会 長 あ い さ つ
小 児 の頸 部 腫 脹 と腫瘤
第23回 日本 小 児耳 鼻 咽 喉 科 研 究 会会長 熊沢忠躬
第23回 日本 小 児 耳 鼻 咽喉 科 研 究 会 は,平 成2年12月15日(土),恒 例 の 如 くに大 阪 の太 閤 園 に お い て開 催 され ま した。 今度 の主 題 は 「小 児 の頸 部 腫 脹 と腫瘤 」 とい うこ とに しま した ◎ この テ ー マ は 日常 臨 床 に 於 て 案外 多 く遭 遇 し,し か も診 断 の つ か な い ま ま に経 過 して しま うこ とも多 い け れ ど,今 まで 主題 と して取 りあ げ られ て い な か った よ う で,盲 点 をつ いた 感 が あ ります 。 そ の た め にか22題 とい う多数 の演 題 が 集 ま りま した が,殆 ん ど耳鼻 科 サ イ ドよ りの 出題 であ り,耳 鼻科 の この方 面 に関 して の知 識 は 大 体 常識 的 に 固 ま って い る様 な の で,こ の壁 を破 るた め に ど う して も小 児科 サ イ ドの知 識 思 考 法 を 必要 と します 。 この 意 味 で 各群 の座 長 を耳 鼻 科 と小 児 科 との学 識 の深 い 先 生方 二 人 に お願 い し,各 演題 に 小 児科 の 先生 の コ メ ソ トを 戴 くこ とに しま した 。 確 か に耳 鼻 科 医 で は 思 い つ か な い発 想 を得 る こ とが 出来 喜 ん で い ます 。 そ の結 果 と して,顔 面 ・頸部 の 腫脹 を 主 訴 と して も,血 液,リ ンパ 系疾 患 を念 頭 に お くべ き事 や,先 天 的 な 疾患 例 え ば 梨状 窩痩 の様 な割 合 新 し く発 見 され た 疾 患 に留 意 す べ きであ る な ど有 益 な 知識 を 得 る こ とが 出来 ま した。 教 育 講 演 で は小 林 陽 之 助 教授 に 「食 細 胞 機 能 異常 症 の臨 床 」 を 拝 聴 しま し た。 耳 鼻咽 喉 科 領 域 で ど う して も治 らな い慢 性 化 した炎 症 疾 患 で は,そ の小 児 の 体 質 に ひ そ む免 疫 系 の 異 常 に 目を むけ,小 児 科 医 と協 同 して診 断,治 療 を すす め るべ きで あ ろ うこ とを 認識 出来 た の も一 つ の収 穫 だ と思 い ます 。 特 別 講 演 と して元 京 大 ウ イル ス学 教授,現 シオ ノギ 医科 学 研 究 所 所 長 で あ る 日沼 頼 夫先 生 に 「ウイ ル ス学 散 策 」 を お願 い して,一 同非 常 な 感動 を 得 た と思 い ます。 先 生 は小 児科 医 と して 出発 され て,そ の 後 ウイ ル ス に 臨床 の立 場 か ら情 熱 を傾 け られ,そ の研 究 の 歩 み,又 将 来 へ の 展 望 な ど聴 衆 を ひ きつ け てや まな い お 話 を して くれ ま した 。 200名 と多数 の 方 が ご参 加 下 され 又 時 間延 長 に もか か わ らず 最 後 まで ご熱 心 に ご協 力 下 され ま した こ と,主 催 者 と して非 常 に うれ し く感 じ,あ つ く御 礼 申 し上 げ ます.㊥26回 回串 ⑪偲 目 鼻
主題
小 児 の 頸 部
日 時 平 成2年12月15日(土)11:00∼17:30 1第 ・ 群)(11:・5-"15・) 座長 大迫 茂人(大 阪市 立小児保健セ ンター耳鼻咽喉科) 今 宿 晋 作(京 都医大 小児科) 1.当 科 外 来 に お け る 小 児 頸 部 腫 瘤 川 ・ 川 一 ・llPediatric neck tumors at the department of otorhinolaryngology, Juntendo University.
T. Yamakawa, G. Ichikawa, M. Fujimori (Otorhino-laryngology, Juntendo University)
2.小 児 の 頸 部 腫 瘤 に つ い て
田村 隆之 ・大 迫茂 人(大 阪 市立 小 児保健 セ ンター耳鼻 咽 喉)中 朗 同
A study of children's neck tumor
T. Tamura, S. Osako (Department of Otolaryngology, Children's Medical Center of Osaka City) , S. Nakamura (Department of Surgery, Children's Medical Center of Osaka City)
3.当 科 に お け る 小 児 頸 部 腫 瘤32症 例 の 検 討
松下 太 ・重見 英男 ・渡 辺徳 武 ・茂木 五郎(大 分医科 大 耳鼻 咽喉 科)
Lump in the neck of children —A survey of 29 cases—
F. Matsushita, H. Shigemi, N. Watanabe and G. Mogi (Departmet of Otolaryngology, Medical College of Oita) 4.当 科 に お け る 小 児 頸 部 腫 瘤 の 臨 床 統 計
大上 研 二 ・関 谷 透 ・増 満 洋一 ・緒 方 洋 一 ・守 谷 啓 司 (山口大 耳鼻 咽喉科)
Cervical masses in children —Clinical survey and case report—
K. Okami, T. Sekitani, Y. Masumitsu, Y. Ogata and K. Moriya (Department of Otorhinolaryngology Yamaguchi University School of Medicine
5.小 児 の頸部腫 瘤症 例 の治療経 験 木村 照(神 戸大耳鼻咽喉科)
Our treatments of the neck tumors in children A. Kimura (Kobe University, School of Medicine, Depart-ment of Otolarvnvolowv. 釜LL輩 ♪(1:・ ・-1145) 座長 山下敏 夫(関 西医大 耳鼻咽喉科) 岩 瀬 師 子(関 西医大小児科) 6。 頸 部 嚢 胞 状 リ ンパ 管 腫 の2例 兵頭政 光 ・丘 村 煕 ・湯 本英 二 ・中村 光士郎 ・宮 内浩 介 ・佐藤 英光 ・瀬 越 昌弘(愛 媛大 耳鼻 咽喉科)
A clinical report of 2 cases of cervical cystic lym-phangioma
M. Hyodo, H. Okamura, E. Yumoto, K. Nakamura, K. Miyauchi, H. Sato and M. Segoe (Department of Otolaryngology, School of Medicine, Ehime University, Ehime. 7.新 生 児 頸 部 嚢 胞 状 リ ンパ 管 腫 の3例 久納 優 子 ・佐 々木照 子 ・小島 崇嗣 ・木下 洋 ・松 崎修二 ・岩 瀬師 子 ・小林 陽之 助(関 西 医大 小児 科)佐 藤正 人 ・ 山 田 修 ・光 吉一 弘 ・ 田士1 Threecases◎fcysti(∫hygroma嘱i血ne6飴tes Y.Kuno,T.Sasaki,T.Kolima,Y.Ki簸oshita,S.Matsuzaki, S.Iwase,Y.Kobayashi(Departme獄tofPediatrics,Ka鍛sai MedicalU簸iversity),M.Sato,0.Yamada,K.Mitsuyoshi,Y( Ha粗ada(Depart贈ntofSurgery,Ka簸saiMedicalU鶏iversi-ty) 8。BLMに よ り治 療 し た 嚢 胞 状 リ ンパ 管 腫4症 例 に つ い て 佐藤 英 治 ・平 川勝 洋 ・夜陣 絋 治 ・原 田康 夫(広 島 大耳 鼻 咽喉科)河 野嘉 彦(国 立太 田病院)
The treatment of cystic lymphoangioma with Bleomycin emulsion —case report—
E. Sato, K. Hirakawa, K. Yajin and Y. Harada (Hiroshima University School of Medicine), Y. Kohno (Ohta National Hospital)
9.頸 部 リ ンパ 管 腫 に対 す るOK-432局 注 療 法 羽 金和彦 ・佐伯 守 …
Treatment for lymphangioma of the neck with topical use of OK-432.
K. Hagane, M. Saeki, M. Nakano, (National Children's Hospital, Dep. of Surgery)
10.頸 部Castlemanリ ン パ腫 症 例
松 山浩 吉 ・井 野千 代徳 ・渡 辺 尚代 ・中川 のぶ 子 ・本 田啓 二(関 西 医大 香 里耳鼻 咽喉 科)泉 春暁(同 中央 検査 部)
A case of Castleman's Lymphoma of the Neck K. Matsuyama, C. Ino, H. Watanabe, N. Nakagawa, K. Honda (Kouri Hospital of Kansai Medical University, Depart-ment of Otolaryngology) H. Izumi, (Kouri Hospital of Kan-1 sal Medical University, Department of Pathology)
第III群(1:55∼2150) 座長 宮原 裕(奈 良医大耳鼻咽喉科) 小 西 省 三郎(大 阪市立小児保健 セ ンター小児科) 11.小 児 甲 状 腺 癌 の2症 例 横 田雅 子 ・家 根旦 有 ・山 中敏彰 ・田中 治 ・宮 原 裕 ・ 松 永 喬(奈 良医 大耳鼻 咽喉 科)
Thyroid cancer in children-a report of 2 cases. M. Yokota, K. Yane, T. Yamanaka, O. Tanaka, H. Miyahara, T. Matsunaga (Nara Medical University)
12。 小 児 甲 状 腺 癌 の 治 療 経 験
津 田邦 良 ・渡辺 宏 ・進 武幹(佐 賀医大 耳鼻咽喉 科) An experience of the surgical treatment for the thyroid cancer in childhood.
K. Tsuda, H. Watanabe, T. Shin, (Department of Otolaryngology, Saga Mediccal School, Nabeshima, Saga, Japan
回 咀 尉 厨 寵 自 ヲ 回 釧9ム
ー
腫 脹
と 腫 瘤
場所
太 閤
閣
会長
熊
澤
忠
躬
13,当 科 に お け る 小 児 頭 頸 部 悪 性 腫 瘍 症 例 に つ い て 奥 村隆 司 ・有賀 秀 治 ・松 永 亨(大 阪 大耳 鼻咽 喉科)吉 用泣一 `「た阪 ミ庸信 耳嵐咽聾偉禾蓮、Head and neck malignant tumors in children T. Okumura, H. Aruga, T. Matsunaga (Osaka University) J. Yoshida (Osaka Teishin Hospital)
14.耳 下 腺部 を 中心 と した小 児脈 管性 腫 瘍 の外科 的 治 療 の経験
行木英生(静 岡赤十字病院耳鼻咽喉科)
Surgical treatment of vascular tumors of the parotid gland in children
H. Nameki, (Dept. of Otolaryngology, Head and Neck Surgery, Shizuoka Red Cross Hospital
15.vnRecklinghausen病 に 合 併 し生 下 時 よ り認 め ら れ た 耳 下 腺 内 顔 面 神 経 線 維 腫 の1症 例
都筑俊 寛(帝 京大 耳鼻 咽喉 科,埼 玉 県立 小 児医療 セ ソタ ー耳鼻 咽喉 科)西 村二 郎(同 形 成外科 、
A newborn case of von Recklinghausen's disease with neurofibroma of facial nerve in the parotid gland.
