Ⅰ.Bálint─Holmes 症候群と井上の論文 両側の頭頂葉から後頭葉の損傷は,顕著な視空間 障害を呈する。この視空間障害は,20 世紀初頭に 日本およびヨーロッパの 3 人の学者により詳細な記 載がなされた。 1.Bálint 症候群 1909 年,ハンガリーの神経学者 Bálint(Bálint 1909)は剖検にて両側の頭頂葉後部,側頭葉上部, 後頭葉に軟化巣を有し,顕著な視空間障害が認めら れた例を報告した。彼の記載した 3 つの症状は,精 神性注視麻痺 Seelenlähmung des Schauens,視覚 性運動失調 optische Ataxie,視覚性注意障害 räum-liche Störung der Aufmerksamkeitである。精神性 注視麻痺とは,眼球運動が保たれ,視野も正常であ るのにもかかわらず,視線を随意的に移動させて対 象を注視することができないことである。しばしば 患者は,いったん 1 つの対象を注視すると,視線は これに固着していまい,自発的に視線を動かすこと ができない。視覚性運動失調とは,深部感覚や筋力 が保たれ,視覚では注視下(中心視野)でものを捉 えているにもかかわらず,そのものを触ったりつか んだりする時に,的をはずしたり,ずれてしまうこ とである。視覚性注意障害とは,1 度に複数の対象 を視覚的に認知できないことをいう。患者は,複数 の物品を同時に視覚提示されると,1 つあるいは 2 つだけ知覚し,すべてを知覚できない。視覚性注意 障害は,背側型同時失認 dorsal simultanagnosia(Lu-ria 1959,Rizzo ら 2002)とほぼ同じ概念である。 2.Holmes の視覚失見当 visual disorientation 1918 年イギリスの Holmes らは(Holmes 1918, Holmesら 1919),第一次世界大戦にて両側の頭頂 葉に貫通銃創を受けた患者の中で視空間障害を呈し た患者の観察から,視覚失見当 visual disorientation という概念を提唱した。典型的な患者の銃弾は右後 頭葉背側部から入り左角回へと貫通し,視野は水平 性下半盲を呈した。視覚失見当の症状は,視線固定 の障害,視覚による対象の空間位置の定位障害,複 数対象の位置関係,遠近,長短,大小の判断の障害, 立体視の障害などである。多くの症状は Bálint 症 候群と類似する。視線固定の障害は Bálint 症候群 の精神性注視麻痺に相当し,複数対象の位置関係の 障害は Bálint 症候群の視覚性注意障害(背側型同 時失認)に相当する。しかし,Bálint の記載と比べ
■シンポジウムⅡ:視覚背側経路は何をしているのか
Bálint
─Holmes 症候群と距離判断
船 山 道 隆 * 北 條 具 仁 ** 砂 川 耕 作 *** 中 川 良 尚 **** 要旨:Bálint 症候群とは,両側頭頂─後頭葉の損傷に伴う顕著な視空間の障害であり,精神性注視麻痺, 視覚性運動失調,視覚性注意障害といった 3 つの症状から成る。Bálint 症候群に類似する記載には,わが 国の井上達二の論文や Holmes らの視覚失見当 visual disorientation がある。井上や Holmes は Bálint より も視覚認知面の障害を強調している。特に,リーチングの障害を Bálint は視覚と運動の協調の障害であ る視覚性運動障害と捉えたが,Holmes は距離判断の障害と捉えている。われわれは,主観的に距離判断 の障害を訴える右頭頂─後頭葉の脳出血後の 1 例に距離判断の障害を大型車や 2 種免許を取得・更新する 際に用いられる距離判断の検査機種(KowaAS─7JS1)を用いてより客観的な検査を行った。その結果, 健常群および左半側空間無視群と比較して有意な成績の低下を認めた。本症例および過去の報告例から, 距離判断の神経基盤は頭頂─後頭葉の後方,すなわち,上頭頂小葉,下頭頂小葉後部,楔部にある可能性 が考えられた。 (高次脳機能研究 35(2):214 ~ 220,2015) Key Words:Bálint 症候群,距離,頭頂─後頭葉Bálint─Holmes syndrome,distance,parieto─occipital lobe
* 足利赤十字病院 精神神経科 〒 326─0843 栃木県足利市五十部町 284─1 受稿日 2015 年 4 月 21 日 ** 国立障害者リハビリテーションセンター病院 リハビリテーション部
