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青少年の地域生活を基盤とした異年齢間交流による生活体験学習に関する研究 ‐子どもの直近上位世代との交流事業を事例として [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)青少年の地域生活を基盤とした異年齢間交流による生活体験学習に関する研究 ‐子どもの直近上位世代との交流事業を事例として‐ キーワード:通学合宿型生活体験学習、異年齢間交流、青少年の地域参画、自己存在感、相互交流. 発達・社会システム専攻 永田 誠. 1.研究の目的と方法. けるつながり形成の過程を通し、住民が地域の課題に対. 本論文は、近年、全国各地において積極的に実施され. し、主体的に関わり、多様化、広域化していく地域コミ. つつある生活体験学習を、青少年の学習活動としてだけ. ュニティーにおいて、住民の生活における連帯性を再構. でなく、生涯学習を進める青少年と地域住民の地域づく. 築していく過程を明らかにしようとするものである。. りにおける参画の契機として捉え、学童期・少年の生活. 本研究では、これら三点の研究の視点を鑑みつつ、二. 体験学習を共に創り出す青年期における発達過程の検証. 点目の地域における学童期・少年と青年期の青年団の活. を試みたものである。なお、本論文における生活体験学. 動を通した地域参画に対する筋道の現代的再創造という. 習とは、学童期・少年の日常生活圏域における社会・自. 点に着目していく。特に、生活体験学習の一教育内容で. 然環境、空間や集団及びその活動と、青年期の地域組織. ある異年齢間交流が、青少年及び地域住民に与える教育. である青年団との関わりにおける相互交流を基盤とした. 的効果と、 その学習構造について検討を行った。 つまり、. 体験学習活動とする1。. 生活体験学習における地域を基盤とした異年齢間交流が、. 生活体験学習研究については、これまでの先行研究か ら、次の三つの側面が提起できる。まず、一点目は学童. 体験する青少年と、その体験を支援する地域住民の双方 向型の学習活動として展開する過程を検証した。. 期・少年の個人能力育成のための生活体験学習内容論に. このような視点から、本研究においては生活体験学習. 関する研究である。ここでは、身体性やコミュニケーシ. における学童期・少年と青年団の活動を通した異年齢間. ョンスキルの形成などに関わり、彼らの身体的特性にお. 交流の過程に着目し、佐賀県における通学合宿型生活体. ける変容が明らかにされてきている2。. 験学習事業5に参加した青少年、及び事業を企画・実施し. 二点目には在学青少年の学校外教育論としての位置. た青年の両者を対象とする。主な研究方法としては、青. 付けである。つまり、地域環境の変容による青少年の「地. 少年の生活体験学習における学習効果を量的に把握する. 域離れ」という課題に対する、青少年の地域参画の再構. ためにアンケート調査を用いる。それに加え、学童期・. 築、及び学校教育拡充に抗する地域独自の教育的可能性. 少年と青年団の活動を通した相互交流の実態を明らかに. に着目し、一面的学校教育観の克服という視点に立った. するために、青少年の内面的把握を聞き取り調査、参与. 3. 研究である 。青少年が地域の住民と共に主体的に地域へ. 観察によっても試み、生活体験学習の教育的効果を実証. 参画することが、自らの人格形成における身近なモデル. 的に検証していった。. を認識すると共に、自らの生活する地域に対する認識を. 生活体験学習は多様な学習形態及び領域を持つ体験. 形成し、自己の発達段階における課題を克服していく過. 学習であるが、その中から、特に本研究において、通学. 程となる。. 合宿型生活体験学習を取り上げた意図としては、管理さ. 最後に三点目としては、地域教育計画論として位置付. れた情報・技術社会の中から離れて、本来の生活という. けられる研究である4。これは上記の二点を踏まえた上で、. 部分を最も顕著に見ることができる生活体験学習の一事. 地域住民の地域づくりに対する参画、そして、地域にお. 業形態だからである。つまり、日常的な生活リズムの中.