T. Tsuzuki (Department of Otolaryngology. Teikyo Universi-ty school of Medicine. Department of Otolayngology . S
aitama children's medical center.) J. Nishimura (Depart-ment of Plastic surgery. Saitama children's medical center . 16.小 児 顎 下 腺 唾 石 症 井 野千 代徳 ・松 山浩 吉 ・渡辺 尚 代 ・中川 のぶ子 ・本 田啓 二(関 西 医大 香里病 院 耳鼻咽喉 科) (第 「 「 覇「)(3:0・-3:55) 座 長 行 木英 生(静 岡赤十字病 院耳鼻咽喉科) 多和 昭 雄(大 阪大小児科) 17.当 科 に お け る小 児 の 充 実 性 腫 瘍 症 例 甲 田 嘉彦 ・吉 岡 靖 弘 ・箕 山 学 ・米 川 紘 子 ・太 田文 彦 (近畿大 耳鼻咽 喉科)
Solitary neck masses in children
Y. Koda, Y. Yoshioka, M. Minoyama , H. Yonekawa, F. Oht
a, (Department of Otorhinolaryngology, Kinki University School of Medicine)
18.前 頸 部 に 再 発 した 側 頭 骨 好 酸 球 性 肉 芽 腫 症 の 一 例 加藤 寛 ・嶽 良博 ・高 野郁 晴 ・田端 敏 秀(和 歌 山医 大 耳鼻咽喉 科)津 野 博(同 小 児科)
u case witn tne neck recurrent type from the tem-poral bone eosinophilic granuloma
Y. Katoh, Y. Dake, I. Takano, T . Tabata, (Department of O
torhinolaryngology, Wakayama Medical College) H. Tsuno (Department of Pediatrics, Wakayama Medical College)
19.幼 児 の 総 顔 面 静 脈 瘤 の1例
中平光 彦 ・岸本 誠司(高 知医 大耳 鼻咽喉 科) A case of common facial phlebectasia in a child M. Nakahira and S. Kishimoto (Department of Otolaryngology, Kochi Medical School)
20.小 児 先 天 性 梨 状 窩 痩 一 診 断 と 治 療
本 名敏 郎 ・土 田嘉 昭 ・佐伯 守 洋 ・中野 美和 子 ・羽 金和 彦 ・上井 義 之(国 立 小 児病 院外 科)古 賀慶 次郎 ・川 城 信子 (同 耳 鼻咽喉 科)
Pyriform sinus fistula in childhood —Diagnosis and treatment—
T. Honna, Y. Tuchida, M. Saeki, M. Nakano, K. Hagane, Y. Kamii, K. Koga and N. Kawashiro (National Children's Hospital, Department of Surgery and Otorhinolaryngology 21.緊 急 に 頸 部 郭 清 術 を 要 した 悪 性 リ ンパ 腫
加 納 滋(国 立 栃 木耳 鼻咽 喉 科)吉 原 重 光(大 田原 日赤 耳 鼻咽 喉科)老 川 忠雄(国 立 栃 木小 児科)行 木英 生(静 岡 日赤 耳鼻 咽喉科)
Case report: Malignant lynphoma in a girl —emergen-cy neck dissection was required
S. Kano (Tochigi National Hosp. Dept. of ORL-HNS) S. Yoshihara (Ootawara Red Cross Hosp. Dept. of ORL) T. Oikawa (Tochigi National Hosp. Dept. of Pediatrics) H. Nameki (Shizuoka Red Cross Hosp. Dept. of ORL-HNS) 22.顔 面 ・頸 部 の 腫 脹 を 主 訴 と し た 血 液 ・ リ ンパ 系 疾
患
工 藤典 代 ・正 岡 ナナ 子(千 葉 県 こ ど も病 院耳 鼻咽 喉科) 沖 本 由理 ・衣川 直子 ・太 田節雄(同 血 液暉瘍 科) Hematologic malignancies acompanied with symp-tons of facial or neck swelling
F. Kudoh, N. Masaoka, (Division of Oto-rhino-laryngology) Y. Okimoto, N. Kinugawa, S. Ota, (Division of Hematology and Oncology Chiba Children's Hospital)
教 育 講 演(4:」0∼4150) 座長 熊澤 忠躬(関 西医大耳鼻咽喉科) 食細 胞機 能異 常症 の臨 床 小林陽之助(関 西医大小児科) 特 別 講 演(4:50∼5:30) 座 長 三 河 春 樹(京 都 大 小 児 科) ウ イ ル ス 学 散 策 日沼頼 夫(シ オ ノギ医科 学研 鱒所} The episodes in my Medical Virology Y. Hinuma (Shionogi Institute for Medical Science)
小 児 耳VoL12,No.1,1991
第23回回 日本小児耳鼻咽咽喉科研究会
第一群 の まとめ
座長 大迫茂人(大阪市立小児保健センター耳鼻咽喉科) 今 宿 晋 作(京 都医大 小児科)(1)当 科 外 来 に お け る小 児 頸 部
腫 瘤
山川 卓 也 ・市 川 銀 一郎 ・藤 森 正 登 (順天堂耳鼻咽喉科) 緒 言 小 児(15歳 未 満)に お け る頸 部 腫 瘤 は 比較 的 稀 で あ る。 我 々は1987年8月1日 か ら1990年7月31 日ま で の過 去3年 間 に 当科 を 受 診 した 小 児 に つ い て特 に頸 部 腫 瘤 に つ い て報 告 す る. 統 計 的 考 察 過 去3年 間 の 当 科 外 来 受 診 者 総 数 は10948人 で そ の うち15歳 未 満 の 小 児 の 受 診 者 数 は1782名 (16.3%)で あ った 。(表1)最 も多 い の は 中耳 炎 で526名(30.5%)次 は 鼻 疾 患 で365名(20.5%)3番 目は難 聴 で201名(11.3%)で あ った。 また 異 物 は 多 くみ られ,夜 間 の救 急 が そ の半 数 以上 を 占め て い た。 今 回 の検 討 の対 象 で あ る頸 部 腫 瘤 は31名 (1.7%)で,全 年 齢 の患 者 数 よ り見 る と僅 か0.3 %に 過 ぎなか っ た。 表2は 頸 部 腫脹 を主 訴 と した 小 児 の疾 患 別 症 例 数 で あ る。 耳下 腺 腫 脹13名,原 因不 明 の リソパ 節 炎7名,正 中頸 嚢 胞4名,顎 下 腺 炎2名,嚢 腫 性 リ ンパ 管腫,耳 下 腺 腫 瘍,耳 下 部 腫 瘍,側 頸 嚢 胞,皮 下 気 腫 が1名 つ つ で あ っ た。 耳 下 腺 腫 脹 は ム ンプス 疑 い が多 く,ま た リン パ節 炎,顎 下 腺 炎 は 初 診 時 の み で再 来 す る例 は 半 数 に も満 た な い 状 態 で あ った。 症 例 表3に は 頸 部 腫 脹,腫 瘤 を主 訴 に受 診 した 中 で 入院 加 療 とな った 症 例 で あ る。14歳 耳 下 腺 腫瘍 は 11歳 の 時,左 耳 下 腺 に 腫 瘍 が 出現 し,Pleomor一 表1当 科 を受 診 した 小 児 の 主 訴 別症 例 数 (1987年8月1日 ∼1990年7月31日) 表2頸 部腫瘍,腫 瘤 を主訴 と した患児の疾患 別症例数 一4一小 児 耳VoL12,No.1,1991 表3入 院 した 症 例 の年 齢,疾 患 名,治 療 表5小 児 の 頸 部 腫 瘤(高 橋 廣 臣,1987) phicAdenomaと 診 断 され,摘 出 術 を 受 け た が, 3年 後 に再 発 し,今 回 は耳 下 腺 浅 葉 と共 に腫 蕩 を 摘 出 した。3歳 の耳 下 部 腫 瘍 は頸 部 か ら顔 面 にか け て の 巨大 な 腫 瘍 で 顔面 神 経 麻 痺 を 伴 い,生 検 の 結 果横 紋 筋 肉腫 と診 断 した。 摘 出が 不 可能 の た め 化学 療 法 を 施 行 した。 唾 石 は 口腔 内か ら唾 石 を摘 出 した。 顎 下 腺 腫瘤 は腫 瘤 摘 出術 を,側 頸 嚢 胞, 正 中頸 嚢 胞 は 嚢 胞 摘 出術 を施 行 した 。 両側 頸 部 リ ンパ節 腫 脹 はEBウ イ ル ス感 染 疑 い で あ った。 頸 部 皮 下 気 腫 は 左 咽 頭痛 で発 症 し,左 頸 部 に捻 髪 音 を認 め たが 数 日の経 過 で 自然 消 退 した 。嚢 腫 性 リ ンパ管踵 は 入 院 中 腫瘍 の縮 小 傾 向を 認 め,リ ンパ 管腫 に よる圧 迫症 状 もな いた め,経 過 観 察 とな っ た。 文 献 的 考 察 表4は 当 科 と国 立 小 児病 院 との小免 の 外 来患 者 疾 患 別 比 率 を 比 較 した。 腫 瘍 の比 率 に は 大 差 が な 表4当 科 と国立小児病院との小児外来患者疾患別比率 い 。 表5は 高 橋 ヱ)の報 告 に よ る 小 児 頸 部 腫 瘤 の 症 例 で あ る 。 小 児 の 頸 部 腫 瘤 は 先 天 性,炎 症 性 が 多 く,悪 性 腫 瘍 は 極 め て 希 で あ る が2),悪 性 腫 瘍 も 1例 ず つ 経 験 し て い る. 結 語 当 科 に お け る 小 児 頸 部 腫 瘤 に つ い て 統 計 的 考 察 を 施 行 し た 。 ま た 希 で は あ る が 悪 性 腫 瘍 の 発 生 に 十 分 な 注 意 が 必 要 と思 わ れ る 。 参 考 文 献 1)高 橋 廣 臣:小 児 の頸 部 腫 瘤 。JOHNS3(7):1028-1032,1987.
2)JaffeBF:Pediatric head and n㏄ktumors:A study of 178 cases.Laryngoscope 83:1644-1651 ,1973.,1973.
