今、こ のようなピアノ主流の保育から、ピアノ以外のサブ楽器を使った保育に対しても注目されるように なってきた。 本研究では、保育におけるピアノのサブ楽器として、ウクレレに注目し、楽器の特徴を押さえなが ら、保育現場での活用のメリットを考え、導入に向けて、初心者でも取り組めるレッスン方法につい て検討した。 今回の調査はゼミでの研究プロジェクト「保育の中でのサブ楽器の活用」の中で行った学生のウク レレを使った弾き歌いの取り組みとプロのウクレレ講師による初心者のためのウクレレワークショッ プの指導内容から考察した。 キーワード:ウクレレ、弾き歌い、音楽表現⚑.はじめに
幼稚園教育要領や保育所保育指針の改定に伴い、 保育現場では、幼児期の終わりまでに育みたい10の 力を意識した保育内容のさまざまな研究が行われて きている。領域「表現」においても、子どもたちの 創造性や表現力が豊かになるように、また、子ども たちが主体となる活動が展開されていくために、音 楽、造形、身体表現の各分野で、従来の取り組みを 振り返りながら新しい指導方法を模索する時期が来 ていると思われる。 日本の保育現場において、歌唱指導やリズム遊び など音楽に関わる表現活動では、ピアノを使用した 保育が主流であり、これが当然視されてきた。保育 者養成校でも保育現場においてしっかりと弾き歌い が出来るようにまた、採用試験のピアノの実技に備 えるため、一定のレベルの能力を身に付けさせるこ とに主眼が置かれてきた。しかし、今後も保育現場 においてピアノ主流の保育が行われるべきかと言う と、疑問がないわけではない。ピアノは保育の活動 において、メリットの多い楽器であるが、デメリッ トもある。その面を補うためにピアノ以外の楽器に 目を向け、サブ楽器を保育の現場で活用する方法を 考える事は必要ではないかと思われる。 保育現場において子どもに弾き歌いをする際にピ アノの最も大きなデメリットは手軽に持ち運びが出 来ない、場所の移動が出来ない、子どもと対面で歌 うことが難しい、などという点が挙げられる。この 点は次の先行研究、豊田(2001)1) 加藤・手良村 (2017)2) 鈴木(2019)3) でも報告されている。 このデメリットを克服するためにサブ楽器として 早くに注目されたのがギターの活用であった。ギ ターは持ち運びもでき、子どもの活動に合わせて動 きながら演奏も可能である。また、主要なコードを いくつか覚えて、リズムのキープをしながら音を鳴 らすことが出来れば、ピアノよりも早く子どもたち * Akiko TERAMURA 聖和短期大学 教授 1)豊田典子(2001)第⚒楽器・レポートリーとしてのギターの習得について(2) 保育ゼミ「ギターを弾こう」の講座 を通じて 大阪薫英女子短期大学児童教育学科研究紀要(36)p 91 2)加藤あやこ・手良村昭子(2017) 幼児教育におけるギター活用の可能性についての覚書―ピアノの補助楽器として のギターの可能性と問題点― エヂュケア 幼児教育研究 第38号 大阪教育大学 幼児教育研究室 p 3-6 3)鈴木範之(2019)保育者養成校におけるウクレレ弾き歌い指導の試み 常盤短期大学研究紀要 第47号 p 36と対面で弾き歌いが出来る。ギターのメリットに関 しては豊田(2001)4) や加藤・手良村(2017)5) の 論文等で詳しく報告されている。 弾き歌いに関して、ギター以外の楽器で早くにウ クレレに注目したのが飯塚であった。飯塚(2012)6) は保育現場で歌の伴奏としてウクレレを取り入れ、 2年9か月にわたる実践を報告している。また、鈴木 (2019)7) は養成校での「音楽の基礎」という講座 でウクレレを取り入れた時の内容を学生へのアン ケ ー ト 調 査 の 結 果 と 共 に 報 告 し て い る。野 口 (2020)は「保育学生におけるウクレレを使った子 どもの歌の弾き歌い―即座にマスターできる方法の 研究―」8) の中で65分のウクレレ講座での実践の内 容と学生へのアンケート調査の結果を報告してい る。