1 January 24, 2014
1. インドネシアの雇用法制・慣行上の留意点(第 1 回)
2. 2013 年インド会社法改正のポイント(第 4 回)「財務不健全会社について」
3. 政治・経済・産業トピックス
4. 主要国の経済指標
1. インドネシアの雇用法制・慣行上の留意点(第 1 回)
はじめに
昨今、多数の日系企業がインドネシアに進出している。現地法人や合弁会社等によって現地に拠点を置く場 合には労働者の雇用を伴うが、その場合、現地の基本的な労働法制を把握しておくことが必須である。イン ドネシアの雇用関係に適用される法律のうち、最も基本的なものは労働力に関する 2003 年法第 13 号(以下 「労働法」)であるが、その他、労働組合に関する法律、手当に関する規則等関連する法律・規則が多数存 在し、労働法を補完している1。 本記事では、全2回に分けてインドネシアの雇用形態、雇用条件、解雇規制およびその他慣行上の留意点 について解説する。1 雇用形態
(1)正社員と契約社員 労働法上、雇用契約は、期間の定めのない契約(いわゆる正社員)と有期契約(いわゆる契約社員)の2種 類に分類される。両者の主な違いは、正社員の方が、雇用関係の終了がより困難であり、また雇用関係終 了時の退職手当の負担が大きい点等が挙げられる。 したがって、使用者としては有期契約による雇用関係を締結するインセンティブが大きいようにもみえるが、 有期契約により雇用関係を結べる業務は以下に限定されている2。①一度で終了する業務または一時的な 性質の業務、②業務完了の見込期間が3年以内の業務(例えば、プロジェクトベースの業務)、③季節的な 業務(例えば、大型連休前の臨時需要に応えるための増員)、④注文や特定のターゲットを満たすために行 われる業務、および⑤新製品、新サービスまたはまだ試験的段階にある補助的製品に関連する業務である。 有期契約の期間については業務ごとに異なり、①および②についてはトータルで最長5年間、⑤については 最長3年間、③および④については最長2年間が原則である。なお、有期契約は署名日から7営業日以内に1 過去にインドネシアの最高裁判決により、労働法上の一部の条項が労働者の権利を侵害するとの認定がなされており、政府による法律改正が求めら れているが、本稿執筆時点ではかかる改正はなされていない。従って、労働法を参照する際には、条文文言を確認するのみならず現地の弁護士に確認 する等、留意が必要となる。 2 労働法 59 条1項
2 管轄の労働局に登録をしなければならない3。また、有期契約による労働者については試用期間を設定する ことが認められていない。 さらに、インドネシアでは、日給労働契約という雇用形態が存在する4。日給労働契約は、業務の期間・量が 変動し、また賃金が勤怠に基づく特定業務について認められる。なお、勤務日数は1ヶ月 21 日未満であるこ とが必要とされる。 (2)業務委託と人材派遣 インドネシアでは、業務の外部委託は、大きく分けて(1)業務の請負(仕事の外注)と(2)人材派遣という2つ の概念に分かれている。 まず、業務の請負に関して、外部委託可能な業務は以下の要件を満たすことが必要とされている5。すなわ ち、「外部委託される業務は発注企業の主要活動とは切り離されていること」、「外部委託される業務は発注 企業の直接・間接的命令に基づき遂行されること」、「外部委託される業務は事業の補助的活動であること」 及び「外部委託される業務が停止する場合でも発注企業の生産工程に直接的な影響を与えないこと」の4要 件である。このうち、3つ目の要件である「事業の補助的活動」に該当するか否かは、各事業セクター毎に、 事業セクター団体(例えば、商工会議所に登録された事業セクター団体)によって作成される業務実施工程 フローに基づいて決定される。業務実施工程フローは、事業セクター団体に加盟する各社から提出された同 フローに基づいて、事業セクター団体によって作成される6。 なお、業務の外部委託については、発注企業は、業務委託開始前に地域の労働局に対し、外部委託する補 助業務の概要を報告しなければならず、報告を怠った場合、請負企業と労働者との間の雇用関係が発注企 業に移転する点に留意が必要である。 次に、人材派遣について、派遣労働者の使用が許されている業務は、「クリーニングサービス業」、「労働者 用のケータリング業」、「警備員業」、「鉱業・石油業の補助的サービス業」および「労働者用の輸送サービス 業」の5つに限定されている7。
2 雇用条件
