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京都大学ボート部における安全確保への取組みについて

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安全確保への取組書

改 10 H27 年 12 月 27 日

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目 次

1. 概要 2. 安全確保の基本的な考え方 2.1 事故事象のレベル分類 2.2 安全確保の目標 2.3 目標達成の方針 3. 安全指導体制 3.1 ボート部組織と安全確保の体制 3.2 安全確保の行動 4. 事故の発生防止に対する具体的方策 4.1 航行規則 4.2 事故の分類と予防法 4.3 出艇基準 4.4 事故報告書の作成と活用 4.5 乗艇練習以外の事故防止 4.5.1 自転車走行中の安全について 5. 事故の拡大防止に対する具体的な方策 5.1 平素からの準備事項 5.1.1 安全装備 5.1.2 出艇状況表の整備 5.1.3 緊急時対応・連絡先表の整備 5.1.4 安全当直者・監視マニュアルの整備 5.1.5 緊急時選手マニュアルの整備 5.2 練習監視・救助体制の整備 5.2.1 共通事項 5.2.2 季節ごとの練習監視・救助体制 5.2.3 救助用モータの準備、運転 5.3 緊急事態発生時の判断行動 5.3.1 事態当事者としての判断行動 5.3.2 練習監視・救助者の判断行動 5.3.3 人命救助のための応急処置 5.3.4 二次災害の発生防止 5.3.5 事故時の連絡体制 5.4 安全訓練 ~パニック防止のための方策~ 6. 事故影響の拡大防止に対する具体的方策 6.1 対応の基本原則 6.2 事故対策本部での対応 6.3 保険への加入 6.3.1 加入する保険 6.3.2 事故発生から手続き等の流れ 7. 特別な安全確保への方策

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7.1 新歓ボートレース 7.2 戸田遠征 7.3 他水域への遠征 7.4 他水域からの遠征 8. 過去の事故例 <添付資料> 添付 2-1 改訂来歴 添付 3-1 京都大学ボート部体制及び役職者の職責 添付 4-1 各水域の航行規則 添付 4-2 京都大学ボート部 出艇可否判断基準及び練習水域 添付 4-3 沈・ヒヤリハット報告書フォーマット 添付 4-4 事故報告書フォーマット(レベル 1~4 用) 添付 4-5 事故報告書記入例 添付 5-1 モータ安全運転マニュアル 下の写真は琵琶湖で捕獲されたピラニア (H17.9.12 滋賀県水産試験場発表)。観賞用に流 通しているものが放流されたものと考えられている。 現状、越冬は難しいとされているが、もし「環境に適応した個体がいたら・・・」、あるい は「工場排水等の出口付近で冬場でも暖かいエリアが局所的にあったら・・・」云々・・・ ピラ ニア が琵 琶湖 で繁殖 する よう にな った 場合 、本 書に 記載さ れた 内容 には どん な変更 が必要であろうか。。。 <写真:滋賀県水産試験場ご提供>

安全確保への取組は、状況変化に対応し、常に更新され続けなければならない

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1. 概要 本書は、京都大学ボート部(以下、「ボート部」という)における安全確保への取組みについ て、従来あった出艇基準、練習監視・救助体制等の安全マニュアルをベースに体系化し、ま とめたものである。ボート部では、本書にもとづき安全確保への取組みを行う。 2. 安全確保の基本的な考え方 ボート部においては、かつて 1961 年及び 1964 年に乗艇練習中の死亡事故を 2 件起こしてお り、合計 2 名の死亡者を出している。また近年においては結果として死亡者や重傷者を出す重 大事故こそ起こしていないものの、重大事故につながりかねない事故は起こっている。ボート 部においては,ボート競技というものが常に重大事故の危険に囲まれながら行われていること を認識し、その上でその危険性の排除と事故の防止をはかり、また事故事象の度合い、影響の 大きさの低減を図ることによって、リスクを許容しうる範囲まで小さくした安全な状態をつく るためには、という思想で安全確保への取組を行う。 なお、新歓ボートレース等の特別なイベントの際は、7 項に定める特別な安全確保の手段を 講じることとする。 2.1 事故事象のレベル分類 事故事象を表 2-1 にレベル分類する。表 2-1 において、レベル 3,4 の事故事象を「重大事 故」と称する。 表 2-1 事故事象のレベル分類 レベル 事象 分類 定義 備考 人身 物損 0 ヒヤリハット (なし) (なし) 1- 事故 (なし) ・物損なし 人身・物損ともになしでも 接触した場合はレベル 1 と みなす オールは消耗品とみなす 1+ ・消耗品、付属品破損 ・艇体破損(即日乗艇可) 2 ・怪我(不休) ・艇体破損(即日乗艇不可) リガーは艇体とみなす 3 ・骨折・入院 ・艇大破、全損 重大事故 4 ・死亡 重大事故 注:人身、物損でレベルが異なるときは上位のものを適用する。 :消耗品、付属品が破損した場合、替えの部品があり即日乗艇可ならばレベル 1+、 そうでなければレベル 2 2.2 安全確保の目標 安全確保における究極の目標(コアアセット)は、レベル 3 以上の事故、特に死亡事故を起 こさないことである。また、レベル 1,2 の事故についても、それは部員の身体を傷つけ、ま た部の財産を損なうものである。さらに、それらが頻発することは上位のレベルの事故が起 こる可能性が高まることであるから、それらを許容することはできない。従って、ボート部 における安全確保の目標は事故ゼロである。

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2.3 目標達成の方針 ボート部における事故は、水上を始めとして、トレーニングエリア、艇庫、船台、合宿所、 通学路等、活動が行われる全ての場所で発生する可能性がある。即ち、ボート部における活 動は危険な環境の中で行われ、何もしなければ安全ではない,という認識をもつ必要があ る。 この認識を前提として、さまざまな場所において起こりうるさまざまな事故に対し、ボー ト部では組織的な安全指導体制を構築し、安全指導総括者及び安全指導担当者による安全教 育等の「安全確保の行動」によって部員の安全知識の取得、安全意識の向上をはかる。さら に、以下の各段階において、具体的方策を定める。 事故の発生防止(事故を起こさない) 事故の拡大防止(たとえ、事故を起こしても重大事故にしない) 事故影響の拡大防止(たとえ、重大事故が起きても、事件にしない) さらに、部員一人一人はこれら具体的方策を徹底して遵守し、実践する。 以上の方針によって、安全確保の目標を達成する。 3. 安全指導体制 3.1 ボート部組織と安全確保の体制 (1) ボート部組織 ボート部の体制並びに部長以下、各役職の職責等を添付 3-1 に示す。 ボート部は、京都大学の教育の一環である課外活動としてボートを行う組織であり、京都 大学に属する。 その構成員は「現役部員」、「指導部員」に二分される。指導部員は部長を頂点とし、監 督、コーチ等からなる。現役部員は主将を頂点とし、学部生及び大学院生を中心とする選手、 スタッフ(含む学生コーチ)から構成される。 ボート部の運営は現役部員、指導部員の間でそれぞれ「互いに感謝と奉仕の心」を通わせ つつ、指導部員のサポートの下「現役主体」で行われることを基本方針とする。 安全確保に関する取組についてもこれらボート部組織の構成、基本方針、職責に基づき、 以下の体制で実施される。 (2) 安全確保の体制 ボート部では、「現役部員が主体的に活動し、指導部員はサポートを行う」という基本運営方 針、「一旦岸を蹴ったら、いかなる困難にも外部からの援助なしに選手で立ち向かう」というボ ート競技の精神、「指導部員はボランティアであり始終現場にいることはできない」という現実、 そして、「大学生は社会的に責任能力を持つ大人として扱われる」という社会慣習に基づいて、 安全確保のための体制を以下とする。 ①責任 ・事故に対する責任は、全て事故を起こした選手本人にある。 ②安全指導総括者、安全指導担当者 ・主将、副将は安全指導総括者として、安全指導担当者を取りまとめ、部全体に対する 「安全確保の行動」を指導し、実施する。 安全指導総括者の不在時に練習する場合、総括者が指名した者もしくは現役部員の上

