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一方向複合材料の時間依存型の界面 損傷進展特性とクリープ寿命予測

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一方向複合材料の時間依存型の界面 損傷進展特性とクリープ寿命予測

Characteristic of Time-Dependent Interfacial Failure Propagation and Creep Rupture Prediction in Unidirectional Composites

2006 年 2 月

早稲田大学大学院理工学研究科 機械工学専攻 材料力学研究

小柳 潤

(2)

目 目

目 目 次 次 次 次

第一章 序論

1.1 研究の背景 8

1.2 従来の研究 9

1.3 本研究の目的 12

1.4 本研究の構成 13

参考文献 15

第二章 界面はく離を考慮した一方向複合材料の破壊基準

2.1 はじめに 19

2.2 一方向複合材料の静的引張破断モデル 21

2.2.1 Curtinモデル 21

2.2.2 界面はく離を考慮した修正Curtinモデル 23

2.3 フラグメンテーション試験 25

2.3.1 フラグメンテーション試験の基本理論 25

2.3.2 界面はく離と試験片ひずみの関係 28

2.3.3 繊維強度の定式化 30

2.3.4 界面せん断応力の定式化 31

2.4 ガラス繊維/ビニルエステル樹脂界面の調査 32

2.4.1 フラグメンテーション試験片作成 32

2.4.2 フラグメンテーション試験結果 33

2.5 ガラス繊維強化ビニルエステル樹脂一方向複合材料の静的強度 37

2.6 本章のまとめ 39

参考文献 40

第三章 高分子材料の非線形粘弾性変形

3.1 はじめに 42

3.2 高分子材料の線形粘弾性特性 43

3.2.1 粘弾性力学モデル 43

3.2.2 履歴を考慮した応力-ひずみ構成式 45

3.3 非線形粘弾性構成式 47

3.3.1 Schaperyの非線形粘弾性構成式 47

3.3.2 永久ひずみの考慮 47

3.3.3 各パラメータの決定方法 48

3.4 クリープ-リカバリー試験 50

3.4.1 供試体および試験方法 50

3.4.2 試験結果 51

(3)

3.4.3 永久ひずみの検討 56

3.5 検討 58

3.6 本章のまとめ 60

参考文献 61

第四章 クリープ寿命予測の定式化

4.1 はじめに 63

4.2 一方向複合材料のクリープ挙動の定式化 63

4.2.1 クリープ挙動の予測 63

4.2.2 McLeanのクリープ挙動モデル 68

4.3 短期クリープ寿命予測 69

4.3.1 クリープ破断予測 69

4.3.2 クリープ定数の決定 70

4.3.3 クリープ破断試験と寿命予測 72

4.3.4 下限界応力について 73

4.4 長期クリープ破断予測 73

4.4.1 長期クリープと内部損傷の蓄積 73

4.4.2 時間依存型の破断ひずみの定式化 75

4.4.3 平均応力回復長さの定式化 78

4.4.4 検討 80

4.5 本章のまとめ 83

参考文献 84

第五章 SFCの時間依存型界面損傷の進展

5.1 はじめに 86

5.2 光学顕微鏡を用いたSFCの界面損傷の時間依存特性調査 86

5.2.1 試験方法 86

5.2.2 ガラス繊維/ビニルエステル樹脂の繊維破断部損傷の試験結果 87

5.2.3 カーボン繊維/ビニルエステル樹脂の界面損傷の試験結果 90

5.3 顕微ラマン分光器によるカーボン繊維ひずみの測定 91

5.3.1 顕微ラマン分光器のカーボン繊維ひずみ測定原理 92

5.3.2 キャリブレーション試験 93

5.4 カーボン繊維/ビニルエステル樹脂界面の時間依存特性 95

5.4.1 試験結果 95

5.4.2 界面せん断応力分布の変化 97

5.4.3 破壊メカニズムの検討 99

5.4.4 破壊基準の考察 101

5.5 検討 103

(4)

5.5.1 光学顕微鏡とMRSによる結果の比較 103

5.5.2 摩擦応力の緩和と界面はく離進展のせん断ひずみの関係 104

5.6 本章のまとめ 105

参考文献 106

第六章 SFCの時間依存型界面損傷の定式化

6.1 はじめに 108

6.2 SFC界面損傷の定式化 108

6.2.1 粘弾性シアラグモデル 108

6.2.2 界面摩擦応力の緩和 116

6.3 界面はく離の破壊基準 119

6.3.1 界面はく離先端のせん断ひずみ 119

6.3.2 ビニルエステル樹脂の時間依存型破壊との比較 120

6.4 検討 125

6.4.1 摩擦応力の時間依存特性 125

6.4.2 カーボン繊維/ビニルエステル樹脂SFCの検討 127

6.4.3 ガラス繊維/ビニルエステル樹脂SFCの検討 130

6.5 本章のまとめ 133

参考文献 134

第七章 時間依存性を考慮した繊維強度の評価

7.1 はじめに 136

7.2 繊維の遅れ破壊 136

7.2.1 試験目的 136

7.2.2 試験結果 137

7.2.3 遅れ破壊モデル 138

7.3 フラグメンテーション試験による繊維強度の評価 142

7.3.1 繊維強度評価の時間依存性について 142

7.3.2 フラグメンテーション試験結果 143

7.3.3 繊維強度評価の補正理論 147

7.3.4 補正結果 151

7.4 本章のまとめ 152

参考文献 153

第八章 時間依存型の界面はく離進展を考慮したクリープ寿命予測

8.1 はじめに 155

8.2 カーボン繊維強化ビニルエステル一方向複合材料のクリープ破断予測 155

8.2.1 単繊維界面はく離の時間依存挙動の数値化 155

(5)

8.2.2 クリープ破断予測 161 8.3 カーボン繊維強化ビニルエステル一方向複合材料の静的破断ひずみ 165 8.4 中断試験による破断ひずみの検討 168

