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Poole Gakuin University プール学院大学研究紀要第49号 128 的障害者は 地域で家族と暮らしながら作業所などに通所している20歳代の男性4名女性3名であ る 大学生サポーターは キャンプ中は知的障害者にマンツーマンで対応する サポーターは基本 的にはボランティアであるが 旅

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知的障がい者の親のレスパイトケアに関する一考察

―ハワイキャンプを通して―

高 田 さやか

はじめに

 知的障がいがあるひと(以下、知的障害者とする)とその母親を対象にしたハワイでのキャンプ や観光に同行した。そのなかで障害者本人が母親といる場面と母親のいない場面で行動の違い、母 親グループが市内観光やショッピングなど別行動をしながらも息子や娘のことを常に気にかけ、学 生サポーターに引け目や遠慮をしている様子などを観察することができた。  2006年より施行された障害者自立支援法では、障害者が地域で暮らすことを掲げ、施設から地域 移行を進め、就労を進めるものであるが、はたして障害者が安心してこの先ずっと地域で暮らして いける仕組みを整えているのかについては疑問が残る。障害者がさまざまな活動に参加して、そこ からチームの役割を担うこと、人間関係の構築や障害者同士であれば相手の障害や特性の理解、社 会性の確立、新たな体験による経験の積み重ねとして余暇活動をしっかりと位置づけし、それらを 他の福祉サービスとネットワーク化することで支援する仕組みを作る必要があるのではないか。そ して、地域で暮らす障害者の家族が介護や支援から孤立し、抱え込むことのないような親や家族に 対してのレスパイト(介護からの一時的な解放)について保障する必要があるのではないか。  ハワイキャンプ全体の中での親子の観察から親の介護を取り巻く環境、キャンプなど余暇活動の 必要性、それにより親の介護からの一時的解放としてのレスパイトのあり方について考察する。

第1章 障害者キャンプの実際

第1節 キャンプの概要  知的障害者とその母親からの要望を受け、知的障害者はオアフ島北西部にあるYMCAキャンプ 場1でキャンプを、母親たちはホノルルで動物園などの市内観光や買い物といった別プログラムで 3日間を過ごした後、母親たちと合流し、市内観光や登山をした。  参加者は知的障害者本人が7名、母親7名、大学生サポーター8名、大学等教員3名である。知

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的障害者は、地域で家族と暮らしながら作業所などに通所している20歳代の男性4名女性3名であ る。大学生サポーターは、キャンプ中は知的障害者にマンツーマンで対応する。サポーターは基本 的にはボランティアであるが、旅費の一部を参加者が負担する仕組みをとっている。 日程 時間 行程/プログラム 2007 12.20 15:30 18:30 集合 関西国際空港~ホノルル空港 昼食後キャンプ場へ移動 写真① 母親からサポーターへ引き継ぎをする。 写真② キャンプ場のコテージ。 母親グループは市内に戻る 夕食 写真③ 地元の小学生キャンパーと協力して配膳をする。 21 7:30 朝食 自由行動(広場でサッカーや場内探索)

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12:00 13:30 14:50 15:30 写真④広い場内で「だるまさんがころんだ」が始まる。 写真⑤コテージのすぐ裏には海が広がる。 昼食 ウォールクライミング 写真⑥-1 下から支えるが、上に登ることは難しい 写真⑥-2 登る際には命綱をつけ、スタッフが後ろで支える。 アーチェリー 写真⑦ スタッフの指導のもとサポーターの支援を受けて弓 を引く。 クラフト(ビーチクラフト)

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18:00 19:00 21:00 写真⑧ 椰子の実に色を塗ってブローチにする。 夕食 キャンプファイヤー サポーターミーティング 22 8:00 9:00 12:00 16:00 17:30 朝食 マウカトレイル 写真⑨-1 奥の山を登る。途中から急勾配になり体力を要する。 写真⑨-2 キャンプ場スタッフのガイドのもとで登る。 昼食 プール 写真⑩気温は高いが、水は冷たく長時間入ることができない。 アーチェリー(希望者のみ) 夕食 荷物整理 23 7:30 8:00 朝食 キャンプ場出発

