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術後急性肺虚脱症の一例
(腎臓摘出後)
日曹高岡病院外科 宮 本 嘉 七 郎 民 野 . 孜
金沢大学医学部第一外科教室(主任 ト部美代志教授)
北 ・野 勝
(昭和32年7月8日受附)
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緒
私達はさきに頸動脈球摘出後における急性肺虚脱症 について報告したが,今回はからずも腎臓摘出術後に おける急性肺虚脱症を再び経験したので報告する.
症 例 本○与○,42歳,男,農業.
主訴腰痛及び血尿
現病歴 昭和24年4月頃より腰痛と共に血尿を来た し同時に右腎臓部に鈍痛を訴える.昭和26年8月来院 しレ線単純撮影で右腎臓腎蓋部に示指頭大の結石陰影 を証明した.この頃から血尿は認あなくなり単に右腎 臓部に鈍痛のみを訴えるようになり現在に至ってい
る.
家族歴 特記すべきことなし.
既往歴 27歳の時淋疾を患いたる以外に著患を知ら
ない.
現 症 顔貌正常,意識清明,体格強壮,皮下脂肪 の発育良好,皮膚梢ミ湿潤,呼吸整,胸腹式.脈搏緊 張良,整食慾良,便通正常.最高血圧120mmHg,
最低血圧70mmHg
血液所見 特別の所見なし.
言
尿所見 特別の所見なし.
尿所見 潜血反応陽性.集卵法によって十二指腸虫 卵を証明している.
腎臓機能検査
1)経静脈性腎孟撮:影法によって右側腎臓腎蓋部に 示指頭大の結石陰:影を証明する.左側腎臓は正常であ
る.
2)Indigocarmin試験法.左側腎臓からはIndigo・
carmin注射後3分30秒で排泄を開始するが右側腎臓 からは色素の排泄は全く認められない.
手 術 以上の所見.特に腎臓機能検査によって右 側腎臓結石の存在及び左側腎臓が右側腎臓の機能廃絶 を完全に代償していることを確認し,手術は先ず右側 腎臓の結石摘出を第1義とし,若し摘出不可能な場合 には右側腎臓摘出術の決行を考慮に入れて実施した.
手術術式は並木氏法による.型の如く腎臓の脱臼を起 さしめ,腎門部に向って触診によって結石の検索を行 った回忌釜部の輸尿管起始部の近くに抵抗を触れたの で更に穿刺針によって結石の存在せることを確認し
【124】
宮本、民野、北野論文附図
左肺全野の陰影欠損
術後急性肺虚脱症の一例 1209
た.次いで腎門部の脂肪組織を出来るだけ剥離し,腸 鉗子を以って腎血管を挾み,腎実質に切開を加えたと ころ腎静脈は完全に閉鎖したと思われるが腎動脈は閉 鎖不完全のためか腎実質の欝血を来たし出血甚だしか ったので腎摘出術に移行した.
術後経過 術後1日目は体温最高38.2。Cであり午 後に至って2回呼吸困難を認あた.2日目は体温は 37。C台に下ったが呼吸困難は依然時々認める.術後
3日目から体温は再び上昇し38。Cから39。Cの間を 稽留するようになり,呼吸困難iは益々増強してきた.
術後より強心剤,リンゲル氏液等の注射及び輸血を毎
日行って血圧は最高125mmHg,最低110mmHgを
維持している.軽咳と共に時々緑褐色の濃厚な疾を喀 出する.他覚的には右上肺野に気管枝炎の所見を認め
る.また右側肺肝境界は第5肋間にある.初めこの軽 度の肺肝境界挙上は右側腎臓摘出後の創内の後出血或 いは分泌液潴溜によって右上腹部内臓を圧迫し,その ため横隔膜挙上を起したものかと考えた.また術後肺 炎及び創内感染を警戒しペニシリン1日30万,オーレ オマイシン1日500mgの連用を行った.しかし症状
は緩解の徴なくその後却って呼吸困難iは益々増強し,
脈搏も熱型に伴って増加を認め,顔面の紅潮,多:量の 発汗等を認めるようになった.呼吸困難に対しては充 分な酸素吸入を続けた.術後7日目は全身状態最も悪 く体温39。C脈…搏1分間134,緊張弱く,呼吸は努力 性の鼻翼呼吸著明となり1分間45,血圧は最高114m mHg最低90mm:Hgである.他覚的胸部所見として 左上肺野に打診上短濁音を証明し,聴診上では呼吸音 の消失を認めた.心臓の内側縁は胸骨左縁,上縁は左 第2肋間,外縁は左側乳腺上にある.また胸部の単純 レ線影撮を行ったところ左側全肺野の陰影欠損を認 め,縦隔膜は左方に強く牽引されている.右側におけ る横隔膜の挙上は不明である.斯くして術後急性肺虚 脱症の確診を得たのである.術後9日目になって体温 は37。C台に下降し,脈搏も次第に緊張を増し,数も 1分間83となり,血圧も120mmHgとなった.この 日から呼吸困難も消失し一般状態は著しく好騨してき た.10日後には体温,脈搏,血圧等は全く正常に復し てきた.患者は術後23日目に全治退院した.
結
本症例は右側腎臓摘出後に続発したものであり,術 後7日目に胸部の物理学的所見及びレ線検査によって
論
初めて左肺に高度の急性肺虚脱症の確診を得た.