(2)小 児 の頸 部 腫 瘤 に つ い て
田村 隆 之 ・大 迫 茂 人 (大阪市立小児保健セ ンター耳鼻科) 中 村 資 朗(同 外 科) 目 的 当 セ ン ター で の 小 児 の頸 部 腫瘤 を 形 成 す る主 要 な病 変 を統 計 的 に 観 察 して 小 児 患 者 の特 徴 を 引 き 一5一小 児 耳V◎L12,N◎.1,1991 小 児 の頸 部 腫 瘤(S62-H2) 出す こ とを 試 み た。 対 象 昭 和62年1月 よ り本年10月 ま でに 頸部 腫 瘤 を主 訴 に 当セ ンタ ー耳 鼻科 あ る い は外 科 を 受診 し組 織 学 的 に確 認 し得 た51症 例(男29例,女22例)を 対 象 と した 。 結 果 先 天 性 疾 患 に 関 して は正 中頸 嚢 腫,側 頸 嚢 腫, 嚢 胞 状 リ ソパ 管 腫 が それ ぞ れ14,5,9例 と多 く 見 られ この 三 者 の 合計 は28例 で全症{列の半 数 を越 えた 。 正 中 頸 嚢 腫 と側 頸 嚢 腫 は 男 女 ほ ぼ 同数 に見 られ 年 令 分 布 で は全 例0∼7才 に見 られ た 。 嚢 胞 状 リンパ 管 腫 は 男 児 にや や 多 く年 令 分 布 で は0∼ 1才 に 多 く見 られ た 。 炎 症 性 腫 瘤(リ ンパ 節,唾 液 腺)は11例 見 られ た が女 児 に や や 多 く年 令分 布 では0∼11才 に均 等 に 分 布 して い た。 先 天 性 以 外 の 良性 腫 瘍 と して は 石 灰化 上 皮腫, 耳 下 腺 多 形 腺 腫,皮 様 嚢 腫 な どが 見 られ,ま た比 較 的 め ず ら し い 症 例 と し て 側 頸 部 原 発 の Castlemansリ ンパ 腫 が 認 め られ た 。 悪 性 例 は い ず れ も 側 頸 部 原 発 でHodgikin病 とMalignant Histiocytosisが 一 例 ず つ 認 め られ た 。 な お 今 回 の症 例 で は 甲 状 腺 疾 患 は 一 例 も認 め られ な か っ た 。 腫 瘤 の 発生 した 区分 で は前 頸部 上部,胸 鎖 乳 突 筋 部 に 多 く認 め られ た。 考 察 合r司覇 部 睡 癒 ル ‡ 翻…に轡 診Lナ ・串者 の ら払細 織 学 的 に 確 認 し得 た症 例 を 対 象 に した が正 中頸 嚢 腫,側 頸嚢 腫,嚢 胞 状 リンパ 管腫 とい った 良 性 の 先 天 性 頸部 腫 瘤 が 多 く見 られ た。 過 去 の報 告 で も 良性 の 先天 性 頸 部 腫 瘤 で は この三 つが 多 い と され 今 回 の結 果 も同様 で あ った。 正 中頸 嚢 腫 と側頸 嚢 腫 の比 率 につ い て は14対5で あ り最 近 の報 告 とほ ぼ 同様 で あ った 。 リンパ管 腫 は9例 と比較 的 多 く 認 め られ た が 巨大 な 腫瘤 を形 成 し摘 出 の 困 難 な症 例 も認 め られ た 。 先 天 性 以 外 の 良 性 腫瘍 と しては 皮 様 嚢腫,耳 下 腺 多 形 腺 腫,石 灰 化 上 皮 腫,Castlemansリ ン パ 腫 な どが 見 られ た が この うち皮 様 嚢腫 は オ トガ イ 下 に認 め られ 正 中頸 嚢 腫 と の鑑 別 診 断上 念 頭 に お く必 要 が あ る と思わ れ た 。 炎 症 性 疾患(リ ンパ節,唾 液腺)は11例 見 られ たが 全 身 症状 を伴 わ ず 悪 性 疾 患 との鑑 別 上 手 術 が 必 要 とな る症 例 が 多 い と思 わ れ た。 な お 今 回 の症 例 では 甲状 腺疾 患 は一 例 も見 られ な か った が これ は今 回 の 症例 が 耳鼻 科 あ るい は 外 科 を 受 診 した患 児に 限 って い る こ とや また 年 令 が 10才 以下 の小 児 が ほ とん どで あ った こ とな どに よ る もの と思わ れ た 。 小 児 と くに年 長 児 に お い て は 甲 状腺 疾 患 が 頸 部 腫 瘤 の なか で大 きな ウエ イ トを 占 め る とい う報 告 もあ り念 頭 に置 く必 要 が あ る と 思 われ た。 悪 性 疾 患 はMalignantHistiocytosisと Hodgikindiseaseが 見 られ た が,分 化 型濡 平 上 皮 癌 や 転 移 性 悪 性腫 瘍 は認 め られ な か った。 従 来 よ り小 児 で は 肉 腫 が 多 い と され るが 今 回 の結 果 も同 様 で あ り,数 は 少 な くて も充 分 に 念頭 に麗 く必 要 一6一
小 児 耳V◎L12,No。1,1991 が あ る と思 わ れ た 。 頸部 腫 瘤 の 部 位 1前 頸 部 上 部(オ トガ イ下 部)17例 2前 頸 部 中 ∼下 部1例 3顎 下 三 角9例 4胸 鎖 乳 突筋 部 上1/34例 5胸 鎖 乳突 筋 部,頸 動 脈 三 角14例 6後 顎 三 角5例 7鎖 骨 上 窩1例
(3)当 科 に お け る小 児 頸 部 腫 瘤
32症 例 の検討
松 下 太 ・重 見 英 男 ・渡 辺 徳 武 茂 木 五 郎(大 分医科大学耳鼻咽喉科) は じ め に 小 児頸 部 腫 瘤 の 原 因 に は,発 生 異 常 に 起 因す る もの か ら炎 症 ・腫瘍 な どに よる も のな ど様 々な も の が あげ られ る。 そ の 治療 に お い て も,保 存 的 治 療 の み で軽 快 す る もの か ら緊 急 手 術 を 要 す る もの ま で あ り,治 療 選 択 に は 的 確 な診 断 が 必 要 で あ る。 当科 に おい て10年 間 に経 験 した 小 児 頸 部腫 瘍 32例 につ いて 検 討 し,興 味 あ る症 例 に つ い て報 告 した。 対 象 1981年10月 か ら1990年10月 まで に 当 科 を 受 診 し た15才 以 下 の 小 児6124例 の うち入 院 加 療 を 要 した 小 児頸 部 腫 瘤32例 に つ い て検 討 した 。 結 果 と考 察 表1に 原 因 別 分類 を示 した 。 炎 症 性 腫 瘍 は8例 (25%)と 少 な か った 。 これ は 多 くの 場 合,当 科 で は第 一 線 の 病 院 を経 由 して 患 者 が 当 科 に 紹 介 さ れ る こと,外 来 で保 存 的 に加 療 され る こ とが 多 い た め と考 え られ る。 さ らに,発 生 異 常 に よる もの が15例(47%)で,な か で も正 中 頸 嚢 腫 及 び痩 孔 が大 部 分 であ った。 そ の他,側 頸 嚢 胞 が2例,急 性化 膿 性 甲状 腺 炎 と して発 症 した 下 咽 頭 梨 状 窩痩 も1例 認 め た 。 腫瘍 性腫 瘤 で は リンパ管 腫 等 の 良 表1小 児頸部腫瘤 性 腫 瘍 の他 に 悪 性 リンパ腫 や粘 表 皮 癌 も認 め た。 図1は 発 症 時 の年 齢 分 布 で,5才 以 下 が20例(63 %)と 多 く,な か で も発 生 異常 や 炎症 に よる 腫瘤 が 多 く見 られ た 。 これ は,発 生 異常 が この時 期 に 発 見 され や す い こ とや 発 熱 脱 水 等 の 全 身 状態 の悪 化 に陥 りや す い こ とが 考 え られ る。 また,悪 性 腫 瘍 は高 年 齢 層 に 多 い 傾 向 が 認 め られ た。 図2は, 頸部 腫 瘤 を発 生 部 位 別 に 分 け 主 な 疾 患 を 示 した も 発症時年齢 図1小 児頸部腫瘤の年齢分布 一7一小 児 耳Vo1.12,No.1,1991 図2小 児頸部腫瘤 の発生部位 と主な疾患 の で,好 発 部 位 は,前 頸部 で は正 中頸 嚢 胞,側 頸 部 で は側 頸 嚢 胞 や リ ンパ節 炎,願 下 及 び 顎 下部 で は 種 々の腫 瘍 性 疾 患 や リソパ節 炎が 認 め られ た。 ま と め 小 児 頸部 腫 瘤 は保 存 的 治 療 か ら緊 急 手 術 を 要 す る もの まで様 々 で,そ れ に 対応 した 的確 な診 断 と 適 切 な 治療 選 択 が 重 要 とな る。 さ らに,発 生 異 常 に よ る もの が 多 く,胎 生 期 の 発 生過 程 を十 分 に 理 解 す る こ と,治 療 後 の期 間 が 長 く機 能 や 形 態 保 存 に留 意 し後遺 症 を残 さ ない よ うにす る こ と,悪 性 腫 瘍 の可 能 性 も考 慮 す る こ とが 必要 で あ る。 質 疑:古 賀 慶 次郎(国 立 小 児) 梨 状 窩 痩 の 基 原 は第3鯛 弓性 で な く,第4鰐 弓性 と思 い ます。
(4)当 科 におけ る小児頸部腫瘤
の臨床統計
大 上 研 二 ・関 谷 透 ・増 満 洋 一 緒 方 洋 一 ・守 谷 啓 司 (山口大学 医学部耳鼻咽喉科) 小 児 の頸 部 腫 瘤 は 炎症,腫 瘍,発 生 異 常 に よる もの な どの 原 因 が あ り,そ の治 療 も手 術的 加 療 を 要 す る もの,経 過 観 察 のみ で軽 快 す る もの な ど様 々で あ る。 我 々は 最近 の約5年 間 の 小 児頸 部 腫 瘤 症 例 に つ い て臨 床 統計 的 に検 討 した の で症 例 の呈 示 を加 え て報 告 す る。 対 象 は1986年1月 か ら1990年9月 まで に 山 口大 学 医 学部 耳鼻 咽 喉 科 外 来 を頸 部 腫 瘤 を 訴 え て受 診 した15才 以下 の小 児 の症 例74例 で あ る。 この数 字 は 同時 期 に 当 科 外 来 を 受 診 した 小 児症 例 の3%に 当 た る。 対 象 を 炎 症 性 腫 瘤,腫 瘍,発 生 異 常 に よ る腫 瘤,そ の他 の4群 に 分類 した。 各 群 の症 例 数 は炎 症 性54例,腫i瘍7例,発 生 異 常11例,そ の他2例 で あ った(表1)。 最 も多 か った の は 炎 症 性 頸 部 腫 瘤 で全 体 の約7割 を 占 め た。 そ の 他 とは各 種 画 像 検査 な どに よ って 片側 性 の咬 筋 肥 大 と診 断 され た2例 で あ る。 症 例 全 体 の 平 均 年 齢 は8.0才 で,性 別 で は 男43 例,女31例 で あ った。 各 疾 患 群 別 の平 均 年 齢 は 炎 症 性7、7才,腫 瘍9.5才,発 生 異 常7。4才 と,腫 瘍 群 が若 干 高 い 傾 向 がみ られ た 。 炎 症 性 頸部 腫瘤 の 内 では 唾 液腺 炎が 最 も多 く31 例,次 い で 非 特異 性 リンパ節 炎 が17例,以 下 結 核 性 リ ソパ節 炎,口 腔 底 蜂 窩 織 炎,伝 染 性 単 核 球 症,亜 急 性 壊 死 性 リ ンパ 節 炎,川 崎 病 が み られ た。 