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  表1 ハワイキャンププログラムの概要 第2節 参加者親子の様子 【Iさん(男性)】  「本当は来たくなかった、彼女と遊びたかった」とサポーターに言いながらも楽しそうに過ご す。母親もそのことは十分承知しているが、半年前に就職先で人間関係がうまくいかずIさんが悩 んでいることに気付かなかったことを後悔している様子である。翌月からホームヘルパーとして働 く予定であるが、発達障害のために仕事の能力はあっても人との関わりが苦手なことから仕事を続 けることが難しいのではないかと危惧し、いろいろな人との関わりを体験させておきたいと思っ て、本人を説得して参加したようである。  Iさんは、母親と共に行動するよりもサポーターとの方が年齢も近く、会話を楽しめるのでサ ポーターと楽しそうに過ごしている。Iさんは、キャンプ中も食事の配膳当番を決めていたにも関 わらず、毎回、誰よりも早く食堂に行き、積極的に動いていた。しかしその反面、「わからない」 と言えず分かったふりで行動してしまう面や自分中心の考えになる、思ったことを言う、相手の 思っていることが分らないなどからサポーターから誤解を受けてしまうこともあった。 【Yさん(女性)】  自閉症のYさんは、こだわりから次の行動へ移す場面で停止してしまう。歩き始め、次の活動な 10:00 13:30 18:00 母親グループと合流 ダイヤモンドヘッド登山 写真⑪ 多くの観光客とともに登る。 昼食 市内観光(ハナウマ湾、市役所など) 夕食 24 朝食後空港へ移動 ホノルル~関西国際空港 25 6:30 関西国際空港着 表1 ハワイキャンププログラムの概要 第2節 参加者親子の様子 【Iさん(男性)】 「本当は来たくなかった、彼女と遊びたかった」とサポーターに言いながらも楽しそう に過ごす。母親もそのことは十分承知しているが、半年前に就職先で人間関係がうまくい かずIさんが悩んでいることに気付かなかったことを後悔している様子である。翌月から ホームヘルパーとして働く予定であるが、発達障害のために仕事の能力はあっても人との 関わりが苦手なことから仕事を続けることが難しいと考えられ、いろいろな人との関わり を体験させておきたいと思い、本人を説得して参加したようである。 I さんは、母親と共に行動するよりもサポーターとの方が年齢も近く、会話を楽しめる のでサポーターと楽しそうに過ごしている。Iさんは、キャンプ中も食事の配膳当番を決 めていたにも関わらず、毎回、誰よりも早く食堂に行き、積極的に動いていた。しかしそ の反面、「わからない」と言えず分かったふりで行動してしまう面や自分中心の考えになっ てしまうこともあるためにサポーターから誤解を受けてしまうこともあった。 【Yさん(女性)】

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どすべての面においてであるが、なかでも食事に対するこだわりが強く、食べ始めるまでに時間が かかり、ようやく食べ始めてもなかなか口に食べ物を運ぼうとせず静止する。さらに皿に入ったも のは全て食べ終わるまで納得しないため、食事に長時間を要する。食事をしながら促すサポーター の様子を見て行動を進めるかどうかを観察している様子も伺える。  母親がいると歩き始めも食事も静止しようとすると強く促されていた。そのため皆とともに食事 を終え、行動することが可能であった。 【Kさん(男性)】  発語がほとんどないためにKさんの正確な意思は確認することができない。こだわりによる強い偏 食のため、機内食は全く食べず、母親が日本から持参したカップ麺や米飯にも手をつけなかった。 キャンプ場でも1日に1食程度しか食べないこともあったが、食べるときには、アップルパイ、焼 き餃子、クッキーなど自分の欲しい物を指差しては皿に入れてもらい、満腹まで同じものを食べて いる。野菜を皿に入れて「これを先に食べてから」と伝えると嫌々ながらも食べることができた。  母親は、なんとか食べさせようとさまざまなものを用意して食事を勧めるが、Kさんは、ほとん ど興味を示さなかった。また、意思表示が少ないため、訴えの内容がわからない時も幼い子どもを 扱うようにあれこれと世話を焼いていた。 第3節 参加者親子の関係の考察  Iさんは、自分のことは全てできることから特別な支援を必要とするわけではないが、発達障害 のために「本当は来たくなかった」という自分の発言によって相手がどう思っているか理解できな いなどの人との関係が上手く保てない面をもつ。サポーターにとっては、Iさんの発言と行動が一 致せず、戸惑う場面がみられた。  Iさんの母親は、このような対人関係の難しさを非常に危惧しているが、Iさんはあまり母親に 干渉されたくないようである。また、他の母親達には、障害の違いから悩みを言えないようであ る。他の母親達からみると自分達の子どもより軽度の障害のため、Iさんの母親の悩みは理解しが たい、そのことを母親も感じているのか自分の悩みや思いをあまり打ち明けられずに過ごしている 様子が伺える。  Yさんは、母親がいる場面と母親がいない場面では行動が大きく異なる。キャンプ中にサポー ターがいくら促してもなかなか動こうとしないが、母親がいる時は、母親がYさんの傍にぴたりと くっついて小さな声で促している。Yさんもすんなり動いているように見えるが、Yさんにとって は仕方なく従っているようである。キャンプでは、Yさんがサポーターの様子や反応を伺って楽し んでいたり、Yさんが突如歌いだした歌の続きを皆が歌うと嬉しそうに笑っているなどYさんらし さや自己表現の場面を見ることができた。このように、知的障害者本人も母親がいる場面とそうで