(1)労働時間および休日・祝日 インドネシアでは、労働時間の上限は週 40 時間までと定められており、週5日間勤務の場合は一日8時間ま で、週6日間勤務の場合は一日7時間が労働時間の上限となる8。 時間外労働については、使用者側が強制することはできず、従業員の同意があった場合に限り、一日3時 間かつ週 14 時間を上限として認められる9。時間外労働については、法定の割増賃金を支払う義務がある が、労働者の地位、機能または職務の性質に鑑みて、実質上企画者や管理者10に該当する従業員に対して は支払義務を負わない。ただ、具体的にいかなる地位等がこれに該当するかについては関連規則上明確で はなく、実務上、管轄する労働局に照会することも行われる。3 有期契約の履行に関する労働移住大臣決定KEP. 100/MEN/VI/2004 13 条 4 有期契約の履行に関する労働移住大臣決定KEP. 100/MEN/VI/2004 10 条 5 他社への一部業務の委託条件に関する労働移住大臣規則 2012 年第 19 号 3条2項 6 労働移住大臣ガイドラインSE.04/Men/VIII/2013 7 他社への一部業務の委託条件に関する労働移住大臣規則 2012 年第 19 号 17 条3項 8 労働法 77 条2項 9 労働法 78 条1項
10 時間外労働および割増賃金に関する労働移住大臣決定KEP. 102/MEN/VI/2004 の文言上、thinker, planner, operator and controllerに対しては時間
3 時間外労働の割増賃金の計算については、労働移住大臣決定にて詳細が定められている。概要は、まず、 月額賃金額を 173 で除して基本となる単位時給を算出し、当該時給に時間外勤務の時間を乗じる11。ただ、 単位時給は、就業日か休日かによってさらに乗じられる係数が異なり、就業日の場合、時間外勤務の最初 の1時間目は 1.5 倍、2時間目以降は2倍であるが、休日の場合、係数は2倍から4倍となる12。 3時間以上の時間外労働を行わせる場合には、使用者は十分な休憩と 1,400 カロリー以上の飲食物を提供 しなければならない13。ただ、実務上、必ずしも厳密に 1,400 カロリーの計算がなされている訳ではなく、柔軟 な対応をしている会社も多いと思われる。 深夜早朝労働については、女性の労働者を夜 11 時から早朝7時までの時間帯に労働させるためには飲食 の提供と職場の安全を確保しなければならず、管轄の労働局に対して届出を行うことが必要となる14。また 18 歳以下の労働者を夜 11 時から早朝 7 時までの時間帯に労働させることはできない15。また、13 歳から 15 歳の労働者は、一日3時間を超えて労働させることができず、労働の内容も身体的・精神的・社会的発育を 妨げない軽労働に限られる16。 土曜日および日曜日を除く祝日については、毎年政府が発表する日程に従うことになる。通常、前年の 10、 11 月頃に翌年の祝日が発表される。 (2)有給休暇および傷病休暇 年次有給休暇の日数については、労働者が連続して 12 ヶ月勤務した場合、出勤率にかかわらず最低 12 日 間の年次有給休暇が与えられる17。なお、試用期間(最長3ヶ月)の労働者に対しては有給休暇を付与する 義務はない。 また、傷病に伴う休暇についても、インドネシアでは労働者保護に厚い内容になっている。すなわち、医師の 診断書があれば、有給扱いで傷病休暇が認められ、休暇の取得日数に制限はない18。傷病休暇中に支払 われる給与は、最初の4ヶ月間は、月額賃金の 100%、次の4ヶ月間は 75%、その次の4ヶ月間は 50%、そ れ以降の月は、解雇されるまで 25%が傷病休暇中の労働者に支払われ続ける19。使用者側としては、たと え傷病休暇が長期間続いたとしても最長 12 ヶ月までは雇用関係を終了できず、上述の賃金を支払い続けな ければならない。12 ヶ月間傷病欠勤が継続し雇用関係を終了させる場合、退職手当および勤続功労金の金 額は原則の2倍となる(権利補償金は原則どおり)20。 実務上、インドネシアでは、比較的容易に医師の診断書を入手し易いと言われるため、診断書の真偽等に ついて確認が必要となる。ただ、事務手続の便宜の観点から、1日程度の傷病休暇については医師の診断 書を不要としている会社もある。 (3)賃金および手当 賃金については、基本給および各種手当から構成される。毎年の最低金額が法定されており、同金額は各
11 労働移住大臣決定KEP. 102/MEN/VI/2004 8条 12 労働移住大臣決定KEP. 102/MEN/VI/2004 11 条 13 労働移住大臣決定KEP. 102/MEN/VI/2004 7条 14 労働法 76 条3項、5項 15 労働法 76 条1項 16 労働法 69 条1項、2項 17 労働法 79 条2項c 18 労働法 93 条2項a 19 労働法 93 条3項 20 労働法 172 条