*** 上ヶ原病院 リハビリテーション科 **** 江戸川病院 リハビリテーション科
2015年 6 月 30 日 (215)63 て,立体,遠近判断など,視覚認知に焦点を当てて いることが特徴である。もっとも顕著な Bálint 症 候群との相違点は,注視したものをつかめないとい うリーチングの障害の捉え方に表れている。Bálint は,リーチングの障害が右手にのみ出現したため視 知覚の障害とは独立した視覚と運動の協調の問題, すなわち視覚性運動失調として捉えた。一方で Holmesらは,リーチングの障害を視知覚の障害, すなわち距離判断の障害から説明した。 3.井上達二の視覚障害 Bálint と同年の 1909 年に,わが国の眼科医であ る井上達二は,Bálint や Holmes の記載に匹敵する 視覚障害および視空間の障害に言及する論文(Inouye 1909)をドイツ語で書いている。近年ロンドン大教 授の Glickstein が井上の論文を再発見し,その英訳 を Scientific American に紹介するとともに,2000 年の Brain 誌の付録として全文をドイツ語から英訳 して掲載(Inouye 2000)して,井上の業績が世界 的に認知された(東大病院だより No58 平成 19 年 8月,p8)。 井上は 1904 年に東大医学部を卒業し,東大眼科 に学んだ後,従軍医として日露戦争に参加した。そ こで,頭部に貫通銃創をうけた 29 名の患者につい て,創口から自作の頭蓋座標測定器を用いて視野と 大脳障害の座標を極めて詳細に測定して,後頭葉視 覚中枢のマッピングを作成した。彼の論文の中には, 見えているものにぶつかる,遠近がわからない,盲 患者のように歩くため介助が必要など視空間の障害 が詳しく記載されている。 例えば,症例 26 は弾丸が右頭頂結節から入り左 の頭頂結節に抜けた症例である。弾丸の入り口と出 口の位置について患者本人の後ろからの写真が掲載 されている。損傷当初,患者は何も見えなかったが, 徐々に視力は回復した(記載では右が 6/12,左が 6/21)。感覚障害は認めず,さらに失認は認められ ず,文字をある程度読むことができ,色については すべて認識できたという。しかし,歩くと時に彼が 見ている物体にぶつかった。隣の部屋を訪れた後, 自分の部屋に戻ることができなかった。ものをつか もうとしても,そのものの前に手を持っていった。 病巣については,視放線の損傷はなく,主たる病巣 は角回であり,空間における見当識が困難になって いると考察されている。 眼科医であり視点は Bálint よりも Holmes に近く, 彼らよりも詳細な視力および視野の記載がなされて いることが特徴である。加えて,視空間障害および 患者の継時的な経過が詳細に記載されている点で, 極めて貴重な論文である。 4.Bálint─Holmes 症候群の患者の日常生活と現 代機器への対応 Bálint─Holmes 症候群の患者は,日常生活の ADL や IADL 全般に大きな支障をきたす。もっとも特徴 的であることは,視力が保たれているが,盲患者の ように振る舞い,人やものにぶつかることである。 家庭内の生活でも困難は多い。着衣の際には,しば しば袖を左右反対や前後を逆に通してしまう。椅子 やトイレの便器に座ろうとしても,どう座っていい かわからず,ひどい場合は,椅子の隣の空中に座ろ うと試みる。食事中にはすべての食器に視線が向か ない。コップをうまくつかめず,コップに水を注ぐ 際にはこぼしてしまう。冷蔵庫を開けても,目的の ものが探せず,探したとしてもうまく取れない。缶 ジュースを飲むときなどは缶ジュースのふたを開け た位置を把握できずに,顔に飲み物をこぼしてしま う。書字では文字が重なったり,大きく離れてバラ バラになったりする。丸や三角を書いても,書き始 めと書き終わりの線がつながらず,丸や三角になら ない。 外出はひとりでは難しく,特に人混みは困難を極 める。交差点は危険である。一方の車を見ると,他 の方向の車や人に気づかない。また,ある車のほう をみて,次に違う車のほうをみると,最初にみた車 の位置は忘れている。乗車するときも助手席に向か うことが困難であり,シートベルトを締めることも 難しい。近所から自宅に帰ることも困難である。 最近は多くの日常物品が電子化された。Bálint─ Holmes症候群の患者の電話番号の押し間違えに代 表されるように,現代機器は過去の道具とは異なり, 同じ形のボタンが無数にちりばめられている。彼ら にとって,今まで以上に道具の操作が困難になる可 能性がある。われわれはスマートフォン,旧式の携 帯電話,電卓における数字の入力能力を Bálint─ Holmes症候群の患者に対して調べたが,入力がか なり困難であるという結果であった(Sunagawa ら 2015)。重症例は 1 ケタの数字も入力することがで きなかった。視覚性注意障害(背側型同時失認)の みに改善した軽症例においてもかなり時間がかかる ことが明らかになった。軽症例の症状の一部は視空