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ない場面で異なる様子を見せていることがわかる。  母親としては、集団行動で皆に遅れることがないよう、迷惑をかけないようにしているようである。  Kさんの母親は、周囲が驚くほどの過保護ともいえる密着ぶりを見せる。キャンプ中は毎晩、サ ポーターに電話をかけてその日のKさんの様子を聞くほどである。Kさん自身は自閉症のために世 話を焼かれることについては迷惑な様子である。しかし、母親の行動は「息子の世話をきちんとし なければ」と思っているともとれる。つまり、障害をもつ子どもを産んで親類から責められ、育っ ていく過程で周囲の人から育児方法を責められたり、あるいは責められたように感じるといったこ とは、障害が誰のせいでもないことが分かっている現代でも起こっていることである。さらに、食 事を食べようとしないともなると「食べない=食べさせていない」ように思われまいかと過剰に世 話を焼こうとするのは、そこから起因しているのではないか。  このような母親達の行動は、キャンプ中にずっと一緒にいたサポーター達から見ると特異なものに見え たようであるが、それぞれに娘や息子を思い、長年培ってきた援助方法であると考えることもできる。

第2章 余暇活動とレスパイトケアの必要性

第1節 障害者キャンプの意義  身体障害者や知的障害者、認知症高齢者、喘息児、病気を抱える子どもなどを対象にキャンプが 企画されている2特に認知症高齢者のキャンプへの取り組みは、体を動かすこと、自然の中で非 日常を味わうことなどにより認知症の問題行動の軽減を図るとして注目されつつあるが、キャンプ の専門知識と福祉の専門知識を持つ指導者がいないことや安全面への危惧から実施に消極的になっ ているケースもある3  石田は、障害者キャンプの意義について 1.レクリエーションとしての意義 2.治療・リハビリの効果(療育) 3.障壁を超える 4. 社会性を育む 5.ノーマライゼーションの実践  6.青少年の育成 7. レスパイトケア  8.社会問題の明確化 を挙げている4以下にそれぞれの意義についてまとめる。  レクリエーションとしての意義については、障害をもっていても、いきる喜びを得るためのレク リエーションは必要である。キャンプは、生涯を通して自然と仲間を媒介に、いきる喜び、心の癒