4 州、県または市により異なる。一例として先日公表されたジャカルタ特別州における 2014 年度の最低賃金は、 月額 244 万ルピア(約 2 万円)である。 月額賃金は、通常、基本給、固定手当および変動手当で構成されるが、労働法上、基本給および固定手当 については、退職手当、勤続功労金、権利補償金および時間外勤務手当等の計算の基礎としなければなら ない21。したがって、実務上、基本給や固定手当の金額をなるべく低額に抑え、その代わり各種変動手当を 充実させることもしばしば行われている。基本給および固定手当の構成比率については、基本給は、基本給 および固定手当の合計金額の 75%以上でなければならないと定められている22。 手当としてインドネシアで特徴的なものは、宗教祭日手当である。一年に一度、宗教祭日の少なくとも1週間 前までに月給の一ヶ月分を支払わなければならない23。イスラム教徒が約9割を占めると言われるインドネシ アでは、多くの会社ではレバラン休暇(時期はイスラム暦の為、毎年変動する。)と言われる宗教祭日前に支 払われる。キリスト教徒の従業員の場合は、クリスマス前に支払われるのが通常である。 上記の他、手当として一般的に支給されるのは、交通費、時間外労働の場合の食事代、医療費等である。 3 雇用契約書・就業規則 有期契約書は労働者の国籍にかかわらずインドネシア語で作成されなければならないと定められている24。 他方、期間の定めのない契約書はインドネシア語で作成する義務は定められていないものの、実務上、イン ドネシア人の労働者との契約書はインドネシア語で作成されることが多い。なお、日系企業等外資の企業は インドネシア語に加え、英語版や日本語版も併せて作成することが多いが、インドネシア語とそれらが相反 する場合にはインドネシア語版が優先する25。 また、10 名以上の労働者を雇用する会社は、就業規則を作成し、管轄の労働局の承認を得なければならな い26。なお、この「10 名」が期間の定めのない契約による労働者(いわゆる正社員)のみを指すのか、または 有期契約による労働者(いわゆる契約社員)も含めた数かについては法律上定めがない。実務上は、正社 員か契約社員かを問わず、労働者が 10 名に至った場合に、就業規則の承認を得るケースが多い。就業規 則の有効期間は2年間であるため、2年毎に労働局の承認をとる必要がある。2年を経過しても更新しない 場合、労働法に違法している状態ではあるが、実務上、労働者側から異議が出されるか、労働局から指摘さ れない限り、旧就業規則の規定が効力を有し続けると解されている。 就業規則は使用者側が一方的に定められるわけではなく、労働者の代表により合意されたものでなければ ならない27。労働者の代表は民主的に選出することが必要だが28、実務的には、たとえば最も勤続年数が長 い者や年長者を選んで、その者からサインをもらうことで労働局から承認を得ている会社も存在する。ただ、 管轄する労働局によって運用が異なるので、実際に承認を得ようとする際に手続を個別に確認する必要が ある。
21 労働法 157 条1項 22 労働法 94 条 23 宗教祭日手当に関する労働大臣規則PER-04/MEN/1994 3条、4条 24 労働法 57 条1項 25 労働法 57 条3項 26 労働法 108 条1項 27 労働法 110 条1項 28 労働法 110 条3項
5 なお、労働者が 10 名以下の会社が就業規則を作成した場合、必ずしも労働局の承認を受ける義務はない が、将来紛争が生じた場合に、裁判において証拠としての価値を高める為に、任意に労働局の承認を取得 しておくことも有益である。 就業規則に定めなければならない事項として法定されているのは以下の事項である29。①使用者の権利義 務、②労働者の権利義務、③労働条件、④使用者の規律および行動規範、ならびに⑤就業規則の有効期 間である。 (2013 年 11 月 29 日作成) 記事提供:アンダーソン・毛利・友常法律事務所 池田 孝宏 日本およびニューヨーク州弁護士。2012 年 9 月よりジャカルタの Roosdiono & Partners (ZICOlaw)法律事務所に出向中。出向先の法律事務所と緊密に連携 して、主に日系企業に対して新規進出案件(M&A、合弁、会社設立、業界毎 の法的規制の調査)や現地法律問題(労務、紛争)についてアドバイスを提供し ている。
29 労働法 111 条1項
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2. 2013 年インド会社法改正のポイント(第 4 回)
「財務不健全会社(Sick Company)について」1. Introduction