(2) で、異年齢集団による共同生活を体験し、相互交流を行. 2.論文の構成. うことで、意識的・無意識的にせよ、協同で、さらに集. まず、第一章では、青少年の学校外教育と、その活動. 団の協力によって、自らの生活を自覚し、自己形成を実. を取り巻く地域の変容過程について整理を行うと共に、. 現していかなければならないからである。. 現代の青少年の発達段階に関わる課題性を明らかにする. よって、本研究においては、地域を基盤とした学童. ための検証を行った。具体的には、通学合宿型生活体験. 期・少年と青年団の活動を通した相互交流によって、そ. 学習が全国的な広がりを見せている中で、その広がりを. れぞれの発達課題を乗り越える実践であるという点にお. 見せた要因と背景、そして、そこまつわる学童期・少年. 6. いて、この佐賀県の「青少年共同宿泊体験事業 」は先駆. と事業を企画・実施する地域の青年の両者にまつわる発. 的であると捉え、この事例を取り上げた。. 達段階における現代的課題について、社会変化と、筆者. なお、本研究は子ども期の対象者と、その直近上位世 代である中、高校生、及び地域青年という学童期・少年 と青年期を含んだ青少年全体における交流における学習. が実施した事業参加者に対する事前アンケートの結果か ら分析を行った。 第二章においては、佐賀県における生活体験学習が、. 過程に着目したものである。よって、本研究における子. 青少年と地域に対して、どのような受け入れられ方をし. どもの直近上位世代とは青年期から成人前期までの世代. ていき、それがどのような動きを生み出していったのか. の連続性を含んだ用語として使用している。. ということを明らかにしていった。具体的には、実際の. 本用語の出典としては、都市青年の地域における一学. 佐賀県での通学合宿型生活体験学習事業における青少年. 習活動として共同学習の流れを引き継いだ 「生活史学習」. の学習過程を参加した学童期・少年に対するアンケート. を基礎として 1970 年代半ばに「たまり場学習」を提起. 調査と筆者の参与観察をもとに明らかにしていった。ま. した『青年団論』を著した那須野が、この「青少年共同. た、同時に、それを取り巻く学校、地域住民、社会教育. 宿泊体験事業」を地域調査し、それを報告書としてまと. 行政の三者の事業及び青年団に対する評価を、聞き取り. 7. めている 。その中で「世代共創」という調査の視点から、. 調査などを中心にし、検証を行っていった。. 本事業の地域の青少年に対する教育的な意義を「直近世. 第三章においては、第二章を受けて、佐賀県における. 代同士の異年齢集団」の創出と位置付けている。そのた. 地域における青少年の学習と、通学合宿型生活体験学習. め、本研究においても本位置付けをもとにし、佐賀県で. の展開過程を検証した。具体的には、佐賀県で平成 10. の青少年を対象であり、主体とした通学合宿型生活体験. 年度から平成 12 年度まで実施された通学合宿型生活体. 学習事業において、学童期・少年に対する地域青年の教. 験事業である「青少年共同宿泊体験事業」を実施した地. 育的効果を詳細に見るということから、 「直近上位世代」. 域青年団における事業委託後における活動の展開過程を. との交流という用語を使用した。. 明らかにすると共に、その展開の相違に対して、要因と. また、本論文における「青少年」とは分析枠の関係か. 背景を明確にしていった。また、佐賀県内における通学. ら、満 10 歳以上から結婚まで、または 30 歳未満と設定. 合宿型生活体験学習の広がりと、「青少年共同宿泊体験. する。分析枠の設定には別の理由もある。まず満 10 歳. 学習事業」の関連についても検証を行った。これらの展. とは、基本的生活習慣が定着し、年長者との交流に対し. 開過程をもとに、青少年の自己形成に関わる学習として. 意欲が持てる年齢であるという発達段階の特徴と共に、. の生活体験学習の学習構造について考察を行った。. 佐賀県における通学合宿型青少年共同宿泊体験事業の最. そして、第四章においては、4年間の佐賀県での生活. 低年限であるということから設定した。また、結婚及び. 体験学習の過程を、地域における学童期・少年の育ちを. 30 歳未満としては、従来の青年団においては、通常は. 地域課題として捉え、地域の青年が取り組み、双方が主. 25 歳前後(特定の地域では、女性は 22 歳前後)という. 体的に生み出した学習過程を振り返ることにより、現代. 年齢制限が多く見られていたが、現在、青年団員の数が. の青少年の育ちと地域の関わりを概観し、地域における. 減少し、その存在すらも危うい状況となる中で、年齢制. 青少年を主体とした生活体験学習の教育的意義について. 限を撤廃し、団員の確保を行っている地域が佐賀県にお. 考察した。. いてもほとんどとなっている。そのため青年団員も高年 齢化していることを背景として、制限という厳密なもの ではないものの、一般的に佐賀県内の青年団において最 も多く見られる退団基準を採用したものである。. 3.結論 本研究において、生活体験学習の一教育内容である異 年齢間交流が学童期・少年と青年団に及ぼす教育的効果 について、佐賀県における通学合宿型生活体験学習事業.