鈴木、野口の論文では、学生が保育現場で弾き 歌いをする場合、ピアノと比較して、ウクレレに対 してどのような感想を持ったかなどを報告してい る。この二本の論文では主にピアノと比べて、短期 で弾き歌いの技術が習得できることが挙げられてい るが、その他ウクレレと言う楽器そのものに興味を 持った学生が多かったことも興味深い内容であっ た。 筆者も2017年からギターを保育に活用するために 大学内での課外活動でギターの弾き歌いなど希望学 生に対して、ワークショップやグループレッスンを 行ってきた。その経験の中で、ギターに関しては、 高校までに音楽の時間や音楽サークルなどで経験し た学生と初めてギターに触れる学生とでは、簡単な 手あそび歌や童謡であってもマスターできるまでに かなり差が出ることが分かった。その原因の一つに 弦を押さえるときの指の痛みが挙げられる。保育現 場で活用する弾き歌いに適したギターは鉄弦のア コースティックギターが主流である。先ずはこの弦 の感触と強く抑えた時の指の痛みになれることが必 要である。指の痛さで挫折をした学生がいたことを 考えると、ギターより指への負担の少ないウクレレ から経験していくことが良いのではないかと考える ようになった。ギターはウクレレに比べて音域も広 く、低音のベース音も安定しているために伴奏楽器 として、子どもの歌唱指導には大変適した楽器であ る。そのため保育現場でさまざまな音楽表現活動を 展開して行くためには場所や対象、活動の内容に よって、ギターとウクレレを上手く使い分けていく ことが理想であると考える。しかし、初心者に先 ず、最初の一歩として、弦楽器を導入する時には、 ギターよりも先に難易度の低いウクレレから始めて いくことで、ピアノ以外のサブ楽器の導入の可能性 が見えてくるのではないかと考えこの研究に至っ た。
⚒.ウクレレの導入にあたって
ウクレレと言う楽器はギターと比べて、一般的に まだまだ認知度は低い。 テレビや映画と言ったメディアを通して、見たこ とはあるが実際に触れる機会はギターより少ないの ではないかと感じる。実際、今回のテーマでゼミの プロジェクトを提案した際に学生にとった事前アン ケートではギターに関しては⚓割の学生が音楽の時 間や趣味で触ったことがあると答えたが、ウクレレ に関しては触ったことのある学生は一人もいなかっ た。ウクレレと言うとハワイアンミュージックのイ メージが強いが、近年様々なジャンルでウクレレの 演奏が注目されるようになってきている。また、保 育雑誌でもウクレレによる童謡の弾き歌いの記事が 載せられるなど、これからより身近な楽器として活 用されていくのではないかと思われる。 2-1 ウクレレの特徴 ウクレレには、「ソプラノ・ウクレレ」「コンサー ト・ウクレレ」「テナー・ウクレレ」「バリトン・ウ クレレ」「エレクトリック・アコースティック・ウ クレレ」等、いくつかの種類があるが、最も一般的 なものは「ソプラノ・ウクレレ」である。形状は、 ヘッド、ネック、ボディ、サウンドホールとギター とほぼ同じ形であるが、楽器本体のボディはギター よりかなり小さくて軽い。手軽で持ち運びやすいこ 4)前掲書 p 92 5)前掲書 p 3-6 6)飯塚朝子(2012)子どもの歌唱における伴奏楽器について~ウクレレ伴奏の可能性~ 日本保育学会第65回大会発表 要旨 p 184 7)前掲書 p 36 8)野口雅史(2020)保育学生におけるウクレレを使った子どもの歌の弾き歌い―即座にマスターできる方法の研究―新 潟教育大学短期大学部研究報告 第50号 p 171 聖 和 短 期 大 学 紀 要 第 ⚗ 号 2021 ― 48 ―とは、保育の現場で活用する時に大きなメリットに なる。弦は⚔本でほとんどの種類がナイロン弦であ る。アコースティックギターに使われている鉄弦に 比べて柔らかいため指への負担がかなり少ない。音 量もほどよく、やわらかい音色であるため子どもの 歌声や保育者の歌声をサポートする伴奏楽器として 有効であると考える。 