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級生が代行する。 ・クルーリーダー、コックスは、安全指導担当者として、当該クルーに対する「安全確保 の行動」を指導し、実施する。 なお、新人期のクルーにおいては、新人単独では編成せず、新人コーチが安全指導 担当者としてクルーリーダーまたはコックスを務めることとする。 ③安全当直者(監視のリーダー) ・安全当直者は、毎回の練習においてスタッフ、学生コーチの中から持ち回りで定め、 以下を行う。 出艇状況表の整備 練習日誌への記載、データベース入力(冬季のみ) 出艇、揚艇の確認 事故発生時の連絡(安全指導総括者は事故対策本部の発足までの連絡担当者) ④事故報告書管理者 ・事故報告書管理者は、安全指導総括者から任命され、以下を行う。 事故報告ごとの台帳管理、報告書の管理(ファイル)、データベース入力 年度末における事故分析、再発防止策のまとめ、年度報告書の作成 ⑤監督、コーチは安全指導として、豊富な経験と知識を生かし、現役部員が主体的に行う 「安全確保の行動」がよりよく、かつ徹底されるよう現役のサポートを行う。 3.2 安全確保の行動 ボート部においては以下の安全確保の行動を組織的に実施することで、部員一人一人が事故の 発生と拡大の防止に対する具体的方策が実践できるようにし、安全を確保する。 (1) 安全確保への取組書の見直し作業 ①安全指導総括者は毎年新体制発足時により現実に即した形での安全確保を可能とするた め、本書の内容について全部員の意見を吸い上げて見直し作業を実施する。 ②8 章「過去の事故例」の改定にあたっては、過去 1 年分の事故(レベル 0 を含む)につい て原因分析及び再発防止策を含めてまとめる。 ③過去の事故例を含む「安全確保の取組書」の改訂版は学務部学生課に提出する。 (2) 安全教育 安全に関する知識の取得、及び安全意識向上の目的で、以下の安全教育を行う。安全教育に あたっては、本書 4~6 項の事故の発生及び拡大の防止に対する具体的方策及び本書 8 項「過去 の事故例」の内容を中心に実施する。 ①冬季安全教育 ・冬季練習の開始時点において、安全指導総括者の指導のもと、全部員に対して、以下 の理由により、本書について包括的な教育を実施する。 クルーボートからシングルスカルを中心とする練習に切り替わること 新人が上回生の選手と同等に扱われるようになり、初めてそのような練習形態に移 行すること

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新体制発足時に見直した本書の内容を全部員に周知する必要があること ②春季安全教育 ・朝日レガッタに向けたクルー編成が行われた時点において、安全指導総括者の指導の もと、全部員に対して実施する。 ・本書に記載された内容のうち、スピードの速いクルーボートが起こす事故の影響、対 策に関する点を中心に実施する。 ③新人安全教育 ・安全指導総括者の指導のもと、新人グループコーチが新人に対して実施する。 ・教育は、中途入部者の存在、ボートに対する他の知識の段階的な取得を考慮して、本 書の内容をもとに、以下の 4 回に分けて実施する。 5 月初:安全意識 6 月末:事故の発生防止と応急処置(シングルスカル導入時) 8 月初:琵琶湖周航における事故例紹介による安全意識向上と安全確保策 9 月初:事故の発生防止と応急処置(クルーボート) 新人コックスへの航行ルールの指導(現役コックスより) (3) 安全ミーティング 安全ミーティングは、年度初めに立てた年間活動計画に従って行う。また、重大事故発生時に は臨時安全ミーティングを開催し、事故原因と対策の周知徹底を図る。 ①通常時 ・議長:安全指導総括者 ・参加者:全部員 ・目的:安全意識の向上と最新の河川状況等、安全に必要な知識の周知をはかる ・内容: 航行ルールの確認 冬季練習時の注意点の確認 交通安全レクチャー ②試合遠征前 ・議長:安全指導総括者 ・参加者:遠征参加者全員 ・目的:遠征先での安全確保に必要な知識の周知をはかる ・内容: 遠征先の平常時の航行ルールの確認 試合時の航行ルールの確認 (4) 安全装備確認(5.1.1 参照) 事故の発生、拡大防止に必要とされる装備について安全部門が 11 月、4 月に確認を実施する。 ・実施者:安全指導総括者 ・参加者:安全部門 ・内容:安全確保上必要とされる備品の確認

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(5) 安全訓練 事故の拡大防止に必要とされる緊急事態時の行動、応急処置等について、実際に行動できる ようになるためには、安全教育による知識だけでなく、実際に訓練を行う必要がある。安全指 導総括者は、毎年 10 月に本書 5.4 項に基づく安全訓練計画を立案し、実行しなければならな い。 主要な訓練項目を以下に示す。(詳細は 5.4 項参照) ①シングルスカル沈練習(5 月、新人) ②沈没実験(琵琶湖周航前、新人) ③救助艇による救助訓練(11 月、モータマンを含む監視者)(新人スタッフのモータ免許 取得を済ませておくこと) ④通報連絡訓練(6 月、安全当直者、監視者、モータ等) ⑤応急救護訓練(9 月、3 回生)及び(琵琶湖周航前、1 回生) ⑥総合事故対策訓練(11 月、全員)

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4. 事故の発生防止に対する具体的方策 ボート部では、「事故を起こさない」ために必要なものとして、以下の規則(ルール)、マニ ュアル、安全知識等を定める。 4.1 航行規則 (1) 基本的な航行規則 ①特に指定無き限り、中央より右側を航行する。なお,夏季に藻が繁茂することによって 川幅が狭まる際には、繁茂している側は逆行しないように細心の注意を払うと共に、反 対側は艇が逆行してくることを想定し、なるべく岸寄りを航行する。 ②自艇より速い艇が来た場合、原則として中央を空けて航路を譲る。 ③停止するときは必ず周囲を確認してから、岸側に寄り、他艇の進行を妨げないようにす る。 ④逆行は他艇の有無に関わらず原則禁止。 ・逆行艇を発見次第、他団体でも速やかに注意する。 ・舵手無し艇は、逆行を避けるために河川・コースの中央を通らない。 ⑤船舶やモータにより、航行に支障のある波が生じる場合は、艇を停止し、波と平行にな るようにして待つ。 ⑥日の出、日の入りにまたがる時間帯に練習を行うときは必ずトップ側に白、スタン側に 赤のライトをつける。その他雨天、霧発生時など見通しの悪い状況でも同様。その際、 ライトは点滅させる。 ⑦レース時の航行規則はそのレースの定める航行規則に準ずる。 ・レース時の航行規則は代表者会議において指示があるので、クルーの代表者は必ず出 席すること。 (2) 各水域の航行規則 上記の基本的な航行規則の下、各水域にはそれぞれ固有の環境に即した航行規則が存在する。 以下の代表的な水域の航行規則を添付 4-1 に示す。 ①瀬田川(水道橋~南郷洗堰) 注:瀬田川の航行マップは安全指導総括者が常に整備し、最新の状況を合宿所内に 掲示すること。 ②琵琶湖漕艇場 ③レークサイド・琵琶湖 ④戸田ボートコース ⑤荒川 ⑥浜寺漕艇場 ⑦加古川漕艇場

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4.2 事故の分類と予防法 水上における事故には以下の種類がある。事故の中にはこれらが複合して起こるものもあるが、 その第 1 の原因はほぼ下記のどれかに分類される。それぞれの事故の主な原因と予防法について表 4-1 にまとめる。 ①浸水沈没・転覆 ②他船艇との接触・衝突 ③浅瀬、構築物への接触・衝突 ④沈(落水) 表 4-1 事故の分類と原因・予防法 事故項目 原因 予防法 浸水による沈 没・転覆 ①悪天候(風雨、波浪) ②接触・衝突による船底 破損 ・スポンジ等水抜き出来るものを持って乗艇 ・浸水により危険*と判断した場合の行動 ①緊急避難場所で揚艇・排水 ②艇庫へ帰還 ③帰還困難の場合、緊急避難場所で一時退避 ④停船し、交代で浮き輪を装着 (緊急避難場所案) ・琵琶湖漕艇場船台 ・滋賀大学艇庫船台 ・瀬田 RC 艇庫 ・石山寺港桟橋 *判断基準:艇内水位が中指第 2 関節(5cm)以上 ・・・(4+/2 番、8+/4 番) 他船艇との接 触・衝突 ①航行規則違反 ②周囲の確認不足 ・航行規則を遵守する。 ・後方及び周囲の確認を怠らない。 (事故多発地点の重点確認) ・舵手は周囲常に艇の周囲に気を配る。特に死角に注 意する。 ・声、音に注意する。 ・確実に他艇との接触を避けるため、他艇と接触の危 険を感じたらまず、大声で注意を促す。 ・接触の回避行動を取る。 ・航行ルールの異なる水域へ侵入する場合一旦停船 し、周囲、当日の航行ルールを確認する。 浅瀬、構築物 へ の 接 触 ・ 衝 突 ①水域の知識不足 ②進行方向確認不足 ・水域情報(地形、浅瀬、橋脚、構築物等)を熟知す る。 ・後方確認を実施する。 (事故多発地点への警告ブイ等の投入) 沈(落水) ①クルーの技術不足(腹 きり含む) ②ピンの緩み、クラッチ 等脱落 ③接触、衝突に伴う落水 ・オールを離さない。 ・出艇前と蹴り出し直後の二度、ピン・クラッチ軸が しまっていることを確認する。 ・(接触、衝突の防止)

