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数種アブラナ科スプラウトの抗酸化成分含量
および抗酸化能に及ぼす照射光強度の影響
前川健二郎
1・ 前田智雄
2・ 大島千周
3・ 鈴木 卓
1*・ 大澤勝次
1 1北海道大学大学院農学研究科 060-8589 札幌市北区北 9 条西 9 丁目 2(社)植物情報物質研究センター 061-1374 恵庭市恵み野北 3 丁目 3森産業株式会社 アグリ事業部 007-0805 札幌市東区東苗穂 5 条 2 丁目Effects of Irradiated Light Intensity on the Amount of Antioxidants and
Antioxidative Capacity in Cruciferous Sprouts
Kenjiro Maekawa
1, Tomoo Maeda
2, Chihiro Oshima
3, Takashi Suzuki
1* and Katsuji Oosawa
11Graduate School of Agriculture, Hokkaido University, Sapporo, Hokkaido 060-0808 2Plant Ecochemicals Research Center, Eniwa, Hokkaido 061-1374 3Mori Sangyo Co. Department of Agribusiness, Sapporo, Hokkaido 007-0805
Abstract
This study investigated the effects of irradiated light intensity on the amount of antioxidants and antioxidative capacity in broccoli, mustard, kale, and red cabbage sprouts. Antioxidant concentrations were estimated by quantitating total polyohenol, flavonol, and anthocyanin concentration. Antioxidative capacity was evaluated by measuring DPPH radical absorbing capacity and superoxide scavenging ability. Polyphenol and flavonol concentrations were significantly increased in accordance with the light intensity. Antioxidative activity was also increased with light intensity. However, the lengths of sprout hypocotyls were decreased by strong light. These results indicate that the contents of polyphenol including flavonol are increased by strong light and consequently the antioxidative ability becomes stronger. These findings suggest that strong light irradiation should be useful for producing sprouts with higher antioxidative capacity.
Key Words:Brassica, DPPH, flavonol, polyphenol, superoxide キーワード:光強度,抗酸化活性,ポリフェノール 緒 言 ガン,心筋梗塞,脳卒中および糖尿病などに代表される 生活習慣病の発症には,遺伝的素質に加え,食事や喫煙と いった生活習慣が大きく関与すると言われており(Walter, 2002),近年の疫学的な調査結果は,野菜や果物の日常的な 摂取がこれら生活習慣病の予防に有効であることを示して いる(Bazzaro ら,2002).その理由として,青果物に含まれ るファイトケミカルの中でもアントシアニンやフラボノー ルなどのフラボノイド類に抗酸化作用や抗炎症作用がある こと(Kang ら,2003; Marchand, 2002),並びにイソチオシ アネート類にフェーズ 2 酵素の誘導による抗ガン作用があ ること(Zhang・Talalay, 1994)などが報告されている.生 理活性を示すこれらのファイトケミカルの多くは,植物に とって自己を守る防御物質であると考えられており,発芽 直後の幼植物が,こうした防御物質を成植物よりも豊富に 含んでいる例が報告されている.例えば,イソチオシアネー トの一種であるスルフォラファンは抗ガン作用を示すこと が知られているが,ブロッコリーにおいては成植物よりも 幼植物の方が,その作用が飛躍的に高く,特に発芽後 3 日 目において最も高くなることが報告されている(Fahey ら, 1997).また,ソバに含まれるフラボノイド類は紫外線に対 する防御物質であり,成植物よりも幼植物に多く含まれて いることが報告されている(渡辺・伊藤,2002). 発芽後,本葉展開前の幼植物体がそのまま食用に用いら れるものはスプラウトと総称されている.スプラウトはこ ういったヒトに対して生理活性を示すファイトケミカルを 効率的に摂取できる利点を持ち,利用価値が高い食品であ ると考えられる.我が国では古くからカイワレダイコンや モヤシなどのスプラウトが親しまれてきたが,その種類は 限られてきた.しかし,海外では以前からブロッコリーを はじめ,マスタードやアルファルファなど様々な種類のス プラウトが消費されてきた.近年の研究から,様々な植物 2005年 8 月 29 日 受付.2006 年 3 月 2 日 受理.