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し、健康、趣味などを障害者を含めた全ての人に提供できる活動である。  治療・リハビリの効果としては、楽しく活動することによって、心身のリハビリを目指すことか ら療育は障害児・病虚弱児キャンプの大きな目的の一つとされている。  また、社会性を育む意義については、病院や施設で生活していることの多い障害、病気をもつ子 どもたちは、一般に依頼心が強く、自主性に欠けていると言われている。家族や介助・看護にあた る大人以外の人、つまり仲間や指導者と共に小集団で活動するキャンプは、障害児の社会性を育む いい機会になる。  障壁を超えるとは、心身の障害をもつことによって、社会的障害を持つことを余儀なくされてい る人は多い。これは、本来持っている可能性が狭められていることを意味する。キャンプは彼らの もつ問題を整理し、配慮された環境、配慮された人間関係の下で活動ができる。その利点を生かし 障壁を超えることが自信につながり、本人のみならず関係者にも勇気を与える。  ノーマライゼーションの実践については、キャンプで障壁を乗り越える体験が、障害者自身の現 実社会での可能性を切り開いていく。さらに、障害児と健常児の合同キャンプや痴呆性(認知症) 老人と若いボランティアのキャンプなどの実践が、社会での障害者や高齢者への偏見を取り除き、 ノーマライゼーションの実践につながる。  レスパイトケアの意義については、キャンプに行っている数日間離れることで、家族が休養を取 り、残りの360日余りを新たな気持ちでがんばれるようになること。また、家族がいっしょに参加 して、専門家から新しい介護や教育の方法を学んだり、同じ悩みをもつ家族同士、励まし合ったり 慰め合ったりすることも大切な活動である。  社会の問題の明確化は、障害をもつ人が社会で生きていく上で、一番根本的な問題は人権の問題 である。しかし、障害者の人権の何が阻害されていて。何が問題なのかは意識しないと見えてこな いことも多い。そうした時、同じ問題をもつ障害者が集まって生活するキャンプは、その問題を明 確にする助けになる5  障害や高齢、病気を抱える人のキャンプは、日常では味わえない体験の機会となる。キャンプ生 活そのものになんらかの支援を必要とする人であっても医師や看護師、障害についての知識を持つ 人など適切なスタッフの配置により、安心して参加することができ、個々にサポートするスタッフ の支援方法、安全面への配慮、障害や病気などに合わせて様々な形で参加できるプログラム内容の 工夫を行うこと、経験豊富なスタッフが臨機応変に対応できる体制や事前準備をしっかり行うこと で、楽しめるキャンプを行うことができる。たとえば、知的障害者であれば、事前顔合わせを行 い、誰とどこに行くのか、そこでどのようなプログラムを行うのか、持ち物や注意事項をあらかじ めイメージできるよう伝えることができる。さらに病気をもつ人たちのキャンプでは、スタッフに その人の病気が理由で困難なこと、不安に思っていることなどを知ってもらうことやそれを自分自 身で伝えることも大切な活動である。

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 そして、キャンプに参加することで、親と離れて生活する体験、参加者同士や学生スタッフとの 出会い、学校を卒業して身体を動かす機会が少なくなった障害者にとってめいいっぱい身体を動か すことなどが体験となることでキャンプの意義がそこに見出せると考えられる。さらに、親あるい は家族にとっては、この間を利用して障害者の兄弟のケアや家族で旅行、美容院に行く、友人と会 う、母親同士が語り合うなどのレスパイトケアに繋がると考えられる。 第2節 障害者介護を取り巻く環境  北野は、スウェーデンのpublic care systemに沿って計算すると日本の高齢化率が16%に達し た場合、約100万人のヘルパーが必要であると述べ、厚生省・労働省が1988年に示した在宅サービ スの2000年の数値目標は、ホームヘルパー5万人、ショートステイ5万床、デイケア1万箇所につい て、できる限り、家族が障害者・高齢者を介護し、お金のないものはホームヘルパーからわずかな 手助けをうけ、金があるものはシルバー産業などを利用すればよいという考え方がそこにあると述 べ、さらに介護者が疲れるとショートステイを利用し、また夜間介護者の昼間の就労や社会参加な どのゆえに、日中介護が手うすな場合には、デイサービスを提供しようというわけである。そして 介護者がどうしてももちこたえられない場合は、施設によるプライバシーと自己決定に欠けた介護 がまっているとしている。  この考え方やビジョンの大きな問題として①今後も現状が変わらないという想定で立てられてい ること、②もっと大胆な家族支援のためのシステムを必要としているのであり、ささやかな家族の 介護におんぶしすぎると、“とじこめっきり障害者”、“ねかされっきり老人”をこれまで以上に 大量に生み出すことになる。③障害者や老人のニーズこそがまず真剣に考えられるべきであって、 それと共に介護する家族や社会の側のニーズも考察されるべきであると述べている6  北野のいうスウェーデンのケアシステムやヘルパー数、我が国の数値目標などデータ自体が古い ものであるため、我が国での現在の状況についてみてみたい。2007年現在で高齢化率は21.5%7 護保険の訪問介護従事者(常勤換算)12万2000人8障害者ヘルパー(常勤換算)5万6000人9である。

総数(人)

居宅介護事業

56,063

重度訪問介護事業

13,689

行動援護事業

1,642

表2 障害者ヘルパーの内訳 厚生労働省大臣官房統計情報部「平成19年社会福祉施設等調査結果 の概況」3 従事者数(1) 職種別常勤換算従事者数表14 事業の種類 別にみた職種別常勤換算従事者数平成19年10月1日現在より一部抜粋