昨年 8 月、57 年振りに改正された 2013 年インド会社法(新会社法)の解説をこれまで 3 回にわたって行って きたが、今回(第 4 回)は、これまでの解説において取り扱わなかったものの、特に問い合わせの多かった 「財務不健全会社(Sick Company)」について取り上げる。2. 改正の経緯
Sick Company とは、法律で規定された一定の要件を充たす財務不健全会社であり、これに該当する会社は、 法律に定められる手続きに従って、会社の再生・再建、もしくは清算を強制されることとなるものである。 Sick Company に関しては、当初 The Sick Industrial Companies (Special Provisions) Act, 1985(SICA 1985) によってその法的枠組み、及び再生・再建の方法が規定されるに至った。しかしながら、SICA 1985 に基づく 再生・再建システムは、その処理に数年間かかる等の理由から必ずしも成功しているとは言えなかったうえ、 本来 SICA 1985 が企図したところとは異なり、SICA 1985 がいわば政府公認の出口戦略として、債権者の意 見とは関係なく利用されてしまうケースもあり、少なからぬ債権者に損失と不利益を与えることとなったため、 改正の必要性が叫ばれていた。後述のとおり、この「債権者の保護(意見の反映)」という視点は、今回の Sick Company に関する新会社法の改正過程と規定内容にも、大きな影響を与えることとなっている。その後、その改正案が 1956 年インド会社法(The Companies Act, 1956)第 VIA 部に追加され、SICA 1985 は、 The Sick Industrial Companies (Special Provisions) Repeal Act, 2003 の制定により廃止が求められた。もっと も、同法は施行されることなく、結局今日まで SICA 1985 に基づいて Sick Company の規制が行われてきた。 このような経緯の中、新会社法は、第 19 章において Sick Company の新たな再生・再建に関する条項を規定 するに至った。
3. SICA 1985 と新会社法第 19 章の相違点
(1) 対象となる会社 (a) SICA 1985
SICA 1985 によって規制の対象となる会社は、「Industrial Company」に限定されている。具体的には、 1 以上の工場で製造業を営む会社がこれに該当する。 (b) 新会社法 新会社法においては、その規制対象を「Industrial Company」に限定していない。すなわち、業種や事 業内容にかかわらず、すべての会社がその規制対象となる。従来とは異なり、製造業以外の日系企 業も注意が必要である。 (2) 該当基準 (a) SICA 1985 SICA 1985 においては、その該当基準として、債務超過基準が用いられている。具体的には、前述の
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ような製造業を営む会社が、①5 年以上登記されており、かつ②会計年度末に、その累積損失額が純 資産額以上の場合に「Sick Industrial Company」に該当するとされている(同法第 3 条(o))。このように、 SICA 1985 においては、その該当基準を厳格な数値的要件として定めており、該当する会社の再生・ 再建プロセスを同法に従って行うかどうかにつき、債権者の意図は全く反映されないものとなってい る。 (b) 新会社法 他方、新会社法は、その該当基準として有担保負債の弁済不能という概念を導入している。具体的に は、①未払債務額の 50%以上を有する担保債権者らの請求に対し、会社が請求通知送達後 30 日以 内に弁済できない、または、②当該担保債権者を合理的に満足させる程度までの支払保証又は和解 ができない場合に「Sick Company」に該当するとされており(同法第 253 条 1 項)、SICA 1985 のような 債務超過基準は用いられていない。このように、新会社法においては、該当する会社の再生・再建プ ロセスを同法に従って行うかどうかにつき、担保債権者の意図を反映させる構造となっている。 (3) 監督機関
(a) SICA 1985
SICA 1985 は、The Board for Industrial and Finance Reconstruction(BIFR)と呼ばれる機関を設置し、 Sick Industrial Company に該当する会社の事業に対する調査、再生・再建のためのスキーム作成に ついての命令、スキーム実施の監視等の権限を集中的に付与している。