こ の うち特 徴 的 な のは 唾 液腺 炎 で は耳 下 腺 放 線 菌 症2例 と結 核 性 リ ンパ 節 炎1例 で,い ず れ も そ の存 在 を 念頭 に お いて 診 察 しな けれ ば 診 断 困 難 な疾 患 で あ り,そ の治 療 も特 異 的 で あ り,注 意 を 要 す る疾 患 で あ る と考 え た。 腫 瘍 性疾 患 では 良性 腫瘍,悪 性 腫 瘍 ともほ ぼ 同 頻 度 で 認 め られ,特 に 悪 性腫 瘍 に お い て悪 性 リン パ腫2例 ,上 咽頭腫瘍1例 を認 め,こ れ らは若年 に おい て も しば しば 認 め られ る もの で,小 児 の頸 部 腫 瘤 を診 察 す る上 で,決 して見 逃 して は な らな い もの と考 え た。 発 生異 常 に よる腫 瘤 で は正 中頸 嚢 胞,痩 孔 が6 表1小 児頸部腫瘤症例 (1986年1月∼1990年9月山口大学耳鼻咽喉科)小 児 耳V◎L12,No.1,1991 例,側 頸 嚢 胞,痩 孔 が2例,嚢 胞状 リンパ管 腫 が 2例,下 咽 頭 梨 状 窩痩 が1例 で あ った。 以上 の結 果 に 比較 的 稀 と思 わ れ た側 頸 嚢 胞 に 感 染 した頸 部 膿瘍,下 咽 頭 梨 状 窩 痩 の2例 につ い て 症例 を提 示 した。 い ず れ の症 例 も 頸 部 膿 瘍 のか た ち で 発 症 した が,小 児 に 特 徴 的 な発 生 異 常 に 起 因す る嚢 胞,痩 孔 に感 染 した もの で あ った 。 保 存 的 治療 に て炎 症 所 見 が 軽 快 せ ず,緊 急 的 に 排 膿 術 を 行 ったた め 病 巣 の全 摘 出 が 困難 で,再 手 術 を 余儀 な く され た 症 例 で あ った が,そ の診 断 に 関 して は 発生 異 常 に よ る疾 患 を 念 頭 に置 き,ま た 治療 に 際 してそ の全 摘 出が 必 要 で あ る事,そ して根 治 手術 を行 うに当 た っては 炎 症 の 消退 を待 って か ら行 う必 要 が あ る可 能 性 を 強 調 した。
(5)小 児の頸部腫 瘤症例 の治療
経験
木 村 照(神 戸大耳鼻咽喉科) は じ め に 過 去20年 間 に 経験 した小 児 の頸 部 腫 瘤症 例 の う ち か ら10症 例 を 報 告 した。 症 例 症例1:初 診 時4歳 男 児 主訴:左 頬 部 ・顎 下 部 の腫 脹 診 断:左 上 咽 頭 横紋 筋 肉腫(胎 児 型) 治療:放 射 線 療 法 と化学 療 法 経過:す でに 頭 蓋 内 へ進 展 してい た た め,手 術 適 応 に は な らな か った。8ヵ 月 後 に 死 亡。 症例2:初 診 時 生 後1ヵ 月 男 児 主訴:右 口蓋 腫 瘤,哺 乳 障 害 診 断;右 上 顎 横 紋 筋 肉腫(胎 児 型) 治療:腫 瘍 は 口腔 内 に む け て増 大 した の で 生 後 50日 に右 上 顎 全 摘 を 行 った。 右 硬 口蓋 欠 損 に 対 し て 左硬 口蓋 粘 骨 膜 弁(回 転 弁)を 用 い て 修 復 した。 術 後 化学 療 法 を 行 った 。 経過:現 在9歳 で あ るが,再 発 は ない 。 症 例3:初 診 時4歳 男 児 主 訴:鼻 出血,口 蓋 腫 瘤 診 断:上 咽 頭 腫 瘍(初 診 時 の 試 験 切 除 に お け る 病 理 診 断 は 肉 腫 で あ った が,後 に 血 管 線維 腫 と変 更 され た) 治療:放 射 線 療 法 に よ り踵 瘍 が 縮 小 した の で, 手 術(経 口蓋 法)に よ り腫瘍 摘 出 を 行 った。 経 過17歳 に な り左 顎 下 腺 に 転 移 が 起 こっ た。 転 移 腫 瘍 摘 出 と頸 部 リンパ 節 廓 清 を行 い,術 後 照 射 を併 用 した 。 転 移 腫瘍 の病 理 診 断 は血 管 肉腫 で あ った。 初 診 時 の 原 発 巣 の病 理診 断 は悪 性 か ら良 性 へ 変 更 され た が,転 移 を み た経 過 に よ って原 発 巣 は悪 性 度 は 低 くて もや は り悪 性 腫 蕩 で あ った と 思 わ れ る。 以 後 再 発 は な く,現 在22歳 で あ る。 症 例4:初 診 時生 後2日 女 児 主 訴:左 頸部 腫 瘤 診 断:奇 形 腫 治 療:腫 瘍 は 増 大 し気 道 圧 迫 症 状 が 生 じた た め,生 後16日 に摘 出 を行 った 。 病 理 診 断 は 神 経 組 織 軟 骨 組織 腺 組 織,扁 平 上 皮 を有 す る奇 形 腫 で あ った。 経 過:現 在13歳 で あ る が,再 発 は な い。 症 例5:初 診 時1歳0ヵ 月 男 児 主 訴:右 頬 部膨 隆 診 断:未 定(海 綿 状 リンパ管 腫 と推 定) 治 療:経 過 観 察 の み。 経 過:右 頬 部 に手 拳 大 の弾 力性 の あ る軟 らか な 腫 瘤 を 触 れ るが,機 能 障 害 な く増 大 傾 向 も な い。 こ のた め 摘 出 手 術 に ふ み きる契 機 が得 られ なか っ た 。5歳 まで フ ォ ロー したが,腫 瘤 の 大 き さに 変 化 は 起 こ らな か った。 症 例6:初 診 時2歳 女 児 主 訴:右 頸部 腫 瘤 診 断:嚢 胞 状 リンパ管 腫 治 療:3歳11ヵ 月 に 腫 瘤 は増 大 し気 道 圧 迫 症 状 が 出た た め摘 出 を行 った。 術 後 は創 部 よ り リンパ 漏 が 続 い た が,創 部 に感 染 が起 こっ た後 に リンパ 漏 は 止 ま った。 リンパ漏 の源 泉部 に 炎症 に よる 硬 化 が 生 じた た め と思 わ れ た。 経 過:現 在12歳 で あ る が,再 発 は な い。 症 例7:3歳 女 児 主 訴:右 耳 管通 気 中 の 右顔 面 ・頸 部 の膨 隆 診 断:気 腫 経 過:滲 出性 中耳 炎 の た め通 気(カ テ ー テ ル法) を 行 った と ころ,同 側 の顔 面 ・頸 部 に 気 腫 を 生 じ た。 上咽 頭 か ら副 咽 頭 間 隙 を経 て顔 面 ・頸 部 へ と 一9一小 児 耳Vo1.12,No.1,1991 気腫 が 一 瞬 の うち に 拡大 した もの で あ る。 抗 生 剤 とス テ ロイ ド剤 に よ り気 腫 は 翌 日に ほ ぼ 消 退 し た ◎ 症 例8:4歳 男児 主 訴:左 頸 部 腫 瘤 診 断:左 頸 部 膿 瘍 治 療:切 開,排 膿 経 過:上 気 道 感 染 に 伴 って化 膿 性 頸 部 リンパ節 炎 が起 こ り,こ れ が膿 瘍 化 した と思 わ れ た。 治療 に よ り左 頸 部 膿 瘍 が 治癒 した1週 間 後,今 度 は右 頸 部 膿 瘍 が 生 じた 。 同 様 の治 療 を 行 っ た。 前 半 は左 側 炎 症 に 伴 い右 側 炎 症 が 抑 制 され て いた と思 わ れ た 。 症 例9:1歳8ヵ 月 男 児 主 訴:左 耳下 部 腫 脹 診 断:左 反 復 性 耳 下 腺 炎 治療:綿 棒 刺 激 療 法 経 過:風 邪 の と き左 耳下 部 腫 脹 を きた した とい う。 他 院 へ1ヵ 月 通 院 した が 改 善 せ ず に 来 院 し た。 初 診 時 の 治療 に よ り左 耳 下 腺 腫 脹 は4日 後 に 消退 した 。 と ころ が,そ の3日 後 に 今度 は右 耳 下 腺 腫 脹 が 起 こ った。 同様 の治 療 に よ り右側 も消 退 した 。 第8例 と同 じ く左 右 シ ー ソ ー現象 を示 した 炎 症 で あ る。 症 例10:9歳 女 児 主 訴:頸 部 の運 動 障 害 診 断:左 扁 桃 周 囲 炎 後 の斜 頸 治療:綿 棒 刺 激 療 法 経 過:急 性 扁 桃 炎 の あ と頸 部 の運 動 障 害 を きた した との こ とで,そ の2週 間後 に 来 院 した。 左 口 蓋 扁 桃 周 囲 の 発赤 を認 め た。 左 頸 部 は著 しい筋 硬 結 と圧 痛 を 生 じ顔 を左 へ 向け る斜頸 を きた してい た 。 綿棒 刺激 療 法(左 鼻 腔 へ 実 施)に よ り筋 硬 結 は 消 退 し,1週 間 後 に 斜 頸 は な お った 。(作 用 機 序 は 明 らか で な いが,こ れ まで に 多 くの症 例 に お い て鼻 腔 刺 激 が 同側 頸 筋 緊 張 の 改善 に有 効 で あ る こ とを観 察 して きた が,本 例 もそ の1例 で あ る) ま と め 小 児 の頸 部 腫瘍 の 自験 例 に お いて,良 性 ・悪 性 を とわ ず 腫瘤 が増 大 傾 向を 示 した 時 期,気 道 圧 迫 症 状 を 示 した時 期 が手 術 適 応 とな った。 炎症 性 腫 瘤 に 対 して は積 極 的 に穿 刺,切 開 を 行 う こ とが 必 要 で あ った。 質疑:岸 本 誠 司(高 知 医大 耳 鼻 科) 小 児 の 頸部 リンパ節 腫 大 を み た場 合 の 生検 の 適 応,時 期 に つ い て 応 答:木 村 照(神 戸 大 耳 鼻 科) 経 過 の長 い頸 部 腫 瘍 に 対 しては 積 極 的 に試 験 切 除 すべ き と考 え ます。 応 答:古 賀 慶 次 郎(国 立小 児) 頸 部 腫 瘍 に 対 し プ ロー ベ を と るか ど うか は 硬 い腫 瘤 で急 速 増 大す る場 合 で ない か と思 う。 追 加1木 村 照(神 戸大 耳鼻 科) 頸 部 腫 瘍 が増 大す る時 期 は もは や急 ぎ治療 せ ね ば な らな い と きです.増 大 す る までに 情 報 を 得 て,準 備 す べ きだ とい う意 味 で,経 過 の長 い もの は試 験 切 除 を行 うと考 え たわ け で す。 質 疑:鈴 木淳 一(帝 京 大) 小 児 の結 核,結 核 性頸 部 リンパ 節 炎 な どの現 状 につ い て伺 い た い、 質疑:加 納 滋(国 立栃 木 耳鼻 科) ツ反 の 結 果,強 陽性 ・二 重 発 赤 硬結 ,水 泡等 の結 果 が 出 た 時,ど の点 を基 準 に 次 の検 査 に 進 む の が 良 い か。 応 答:・一 色玄(大 阪 市 大 小 児 科) ツ反 を行 わ ず に頸 部 リンパ節 腫 瘍 と考 え ,バ イ オ プ シ ーされ た 結 核 性 リンパ節 炎 を経 験 した こ とが あ ります 。 この 症 例 は ツ反 強 陽 性 で は あ った が 胸 部X線 像 は 正 常 で した 。 ま た 数 ヶの リンパ節 が ゆ 着 して お り,そ の局 所 の所 見 は教 科 書 的 で あ った 。 ツ反 が偽 陰 性 に な るの は免 疫 不 全,感 染 後 な どに 見 られ るが,そ の他 結 核 で あ るに もか か わ らず陰 性 で あ る こ とが あ り うる こ とを い つ も念頭 に置 く必 要 が あ る。 追 加:岩 瀬 師 子(関 西 医 大 小 児 科) 頸部 リンパ節 の生 検 で,組 織 の融 解 壊 死 は あ るがTB性 病 変 を認 め な い症 例 で,あ る 日突 然 胸 部X線 上 栗 粒 結 核 像 を きた した症 例 を 経 験 して い ます 。 ま た,TBの 治 療 を 終 了 した 例 で,空 腹 時 胃液 培 養 でTB菌 を認 め た こ とも あ る の で,小 児 結 核 の診 断 ・治療 は 慎 重 にす べ き と考 え て お り,X線 検 査,TB菌 培 養 と い う内 科 的 検 査 は 必 要 と思 い ます. 追 加:岸 本 誠 司(高 知 医 大) 最 近2例 の 小 児 頸 部 リ ンパ 節 結 核 を 経 験 し た 。 い ず れ も ツ反 陰 性,血 沈 正 常 で あ った 。