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4.3 出艇基準 4.3.1 出艇基準の運用 京大ボート部における出艇基準を添付 4-2 に示す。 添付 4-2 は主として瀬田川・琵琶湖水域を前提とした出艇基準であるが、他の水域においては 地元のクルー、漕艇関係者によく事情を聞いて、その水域に応じた出艇基準に従うべきであ る。  出艇基準の運用においては、一つ一つの出艇可否基準を満たしていても、その複合により 大変危険な状況に陥ることが多々あることを銘記すべきである。 4.3.2 出艇禁止の状況に環境が変化した場合 (1) 選手の対応 1.速やかに危険域から離れ 2.速やかに揚艇する 3.緊急避難場所に接岸する  出艇時は出艇基準を満たしていても状況の変化によって出艇基準を満たさなくなる場 合がある。クルーは常にそうした状況変化に注意し、危ないと判断すれば何よりも優 先して練習を中止し、すぐに揚艇することが大切である。その際、状況は加速度的に 悪化する、ということを常に意識するべきである。 (2) 監視者の対応 監視者が視界不良などの理由により、安全が確保できないと判断した場合、他の監視者に連 絡し、全クルーを揚艇させる。 なお、一時的に天候状況が回復しても、勝手に判断せず、練習を中止し速やかに揚艇。

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4.4 事故報告書の作成と活用 (1) 事故報告書の目的 事故報告書は、事故の状況(いつ、どこで、誰が、どういう状況で、どのような事故を)に ついてまとめることで、事故の原因と対策(再発防止策)を明らかにするとともに、同様の事故 を再び起こさないよう、現在及び将来の部員に対し、周知、徹底するために作成するものであ る。 (2) 事故報告書の作成 ①事故報告書は、事故事象の応急処置終了後、速やかに作成する。 ②事故報告書は、当該クルーの安全指導担当者の指導の下、クルーメンバーが作成する。 ③事故報告書のフォーマットは以下を使用する。 ・レベル 0 ・・・沈・ヒヤリハット報告書フォーマット(添付 4-3) ・レベル 1~4・・・事故報告書フォーマット(添付 4-4) レベル 2 以上の報告書には、艇等の破損状況の写真等を添付すること。(レベル 1 は必要に応じて) レベル 3 以上の重大事故に対しては、本フォームの事故報告は速報版とし、別途、 報告先(大学、日本ボート協会、遺族、OB、マスコミ)等に応じた報告書を作成す る。 ・記入例を添付 4-5 に示す。 ④事故報告書は以下の管理を行う。 ・事故報告書は、1 件ごとに付番し、台帳登録の上、ファイルに保管する。 ・事故報告書の主要記載項目について、データベース化を行う。 事故レベル、時期、時間帯、場所、使用艇、練習メニュー、等 (3) 報告、周知 ①事故報告は,表 4-2 に示す要領で報告し,部員への周知徹底をはかる。 表 4-2 事故報告書の報告・周知要領 レベル 報告分類 報告 部員への周知 ヘッドコーチ (社会人コーチ) 監督 部長 0 沈・ヒヤリハット報告 ○ ○ △ 掲示 1 事故報告 ○ ○ △ 同上 2 ◎ ◎ △ 3 重大事故報告 ◎ ◎ ◎ 臨時安全ミーティ ング 4 ◎ ◎ ◎ ◎:架電またはメール報告(即時:2 時間以内) ○:事故報告書の報告(週内送付またはコーチ会議での報告) △:議事録による定例報告(コーチ会議議事録)

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②事故後、早急にメーリングリストにて、以下を報告周知する。なお,件名には「事故報 告(レベルx)」と記載すること。 ①事故当事者 ②事故レベル ③日時 ④場所 ⑤状況 ⑥怪我の有無 ⑦艇・オールの損傷 ⑧原因と対策 ③レベルに応じた必要箇所へ報告し、下記の役職者のサインをもらった後、原本を事故報 告書管理者に提出、コピーを掲示して周知する。 レベル 0,1:安全指導総括者 レベル 2,3:監督 レベル 4 :部長 ④また、部員に周知、徹底をはかる。 (4) 事故報告書の活用 ①事故報告書及びデータベースは、(1)項の目的のほか、練習計画の作成、及び練習前ミ ーティングにおける KY(危険予知)活動の実施において積極的に活用する。 ②安全指導担当者及びコーチ、クルーメンバーは、練習前ミーティングにおいて、各練習 内容に対し、どのような危険な要因があるかを摘出し、その対策もあわせ、認識、確認 の上、練習を実施する。 ・練習前ミーティングでは、練習計画で摘出された危険要因に加え、その日の天候、水 路等の状況に応じた観点からの危険要因も摘出する。 (5) 事故報告のまとめ ①事故報告書管理者は、本書の見直しに際し、1年分の事故報告書をとりまとめ、事故の 分類、発生場所、要因等の分析を行い、得られた再発防止策を整理する。

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4.5 乗艇練習以外の事故防止 4.5.1 自転車走行中の安全について (1) 基本原則 ①道路交通法を守ること。 ・左側通行を守る。 ・歩道の走行に際しては、歩行者に十分注意すること。 道路交通法上は、自転車は軽車両であり、基本は車道を走ること。歩道で自転車通 行可の標識があれば、歩道の走行は可能となっている。 ②危険予知の運転と確認動作の励行を心がけること。 ③夜間走行中は必ず照明をつける(テールライトも装備し、明るい色の服を着、スポーツ バイクはヘルメットを着用)。 ④雨の日に、傘を差しながらの片手運転は厳禁。なお、雨の日は十分に速度を落とし、雪 の日の走行も禁止。 ⑤走行中の携帯電話の使用禁止。 (2) 監視中の事故防止策 ①自転車監視の基本は「スプリント&ストップ・ルック」。 伴走しながらのメガホンの使用禁止。 ・漕手を見ながらの走行は前方確認が疎かになり、歩行者との接触等事故の可能性があ る。 ②監視における石山サイド、瀬田サイドの選択は練習水域に応じ、危険の少ない側を選ぶ こと。 ③瀬田サイドの危険域 ・唐橋上の船だまり横は歩道がなく、路上駐車の車も多いため危険。この間については クルーの存在を忘れ、何よりも自己の安全確保を優先する。 ・同志社前から石山寺までは歩道が狭いため人との接触が多い。また、夏場は木も茂る ため視界も悪い。よって、この区間は自転車監視の基本に忠実になること。 (3) 石山~京都間の自転車通学中の事故防止策 ①通学路はできるだけ照明と人通りが豊富で、かつ歩道のあるルートを選ぶこと。 ・これは事故を避けるとともに、万一事故にあっても、速やかに発見されることを期待 するからである。 ②日没後の山中越えは、禁止する。

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5. 事故の拡大防止に対する具体的方策 ボート部では「たとえ事故を起こしても、重大事故(死亡事故)にしない」ために必要なものとし て、以下の規則(ルール)、マニュアル、安全知識等を定める。 5.1 平素からの準備事項 5.1.1 安全装備 (1) ボート部では、事故を起こさないため、あるいは、たとえ事故を起こしても、すぐに救 助ができるようにするため、艇及びモータには以下の安全装備をもって出艇する。 ①艇 ・救命具(乗員+1 ※冬季体制時以外の 1x,2x,2-は不要) (1x,2x,2-に乗る者で、泳げない者はライフジャケットを着用すること) ・ライト(トップ白・スタン赤 ※日の出前など暗いとき) ・スポンジ(乗員+1 ※強風、波浪時) ・ウォータプラグ ・ストレッチャーのヒールロープ(全艇) (かかとの浮きが 7cm 未満となるようにする) 【解説】 艇付きの救命具について、1x,2x,2-は艇に十分な浮力があるため、艇付きの救命具 は不要とする。泳げないもの、あるいは技量未熟者などは個人装着型の救命具を持 つ。 乗員 3 名以上の艇について、現行の艇では乗員分に相当する浮力を期待できないため 艇付きの救命具を安全装備として備える。なお、FISA の安全基準(浸水全没時でもシ ート上面は水面下 5cm 以内)を満足する艇は艇付きの救命具を不要とする。 ウォータプラグに不具合のある艇の出艇は認めない。 ②モータ (表 5.1-1 参照) (2) 安全装備の確認、及び艇の点検 ①艇の点検については、艇管理のルールに基づき運用する。 ②毎出艇前に以下を確認する。 ・艇 艇に傷は無いか、ネジはゆるんでいないか確認 【各漕手】 救命具がすぐに取り出せるか確認(1x、2x、2-は不要) 【各漕手】 航行灯の電池が切れていないか確認 【バウ、コックス】 ウォータプラグ(カンバスのフタ)密閉を確認 【バウ、コックス、漕手】 オアロックの緩み確認、【各漕手】 ・モータ 【モータマン】 航行灯の電池が切れていないか確認する。 船内に水が溜まっていないか調べ、水が入っていれば排水を行う。 サイドスカッパが閉められているか確認する。 ③毎年 1 回救命用具の健全性を確認する(11 月に定期チェック)。