のスプラウトについて生理活性やその活性物質が明らかに なってきたことから(Pereira ら,2002; Uhl ら,2003),日本 においてもスプラウトは健康野菜,あるいは機能性食品と して注目されてきており,量・種類ともにその生産・消費 が拡大しつつある. スプラウトの生産方法としてカイワレダイコンのように 容器内に播種し自然光で栽培するものと,屋内に設置した 装置で生産するものとがある.筆者らは,第 1 図に示すよ うな回転ドラム型のスプラウト製造装置(米国 ISS 社(代 理店:(有)アイエスエス;神奈川県平塚市);RT-1000)を 用いて商業生産を行っている.この方式は,閉鎖された屋 内で人工照明を用いてスプラウトを生産するため,ドラム 内の光強度は 10 ~ 20 µmol・m−2・s−1程度と,自然光と比較 して低いが,一方で,照射する光条件などの生産環境を制 御しやすいという特徴を有する.また植物の生育時におけ る環境条件は植物体の成分含量に大きな影響を与えると考 えられる.渡辺・伊藤(2003)はソバのスプラウトにおい て光強度が高いほどフラボノールの含量が増加することを 報告している.このことから,スプラウトを屋内に設置し た装置を用いて生産する場合,生育期間中に照射する光条 件を変化させることで,機能性成分含量が増加し,付加価 値を高めた商品を生産できると考えられる.しかし,照射 光強度と機能性成分含量に関する検討はアブラナ科スプラ ウトでは不十分である. そこで本報では,回転ドラム型のスプラウト製造装置を 用いた数種アブラナ科野菜の高機能性スプラウト生産技術 の確立を目指し,異なる光強度の条件下で栽培したスプラ ウトにおける,総ポリフェノール,フラボノールおよびア ントシアニン含量の差異を調査した.また,これらの成分 含量と抗酸化活性との関係を明らかにするため,1,1- ジ フェニル -2- ピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル捕捉活 性およびスーパーオキシド消去活性についても併せて調査 した.さらに,光強度がスプラウト収量に及ぼす影響を見 るために胚軸長を測定した.その後,これらの実験結果の 実用生産機での応用性について検討を行うことを目的に, 実用生産機を用いた栽培期間中に補光を行ってブロッコ リーのスプラウトを栽培し,総ポリフェノール含量および 胚軸長を測定した. 材料および方法 植物材料 スプラウトの栽培期間は実際の生産方法に準じ,5 日間 とした.ろ紙 1 枚を敷き,EC 1.6 mS/cm に調整した液肥 (大塚ハウス,SA 処方)10 mL を滴下したシャーレ(直径 9 cm)に,ブロッコリー,クロガラシ,ケールおよびレッド キャベツ(いずれもスプラウト用固定品種,米国 ISS 社)の 種子を各 50 粒播種し,グロースチャンバー(22°C,暗黒 条件下)内に 3 日間置いて発芽させた.次に,グロースチャ ンバーの蛍光灯(東芝;FLR40S-W/M)を点灯し,22°C, 連続照明条件で,養液を適宜補いながら栽培を継続した. この際,蛍光灯の本数を変えることにより,光強度を 0 (対照区),25, 50, 100 µmol・m−2・s−1とした4試験区を設けた. 胚軸長の測定 試験区ごとに 1 枚のシャーレを無作為に取り出し,40 個 体について胚軸長を測定した.また,以下の項目では,それ ぞれ異なるシャーレから,1 枚あたり 1 g(約 40 個体)の試 料を秤量し,実験に用いた. 総ポリフェノール含量の測定 各材料 1 g(生重)を細断した後,20 mL の 80%メタノー ル(MeOH)を用いて 3 時間振とうし,粗抽出液を得た. 抽出は 1 区あたり 3 反復とした.これを遠沈(4°C,8,000 G, 15分間)し,上清を測定試料とした.総ポリフェノール含量 は,Maeda ら(2005)の方法に従い Folin-Denis 法により測定 した. フラボノール含量の測定 ブロッコリーの材料 2 g(生重)を細断した後,20 mL の 50%エタノール(EtOH)を用いて 3 時間振とう抽出した. 抽出は 1 区あたり 3 反復とした.これを遠沈(4°C,8,000 G, 15分間)し,上清を加水分解処理することでフラボノール 配糖体をアグリコンに分解した.