2-2 ウクレレを演奏するための附属品 チューナー ウクレレには⚔本の弦が張られており、ヘッドに 付いている「ペグ」を回して各弦の音程を調整して いく。一般的なチューニングは「ハイ G チューニ ング」で⚔弦は G(ソ)⚓弦は C(ド)⚒弦は E(ミ) ⚑弦は A(ラ)となる。専用のチューナーをヘッ ドに付けて⚔弦から順に調整していくと簡単に チューニングが出来る。ただ、ウクレレのチューニ ングは狂いやすいので曲を何曲か練習した後にはこ まめにチューニングをすることが望ましい。 ストラップ ウクレレは胸元で構えて演奏するが、子どもと動 きながら弾き歌いなどをするときは、専用のスト アップがあれば便利である。ストラップはサウンド ホールにフックをひっかけて首にかける「首かけタ イプ」とウクレレのボディにピンを装着して肩にか ける「肩掛けタイプ」の⚒種類がある。保育の中で は、子どもとの関わりの中で、手をはなす場面が多 いことを考えるとストラップを付けていると楽器が 落下してしまうことが無いので安全である。 2-3 演奏に関して 図⚔でもわかるように、ギターの弦が⚖本に対し て、ウクレレの弦は⚔本である。コードは開放弦だ けのコードや指⚑本で押さえられる簡単なコードが あり、初心者でも音が鳴りやすいことがメリットで ある。また、手あそびうたや童謡などは⚓コード (C・G または G7・F)内で演奏できるものが多い ため、主要な⚓コードをマスターすれば短期でレ パートリーを増やすことができるのではないかと思 われる。この⚓コードの中にはギターではかなり難 解な F コードも含まれている。このことからもウ クレレはギターよりも初心者にとっては取り組みや すい楽器だと言える。
⚓.実践と調査の方法
3-1 実践の概要 今回の実践は2019年度「卒業論文Ⅰ・Ⅱ」のゼミ 研究プロジェクト「保育の中でのサブ楽器の活用」 の中で行った。 プロジェクトは、ゼミの研究内容が決まった⚖月 ごろから始めた。学年での合同の時間を除いた研究 図⚑ ソプラノ・ウクレレ 図⚒ チューナー 図⚓ ストラップ 左「首かけタイプ」 右「肩掛けタイプ」ゼミの冒頭30分をウクレレのレッスン時間とした。 前期は 3,4 回生合同で行い、内⚑回はプロのウク レレ講師による指導を入れた。後期に関しては、⚔ 回生は卒業論文の執筆にかかるため、主に⚓回生を 中心に行った。後期も⚑回はウクレレ講師による指 導を入れたが、この時は 3,4 回生合同で行った。 3-2 調査の方法 調査対象 O 大学 児童保育学部 児童保育学 科 ⚓ 回 生 ⚘ 名(2017 年 ⚔ 月 入 学)⚔ 回 生 ⚗ 名 (2016年⚔月入学) 調査期間 2019年⚖月~2020年⚑月(卒業論文 Ⅰ・Ⅱ 卒業研究の授業内30分)前期⚖回、後期⚖ 回計12回(内⚒回はウクレレ講師による指導) 調査方法 実践記録(ビデオ記録も含む)と学生 による振り返りシートの考察
⚔.結果・考察
ここでは、ウクレレ初心者の学生たちが通年授業 のわずかな実践の中で、ウクレレを演奏する技術を 身に付けていったプロセスとその指導方法について 考察した。 実践の考察としては主に次の⚓つを取り上げた。 「①初回のレッスンでの取り組み」「②ウクレレ講師 による指導内容」「③学生主導の取り組み」 今回ここで特に注目したのが、「②のプロのウク レレ講師の指導内容」である。ピアノと違ってウク レレを専門に指導する講師は少ない。前述に記載し た先行研究で7)8)の実践の内容でも、それぞれの養 成校の音楽担当(ピアノ)担当の教員が実施してい 7)前掲書 p 36 8)前掲書 p 171 聖 和 短 期 大 学 紀 要 第 ⚗ 号 2021 ― 50 ― 図⚔ コード ダイアグラムに見るウクレレとギターとの押さえ方の比較 ※図⚔のギター F コードは左の人差し指⚑本で全ての弦を押さえる(セーハ)に加えて他の指で⚓箇 所を押さえる難解なコードであるため、しっかりと音が出るまでにかなりの時間がかかる。 