イ ネ の 脱 粒 性 に 関 す る 遺 伝 育 種 学 的 分 析
平 成 6 年 3 月
福 田 善 通
目 、/んl入7
第1章 緒 論
第2章 内外国品種における脱粒性程度の多様性
第1節 本 章 の 課 題 6
第2節 材 料 お よ び 方 法 6
第3節 結 果 お よ び 考 察 9
第3章 難 脱 粒 性 突 然 変 異 系 統 を 用 い た 脱 粒 性 発 現 機 構 の 研 究
第1節 本 章 の 課 題 12
第2節 突然変異系統の誘発
材料および方法 12
2. 結果および考察 13
第3節 突然変異系統の評価 材料および方法
脱粒性程度の測定 15
2) 組織学的評価 (離層形成程度) 15 2. 結果
脱粒性程度の評価 15
2) 離層形成程度 22
3. 考察 24
第4節 突然変異系統の遺伝様式
材料および方法 26
2. 結果
F1の脱粒性程度および離層形成程度 27
2) F2集団およひ下3系統群における脱粒性程度の分離 30
3. 考察 35
第5節 突然変異遺伝子の対立性検定
材料および方法 36
2. 結果
F1の脱粒性程度 36
2) F2集団における脱粒性程度の分離 37
3. 考察 40
第6節 RFLPマーカーを用いた突然変異遺伝子のマッピング
材料および方法 41
2. 結果
脱粒性程度および稗長の分離 43
2) 脱粒性程度と稗長との関係 45
‑ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 圃 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 圃 ・ ・ ・ 圃 圃 ・ ・ ・ ・
E・
E・ ‑ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 圃
3) 難脱粒性遺伝子のマッピング 46
3. 考察 51
第4章 DNAマーカーを用いた計量形質としての 脱粒性関連遺伝子座の解明
第1節 本 章 の 課 題 54
第2節 材 料 お よ び 方 法 55
第3節 結 果
F2集団における脱粒性程度の分離 56 2. QTL解析による脱粒性関連遺伝子座の推定 58 3. DNAマーカーと脱粒性程度の解析 63
第4節 考 察 65
第5章 総 括 67
謝 辞 76
引用文献 78
付 図 84
穀粒脱粒性試験装置 (TR‑II) (Fig..' 6) 85 2. 南京11号 (Fig.17) 86 3. 難脱粒性突然変異系統および南京11号 の 穂 (Fig.18) 87 4. 難脱粒性突然変異系統SR‑1とジャワ型品種Dinalaga(Fig. 19) 88 5. サザンハイブリダイゼーション法によるRFLP分析 89
(電気泳導像)(Fig. 20)
6. 南京11 号の半嬢性遺伝子の由来 (Fi~J ・ 21) 90
‑・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・圃・・・・・圃・圃・圃・・・圃・・・・圃園田‑園圃圃圃画箇薗薗圃・・
第1章 緒 論
脱 粒 性 は , イ ネ (Oryzasa tiva L. ) の 栽 培 化 の 過 程 で 最 初 に 選 抜 の 対 象 に な っ た 形 質 の 一 つ で あ り , か つ 現 在 で も 育 種 上 お よ び 栽 培 体 系 上 司 重 要 な 農 業 形 質 の 一 つ で あ る と 考 え ら れ る . し た が っ て 司 多 く の 研 究 が 行
わ れ て き た が 脱 粒 性 の 遺 伝 的 発 現 機 構 に は 未 解 決 の 部 分 が 少 な く な い . 内山田ら (1985) , 木 村 ら (1986) , 木 村 ら (1991) は 司 世 界 の イ ネ 品 種 , 系 統 に お け る 脱 粒 性 程 度 の 調 査 を 行 い , 脱 粒 性 易 か ら 難 ま で の 幅 広 い 変 異 が あ る こ と を 明 ら か に し 脱 粒 性 に は 極 め て 多 様 な 遺 伝 的 変 異 が.存在することを示している.
脱 粒 性 の 発 現 に つ い て は 、 小 穂 内 の 護 穎 基 部 に お け る 離 層 の 形 成 に よ り 生 じ る こ と ( 陳 , 井 之 上 1982a,b,c,1992, Hu et al. 1964,
SRINIVAS et al. 1979, ZEE et al. 1979) , ま た そ の 離 層 形 成 程 度 の 違 い お よ び 小 穂 内 の 構 造 上 の 遣 い に よ り 脱 粒 性 程 度 が 変 異 す る こ と ( SRINIVAS et al. 1979, ZEE et al. 1979,陳 、 井 之 上 1982a) 司 さ ら に 離 層 形 成 に は 複 数 の 遺 伝 子 が 関 与 す る こ と が 明 ら か に さ れ て い る ( 陳 ら 1982c, 1992, OGI et al. 1992, 顔 1974)
また脱粒性の遺伝的解析により句 sh‑1(NAGAO and TAKAHASHI 1962),
sh‑2 (大場ら, 1990) , Sh‑3(EIGUCHI and SANO 1990)等司 3つ の 遺 伝 子 座 の 存 在 が 現 在 ま で に 報 告 さ れ て い る . 一 一 方 菊 池 ら (1985) お よ び 小 林 (1973) は , 脱 粒 性 遺 伝 子 と 多 収 性 に 関 連 す る 有 用 遺 伝 子 の 一 つ で あ る 半 綾 性 遺 伝 子 と が 連 鎖 す る こ と を 報 告 し て い る . さ ら に OGI et al. ( 1993) お よ び 大 場 ら (1990) は 、 そ の 半 楼 性 遺 伝 子 を sd‑1と , 脱 粒 性 遺 伝 子 を sh‑2と 設 定 し , こ れ ら の 遺 伝 子 が 第1染 色 体 上 で 連 鎖 し て い る こ と 明 ら か に し て い る . こ の 脱 粒 性 遺 伝 子 と 媛 性 遺 伝 子 と の 連 鎖 関 係 は , 育 種 過 程 に お い て 脱 粒 性 が 重 要 な 選 抜 形 質 の ひ と つ で あ る こ と を 示 し て い る .
1
‑ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 圃 ・ ・ ・ ・ 圃 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 阻 圃 ・ ・ ・ 画 ・ 圃 圃 画 面 画 面 圃 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
OBA and KIKUCHI(1992)は , sh・2は脱粒性の発現に密接な関係がある離 層形成に関与する遺伝子であることを報告しているが司イ也の遺伝子座について
は 離 層 形 成 お よ び 小 穂 内 構 造 へ の 効 果 等 に つ い て の 関 係 は 明 ら か に さ れ て い な い . ま た こ れ ら の 研 究 の 多 く が . 遺 伝 的 背 景 の 異 な る 品 種 聞 の 比 較 や 雑 種 後 代 を 用 い て 行 わ れ た た め ー イ ネ の 脱 粒 性 に 関 連 し た 遺 伝 子 の 数 お よ び そ れ ら の 聞 の 優 劣 性 の 関 係 噌 さ ら に は 遺 伝 子 間 の 相 互 作 用 に つ い て も 司 ま だ 詳 細 は 明 ら か に な っ て い な い .
し た が っ て 脱 粒 性 の 詳 細 な 解 析 を 行 う た め に は 司 遺 伝 的 背 景 の 均 ー な 系 統 司 品 種 を 用 い る こ と , あ る い は 異 な る 遺 伝 的 背 景 を も っ 品 種 間 で も 正 確 に 解 析 が で き る 手 法 を 用 い る こ と が 必 要 に な る と 考 え ら れ る .
菊 池 ら (1985) 大場ら (1990) , 0(31 et al. (1993) ら に よ る 一 連 の 研 究 で は 司 日 本 型 (japonica) 品 種 の 農 林 29号 の 遺 伝 的 背 景 に , 脱 粒 性 遺 伝 子 (sh‑2) を 導 入 し た 同 質 遺 伝 子 系 統 を 用 い て 解 析 を 行 っ た .