小 児 耳V◎L12,N◎.1,1991
ま325回回串⑪冊目厨国嘔尉団寵 臼
第二群 の ま とめ
座長二 山 下 敏 夫(関 西医大 耳鼻咽喉科) 岩 瀬 師 子(関 西医大小児科) 本群 は乳 幼 児 に好 発 す る嚢 胞 状 リンパ管 腫 に関 す る も の3題,リ ン パ 管 腫 に つ い て1題, Castlemanリ ンパ腫1題 ・計5題 の頸 部 の リンパ 系 発 育 異 常 に よ る腫 瘤 症 例 を 集 め た も の で あ っ た。 まず 嚢 胞 状 リンパ管 腫 で は,特 に そ れ が新 生 児 み られ る時,呼 吸障 害 や 哺 乳 障 害 な ど生 命 にか か わ る こ とが 多 く,そ の際,緊 急 退 避 的処 置 と して 何 が最 善 の 治療 方 法 とな るか に つ い て討 議 が な さ れ た。 結 論 と して救 命 的 手 段 と して手 術的 加 療 し か な い との 事 で あ った 。 次 に 緊急 を要 しな い症 例 の 根 治 性 を考 え た治 療 手 術 に つ い て,薬 剤 注 入 の み で 良 い の か,や は り 根 治 的 に は 手 術的 摘 出が 必 要 な の か に つ い て討 議 が な され,そ の結 果,外 科 的 に 摘 出 が可 能 と考 え れ ば 手 術 的 加療 を行 い,周 囲 重 要 臓器 との関 係 で 手 術 的 摘 出 が 難 しい時 には 硬 化 剤 注 入 が 良 い。 た だ,硬 化 剤 注 入 が そ の後 の手 術 を 難 し くす るた め,ま ず 硬 化 剤注 入 を して み て,改 善 しな けれ ば 手 術 適 応 とい う安 易 な考 え に は 問 題 が あ る との結 論 であ った。 さ ら に 薬 剤 注 入 を 行 な う場 合,BLMとOK-432の 両 者 が 報 告 され た が,そ の どち らが 良 い の か,ま た は そ の他 の薬 剤 と して ど うい った ものが 考 え られ る のか 等 の 討議 が な され,現 時 点 の 結論 と して,両 者 と も有 効 だ が副 作 用 の点 を考 え る と OK-432の 方 が や や 優 れ て い るの では 、 との 意 見 が 多 か った。 また,大 きな嚢 状 リ ンパ 管 腫 の場 合 は,最 近 で は 胎 児 の段 階 で も超 音 波 で 診 断 で き る こ とが あ り,今 後 この 問題 は産 婦 人 科 医 を 含 め て検 討 す べ き との意 見 が あ った。 最 後 にC窺stlemanリ ン パ 腫 と い う珍 しい 一 例 が 呈示 され,そ の 本体 は 良性 腫 瘤 で あ り,治 療 は 摘 出 で 良い との 事 で あ った が,こ の 様 な 疾 患 が存 在 す る とい う認 識 を 新 た に した。 (6)頸 部 嚢 胞 状 リ ソ パ 管 腫 の2 例 兵頭政光 ・丘村 煕 ・湯本英二 中村光士郎 ・宮内浩介 ・佐藤英光 瀬越 昌弘 (愛媛大学医学部耳鼻咽喉科学教室) 1.は じ め に 嚢 胞 状 リンパ管 腫 は乳 幼 児 の頭 頸 部 に好 発 し, 治 療 に 難 渋 す る こ とが少 な くな い。 今 回我 々は, 呼 吸 困 難 を 呈 した頸 部 嚢 胞 状 リンパ管 腫 の2症 例 を経 験 した の で報 告 す る。 皿.症 例 症 例1:4ヵ 月,女 児 主 訴:呼 吸 困 難,体 重増 加 不 良 現 病 歴:生 下 時 よ り呼 吸 困 難 お よび 喘 鳴 が あ っ た、 生 後3ヵ 月 頃 よ り呼 吸 困 難 が よ り増 強 し,特 に睡 眠時 は両 親 が 患 児 の下 顎 を 挙 上 しな け れ ば な らな くな った。 さ らに哺 乳 障 害 に よる体 重 増 加 不 良 もみ られ た。 経 過:入 院時 右 顎 下 部 よ り咽 頭 後 壁 の 腫脹 が 強 く高度 の呼 吸 困難 を呈 して い た た め,直 ち に 気 管 内挿 管 を 行 った。 そ の 後 のCT検 査 に て 右側 頭 窩 か ら頸 部 に拡 が る リン パ 管 腫 を 疑 い(図1), 手 術 療 法 を 行 った。 嚢 胞 は二 房性 で あ りそ の一 方 に は 嚢 内 出 血 が み られ た。 嚢 胞 は 重 要 血 管 や 神 経 を 損 傷 す る こ とな く全摘 出 で き,そ の 後4年6ヵ 日オノ茎茎≧呂}計ス、菰颪 盛 力 込 ゾ 篭、ナ擁 、 一一11一小 児 耳Vol.12,No.1,1991 図1 症 例2:生 後14日,男 児 主 訴:右 側 頸 部 腫 脹,呼 吸 困 難 現 病歴:生 下 時 よ り右 側 頸 部 に 手拳 大 の腫 脹 が あ り生後14日 目に 当科 受 診 した。 頸 部 リ ンパ 管 腫 と診 断 し,し ぼ ら く経過 観察 を行 った が 腫 脹 は徐 々に増 大 し喘 鳴,呼 吸 困難 お よ び嚥 下 障 害 もみ ら れ る よ うにな った た め,手 術 療 法 を 目的 と して生 後57日 目に 入 院 とな っ た。 経 過:入 院時 右 顎 下 部 よ り側 頸部 にか け,約 10×10cmの 波 動 を有 す る弾 性 軟 の 巨大 な 腫 瘤 を 認 め た(図2)。 また 強 い 陥 没 呼 吸 を 示 し,動 脈 血 中 酸 素 分 圧 は46.1mmHgと 高 度 に 低 下 して い た。 嚢 胞 は 多 房 性 で,気 管 を取 り巻 き周 囲 と強 く 癒 着 してい た が ほ ぼ 全摘 出 で きた 。 な お摘 出 に際 し舌 下 神 経 の 切 断 を余 儀 な くされ た た め端 々吻 合 を行 った。 術 後 呼 吸 状 態 は す み や か に 改 善 し,1 年2ヵ 月後 の現 在 に至 る まで 再 発 を認 めず,ま た 舌 運動 もほ ぼ正 常 に 回 復 して い る。 皿.考 察 リンパ 管 腫 は 胎生 期 の原 始 リンパ 嚢 の 遺残 に よ り生 じる と され,病 理 組 織 学 的 に は1)毛 細 リ ン パ 管 腫 ,2)嚢 胞状 リンパ管腫,3)海 綿状 リンパ管 腫 に 分 類 さ れ る。 こ の うち 嚢 胞 状 リソパ 管 腫 は cystichygromaと も呼 ば れ,嚢 胞 状 に 拡 張 した リンパ腔 よ りな り内 面 は一 層 の扁 平 上 皮 に覆 わ れ る。 嚢 胞 状 リ ソパ 管 腫 は3歳 以下 の小 児 に 発症 す る こ とが ほ とん どで,生 下 時 も し くは 生 後 間 もな く よ りみ られ る こ と も多 い1・2)。そ の 約 半 数 は 頸 部 に発 症 し次 い で胸 部,腋 窩,腹 腔 な どが好 発 部 位 図2 で あ る2)。頸 部 で は側 頸 三 角 に好 発 す る が,巨 大 化 した り咽頭 付 近 に発 生 す る と 自験 例 の よ うに 呼 吸 困 難 や 嚥下 困難 を きた す。 さ らに縦 隔 に まで進 展 す る と,き わ め て重 篤 な症 状 を呈 す る2)。 本 症 の 自然 消 退 は 稀 と され て い る1・2)。治 療 は 保 存療 法 と手 術 療 法 に 分 け られ,前 者 に は放 射 線 療法,吸 引 ・切 開 ・ ドレナ ー ジ法,硬 化療 法 な ど が あ る が,最 近 ブ レオ マ イ シ ンやOK-432の 注 入 療 法 が 注 目 され3・4),現在 に お け る保 存 療 法 の 主 体 を なす 。 しか し,感 染 や 肺 線 維症 等 の副 作 用 に は十 分 に 注 意 を払 うべ きこ とは 言 うまで もない 。 我 々は,嚢 胞 の増 大 傾 向や 圧 迫症 状 が無 い症 例 で は しぼ ら く保存 療 法 を行 って も よいが,根 治 の ため に は や は り手 術 療 法 が 必 要 と考 え て い る。 手 術 療 法 で 問題 とな る の は手 術 時 期 で あ る。 本 症 は 局 所 の浸 潤傾 向が 強 く早 期 の手 術 が望 ま しい との 考 え2)と,頸 部 とい う解 剖 学 的 に 複雑 な部 位 に 発 生 す るた め,重 要 血 管 や 神経 の損 傷 の危 険 性 が あ り侵 襲 も大 き くな る こ とか ら,新 生 児 期 や 乳 児 期 の手 術 は 避 け るべ き との考 え3)があ り,い ま だ一 定 の 見解 は な い。 我 々は 自験 例 の よ うに 呼 吸 困 難 や 嚥 下 困 難 な ど の高 度 の圧 迫 症 状 を 有 す る場 合 は,た とえ新 生 児 期 で あ って も早 期 に 手 術療 法 に ふ み きるべ き と考 え て い る。 】V.ま と め 新生 児 の頸 部 に 発生 し,高 度 の呼 吸 困 難 を呈 し た嚢 胞 状 リ ンパ管 腫 の2症 例 を 経 験 し,手 術 的 に 一12一
小 児 耳VoL12,No,1,1991 摘 出 した の で報 告 した。 本 症 の根 治 に は 手 術療 法
が 必 要 で あ るが,血 管 や神 経 に 対 す る副 損傷 に は 十 分 に注 意 す る必 要 が あ る。
参 考 文 献
1) Chait D, Yonkers AJ et al: Management of cystic hygromas. Surg Gynecol Obst 139: 55-58, 1974