8.4.1 試験方法 168

8.4.2 試験片 169

8.4.3 試験結果 169

8.4.4 破断ひずみ低下の定量化 170

8.5 本章のまとめ 172

参考文献 173

第九章 結論と今後の展望

9.1 本論文の結論 175

9.2 今後の展望 177

補章A SFCの界面はく離発生エネルギの評価

A.1 はじめに 180

A.2 主な記号 180

A.3 エネルギバランス式 181

A.3.1 従来のモデル 181

A.3.2 塑性変形を考慮したエネルギバランス 182

A.4 応力分布および塑性域の定義 183

A.4.1 はく離領域 184

A.4.2 弾塑性領域 186

A.4.3 界面はく離エネルギ 188

A.5 フラグメンテーション試験 191

A.5.1 供試体および試験方法 191

A.5.2 試験結果 193

A.6 界面はく離エネルギの比較 194

A.7 本章のまとめ 195

参考文献 196

補章B 横方向引張試験における界面強度の調査

B.1 はじめに 198

B.2 横方向引張試験 199

B.2.1 試験方法 199

B.2.2 試験結果 199

B.3 エネルギ解放率の調査 203

B.3.1 エネルギ解放率の計算方法 203

B.3.2 有限要素解析 204

(6)

B.3.3 解析結果 206

B.4 本章のまとめ 208

参考文献 208

補章C 超長時間後の時間依存挙動

C.1 はじめに 210

C.2 超長時間クリープ 210

C.2.1 超長時間後のクリープ挙動 210

C.2.2 クリープ限界 211

C.3 繊維の遅れ破壊を考慮したクリープ寿命予測 212

C.4 本章のまとめ 215

(7)

第 一 章

序 論

(8)

1.1 研究研究の研究研究のの背景の背景背景 背景

比強度・比剛性に優位性を持つ複合材料は,特に航空・宇宙分野での使用増加が期待されている.

航空・宇宙分野で用いられようとしている複合材料にとってその長期信頼性は非常に重要な要素であ り,これを確保することは構造物の寿命設計につながるため,近年では数多く複合材料の長期信頼性 に関する研究がなされている.一般に,高分子系複合材料は疲労やクリープに対する耐性が金属材料 のそれらより良好であり,長期信頼性が確保されているように見える.しかし,巨視的な損傷は観察 されなくても,突発的なクリープ破壊や疲労破壊が生じることが報告されている.複合材料は巨視的 な損傷がなくても,内部に存在する微視的な損傷の蓄積により破壊に至るからである.

長期信頼性を議論するために,クリープ破断試験を数多く行い,そのS-T線図(応力-破断時間線図)

から長期のクリープ破断を予測することは非常に困難である.複合材料のクリープひずみはほとんど 観察されず,いわゆる定常クリープ期の傾きがその他の材料と比べ非常に小さいことに加えて,一般 的なクリープ破壊の直前に現れる第Ⅲ期クリープ挙動を示さないため,破断の予兆が読みとれないか らである.しかし繊維破断や繊維/マトリクス界面のはく離などの微視的損傷の時間依存発達は,図1.1 に示すようにさらに新しい微視的損傷を生成し,これらは再び時間経過とともに発達するため,破断 直前に幾何級数的に微小損傷が蓄積すると考えられており,これが原因で破壊の予兆を示さずにクリ ープ破断に至ると考えられる.しかも材料自体の強度にばらつきがあるため,S-T線図を得るには非常 に多大な労力が必要である.さらに複合材料の場合,長時間クリープにおける破壊と短時間クリープ における破壊は破壊のメカニズムが同じであるとは限らないため,短時間の試験から得られた S-T 線 図による長時間の予測はできない.一方,粘弾性特性を有する複合材料の応力-ひずみの構成式には温 度-時間換算則が提案されていて,高温による加速試験から,長期の挙動を予測できる手法が提案され ているが,高温側では微小損傷の形態も変化するため,この理論をクリープ破断に適応することはで きない.このため複合材料のクリープ破壊を予測するには,微視的な損傷の時間依存特性を調査し,

図 1.1 に示すような微小損傷の蓄積を考慮した定量的なクリープ破断を予測することが最も妥当であ ると考えられる.

Fig. 1.1 Schematic of micro-damages in composite materials under tensile creep loads Fiber break

Interfacial debonding and its time-dependent propagation New fiber break and

interfacial debonding

(9)

1.2 従来従来の従来従来のの研究の研究研究 研究

現在までに非常に数多くの複合材料の長期信頼性に関する研究が行われている.Bruller(1)は高分子材 料の強度の時間依存性について検討し,試験時間,つまり引張速度が小さい方が破断ひずみ,破断応 力がともに低下することをエネルギ理論によって示した.Raghavanら(2)とTodoら(3)はこの理論を複合 材料に拡張し,複合材料でも同様の結果を得,また,Bodnar(4)らはクリープ後の引張強度の低下を同様 の理論により裏付けた.これらの研究は時間依存破壊までを定量的に検討しているが,言い換えれば 複合材料を均質材と見なして研究を行っているため,構成基材の変更や,繊維体積含有率の変化に対 応できず,すなわち対象を変えるとそれごとに再び試験を行う必要があり,汎用性に欠ける.

一方,McLean(5)は,図 1.2 に示すような粘弾性モデルを用いて繊維を弾性体,マトリクスを粘弾性 体と別々に仮定することで,複合材料の応力-ひずみの時間依存挙動を一般化する定式化を提案した.

その他にも,クリープ条件下におけるひずみ増加の挙動を調査した研究(6)~(13)は数多く存在するが,主

にMcLean同様に繊維は弾性体と仮定し,粘弾性を仮定されるマトリクスの粘弾性挙動を様々な構成式

にて記述している.

Fig. 1.2 Typical viscoelastic model for composite creep deformation

これらの研究は,時間依存の応力-ひずみ関係を定式化しているのみで,内部に存在する微小損傷は無 いという前提でのみ適応できる.しかし,実際は内部の微小損傷の蓄積によりクリープ破壊が起こる ため,時間依存破壊を議論するためには,損傷の発達と粘弾性マトリクスの関係を調査することは避 けて通れない.Zhang(14)らや,その他の著者ら(15)~(17)は粘弾性体内に存在するき裂を破壊力学的に取り 扱い,き裂の時間依存進展を報告した.これらの研究により,き裂から十分に遠い位置での変位拘束 条件,つまり弾性体ではき裂が進展しない条件においてでも,粘弾性体の中に存在するき裂が成長す

Viscoelastic matrix

Elastic fiber

(10)

ることが示されている.つまり,複合材料に作用する応力のすべてが繊維に支えられていると仮定し ても,微小損傷は時間の経過とともに進展し,部材の強度劣化が現れると考えられる.