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5.1.2 出艇状況表の整備 (1) 合宿所玄関には、以下の項目を記載した出艇状況表を常備する。 ①日にち、曜日、練習時間帯(朝、昼、晩) ②天候、気温、水温、風速、警報の有無及び発令された警報 ③出艇可能時間 ④出艇可能航行区域 ⑤安全当直者名、監視者名(定点 or 専属)、モータ運転(可能)者名 ⑥艇名、出艇クルー名(冬季のみ) (2) 安全当直者は出艇状況表を必ず練習前ミーティングまでに最新の情報に更新する。 (3) 安全当直者は上記①~⑤項については、練習日誌データベースに入力する。 練習日誌データベースは、通年の練習コンディションの把握のために記録するもの である。 (4) 安全当直者または安全当直者が任命した者は必ず責任を持って出艇、揚艇の確認をす る。 (5) 出艇状況表はいかなる場合であっても、他に転用、または移動してはならない。 5.1.3 緊急時対応・連絡先表の整備 合宿所玄関と電話の近くには、以下の緊急時連絡先表を掲示する。 (1) 重大事故の対応・緊急連絡先 ①救急 南消防署 077-533-0119 ②南郷出張所 077-537-0119 ③警察 大津水上派出所 077-525-1415 ④監督 ⑤ヘッドコーチ、社会人コーチ ⑥部長 ⑦学生部学生課課外体育担当 075-753-2513(2514) (2) 瀬田水域の団体の連絡先 ①琵琶湖漕艇場 077-545-2165 ②同志社大 077-545-0702 ③立命館大 077-543-3684 ④龍谷大 077-537-6069 ⑤滋賀経・教 077-524-4294 ⑥滋賀医科大 077-545-9348 (3) 地震時の対応・緊急連絡先 ①個人の対応 ・乗艇中に地震が起きた場合は直ちに橋脚などの落下する恐れのあるものや障害物から 離れ、また岸からも離れる。その後地震がおさまったら揚艇する。 ・艇庫にいる時は艇から離れて身を守り、避難できそうならば七郎広場へと向かう。 ・合宿所にいる時は机の下に隠れたり、本棚から離れたりするなどして安全を確保する。 火元の近くにいる場合、危険でなければガスの元栓を閉め直ちに離れる。危険な場合は

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まず身の安全を確保して、揺れが収まり次第元栓を閉める。ドアの近くにいる場合ド アを開ける。外へ避難できそうならば七郎広場へ向かう。 ②組織的対応 ・安全当直者は,人員の点呼を行い,全員の安否を確認する。当日在籍の人員数は,玄関 の人員駐在表に従う。負傷者等がいる場合は,速やかに部員に対し,応急処置の指示を 出す。なお,自ら以外に誰もいない場合を除き,安全当直者自身が応急処置作業をし てはならない。 ・安全当直者は,速やかに,部長,監督,主将,主務,副将の順番に第一報を入れる。 なお,地震の場合は被害が広範囲に及ぶことも考えられるので,連絡がつかない場合 は,次の人間に速やかに連絡をとる。 ・現場に部長,監督,主将,主務,副将,会計がいる場合,安全当直者の任務は第一報 の完了とその報告をその場にいる最も上位者に行うことをもって,完了とする。以後 の指揮は,現場にいる最も上位者(以後,「応急指揮者」という)が指揮をとる。 ・応急指揮者は,部員の生命安全の確保を最優先とし,部の資産の被害の把握(被害状況 の映像記録も含む),被害拡大の防止等に必要な処置をとる。 ③緊急時連絡先 ・大津市民病院 077-522-4607 ・地域医療機構滋賀病院 077-537-3101 ・大津赤十字病院 077-522-4131 5.1.4 安全当直者・監視マニュアルの整備 合宿所玄関には、安全当直者及び監視者の練習時における行動を示した表 5.1-2 を掲示す る。また、図 5.3-2 に連絡先を載せたものを電話の近くに掲示する。 5.1.5 緊急時選手マニュアルの整備 合宿所玄関には、選手が緊急事態に対応すべき行動をまとめた表 5.1-3 を掲示する。

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表 5.1-1 モータ(救助艇) 安全装備チェックリスト 確認日 年 月 日 確認者 R0.2 (H26/12/21) R0.1 (H18/03/01) 品目 必要数 現存数 備考 モータ (救助艇) ①救命胴衣 4 ②救命ブイ 1 ③バケツ 1 ④旗 1 ⑤ライト 1 ⑥信号紅炎 1 使用期限も確認 ⑦メガホン 1 ⑧オール 1 モータ操舵の補助 南郷全開時には 2 本もって行く。 ⑨監視対応表 1 表 5.1-2 ⑩紐 1 2 次災害防止用 ⑪携帯 - - (個人装備) ⑫バスタオル 1 冬季救助装備 ⑬レスキューシート 2 同上 ⑭着替え 一式 同上 ⑮水筒(お湯) 1 同上、選手に温かい湯を飲ませる。 ⑯湯たんぽ 1 同上、低体温症の選手の体を温め、 血行を良くする。

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表 5.1-2 監視対応表 出艇状況表を更新 練習日誌に記録 出艇の可否の決定 (安全指導総括者・安全指導担当者・コーチで協議) 安全確認ミーティング<冬季のみ> ①監視・エッセン担当で打合せ、要領及び各自の携帯電話番号を確認 ②当日のモータ担当とその携帯電話番号を確認 練習前ミーティング (各練習内容の危険要因の認識・確認) モータマン 陸監視 ①安全装備(表 5.1-1)の確認 ②サイドスカッパの確認 ③ウォータプラグの確認 ④ガソリン量の確認 ⑤モータの浸水量の確認 ①携帯電話の確認 ②メガホンの確認

出艇前

出艇前

練習後

①サイドスカッパをはずす

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表 5.1-3 選手緊急時対応表 浅瀬、構築物と接触・衝突した場合 ①怪我人、艇の状態をチェックする ②艇の損傷がひどい場合は救命具を装着 艇内水位が中指第 2 関節以上(4+/2 番、8+/4 番) になったとき ①緊急避難場所で揚艇・排水 ②帰還困難の場合、交代で救命具を装着 ③バウペアに漕がせ、緊急避難場所へ 他艇と接触事故を起こした場合 ①怪我人、艇の状態をチェック ②艇の破損がひどい場合、救命具を装着 ③衝突した他艇の連絡先を聞く 沈した時 ①泳ごうとしない ②艇を離れない ③笛や大声で助けを呼ぶ ④他艇が近づいた場合、大声・笛で知らせる 沈を発見したとき ①救命具を渡す ②絶対に助けに飛び込まない ③助けを呼ぶ

練習後

事故(沈・ヒヤリハットを含む)発生後 ①艇の損傷の確認 ②メーリングリストでの報告 ③報告書の作成 他艇と接触しそうになったとき ①大声で注意を促す ②接触の回避行動を取る