し か し 同 質 遺 伝 子 系 統 の 作 出 に は 多 く の 年 月 と 労 力 が 必 要 で あ り 句 ま た 戻 し 交 配 に よ り 完 全 な 同 質 遺 伝 子 系 統 を 作 る こ と は 極 め て 難 し い . したがっ て 本 研 究 で は , 脱 粒 性 極 易 の イ ン ド 型 (indica) 品 種 南 京 11号 の 脱 粒 性 を 改 良 す る 目 的 で 難 脱 粒 性 突 然 変 異 系 統 を 誘 発 し こ れ ら 突 然 変 異 系 統 の 遺 伝 的 背 景 が 比 較 的 均 ー で あ る こ と を 利 用 し て 司 脱 粒 性 の 遺 伝 的 発 現 機 構 の 解 明 を 行 っ た .
また一方で, BARNATZKY and TANKSLEY (1986a, b) 司 ZAMIRand TANKSLEY (1988) らによって, トマトの RFLP (制限酵素断片長多型)
マ ー カ ー を 利 用 し た 連 鎖 地 図 が 作 成 さ れ て 以 来 , 二 倍 性 作 物 を 中 心 に 司 レ タス (LANDRYetal.1987a, b) 噌 ジ ャ ガ イ モ (BONIRBALEetal.1988)
トウモロコシ (HELENTJARIS1987) 司キャノてツ (FIGDOREet al.1988) ツ ケ ナ (SONG et al.1991) 、オオムギ (BLAKEet al.1989) 司 コ ム ギ ( CHAO et al.1988, Llu and TUNEWAKI1991) ,ダイズ (Ap U Y A e t a 1. 1 9 8 8 )
‑ ・ ・ 園 田 園 圃 圃 圃 園 田 園 圃 圃 圃 園 田 園 田直面 画 面 圃
カンキツ (DURHAMetal.1992, JARREL etal.1992) ,
モロコシ
(BINELLI etal.1992) な ど の 多 く の 植 物 で RFLPマ ー カ ー お よ び RFLP連 鎖 地 図 が 作 成 さ れ て い る . イ ネ に お い て も , MCCOUCH et al. (1988) 句 SAITO et al. (1991) らが RFLP連 鎖 地 図 を 作 成 し て 以 来 , RGP: Rice Genome Research Program (1993) によって, RAPD (任意増幅 DNA多 型 ) マ ー カ ー を 含 め 1,000以 上 の DNAマ ー カ ー が , イ ネ の 染 色 体 全 域 に わ た っ て 位 置 づ け ら れ 唱 詳 細 な RFLP連 鎖 地 図 が 作 ら れ て い る . こ れ ら DNA (RFLPお よ び RAPD) マ ー カ ー お よ び 詳 細 な FiFLP連 鎖 地 図 を 用 い る こ と に よ り , 遠 縁 な 品 種 間 雑 種 後 代 の 系 統 , 品 種 の 評 価 に お い て , ゲ ノ ム 全 体 に 渡 っ て 染 色 体 構 成 の 推 定 (graphicalgenotype : YOUNG and TANKSLEY
1989a,b) を 行 う こ と が、可能になった.また graphicalgenotypeを用い る こ と に よ り , 全 ゲ ノ ム を 対象 と し た 選 抜 が 可 能 と な り 司 さ ら に 有 用 形 質 に 連 鎖 す る DNAマ ー カ ー を 利 用 し た 有 用 遺 伝 子 の 効 率 的 選 抜 が 可 能 に な る と 考 え ら れ て い る (YOUNGand TANKSLEY 1989a司 b)
さ ら に イ ネ に お い て は , 白 葉 枯 病 抵 抗 性 に 関 す る 遺 伝 子 :Xa‑人 Xa‑3, Xa‑4 (YOSHIMURA et al. 1992) , )(:a‑10 ( YOSHIMURA et al 1991 ) , 細 胞 質 雄 性 不 稔 に 対 す る 稔 性 回 復 遺 伝 子 :Rf‑1 (福田ら, 1992) , 香 り に 関 す る 遺 伝 子 :scl仰(矢野ら, 1991a) , 匪 乳 の 細 胞 壁 ヘ 蓄 積 す
る ク ル コ マ ン ナ ン に 関 す る 遺 伝 子 :Gmr(t) (矢野ら司 1991b) 等,多く の 遺 伝 子 が RF L P連 鎖 地 図 上 へ の 位 置 づ け が 行 な わ れ て き て い る が , こ の よ う な 主 動 遺 伝 子 ば か り で な く , こ れ ま で 解 析 が 困 難 で あ っ た 計 量 ( 量 的 ) 形 質 の 解 析 等 が 可 能 に な る と 考 え ら れ て い る ( 原 因 1990,福田ら 1993a) . R F L Pマ ー カ ー お よ び 連 鎖 地 図 を 用 い た 計 量 形 質 に 関 与 す る 遺 伝 子 座 (QTL:quantitativetrait loci) の解析については, PATERSON et al. (1988) がトマト果実の重量,可溶性固形成分, pHの 計 量 形 質 座 の マ ッ
ピ ン グ を ゲ ノ ム 全 域 に わ た っ て 行 っ て い る . こ の aTL解析では司 RFLP連
3
‑ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 圃 圃 圃 圃 圃 園 田 画 面 画 面 圃 ・ ・ 圃 圃
鎖 地 図 の 各 マ ー カ ー の 地 点 で , 集 団 全 体 の 計 量 形 質 の 最 大 尤 度 を そ の 地 点 で 計 量 形 質 遺 伝 子 座 が 存 在 し な い と い う 条 件 で の 最 大 尤 度 で 割 っ た も の の 対 数 で あ るlodscore (LANDER and BOTSTEIN 1989) を , そ の 地 点 で 計 量 形 質 遺 伝 子 座 が 存 在 す る 確 か ら し さ の 検 定 基 準 と し て 用 い て い る . こ の lod scoreが あ る 一 定 以 上 の 値 を と る と そ の 地 点 に 計 量 形 質 遺 伝 子 座 が 存 在 す る と 推 定 す る . ま た こ の 方 法 で は ー マ ー カ ー と マ ー カ ー 聞 の 中 間 地 点
でも検定が可能で, interval mapping (LANDER and BOTSTEIN 1986, 1989) と呼ばれている.
すなわち司 DNAマ ー カ ー や 詳 細 なRFLP連 鎖 地 図 句 さ ら に はinterval mappingを 用 い た 解 析 に よ り , ゲ ノ ム 全 域 に つ い て 計 量 形 質 遺 伝 子 座
QTL) の 存 在 の 有 無 を 推 定 す る こ と が.可 能 と な っ た .
しかしRFLPの出現頻度力官、植 物 種 に よ っ て こ と な り ト マ ト で は 栽 培 種 と 野 生 穫 と の 間 (HELENTJARISet al. 1985. BERNATZKY and TANKSLEY
1986b) 唱 ト ウ モ ロ コ シ で は 実 用 品 種 間 (HELENTJARISet al.1985,
BURR et al.1988, JOHNS et al.1983, RIVIN et al. 1988) の 組 合 せ で
RFLPが 検 出 さ れ て い る . イ ネ で は 近 縁 な 品 種 間 で はRFLPの 出 現 頻 度 は 低 く 司 日 本 型 と イ ン ド 型 品 種 聞 の 組 合 せ で 効 率 よ く 検 出 す る こ と が . で き る
(KAWASE et al.1991, FUKUTA et al.19931b) .
本 研 究 で は 日 本 型 品 種 と イ ン ド 型 品 種 の 雑 種 後 代 に お い て , DNAマー カ ー お よ びRFLP連 鎖 地 図 を 用 い た 計 量 形 質 ( 脱 粒 性 ) に 関 与 す る 遺 伝 子 座 (QTL) の 推 定 を も 行 い 司 関 連 遺 伝 子 座 の 数 お よ び そ れ ぞ れ 推 定 遺 伝 子 座 の 作 用 効 果 等 の 解 析 を 試 み た .