加水分解処理は,Mattila ら(2000)の方法に準じ,抽出液 1.6 mL に 6 N の HCl を 0.4 mL加え,90°C のウォーターバスで 4 時間振とうするこ とで行った.処理後,直ちに流水で冷却し,0.45 µm のシ リンジフィルターでろ過した後,ブロッコリーの主要なフ ラボノールであるケルセチンとケンフェロール(Plumb・ Price, 1997)のアグリコンを高速液体クロマトグラフィー (HPLC)で分析した.HPLC の条件は次の通りである.カラ ム:Mightysil RP-18GP Aqua(関東化学).移動相 A 液:アセ トニトリル.移動相 B 液:リン酸カリウムバッファー (20 mM,pH 5.0).グラジェント(リニアグラジェント): 第 1 図 回転ドラム型のスプラウト製造装置 (米国 ISS 社;RT-1000)
0–5分(A:B=16:84),5–30 分(A:B 16:84 → 65:35), 30–35分(A:B 65:35 → 16:84),検出器:Waters 996 フォト ダイオードアレイ(PDA)検出器(検出波長 UV 354 nm). 総アントシアニン含量の測定 総アントシアニン含量は Lee・Francis(1972)の方法に 従い,以下のように測定した.ブロッコリーの材料 1 g(生 重)をホモジナイズした後,20 mL のメタノール:1.5 N 塩 酸 = 85:15 v/v に調整した溶媒とともに 3 時間振とう抽出 し,これを遠沈(4°C,8,000 G,15 分間)した上清を試料と した.抽出は 1 区あたり 3 反復とした.この試料について 700 nmおよび 533 nm の吸光度を測定し,総アントシアニ ン含量をシアニジン -3- グルコシド当量で算出した. DPPHラジカル捕捉活性の測定 各材料 1 g(生重)の粗抽出液を遠沈し(4°C,8,000 G,15 分 間),上清を測定用の試料とした.DPPH ラジカル捕捉活性 は,Shimada ら(1992)の方法に準じ以下のように行った. 抽出液 200 µL に 800 µL の 1M Tris-HCl バッファ(pH 7.4)を 加え,その後 500 µM DPPH 溶液 1 mL を添加し攪拌した. 反応液を 20 分間,暗所でインキュベートした後,517 nm の吸光度を測定した.標準試料として 0, 50, 250, 500 ppm α- トコフェロールを用い,試料の DPPH ラジカル捕捉活性 を α- トコフェロール当量で算出した.一区あたりの反復数 は 3 とした. スーパーオキシド消去活性の測定 ブロッコリーの材料 2 g(生重)を細断した後,20 mL の 50%EtOH を用いて 3 時間振とう抽出した.抽出は 1 区あた り 3 反復とした.これを遠沈(4°C,8,000 G,15 分間)して 沈殿物を除去した上清 5 mL をロータリーエバポレータ (40°C)で濃縮乾固し,1 mL の 50%EtOH に溶解したものを 測定用の試料とした.スーパーオキシド消去活性の測定は, SOD活性検出キット(和光純薬製)を用い,マイクロプレー トリーダにより測定した. 実用生産機を用いた検討 実用生産機を用い,補光による効果を検討するために以 下の実験を行った. スプラウトの栽培は回転ドラム型のスプラウト製造装 置(第 1 図)を用い,以下のように行った.洗浄・表面殺 菌を行ったブロッコリー(スプラウト用固定品種,米国 ISS社)の種子500 gを製造装置の1区画に投入した.室温は 22°C に設定し,EC 1.3 mS/cm に調整した大塚ハウス A 処方 の養液で灌水を行い,スプラウトを栽培した.光条件は製 品区(販売している製品と同様の製法であり,対照区とし た)と補光区で以下のように調整した.(1)製品区では播 種後,次の日に回転ドラムの蛍光灯を点灯(10 ~ 20 µmol・ m−2・s−1).播種 4 日後,収穫した.(2)補光区では播種後, 次の日に回転ドラムの蛍光灯に加え,白色蛍光灯 12 本 ((株)東芝ライテック:FLR40S-W/M)で補光を行い(20 ~ 80µmol・m−2・s−1)播種 4 日後,収穫した. 収穫したスプラウトから無作為に 30 個体をサンプリン グし,胚軸長を測定した.また,各試験区のスプラウト 1 g (生重)を細断した後,20 mL の 80%MeOH を用いて 3 時 間振とうし,粗抽出液を得た.抽出は 1 区あたり 3 反復と した.