複合材料の長期信頼性を議論する上で最も基本となる一方向複合材料の引張クリープに焦点を絞る と,繊維破断にともなう界面はく離やその近辺に存在する応力回復長さ(破断繊維が失った応力をも との応力に回復するのに必要な長さ)の時間依存特性が重要な要素であると言える.すなわち,界面 のせん断方向の粘弾性特性がこれらの界面はく離の進展や応力回復長さの増加を支配すると考えられ る.Ellyin ら(18)やその他の著者ら(19)~(23)は界面の粘弾性挙動に関する研究を報告している.これらは,

有限要素法によるシミュレーションや,マトリクスや界面の構成式を仮定して応力回復長さの増加を 定式化したものなどであるが,これらの研究は,境界条件の設定が非常に限られており,界面は完全 接着の仮定,もしくは完全にはく離の仮定,摩擦応力は無視することや,応力の変化の履歴を無視す ることなど,さまざまな仮定に基づいて解析や定式化を行っているため,それぞれの研究が一長一短 であると言える.さらに,これらの研究は一つの界面の粘弾性特性の調査であり,これらの理論を一 方向複合材料に適応しなければならない.微小損傷の発達を考慮した一方向複合材料のクリープ破断 における研究は,Ohno ら(24)や,McMeeking ら(25),(26)は,一つの繊維破断に対する応力回復長さの時間 変化を定式化し,これを一方向複合材料の強度劣化に適応し,クリープ寿命を予測した.ただし,界 面は完全接着が条件で,マトリクスは完全粘塑性挙動が仮定され,繊維破断の履歴も考慮されていな い.Goda ら(27)~(30)は,一方向複合材料のクリープ寿命について,繊維破断がクリープ途中に発生した ものの応力回復長さの違いを考慮した,いわゆるクリープ破断までの繊維破断の履歴をシミュレート した.Godaらはさらに,破断繊維の失った引張応力が周りの繊維が受け持つ範囲の時間依存性を考慮 しているため,この解析は従来の研究と比べて非常に現実的であり有効性が高いと考えられる.これ らの研究は主に図1.3に示すように,クリープ荷重環境にある試験片のひずみ(図1.2に示す粘弾性モ デルを用いて定式化されたクリープ変形)が破断ひずみに達したときにクリープ破断に至ると考えら れ,その破断ひずみの経時変化を界面の時間依存特性を用いて記述した研究である.これらの研究に より,従来予測されていたクリープ寿命よりも短い寿命でクリープ破断に至ることが定性的に明らか にされている.しかし,これらの研究でも界面はく離,応力回復長さに対する仮定は非常に簡易であ り,長時間経過後のはく離長さや応力回復長さが妥当かどうか検討されておらず,図1.3に示すような 予測されるクリープ破断時間の妥当性は検証されていない.モデルの検証のために長期のクリープ破 断試験を行うことは非常に難しく,さらに環境を変化させることによる加速試験では破壊メカニズム が異なると考えられるからである.界面特性の長期における時間依存特性を定量化的に評価し,これ を考慮した長時間後の微小損傷の状態を予測することは重要な課題であり,早急に検討されるべき問 題の一つである.

(11)

Fig. 1.3 Scheme of actual creep rupture prediction accounting for decrease of fracture strain

界面特性を調査する研究は非常に多くなされている.複合材料の静的な機械的性能にもこの界面特性 は非常に大きな役割を占め,複合材料の問題のほとんどが界面の挙動に集約される.単繊維埋蔵モデ ル複合材料(Single Fiber Composite: SFC)を用いたフラグメンテーション試験により,破断繊維にとも なう界面はく離について調査した研究(31)~(36)が多く行われている.これらでは,界面特性を評価するた めに,臨界界面せん断応力,平均界面せん断応力,臨界界面せん断ひずみ,界面はく離エネルギ,界 面はく離進展に対するエネルギ解放率,応力拡大係数などがパラメータとして扱われている.これら のパラメータによる界面特性の評価基準は十分には一般化されておらず,評価パラメータを変更する と強度の順位が異なるなどの問題が挙げられる.Wagner ら(31)~(34)は界面特性を評価するパラメータと して界面はく離エネルギを考え,はく離発生に必要なエネルギをエネルギバランスから考えた.しか し,この結果では繊維の破断ひずみが大きい場合,想定外の大きなエネルギが算出されてしまい,や はり現実的なモデルではなく,界面特性を評価するための一般化されたモデルは未だ提案されていな い.Park ら(37)は SFC 試験片のポアソン収縮力が界面強度に影響を及ぼすことを示唆しており,また

Audoly(38)は界面摩擦力が界面強度を変化させると提案しており,これらは注目すべき研究であるがや

はり定量的な評価には至っていない.

Beyerleinら(39)~(41)は顕微ラマン分光器を用いて実験的に,SFCにおける繊維破断にともなう応力回復

長さの時間依存特性を一定ひずみ条件にて調査し,その現象を粘弾性シアラグ理論にしたがって定式 化した.またThomsenら(42)~(43)は同様の研究対象を一定応力条件にて調査して定式化している.これら の研究は同様に一方向複合材料のクリープ寿命予測を研究背景としており,微小損傷の発達が全体の 強度低下につながることを示唆している.しかし,これらの研究では上述に示すような界面特性の詳 細な検討は行われておらず,単純な破壊基準を仮定して定式化されている.したがって,実際は長期 に渡る負荷環境では界面特性が変化することを考えると,これらの研究が適応される範囲は短時間に

Conventional predicted creep rupture time Rupture strain

Composite strain

Strain

Time

Actual creep rupture

Time-dependent rupture strain

(12)

限られる.しかも,界面特性が優れている場合,すなわち界面強度が強い場合は,界面せん断応力は 非常に大きな値になり,マトリクスが非線形粘弾性特性を示す(44)~(49)状況になるため,モデルと現象の 格差はさらに広がる.以上のように,応力回復長さの時間依存特性を考慮した一方向複合材料のクリ ープ寿命予測は,非常に複雑なメカニズムを有し,長期信頼性を議論できる一般化された研究は現段 階ではなされていない.つまりこのことは,図1.3における破断ひずみの長期に渡る経時低下を正確に 記述されていないことを意味する.