ま た 脱 粒 性 程 度 の 評 価 法 に つ い て は 従 来 育 種 で は 手 で 穂 を 強 く 握 り 絞 め る こ と に よ り 脱 粒 性 の 難 易 を 判 定 し て い る . し か し こ の 方 法 は , 測 定 者の主観や個人差カず大きいことー さ ら に は 脱 粒 性 極 易 も し く は 極 難 な ど の 手 に よ る 判 定 の 限 界 性 も あ る の で , 遺 伝 的 解 析 に は 必 ず し も 適 さ な い .
│ 固 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 園 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 園 田 園 園 田 園 ‑ ・E
・ ‑
ICHIKAWA et al. (1990) は 小 穂 の 枝 梗 か ら 離 れ る と き の 抗 張 強 度 (90 を 測 定 し , 脱 粒 性 程 度 を 評 価 す る 穀 粒 脱 粒 性 試 験 装 置 (TR‑II) を開発し ている.
本 論 文 で は , ま ず 抗 張 強 度 (90 を 測 定 す る こ と に よ り 脱 粒 性 程 度 の 評 価 を 再 現 性 あ る 正 確 な も の と し た 上 で , 内 外 国 品 種 に お け る 脱 粒 性 程 度 の 遺 伝 的 多 様 性 を 再 確 認 す る と と も に 唱 地 域 ご と に お け る 多 様 性 の 偏 り を 明 ら か に し た . さ ら に 遺 伝 的 に こ の 多 様 性 を 解 明 す る た め 司 遺 伝 的 背 景 が 均 ー で あ る と 考 え ら れ る 突 然 変 異 系 統 を 用 い た 脱 粒 性 遺 伝 子 の 発 現 機 構 の 分析を行うとともに DNAマ ー カ ー を 用 い た 遠 縁 交 配 の 雑 種 集 団 に お け
る 計 量 形 質 遺 伝 子 座 (QTL) 解 析 を 行 い , 脱 粒 性 に 関 す る 考 察 を 行 っ た .
5
圃E ・E・ ・E ・ ‑ . ' ・ ・ ・ ・ 圃 画 面 圃 圃 薗 圃 園 田 園 薗 圃 圃
第2章 内 外 国 品 種 に お け る 脱 粒 性 程 度 の 多 様 性
第 1節 本 章 の 課 題
内 山 田 ら (1985) , 木 村 ら (1986) ー 木 村 ら (1991) は , 成 熟 期 に 達 し た 穂 を 手 で 強 く 握 る こ と に よ り 脱 粒 性 の 評 価 を 行 い イ ネ の 脱 粒 性 に つ い て は 幅 広 い 変 異 が あ る こ と を 明 ら か に し て い る。 し か し 手 に よ る 脱 粒 性 程 度 の 評 価 で は 測 定 者 の 主 観 に よ る こ と が 多 い の で , 測 定 者 が 異 な
れ ば 必 ず し も 問 じ 判 定 カ ず 得 ら れ る と は 限 ら な い . ま た 脱 粒 性 極 易 お よ び 樋 難 な ど で は ー 測 定 限 界 が あ り 脱 粒 性 程 度 の 変 異 幅 を 正 確 に 評 価 で き な い
(福田,未発表) .
一方, ICHIKAWA et al.(1990)は 唱 脱 粒 性 程 度 を 客 観 的 に 測 定 す る た め 穀 粒 脱 粒 性 試 験 装 置(TR‑II)を 開 発 し た .
本 研 究 で は , こ の 穀 粒 脱 粒 性 試 験 装 置 を 用 い て 内 外 国 イ ネ 品 種 の 坑 張 強 度 (gO を 測 定 し , よ り 詳 細 な 脱 粒 性 の 多 様 性 を 明 ら か に す る と と も に , 世 界 各 地 域 ご と の 変 異 の 差 異 を 明 ら か に し た .
第 2節 材 料 お よ び 方 法
日 本 品 種 を 中 心 と し て 司 内 外 国 計410品 種 , 系 統 の 脱 粒 性 程 度 を 調 査 した
( T a b l e1 ) .
用 い た 日 本 の 品 種 は , 在 来 お よ び 育 成 品 種 を 含 め 水 稲173品 種 司 陸 稲 52品 種 で あ る . ま た 外 国 に つ い て は , 韓 国 の26句 中 国 お よ び 台 湾 の 計 62,
インドを中,[)としてスリランカ /てキスタン,ネノてールの言十27, イ ン ド ネ シ ア 半 島 お よ び フ ィ リ ピ ン の22, ヨ ー ロ ッ パ の 計 19, ア メ リ カ 合 衆 国 お よ び ブ ラ ジ ル の 計12司 ス マ ト ラ の 6, そ の 他 原 産 地 不 明 の 17, 合 計 237
‑・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・E・・・・・‑・・・・圃圃・・・・・・・
品 種 を 用 い た .
ま た 脱 粒 性 程 度 の 評 価 に つ い て は , 出 穂 後 35日から 40日 経 過 し た 主 稗 穂 の 先 端5小穂唱 3個 体 に つ い て 小 穂 の 小 枝 梗 か ら 離 れ る と き の 抗 張 強 度 (gf)を 穀 粒 脱 粒 性 試 験 装 置(TR‑II) (ICHIKAWA et al.) を用いて測定しー そ の 平 均 を 各 品 種 , 系 統 の 値 と し た .
7
園 田 園 ・ ・ 圃 圃 園 田E
・
E ・ 圃 圃 園 田 園 画 面 画 面 圃Table 1. The number of varieties investigated shaUering habit
Place of origin No. of '~arieties
Japan
(lowland) (upland) China
Taiwan Korea Philippines Tailand Laos Myanmer Indo‑China India Pakistan Nepal Sri Lanka U.S.A. Brazil France Italy Russia Sumatora Others
3 2 1 1 6 2 1 5 2 2 1 3 2 1 0 2 2 5 2 6 1 7 5 5 1 2 1 2 1 1 1
‑ 且
Total 410
‑ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 圃 圃 ・ ・ ・ ・ 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 園 田 園 圃 画 面 画 面 画 面 圃
第 3節 結 果 お よ び 考 察
イ ネ の 脱 粒 性 程 度 は 脱 粒 性 極 易 か ら 極 難 ま で 幅 広 い 変 異 が あ る こ と が 明 ら か に な っ た . ま た 世 界 の 地 域 に よ っ て 宅 脱 粒 性 程 度 の 偏 り が あ る こ と カず明らかになった (Fi9 1) .
日 本 の 品 種 で は 司 脱 粒 性 極 易 か ら 極 難 ま で の 変 異 が あ り , 特 に 難 か ら 極 難 の 品 種 が、多 い こ と が 明 ら か に な っ た . た だ 陸 稲 (upland) 品種では司 抗 張 強 度100 (gf)程 度 の 脱 粒 性 易 の 値 を 示 す 品 種 が 最 も 多 か っ た . こ れ に 対 し て ー 水 稲 (Iowland) 品 種 で は 極 難 の 品 種 が 多 か っ た . ま た 数 品 種 で
あ る が 極 難 の 品 種 の な か に , 抗 張 強 度300(gf)に 近 い 極 々 難 の 品 種 も 認 め られた.
韓 国 産 品 種 に お い て も 脱 粒 性 極 易 か ら 極 難 の 品 種 が 認 め ら れ た . 特 に 極 易 の 品 種 が.多 く , 難 の 品 種 は 少 な か っ た . ま た 脱 粒 性 程 度 極 易 の 品 種 に は , 抗 張 強 度25(g f)以 下 の 極 々 易 の 品 種 も あ っ た . た だ 最 近 の 育 成 系 統 の 中 に は 極 々 難 の 品 種 も み ら れ た .