これを遠沈(4°C,8,000 G,15 分間)し,上清につい て総ポリフェノール含量を測定した.測定方法は,Maeda ら(2005)の方法に従い Folin-Denis 法により測定した. 結 果 1.スプラウトの生育に及ぼす光強度の影響 ブロッコリースプラウトの胚軸長は,光強度が強い処理 区ほど短くなる(第 2 図)が,光強度 50 µmol・m−2・s−1区 と 100 µmol・m−2・s−1区との間に有意差は認められなかった (Tukey の検定).またレッドキャベツ,ケール,およびクロ ガラシの各スプラウトも同様の傾向を示した(データ省略). 2.総ポリフェノール,フラボノールおよび総アントシアニ ン含量に及ぼす光強度の影響 ブロッコリー,クロガラシ,ケールおよびレッドキャベ ツのスプラウト抽出物の総ポリフェノール含量を第 3 図に 示す.総ポリフェノール含量は全てのスプラウトで同様の 変化を示した.すなわち,栽培時に照射した光の強度に応 じて総ポリフェノール含量が有意に増加し(Tukey の検 定),100 µmol・m−2・s−1区で最も高い値を示した. ブロッコリースプラウト抽出物のケルセチンおよびケ ンフェロール含量を第 4 図に示す.いずれのフラボノール も,強光区ほど有意に含量が多く(Tukeyの検定),100 µmol・ m−2・s−1区で最も高い値を示した.ケンフェロールはケル セチンと比べ,強光により含量が大きく増加した. ブロッコリースプラウト抽出物のアントシアニン含量を 第 5 図に示す.アントシアニン含量もフラボノール含量と 同様に,強光区ほど高い値を示した.しかし,光強度 50µmol・m−2・s−1区と 100 µmol・m−2・s−1区との間に有意差 は認められなかった(Tukey の検定). 第 2 図 ブロッコリースプラウトの胚軸長に及ぼす光強度の 影響 値は平均値 ±SE(n=40),異なる文字間には 5%水準で 有意差あり(Tukey の検定)
第 3 図 アブラナ科スプラウトの総ポリフェノール含量に及 ぼす光強度の影響 値は平均値 ±SE(n=3) 第 4 図 ブロッコリースプラウトのケンフェロールとケルセ チン含量に及ぼす光強度の影響 値は平均値(n=3) 第 5 図 ブロッコリースプラウトの総アントシアニン含量に 及ぼす光強度の影響 値は平均値 ±SE(n=3),異なる文字間には 5%水準で有 意差あり(Tukey の検定) 第 6 図 アブラナ科スプラウトの DPPH ラジカル捕捉活性に 及ぼす光強度の影響 値は平均値 ±SE(n=3) 第 7 図 ブロッコリースプラウトのスーパーオキシド除活性 に及ぼす光強度の影響 値は平均値 ±SE(n=3),異なる文字間には 5%水準で有 意差あり(Tukey の検定) 第 8 図 商業生産機を用いて生産したブロッコリーのスプラ ウトのポリフェノール含量および胚軸長に及ぼす補光 の効果 値は平均値 ± SE(総ポリフェノール含量:n = 3,胚軸長: n = 30) * 5%水準で有意差あり ** 1%水準で有意差あり(student の t 検定)
3.スプラウト抽出物の抗酸化活性に及ぼす光強度の影響 ブロッコリー,クロガラシ,ケールおよびレッドキャベ ツのスプラウト抽出物の DPPH ラジカル捕捉活性を第 6 図 に示す.DPPH ラジカル捕捉活性は全てのスプラウトで同 様の変化を示した.すなわち,栽培時に照射した光が強い 区のスプラウトほど,抽出物の DPPH ラジカル捕捉活性が 高くなり(Tukey の検定),100 µmol・m−2・s−1区でもっとも 高い値を示した. ブロッコリースプラウト抽出物のスーパーオキシド消去 活性を第 7 図に示す.スーパーオキシド消去活性について も同様に,強光区ほど高い値を示し,100 µmol・m−2・s−1区 でもっとも高い値を示した(Tukey の検定). 4.実用生産機を用いた検討 商業生産機を用いて生産したブロッコリーのスプラウト のポリフェノール含量および胚軸長を第 8 図に示す.総ポ リフェノール含量は,製品区に対して補光区において有意 に増加した(student の t 検定).また胚軸長では,製品区に 対して補光区において有意に減少した. 