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 北野のいう高齢化率16%でヘルパー約100万人必要という試算と照らし合わせると訪問介護員と 障害者ヘルパーを合わせても5分の1程度の従事者数である。常勤換算での計算のため、実際には パート勤務のヘルパーで対応している場合も多いため、実数は多いと考えられるが、介護報酬や障 害者自立支援の報酬と利用料を合わせて正規雇用で雇える人数が非常に少ないことを示していると いえる。  2000年の介護保険法の施行により、民間企業やNPO法人などの介護事業者の参入が増えたこ と、介護福祉士やホームヘルパーの資格を持つ人が専門職として従事することが一般に浸透してき たことで、訪問介護員が増加した。また、障害者ヘルパー数の増加も2004年の支援費制度の導入に より、それまでは、障害者本人が介護者を探し、直接契約をして介護費用の支払いをしていたたこ ともあり、学生アルバイトや一人のヘルパーが複数の障害者のヘルパーをしているなどでその実態 は不明であったが、ヘルパー資格取得や講習会の受講をヘルパーの要件としたことや事業者との契 約方式に切り替えたことが挙げられる。さらに利用する側も契約制度に移行したことにより、福祉 サービスを利用することへの抵抗が少なくなり、居宅介護のニーズと共にサービス利用が増えたこ とが原因と考えられる。  ヘルパーの増加がニーズに対応する形で増え在宅サービスの利用が広がった一方で、障害者の親 の考え方は変わったとはいえない。たとえば、サービスの隙間や範囲を超えた分は、家族が負担せ ざるを得ないことや、地域移行を掲げる一方で、グループホームやケアホーム、福祉ホームを利用 するには、障害者基礎年金に頼っている人たちにとって経済的に不可能となり、家族の援助を要す る。このような状況と、キャンプに参加した母親の様子からもまだまだ、親が限界まで子どもを抱 え込みやすい状況であるといえる。 第3節 レスパイトケアの必要性と課題  レスパイトケアとは障害児(者)を抱えた親・家族の介護からの一時的な解放を目的にした援 助であり10レスパイトサービスの方法は、障害児・者が施設に短期入所する方法およびフォス ター・ファミリー(里親)の家庭に短期滞在する方法のアウト・オブ・ホーム・サービスと家庭に ホームヘルパーなどの介護者を派遣するイン・ホーム・サービスがある。レスパイトサービスが発 達しているアメリカ、カナダではフォスター・ファミリーやグループホーム(レスパイトホーム) などがレスパイトサービス提供の大きな社会資源になっているのに対して、我が国ではホームヘル プサービスはレスパイトケアとしての位置づけはなく、ショートステイサービスがレスパイトケア の中心となっている11  障害者や高齢者の自立を含む在宅生活、地域生活ニーズの増大に伴った活動形態の一つに、 ショートステイなどは家族の休養を目的としたレスパイト・ケア(休養サービス)を導入すること により、従来のように家庭における援護機能の完全な代替機能を果たすという方向から、施設と家

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庭の連携の強化により在宅生活の安定的維持を図るという考え方への発展がみられる12  レスパイトケアとしてのレスパイトサービスには、制度としてはショートステイ制度によらない インフォーマルな社会資源としては、日帰りや宿泊を伴う旅行、外出、イベントなど様々なレスパ イトサービスがある。これらは移動支援を活用する方法もあるが基本的にはボランティアスタッフ であったり、スタッフの必要経費を含む参加費を参加者が負担する助成金を活用する形となる。  知的障害者本人と母親のキャンプ全体の様子を見ていると、母親が長期に渡って主たる介護者と なってきた背景がうかがえる。母親達は、合流した途端に息子や娘のキャンプの様子をサポーター から聞きだし、その後は、サポーターに任せず母親が行動を共にする。それまでサポーターに任せ きりで自分達がその間に市内観光などを自由に楽しんだことを後ろめたく思ったような発言もみら れた。  また、ダイヤモンドヘッド登山では、Yさんの母親自身が杖歩行のため、斜面を登るのがゆっく りとなり、そのうえ歩行も不安定で自分のことが精一杯の状態であるにも関わらず、それでもYさ んの様子を気遣いながら登っていた。この誰の助けも借りようとしない様子から親が高齢になって も、病気や障害があっても、限界まで自分達で介護しようとすることがわかる。そして限界が来た ときに障害者を施設に入所させるというのは、未だ変わらないのではないか。  それほどの限界まで家族や親が介護や支援を続けることでいいのか。もっと日常的に地域で暮ら す障害者や家族が参加できるプログラムがあって、個々に合ったプログラムを選びながら参加でき る仕組みがあってもいいのではないか。そこで、親が悩みを話し合う、普段できないことをする、 自分達の時間を自由に過ごす機会をレスパイトケアとして保障する必要があるのではないか。  今回のキャンプ参加者の親の感想に「以前家族でハワイに来たが、障害者本人と他の兄弟の楽し み方が異なると家族が別行動になり、母親が障害者本人と共に行動することになってしまい、自分 自身は思いきり楽しめなかった」といった声がきかれた。このように家族、特に母親の息抜きの機 会があることで長く地域で暮らしていくことにつながると考える。そのためには余暇支援を充実さ せて、親のレスパイトを支援し、積極的にサービスとして認めていくことが必要である。