中 国 お よ び 台 湾 イ ン ド シ ナ 半 島 お よ び フ ィ リ ピ ン ア メ リ カ お よ び ブ ラ ジ ル 品 種 に つ い て も , 脱 粒 性 程 度 カ ず 韓 国 品 種 と 同 様 な 頻 度 分 布 を 示 し , 脱 粒 性 纏 易 の 品 種 が 多 か っ た .
イ ン ド お よ び そ の 周 辺 諸 国 の 品 種 に つ い て は , 抗 張 強 度25(g f)以 下 の 脱 粒 性 極 々 易 の 品 種 が 最 も 多 く , 125(gf)以 上 の 脱 粒 性 難 を 示 す 品 種 は 全
く な か っ た .
最 後 に ヨ ー ロ ッ パ に つ い て は 噌 抗 張 強 度150(gf)程 度 の 品 種 が 最 も 多 く , 極 易 の 品 種 や 極 難 の 品 種 は 少 な か っ た 。
以 上 の よ う に , 脱 粒 性 程 度 の 多 様 性 の 大 き さ お よ び 地 域 に よ る 脱 粒 性 程 度 の 偏 り は , 栽 培 お よ び 収 穫 な ど 作 業 体 系 や 気 候 条 件 の 違 い に よ り 生 じ
た も の と 考 え ら れ る . 機 械 化 が 進 ん で な い 発 展 途 上 国 司 反 対 に 大 規 模 な 機
9
‑・・・・・・・・・・・・圃圃圃園田園田園圃圃園田園田直面画面画圃
械 化 栽 培 が 行 な わ れ て い る ア メ リ カ 国 合 衆 国 等 で は , 脱 粒 性 易 お よ び 極 易 の品種が利用されている.一方,小規模集約型の機械化が進んだ日本では,
脱粒性難や極難の品種カず多くみられる.
また特徴的なこととして,インドおよび周辺諸国品種の結果を除いて,
各 地 域 と も 抗 張 強 度 (gf) 2 5以下の脱粒性極々易あるし、は 250以 上 の 極 々 難 の 品 種 は ほ と ん ど 認 め ら れ な か っ た . こ の こ と は 脱 粒 に よ る 収 穫 量 の 減 少 あ る い は 脱 粒 作 業 に お い て 多 く の 労 力 を 必 要 と す る た め 作 業 体 系 上 利 用 が 極 め て 難 し く な る た め , こ れ ら の 脱 粒 性 程 度 を も っ 系 統 は 選 抜 の 過 程 で 淘 汰 さ れ て き た も の と 考 え ら れ る .
イ ネ の 脱 粒 性 に つ い て は , こ れ ら 人 為 操 作 の 対 照 に な っ た と 思 わ れ る 程 度 の 脱 粒 性 を 持 つ 品 種 も 含 め て 極 め て 幅 広 い 変 異 が あ る が ー こ れ ら 多 様 性 の 遺 伝 的 機 備 に つ い て は 雫 各 地 域 ご と の 栽 培 条 件 に 適 し た 遺 伝 的 背 景 を も っ 品 種 が 利 用 さ れ て い る も の 考 え ら れ る . つ ま り イ ネ の 脱 粒 性 に 関 与 す る 遺 伝 的 要 因 は 多 様 で あ り , そ の 発 現 機 構 も 単 純 で は な い も の と 考 え ら れ る.
一一 一 一 一 一 一 一 ー ー ー ー 一 一 ー ー ー ー ー ー ー ー ー 園 田 園 圃 圃 圃 圃 園 田 園 田 園 田 園 田 園 田 園 園 田 園 面 白 置 置 園 田 園
E圃 園 田 園 田 園 ー ‑ ‑ ‑ 一 ー ー 一 一 一 一 一 ー 一 一 一 一 一 一 一 一 冒圃
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困圃・・圃.100 200 Breaking tensile strength (gf)
Fig. 1 . Variation of shattering degrees in the world rice A: Japan(upland)
,
n=52,
B: Japan(lowland),
n=173,
C: Korea,
n=26,
D: China and Taiwan
,
n=62,
E: India,
Sri Lanka,
Pakistan and Nepal,
n=27F: Tailand
加 ,
Iyanmer,
Laos and Philippines,
n=22,
G: France,
Italy and Russia, n=19 H: U.S.A. and Brazil,
n=12,
1: Sumatra and unknown,
n=17, J: Total,
n=410J
ー 300 20
t =
11
‑ E
・
E・ ‑ ・
E ・ ‑ 園 田 園 画 圃 圃第 3章 突 然 変 異 系 統 を 用 い た 脱 粒 性 発 現 機 構 の 研 究
第 1節 本 章 の 課 題
脱 粒 性 の 発 現 機 構 を 解 明 す る た め に は , 遺 伝 的 背 景 の 均 ー な 品 種 句 系 統 聞 の 比 較 お よ び 遺 伝 的 解 析 が 必 要 で あ る . こ の た め 半 媛 性 で 多 収 の イ ン
ド型品種南京11号 (Nan‑jing11) か ら 難 脱 粒 性 突 然 変 異 系 統 を 誘 発 し た . 次 い で こ れ ら 突 然 変 異 系 統 を 用 い て , 脱 粒 性 程 度 の 評 価 お よ び 離 層 形 成 に つ い て の 組 織 学 的 検 討 を 行 い , さ ら に 遺 伝 様 式 の 解 明 , 対 立 性 検 定 , 難 脱 粒 性 突 然 変 異 遺 伝 子 の 染 色 体 上 へ の 位 置 づ け を 行 っ たO
第 2節 突 然 変 異 系 統 の 誘 発
1 . 材 料 お よ び 方 法
脱 粒 性 易 の イ ン ド 型 品 種 南 京11号 の 脱 粒 性 を 改 良 す る 目 的 で , 2種 の 突 然 変 異 誘 起 処 理 を 行 っ た . 一 つ は 種 子 へ の60Coy線照射、 20KR (以後,
Co区 と 呼 ぶ . ) で あ り , も う 一 方 は 種 子 へ の50mMエ チ ル メ タ ン ス ル ホ オ ネ ー ト 水 溶 液 7時 間 浸 漬 ( 以 後 EMS区 と 呼 ぶ . ) で あ る .
そ れ ぞ れ の 処 理 当 代 種 子 (M1) , 約17,000粒 を 20m2の潅水床に直播,
密 植 栽 培 し , 分 げ つ さ せ る こ と な く 主 稗 の み で 結 実 さ せ 処 理 区 ご と に 全 刈 し 集 団 採 取 し た M1の 自 殖 種 子 に 由 来 す る M2集 団 に つ い て は , 圃 場 にCo区 で21,000個体, EMS区 で20,000個 体 を 1株 1本 植 え と し 栽 培 し た . 難 脱 粒 性 個 体 の 選 抜 は 司 M2集 団 に お い て 成 熟 期 に 達 し た 穂 を 片 手 で 強 く 握 り し め る こ と に よ り 行 っ た .
2
. 結 果 お よ び 考 察難 脱 粒 性 の 突 然 変 異 の 誘 発 に つ い て は 、 Co区で司 21,000個 体 のM2集 団から4個 体 ( 誘 発 率 ,1.9x10・4) , EMS区 で20,000個 体 よ り 1個 体 ( 誘 発率司 5.0x10・5) を そ れ ぞ れ 選 抜 し た . Co区 で の 誘 発 率 はEMS区 の も の
よ り 高 く , 両 区 合 わ せ た 平 均 誘 発 率 は1.2
x
1 0・4と な っ た(Table2). 誘 発 した難脱粒性突然変異系統名は, Co区 の4系 統 に つ い て はSR‑1 S R‑2司 SR・4句 SR‑5 (後の北陸143号) , EMS区 の も の はSR‑6とした.またこれら5種 の 突 然 変 異 系 統 は , い ず れ も 原 品 種 南 京11号 同 様 半 媛 性 の 草 型 を も っ て お り , 脱 粒 性 の み が 改 良 さ れ た と 考 え ら れ た . た だ S R‑2に つ い て は , 一 次 枝 梗 が 短 く な り , 結 果 と し て 短 穂 に な る 傾 向 を 示
した.