間ワーキングメモリーの障害による可能性がある (Funayama ら 2015)。 Ⅱ.Bálint─Holmes 症候群における距離判断 このようにわが国およびヨーロッパにおいて 100 年以上前にすでに記載され始めた Bálint─Holmes 症 候群であるが,背景にある基本的な視覚機能,すな わち,視覚 / 視空間ワーキングメモリー,注意機能, 立体視,距離判断,両眼視差,運動視,motion par-allex(人が動くと,静止しているものが背景に対し て動くようにみえること)などの視覚機能の分析が 必 要 で あ る と い う 指 摘 が さ れ て い る(Rizzo ら 2002)。われわれは以前,Holmes の視覚失見当を 呈する患者において,距離判断の障害を分析したこ とがあるので紹介する(北條ら 2009)。距離判断の 検査にて上肢の動きが加わると視覚性運動失調とは 明確に区別ができないが,本研究の特徴は,上肢の 動きを除いた深視力検査を行い,より客観的な距離 判断能力を調べたことである。距離判断の障害を呈 する患者の多くは両側の頭頂─後頭葉損傷であり, 精神性注視麻痺や背側型同時失認が重度のために距 離判断課題を行うことは困難であるが,検査を行っ た症例は精神性運動麻痺がなく,背側型同時失認も 軽度であったために距離判断課題を施行できた。 1.症例提示 症例は 52 歳の右頭頂─後頭葉にわたる脳出血後の 右利きの男性である。もともと大型トラック運転手 であり,大型免許取得および更新の際に必要な距離 判断検査は毎回問題なく合格していた。50 歳時に 脳出血が出現し,保存的加療を行った。発症 1 年後 の頭部 MRI T2 強調画像(図 1)では右側の上頭頂 小葉,下頭頂小葉後部,楔部の上部,楔前部にかけ て低信号域および高信号域を認めた。視力は両眼と もに 0.8 であり左同名性半盲を認めた。患者は発症 直後から距離判断の障害を感じていた。発症 5 ヵ月 後に大型トラックの免許を更新しようとしたが,そ の際に行った距離判断検査(深視力検査)にて顕著 な成績の低下を認めたため不合格となった。 以下は発症半年から 1 年後の状態である。外出し た際には歩行中に電柱を見ながら顔面からぶつかり 額を受傷していた。人ごみでは人との距離感がわか らずに絶えずぶつかりそうになっていた。ときには 立ち止まっている人に正面からぶつかった。ものを つかむ際には,左右いずれの手を用いても見ただけ では取り損ねていた。はさみを用いて植物の葉を右 手で切る際には,茎と花まで切ってしまった。一方, 一旦ものに触って距離を確認すると,その後は同じ ものをつかむ際に距離感がわかると言い,即座に再 図 1 頭部 MRI T2 強調画像 (北條具仁,船山道隆,中川良尚,ほか:距離判断が困難となった頭頂─ 後頭葉損傷の 2 例.高次脳機能研究,29:434─444,2009 より転載) 右 左
2015年 6 月 30 日 (217)65 度つかむ際には簡単につかんでいた。患者の問題は 距離判断に限定されていなかった。もっとも困難で あったのは,視覚で捉えたものであってもそのもの と自分自身の位置関係がわからないことであった。 この位置関係の問題は,左空間に限らず右空間でも 同様に認められた。見渡せる範囲内である病院の待 合室やホールの中でも,自分が空間内のどこにいる かわからずに迷うことがしばしば観察された。自宅 の寝室の扉を通る際には扉を視覚で捉えるものの体 の左側や右側をしばしばぶつけていた。また,人ご みの中では前後方向の距離判断のみならず,3 次元 空間の中での自分と人との位置関係がわからずにし ばしばぶつかりそうになるためにひとりでは人で混 雑している場所には行けなかった。また,患者は目 の前に同時に 4 個のものを提示されるとそれらの位 置関係がわからないと述べていた。文章を読む際は 次の行を探すことがしばしば困難であった。さらに, 自分自身との位置関係を把握したものであっても一 瞬目を離すとその位置関係を覚えておくのは困難で あった。交差点ではいろいろな方向から来る車を見 ていると,最初に見た車の位置を忘れてしまい,渡 れると思って歩き出したらバスに轢かれそうになっ たことがあった。これらの症状は少しずつ軽減した ものの,発症 3 年後においてもコートやシャツの袖 の左右や靴の左右がわからずにしばらく戸惑う場面 が観察された。 発症 1 年後の神経心理学的検査所見を以下に示 す。数唱は順唱で 7 桁であったが,tapping span は 2 と低下していた。MMSE は 28/30,HDS─R は 29/30。 WAIS─R の VIQ113 に対し,PIQ は 63 と顕著な差を 認めた。行動性無視検査(BIT)は 136/146 であった。 2.距離判断検査(深視力検査) 1)検査方法 距離判断は,両眼視差,motion parallex(人が動 くと静止しているものが背景に対して動くようにみ えること),2 つのものでの大きさの対比(同じ木で あると遠いものが小さくなる),普段のものの大き さとの対比(乗車時に車は大きく見えるが,自分か ら遠くなるにしたがって小さくなる),重なり,肌理 の勾配,線遠近法などさまざまな視覚情報から成る と考えられている(Johnston ら 1993,東山 1996, Howardら 1995,Brenner ら 1998)。今回われわれ が用いた深視力検査(KowaAS─7JS1)は,大型車 や 2 種免許を取得あるいは更新する際に行われる距 離判断の検査方法であり,距離判断にかかわる視覚 情報の中でも両眼視差および 2 つのものでの大きさ の対比が主体的にかかわるものと推測できる。 図 2 に示したように,この検査は箱の中に 3 本 の円柱(高さが 80mm,底面の円の直径は 3mm, 各棒の間隔は 30mm)があり,外側の 2 本(以下基 準棒)は被検者からみて同じ距離(2.5m)に固定 されている中で,中央の棒(以下動作棒)のみが動 き,基準棒と同じ距離となったかどうか判断させる ものである。