おわりに

 障害者キャンプは日本国内でもさまざまな障害を対象に行われており、海外でなければならない 理由はない。しかし、海外だからこそ広いキャンプ場で多彩なプログラムが可能で、過ごしやすい 気候のなかで過ごせることに大きな意義があると思う。海外ゆえに現地に行ってみて驚くことも多 い。2007年2月のオーストラリアでの障害者キャンプでは、キャンプ場内の外灯がほとんどないた めに、夕方以降の外は真っ暗闇で苦労したことや食事の量が多いことから調整を必要とした。今回 のハワイキャンプでは、シーツやタオルケット、枕を貸し出しする制度がなく、そのままベッドの

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マットレスで寝るか持参するかであったため、無理に頼んでようやくありあわせの物を借りること ができた。日本では寝具の貸し出しは、当たり前のことだが、海外では通用しないことを実感し た。なければないなりになんと工夫するのもキャンプであり、参加者もキャンプに慣れているから こそ成り立っている部分があるので、このようなハプニングを楽しみつつそして、さまざまな状況 に対応できるキャンププログラムを実践していく必要がある。        [注] 1 正式には、YMCA CAMP H.R.ERDMANである。世界各地からキャンプスタッフが集まり、  プログラム指導研修を終えた後、有償スタッフとしてプログラム指導を行っている。今回体験したプログラ  ム以外にもさまざまなアクティブプログラムがあり、全てスタッフが指導してくれる。 2 日本における障害者キャンプは、1953年に香川県の余島で、朝日新聞大阪厚生文化事業団と神戸YMCA  の主催で実施された「肢体不自由児キャンプ」が最初と言われている。石田易司『障害をもつ人たちとのキャ  ンプ ―障害者キャンプマニュアル― Ver.1.0』エルビス社1998年10月25日 pp.3-4   初期の療育キャンプの目的をまとめると以下のとおりである。 ① 社会教育的側面:グループ生活をしながら、自然に親しみ、楽しいキャンププログラムを体験すること  は、社会性の育成と社会生活の訓練となる。 ② 医学的側面:専門医が加わることで心身両面での子ども達の能力の観察や診断を行い、個々の可能性を再  発見し、個別指導へとつなげる。 ③ 教育学的側面:専門的な観察や指導によって、精神力の養成をするとともに、学習その他の活動への動機  づけを行う。 ④ 社会啓発的側面:手足の不自由な子どもに対する社会の関心を高め、理解を広める。   1955年に「肢体不自由児キャンプ」を始めた京都障害児福祉協会のキャンプは、中学生をも対象にした 「統合キャンプ」へと発展させていった。   黒木保博「第1章社会福祉実践の方法としてのキャンプの意義」京都障害児福祉協会編 大塚達雄、黒木  保博編『京都発 障害児の統合キャンプ』ミネルヴァ書房1994年7月15日 p.10   また、痴呆性(認知症)老人キャンプは1993年に兵庫県で実施されたものが最初とされている。   石田易司『痴呆性老人とキャンプ』朱鷺書房1997年5月 p.163 3 朝日新聞2008年11月12日朝刊「地域つくるシニアキャンプ」 4 これ以外に石田は、1.レクリエーションとしての意義 2.治療・リハビリの効果(療育) 3.社会性を  育む 4.ノーマライゼーションの実践  5.レスパイトケア 6.その他を挙げている。   石田易司『エルピスブックレット②障害者キャンププログラムの実際』エルピス社2001年11月 5 石田1998前掲書 6 北野誠一「地域での自立生活とグループホーム・ケア付住宅」桃山学院大学『桃山学院大学社会学論集  23(1)』, 1989年9月30日 pp.141-176   1989年9月30日 pp.144-146 7 国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料2009」Ⅱ年齢別人口表2−6人口の年齢構造に関する指標:  1884~2007年   http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2009.asp?fname=T02-06.htm&title1=%87U%81D  %94N%97%EE%95%CA%90l%8C%FB&title2=%95%5C%82Q%81%7C%82U%81%40%90l%8C%FB%82%CC%94  N%97%EE%8D%5C%91%A2%82%C9%8A%D6%82%B7%82%E9%8Ew%95W%81F1884%81%602007%94N