誘 発 率 に つ い は y線 照 射 に よ る も の が、工 チ ル メ タ ン ス ル ホ ォ ネ ー ト 処 理 よ り 高 い 値 を 示 し た . M1で 集 団 採 取 を 行 っ た こ と や 反 復 試 験 も な い
こ と な ど か ら , 両 処 理 区 間 の 差 異 に つ い て は さ ら に 検 討 を 要 す る が ー SR‑2以 外 に つ い て は 原 品 種 の 南 京11号 と 形 態 上 区 別 で き ず 他 の 突 然 変 異 を 併 発 す る こ と な く 効 率 良 く 難 脱 粒 性 系 統 を 作 出 で き た と 考 え ら れ る .
1
3~Table 2. Mutation rate for hard‑shattering mutant induced in an indica variety
, "
Nan‑jing 11"恥futagen No.of seeds No.ofM2 No.of Mutation treated plants mutants rate 60Co (20KR) 17
,
000 21,
000 4 1.9 x 10‑450mME九1S 17
,
000 20,
000 1 5.0 x 10・5』ー Total 34
,
000 41,
000 5 (1.2 X 10‑4)~
EMS:Ethyl methanesulfonate ):A verage mutation rate
一一一一一一一ーーーーーーー‑‑・・・・・・・・‑・‑圃圃圃圃圃圃闘・・・・・・・・・・・・・・・・圃・・・・・・・・・・・・・・圃・・・・・・・・・・・・・・・・・・l
‑‑一一ーーー ー圃E画面盟国画面画面圃圃E・E・‑圃E・E・E・E・‑ー圃・・・・圃・・・E・E・・E・・E・‑圃
第3節 突 然 変 異 系 統 の 評 価
1 .材 料 お よ び 方 法
1 ) 脱 粒 性 程 度 の 測 定
得 ら れ た 突 然 変 異 5系 統 お よ び 原 品 種 南 京 11号 を 圃 場 お よ び 温 室 内 の 異 な る2種 の 栽 培 条 件 で 成 育 せ し め 司 系 統 間 お よ び 登 熟 環 境 が 異 な る こ
と に よ る 脱 粒 性 程 度 の 違 い を 調 査 し た . 特 に 温 室 条 件 下 の も の に つ い て は , 穎 花 の 開 花 以 後 に お け る 脱 粒 性 程 度 の 経 時 的 な 変 化 を 明 ら か に し た .
園 場 栽 培 個 体 に つ い て は , 出 穂 後35日から40日 経 過 し た 主 稗 穂 の 先 端10小 穂 が 小 枝 梗 か ら 離 脱 す る と き の 抗 張 強 度(gf)を 穀 粒 脱 粒 性 試 験 装 置 (TR‑II) (ICHIKAWA etal.1990) を 用 い て 測 定 し た . 抗 張 強 度(gf)の 平 均 値 を 各 個 体 の 脱 粒 性 程 度 と し 句 各 系 統 に つ い て50個 体 の 脱 粒 性 程 度 を 調 査
した.
ま た 温 室 内 栽 培 個 体 に つ い て は 司 開 花 か ら 結 実 に 至 る ま で の 脱 粒 性 程 度 の 経 時 的 変 化 を , 原 品 種 南 京11号とSR‑1 ~I 北陸 143 号 (SR-5) , SR‑2
の 計4系 統 に つ い て 調 査 し た .
各 系 統 間 お よ び 系 統 内 に お け る , 調 査 穎 花 ( 小 穂 、 ) の 開 花 日 お よ び 開 花 後 の 環 境 条 件 を 同 一 に す る た め , 開 花 期 に 達 し た 個 体 を 圃 場 よ り 株 上 げ
し , 翌 日 開 花 し た 穎 花 の み を 残 し て 未 開 花 お よ び 前 日 ま で に 開 花 済 み の 穎 花 を 切 除 し た . 以 後 温 室 内 で 栽 培 管 理 し , 処 理 翌 日 か ら2から 3日 ご と に 計16回 , 開 花 後33日 に 至 る ま で , そ れ ぞ れ の 系 統 に つ い て20小 穂 の 抗 張 強 度
(90
を 測 定 し , そ の 平 均 値 を 求 め 測 定 日 ご と の 各 系 統 の 脱 粒 性 程 度と し た . と く に4日 目 以 後 の 測 定 で は , 子 房 の 発 達 が 確 認 で き る 頴 花 に つ い て 調 査 し , 不 稔 穎 花 は 測 定 か ら 除 外 し た .
15
‑ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 薗 薗 圃 圃
2
) 組 織 学 的 評 価 ( 離 層 形 成 程 度 )ま た 脱 粒 性 程 度 の 経 時 的 変 化 を 調 査 す る た め に 用 意 し た 穎 花 の 一 部 に つ い て , 開 花 後 2から 3日 ご と に 小 枝 便 を つ け た 小 穂 を 採 取 し , 小 穂 の 謹 穎基部に形成される離層の有無およびその程度を調査した.用いた材料は,
突 然 変 異 系 統 の SR‑1,SR‑2, 北 陸 143号 (SH‑5)の3系 統 お よ び 原 品 種 南 京11号である.
小枝梗の付いた小穂をー FAA溶 液 (1000!c)エ タ ノ ー ル :60,水 :30,酢酸:
5,フォルマリン :5) で 固 定 し た 後 , フ ッ 化 水 素 水 に よ る 脱 珪 酸 処 理 を 7日 間 以 上 行 っ た 。 水 洗 の 後 , サ フ ラ 二 ン で 予 備 染 色 し , ア ク リ ト 口 ン 樹 脂 に 包 埋 し た 後 , 小 穂 か ら 小 枝 梗 に 至 る 縦 断 切 片 を8μmの厚さで作成した。
検鏡にあたっては, ト ル イ ジ ン ブ ル ー で 染 色 し た .
2
. 結 果1 ) 脱 粒 性 程 度 の 評 価
置 場 栽 培 個 体 に つ い て は 抗 張 強 度 (gf)を 測 定 し た 結 果 , 脱 粒 性 程 度 に より5系統の突然変異は司 3グ ル ー プ に 分 類 す る こ と が で き た . そ れ は 司 脱 粒 性 や や 難 の SR‑2 難 の SR‑4司 北 陸 143号 (SR‑5)司 SR‑6の3系 統 噌 極 難の SR・1である (Fig.2, Table 3 ).
す な わ ち 原 品 種 南 京 11号 の 抗 張 強 度 (gf)は, 50個 体 平 均 で 90.3+14.4 と な り 脱 粒 性 極 易 の 値 を 示 し た 。 こ れ に 対 し SR‑2は151 .3士16.5でやや 難, SR‑4, 北 陸 143号 (SR‑5),SR‑6の3系 統 は そ れ ぞ れ 220.7士22.9,
211土20.1,217.1+14.5の 難 の 値 を 示 し た . ま た SR‑1に つ い て は , 突 然、変異系統中最も高い値の 279.1土 22.2で あ り , 脱 粒 性 極 難 を 示 し た .
園 田 園 園 園 田 園 圃 園 田 園 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃
SR‑4司 北 陸143号(SR‑5),SR‑6の3系 統 聞 で は 有 意 差 が 認 め ら れ な か っ た が ¥ こ の3系 統 とSR‑2と の 聞 で は 10/0水準で有意、差が.認 め ら れ た . ま た
S R‑1についても,イ也の突然変異4系 統 と の 間 で10/0水 準 で 有 意 差 が‑認めら れた.
温 室 栽 培 個 体 に つ い て は , 脱 粒 性 程 度 の 経 時 的 変 化 に お い て , 原 品 種 南 京 11号 お よ び 難 脱 粒 性 突 然 変 異 3系 統 に 明 瞭 な 品 種 間 差 異 が 認 め ら れ た
( F i g . 3
,T a b l e 3 ) .