2)池 田恵 一,大 神 浩,他:小 児 の リ ンパ 管 腫 の 治 療。 臨床 と研 究53:442-448,1976 3)高 戸 毅:ブ レオ マ イ シ ン注 入 に よる嚢 胞 状 リ ン パ 管腫 の治 療 。 形 成 外科31:752-756 ,1988 4)世 良 好 史,吉 村 実 信,他:嚢 胞 性 リ ソパ 管 腫 の診 断 と治療 の 要 点。 小 児外 科12:1587-1591,1980 質 疑:都 筑 俊 寛(帝 京 大 耳 鼻 科) 症 例1,2に1aryngomalaciaやtracheoma1-aciaは 合 併 し て い た か 。 応 答:兵 頭 政 光(愛 媛 大) 呼 吸 困 難 はairwayの 物 理 的 な 圧 迫 狭 窄 に よ る も の で,tracheomalaciaや1aryngomalacia の 所 見 は み ら れ な か っ た 。 質 疑:行 木 英 生(静 岡 日赤 病 院 耳 鼻 科) 咽 頭 収 縮 筋 に 浸 潤 あ る い は 進 展 して い る 症 例 で は,収 縮 筋 周 囲 の 処 理 は ど の よ うに さ れ た か 。 応 答:兵 頭 政 光(愛 媛 大) 咽 頭 収 縮 筋 と 嚢 胞 が 強 く 癒 着 し て い る 場 合 は,嚢 胞 壁 が 一 部 残 っ て も や む を 得 な い と 考 え る。 質 疑:山 下 敏 夫(関 西 医 大) は じめ に 硬 化 剤 注 入 を 行 い ,改 善 しな い症 例 に 手 術 と い う考 え は で き な い か 。'→ 応 答:兵 頭 政 光(愛 媛 大) 呼 吸 困 難 や 嚥 下 困 難 が な く,増 大 傾 向 の な い 症 例 で は,経 過 観 察 を 行 っ て い る 症 例 も あ る 。 硬 化 療 法 の 経 験 は 現 在 の と こ ろ な い 。
⑦ 新 生児頸 部嚢胞 状 リンパ管
腫 の3例
久納 優 子 ・佐 々木 照 子 ・小 島崇 嗣 木下 洋 ・松 崎修 二 ・岩 瀬 帥 子 小林 陽 之助 (関西医科大学附属病院小児科) 佐 藤 正 人 ・山 田 修 ・光 吉 一 弘 濱 田吉 則(同 外科) は じ め に 小 児 に おけ る嚢 胞 状 リ ンパ 管 腫 は 組 織 学 的 に は 良性 で あ るが,発 生 部 位 に よ って は 治療 が 極 め て 困 難 な場 合 が あ る。 治 療 に は 手 術療 法 と保 存 的 療 法 が あ り,保 存 的 療 法 と して はBleomycin(以 下BLMと 略 す)に 加 え て,近 年OK-432 (piciba面1;中 外 製 薬)の 局 注 に よ る硬 化 療 法 も 試 み られ 好 成 績 を得 て い る1吻。 今 回我 々は,出 生 時 に発 症 した頸 部 嚢 胞 状 リ ン パ 管 腫 の3例 を経 験 し,手 術療法 と保存的療法を 併 用 して 治療 に あ た った の で報 告 す る。 症 例 症 例1:生 後0日 の 男 児 在 胎26週 時 に 胎 児 エ コー で 頸 部 腫 瘤 を 指 摘 さ れ,在 胎33週 時 に 腫瘤 が 巨大 な た め帝 王 切 開 に て 出生 した 。 出生 体 重2840g。 出 生 時 か ら頸 部 の腫 瘤 に よ る呼 吸 障 害 が あ り,た だ ち に挿 管 した(図 1)。 生 後3時 間,腫 瘤 を 穿 刺 し血 性 内 容 液 を100 図1症 例1:入 院 時 一13一小 児 耳Von2,No、1,1991 m1吸 引 し,BLM2mgを 局 注 した 。 児 は 出 生 時 か ら炎症 反 応 が強 く,感 染 巣 は 不 明 で抗 生 物 質 投 与 に 抵 抗 した た め,生 後3∼6日 に 交 換 輸 血 を 計 4回 施行 した。 しか し生 後9日 緑 膿 菌 に よ る肺 炎 を 併発,生 後10日 にBLM局 注 後 も腫瘤 の増 大 が 進 み,生 後15日 手 術 に 踏 み切 った 。 手 術 は腫 瘤 が 迷 走 神 経,内 頸 動 脈 に 浸潤 して いた た め,亜 全摘 に終 っ た。 手 術 終 了 直後,挿 管 チ ュ ー ブの リー ク が あ り,入 れ 換 え の た め抜 管 した と ころ,急 激 な 気 道 閉 塞 を きた し,挿 管 困難 とな り心停 止 した 。 蘇 生 後 気 管 切 開 術 を 施行 した が,全 身状 態 は 回 復 す る こ とな く死亡 した。 症 例2:生 後9日 の男 児 胎 児 期 に は異 常 を 指 摘 されず,在 胎38週 時 に頭 位 自然 分 娩 で 出 生 した。 出生 体 重2380g。 出生 時 巨舌 を認 め た のみ で あ った が,生 後3時 間右 側 頸 部,前 胸 部 に腫 瘤 が 出現 し増大 した 。 生 後9日 精 査 目的 で 当 科 転 科 と な り(図2),嚢 胞 状 リ ンパ 管 腫 と診 断 し,生 後16,28,42,51,65日 に BLM計12mgを 局 注 した。 巨 舌 は 不 変 で あ った が,前 胸 部 の腫 瘤 は 消 失,頸 部 腫 瘤 は 縮 小 したた め退 院 し,外 来 に てOK-432の 局 注 を続 けた 。 肺 線維 症 を 発 症 す る こ とな く,身 長,体 重 増 加 も良 好 で1歳 に到 っ た が,1歳2か 月 時 巨舌 に よ る摂 食 障 害,構 音 障害,下 顎 骨 の変 形 を生 じたた め, 手 術 に踏 み 切 った(図3)。 手 術 は2回 に 分 け て 行 い,最 初 に頸 部 腫 瘤 を 摘 出 し気 管 切 開 術 施 行 の 上,2週 間後 に 舌 の部 分 切 除,形 成 術 を行 っ た。 舌 の 切除 標 本 では,舌 は ほ ぼ嚢 胞 状 リンパ 管腫 で 占 め られ て お り,筋 層 は リンパ管 腫 に 圧 排 され て 菲薄 化 してい た 。 現在 経 過 観 察 中で あ る。 図2症 例2:入 院 時 一 ゼ'9一 愚 響照.耐一一'槻 瞬隠 図3症 例2:1歳2か 月 舌部 分切 除 時 図4症 例3:生 後18日 腫 瘤 摘 出 術 時 症 例3:生 後0日 の 女 児 在 胎24週 時 に 胎 児 エ コ ー で 頸 部 腫 瘤 を 指 摘 さ れ,在 胎39週 時 に 帝 王 切 開 で 出 生 し た 。 出 生 体 重 2800g。 出 生 時 右 側 頸 部 に6×2cmの 腫 瘤 を 認 め た が 呼 吸 困 難 は な か っ た 。 腫 瘤 が 増 大 した た め 嚢 胞 状 リ ン パ 管 腫 と 診 断 し,生 後2日OK-4320.2 KE,生 後10日0.6KE局 注 を 行 っ た 。 腫 瘤 は 一 旦 縮 小 した が 再 度 増 大 し,生 後16日 呼 吸 障 害 が 出 現 した た め,生 後18日 摘 出 術 を 施 行 した(図4)。 腫 瘤 は 迷 走 神 経,内 頸 動 脈,気 管 に 及 ん で お り, 亜 全 摘 に と ど め た 。 現 在 外 来 に てOK-432局 注 を 続 け 経 過 観 察 中 で あ る 。 考 按 3例 の 臨 床 経 過 を 表1に 示 す 。 症 例1で は,手 術 終 了 後 に 気 道 閉 塞 に よ り死 亡 して お り,術 後 の 気 道 確 保 の 面 で 問 題 が あ っ た と 思 わ れ る 。 症 例2 で は,BLM,OK-432の 局 注 に よ り,新 生 児 期 に 呼 吸 困 難 に 陥 る こ と な く1歳 に 到 っ た が,成 長 上 の 問 題 か ら 手 術 に 踏 み ぎ っ た 。BLM,OK-432が
小 児 耳V◎L12,N◎.1,1991 表1臨 床 経 過 の ま とめ 有 効 で あ った と思 わ れ るが,腫 瘤 が大 き く,ま た 舌 とい う部 位 に 問 題 が あ った た め保 存 的 療 法 で は 治 療 しが た く,最 終 的 に 手術 が必 要 で あ った。 症 例3で は,OK-432局 注 に もか か わ らず 腫 瘤 が増 大 した ため 手 術 を 施 行 した。 術 後 の組 織 所 見 で は OK432注 入 部 に 癒 着 を認 め た が 周 囲 が 拡 大 して お り,急 激 に 増 大 す る腫 瘤 につ い ては 硬 化療 法 の 有効 性 の低 い もの もあ る と思 わ れ た 。 新 生 児 期 に お け る緊 急 手 術 の決 定 は 呼 吸 障害 の 出現 した もの と し,呼 吸 障 害 のな い もの は保 存 的 療 法 に よ り経 過 観 察 が 可 能 で あ る と思 われ た。 結 語 新 生 児 の頸 部 嚢 胞 状 リンパ 管腫 は乳 児突 然 死 症 候 群 の ニア ミス ケ ー スの 中 に もみ られ,気 道 閉 塞 の 出 現 を 予 測 す る 方 法 が 必 要 で あ る。Hamoir ら5)は気 道 閉 塞 の監 視 方 法 と して,フ ァイ バ ー ス コ ー プ,エ コ ー,コ ン トラス トCT及 び持続 的な モ ニ タ リン グを 挙 げ て い る。 この うち,急 激な閉 塞 に対 し即 時 的 に 評 価 の 可能 な エ コーや 持 続 的 モ ニ タ リン グに よ り児 を管 理 し,呼 吸 困 難 出 現 の 際 に は可 及 的 早 期 に手 術 を しなけ れ ば な らな い。 参 考 文 献 1)荻 田 修 平,他:リ ン パ 管 腫 の 治 療;外 科 切 除, Bleomyci獄 局 注 療 法,OK-432局 注 療 法 の 比 較 検 討: 日 本 小 児 外 科 学 会 雑 誌,25;260-264,1989 2>橋 本 凌,他:小 児 嚢 胞 状 リ ソ パ 管 腫 の 治 療;小 児 外 科,22:841-845,1990 3)河 野 嘉 彦,他:嚢 胞 状 リ ン パ 管 腫 のBLMに よ る 治 療 経 験;耳 鼻 臨 床,82:851-856,1989 4)世 良 好 史,他;頸 部 巨 大 嚢 胞 状 リ ソ パ 管 腫 の 治 療 と そ の 成 績;小 児 外 科,16:945-951,1984