(b) 新会社法
これに対し、新会社法は、BIFR に代わる監督機関として、The National Company Law Tribunal (NCLT)と呼ばれる機関の設置を予定している。BIFR と同様、再生・再建の過程を監視する機関であ るが、前述のとおり新会社法では再生・再建プロセスに担保債権者の意思を反映させる制度を採用し ていることから、その権限・機能は、BIFR に比して限定的なものとなっている。
また、New Delhi のみにしか拠点をもたなかった BIFR と異なり、NCLT は、New Delhi 以外の主要都市 にも設置される予定であるため、案件処理の迅速性やアクセス面での改善が期待されている。 (4) 手続き
(a) SICA 1985
SICA 1985 の下では、Sick Industrial Company に該当する会社は、その取締役会において、当該会社 が Sick Industrial Company になったこと及び再生方法を決定し、これを BIFR に申告しなければならな い。申告を受けた BIFR は、必要に応じて当該会社の事業の調査、当該会社が再生可能かどうかの 査定、再生・再建スキーム策定の命令・実行の監視を行う。
(b) 新会社法
これに対し、新会社法の下では、前述のとおり当該会社がSick Companyへの該当基準を充たす場合 に担保債権者にNCLTへの申告権限1を与えている。すなわち、Sick Industrial Companyへの該当基準
を充たした会社は必ずBIFRに対して必要な報告をしなければならない。SICA 1985 の場合と異なり、 法律に沿った再生・再建プロセスを利用するかどうかは、担保債権者の意図に委ねられているのであ る。 また、その後の手続に関しても、BIFRに広範な権限を集中させ、すべての再生・再建プロセスがBIFR
1新会社法は、会社が任意にNCLTに対して申告することも認めている(新会社法第 253 条 4 項)。
8 のみによって監視されるSICA 1985 とは異なり、新会社法は、担保債権者に再生・再建スキーム案の 提案権を認め(同法第 254 条)、また会社を再生・再建するか、清算するかについての決定を、一般債 権者を含めた債権者集会に委ねている(同法第 257 条)。さらには、NCLTが選任した会社管理者 (Company Administrator)が策定した再生・再建スキームについて、担保債権者及び一般債権者の承 認を必要とする(新会社法第 262 条 2 項)等、手続の様々な段階において、債権者の意見を反映させ る点に特徴2がある。
(5) Potentially Sick Company (a) SICA 1985
SICA においては、「潜在的財政不健全会社」(Potentially Sick Company)という概念が存在した。すな わち、「Sick Industrial Company」には至っていないが、将来的にこれに該当する可能性がある会社に 対しても、一定の規制をしている。具体的には、前述のような製造業を営む会社が、会計年度末の累 積損失が直近4年間の最高純資産の 50%以上の場合には、その旨を BIFR 及び株主に報告しなけれ ばならないとされている。
(b) 新会社法
他方で、新会社法においては、SICA 1985 に規定されていたような Potentially Sick Company の概念 は存在しない。したがって、新会社法においてはこのような概念は撤廃されたと言える。
4. SICA 1985 の今後の取扱い
Sick Company 規制に関しては、新会社法にも盛り込まれているが、現時点においてその該当部分(第 19 章)は施行されておらず、引き続き SICA 1985 が効力を有している。
もっとも、新会社法第 19 章が施行され、かつ BIFR に代わる監督機関である NCLT が設立され、その発足日 が中央政府によって公告された場合、SICA 1985 は自動的に廃止され、以降 Sick Company は新会社法第 19 章に従って規制されることになる。 (以上) 記事提供:弁護士法人マーキュリー・ジェネラル 弁護士 坂元 英峰/弁護士 山下 昌彦(インド・デリー駐在) 弁護士法人マーキュリー・ジェネラル:平成 15 年 3 月 1 日開設、平成 19 年 12 月 19 日法人化。 国内の日系法律事務所としては唯一インド共和国法外国法事務弁護士が所属、日印両国にお いて、インドに進出する日本企業をサポート。