一方向複合材料にけるクリープ破壊を支配する因子である繊維/マトリクス界面の時間依存型の損傷 進展を定量的に評価し,このマイクロメカニクスを考慮した一方向複合材料のクリープ寿命予測を行 うことが重要である.従来の研究では以下に示すテーマが解決されていないために,現状の理論を用 いた一方向複合材料の長期信頼性の評価が確証あるものにはなっていないと考えられる.

・ 界面はく離の時間依存型進展特性の一般化

・ 一方向複合材料のクリープ特性に関する実験的検証

したがって,本研究では主に上の二点のテーマを解決することを目的とし,一方向複合材料の長期信 頼性の評価を目標とする.

1.3 本研究本研究の本研究本研究のの目的の目的目的 目的

本研究では,複合材料の長期信頼性を議論するための最も基本となる,一方向複合材料の引張クリ ープ寿命を定量的に予測することを目的とする.クリープ破断の条件は,一方向複合材料のひずみが,

破断ひずみに達したときにクリープ破断に至るとする.これを達成するためには,一方向複合材料の 時間依存のひずみ変化と,破断ひずみの時間変化をそれぞれ定量化する必要がある.そこで本研究で は,複合材料を均質材とみなさず,繊維・マトリクス・界面の三つの構成基材のそれぞれの時間依存 特性を別々に調査し,一般化された試験片ひずみと破断ひずみの時間依存性を評価する.研究のアプ ローチ方法は次のようである.まず,繊維・マトリクス・界面それぞれの機械的特性を用いた一方向 複合材料の静的破断ひずみの定量化を行い,次にそれら三つの要素が時間依存性を有する場合の破断 ひずみの変化を定式化する.三つの構成要素の時間依存性をそれぞれ定量的に評価し,一般化する.

これらの定式化された現象の相互作用を考慮して,微小損傷の発達から全体の破壊が起こる理論を構 築し,その妥当性を検討する.

ここで,最も重要な役割を担う微小損傷は,マトリクスと同様に粘弾性特性を有するとされている 界面はく離である.なぜなら,界面はく離の増加は直接新しい繊維破断につながるからである.そし て繊維破断と界面はく離を含む応力回復長さにより一方向複合材料の破断ひずみを決定される.そこ で本研究では,顕微ラマン分光器を用いて,単繊維埋蔵モデル試験片のカーボン繊維のひずみを直接 測定することで,応力回復長さの増加速度,界面はく離の進展速度,さらに界面はく離の進展条件の 定量的な評価方法を検討する.すなわち,界面特性の時間依存性を調査し,長時間経過後の応力回復 長さを定量的に予測する.これらの調査結果を基礎として,一方向複合材料内における微小損傷を予

(13)

測し,Global Load Sharing(GLS)仮定の元で破断ひずみを計算して最終的なクリープ寿命を予測する ことが本研究の最終目的である.

1.4 本研究本研究の本研究本研究のの構成の構成構成 構成

本論文は以下の9章により構成される.

第1章 序論

第2章 界面はく離を考慮した一方向複合材料の破壊基準 第3章 高分子材料の非線形粘弾性変形

第4章 クリープ寿命予測の定式化 第5章 SFCの時間依存型界面損傷の進展 第6章 SFCの時間依存型界面損傷の定式化 第7章 時間依存性を考慮した繊維強度の評価

第8章 時間依存型の界面はく離進展を考慮したクリープ寿命予測 第9章 結論と今後の展望

第 1 章では,本研究の背景とこれまでに行われてきた研究について示すことにより,本研究の重要 性およびその意義を明らかにする.またこれらの背景に基づき,本研究の目的を述べる.

本論文の第 2 章では,一方向複合材料の静的な破断ひずみを定式化する.本論文では,一方向複合 材料の破壊条件は試験片のひずみが破断ひずみに達したときに破断するとするため,まず初めに静的 破断を考える.従来提案されているGlobal Load Sharing (GLS)理論に基づいた代表的な破断モデルであ

る Curtin モデルを基本とする.Curtin モデルでは繊維破断のみを破壊要素として取り扱い,繊維破断

の蓄積により全体の破壊に至ることを示しているが,界面特性が変化した場合,すなわち界面はく離 が発生する場合などには対応しておらず,一般化されたモデルではない.このため,第 2 章では繊維 破断と界面はく離の相互関係を定式化し,修正 Curtin モデルを提案し,界面はく離の増加が全体の強 度を低下させることを示す.

第 3 章では,高分子系複合材料の粘弾性変形を支配する高分子材料の非線形粘弾性特性を明らかに する.長時間経過後や変動応力を受ける場合の粘弾性変形を正確に予測するためには,非線形粘弾性 の構成式が必要である.この章ではビニルエステル樹脂のクリープリカバリー試験を行い,Schapery の構成式を拡張して粘塑性を含む定式化を行う.

第 4 章では,一方向複合材料のクリープ寿命予測の定式化を行う.まず,複合則により一方向複合 材料のひずみの時間変化を定式化し,第3章にて求められる粘弾性定数を用いてその挙動を決定する.

さらに,そのひずみが破断ひずみに達するときにクリープ破断に至ると考え,破断ひずみには第 2 章 で提案される修正 Curtin モデルにより決定する.クリープ寿命予測は,応力回復長さに依存すること を示し,応力回復長さの時間依存変化が得られれば,クリープ寿命を定量的に予測できることを示す.

第5章では,単繊維埋蔵モデル複合材料(Single Fiber Composite: SFC)を用いた,繊維破断にともな

(14)

う,界面はく離を含む応力回復長さの時間依存特性を実験的に調査した結果を示し,界面はく離長さ を決定するためのはく離の進展条件について検討する.カーボン繊維/ビニルエステル樹脂界面の時間 依存特性を調査するために,顕微ラマン分光器(MRS)を用いて,カーボン繊維の長手方向ひずみを 直接測定し,この結果から界面せん断応力分布を求める.さらに,界面はく離進展条件や応力回復長 さの時間変化を定性的に検討する.