(3) を事例として実証的に研究を進めてきた中で明らかにな. な異年齢間交流空間の再構築という課題が提起できた。. ったことは、次の三点である. 事業を介した人的なつながりは形成されつつあるものの、. ①現代における学童期・少年と青年団の共有体験の未熟. それをどのようにして日常化していくのか、また、その. さからくる縦型の人間関係体験の不足. ために、地域を学童期・少年と青年団の教育的環境とし. ②非日常性における異年齢間交流空間の創出と、そこに. て再構築していくのかという点に対しては課題として残. おける学童期・少年及び青年団の相互交流を通した自. された。具体的には、参加した学童期・少年が事業後に、. 己存在感の獲得のための学習過程. 家庭や地域における活動に主体的に参画するという部分. ③課題としての、地域における日常的な異年齢間交流空. においては、事業から時間的に経過するにしたがって、. 間の再構築. その意欲や低下し、関係が継続しなくなっていく状況が. まず、一点目についてであるが、これは第一章第二節. 明らかとなった。また、アンケート結果からも、彼らが. の佐賀県中原町における通学合宿型生活体験事業の参加. 青年団や事業へ主体的に関わっていこうとする意欲は低. 者に対して実施したアンケート調査結果及び事業中の参. いままであるという結果が得られた。しかし、事業を継. 与観察から明らかとなった。具体的には、青少年の家庭・. 続実施している地域においては、学童期・少年の青年団. 地域における生活経験が、 「お手伝い型」となり、家庭や. に対する認識が、確実に増加しているというデータが得. 地域における学童期・少年の役割や存在が位置づいてお. られたのである。. らず、そのために責任や主体性を軽視した体験となって. よって、この認識をどのようにして日常的な関係とし. しまっている現状が伺えた。また、他者と物、空間、時. て再構築していくかが、この関係を契機として、地域に. 間を共有するという経験が乏しいという傾向も見られた。. おける青少年の地域づくりに対する参画と地域における. これらから、現代の学童期・少年と青年団員の人間関係. 青少年の参画に関する認識の再形成という部分において. 体験を始めとした生活経験は主体性が欠如し、同質性の. 重要な課題となってくると考えられる。よって、この課. もとに形成されたものであり、体験に対して積極性を持. 題ついては、長期的に地域の動きと学童期・少年と青年. てないことが、彼らの育ちにおいて他者を認識する過程. 団の関わりを見ていくことが必要であり、今後とも、こ. の中で自己存在感の獲得を困難にしていることが明らか. れらを継続的に研究していく。. となった。. また、本研究はあくまでも一事例をもとに導き出され. 次に二点目についてであるが、これは第二章、第三章. た結論であり、これらをどのように一般化するのか、ま. 第一、二節における通学合宿型生活体験学習事業の前、. た、一般化できるかについての検証は、今後の課題であ. 中、後における参与観察からと中原町の事業後の参加者. る。これらの課題を解明していくことは、現代における. に対するアンケート結果から明らかとなった。具体的に. 青少年の育ちの全体像を把握し、青少年期の発達を踏ま. は、不足する異年齢間交流を体験することによる自己葛. えた教育活動を再創造していくための重要な研究である. 藤と、それを契機とした年代、社会的位置付け、地域、. と考える。よって、今後、本研究を視座とし、残された. 学歴などの異なる他者への理解と相互の関係構築という. 課題について実証的に研究を進めながら、現代における. 