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5.2 練習監視・救助体制の整備 ボート部では、選手がたとえ事故を起こしても速やかな救助を行うことによって重大事故へと 拡大しないよう、練習監視・救助体制を整備する。 事故の拡大の速度が季節によって変わることから、練習監視・救助体制は以下のように季節に よって必要なものを定める。 5.2.1 共通事項 (1) モータによる救助体制(待機状態)については、5.2.3 項を参照。 (2) 重大事故や事故の規模が大きいとき、また、相手先がいる場合の事故等への対応のため、 部員全員が瀬田水域の団体の連絡先を把握しておく。 (3) 乗艇練習前、安全当直者が水温を測定する。 (4) 複数艇(3 艇以上)による相互監視とは、同じ艇速の複数艇(3 艇以上)が以下の条件を 守った上で、相互に監視しながら練習を行う状態である。 ・出艇、揚艇の時間を合わせること。 ・選手間でコミュニケーションをとり、視認できる距離を保つこと。 (どの選手間で、どのように相互監視を行うか事前に決めておく) ・一艇が事故事象になった場合、複数個所での事故を防ぐため全艇が練習を中断し、事 故対策モードとなること。この場合、事故を起こした艇以外の艇は、その場での安全 確保と船台への救助連絡に別れて対応すること。 (5) 琵琶湖漕艇場に行く場合は必ず監視をつける。 (6) 救助用モータは嵐、ゴムモータとする。救助可能なモータは、カタマラン、天地とする。 (7) クルーの出艇前に、監視者及びエッセン担当間で役割を確認し、連絡先を共有しておく。 (8) 4-/4x 艇はスピードが速いため重大事故に発展する可能性が高く、伴チャリもしくはモ ータの伴航を必須とする。 (9) 事故発生(沈含む)から救助完了までは練習を中断する。ただし、モータが複数台おり、 安全が確保できた場合、練習を再開してもよい。 (10) 舵手付き艇(2+除く)について、モータが船台待機のみの場合は防水処置を施した携帯 電話を艇に持ち込むことを条件に、航行可。 ・事故事象を起こした艇を発見したときは速やかにモータマンに連絡する。 ・自らが事故事象を起こした場合は、モータマンへの連絡を試みる。 ・琵琶湖漕艇場の電話番号を携帯電話に入れておく(tel:077-545-2165)。 (11) 漕歴が4年目を上回るものについては、4年目の冬季より指定の誓約書に必要事項を記 入の上、監視なしで乗艇可。(濃霧、吹雪、洗堰放流量半開以上、波浪、日没、その他 客観的に安全上危険な場合は不可) 5.2.2 季節ごとの練習監視・救助体制 5.2.2.1 秋季練習(水温 10.0℃以上、15.0℃未満) 秋季練習の期間は、夏季から冬季への移行期間であり、水温の低下をふまえ、以下の安全監 視・救助体制のもとで練習する。 (1) 秋季練習における練習監視・救助体制は、水温が 10.0℃以上、15.0℃未満であることを

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想定し、事故事象(沈を含む)発生から、30 分以内に救助可能な体制とする。 ・30 分の根拠は表 5.3-2 に記載の「水中で意識を保持できる時間」をもとに個人差や不測 の事態に備え、その半分の時間で救助すると決めたことによる。 (2) 監視体制は、事故事象発生から 10 分以内にモータマンに連絡可能なものとする。 ・舵手無し艇(2+含む)について、出動可能なモータが1 台の場合は水域を国道~セーヌ とする。 伴チャリ、もしくはモータの伴航がある場合はこの限りでない。 (3) 救助体制は 5 分待機とする。 5.2.2.2 冬季練習(水温 10.0℃未満の場合) 冬季練習の期間は水温が低くなる。そのため、沈などの夏場であればレベル 0 となるような単純 な事象が、死亡事故のような重大事故事象へと発展する。さらに練習計画上、1x や 2-などの舵手 無し艇での練習が多用される時期でもある。従って、事故事象の拡大防止のために、1 年で最も厳 重な練習監視・救助体制が必要となる。 (1) 冬季練習における練習監視・救助体制は、水温が 4.0℃以上、10.0℃未満であることに より、事故事象(沈を含む)の発生から 10 分以内に救助可能な体制とする。 ・水温が 4.0℃未満の時には出艇禁止とする(出艇基準参照)。 (2) 安全確認ミーティング ・監視対象者で打合せ、要領及び各自の携帯電話番号を確認、登録する。 (3) 航行水域、練習体制について ・舵手付き艇(2+除く)は防水処置を施した携帯電話を持ち込むこととする。この際、南 郷まで航行可。 ・舵手無し艇(2+含む)については、水域を国道~セーヌとする。 伴チャリ、もしくはモータの伴航があれば舵手付き艇と同じ扱いとする。 ・並漕練習は、監視者が目視可能な明るさになってからのみ可。 (4) 監視体制は、事故事象発生から 1 分以内にモータマンに連絡可能なものとする。 ①冬季練習時は救助用モータ 1 台と他に救助可能なモータ 1 台以上を水上即時待機、もし くは巡回とする。救助可能なモータ 1 台のみの場合は、水域を制限する(添付 4-2 を参 照)。 ②監視者による監視 ・監視者の装備:携帯電話(全員)、メガホン

携帯電話は着信音を最大にする。無い場合は誰かに借りる。ただし、借りる場合は、 迅速に連絡できる程度にはその携帯電話を使えるようになっていること。 ・最初のクルーが通過する前に、自分の担当場所、水域に待機する。 ③漕手による監視 ・救命具を持って出艇。 ・事故事象を起こしたものを見かけた場合には、救命具を膨らませて事故者に与えると ともに、手近な監視者に知らせる。 ・舵手付き艇が事故事象を起こした艇を発見したときは、速やかにモータマンに携帯電話 で連絡する。

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5.2.2.3 春季練習(春休み終了後~朝日レガッタ終了) 春季練習の期間は、冬季から夏季への移行期間とし、まだ水温が低いことを踏まえ、秋季練習と 同等の監視・救助体制の下で練習する。 なお、水温が 15.0℃以上となった場合は、夏季練習の監視体制で練習を行う。 5.2.2.4 夏季練習(朝日レガッタ終了後~夏休み終了) 夏季練習の期間は、水温が高い為、沈等のレベル 0 の事故事象が重大事故に発展する恐れは少な い。しかし、他団体を含め、艇が多くなる時期であるため、スピードの速い艇による衝突等の重 大事故の危険性が大きくなる。また、練習も個人練習よりはむしろクルーボートを中心としたも のとなる。これらを考慮して、以下の練習監視・救助体制とする。 (1) 夏季練習における練習監視・救助体制は、衝突等による重大事故の負傷者の応急処置を 速やかに行う観点から、事故事象発生から 30 分以内に救助可能な体制とする。 (2) 監視体制は、事故事象発生から 10 分以内にモータマンに連絡可能なものとする。 ・舵手無し艇(2+含む)について、出動可能なモータが 1 台の場合は水域を国道~セーヌ とする。 伴チャリ、モータの伴航がある、もしくは相互監視を行う場合はこの限りでない。 10 分以内の連絡が担保できないが、艇速が遅いため重大事故への発展の可能性は低 いとして複数艇(3 艇以上)による相互監視を許容する。 (3) 救助体制は 5 分待機とする。 新人 1x 練習時の救助体制は、水上即時待機とする。

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5.2.3 救助用モータの準備、運転 5.2.3.1 モータによる救助体制 (1) 共通 ①モータによる救助体制は、5 分待機、船台即時待機、水上即時待機の 3 通りとする。 ②モータには、運転を行うモータマン及び救助補助者 1 名が乗る。 ・モータマン及び救助補助者のうち、引き揚げる方が必ず男子であること。よって、女 子のみのモータ乗艇は不可。 ③必ず携帯電話を所持し、常に監視者からの電話をすぐに受けられ、かつ、合宿所に迅速 に連絡が出来るようにしておく。 ④部全体として、モータ免許所持者を毎年一定規模確保し、救助に必要な操船技術を身に つけておくこと。また、免許不要のモータを用い、免許所持者以外の部員も操船技術を 身につけておくことが望ましい。 (2) 待機モード ①5 分待機 ・5 分待機とは連絡を受けてから 5 分以内に船台から出動可能な待機状態である。 ・モータには、練習開始前に安全装備の積み込み及び 15 分間のアイドリングを実施す る。 ・モータマン及び救助補助者 1 名は合宿所にて待機し、監視者または安全当直者の指示で 出動する。 ②船台即時待機 ・船台即時待機とは連絡を受けてから即座に船台から出動可能な待機状態である。 ・モータには、練習開始前に安全装備の積み込み及び 15 分間のアイドリングを実施す る。 ・モータマンまたは救助補助者 1 名は船台にて待機し、監視者の指示で出動する。 ③水上即時待機 ・水上即時待機とは、練習水域中の適切な地点において、連絡をうけて即座に事故地点 に移動可能な待機状態である。 ・モータには安全装備を積み込み、アイドリング状態で待機する。 ・最初に漕手が待機地点を通過する前に必ずその場に待機する。 5.2.3.2 京大の保有モータと共通注意事項 添付資料のモータマニュアル参照