第6章では,第5章のSFC試験片による界面はく離の時間依存特性の結果を定量的に評価するため に,粘弾性シアラグ理論による界面はく離進展挙動の定式化を行う.従来検討されていない,界面は く離進展条件の時間依存特性の提案,界面摩擦応力の時間変化の定式化,界面自体の粘弾性定数の同 定などを行い,界面はく離を含む応力回復長さの時間変化の定式化を行う.

第 7 章では,繊維強度の評価方法について述べる.前章までに述べるように応力回復長さは時間依 存性を有するため,フラグメンテーション試験における繊維強度の評価は試験速度に依存する.これ を一般化する理論を提案し,試験方法に依存しない繊維強度を求める.

第8章では,第6章にて定式化された応力回復長さと第7章にて求められた繊維強度を第4章にて 述べた一方向複合材料のクリープ寿命予測理論に取り込むことで,クリープ寿命を予測する.このと き,一方向複合材料のクリープ破断試験は非常に困難を極めるため,静的試験を高応力で中断して,

内部損傷を進展させて,残留強度を調査する実験を行い,提案する寿命予測の妥当性を検討する.試 験を中断させる時間から内部損傷の進展を理論的に評価し,残留強度を定量的に評価した解析解と,

試験結果を比較・検討し,提案する寿命予測の妥当性を示す.

最後に,第 9 章において本研究を総括し結論を述べる.さらに,今後検討すべき課題について言及 する.

(15)

参考文献参考文献参考文献 参考文献

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(18)

第 二 章

界面はく離を考慮した一方向

複合材料の破壊基準

(19)

2.1 はじめにはじめにはじめに はじめに

本研究の目的である一方向複合材料のクリープ破断寿命を予測するためには,まず第一に一方向複 合材料の静的破壊基準を決定する必要がある.本章では,従来提案されているCurtinモデル(1)を基本と して考え,その拡張モデルの定式化を行う.

一方向複合材料は図2.1に示すように繊維破断,マトリクス破壊,また繊維とマトリクスの接着界面 の損傷の三種類の微小損傷の蓄積により全体の破壊が生じる.よって複合材料の破壊をシミュレート するためには,各構成基材とその界面についての強度・剛性・じん性が既にわかっている必要がある.

中でも,近年最も多く用いられている繊維強化プラスチック(FRP)は破断ひずみの小さい強化繊維と 主に破断ひずみが大きい高分子樹脂のマトリクスで構成され,したがって一方向FRPの破壊には,繊 維破断が先行して,残りの二種類の微小損傷である界面はく離とマトリクスの破壊は,繊維破断をき っかけとして発生する.特に,界面接着が強固な場合は界面はく離は生じず,繊維破断を起点として マトリクス破壊が生じ,全体の破壊に至る.また,界面接着が比較的弱い場合には,繊維破断にとも ない界面はく離が発生する.つまり,強度・じん性などのバランスのとれた複合材料を得るためには,

最適な界面強度の存在が示唆され,界面強度が強すぎても弱すぎてもその複合材料の力学的特性を十 分に発揮することができない.現状のFRPでは,界面強度の最適化はガラス繊維を強化材としたFRP やカーボン繊維を強化材としたFRPにて,経験的に引張・圧縮・せん断強度のバランスから決定され ていて,損傷の形成機構に着目した最適化の考え方は十分には検討されていない.

Fig. 2.1 Three kind of micro damages in composite

一般に一方向複合材料の引張破壊基準を考えるとき二つの考え方が提案されている.一つは Global

Load Shearing (GLS)と呼ばる考え方であり,もう一方はLocal Load Shearing (LLS)と呼ばれる考え方で

ある.GLSとは,図2.2(a)に示すように一本の繊維が破断した場合,その繊維が失った応力分担をその

他の繊維に均等に再分配されると仮定する力学モデルである.代表的なモデルとして,その繊維破断 が及ぼす長手方向の長さ内で繊維の破断確率を考えて,その一方向複合材料の最大耐荷応力と最大耐

Matrix crack

Interfacial debonding

Fiber break

(20)

ひずみを決定するCurtinモデル(1)が挙げられる.一方,LLSとは図2.2(b)のように一本の繊維が破断す ると,それにより失った応力分担は近接の繊維にのみ再分配されるという力学モデルであり,Okabe ら(2)によりモンテカルロ法を用いて繊維強度のばらつきを代入することで一方向複合材料の破壊がシ ミュレートされている.一本の繊維破断はその近接には多大な影響を及ぼし,次々と近くの繊維から 破断してクラスタを形成することがシミュレーションされていて,実際の複合材料の破壊形態に即し たシミュレーション結果となっている.しかし,LLS を基礎とした研究での結論は,形成されたクラ スタサイズの中でGLS理論を用いれば全体の破壊強度を予測できるとされており,破壊形態は再現で きるもののやはり基本となるのはGLSの概念であると考えられる.

Fig. 2.2 Fiber stress distribution around broken fiber of GLS and LLS

Curtin(1)は一方向複合材料の静的破断ひずみを求めるにあたって,複合材料中で破断している繊維の

荷重分担と,繊維の破断確率を考慮して,複合材料の最大耐荷能力及び,最大耐ひずみを理論的に算 出した.このときの最大耐ひずみの計算には繊維強度,界面せん断応力の二つのパラメータが用いら れており,界面強度については言及されていない.つまり,一方向複合材料の静的破壊には界面強度 は大きな影響を及ぼさないと考えられている.しかし,実際に界面強度を変化させて,同じ構成基材 による一方向複合材料の引張試験をすると,当然異なる破断応力,破断ひずみが得られる.特に本研 究の目的である,クリープ寿命を予測する上では,わずかな破断ひずみの差違が大きく寿命を誤って 見積もることになるため,破断ひずみを考えるためには界面強度も考慮されなければならない.