われわれは,さらに,大型車および 2 種免許の免許取得・更新と同様の方法である動作時 条件だけではなく,動きの要素を省いた静止した状 態における距離判断について検討する静止時条件を 加えて距離判断能力を検討した。 症例の発症 1 年 6 ヵ月後に深視力検査を行った。 対照として健常者 5 名(男性 5 名,年齢 54.6 ± 2.9 歳, 以下健常群)および右半球損傷の左半側空間無視 5 名(年齢 52.4 ± 9.28 歳,BIT の成績 137.6 ± 4.33, 図 2 深視力検査(KowaAS ─ 7JS1) (北條具仁,船山道隆,中川良尚,ほか:距離判断が困難となった頭頂─後頭 葉損傷の 2 例.高次脳機能研究,29:434─444,2009 より転載) この位置で反応する 動作棒: 手前から奥, 奥から手前へ移動 基準棒:固定
以下左半側空間無視群)に同検査を行い,大型免許 取得・更新合格範囲である基準棒の前後 20mm 以 内に入った反応数を比較した。 2)検査結果 i)動作時条件 図 3 は動作棒が手前から奥に動いた際の症例と 健常群のそれぞれの反応を示している。大型免許取 得・更新合格範囲である基準棒の前後 20mm に収 まった反応は,症例が 40 回中 15 回のみであったが, 健常群は 39.4 ± 1.3 回,左半側空間無視群は 40 回 中 34.2 ± 4.8 回であった。症例の反応は,健常群お よび左半側空間無視群の反応の 2SD 以内に収まっ ていなかった。注目すべき観察点として症例では, 動作棒が最大値に達して折り返しても気づかない無 反応が 40 回中 12 回もあった。一方で健常群では無 反応は 1 度も現れず,左半側空間無視群の無反応は 0.2± 0.44 回であった。 ii)静止時条件 静止時の距離判断の正答は症例が 32 回中 16 回, 健常群が 32 ± 0 回,左半側空間無視群が 30.4 ± 2.6回であった。すなわち,健常群では静止時での 距離判断を誤ることは一度もなかったのに対し,症 例では反応の半分しか正答できず,左半側空間無視 群の 2SD 以内の反応にも収まっていなかった。以 上の結果より,症例は本検査上で距離判断が困難で あることが示された。 iii)距離判断の責任病巣 本症例の病巣は右の頭頂─後頭葉の後方,すなわ ち,上頭頂小葉,下頭頂小葉後部,楔部,楔前部で あったが,19 世紀以降脳損傷後に距離判断の障害 が出現する症例が稀に報告される(Badal 1888, Riddoch 1917,Holmes ら 1919,Stengel ら 1944, Godwin─Austen 1965,Levine ら 1985,Langdon ら 2000)。距離判断が困難となった過去の報告の中で 病巣が明らかなものは Levine ら(1985)の症例② と Langdon ら(2000)の症例である。これら 2 例 に共通する病巣は本症例と同様に両側頭頂─後頭葉 の後方,すなわち,上頭頂小葉,下頭頂小葉後部, 楔部,楔前部であった。病巣が明らかではない例の 中には子癇に伴う例(Badal 1888,Stengel ら 1944) や出産直後の梗塞例(Godwin─Austin 1965)があり, PRESによる両側後大脳動脈領域の損傷の可能性も あり,この 3 例も両側頭頂─後頭葉の損傷を伴って いた可能性がある。 サルの研究では,距離判断の責任病巣についてす でにさまざまな知見が得られている。Sakata ら (1980)の研究では,距離(distance)に反応する 細 胞 が 後 部 頭 頂 葉 連 合 野 で 確 認 さ れ て い る。 図 3 動作棒が手前から奥に動いた際の症例と健常群の反応 (北條具仁,船山道隆,中川良尚,ほか:距離判断が困難となった頭頂─後頭葉 損傷の 2 例.高次脳機能研究,29:434─444,2009 より転載) 手前から奥の結果 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 14 12 10 8 6 4 2 0 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 14 12 10 8 6 4 2 0 症例 反応数(回) 判断距離(mm) 判断距離(mm) 反応数(回) 奥 手前 奥 手前 健常群平均 0 0 1 3 4 2 3 7 8.8 0.1 9 動作棒の 進行方向 大型免許取得・更新合格範囲の反応 無反応 0 0 1 3 4 2 3 7 8.8 0.1 9