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5.3 緊急事態発生時の判断行動 5.3.1 事態当事者としての判断行動 緊急事態が発生したとき、事態当事者としてとるべき判断、行動について、表 5.3-1 にまとめ る。 表 5.3-1 緊急事態発生時の事態当事者としてとるべき判断・行動 事故項目 判断・行動 浸水による沈没・ 転覆 (風雨・高波) 1 独自の判断で泳ぎだしたりせず、オールを水平に保ったまま、コックス または救助艇が来た場合救助員の指示に従い行動する。 2 艇は水面下に浸かっても沈まないから、艇を離れない。 3 早期に救命具を装着する。 4 互いに励ましあい、冷静さを失わないように努めて救助を待つ。 5 自力で着岸可能と判断した場合、コックスもしくはクルーリーダーの指 示に従い、緊急避難場所または最寄の船台に着岸する。 6 捕まる場所がなくなるから艇は転覆させない。 他船艇との接触・ 衝突 1 怪我人がいないかチェックする。 2 艇の状態をチェックし、小さい穴は着衣などを詰めてふさぐ。 3 カップ、スポンジで排水する。 4 独自の判断で泳ぎだしたりせず、コックスの指示に従い行動する。 5 真二つになっても艇は沈まないから艇を離れない。 6 早期に救命具を装着する。 7 漕ぐか、漂流して、緊急避難場所または最寄の船台に着岸する。 8 衝突した他艇の所属団体名などを聞いておく。 浅瀬、構築物への 接触・衝突 <他船艇との接触・衝突の①~⑦項と同じ> 沈(落水) 1 泳ごうとしない。落水者はただ浮くことだけを考える。 2 コックスは艇を現場に寄せ、落水者に声をかけ落ちつかせる。 3 救命具を用意し、渡す。 4 助けに飛び込んではならない。 <冷水中に浸かっている場合> 1 艇を離れない。(笛の携帯は不要) 2 精神力を強く持つ。互いに励まし合う。 3 ゆっくり、大きく呼吸する。 4 服を脱がない。熱拡散防止体勢をとる。 (できるだけ体の中心が水につからないようにする。) <補足・参考> ・ コックスはクルーの状態、艇の状態などを随時確認し、適宜指示する。なお、コックスが危機、 または未熟の場合はクルーリーダーが指示をする。 ・ 小さい穴があいたときのために、穴を詰めることの出来るタオルを常備することが望ましい。 なお、着衣で穴をふさぐときは、その後の体温維持のことを考慮する必要がある。 ・ 2002.9.8 神戸大の実験よりスカルオールは浮力の足しぐらいにしかならず、スイープオールは 1 本でも 1 人分の浮力を確保できる(CONCEPT2、CROKER のオールの場合、ただし、オール長が可変 のものは長時間の浮力は期待できない)。 ・ 浸水により沈没した場合、バウペア(フォア)を漕がせ、残りはスタンに集まることはあまり効 果が期待できない、また、転覆の危険があるため、各シートから動かない。

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5.3.2 練習監視・救助者の判断行動 (1) 監視者 ①事故(沈を含む)を起こしている人を見つけたらすぐにモータに連絡する。 ・どの船に乗った ・誰が ・どこで事故(沈)しているか ②合宿所(安全当直者)にも上記を連絡 ・怪我等の出血がある場合は、救急車の手配を進言する。 ・万が一繋がらなかった場合には、エッセン担当に連絡する。 ③救助が来るまで事故を起こした人のそばを離れず、目を離さない。 ・他の艇とさらに事故を起こさないように周囲に注意を払い、必要なら声をかける。 ・京大艇に練習を中断するよう呼びかける。 ④モータが人命救助後、一時的に残された艇の保全、監視を行い、二次災害を防止する。 (2) 漕手 ①事故を起こしている人を見つけたらその場を離れず、救命具を投げる。 ②事故が起きたことを大声で周囲に伝える。 ③必要に応じて励ます等対応する。 ④事故発生(沈含む)から救助完了までは練習を中断する。 (3) 救助用モータ ①事故の連絡を受けたら(必ずすぐ電話を受けられる状態にしておく)全速力で現場へ向 かう。 その際、周囲の艇に救助に向かう旨をメガホンで断ること。 京大艇に練習を中断するよう呼びかける。 ②現場に到着すれば、まず、人命救助を行う。 ・事故遭難者の状況を見極め、必要な応急救護を行う。(詳細は 5.3.3 項参照) ・要救護者の人数が多い、もしくは人命に関わる場合は、まず、一番近くの岸に運ぶ。 ・その他の場合でもすぐに京大船台に運ぶ。 ③艇については二次災害防止のため、以下の処置を行う。 ・艇を川の端に寄せる。 ・艇にひもをくくりつけ、もう一方の端を陸に渡す。 冬場の軽度以上の低体温症など、人命救助で一刻を争う状況であるとき、人命救助 を最優先とし、艇はそのままにする。 なお、可能な場合、安全当直者の判断により、人命救助用モータとは別の艇回収用 のモータを出し、艇回収を迅速に行う。 ④事故をした人を合宿所に運ぶ。 ⑤その後、再び現場に向かい、艇を回収する。

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突然倒れた

とき

呼吸の有無確認 胸骨圧迫のみ 【胸骨圧迫法】 へ

着水による

心臓麻痺

胸骨圧迫のみ 【胸骨圧迫法】 へ

溺水、感電、

窒息

胸骨圧迫と人工 呼吸【溺者に対 する救護】へ

低体温症

症状の程度別対 処法【低体温 症】へ 5.3.3 人命救助のための応急処置 人命救助のための応急措置として、一般的な応急救護のほか、ボート部の独自の事情に即し た救助の措置法として、溺者に対する救護、及び低体温症に対する救護について以下に示す。 なお、冬季の落水事故において死亡する最大の原因は溺死ではなく体温低下による衰弱死であ る。 5.3.3.1 応急救護必要者の、場合別対処法の流れ 図 5.3-1 場合別対処法の流れ

負傷者の発見

二次災害の防止

→周囲の状況を確認し、危険であれば安全な場所へ移動

意識の確認

119番通報・AED手配を要請

→AEDは主務部屋、龍谷大学、立命館大学に設置している

AED の到着、使用

救急車の到着

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5.3.3.2 【胸骨圧迫法】 (1) 概要 ・脈、呼吸を確認 ・両手を重ねて乳首と乳首の間の平らな骨を垂直に 4~5cm 沈む程度に圧迫する。 ・肘をまっすぐにして体重をかけて、一分間に 100 回のリズムで続ける。 5.3.3.3 【溺者に対する救護】 (1) 溺者の兆候 ①インスティンクス 本能的な - 無言で口をパクパク ②ドロウィング 沈む ③レスポンス 反応 - バタバタしている手が、ゆっくり大きくなる ・この状態から、大人で 60 秒、子供で 20 秒で沈んでしまう。 (2) 救護の手順・・・胸骨圧迫(上記 5.3.3.2)と人工呼吸(下記(3))のコンビネーション (備考) ・呼吸停止 10 分で死亡率が 50%、30 分たてば殆ど生存が見込めない ・心臓停止 3 分で死亡率が 50% 、10 分たてば生存が見込めない (3) 人工呼吸 気道の確保 ①目的・意義 ・意識がなくなると、下あごの筋肉がゆるみ、舌がのどに落ち込んで気道を塞ぐ。 ・呼吸が 3~4 分以上止まってしまうと、命に関わる。 ②気道の確保(頭部後屈あご先挙法) ・下あごと額に手をかけて、頭を静かに後ろにそらせる。 ・異物や分泌物による気道閉鎖が考えられる場合は取り除く。 ③体位管理 ・体位管理とは負傷者の呼吸循環が安静に保たれ、心肺蘇生法が適切に行える体位。 ・呼吸を確認して、頭をそらせて横向きにし、下あごを前に出し、肘と膝を軽く曲げ、 負傷者が後ろに倒れないようにする。 注意 意識を失っている人をうつぶせに寝かせてはならない。 ④概要 人工呼吸は、あご先挙法で気道の確保を行った後、救助者が 頭側においた手で患者の鼻をつかみ、大きく息を吸いこんだ後 に口を患者の口にぴったりと当てて、患者にゆっくり息を吹き込 む。患者の胸がふくらめば(軽く膨らむ程度の吹き込み)、息が吹 き込まれた証拠である。手と口を離して息が吐き出され、胸がも とに戻ったら、再び息を吹き込む。胸部圧迫 30 回につき 2 回の ペースで行う。 ⑤ポケットマスク ・口対口人工呼吸については、あくまで緊急事態でやむを得なく実施するもの。 ・呼吸停止に備えてと考えられるのであれば、ポケットマスクを購入し装備する。 救助者の感染予防に大変有効。