本章では界面はく離を考慮した一方向複合材料の破壊基準の定式化を行う.従来多く用いられてい

るCurtinモデルを基本として,界面はく離の影響を含むモデルを考え,これを修正Curtinモデルとす

る.さらに,界面はく離と繊維強度,界面せん断応力,応力回復長さにはそれぞれ相関関係を有する ため,これらを定式化した.本研究では,ガラス繊維/ビニルエステル樹脂を用いた Single Fiber

Composite(SFC)モデル試験片を作成し,過去に多くの研究がなされている(3)~(10)フラグメンテーショ

Fiber b reak

1st adjacent fiber

2ndadjacent fibe r

σf

σf

σf

σf

σf

σf

(a) GLS (b) LLS

Fiber b reak

1st adjacent fiber

2ndadjacent fibe r

σf

σf

σf

σf

σf

σf Fiber b reak

1st adjacent fiber

2ndadjacent fibe r

σf

σf

σf

σf

σf

σf

(a) GLS (b) LLS

(21)

ン試験を行うことで,定式化された各パラメータ(繊維強度のワイブル分布,界面せん断応力,応力 回復長さ)の値を調査した.また本研究では,フラグメンテーション試験における繊維破断面の距離 を測定することで,これら各パラメータの値の妥当性を裏付けた.本章の最後にはSFCモデル試験片 を用いたフラグメンテーション試験から得られた各パラメータを用いて,ガラス繊維強化ビニルエス テル複合材料の一方向材の破断ひずみを計算し,界面はく離長さと破断ひずみの関係を定量化した.

2.2 一方向複合材料一方向複合材料一方向複合材料一方向複合材料ののの静的引張破断の静的引張破断静的引張破断モデル静的引張破断モデルモデル モデル

2.2.1 Curtinモデルモデルモデルモデル

ここでは,一方向複合材料の静的引張負荷下における破壊基準を考える.従来の研究で多く用いら

れているCurtinモデル(1)に基づき,その破壊基準に界面はく離の影響を取り入れることにより,繊維強

度と界面強度の二つのパラメータから一方向複合材料の静的引張負荷下における,最大応力,最大ひ ずみについて定式化を行う.

一方向材が静的負荷を受ける場合,実際は個々の繊維が各所で破断する.その破断箇所における繊 維の応力の分担は未破断繊維とは異なり,図2.3のように繊維破断点から±λ(応力回復長さ)の範囲 にて,繊維破断部近傍の界面に一定のせん断応力 τ 0 が作用するものと仮定する.このとき,この任 意断面についての繊維の平均応力σfは,破断確率qを用いることで次式により表せる.

( )

f

f 1 f

2 q E qE

ε

σ

= −

ε

+ (2.1)

Fig. 2.3 Schematic of fiber stress distribution around the fiber break in each cross-section

ここで,qは考える断面内(応力回復長さの厚さを持つ一方向複合材料の任意の断面の領域)で繊維が 破断している確率を示す.一般的に繊維の破断確率 Pは繊維強度のばらつきを考えたワイブル統計に

2L

f

2L

f

2 λ

(22)

基づき次のように表されることが知られている.









− 

=

m

L P L

0 0

exp

1 σ

σ (2.2)

ここで L0,σ 0,m はワイブルパラメータである.ここで,応力回復長さ 2λ 内での繊維の破断確率を 求めると

f

0 0

1 exp 2

E m

q L

λ ε σ

   

 

= − −   

(2.3)

なり,両辺の対数をとると次のようになる.

( )

f

0 0

ln 1 2

E m

q L

ε λ

σ

 

− = −  

 

(2.4)

ここで,qが小さいとき,ln

(

1−q

)

=−qとなるので

f

0 0

2 E m

q L

ε λ

σ

  

=   

  

(2.5)

また,応力回復長さにおいて,界面せん断応力が一定であると仮定すると,力の釣り合いより

f

4 0

E D

ε

λ

=

τ

(2.6)

D:繊維直径

λ:応力回復長さ

τ0:界面せん断応力

が成り立つため,破断確率は次式のようになる.

1 f

c

E m

q S

ε +

 

=  

 

(2.7)

(23)

( )

1/ 1

0 0 0

c

2 m L m

S D

σ τ +

 

=  

 

(2.8)

Scは式(2.8)で定義される特性応力である.これを式(2.1)に代入すると

1 f

f f

c

1 1 2

E m

E S

σ ε ε

   +

 

=  −   

 

 

 

(2.9)

となる

σ

f の最大値,つまり繊維の耐荷応力 Smaxは上式の ε に関する導関数を考えることにより求め ることができる.

( )

1/ 1

max c

1 2

2 2

m m

S S

m m

+   +

= +  +  (2.10)

このとき,

( )

1/ 1 c

f

2 2 S m

E m ε

  +

=  +  (2.11)

である.式(2.11)が示すひずみが一方向複合材料の破断ひずみに相当し,静的引張負荷におけるひずみ がこの値になると試験片は破断すると考えられている.

2.2.2 界面界面界面界面はくはくはくはく離離離離をををを考慮考慮考慮考慮したしたしたした修正修正修正修正Curtinモデルモデルモデルモデル

しかし,このモデルは繊維の力学特性のみをパラメータとして扱っており,繊維破断時に生じる界 面はく離については考慮されていない.つまり,繊維の力学特性のみが材料の破断ひずみを決定する 因子となり,界面強度の強弱は全体の破断ひずみに影響しないモデルである.従って,モデルをさら に一般的なものへ発展させるために,界面はく離を考慮に入れた修正 Curtin モデルについて考える.

ここで,図2.4のように界面はく離部分には界面せん断応力は作用せず,その結果繊維の引張応力もは く離の部分には発生しないと仮定する.

(24)

Fig. 2.4 Stress recovery length with interfacial debonding

はく離が発生すると図2.4のように,応力回復長さ λ が変化して λ’ (見かけの応力回復長さ)に変 化する.この見かけの応力回復長さの変化が生じることにより,Curtinモデルに対して次の二点を考慮 する必要がある.

Ⅰ.繊維の破断確率

ここでの繊維の破断確率は任意の厚さを持つ断面についての破断確率である.つまり,本モデルで

は2λ'(応力回復長さ)の断面での繊維の破断確率を用いているため,はく離により破断確率が上昇す

る.つまり,応力回復長さが変数となって次のように記述される.

f

0 0

2 E m

q L

ε λ

σ

 ′ 

=   

  

(2.12)

λ '= λ +L

d

(2.13)

Ld:はく離長さ

Ⅱ.繊維の平均応力

繊維の平均応力は,式(2.1)のように求められていたが, 繊維破断を含む場合の平均応力は初期応力 回復長さとはく離発生後における見かけの応力回復長さの比をかける必要がある.つまり式(2.1)は次 のように記述できる.