ウクレレ C コード ダイアグラム ギター C コード ダイアグラム ギター F コード ダイアグラム ウクレレ F コード ダイアグラム 表⚑ 授業で扱った曲一覧 曲名 作詞家 作曲者 使用コード かえるのうた 岡本敏明 ドイツ民謡 C かたつむり 文部省唱歌 文部省唱歌 C・G7 おはようのうた 増子とし 本多鉄麿 C・G7・F 大きな栗の木の下で 不詳 イギリス民謡 C・G7・F どんぐりころころ 青木存義 梁田貞 C・G7・F ゆき 文部省唱歌 文部省唱歌 D・A・G・A7 ※かぜになる(学生のリク エストによる有志課題曲) つじあやの つじあやの C・Am・F・G・D・Emるケースがほとんどである。コードを覚えて音が鳴 れば手軽に演奏できる楽器であるが、基本のフォー ムや演奏技術に関して、楽器の特徴を踏まえなが ら、プロの講師がどのように初心者の学生に指導し ていくのかを今回は特に注目した。また、「③学生 主導の取り組み」では、短い期間で習得したウクレ レの弾き歌いの技術が実際の保育の現場で活かされ ることが出来るのかと言うことも考察した。 4-1 初回のレッスンでの取り組み 今回はウクレレを触ったことがない学生ばかりで あったため、初回のレッスンでは次回のウクレレ ワークがスムーズに受講できるように準備としての レッスンを行った。先ずは、構え方、チューニング の方法、コードの押さえ方を教示し、ウクレレワー クの課題曲である「かえるのうた」(C コードのみ) 「かたつむり」(C、G7)を筆者が演奏して説明し、 ゆっくりのペースでとりあえずウクレレに触って音 を出すことから始めていった。ウクレレはボディの サイズも小さく、軽い楽器であるため、構え方と簡 単なコードの押さえ方に関しては、どの学生も問題 なく実践できた。また、チューニングに関してもウ クレレ専用のチューナーを使用したため各自、自分 で音程を合わせられるようになった。押さえやすい コードの曲を選んでいたので、初回のレッスンでも ある程度音を出すことができた。しかし、指の使い 方やストラミングのコツに関しては、それぞれ フォームの形が様々であり、指の使い方に癖がある 学生もいて指導の難しさを感じた。 4-2 ウクレレ講師によるワークショップ ⚑)初回ワークショップ 実施日:2019年⚖月25日 参加学生:⚓回生⚖名・⚔回生⚖名 計12名 実施時間:⚓回生40分 ⚔回生40分 ウクレレ講師の方とは事前に学生の様子を伝え、 選曲や指導に関しては丁寧な打ち合わせをしたうえ で実施した。内容はウクレレという楽器についての 説明から入り、ウクレレの持ち方、構える姿勢につ いては実際に学生が体験してみるところから始まっ た。コードの正しい押さえ方(指づかいなど)や右 手のストラミングの方法などは一人ひとりの音の出 し方を確認しながら丁寧に指導していただいた。こ の音の出し方に関しては、一人ひとりの音を聴きな がら丁寧に指のフォームを確認されていて、初めに フォームと良い音の出方の感覚を感じさせるところ がプロならではの指導であると感じた。 今回の課題曲である「かたつむり」に関しては、 ⚒つのコード(C と G7)の押さえ方とコードチェ ンジの方法をデモ演奏しながら説明されたので学生 には大変わかりやすいものであった。ウクレレの音 をつなげるコツはコードチェンジの時の指の残し方 にある。これによって、より音が繋がり、リズムの キープにもつながるので、コード伴奏の最初の注意 するべき点とも言える。ここは、かなり時間をかけ て丁寧に指導された部分であった。ストラミングの 奏法はコードチェンジに集中できるようにダウンス トロークのみで行われた。フォームは右手人差し指 で弾くタイプで行った。 指導の流れとしては、先ずは全員で音を出すレッ スンから始め、続いて⚒つのグループに分けてグ ループごとに音を出し、お互いの音を聞き合うレッ スンへと進んだ。