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8 居宅サービス事業所の常勤換算従事者数は、訪問系サービスでは、訪問介護172,753人、通所系サービスで  は、通所介護188,235人となっている。平成18年10月1日現在の訪問系サービス常勤換算従事者総数176 527人  から減少している。   厚生労働省大臣官房統計情報部「平成19年介護サービス施設・事業所調査結果の概況」6従事者の状況(1)  職種別常勤換算従事者数http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service07/kekka6.html 9 厚生労働省大臣官房統計情報部「平成19年社会福祉施設等調査結果の概況」3 従事者数(1) 職種別常勤換算  従事者数 表14 事業の種類別にみた職種別常勤換算従事者数平成19年10月1日現在   http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/fukushi/07/kekka2-3.html 10 小沢温「レスパイトケア」山縣文治、柏女霊峰編集委員代表『社会福祉用語辞典第7版』ミネルヴァ書房  2009年4月20日 p.378 11 小沢温「Ⅱ家族支援、性教育 5レスパイトサービス、ファミリーサポート:家族支援の施策化は可能か」  小沢温編『よくわかる障害者福祉』ミネルヴァ書房2003年1月30日 pp.142-143 12 定藤丈弘、北野誠一「第8章障害者福祉実践の課題と展望」定藤丈弘、佐藤久夫、北野誠一編『現代の障  害者福祉』1997年2月20日 p.205 【参考文献】  石田易司『オーストラリアの野外レクリエーション』エルビス社2006年11月  石田易司『エルピスブックレット②障害者キャンププログラムの実際』エルピス社2001年11月  石田易司『障害をもつ人たちとのキャンプ ―障害者キャンプマニュアル― Ver.1.0』エルピス社1998年   10月25日   石田易司『痴呆性老人とキャンプ』朱鷺書房1997年5月  小沢温編『よくわかる障害者福祉』ミネルヴァ書房2003年1月30日  北野誠一「地域での自立生活とグループホーム・ケア付住宅」桃山学院大学『桃山学院大学社会学論集   23(1)』,1989年9月30日 pp.141-176  京都障害児福祉協会監修 大塚達雄、黒木保博編『京都発 障害児の統合キャンプ』ミネルヴァ書房1994年   7月15日  定藤丈弘、佐藤久夫、北野誠一編『現代の障害者福祉』1997年2月20日  山縣文治、柏女霊峰編集委員代表『社会福祉用語辞典第7版』ミネルヴァ書房2009年4月20日  厚生労働省大臣官房統計情報部「平成19年社会福祉施設等調査結果の概況」   http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/fukushi/07  厚生労働省大臣官房統計情報部「平成19年介護サービス施設・事業所調査結果の概況」   http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service07  国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料2009」   http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2009  朝日新聞2008年11月12日朝刊「地域つくるシニアキャンプ」

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(ABSTRACT)

One View of respite care by parents of mentally-challenged

Children : Through Hawaiian camp.

TAKADA Sayaka

 Camp and a sightseeing tour of the city were performed at a Hawaiian campsite in Oahu in December in 2007 mainly by a challenged children and the mother. While a mentally-challenged person is doing camp, it seems that mothers could talk between the persons who enjoy a sightseeing tour of the city and a shopping and have the same problem. A parent can take a rest for even a short while by a mentally-challenged children offering the program which enjoys leisure activity this. And I can think the Japanese old way of thinking by which we have assumed that the family nursing is natural is related to a background of mother behavior. When not to make them enter facilities, but respite care is enriched a parent nursed person with disabilities’s child until the limit, and when reaching the limit, it’s possible to choose a right program each and participate. Using there, time of oneself who do the thing which can’t usually be done when a parent discusses worries, freely, I have time, it may be necessary to secure a chance as respite care.

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