南 京11号 は 唱 開 花5日目までには抗張強度i(gf)を240から270まで増 す が , 開 花 後5から10日目までに240程度まで減じた.その後抗張強度は,
1 0目白から 15日 に か け て 急 速 に 減 少 し , 最 終 的 に は 脱 粒 性 極 易 の60前 後 の 値 を 示 す . こ の 値 は , そ れ 以 後 開 花33日 固 ま で 維 持 さ れ た .
突 然 変 異 系 統 に つ い て は ー 開 花 後10日 目 ま で は 抗 張 強 度 が 全 て 高 く な っ た.その後, S R‑1を 除 く 突 然 変 異 変 異 系 統 で は10目白から 15日 目 に か け て , 南 京 11号 と 同 様 に 抗 張 強 度 が 急 速 に 減 じ る 傾 向 を 示 し た . ま ず SR‑2
は ー 開 花 翌 日 の 抗 張 強 度 は 南 京11号 よ り 低 い200であったが, 5日目から
7日 目 に か け て240から 250の 範 囲 で 増 加 し , そ の 後 抗 張 強 度 は 減 じ , 最 終 的 に は150から 170の 範 囲 で 脱 粒 性 や や 難 の ほ ぼ 一 定 の 値 を 示 し な が ら
33日 固 ま で 推 移 し た . ま た 北 陸143号(SR‑5)に つ い て は 司 開 花 翌 日 の 抗 張 強 度 は , 南 京11号とほとんど差がないが 1 5日 目 以 降 250から270
ま で の 脱 粒 性 難 の 一 定 の 値 で 推 移 し た . S R‑1に つ い て は 開 花 翌 日 よ り
270と い う 高 い 抗 張 強 度 を 示 し 、 ま た 開 花 後10日目にも350と い う 値 を 示 した.その後も300以 上 の 唱 脱 粒 性 極 難 の 値 を33日 目 ま で 維 持 し た .
圃 場 条 件 と 温 室 条 件 と の 結 果 を 比 較 す る と , 脱 粒 性 極 易 の 原 品 種 南 京 1 1号 は 温 室 条 件 の も の が ¥ よ り 低 い 抗 張 強 度 を 示 し た . 突 然 変 異 系 統 の
う ち 脱 粒 性 難 の 北 陸143号(SR‑5)と極難のSR‑. 1の2系 統 は , 温 室 条 件 下 で よ り 強 い 抗 張 強 度 の 値 を と る 傾 向 を 示 し た . つ ま り 温 室 条 件 に お い て 司
17
困 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 園 圃 園 田 園 圃 圃 圃 圃 圃
各 系 統 聞 の 脱 粒 性 程 度 の 差 異 が よ り 顕 著 で あ っ た . し か し 各 系 統 聞 に お け る 脱 粒 性 程 度 の 順 序 関 係 は , 栽 培 条 件 に 関 係 な く 同 ー で あ っ た .
‑・圃・圃・・・圃・・圃・・・圃圃圃圃圃園圃圃圃圃
A
35 25
15
.
B
5 0
お
15
圏 ︑
d A O A 2 0 J.
C
20
10
.
D
0 30
20 10
35 ぷ ︽ ご ︒
z
. ︒.
E
0 25
15
.
F
Z J A O
︐3 ヲM
15
100
Breaking tensile strength (gf) 200
。
5Degrees of shattering in the mutanlt lines induced from an indica rice variety
,
"Nanサingll"Fig. 2.
A:Nan‑jingll
,
n=50,
B:SR・2,
n=50 C:Hokuriku No.143(SR‑5),
n=50,
D:SR・6
,
n=50,
E:SR・4,
n=50 F:SR・1,
n=50....: A verage of breaking tensile strength(gf)
19
‑ ・ 園
350
~ 300
Z H
ta回。』話
,
a 250 200・
ー恒ω u白山同
,
150箇』a
g
』z a 10050
。
5 10 15 20 25 30Days after f10wering
Fig. 3. Transition of shattering degrees in the mutant lines after f10wering
糊 刷 糊 ・ Nan‑jingll SR‑l
H
・ . . . ,
SR‑2圃 園 園 田 Hokuriku143(SR‑S)
35
Table 3. Degrees of shattering in the hard‑mutant lines induced from an indica variety
"Nan‑jing 11"
Mutation lines Nan‑jingll SR‑l SR‑2 SR‑4
Hokuriku No.143(SR・5) SR‑6
ルlutagen
60 Co (20KR) 60 Co (20KR) 60CO (20KR) 60 Co (20KR) 50mM EMS 4)
Breal{ing tensile strength (gめ Fielld 1) Green house2)
90.3土14.43) 56.5
+
22.9 279.1土22.2 309.8+
46.2 151.3::t 16.5 160.0+
32.5 220.7こt22.9211.0土20.1 237.5
+
29.8 217.3二土14.5The differnces of breaking tensile strengths among the句threemutant lines
,
SR・4,
Hokuriku No.143(SR・5)and SR・6are not
,
but the diffelrnces among Nan‑jing 11,
SR・1
,
SR・2and these three lines are significant (pく0.01).1): The breaking tensile strength of each ten spikelets in fifty panicles from thirty‑five to forty days after heading in paddy field was measured.
2): The breaking tensile strength of twenty spikelets thiirty days after f10wering in green house was measured.
3): Average and S.D.
4): EMS:Ethyl methanesulfonate
21
司七 園・七回目園・圃里置
2
) 離 層 形 成 程 度突 然 変 異 系 統
SR‑1
,SR-2 ,北陸 143 号 (SF~-5) ,原品種南京 11
号の4
系 統 に お い て 司 離 層 形 成 程 度 お よ び 小 穂 内 部 構 造 に 明 瞭 な 系 統 間 差 が 認 め られた.原品種南京11号 で は , 開 花 後2日 目 に は す で に 護 穎 基 部 に 部 分 的 ではあるが.離層カず観察される
( F i g . 4 8 ) .
開 花 後15
日 自 に は さ ら に 離 層 は 進 み , 開 花30
日 目 に は よ り 明 瞭 に な る( F i g . 4 C
句4 0 ) .
一 方 突 然 変 異 系 統で は , 脱 粒 性 や や 難 の
SR‑2
は 全 期 間 を 通 じ て 明 瞭 な 離 層 形 成 は 認 め ら れ な い が , 開 花1 5
日 自 に 護 穎 基 部 の 組 織 細 胞 の 密 度 が、粗 に な り 司 そ の 組 織 に 部 分 的 に 細 胞 群 の 崩 綾 が 認 め ら れ た( F i g . 4 F ) .
ま た 離 層 形 成 と は 別 にSR‑2
で は , 護 穎 基 部 か ら 副 議 穎 に か け て の 組 織 が 南 京11
号 や 他 の 突 然 変 異 系 統 に 比 べ て 細 長 く , 脱 粒 性 だ け で な く 小 穂 内 部 構 造 自 体 に 関 す る 突 然 変 異 を も 併 発 し て い る こ と を 確 認 し た( F i g . 4 E ) "
北 陸143
号( S R ‑ 5 )
では,細 胞 群 の 崩 壊 が す で に 開 花 後
2
日 目 に 観 察 さ れ る . そ の 程 度 はSR ‑ 2
の15
日 目 に お け る 観 察 結 果 と 同 程 度 で あ っ た . ま た 北 陸
143
号 の 開 花 後15
日目 以 降 で は , さ ら に 細 胞 群 の 崩 壕 の 進 行 を 認 め る こ と が で き た が , 明 瞭 な 離 層 形 成 に は 至 ら な か っ た( F i g . 4 G ) . SR‑1
で は , 開 花 後33
日 目 ま で , 全 観 察 期 間 を 通 し て 細 胞 群 の 崩 壊 お よ び 離 層 形 成 は 全 く 認 め ら れ な い( F i g .