5) Hamoir, M.: Surgical management of parapha-ryngeal cystic hygroma causing sudden airway obstruction; Head & Neak Surgery, 10; 406-410 , 1988 質 疑: リンパ管 腫 の治 療 の選 択 につ い て 応 答: 今後 の嚢 胞 状 リンパ管 腫 につ いて で す が,年 長 児 で 呼吸 器 症 状 な ど と くに 合 併 症 の な い 症 例 に つ い て は硬 化 療 法 が 中 心 に な って い くの で は な いか と考 え られ ます 。 また 硬 化 剤 で す が ブ レ ナ マ イ シ ンやOK-432が 現 在 使 用 され て い ます が,副 作用 の こ とを 考 え る と今 後 はOK-432が 中 心 に な っ て い くの で は な い か と考 え られ ま す 。 しか し,わ れ わ れ の 症 例 の よ うに 新 生 児 期 に呼 吸 困 難 を 起 こ した よ うな 場 合 で は,や は り 手 術 を 施 行 しな け れ ぽ な ら な い と考 え られ ま す 。 また 手 術 時 全 摘 出 は 困 難 で す が 遺 残 嚢 腫 に 対 してOK432の 注 入 を 行 うの が よ い と考 え ら れ ます 。 質 疑: 硬 化 剤 注 入 に よ る炎症 性 癒 着 が 手 術 の 部 位 に 及 ん で い な か った か ど うか。 応 答: OK432注 入 の後 に 手 術 を行 った わ け です が, 注 入 部 位 は 炎症 性 の癒 着 が認 め られ ま した.し か し,硬 化 剤 が 注 入 され て い な い部 位 で は リン パ 管 腫 が そ の ま ま残 って い ま した。 質 疑:行 木 英 生(静 岡 日赤 病 院 耳鼻 科) 巨 舌 を来 た した症 例 で は舌 切 除縫 縮 術 が な さ れ るが,咬 合,咀 しゃ く とい う点 か ら,下 顎 骨 あ るい は顎 関節 に対 して,将 来 的 に計 画的 な 治 療 法 を考 え て い るか 。 質 疑: 多 房性 嚢 胞 で は穿 刺 して も増 大 が進 む とお も われ ます が 応 答:久 納 優 子(関 西 医 大 小 児科) ご指 摘 の通 り多 房 性 嚢 胞 で は穿 刺 ,硬 化剤 局 注 を試 み,注 入 部 の縮 小 を得 て も周 囲 の嚢 胞 が 一15一
小 児 耳VoL12,No.1,1991 拡 大す る ため 手 術 が 必 要 とな った 。 質疑:岸 本 誠 司(高 知 医 大) 硬 化 剤 注 入 に よ り神経,血 管 の癒 着 が お こっ て い るが なぜ 手 術 せず に局 注 療 法 を選 ぶ のか? 応 答:久 納 優 子(関 西 医 大小 児 科) 症 例1で は 出 生 時 か ら重 症 感 染 症 を併 発 して お り,DICに 陥 った た め,手 術 に踏 み 切 る の は危 険 が 大 き くまず局 注療 法 を 選 択 した。 又, 出生 直 後 の感 染 の 有無 等 の検 査 のな され て い な い新 生 児 で急 激 な 増大 がみ られ た 場 合 も局注 を 選択 した。 質 疑:岸 本 誠 司(高 知 医大) 硬化 荊 の効 果 は 穿刺 した部 位 以 外 の 嚢胞 に も 及 ぶ か。 硬 化 剤 に よ る線維 化 は 手 術 を 困 難 にす る と思 うが 如 何 か 。 (8)BLMに よ り 治 療 し た 嚢 脆 状 リ ン パ 管 腫4症 例 に つ い て 佐藤英治 ・平川勝洋 ・夜陣紘治 原 田康夫 (広島大学医学部耳鼻咽喉科) 河野嘉彦(国 立太田病院) 嚢胞 状 リソパ腫 は,頸 部 に お け る発 生 頻 度 が 高 いた め,耳 鼻 咽 喉 科 に おい て も時 に遭 遇 す る疾 患 であ る。 この腫 瘍 は 良性 で は あ る もの の発 症 年 齢 が低 く,ま た重 要 臓 器 と隣 接 して い る場 合 が 多 い ため 治 療 に 困難 を きたす 場 合 も少 な くな い。 今 回 わ れ わ れ は,小 児 の頭 頸 部 に 発 生 した嚢 胞 状 リン パ管 腫4例 に対 し,ブ レオ マ イ シ ンエ マ ル ジ ョン を注 入 し,良 好 な成 績 を得 た ので 報 告 す る。 治 療 方 法 投 与 方 法 は,嚢 腫 を 穿 刺,内 容 液 を 吸 引 後 ブ レ オ マイ シ ンエ マ ル ジ ョ ンを 同部 よ り嚢 腫 内に 注 入 した 、 ブ レオ マ イ シ ン エ マ ル ジ ョンは,1m1中 に ブ レオ マ イ シ ンを1,25mg含 む よ うに調 整 した もの を0.2∼0.3mg/kg/回 使 用 した。 BL,Mエ マ ル ジ ョ ン 局 注 症 例 症 例 当 科 で 小 児頭 頸 部 リンパ 管 腫 の ブ レオ マイ シ ソ エ マル ジ 試 ンの 注 入 療 法 を 行 った も のは ,4症 例 で あ った。(表1)発 症 年 齢 は,最 年 少7ヵ 月, 最 年 長 で は5才5ヵ 月 で あ った。 プ レオ マイ シ ン の総 投 与 量 は い ず れ も1kg当 り1mg以 下 で, 一 例 を の ぞ い て 注 入 は 一 回 の み で あ っ た。 注 入 後,効 果 発 現 まで に は1週 間 ∼2ヵ 月 を要 して い た。 また,注 入 後 の経 過 は,い ず れ も注 入 後2日 か ら1週 間 の一 過 性 の腫 脹 を 生 じた後 に,腫 脹 消 退 を繰 り返 しな が ら徐 々に 縮 小 し前例 とも著 明 な 縮 小 を み た 。再 発 は4例 と も現在 ま で(最 長6年) の とこ ろ認 め られ て い ない.副 作用 は,い ず れ も 注 入後,一一過 性 の腫 瘤 の増 大,軽 度発 熱 を認 め る の み でそ の 後 の経 過 観 察 で 色 素沈 着,肺 線 維 症 な ど重 篤 な 副作 用 は認 め て い な い。 考 按 嚢 胞 状 リソパ腫 に対 して は,手 術 に よる摘 出, 硬 化 剤 の注 入,放 射 線 照 射,圧 迫 療 法 等 の治 療 法 が報 告 され て い る。 手 術 に よる完 全摘 出 が,最 も 確 実 な治 療 法 で あ るが,対 象 が 幼 少 児 で あ る こと と好 発 部 位 が頭 頸 部 で あ るた め に そ の 完 全摘 出 は 困難 な場 合 もあ り,部 分 摘 出に 終 わ った場 合 に は リンパ液 漏 出 に よ る感 染,再 発 を 起 こ しやす く死 亡 例 も報 告 され て い る。 完 全摘 出に 成 功 した例 で も術後 に神 経 損 傷 な どに よる重 篤 な 後 遺症 を生 ず る こ と もあ る。 そ の た め1976年 由 良 ら1)の…報告 した,ブ レオ マ イ シ ンを硬 化 剤 と して 使 用 す る局所 注 入療 法 を第 一 選 択 と して用 い て い る施 設 もあ る。 今 回わ れ わ れ の 行 った ブ レォ マ ィ シ ンェ マ ル ジ 鍵ンの 局 注療 法 は1978年 に 谷 川 ら2)によ り報 告 さ れ た もの であ る。 ブ レオ マ イ シ ソエ マ ル ジ 鐙ン注 入 に よ る リンパ
小 児 耳VoL12,No.1,1991 管 腫 縮 小機 転 は以 下 の よ うに考 え られ て い る。 ブ レオ マイ シ ンの 持 つDNA合 成 阻害 作 用 よ りも, 起 炎 作 用 に よ り リンパ内 皮 細胞 を障 害 し,間 質 に 対 しそ の 組 織修 復 過 程 での 線維 化 を促 進 す る こ と で癩 痕 性縮 小 を生 じせ しめ る。 さ らに エ マ ル ジ ョ ン化 す る こ とに よ り薬 剤 効 果 の 持続 性 を高 め る と ともに,エ マ ル ジ ョンの起 炎 作 用 とで効 果 を増 強 す る と推 測 され て い る。 今 回 の わ れ わ れ の症 例 に おい て は,全 例 と も著 効 を 示 し,そ の 投 与 量 は これ ま で荻 野3),猪 股4) に よ りブ レオ マ イ シ ン最 大 投 与 量 の 目安 と して用 い られ て き た 値 で あ る3∼5mg/kgに 比 べ,1 mg/kg以 下 で 比 較 的 少 量 の 投 与 で 有 効 で あ った 。 投 与 後,腫 瘤 の縮 小 は1週 間か ら2ヵ 月 の 間 に 始 ま るが,消 失 に 至 る に は,数 年 を 要 した 例 もあ り,気 道 閉 塞 な どが な けれ ば特 に ブ レオ マイ シ ン の 追 加 を 行 わ ず に 経 過 観 察 の み で よい と思 わ れ た。 副 作 用 に お い て は,一 過 性 の腫 脹,発 赤,発 熱 のみ であ り特 に 重 篤 な 副作 用 は認 め ない が,さ ら に長 期 間 の経 過 観 察 を 行 う予 定 で あ る。 今 回 の リンパ 管 腫 に 対す る,ブ レオ マ イ シ ソエ マ ル ジ ョン注 入 療 法 は,副 作用 も少 な く極 め て 有 用 で あ った 。 しか しな が ら,嚢 胞 状 リ ンパ管 腫 が 良性 の腫 瘍 で あ り,ま た 治療 の対 象 とな る のが 幼 児 で あ る こ と,さ らに は ブ レオ マ イ シ ソはそ の濃 度 に かか わ らず 肺 線 維 症 等 の 重 篤 な 副作 用 を惹 起 す る可能 性 が あ り,そ の 使 用 に は十 分 な注 意 が 必 要 と され る。 現 在,荻 田 ら5)によ り,よ り副 作 用 の少 な いOK432の 局 注 に よ る有 効 例 も1報告 され て お り,今 後 検 討 して ゆ く必 要 が あ る と思 わ れ る。 参 考 文 献 1)由 良 二 郎,他:小 児 の 頸 部 腫 瘤,特 に 嚢 胞 状 リ ン パ 管 腫 とBleomyci簸 の 効 果 に つ い て .小 児 外 科 内 科8:279∼285,1976. 2)谷 川 允 彦,他:S/0型BLMエ マ ル ジ 籔 ン の 実 験 的,臨 床 的 検 討.日 本 臨 床36:208∼209,1978. 3>荻 野 信 夫,他:嚢 胞 状 リ ン パ 管 腫 の 治 療 と そ の 成 績.小 児 外 科161925∼930,1984. 4)猪 股 裕 紀 洋,他:ブ レ オ マ イ シ ン ヱ マ ル ジ ョ ン注 入 に よ る 小 児 嚢 胞 状 リ ン パ 管 腫 の 治 療.小 児 外 科16:919∼924,1984。 5)荻 田 秋 平,他1リ ン パ 管 腫 の 治 療,外 科 切 除, Bleomycin局 注 療 法,OK-432局 注 療 法 の 比 較 検 討.日 小 外 誌25:260∼263,1989. 質 疑:甲 田 嘉 彦(近 畿 大 学) cystichygromaのBLM注 入 療 法 に お い て cyst吸 引 量 は どれ く ら い の 量 が 特 に 有 効 で あ っ た か?