ある程度全員がスムーズにコード チェンジができるようになったところで、一人ずつ 音を鳴らして発表していく課題が与えられた。学生 は大変緊張した表情で取り組んでいたが、とても集 中して、しっかりと音を鳴らすことが出来ていた。 全体でのレッスンと個人への指導とを混ぜ合わせる ことで、お互いの音の確認ができ、また自分の音の 出し方も確認しながら確実にコードチェンジが出来 るようになっていった。ここでのレッスンでコード 伴奏の基礎が培われたことが確認できた。 次に取り組んだのがイントロのメロディ演奏であ る。ここでは、普通の楽譜とは違う、ギターやウク レレで使用するタブ譜を9)使用した。今回はタブ譜 を見たことがない学生ばかりであったため、タブ譜 の読み方の説明から始めて頂いた。 ウクレレの指板からドレミを探し出すことは難し いのではないかと感じていたが、ほとんどの学生が ゆっくりではあるが音を探してメロディ演奏に取り 組めた事には少々驚きがあった。学生によっては コード弾きよりメロディの方が弾き易いとを感じて いるものもいた。 初心者のワークでメロディを含めたレッスンは 9)タブ譜(TAB 譜)ギターやウクレレなどの専用の譜面で、指板を図にして押さえるフレットの場所が記されている。
少々難易度が高いかと感じていたが、このメロディ 弾きのレッスンがコードの押さえる指の訓練にもつ ながることや楽器本来の特徴をつかんで後にアンサ ンブルとして活用していくことにもつながるため並 行してのレッスンの効果があることがこのプロの講 師が行うウクレレワークの中で分かったことでもあ る。実際にこの後の学生の取り組みにも効果が表れ る内容を見ることが出来た。 ワークの締めくくりとして、最後にはイントロの メロディ演奏から簡単なストラミングによる「かた つむり」の伴奏を皆で合わせて、弾き歌いの伴奏と して1曲仕上げることが出来た。 ⚒)初回ウクレレワーク「振り返りシート」からの 考察 初回の課題である「かたつむり」のレッスンを受 けての自己評価(アンケート調査の結果)。 アンケートの結果から、コード弾きに関しては、 聖 和 短 期 大 学 紀 要 第 ⚗ 号 2021 ― 52 ― 図⚖ 右手 ストラミングのフォーム(人差し指で弾く タイプ) 図⚕ ウクレレの持ち方 図⚗ ストラミングのフォーム(親指で弾くタイプ) 図⚘ C コードの押さえ方 図⚙ G7 コードの押さえ方 図10 ストラミングについて
図⚘より、C コードに関しては全員問題なく押さえ ることが出来たが、押さえるポジションが増える G7 コードに関しては、約⚗割の学生が出来たと感 じていたが、約⚓割の学生が難しさを感じていたこ とが分かる。コードを押さえてストラミングするこ とに関しても同じ割合であったことは、G7 のコー ドが押さえられない学生が同じようにそのコードを 鳴らしてストラミングすることに難しさを感じてい たのではないかと思われる。弾き歌いに関しては、 図11にあるように、ある程度できたという学生を合 わせて約⚖割の学生が出来たと答えているが、⚔割 の学生は難しさを感じていたことが分かる。どこに 難しさを感じていたかに関しては、自由記述の方に 「弾くことに集中しすぎて歌うことが出来なかった」 「コードチェンジに必死で歌うことを忘れていた」 などが記載されていた。最後のメロディ弾きに関し ては、ある程度出来たと答えている学生を含めて約 半数の学生が出来たと答えている。メロディ弾きの 難しさに関しては「どの弦を押さえたらいいのか理 解するのに時間がかかった」「指を覚えるのが難し い」などが挙げられていたが、初心者の最初のワー クの時間内で半数の学生がコード弾きとメロディ弾 きの両方を習得し、弾き歌いまでレッスンを進めら れたことはかなりの進歩と考えられる。その他、自 由記述の感想には次のような内容が書かれていた。 感想 ・初めて触ったけれどそんなに難しくなく、とても 楽しかった。 ・もっと弾けるようになりたい。 ・とっても新鮮だった ・めちゃめちゃ楽しかった。 ・説明が丁寧で分かりやすかった。そして、楽し かった。 ・自分で弾けるようになったのが嬉しかった。 ・ウクレレの基礎が学べてよかった。 ・もっともっとやりたいと思った。 ・難しい所もあったけどとても楽しかった。 ・講師の方のデモ演奏が凄くカッコ良かった。 今後の目標 ・コードを覚えてコードを見たら弾けるようになり たい。 ・顔をあげて、楽しく弾き歌いできるようになりた い。 ・イントロのメロディ演奏も弾けるようになりた い。 ・G7 が弾けて、スラスラコードチェンジできるよ うになりたい。 ・他の曲もチャレンジできるようになりたい。 このように振り返りシートの内容から、⚑回目の ワークでは、多少の課題は残ったとはいえ大半の学 生がおおむねコード弾きで「かたつむり」を演奏す ることが出来たといえる。初回としては、ウクレレ と言う楽器に慣れ、楽器の感触と音の鳴らし方を理 解し、次に向けて目標を持って取り組めたことは良 い結果であったと言える。大きな課題は弾き歌いで ある。自由記述にもあるように子どもと楽しく弾き 歌いをするためには、手元ばかり見ていては対面で の弾き歌いは出来ない。指の感覚でコードを押さ え、リズムをキープしながらストラミングして歌う ことを楽しむ必要がある。そのためには指でコード を覚え、コードチェンジのタイミングをつかみス ムーズに演奏できることを日々のレッスンの中で意 識する必要があると思われる。 図11 弾き歌いについて 図12 メロディ弾きについて
⚓) ウクレレ講師によるワークショップ⚒ ⚒回目のワークショップでは、先ずは前回のおさ らいから「かたつむり」の演奏を通して行った。こ の曲に関しては、その後のゼミの時間でも繰り返し 復習していたのでスムーズに合わせることが出来 た。 今回は童謡や手あそび歌でたびたび出てくる⚓つ のコード(C・F・G7)の押さえ方とスムーズにコー ドチェンジが出来ることを目標にした。課題曲は 「どんぐりころころ」と「大きな栗の木の下で」で ある。前回の⚒コードのコードチェンジでは学生た ちは、難しいながらも何とかこなしていけたが、⚓ コードになるとチェンジのタイミングが早くなるた め、少し苦戦した学生も多かった。前回学んだ左手 の指を次のコードのポジションに近いところまで残 しながら変えて行く方法は、今回⚓コードに増えた 時はますます難しくなる部分であるが、講師の指を 見ながら、効率よくポジションを移動するテクニッ クを習得することが出来た。実際にプロのウクレレ 講師の運指を見て、コードチェンジの方法を覚える ことが出来るのは、このワークでは大変重要な部分 である。今回のワークでも前回と同様に全体での レッスン、⚒グループでのレッスン、個人でのレッ スンと⚓つのパターンの中でお互いの音を聞き合 い、お互いのフォームを見て確認しあった。目標は コードチェンジをしながらも歌もしっかり歌うとい う内容で進めて行った。前回に比べて音も良く鳴る ようになり、コードも覚えて弾けるようになってき たが、手元を気にしないで歌を歌うという課題はま だかなり残っているように感じた。今回は、この点 を次回からのゼミでのレッスンの課題として挙げて いくこととした。 4-3 学生主導の取り組み ゼミの時間の冒頭30分をウクレレの基礎的な練習 にあててきたが、プロの講師によるウクレレワーク の後には学生たちが自分たちで課題を持って、様々 なことに挑戦していく姿が見られた。⚑回目のワー クの後にはメロディ弾きの練習を始める学生がい て、学生同士でペアを組んでメロディーラインと コード伴奏でアンサンブルをする姿が見られた。ウ クレレをメロディ楽器として取り入れる発想が筆者 には無かったため、この学生の取り組みには驚かさ れた。また、⚒回目のワークの後には⚓コードでで きる童謡のレパートリーを学生たちが自主的に探し て、次の課題曲を決めて練習する姿も見られた。