 

2

λ

' 2

λ

Fiber

Interfacial debonding

(25)

( )

f

f 1 f

2 q E qEε λ

σ ε

= − + λ

(2.14)

これら2点を置き換えて代入することで,はく離を考慮に入れた修正Curtin モデルによる一方向複合 材料の破断ひずみε’rupの定式化を考えることができる.式(2.12),(2.14)より繊維の平均応力は次のよう になる.

f

f f

0 0

1 1 2 2

E m

E L

ε

λ λ

σ ε

λ σ

  ′  

   

=  − − ′   

(2.15)

従来の Curtin モデルと同様に平均応力の最大値をとるときのひずみが破断ひずみに相当するため,こ

れを計算すると

( )

1 0

rup

f 0

1 2 1

2

m

E m L

σ λ λ

ε λ

 ′  

′ =  +  − ′

(2.16)

となる.つまり,式(2.13)に定義される界面はく離を含む応力回復長さを定量化することにより,界面 はく離を考慮した一方向複合材料の破断予測が可能となる.以下では,上述の修正 Curtin モデルに必 要な各パラメータ,材料定数を定量化するために単繊維埋蔵モデル試験片を用いたフラグメンテーシ ョン試験を行うことを考え,各パラメータの定式化について述べる.

2.3 フラグメンテーションフラグメンテーション試験フラグメンテーションフラグメンテーション試験試験 試験

2.3.1 フラグメンテーションフラグメンテーションフラグメンテーションフラグメンテーション試験試験試験の試験のの基本理論の基本理論基本理論 基本理論

強化繊維とマトリクスの界面特性を評価する手法として,単繊維埋蔵モデル試験片を用いたフラグ メンテーション試験が挙げられる.この試験は,界面せん断強度や埋蔵繊維の強度分布などを同時に 得ることができる点と,界面評価の試験の中では実際の界面の状況に近い状態である点などの利点が ある.

フラグメンテーション試験の試験体は樹脂に繊維を一本埋め込むことで作成される.この試験片の繊 維の長手方向に引張負荷を与えると,界面の接着により,マトリクスと繊維には同じ引張ひずみが負 荷されるが,破断ひずみが相対的に小さい繊維がマトリクスより先に破断する.つまり,試験片内部 の繊維のみが破断した状態となる.徐々に引張負荷を増加させると繊維破断が次々と生じ,やがて界 面せん断応力による応力伝達が臨界状態になり,繊維破断がこれ以上起こらなくなる.この臨界状態 やそれまでの過程の中で,繊維強度や界面強度について様々な研究(3)~(10)が行われてきた.以下に,従 来研究されてきたフラグメンテーション試験の概念を簡単に整理する.

(26)

樹脂に埋め込まれた単繊維の界面には,弾性解析により図2.5のような界面せん断応力が作用する.

図の繊維の端部にて,界面せん断応力が最大となる.

Fig. 2.5 Illustration of interfacial shear stress distribution around broken fiber

しかし,弾性解析では適当な引張ひずみを与えると,界面せん断応力は樹脂の降伏応力を大きく越え る値となり,実際にはマトリクスのせん断降伏が生じるため,弾完全塑性体を仮定すると図2.6のよう な界面せん断応力分布になることが考えられる.

Fig. 2.6 Assumed interfacial shear stress distribution in practice

Interfacial shear stressτ

Fiber ends

Distance fro m fiber end x

Interfacial shear stressτ

Distance fro m fiber end x

(27)

この応力分布をKellyらは図2.7のように直線で近似することで,界面せん断応力は一定であると仮定 して,つまり平均界面せん断応力を求めた.

Fig. 2.7 Kelly’s interfacial shear stress distribution assumption

以下に,この界面せん断応力の値を算出する方法を示す.図2.7の状態から横方向への引張負荷を大き くすることを考える.引張負荷を大きくすると,試験片のひずみが増すにしたがって,繊維のひずみ も増加する.界面においてマトリクスはせん断降伏しているため,これ以上のせん断応力に耐えるこ とができない.したがって界面せん断応力の大きさは変化せず,せん断応力が作用する長さ(応力回 復長さ)が増すことで,図2.7における繊維の中心付近の引張応力が増す.このとき,繊維の引張応力 が繊維強度を超えると繊維は破断する.そして,繊維全部が応力回復長さになると,試験片のひずみ を増加させても繊維のひずみが増えることはない.この状態を臨界フラグメント状態と呼び,そのと きの繊維の長さを臨界フラグメント長さ(Lc)と呼ぶ.この臨界状態のとき繊維に端から Lc/2 におけ るせん断応力と繊維内の引張応力には,以下のような式が成り立つ.

2

c f

f f

2 4

L d

d

π

τ π

⋅ ⋅ ⋅ =

σ

(2.17)

すなわち, f f

2

c

d L

τ = σ

(2.18)

τ:界面せん断応力 df:繊維の直径 σf:繊維の引張強さ

フラグメンテーション試験において,臨界長さよりも長い繊維は破断する.そのとき最も引張応力 が強い繊維の中心で破断すると考えられる.結果的に実際の繊維の長さは,Lc/2からLcの間でランダ

Interfacial shear stressτ

Distance fro m fiber end x

(28)

ムに存在する.すなわちLcは,繊維の平均長さを用いて次のように表すことができる.

c ave

4

L = 3L (2.19) つまり, c f f

ave

3 8

d L

τ = σ

(2.20)

が成り立ち,すなわち繊維の長さもしくは破断数を測定することで界面の最大せん断応力を算出する ことができる.