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人工呼吸時に発生するかも知れない胃内容物の逆流に対してもフィルターが付いて いるため、救助者の口に入ることはない。 代表的なメーカーはレールダル社、アンブ社で、およそ 3000 円で購入できる。 5.3.3.4 【低体温症】 (1) 低体温症の概要 ・冷水に浸ると、最初に体が内蔵部の温度を下げないように働くため、腕や足への血液 循環が止まる。このため、冷水の中にいる者はわずか数分後には自由に泳ぐことが困 難となる。また、余分な血液は全て内蔵部に集中するので、腎臓が水分過多であると 誤反応し、頻尿過多となって必要な水分や塩分が失われ、この結果、体の震え、手足 の冷え、脳への血液循環不足、脱水症状等を起こす。 (2) 低体温症の特徴 ・安静にしていても大量のエネルギーを消費する ・早い時期から判断力がおちる ・ふるえがおこらなくなると加速度的にすすむ ・単なる疲労と区別が困難 ・低体温症の知識が普及していない(よく知られている医学書にも間違った対処法が書か れていたりする) ・恒温動物の体が、通常の温度よりも下がっている場合に発生 ・軽度であれば自律神経の働きにより自力で回復する ・重度の場合や自律神経の働きが損なわれている場合は、死に至る (3) 低体温症の症状 ・前兆(36.5~35 度)…意識は正常。手の細かい複雑な動きができない。 さむけ、ふるえがはじまる。 ・軽症(35~33 度) …無関心状態、すぐ眠る。 歩行よろめく。 口ごもる話しぶり。 ふるえ最大。 ・中等症(33~30 度)…①33~32 度 会話がのろい。閉じこもる。 逆行性健忘。 意思不明。運動失調。 ②31~30 度 錯乱状態。支離滅裂。 しだいに応答しなくなる。 震え停止。歩行や起立は不可能。 ・重症(30 度以下) …①30~28 度 半昏睡状態。瞳孔散大。 心拍、脈拍微弱。 呼吸数は半分以下。 ②28~25 度 昏睡状態。心室細動。 ③25 度以下 腱反射消失。仮死状態。 ④20 度以下 脳波消失。心停止。

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(4) 低体温症の予防 ・水分、栄養をこまめにとる。 脱水、低栄養は低体温になりやすくする。水分はできれば電解質の入ったもの(水 1 リ ットルに塩 5g)を、栄養は糖質(果物、カステラ、クッキー、キャンデーなど)、炭水 化物(おにぎり、もち、パン、バナナなど)が望ましい。 (5) 低体温症の対処法 ①共通対処法 ・まず、風雪・風雨をさける。 ・濡れた衣服を乾燥したものに取り替える ・毛布やシュラフで患者を覆う。 ・脇の下やそけい部(股下)等の、太い血管(主に静脈)がある辺りを湯たんぽなどで暖 め、ゆっくりと体の中心から温まるようにする。 ・(2)に基づき、程度の判断をし、以下の対応をする。 ②軽度の低体温症の対処法 ・とにかく体を温める。 ・温かい炭水化物を含んだ飲み物を少しずつ、ゆっくりと与える。おすすめは葛湯やお 汁粉。 ・アルコール、カフェインは厳禁。アルコールは血管を拡張させて熱を奪い、カフェイ ン(コーヒー、紅茶)は利尿作用で脱水を助長してしまう。 ・ニコチン(タバコ)は血管を収縮させて凍傷になりやすくするのでこれも厳禁。 ③中度の低体温症対処法 ・病院に行く前に体表加温してはいけない。中等度以上の低体温症に対して体表面を加 温すると冷たい血液が心臓に戻って中心温度が下がり、ショックをおこす。 ・ちょっとした刺激で不整脈をおこすので、極力体を動かさない。 ・着替えは周りのものがすること。 ④重度の低体温症対処法 ・無理に動かすと、手足の冷たくなった血液が、急激に内臓や心臓に送られるため、運 動させず安静とする。 ・これ以上体温を下げないという気持ちで行う。 ・無呼吸かゆっくりした呼吸だったら人工呼吸(マウスツーマウスで通常よりゆっくり、 少なめに)を始める。 ・心拍がなければ心臓マッサージを行う。そして続ける。最重症の低体温症では心拍数 が 1 分間に 2~3 回のこともあり、1 分間くらいは頸動脈の脈をふれて確認する。 ・3 時間半以上も心肺蘇生術を続けて後遺症もなく回復した人もおり、絶対にあきらめて はいけない(小児では特に回復の可能性が高い)。 (6) 落水したときの心構え(一般的な事項も含む) ①まず落ち着きまわりの状況を確かめる。 ②まだ数時間もあることを思い出す/むやみに暴れて体力を消耗しない/船に戻れるか/ 岸からの距離はどうか/まわりの船はどうか/体を休めるぐらい大きな漂流物はないか /ホイッスルはあるか/自分を発見されやすくするもの(長い棒、目立つ布切れなど)

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はあるか、利用できそうな(ロープなど)漂流物は何でも利用する。 ③浮遊物に近づく場合以外は泳がない。 ④服・靴は脱がない。 ・人体を裸のまま水中に浸しておく場合は、同じ条件で空気中にある場合の 25 倍の速さ で体温が低下していく。 ・また、水中でも衣類を着用する場合は着用しない場合に比べ生存時間を 1 時間以上も増 すことが出来るので衣類を脱いではならない。 ・また厚手の雨具の着用は、水中での意識を保持出来る時間を倍にする。 ・救命胴衣の着用は人体を浮かすためだけでなく、不必要なエネルギーの消耗と多くの 体温の喪失を防ぐのに非常に有効である。 ・服装ごとの意識保持時間を表 5.3-2 に示す。 ⑤絶対助かる!堅い意思を持つ。 ⑥生存時間を 50%のばす水中安静姿勢になる。 ・両ヒジをわき腹にしっかりとつける。 ・腕を胸の前で救命胴衣を抱えるように組む。 ・両足を組んでひざが救命胴衣につく位に折り曲げる。 ・首を伸ばして水面上に上げる。 表 5.3-2 服装により違う意識保持時間 表 5.3-3 救命胴衣の着用と、水中での動作の違いで変わる生存時間、水温 10℃ 救命胴衣の着用 動作 生存時間 × あえぎながら泳ぐ 1.5 × 立ち泳ぎ 2.0 × 泳ぐ 2.0 ○ 静かに浮いている 2.7 ○ 安静姿勢で浮いている 4 水中で意識を保持できる時間 水温 5℃のとき 水温 10℃のとき 裸 0.5 時間 1 時間 通常衣類着用 1.2 時間 2 時間 オイルスキンコート(厚み5mm)着用 2.5 時間 4 時間 乾燥衣類着用 5.7 時間 -

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表 5.3-4 低体温症者に対する対応 5.3.3.5 熱中症への対処法 (1) 熱中症の概要 ・熱中症とは、体の中と外の"あつさ"によって引き起こされる、様々な体の不調であり、 失調状態から、全身の臓器の機能不全に至るまでの、連続的な病態とされている。 ・熱中症というと、暑い環境で起こるもの、という概念があるかと思われるが、スポー ツや活動中においては、体内の筋肉から大量の熱を発生することや、脱水などの影響 により、寒いとされる環境でも発生しうる。 (2) 熱中症の予防 ・暑い時期の運動はなるべく涼しい時間に行う。 ・強制的に水分補給できる時間を設ける。 ・練習前後の体重を計り、次の練習前までに減った分の 80%以上が回復していなければ 運動の量を減らす。 ・7 月下旬から 8 月上旬の梅雨明け直後に特に多く、また、夏季以外でも急に暑くなった ときなどにも起こる。これは、体が暑熱環境や、体の発熱に馴れていないためで、急 に暑くなったときなどは運動を軽くおさえ、体を暑さに少しずつ馴らしていく(馴化) 必要がある。 ・具合が悪くなった場合には、早めに運動を中止する。 ・気温が急激に上がった日や、休み明けは熱中症になりやすいので、十分に注意する。 (3) 熱中症の対処法 ・意識の状態を確認する。意識が無い、反応が鈍い場合は救急車を呼ぶ。 ・涼しい場所に移動させ、安静にさせる。 ・意識がはっきりしていれば、水分補給を行う。 軽度 救助 意識は? 震えは? ある ない 中度・重度 ①濡れている服を着替えさせる ②湯たんぽで大静脈から暖める ③お湯を飲ませる ④急速加温に注意し、体を温める ①救急車を呼ぶ ②毛布で包み、体を動かさない ③温かい場所に移動させる ④必要に応じ、心肺蘇生