4H) .
‑ E
・
E・ ‑ ‑ ・
E・ ‑ ・
E ・‑圃圃圃園圃圃薗B
Fig.4. Logitudinal sections of the abscission region between pedicel and rachilla of an indica variety "Nan‑jingll" and hard‑shattering mutant lines dlerived from Nan‑jingl1. A: Nan‑jingll
AL: Abscission layer
,
P:Pedicel,
RG: Rudimentary glUlme,
SG: Sterile glume,
SZ:Supporting zone
,
V: Vascular tissue B: Nan‑jingll (two days after flowering)c :
Nan‑jingll (fifteen ‑days after flowering)~: Nan‑jing 11 (thirty days after flowering) E:SR・2
F: SR・2(fifteen days after flowering)
9 :
Hokuriku143 (fi‑fteen days after flowering) H: SR・l(thirtydays after flowering)2
圃 ・ ・ ・ ・ ・
E・
E・ ‑ 圃
E・
E・ ‑ 圃 園 田 園 ・ 圃 薗
3 . 考 察
脱 粒 性 程 度 の 評 価 お よ び 離 層 形 成 程 度 の 遣 い に よ り 句 5つ の 難 脱 粒 性 突 然 変 異 系 統 を 3つ の グ ル ー プ に 分 類 し た . 脱 粒 性 極 難 で 離 層 形 成 あ る い は 細 胞 群 の 崩 嬢 が 全 く 認 め ら れ な い SR‑1 , 脱 粒 性 難 で 細 胞 群 の 部 分 的 崩 壊 が、観 察 さ れ る の み で 明 瞭 な 離 層 形 成 は 認 め ら れ な い 8R‑4, 北 陸 143号 (8 R‑5)司 8R‑6の3系 統 喝 脱 粒 性 や や 難 で 部 分 的 細 胞 群 の 崩 壕 の み が.認め
られる 8R‑2である.
脱 粒 性 と 離 層 形 成 と は 密 接 な 関 係 が あ る と さ れ て い る . つ ま り 小 穂 の 護 穎 基 部 で 離 層 細 胞 群 が 形 成 さ れ 唱 そ の 細 胞 群 の 崩 壊 に よ り 離 層 が 形 成 さ れ 脱 粒 す る と 考 え ら れ て い る ( 陳 , 井 之 上 1982a, b,陳ら 1982,1992司 Hu etal.1964, SRINIVAS etal. 1979, ZEE etal.1979) . ま た 細 胞 群 の 形 成 程 度 や 細 胞 群 の 崩 壊 程 度 の 遣 い に よ り , 脱 粒 性 程 度 が 変 異 す る と 考 え ら れ て い る ( 陳 司 井 之 上 1982a, S RINIVAS et al. 1979, ZEE et al. 1979 )
本研究においても, 3グ ル ー プ の 脱 粒 性 程 度 の 違 い は , そ れ ぞ れ 離 層 細 胞 の 形 成 あ る い は 細 胞 群 の 崩 壊 な ど に 関 与 す る 司 異 な る3種 の 遺 伝 変 異 に よ る も の と 考 え ら れ る . た だ SR‑2は , 細 胞 群 の 崩 壊 が 他 の 系 統 に 比 べ て 少 な い 系 統 で あ る に も か か わ ら ず , 最 も 弱 い 抗 張 強 度 (gf)を 示 し 脱 粒 性 や や 難 で あ っ た . 脱 粒 性 程 度 の 違 い は 司 離 層 の 形 成 と と も に 離 層 と 中 心 維 管 束 と の 間 に あ る 厚 膜 細 胞 の 幅(ZEEet al. 1979), 離 層 間 に あ る 中 心 維 管 束 (supportingzone)の大きさ (SRlt、JIVASet al. "1979 ),さらに厚膜細胞 の 幅 や supportingzoneの 大 き さ に 加 え て 護 穎 と 副 議 穎 の 間 に あ る 小 穂 接 合部分の太さ(陳・井之上, 1982a) な ど 小 穂 内 部 構 造 と も 関 連 す る こ と が 明 ら か に さ れ て い る . 8 R・2で は 護 穎 と 副 議 穎 と の 間 が 細 長 く な る 変 異 を 併 発 し て お り , 離 層 形 成 過 程 の 遺 伝 変 異 に 加 え て 小 穂 内 部 構 造 の 変 異 が
抗 張 強 度 を 減 ず る 結 果 に な っ た と 考 え ら れ る .
ま た 温 室 栽 培 の 原 品 種 南 京11号 お よ び 突 然 変 異3系 統 の 経 時 的 脱 粒 性 程 度 の 測 定 お よ び 離 層 形 成 程 度 の 観 察 結 果 か ら , 離 層 形 成 あ る い は 細 胞 群 の 崩 援 の 進 行 と と も に 抗 張 強 度 が 減 少 す る こ と を 確 認 し た . さ ら に 温 室 条 件 と 圃 場 条 件 と の 聞 で は , 脱 粒 性 程 度 に 違 い を 生 じ , 温 室 条 件 の も の が よ
り 顕 著 に 各 系 統 聞 の 差 を 示 し た . しかし3グ ル ー プ 聞 の 脱 粒 性 程 度 に 関 す る 順 位 は 環 境 条 件 に 関 係 な く 同 ー で あ っ た . つ ま り 登 熟 過 程 の 環 境 条 件 に より脱粒性程度は差異を生じるが唱誘発された突然変異系統の難脱粒性は守 一 定 環 境 条 件 下 で は 安 定 し て 発 現 す る 遺 伝 変 異 で あ る と 考 え ら れ る . ま た 脱 粒 性 に つ い て は , 離 層 形 成 電 小 穂 内 部 情 造 , 環 境 条 件 等 の 違 い に よ り 変 動 し 易 い 形 質 で あ る こ と が 明 ら か に な っ た . ま た こ れ ら の 要 因 が 相 互 に 係 わ る こ と に り , 計 量 ( 量 的 ) 形 質 の よ う に 複 雑 な 発 現 を す る も の と 考 えられる.
25
第 4節 突 然 変 異 系 統 の 遺 伝 様 式
1 . 材 料 お よ び 方 法
原 品 種 南 京11号と5種 の 突 然 変 異 系 統 (SR‑‑I,SR‑2, SR‑4, 北 陸
143号(SR・5),SR‑6) と の 正 逆 交 配10組 合 せ のF1お よ びF
2集 団 を 圃 場 で 栽 培 し た . 栽 培 は 慣 行 法 に 従 い , 縦15cm噌 横30cm間 隔 の 格 子 に 一 株 一 本 植 え と し た . F1に つ い て は 出 穂 後30日から35日経過した10から 30個 体 を, F2集 団 は 出 穂 後40日 以 上 経 過 し た80から90個 体 に つ い て , 各 組 合 わ せ ご と に 脱 粒 性 程 度 お よ び そ の 分 離 を 調 査 し た .
特 にSR‑1,SR‑2, 北 陸143号の3系 統 と 南 京11号 と の 正 逆 交 配6組み 合 わ せ に つ い て は F2個 体 別 に 採 種 し 句 各 個 体 か ら 約100個 体 づ つ を F3系 統 と し て 系 統 栽 培 し 脱 粒 性 の 分 離 を 確 認 し た . 調 査 は 成 熟 期 に 達 し た 穂 を 手 で 強 く 握 り , 各 個 体 に お け る 脱 粒 性 の 難 易 を 判 定 し た . さ ら に
S
R‑1 S R‑2, 北 陸143号 (SR‑5)の3系 統 と 南 京11号 と のF1に つ い て , 出 穂 後30以 上 経 過 し た 穂 に お け る 離 層 形 成 の 有 無 を 調 査 し た .
脱 粒 性 程 度 の 測 定 お よ び 離 層 形 成 程 度 の 観 察 は , 突 然 変 異 の 評 価 ( 第 3章 , 第3節 ) の 方 法 に 従 っ て 行 っ た .