2015年 6 月 30 日 (219)67 Genovesioら(2004)の研究でも後部頭頂葉に自己 を中心とした距離をコードする機能があることが確 認されている。また,Tsutsui ら(2005)によると, 両眼視差や肌理の勾配などのさまざまな距離判断へ の手がかりが後部頭頂葉の頭頂間溝尾部(caudal intraparietal sulcus:CIP 野)で統合されるという。 さらに,V1,V2,V3,V3A 野(とくに V3 と V3A 野) に距離判断の中でもっとも重要な視覚情報のひとつ である両眼視差に感受性のある細胞があり,CIP 野 に投射しているという。サルの CIP 野および V3, V3A野は,ヒトでは頭頂間溝の尾部を中心とした 上頭頂小葉と下頭頂小葉後部や楔部に相当する。今 回のわれわれの報告とサルの研究は矛盾せず,距離 判断の神経基盤は頭頂─後頭葉の後方,すなわち, 上頭頂小葉,下頭頂小葉後部,楔部にある可能性が 考えられる。 文 献
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* Department of Neuropsychiatry, Ashikaga Red Cross Hospital. 284─1 Yobe, Ashikaga, Tochigi 326─0843, Japan ** Department of Rehabilitation, National Rehabilitation center for persons with disabilities
*** Departiment of Rehabilitation, Nishigahara Hospital **** Department of Rehabilitation, Edogawa Hospital
■ Abstract
Difficulty in Judging Distance for Patients with Bálint─Holmes Syndrome
Michitaka Funayama* Tomohito Houjou** Kosaku Sunagawa***
Yoshitaka Nakagawa
****
Bálint syndrome is a striking set of visuospatial defects displaying all the hallmarks of visuospatial defi-cits, which are categorized into three physical symptoms:psychic paralysis of gaze, spatial disorder of attention(dorsal simultaneous agnosia), and optic ataxia. Most affected people have difficulty in activities of daily living as well as instrumental activities of daily living. Holmes and Inoue also described the similar syndrome, visual disorientation. There is, however, one striking difference between Bálint syndrome and visual disorientation. Bálint explained patientsʼ difficulties in reaching for an object as optic ataxia, that is, visuo─movement incoordination, while Holmes explained it as a visual disturbance in judging distance. We investigated difficulty in judging distance using a patient after right parieto─occipital hemorrhage, who sub-jectively complained of difficulties in judging distance. We studied ability of judging distance by employing an apparatus(Kowa AS─7JS1)used for acquiring or renewing an oversized vehicle driverʼs license. The performance of the patient was significantly worse than both the normal control and the neglect group. Considering his lesion and the cases in the previous reports, the neural basis for judging distance is consid-ered to be the posterior part of the parieto─occipital lobe;the superior parietal lobule, the posterior part of the inferior parietal lobule, and the cuneus.