学習過程が見て取れた。. 青少年の学校外教育の教育的価値を新たに位置付けてい. つまり、佐賀県における青年を主体とした生活体験学. きたい。. 習は、第四章において提起した通り、青少年自身の主体 的な学習過程を創出し、 「地域離れ」 の状態にある青少年 の人格形成過程において学校教育観をもとに形成された. 【主要参考文献】 (50 音順). 概念とは異なる社会的な概念形成を促すものなのである。. ・猪山勝利「子どもの生活体験学習の現代的構成に関す. そして、それは同時に、事業を契機として、青少年を取. る研究」日本生活体験学習学会編『生活体験学習研究』. り巻く地域の保護者、住民、学校教育関係者、行政関係. 創刊号 2000 年. 者等と青少年との人的つながりの形成や、事業実施地域 以外での事業実施という概念的な広がりを生み出し、学 童期・少年と青年団を取り巻く教育環境が地域課題とし て青少年の育ちを保障していこうとする認識を形成する 事業として評価できるものなのである。 そして、三点目として、事業後の地域における日常的. ・碓井正久「社会教育の内容と方法」小川利夫他編著『社 会教育講義』明治図書 1964 年 ・酒匂一雄編著『地域の子どもと学校外教育』東洋館出 版 1978 年 ・田中治彦編著『子ども・若者の居場所の構想』学陽書 房 2001 年.

(4) ・南里悦史著『子どもの生活体験と学・社連携』光生館 1999 年 ・南里悦史「生涯学習と生涯発達−成人の発達と生活の パラダイム−」九州大学教育学部付属障害児臨床セン ター編著『生涯学習と生涯臨床』第一法規 1993 年 ・藤岡貞彦編著『教育の計画化』総合労働研究所 1977 年 ・藤岡貞彦著「農村社会と教育」 『教育学全集 14 教育 と社会』小学館 1969 年 ・吉田昇編著『講座・現代社会教育Ⅶ 学校外教育』亜 紀書房 1979 年. 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 特に本論文で取り上げた生活体験学習事業は、社会教 育事業として実施されたものに特化しているが、一般 的には教師やPTA主体で企画・運営される子ども・ 青少年を対象とした事業も多く見られ、それらの学校 教育や保護者主体で行われる事業も、生活体験学習の 一概念としては含まれる これらの研究については、猪山勝利「子どもの生活体 験学習の現代的構成に関する研究」や小松啓子「子ど もの生きる力を育てる連続的な食生活体験の意義」共 に日本生活体験学習学会編『生活体験学習研究』創刊 号 2000 年などを参照のこと。 これらの研究については、酒匂一雄編著『地域の子ど もと学校外教育』東洋館出版 1978 年、及び田中治彦 編著『子ども・若者の居場所の構想』学陽書房 2001 年などの議論を参照のこと。 これについては、南里悦史著『子どもの生活体験と学・ 社連携』1999 年 光生館を参照のこと。 通学型生活体験学習事業とは、参加した青少年が学校 に通いつつ事業に参加し、生活体験を行いながら共同 生活を送るという生活体験学習の一事業形態である。 佐賀県教育委員会での通学合宿型生活体験学習事業で ある青少年共同宿泊体験事業は3年間、合計9地域の 地域青年団に委託実施された事業である。平成 10 年 度は鹿島市、肥前町、中原町、平成 11 年度は武雄市、 嬉野町、鎮西町、平成 12 年度は基山町、芦刈町、川 副町において実施された。 『地域青年団体リーダー養成に関する研究開発事業報 告書Ⅱ』財団法人日本青年館 2000 年.

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