2 .結果
1 ) F 1の 脱 粒 性 程 度 お よ び 離 層 形 成 程 度
南 京11号 と 突 然 変 異5系 統 と の 正 逆 交 配10組 合 せ のF1の脱粒性程度は,
脱 粒 性 易 に 偏 る も の の 全 て 南 京11号 と 突 然 変 異 系 統 と の 中 間 値 を 示 し た (Table 4) .
離 層 形 成 程 度 に つ い て は , 南 京 11号 で は 明 瞭 な 離 層 が 形 成 さ れ る が , 突 然 変 異 系 統 の SR‑1で は 全 く 形 成 さ れ な い
( F i g . 58
, C) . こ れ に 対 し てF 1
は わ ず か な が ら 離 層 形 成 が 認 め ら れ た( F i g . 5 0 )
. ま た 北 陸143号 (S R‑5)で は 不 完 全 で あ っ た が F1に つ い て は よ り 明 瞭 な 形 成 が 認 め ら れ た( F i g . 5 E
,F )
. ま た 北 陸143号 と 同 様 に 不 完 全 な 形 成 を 示 すSR‑2につ いてもF
1はSR‑2よ り 明 瞭 に な っ た( F i g . 5 G
,H). つ ま り 全 て の 組 合 せ のF1に離層形成が 認めら れ た が , そ の 程 度 は 南 京11号 と 突 然 変 異 系 統 と の 中 間 で あ っ た .27
∞
~Table 4. Shattering degrees of Fl plants crossed reciprocally among hard‑shattering mutant lines and Nan‑jingl1.
ゐ
dale Nan‑jingll SR‑2 SR‑4 SR‑6 Hokuriku143Fe (SR・5)
Nan‑jingll (124+ 18)
*
146土23 163:t13 169土25 175 + 16 SR‑2 148 + 11 (157+14) 181+10 197 + 13 184 + 14 SR‑4 141 + 26 183 + 15 (243+ 15) 254+22 255 + 19 SR‑6 148 +6 180 + 10 237 + 19 (260:t19) 251 + 13 Hokuriku143160 + 14 175 +9 249 + 10 264 + 18 (266+18) (SR・5)
SR‑l 195 + 18 251 + 19 235 + 34 230+23 Shattering degrees are shown as a breaking tensile strength (同 measuredwith testing device (TR‑II).
* :
Means and standard deviations . ( ): Values of the self planu写SR‑l 213 +25 230:t 16 228 +22 217+19 237 + 21 (332+28)
ト 三二 I
Fig. 5 ~og~tudin~l sections of the abscission region between pedicel and rachilla of F1plants between an indica variety"Nan‑jing11"and itshard‑shattering mutant lines
A: Nan‑jingll
~: Nan‑jingl1
,
C: SR‑l,
D: Fl(SR・l/Nanサ
ingll)~: HOkuriku143(SR・5)
, .
F: Fl(Hokuriku143/Nan‑jingl1) G: SR‑2,
H: Fl(SR・2/Nan‑jingll)AL:Abscissi?n layer
,
P:Pedicel,
RG:Rudimentary glmnh SG:Sterile glume SZ: Supporting zone29
2) F2集団およひ下3系 統 群 に お け る 脱 粒 性 程 度 の 分 離
8 R‑1と南京11号 と の 正 逆 交 配2組 合 わ せ のF2集 団 に お け る 脱 粒 性 程 度 の 分 離 に つ い て は , 脱 粒 性 易 か ら 極 難 ま で の 個 体 が 分 離 し た . しかし抗張 強度225gfを 境 界 と し て , 脱 粒 性 易 の 個 体 と 脱 粒 性 難 の 個 体 と に 分 け ら れ , その分離比は3:1に適合した (Fig.6A, B司 Table5) .またF3系統群では,
正 逆 交 配2組 合 わ せ と も 脱 粒 性 易 に 固 定 し た 系 統 群 , 脱 粒 性 が 分 離 す る 系 統 群 , 脱 粒 性 難 に 固 定 し た 系 統 群 に そ れ ぞ れ 分 れ 唱 そ の 分 離 比 は1:2: 1
こ ,
適 合 し た (Fig.7A,B, Table 6) .
8R・4, 北 陸143号(8R‑5)
、
8R‑6の3系 統 と 南 京11号 と の 正 逆 交 配6 組 合 わ せ のF2についてもー 175gfを 境 界 と し て 脱 粒 性 易 の 個 体 お よ び 脱 粒 性 難 の 個 体 に 分 れ そ の 分 離 比 は3:1に適合した (Fig.6C‑H, Table 5) .ま た 北 陸143号(8R‑5)とのF3については, 8 R‑1と 同 様 に 脱 粒 性 易 固 定 系 統 群 、 分 離 個 体 群 , 難 固 定 系 統 群 に 分 か れ 噌 そ の 分 離 比 は1:2: 1に 適 合 し た (Fig.7C,0, Table 6) . しかし8R‑2と南京11号 と の 正 逆 交 配2組 み合わせについては, F2集 団 で は 他 の 突 然 変 異 系 統 の 雑 種 集 団 の よ う な 脱 粒 性 易 あ る い は 難 個 体 の 明 瞭 な 分 離 は 認 め ら れ な か っ た (Fig.61,J) . しかしF3系 統 群 に お い て は 脱 粒 性 易 固 定 系 統 群 , 分 離 系 統 群 , 難 固 定 系 統 群 に 分 か れ , そ の 分 離 比 は1:2: 1に 適 合 し た (Fig.7E,F司 Table6) .
こ れ ら の 結 果 か ら , 突 然 変 異5系 統 の 難 脱 粒 性 は , い ず れ も 単 一 の 劣 性 遺 伝 子 に よ り 支 配 さ れ て い る こ と が 明 ら か に な っ た .
30
D
H B
J
-~ι1
‑ f
竺 jingllーエ2
・1A0 30
0 40 30 20 10 10 20 20 0 40
0 30 30
10
20 10 20 10
おロ
﹄ ︒ . ︒ s a
z
400 300 400 0 100
Breaking tensile strength (gf)
Distribution of shattering degrees in F2 populations derived from the crosses between Nan‑jing 11 and hard‑shattering mutant lines. A :(Nan‑jingll1SR・1)
,
n=89,
B:(SR・l/Nan‑jingll),n=88 C:(Nan引ngll1SR・4),n=82, D:(SR・4~~_~-j.ing~.I) ,~".~~_~E:(Nan引ngl1IHokurikuI43),̲n==~9 ̲ ~_:(H~~UI'_i~uI43!~an-jingll) , n=88 G:(NanサinglllSR・6),n=82 H;(SR・6/Nan‑jingl1),n=90
I:(Nan‑jinglllSR・2)
,
n=80 J:(SR・2/Nan‑jingl1),
n=89一一...lEー‑ーー:Mean and distribution of shattering degrees in parents 200 300
100 200
。
Fig.6.
31
Table 5 . Segregation of shattering degrees in F2 populations derived from the crosses between Nan‑jing 11 and hard‑shattering mutants
Cross combination No. of plants
x
2Shattering Hard‑shattering Total (3 : 1) p
く 225(gf) <
NSRan.1‑ jing11 / SR‑l 63 26 89 0.842 0.30‑0.50 / Nan‑jing 11 66 22 88 0.000 0.99
< 175 (gf)く
Nan‑jing 11 / SR‑4 56 26 82 1.967 0.10‑0.20 SR‑4 / Nan‑jing 11 66 24 90 0.133 0.70‑0.80 Nan‑jing 11 / Hokuriku 143 67 22 89 0.004 0.90‑0.95 w Hokuriku 143 / Nan・jing11 67 21 88 0.061 0.80‑0.90
~
Nan‑jing 11 / SR‑6 62 16 78 0.837 0.30‑0.50 SR‑6 / Nan‑jing 11 56 14 70 0.933 0.30=0.50