(9)頸 部 リ ン パ 管 腫 に 対 す る
OK-432局
注療 法
羽 金 和 彦 ・佐 伯 守 洋 ・中 野 美 和 子 (国立小児病院外科) 外 科 的 に 切 除 の難 しい リンパ 管 腫 に対 して,ブ レオ マイ シ ソを用 い た局 注 療 法 が 行 わ れ て い る。 しか し,ブ レナ マ イ シ ンに は肺 線 維 症 等 の重 篤 な 副 作 用 の恐 れ が あ り,施 行 に は細 心 の注 意 が 必 要 で あ る。 最 近,溶 連 菌 製 剤 で あ るOK-432(ピ シバ ニ ー ル,中 外 製 薬)の 局 注 に よ って も同様 の 効果 が報 告 され,我 々 も頭頸 部 の リンパ管腫3例 に対 して, OK-432療 法 を 施 行 した。 症 例 症 例1:女 児,年 齢1才7ヵ 月 。 嚢 胞 状 リ ソパ 管 腫。 左 顎 下 部 を 中心 と して 柔 らか い腫 瘤 を 下 顎 全 体 に 認 め,舌 の 表 面 に は 水 泡 形 成 が認 め られ た 。 CT嫁 で は,左 下 顎 部 を 中 心 と して 舌 根 部 か ら 右 の 下顎 部 にか け て リンパ管 腫 の ひ ろが りを認 め た 。 エ コ ーで は,直 径 数cm程 度 の嚢 胞 よ りな る嚢 胞 状 リンパ 管 腫 の 像 を 示 した。 左 顎 下 部 の リンパ 管 腫 に 対 して 初 回0.3KE, 4週 間 あ け て2回 目0.4KEの 注 入 を 行 った 。 注 入 は小 児 リンパ管 腫 研 究 会 のOK-432第1【 相 試 験 の 方 法 に 従 い,0.2KEのOK-432を10m1の 生 食 に溶 解 した 液 を 用 意 して,嚢 胞 を 穿 刺,内 容 液 を 吸 引 除 去 した 後 に,除 去 した 吸 引 液 と 同 量 の OK-432溶 液 を 注 入 す る とい う方 法 で 行 な った. 副 作 用 と して全 身 の発 熱,局 所 の腫 脹 と発 赤 を 認 め,下 顎 部 の腫 脹 の為 に 口腔 粘 膜 の一 部 が潰 瘍 とな り出血 した 。 数 日で炎 症 所 見 は軽 快 した が, 腫 瘤 は や や 腫 大 した ま ま で2滋 月程 経 渦Lた 溢 一17一小 児 耳Vo1。12,No。1,1991 め,一 時 は 無 効か と考 え られ た が,そ の後 次 第 に 縮 小 し,3ヵ 月 後 に は,右 側 顎 下部 に 残存 す る リ ンパ 管 腫 を認 め る のみ で,左 側 は ほぼ 完 全 に 消 失 し,触 診上,エ コー上 とも リンパ管 腫 を認 め な く な った 。 症 例2:女 児,年 齢1才10ヵ 月,混 在 型 リンパ 管 腫,右 頬 部.エ コー にて,小 さい嚢 胞 と海 綿 状 の部 分 とが混 在 した混 在 型 を 示 した。 嚢 胞 液 の 穿 刺 吸 引 が 出来 な か った の で,腫 瘍 内 に 計0.5KE のOK-432を 広 く注 入 した 。 注 入 直 後 は 発 熱,局 所 の腫 脹,圧 痛 を 認 め た が,数 日で 軽 快 した 。3 ヵ月 後 エ コ ー に て 嚢 胞 状 の部 分 は ほ ぼ 消 失 した が,腫 瘍 全 体 の大 きさ に変 化 が 見 られ なか った 。 症 例3:男 児,年 齢5才8ヵ 月,混 在 型 リ ンパ 管腫,左 頸 部 、 エ コ ーに て混 在 型 の リソパ管 腫 像 を 呈 した 。 腫 蕩 内 に広 く注 入 す る方 法 で0.3KE のOK-432を2回 投 与 した。 エ コー上,嚢 胞 の減 少 を 認 め た が,腫 瘍 全 体 の 縮 小 は わ ず か で あ っ た。 症 例2お よび3と もに,両 親 の強 い 希 望 で 更 に OK-432療 法 を 継続 す る方 針 で あ る。 結 論 OK-432の 局 所 注 入 は嚢 胞 状 リンパ 管 腫 に は有 効 で あ った が,海 綿 状 お よび混 在 型 リンパ 管腫 に 対 して は無 効 で あ った 。 しか し,海 綿 状 リソパ管 腫 に 対 して も有 効 例 の 報告 が あ り重 篤 な 副 作 用 が な く繰 返 し使 用 で き る事 か ら,手 術 の難 しい症 例 に は試 み る価 値 の あ る治療 法 と思わ れ た 。 質 疑:行 木 英 生(静 岡 日赤 病 院 耳鼻 科) 手 術 の や りに くい 部位 に あ る リンパ 管 腫 に 硬 化療 法 が うま くゆ くと,手 術 をす る側 と して は あ りが た い の だが,硬 化 療法 の効 果 は い か が で し ょ うか。 圃 頸 部Castlemanリ ソ パ 腫 症 例 松 山浩 吉 ・井 野千 代 徳 ・渡 辺 尚代 中川 のぶ 子 ・本 田啓 二 (関西医科大学附属香里病院耳鼻咽喉科) 泉 春 暁 (関西医科大学附属香里病院中央検査部) は じ め に Castlemanリ ンパ 腫 は胸 腺 に類 似 した 縦 隔洞 リ ンパ 節 の過 形 成 と して1954年 にCastlemanら に よ り最 初 に 報告 され た 疾 患 で あ る。 縦 隔 を 主 と し た胸 腔 内に 好 発 し,小 児 の 頭 頸部 領 域 に おけ る発 生頻 度 は比 較 的 まれ で あ る。 今 回私 達 は 左 側 頸部 に発 生 した 本症 の1例 を 経 験 した の で,若 干 の文 献 的 考 察 を加 え て 報 告 す る。 症 例 患 者:13才,女 性 主 訴:左 側 頸 部 腫 瘤 既 往歴:特 記 事 項 な し 現 病:平 成 元 年6月 頃 よ り,左 側 頸 部 腫 瘤 に 気 付 き,近 医受 診 す る も改 善 しな い為,当 科 紹 介 され,平 成2年7月16日 受 診 した。 血 液 検 査 結 果 で は特 に 異 常 な か った。 初 診 時 所 見:左 側 頸 部 に4x5cm大 の 弾 性 硬 の可 動 性 のあ る腫 瘤 を触 した. CT像 で は,左 側 頸 部 に 胸 鎖 乳 突 筋 を 外 側 へ 圧 迫 す る4×3cm大 の境 界 明 瞭 な ほ ぼ 均 一 な 腫 瘤 を認 め る。(写 真1) MRI像 で は,LongS・Eに て 内部 に 高 信 号 で や や 不 均 一 な リソパ節 腫 瘍 と考 え られ る腫瘤 が認 め られ,ShortS・Eに て筋 肉 よ りわ ず か に 低 い比 較 的均 一 の腫 瘤 を 認 め る。(上:LongS・E,下: ShortSE,写 真2) 以 上 の 画像 診 断 の 所 見 に基 づ き,平 成2年8月 27日,左 側頸 部 腫 瘍 摘 出 術 を施 行 した。 摘 出 腫 瘤(写 真3)の 大 き さは,3×3×5cm で,黄 白色 の被 膜 に 被包 され,表 面は 平滑 で,固
小 児 耳Vol.12,No.1,1991 写真1CT像 写 真2MRI上:LongS・E下;ShortSE 写 真3摘 出標 本 写 真4中 拡 大 像(H・E×120倍) さ は 弾 性 硬 で あ っ た 。 病 理 組 織 学 的 所 見 と して は,弱 拡 大 像 で は 小 さ な 多 数 の リ ン パ 濾 胞 に よ り形 成 さ れ て い る が,通 常 の リ ン パ 節 の 構 造 に 見 ら れ る 洞 組 織 は 認 め な い 。 中 拡 大 像(120倍,写 真4)で は,硝 子 化 し た 細 血 管 を 中 心 と した 周 囲 に,同 心 円 状 又 は 渦 巻 状 に リ ンパ 球 が 密 に 配 列 す る 。 又 お の お の 濾 胞 間 は 軽 度 内 皮 細 胞 の 腫 大 と 血 管 壁 の 肥 厚 と一 部 硝 子 様 化 所 見 を 伴 っ た 豊 富 な 細 血 管 組 織 と リ ン パ 球 よ り形 成 さ れ,濾 胞 内 へ 周 囲 か ら 細 血 管 が 移 入 し, 又 逆 に 濾 胞 内 か ら 周 囲 に 細 血 管 が 移 出 す る 様 な 形 態 も認 め ら れ る 。 以 上 よ り,病 理 診 断 はKellerら の 分 類 に よ る, hyaline・vascular-typeのCastlemanリ ン パ 腫 と 診 断 し た 。 又 免 疫 染 色 で は 濾 胞 内 はMX-panB陽 性 細 胞 が,濾 胞 間 はUCHL-1陽 性 細 胞 が 見 ら れ た 。 考 察 Castlemanら は1954年 縦 隔 部 に 発 生 し た 胸 腺 腫 類 似 の 特 異 な 組 織 像 を 呈 す る 腫 瘤 を 報 告 して 以 来 い く つ か の 報 告 が 見 ら れ る が,1972年Kellerら は81例 の 本 腫 瘤 を 組 織 像 に よ りhyaline・vascular・ typeとPlasma・ce11・typeに 大 別 し,又 こ れ ら 両 型 の 移 行 型(Mixed・type)も 存 在 す る と し た 。 こ れ ら の う ち で はhyaline・vascular-typeが 最 も 多 く91%を 占 め,臨 床 症 状 と して は 腫 瘤 に よ る 圧 迫 症 状 の み で あ る 。 一 方,Plasma-ceH・typeは9 %に み ら れ,臨 床 的 に は,発 熱 等 血 液 学 的 異 常 を 伴 う も の が 見 ら れ る と 報 告 し て い る 。 こ れ は,過 去40年 の 本 邦 に お け る 報 告 例60例 を 年 令 別 に 表 わ した も の で あ る 。(図1)15才 以 下 一19一
小 児 耳Vo1.12,No. 1,1991 症例数 5 0 0 5 10 隔 縣 【コ 男性29例 一 ㌃ 撚 罵 塁. ㌃