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分岐器保守周期延伸対策及びその効果について

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Academic year: 2022

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(1)IV‑140. 土木学会第57回年次学術講演会(平成14年9月). 分岐器保守周期延伸対策及びその効果について 西日本旅客鉄道(株) 正会員 鈴木 西日本旅客鉄道(株) 非会員 立岩. 常夫 直樹. 1、はじめに 平成9年春のダイヤ改正による500系の300km/h走行や平成12年春のダイヤ改正による700系の28 5km/h走行が開始され、山陽新幹線ではますます高速化が進められてきた。一般軌道は平成8年度からσ値を用い たMTT整備等により、軌道状態や乗り心地は向上したものの、分岐器区間は構造の複雑さから軌道状態も悪いため保 守周期が短く、動揺多発区間となっている。JR西日本では、こうした状態を鑑みて、分岐器区間を弱点箇所として、 様々な対策を実施してきた。本研究では、こうした分岐器対策工毎 表ー1 分 岐 器 部 位 別 軌 道 狂 い の中から特に 10m 弦高低対策工を中心に紹介し、その効果につい 部位 狂い 記事 てに報告することとする。 転てつ棒や控え棒が多く存在し、道床中透かし 先端部(ポイント) 高低 量が大きい 2、分岐器の構造的弱点について 電気転てつ器 水準 転てつ器による偏荷重による水準狂い 溶接と継目が2.5m離れているため、構造的な平 ヒール部 高低、平面 構造別むら直し投入割合 (図―1) 面性狂いが発生 リード(80#付近) 高低、水準 分岐側通過時の絶縁継目による衝撃 から分岐器区間におけるむら直し割 リードからクロッシン 分岐側水準 まくらぎソリによる分岐側水準狂い グ 合は全体の 4 割を占めており、分岐 クロッシング 高低 斜め継目や伸縮継目部のレール重なり部 器区間が弱点箇所であることがよくわかる。以上のことから、軌道 先端部 ポイント部の長マクラギ化(対策ー1) 構造上から考えられる軌道狂い発生要因を表―1のように むら直し 電気転てつ器 電気転てつ器マクラギ下面樹脂散布 低減対策 大まかに分類することができる。 ヒール部 長マクラギ化(対策ー2) 分岐器全体 マクラギそり対策(注1) 3、分岐器対策工について 分岐器全体 弾性マクラギ敷設(対策ー3) 分岐器対策として実施した対策は図―2に示す通りであ SMTT施工方法の改善(対策ー4) 構造物 合成桁縦曲線挿入による合成桁振動低減(注2) る。このうち、図―2にある対策番号があるものについて SMTT施工方法の改善 乗り心地 レーザー測定による施工 述べていくこととする。なお、注釈があるものについては、 向上 樹脂系埋め込み栓を用いた渡り分岐器整備 土木学会で既報なので割愛させていただく。 合成桁縦曲線挿入による上下動用低減 3−1 ポイント部の長まくらぎ化(対策―1) 図ー2 分岐器区間対策一覧表 2.40 P54イロ 長マクラギ敷設 ポイント部は表―1に述べているように、転てつ器や控 2.20 T2 2.00 1.80 え棒等の支障物が多く存在し、転換に支障しないように道床中透 1.60 1.40 1.20 かしを大きくしているのが現状である。このため、つき固めを実 1.00 0.80 マヤ 施してもつき固め不能箇所が多く、また道床中透かし状態が大き いため、バラストが逃げやすく、ポイント部はばたついているこ 図ー3 長マクラギ施工前後比較(10m弦高低σ値) とが多い。つまり、本来果たすべき道床支持力が通常の箇所に比 べ低い状況にあることが考えられる。そこで、中透かしによってバラストが逃げることによる道床支持力不足を補完す ることを目的として考えられるのが、大判まくらぎの敷設等の道床支持力向上施策が有効であると考えられる。よって、 ①SMTTのつき固め支障にならない②既成品のまくらぎであること③通り整正に支障が生じないこと(パラペットか ら余裕があること) 、以上の観点から現状のまくらぎ長+300mm とすることで、道床支持力を向上させることとした。 ポイント部9#から22#までを長まくらぎ化し、 図―3にポイント部の長まくらぎ化を実施した前後の分岐器σ値推移を 示す。施工前の狂い進みが 2.18mm/年から 0.02mm/年に大幅に良化していることがわかる。 3−2 ヒール部における長まくらぎ化(対策―2) 10σ 1.90 1.80 SMTT(H13.2) 1.70 ヒール部においては、分岐側曲基本レールの絶縁継目と直基本 1.60 1.50 レールの溶接が同位置にあり、2.5m 離れた位置に曲トングレー 1.40 1.30 1.20 H12.12 ル、直トングレールの継目があるため、高低狂いはもちろんのこ 1.10 長マクラギ 1.00 と、平面性狂いを発生しやすい傾向にある。また、列車の繰り返 化 し荷重による道床劣化や本線と分岐側の2つの軌道を1本のまく 図-4 ヒール部長マクラギ化 らぎで支持しているために分岐器固有の軌道狂いとも言える。そ こで、一般軌道と同じく継目部に大判まくらぎを敷設すること等 キーワード:分岐器、保守周期、長まくらぎ、弾性まくらぎ、軌道狂い 〒673-0049 兵庫県明石市西明石西町 1 丁目 1−9 Tel (078)922-3620 Fax(0792)922-3647 分岐器 42%. その他 19%. 溶 接 8%. E J 28%. 図ー1 むら直し投入割合. H12-6-2. H12-5-2. H12-4-2. H11-3-2. H11-2-2. H11-1-2. H11-12-2. H11-11-2. H11-9-2. H11-10-2. H11-8-2. H11-7-2. H11-6-2. H11-5-2. H11-4-2. H10-3-2. H10-2-2. H10-1-2. H11-10-1 H11-11-1 H11-12-1 H11-1-1 H11-2-1 H11-3-1 H12-4-1 H12-5-1 H12-6-1 H12-7-1 H12-8-1 H12-9-1 H12-10-1 H12-11-1 H12-12-1 H13-1-1 H13-2-1 H13-3-1 H13-4-1 H13-5-1 H13-6-1 H13-7-1 H13-8-1 H13-9-1 H13-10-1 H13-11-1. H10-12-2. (mm). I J 3%. ‑279‑.