2 なお、上述のとおり、新会社法第 19 章に従った手続をNCLTへ求めること、再生・再建スキームの提案権等は、担保債権者のみに認められている。ま た、会社管理者の策定した再生・再生スキームの承認についても、一般債権者については、これらの者に対する未払債務額の 4 分の 1 以上にあたる承 認で足りるとされているのに対し、担保債権者については、これらの者に対する未払債務額の 4 分の 3 以上にあたる承認が必要とされる等、担保債権者 をより保護するものとなっている。
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3. 政治・経済・産業トピックス
【政治】
■ (タイ)-バンコクと周辺県に非常事態宣言
インラック首相が 2 月 2 日の下院総選挙を予定通り行う方針を示す中、21 日、タイ政府は首都圏に非常事態 宣言を発令した。期間は 22 日からの 60 日間で、発効後は治安部隊の武器使用などが可能になる。17 日と 19 日の白昼に反政府デモ勢力を狙った爆破事件が相次いで発生するなど、治安悪化懸念が高まっていた。 軍は中立の立場をとっている。【経済・産業】
■ (インドネシア)-未加工鉱物の輸出禁止措置を開始
12 日、インドネシア政府は新鉱業法に基づき、未加工鉱物の輸出禁止措置を開始した。ただし、銅など一部 の精鉱については輸出可能な純度を緩和し、2017 年まで輸出継続が認められる。輸出可能な精鉱に対する 関税率は、2016 年下半期までに段階的に 60%に引き上げられる。政府には、国内に精製所などを建設し加 工する企業には輸出を許可するなど、完成品の生産者になることで歳入増加を図りたいという意図がある。 また、今回のインドネシア政府の措置により、世界的に低迷していたニッケル価格が上昇し、最大生産国の 一つであるオーストラリアの関連企業に追い風となる事が期待されている。一方、一部の市場アナリストは、 禁輸で同国の経常赤字が拡大する可能性があると指摘している。■ (フィリピン)-地デジ・防災ITなど支援強化、日本より官民合同ミッションを派遣
13 日、日本の総務省と日本企業 70 社による情報通信技術(ITC)の官民合同ミッションがフィリピンに派遣さ れ、マニラで開かれた ISDB-T(日本方式の地デジ放送)国際セミナーにて地デジ化のみならず防災分野を はじめとする ICT 分野全体での協力関係を強化する旨を合意。新藤総務相とモンテホ科学技術大臣が共同 声明に署名した。■ (ミャンマー)-自動車・二輪車市場が拡大、1 年半で 7 割増
自動車・二輪車の総登録数は、2012 年 4 月の約 237 万台から 2013 年 10 月には約 395 万台と、1 年半で 7 割(158 万台)増加した。背景には、政府が中古車の輸入関税率を大幅に引き下げたことで販売価格が下が ったこと、また、民主化の進展に伴い外資流入が増加していることが挙げられる。■ (シンガポール)-トルコとFTA交渉開始
9 日、シンガポール-トルコ間の包括的な自由貿易協定(FTA)の交渉を開始することで両国首脳が合意した。 首脳会談では、FTA を含む経済協力のほかに金融、テロ対策における協力でも合意。シンガポールの通産 相は、2012 年の両国間の貿易額約 12 億米ドルが更に伸びると述べた。10
4. 主要国の経済指標
マレーシア 単位 2012 2013/2Q 2013/3Q Oct-13 Nov-13 Dec-13 備考 前年(同期)比 2.8 2.9 消費者物価指数(CPI)、前年(同期)比 2,593 3,037 3.21 3.22 3.32 銀行間(3カ月物)、期末値 3.175 3.199 3.252 期中平均(Dec-13は月末終値) 1,806.9 1,812.7 1,867.0 クアラルンプール総合指数、期末値
Oct-13 Nov-13 Dec-13 備考
前年(同期)比 1.5 1.9 1.7 消費者物価指数(CPI)、前年(同期)比 実質GDP成長率 % 5.6 4.4 5.0 インフレ率 % 1.6 1.8 2.2 貿易収支 百万米ドル 31,148 2,666 5,730 経常収支 百万米ドル 18,566 831 3,038 市場金利 % 3.21 3.20 3.21 外国為替相場 対米ドル 3.089 3.071 3.240 株価 1,689.0 1,773.5 1,768.6 (出所:マレーシア中銀、CEICなど) タイ 単位 2012 2013/2Q 2013/3Q 実質GDP成長率 % 6.5 2.9 2.7 インフレ率 % 3.0 2.3 1.7 貿易収支 百万米ドル 6,015 5,033 337 1,514 経常収支 百万米ドル 376 2,294 政策金利 % 2.75 2.50 2.50 2.50 2.25 2.25 翌日物レポ金利、期末値 外国為替相場 対米ドル 31.07 29.87 31.45 31.21 31.66 32.38 期中平均(Dec-13は月末終値) 株価 1,391.9 1,451.9 1,383.2 1,442.9 1,371.1 1,298.7 SET指数、期末値 (出所:タイ中央銀行、国家経済社会開発委員会、CEICなど)