考 察 本実験の結果から,スプラウトの生育期間中に照射する 光の強度は,抗酸化活性の高いポリフェノール類の含量と 生育の双方に影響を与えることが明らかになり,制御可能 な環境要因として重要であることが示された. スプラウトの生育時に照射する光強度を高めた状態で栽 培することによって,総ポリフェノール含量が増加するこ とが明らかになった(第 3 図).同時に,ポリフェノールの 中でもケルセチンやケンフェロールなど抗酸化活性の高い フラボノールや,アントシアニンといったフラボノイド類 も増加していることが明らかになった(第4,5図).Yaginuma ら(2002)はベニバナの苗に強い光(45,000 lux)を照射す ることで,植物体に含まれるフラボノイドなどのポリフェ ノール類が増加することを報告した.本実験においても同 様に,アブラナ科スプラウトに照射する光強度を高めるこ とでフラボノイド類などのポリフェノール含量が増加した ものと考えられる.商業生産機を用いた実験においても, スプラウトの生育時に照射する光強度を高めることで総ポ リフェノール含量が増加したことから(第 8 図),商業生産 の段階において,光を強めた環境でスプラウトを栽培した 場合でもこれらの現象が見られるものと考えられる. また本実験では,生育時に照射する光強度を高めること で,抽出物の DPPH ラジカル捕捉活性が上昇し,同時に スーパーオキシド消去活性が上昇した(第 6,7 図).野菜 や果物に含まれている主要な抗酸化物質はポリフェノー ル類等だと考えられている(Eberhardt ら,2000).すなわ ちスプラウトに照射する光を強めることによって,植物体 内に抗酸化活性の高いポリフェノール類が蓄積され,その 結果,スプラウト抽出物の抗酸化活性が高くなったと考え られる.またフラボノイド類はスーパーオキシドを消去す る活性を持つことが報告されていることから(Robak・ Grayglewski, 1988),スプラウトに強い光照射することで植 物体内のフラボノイド含量が増加し,スーパーオキシド消 去活性が高くなったものと考えられる. 胚軸長の長短は,スプラウトの収量および外観的品質の 重要な要素であると考えられる.本実験の結果では,光強度 を高めることによって胚軸長は短くなるものの,ある一定 以上の区では大きな差は認められなかった(第 2 図).Potter ら(1999)は,光を強めた環境(150 ~ 500 µmol・m−2・s−1) でナタネを栽培すると,植物体内のジベレリン(GA)含量 が減少し,ナタネの胚軸長が短くなることを示した.従っ て,光を強めた環境でスプラウトを栽培することで胚軸長 が短くなる現象については,ジベレリンとの関連でさらに 検討する必要があると考えられる.一般に,消費者には胚 軸長の長いスプラウトが好まれ,また生産性の面からも胚 軸長が短くなることは不利だと考えられる.従って今後 は,一定期間の暗黒や弱光条件を組み合わせながら栽培条 件を検討し,胚軸長が短くなるのを防ぎながら,抗酸化活 性などの機能性が高いスプラウトを生産する条件を明らか にする必要があると考えられる. また,商業生産機を用いてスプラウトを栽培した時の結 果は,シャーレを用い実験室で栽培した時の結果と同様の 傾向を示した.そのため,商業規模での機能性成分含量を 高めたスプラウトの栽培条件確立のためには,シャーレを 用いた実験室での検討は効率的手法として有効であると考 えられる. 本研究の結果から,照射する光強度を高めた状態でアブ ラナ科スプラウトを生産することでフラボノイド類などの 抗酸化活性の高いポリフェノール類が増加し,それにより 従来よりも抗酸化活性を高めた製品を生産できることが示 された.今後は強光を照射する時期,光源,光量,波長や 養液の組成等についてさらに検討することで,外観品質が 高く,かつ抗酸化活性を付与する生産条件を確立する必要 がある. 摘 要 数種アブラナ科野菜の高機能性スプラウト生産技術を確 立するため,抗酸化活性成分含量および抗酸化活性に及ぼ す照射光強度の影響について検討した.その結果,栽培中 の光強度を高めることで,スプラウトの胚軸長は短くなるも のの,フラボノール,アントシアニンおよび総ポリフェノー ル含量の増加が認められ,抗酸化能(DPPH ラジカル補足活 性,スーパーオキシド消去活性)も高まった.これらのこと から,光を強めた環境で栽培することにより抗酸化活性が 高いスプラウトの生産が可能であることが分かった. 引用文献
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