2.3.2 界面界面界面界面はくはくはくはく離離離離とととと試験片試験片試験片試験片ひずみのひずみのひずみの関係ひずみの関係関係 関係

Wagnerら(3)~(7)はフラグメンテーション試験を行い,界面のはく離長さとそのときの繊維応力には相

関関係があることを示した.これは繊維破断に伴い解放されるエネルギが繊維応力(試験片応力)に 依存するため,界面はく離エネルギは均等であると仮定すれば,この現象は理にかなっている.本節 ではフラグメンテーション試験を通して,界面のはく離長さと繊維応力の関係を明確にし,またはく 離を考慮に入れた繊維強度,界面せん断応力についてより厳密に議論する.繊維破断に伴う界面はく 離について,一般に繊維応力が高い程はく離長さは増大するとされている.これは,繊維応力が大き い方が破断に伴い解放されるエネルギが大きいためである.図2.8はWagnerらが調査した繊維応力と それに伴う界面はく離の長さの関係(4)を示す.図2.8(a)は表面処理を施していないガラスファイバ/エポ キシの,図の(b)は表面処理を施したガラスファイバ/エポキシの繊維応力と界面はく離長さの関係を示 す.

Fig. 2.8 Relationship between interfacial debonding length and fiber strength at fiber breaking(Referred from Ref. 4)

(29)

Fiber

R Matrix

Fiber

R Matrix

図より繊維応力が増すと界面はく離長さも増す.この関係を定式化することで各ひずみにおける界 面はく離長さを決定できる.本研究において,はく離長さ部分には摩擦によるせん断応力は作用せず,

よってそこでは繊維応力は 0 であることを仮定する.ここでフラグメンテーション試験におけるはく 離長さの測定を考える.まず,顕微鏡で観察を行えば明瞭であるが,フラグメンテーション試験の繊 維破断において,図2.9のような繊維の破断面と破断面の間には距離がある.この距離は,応力回復長 さにおいて繊維の弾性ひずみが分布しているための試験片全体のひずみとの格差により生じる距離と,

界面のはく離に起因する影響によるものであると考えられる.以下にその詳細を述べる.

Fig. 2.9 Schematic of space between two fiber ends

図2.9のように繊維の破断面間の距離の半分をRと定義する.Rを各ひずみについて測定し,応力回 復長さにおいて分布した繊維のひずみから算出される距離を差し引けば,残りの繊維破断面距離は界 面はく離に起因するものであり,これより界面はく離を算出することができる.はく離がないと仮定 した繊維の断面の距離をuとし,図2.9の横方向にx軸をとると

( )

0 f

x dx u E

λσ

λε−

= (2.21) の関係が成り立つ.これを計算して式(2.6)を代入すると以下のようになる.

2 2

f

0 f f

4 2

8

E D

u xdx

E D E D

λ τ τλ ε

λε τ

= −

= = (2.22)

次に,界面はく離による繊維破断面の距離について,はく離長さをLdとするとマトリクスのひずみと の格差は,Ldεとなるので,測定する繊維破断面の距離Rは以下のようになる.

2 f

d d

8

E D

R u L ε L

ε ε

= + = τ + (2.23)

(30)

したがって, f

d 8

E D

L R ε

ε τ

= − (2.24)

となる.このRを測定することで,界面はく離長さとひずみの関係を得ることができると考えられる.

2.3.3 繊維強度繊維強度繊維強度繊維強度のののの定式化定式化定式化定式化

フラグメンテーション試験を利用した繊維強度のばらつきをワイブル分布にて求める手法が提案さ れている.フラグメンテーション試験において,試験過程で生じるフラグメント数,つまりその時々 の繊維長さと全体のひずみの関係から繊維強度のばらつきをワイブル統計に基づいて得る手法である.

本研究でもこれを採用し繊維強度の評価を行うが,その際に界面はく離を考慮すると従来研究で用い られている評価方法だと誤差が生じるため,ここでは界面はく離を考慮した繊維強度の評価を定式化 する.

従来の繊維強度の評価方法に用いられる繊維長さとは,評点間距離を破断数で除したものであり,

繊維破断が起こりうる本来の有効な繊維長さではない.界面はく離部分や,応力回復部分には繊維軸 方向引張応力は小さく,繊維が破断する可能性は低い.つまり,従来の評価方法では繊維長さが長く 見積もられていることになる.そこで,正確な繊維強度と繊維長さの関係を考えるため以下のような 考察を行った.図2.10のように繊維の長さを界面はく離長さと応力回復長さと有効繊維長に分割する.

ここで,界面はく離領域においては摩擦応力は無視し,繊維の軸方向応力は0であるとする.

Fig. 2.10 Fiber axial stress distribution

フラグメンテーション試験に次に破断の起こる可能性のある繊維長さは上図の L’とする.つまり,評 点間距離を破断数で除し,界面はく離長さと応力回復長さを差し引いたものを有効な繊維長さとする.

ここで破断数nを用いて,有効繊維長さは

0

' 2 2 d

1

L L L

n λ

= − −

+ (2.25)

になる.ここで式(2.6),(2.24)を代入すると

Ld λ Effective fiber length L’

Ld λ Effective fiber length L’

(31)

0 f 2

' 1 4

L E D R

L n

ε

τ ε

= − −

+ (2.26)

となる.この有効な繊維長さ L’を用いて繊維強度はワイブルパラメータを用いて以下のように記述す ることができる.

1 0

f 0

' L m

Eε σ=  L  (2.27)

これに式(2.26)を代入して

1

0

f 0

0 f 2

1 4

m

E L

L E D R

n

ε σ ε

τ ε

 

 

=  

 − − 

 + 

 

(2.28)

となり,ひずみ,繊維破断面距離 Rと破断数nを用いて界面はく離を考慮した繊維強度のワイブル分 布を定式化することができた.

2.3.4 界面界面界面界面せんせんせんせん断応力断応力断応力断応力のののの定式化定式化定式化定式化

次に界面せん断応力について考える.繊維がこれ以上破断しない長さである臨界フラグメント長さ において,はく離部分にはせん断応力が作用しないとすると次のような式が成り立つ.

f 0

d

3

8 2

1 E D

L L

n τ = ε

 − 

 + 

 

(2.29)

ここで,式(2.24)を式(2.29)に代入すると,界面せん断応力と繊維間距離Rとひずみの関係式ができる.

( )

2

0 f

2 1 16

L E D

R n

ε ε

= − τ

+ (2.30)

以上の定式化より,フラグメンテーション試験における臨界フラグメント状態でのR,n,εを測定する ことで界面せん断応力,繊維強度を算出でき,応力回復長さとはく離長さをひずみの関数として表す ことができる.

参照

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