自 主的に練習して曲がマスターできるようなってきた ころ、学生の方から実際の保育現場でウクレレによ る弾き歌いの実践がしてみたいという申し出があっ た。ゼミの時間だけでは間に合いそうにないことを 話し合い、時間に余裕のある⚓回生のみの参加とし て附属保育園での実践を企画した。最後のゼミの時 間に実践することが決まり、選曲も学生に任せた。 冬の時期であったため子どもたちの知っている歌で 演奏出来そうな曲「ゆき」を選曲した。ゼミの時間 の冒頭30分では仕上がらないため放課後等練習に励 んで、現場での演奏に挑んだ。この時の演奏は暗譜 で望んでいたので、ほとんどの学生がこどもたちと 向き合い、手元をほとんど見ることなく、笑顔で子 どもと弾き歌いが出来ていた。また、一部の学生が イントロのメロディパートも弾くなど、ウクレレ ワークで習得した内容を活かす演奏が出来たことも 嬉しいことであった。
⚕.今後の課題
今回の調査から、ウクレレは初心者でも短い期間 で、ある程度簡単な演奏技術なら身に付けることが 可能な楽器であることがわかった。また、ピアノの 初心者では簡単に習得できない弾き歌いの技術もウ クレレなら習得できる可能性があることが学生の取 り組みの事例の中で分かったことである。ただ、指 導に関しては、今回の調査の事例のように可能であ れば、プロのウクレレ講師と連携を図り、ワーク ショップなどの単発の指導の中で基礎的な技術を身 に付けられる機会あることが望ましいのではないか と感じている。基礎の部分で、正確なフォームや音 楽的要素の大事なポイントをその楽器の持つ特性も 踏まえて、専門の講師が指導していくことは、その 楽器を長く使っていくためには大変重要な事である と思われる。また、講師の方が演奏されるデモ演奏 はプロとしての楽器のもつ音の良さを伝える役目も 有り、受講する学生たちにとっては大変良い経験と なった。 今後は今回調査した内容を踏まえて、短期でウク レレを取得する指導方法や教材の研究を進めて行き たい。また、次のステップとして、実際に保育の現 場でウクレレを使って保育をされている先生方に取 材をしながら現場でのウクレレの活用方法について 聖 和 短 期 大 学 紀 要 第 ⚗ 号 2021 ― 54 ―調べ、弾き歌いの他に活用する方法についても検討 していきたいと思う。 倫理的配慮 O 大学のゼミ生およびヤマハ音楽教室ウクレレ 講師の方には、事前に研究概要の説明を行った上で 記載の許可を得た。なお、個人情報の保護及び意思 を尊重するよう努めた。 ※ウクレレの持ち方及びフォームの写真も講師の方 の許可を得て掲載している。 (付記) 本論文は日本保育学会第73回大会での口頭発表「保育 実践に向けてのウクレレの導入と指導方法」(手良村昭子) をもとに加筆、修正したものである。 謝辞 本研究にあたり、ご協力いただいた O 大学児童保育学 部、手良村ゼミの学生の皆様、学生の指導及び、研究資 料の作成にお力を貸して下さったヤマハ音楽教室ウクレ レ担当の先生に、この場をお借りして心より感謝申し上 げます。 (参考文献) 豊田典子 2001 第⚒楽器・レポートリーとしてのギター の習得について(2) 保育ゼミ「ギターを弾こう」 の講座を通じて 大阪薫英女子短期大学児童教育学 科研究紀要(36) 加藤あやこ・手良村昭子 2017 幼児教育におけるギター 活用の可能性についての覚書―ピアノの補助楽器と してのギターの可能性と問題点― エヂュケア 幼 児教育研究 第38号 大阪教育大学 幼児教育研究 室 鈴木範之 2019 保育者養成校におけるウクレレ弾き歌 い指導の試み 常盤短期大学研究紀要 第47号 野口雅史 2020 保育学生におけるウクレレを使った子 どもの歌の弾き歌い―即座にマスターできる方法の 研究―新潟教育大学短期大学部研究報告 第50号 たしまみちお 2016 ウクレレでうたおう こどものう た ドレミ楽譜出版社 財団法人ヤマハ音楽振興会 2010 UKULELE Instructors Manual YAMAHA MUSIC FOUNDATION