インドネシア 単位 2012 2013/2Q 2013/3Q Oct-13 Nov-13 Dec-13 備考
実質GDP成長率 % 6.2 5.8 5.6 前年(同期)比 インフレ率 % 4.3 5.6 8.6 8.3 8.4 8.4 消費者物価指数(CPI)、前年(同期)比 貿易収支 百万米ドル 24 777 経常収支 百万米ドル 政策金利 % 5.75 6.00 7.25 7.25 7.50 7.50 BI金利、期末値 外国為替相場 対米ドル 9,388 9,803 10,671 11,163 11,615 12,076 期中平均(Dec-13は月末終値) 株価 4,316.7 4,818.9 4,316.2 4,510.6 4,256.4 4,274.2 インドネシア総合指数、期末値 (出所:インドネシア中央銀行、CEIC、Bloombergなど)
ベトナム 単位 2012 2013/2Q 2013/3Q Oct-13 Nov-13 Dec-13 備考
実質GDP成長率 % 5.3 5.0 5.5 前年(同期)比 インフレ率 % 9.1 6.6 7.0 5.9 5.8 6.0 消費者物価指数(CPI)、前年(同期)比 貿易収支 百万米ドル 749 895 101 1,004 100 経常収支 百万米ドル 9,062 政策金利 % 9.00 7.00 7.00 7.00 7.00 7.00 リファイナンスレート、期末値 外国為替相場 対米ドル 20,873 20,968 21,158 21,109 21,103 21,110 期中平均(Dec-13は月末終値) 株価 413.73 481.13 492.63 497.41 507.78 504.63 VN指数(ホーチミン)、期末値 (出所:ベトナム統計局、中央銀行、IMF、CEICなど)
フィリピン 単位 2012 2013/2Q 2013/3Q Oct-13 Nov-13 Dec-13 備考
実質GDP成長率 % 6.8 7.6 7.0 前年(同期)比 インフレ率 % 3.2 2.6 2.4 2.9 3.3 4.1 消費者物価指数(CPI)、前年(同期)比 貿易収支 百万米ドル 202 経常収支 百万米ドル 7,126 2,624 3,204 市場金利 % 0.20 0.90 0.87 0.00 0.00 0.00 TB、期末値 外国為替相場 対米ドル 42.23 41.78 43.68 43.18 43.55 44.10 期中平均(Dec-13は月末終値) 株価 5,812.7 6,465.3 6,191.8 6,585.4 6,208.8 5,889.8 フィリピン総合指数、期末値 (出所:CEIC、IMFなど)
インド 単位 2012 2013/2Q 2013/3Q Oct-13 Nov-13 Dec-13 備考
実質GDP成長率 % 5.0 4.4 4.8 前年(同期)比 インフレ率 % 7.4 4.8 6.6 7.0 7.5 卸売物価指数(WPI)、前年(同期)比 貿易収支 百万米ドル 経常収支 百万米ドル 政策金利 % 7.50 7.25 7.50 7.75 7.75 7.75 レポレート、期末値 外国為替相場 対米ドル 54.41 55.93 62.18 61.56 62.59 61.85 期中平均(Dec-13は月末終値) 株価 18,836 19,396 19,380 21,165 20,792 21,171 ムンバイSENSEX指数、期末値 (出所:RBI、中央統計局、CEICなど) -956 -1,470 -7,169 -888 -1,659 -3,107 -3,060 -24,418 -9,954 -8,449 -1,203 -10,029 -1,754 -2,269 -192,964 -49,950 -29,793 -10,654 -9,220 -87,843 -21,772 -5,153 本資料は信頼できると思われる各種データに基づき作成しておりますが、当行はその信頼性、安全性を保証するものではありま せん。また本資料は、お客さまへの情報提供のみを目的としたもので、当行の商品・サービスの勧誘やアドバイザリーフィーの受 入れ等を目的としたものではありません。投資・売買に関する最終決定はお客さまご自身でなされますよう、お願い申し上げます。 (編集・発行) 三菱東京 UFJ 銀行 国際業務部 教育・情報室 (照会先) 北村 広明 (e-mail): [email protected]