(2) IV‑140. 土木学会第57回年次学術講演会(平成14年9月). による道床支持力向上対策が有効であると考えられる。つまり、3−1と同様の観点から、40#から 46#をまくらぎ長 さ+300mm とした。この結果、図―4に示すように 0.97mm/年から 0.6mm/年へ微少ながら良化した。 3−3 弾性まくらぎの敷設(対策―3) 弾性まくらぎ敷設は現在ある軌道材料の中でも、軌道弱点箇 弾性マクラギ敷 SMTT施工 設 所対策に最も有効な対策工の一つであるが、弱点箇所対策とし て分岐器前後にも敷設を行っている。3−1にも述べたように 分岐器先端部がばたついている場合が多い為、先端部に弾性ま くらぎを敷設し、列車が比較的滑らかに進入できことが望まし いと考えられる。その他、いろいろなパターンで敷設した(先 図ー5 弾性マクラギ敷設前後の10m弦高低σ値進み(先端対向) 端部で背向、後端部で対向、背向) 。また、あわせて分岐器先端 部の溶接対策としても実施した。図―5では、先端部の対向の場合を示す。施工前後の狂い進みは 1.08mm/年から 0.24mm/年へ大幅に良化した。 前回SMTT 今回SMTT 1.7 3−4 SMTT施工方法の改善(対策―4) 1.6 1.5 分岐器区間のつき固めには、全社運用している1台の分岐器用 1.4 1.3 マルタイ(以下「SMTT」とする)を使用して施工しているが、 1.2 1.1 全社運用を行っていることからその施工精度向上及び施工後の保 1 0.9 守周期延伸が不可欠である。JR西日本では、極力機械化施工を T2 T2 T3 T2 T2 T2 T3 T3 T3 T3 T3 T2 T3 4-1 6-1 8-1 10-1 12-1 2-1 3-2 4-1 4-3 5-2 6-1 6-3 7-2 基本とするために、分岐側においてもSMTTで施工を基本とし 図ー6 SMTT施工前後の10m弦高低σ値推移 ていた。そのため、施工時間が限られ、施工延長は分岐器の延長 +α程度の延長しか実施できない状況であった。また、高速で通過する本線側を基本としているため、分岐側はつき固 めのみでレベリングを行っていない状況であった。そこで、本線側の乗り心地向上のための長波長整備とあわせて、本 線側の施工延長を確保し、分岐側をHTTで施工する方法を実施した。図―6に施工前後のσ値推移を示す。紙面の都 合で割愛させて頂くが、今回の施工方法の方が 10m 弦高低・40m 弦通りσ値の良化率が向上した。この図から 0.94mm/ 年から 0.41mm/年に大幅に保守周期延伸が図れたことがわかる。つまり、従来の施工法は本線側をレベリング実施後、 分岐側をレベリング無しでつき固める際にSMTTの荷重によって、まくらぎに偏荷重がかかり、本線側を持ち上げた 表ー2 各対策工別の効果一覧 状態となり、施工後列車が通過する際にまくらぎ長手方向にばたつきを生 平均良化 平均良化 良化率 種別 箇所 進行 実施数 量(mm/ じさせていた為と考えられる。 率 (全体) 年) マクラギ化(対 先端 対向 3 0.79 49% 4、各対策工の効果の検証について 56% 策ー1) 背向 2 1.12 65% 長マクラギ(対 ヒール 対向 3 0.19 -18% -17% 今回実施した対策工について、対策工別に、対向・背向別に、年間のσ 策ー2) 背向 3 0.01 -16% 先端 対向 6 0.27 34% 背向 4 0.56 4% 値の狂い進みの良化量及び良化率で評価することとする(表―2、図―7) 。 