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・以下の方法で、寒いと訴えるまで冷却する。 ・氷、氷嚢などで腋下動脈(両腕の腋の下にはさむ)、頚動脈(首の横に両方から当てる)、 大腿動脈(股の間にあてる)に当てて、血液を冷却する。 ・衣類をできるだけ脱がせて、体に水をふきかける。その上から、冷水で冷やしたタオ ルで全身、特に手足(末端部)と体幹部をマッサージする。風をおこすようにうちわ、タ オル、服などで送風する。使用する水は冷たいものよりも、常温の水もしくはぬるい お湯が良い。 5.3.4 二次災害の発生防止 二次災害とは、「最初に起こった災害に引き続いて、それから派生する別の災害」である。漕手、 救助者が二次災害を防ぐために注意すべきことを以下に示す。 表 5.3-5 二次災害の種類と対応策 想定される二次災害 対応策 漕手 ・ 事故現場への他船艇の侵 入に伴う接触・衝突 ・ 沈、事故を起こしたら、他艇を巻き込 んでしまわないよう周りに注意して大 声で注意を呼びかける。 ・ 近くにいるものが注意を喚起する。 ・ 救助中に別の場所での事 故事象の発生 ・ 自艇の安全を確保しつつ待機。 救助者 ・ 救助者の落水 ・ 救助中に自分が沈してしまわないよう 注意する。 ・ 事故現場への他船艇の侵 入に伴う接触・衝突 ・ 他艇に注意して、大きな声で呼びかけ る。 ・ 落水者、艇のモータのス クリューへの巻き込み ・ モータのスクリューが人や艇、オール などを巻き込んでしまわないように注 意する。

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5.3.5 事故時の連絡体制 事故発生時の連絡体制を図 5.3-2 に示す。 図 5.3-2 連絡体制 事故事象の発生 発見者(監視者またはコーチ) ②合宿所:安全当直者 ⑤部長 事故発生~現場到着まで 冬 :10 分 春秋:30 分 夏 :30 分 冬 :水上待機 春秋:5 分待機 夏 :5 分待機 ①モータマン ①受入準備:(風呂は事前準備) ②事故レベル判断 ①レベル 3:状況判断し、事故対策 本部の設置を部長に進言 (レベル 4 は自動的に設置) ②事務局長(担当社会人コーチ)を指名 ①事故対策本部の設置を宣言、召集 レベル 2 (2 時間以内) ③監督、④HC レベル 3 以上 (即時) ④監督、HC ③救急車、警察 ⑦学生部 ⑥ご家族

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5.4 安全訓練 ~パニック防止のための方策~ 安全確保に向けた取組には、以上に記載したマニュアルやルール整備、安全教育に基づく安全知 識の取得や意識の向上、安全監視・救助体制の整備などに加えて、それらが緊急事態になった際 に、実際にきちんと機能することが重要である。そのためには、平常より、個人のレベル及び組 織レベルの両面で、事故被害の拡大防止のための取組みが可能となるよう、訓練を行う必要があ る。 ボート部では、以下の訓練を行う。これらの訓練の詳細は、安全指導総括者または安全指導総括 者の指名するものが立案し、指揮して実行する。 (1) シングルスカルの沈・及び復活訓練、着衣水泳訓練 ①目的:沈(落水)時の選手のパニック防止と復活練習、着衣水泳の体験 ②対象:新人 ③時期:シングルスカルに最初の乗艇時 ④内容:実際にシングルスカルで沈をさせ、復活させる。 5 分以内で復活できるまで何度も実施する。 また、沈復活ができなかった場合に、艇に掴まり、上半身が水面から出るように する訓練も実施する。 (2) 沈没実験 ①目的:大雨、高波の理由で艇が沈没の危機に瀕した際、パニックに陥ることなく、選手、 コックス(クルーリーダー)それぞれの立場で、その際の行動を理解し、実行できるよ うになるため。 ②対象:新人 ③時期:琵琶湖周航前 ④内容:ナックルまたは、古くなったシェル艇を用いた、浸水、沈没実験及び避難訓練を 実施する。 (3) 救助艇による救助訓練 ①目的:免許の試験で行うブイの救助だけでなく、モータのスクリュー等で人を巻き込む ことなく、実際に人の救助ができるようになるため。 ②対象:小型船舶免許保有者及び救助艇に同乗する可能性ある者 ③時期:11 月 ④内容:シングルスカルを船台近傍にて沈させ、実際に救助する。 (4) 通報連絡訓練 ①目的:通報連絡の手順、内容をよく理解し、即座にできるようになるため。 ②対象:安全当直者、監視者、モータ、社会人コーチ(ヘッドコーチ)、監督、部長 ③時期:6 月 ④内容:事故が発生した、という想定の下、通報連絡訓練を行う。

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(5) 応急救護訓練 ①目的:人命救護に必要な応急救護について、実際に出来るようにするため。 ②対象:3 回生及び 1 回生 ③時期:それぞれ 9 月及び琵琶湖周航前 ④内容 ・応急処置の基礎知識・119 番通報要領、水難事故防止・救助について ・応急手当啓発ビデオ上映 ・心肺蘇生法実技講習 ・心肺蘇生法テスト ⑤講師:大津市消防局南消防署 消防員に依頼 ・手続き:実施日の 2 週間前までに申し込み。申込用紙は消防署窓口。 (6) 総合事故対策訓練 ①目的:重大事故発生時の対応についてよく理解し、実行できるようにするため。 ②対象:部員全員 ③時期:冬季練習開始時 ④内容:練習中に重大事故が発生した、という想定の下で以下の訓練を行う。 ・事故遭難者役の選手が事故(重大事故)の発生を宣言 ・重大事故発見者が監視者へ連絡 ・モータマンの救助活動の実施 ・応急救護 ・通報連絡 ・事故対策本部の設置

表 5.1-1  モータ(救助艇)  安全装備チェックリスト                                    確認日    年    月    日    確認者                    R0.2 (H26/12/21)  R0.1 (H18/03/01) 品目 必要数  現存数 備考 モータ (救助艇) ①救命胴衣 4 ②救命ブイ 1 ③バケツ 1 ④旗 1 ⑤ライト 1 ⑥信号紅炎 1 使用期限も確認 ⑦メガホン 1 ⑧オール 1 モータ操舵の補助 南郷全開時には 2
表 5.1-2  監視対応表      出艇状況表を更新 練習日誌に記録  出艇の可否の決定  (安全指導総括者・安全指導担当者・コーチで協議) 安全確認ミーティング<冬季のみ>  ①監視・エッセン担当で打合せ、要領及び各自の携帯電話番号を確認 ②当日のモータ担当とその携帯電話番号を確認 練習前ミーティング (各練習内容の危険要因の認識・確認) モータマン 陸監視 ①安全装備(表 5.1-1)の確認 ②サイドスカッパの確認 ③ウォータプラグの確認 ④ガソリン量の確認 ⑤モータの浸水量の確認 ①携帯電話の確認
表 5.1-3  選手緊急時対応表  浅瀬、構築物と接触・衝突した場合  ①怪我人、艇の状態をチェックする  ②艇の損傷がひどい場合は救命具を装着  艇内水位が中指第 2 関節以上(4+/2 番、8+/4 番)になったとき ①緊急避難場所で揚艇・排水 ②帰還困難の場合、交代で救命具を装着 ③バウペアに漕がせ、緊急避難場所へ  他艇と接触事故を起こした場合 ①怪我人、艇の状態をチェック  ②艇の破損がひどい場合、救命具を装着 ③衝突した他艇の連絡先を聞く  沈した時  ①泳ごうとしない  ②艇を離れない  ③
表 5.3-4  低体温症者に対する対応  5.3.3.5 熱中症への対処法  (1) 熱中症の概要    ・熱中症とは、体の中と外の&#34;あつさ&#34;によって引き起こされる、様々な体の不調であり、 失調状態から、全身の臓器の機能不全に至るまでの、連続的な病態とされている。  ・熱中症というと、暑い環境で起こるもの、という概念があるかと思われるが、スポー ツや活動中においては、体内の筋肉から大量の熱を発生することや、脱水などの影響 により、寒いとされる環境でも発生しうる。  (2) 熱中症の予防

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