弾性マクラギ 24% (対策-3) 後端 対向 2 0.44 43% 背向 1 0.00 0% ただし、対策―4については、施工方法という観点と3−4で述べた効果 2.50 から評価の対象から除外することとする。 2.00 対策―1においては、背向の方が効果が大きいようであるものの、総 1.50 じて安定した良化量が得られている。対策―2については、平均良化率 1.00 が悪いが、図―7でわかるように一部の施工箇所において良化率が悪い 0.50 施工前(mm/年) こと(良化率−250%、−85%)によって、全体の良化量・良化率が悪 0.00 0.00 5.00 10.00 15.00 20.00 25.00 30.00 35.00 い結果となったと考えられる。 対策―3においては、 敷設箇所は先端部・ -0.50 -1.00 後端部とも効果が得られているが、列車進行向きとしては背向では効果 弾マ(先端対向) 弾マ(先端背向) -1.50 弾マ(後端対向) 弾マ(後端背向) が小さい。これは、3−3で検討したように列車進入を極力滑らかにす ヒール長マ ヒール長マ -2.00 ることで狂い進みを抑制するのではないかという検討が妥当であったと ポイント長マクラギ(対向) ポイント長マクラギ(背向) -2.50 効果と考えられる。 図ー7 各対策毎の効果(施工後の良化量比較) 5、おわりに 弱点箇所対策として、様々な対策工を実施してきたが、今回対策工の効果を評価することができた。今後は、これら の対策工の組み合わせによる効果や実施した対策工によって悪化したケースを分析し、どういった場合であれば悪化す るのか等を検証することとする。また、H13 年度から分岐器の合成まくらぎ化を進めているので、その効果についても 検証していくこととする。 <参考文献> 2.10 10σ 1.90 1.70 1.50 1.30. 1.10. 良化量(mm/年). 注1) 注2). 鈴木他:「合成桁上の有道床区間におけるMTT整備について」、土木学会第 55 回年次学術講演会、P、2000.10 鈴木、立岩他:「可変パッドを用いた分岐器まくらぎのソリ対策について」、土木学会第 56 回年次学術講演会、P592、2001.10. ‑280‑. H13-9-1. H13-8-1. H13-7-1. H13-6-1. H13-5-1. H13-4-1. H13-3-1. H13-2-1. H13-1-1. H12-12-1. H12-9-1. H12-11-1. H12-8-1. H12-10-1. H12-7-1. H12-6-1. H12-5-1. H12-4-1. H11-3-1. H11-2-1. H11-1-1. H11-11-1. H11-12-1. H11-9-1. H11-8-1. H11-10-1. H11-7-1. H11-6-1. H11-5-1. (mm). H11-4-1. 0.90.

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参照

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