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「書くこと」の指導と評価

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Academic year: 2021

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平成 25 年度から年次進行で実施される高等学校学習指導要領は,生徒の思考力・判断力・表現力 を言語活動を通して育むということが明示され,言語活動の充実が強調されています。授業における 言語活動の充実は,今後もさらに推進していかなければなりません。 また,学習評価を改善し適切なものとするため,国立教育政策研究所から「評価規準の作成,評価 方法等の工夫改善のための参考資料」(平成 24 年3月)が公表されました。 新学習指導要領を踏まえた授業改善のために「指導と評価の計画」を,平成 24 年度初任者研修受 講者,土曜教師セミナー受講者,教育センター指導主事の事例をもとに作成しました。授業改善の参 考として役立てていただければ幸いです。 平成25年3月 香川県教育センター

指導事例一覧

番号 科目名 言語活動の特色 単元名 指導事項 1 国語総合 東日本と西日本の違いを調べ,対比を 利用した意見文を書く事例 「水の東西」をもとに意見文を 書こう ・「書くこと」の (1)のエ ・「伝統的な言語 文化・・・」の(1) のイの(イ) 2 国語総合 情景や心情の描写を取り入れて,詩歌 をつくる事例 詩歌を書くことを通じて,自分 の生き方について考えよう ・「書くこと」の (1)のエ ・「伝統的な言語 文化・・・」の(1) のイの(イ) 3 国語総合 読み取った情報をもとにその後の物 語を創作する事例 古典(古文)を読み深め,物語 の続きを考えよう ・「読むこと」の (1)のウ ・「伝統的な言語 文化・・・」の(1) のアの(イ) 4 国語総合 和歌を現代語訳してその歌に詠まれ た心情を理解し,さらにその歌を英訳 することで,言語の違いと解釈の違い から,文化について考える事例 和歌を三つの言語で味わおう ・「読むこと」の (1)のア ・「伝統的な言語 文化・・・」の(1) のアの(ア) 5 国語総合 唐詩や史話に表現された情景や心情 を短歌にする事例 漢詩文の内容を短歌にしてみ よう ・「読むこと」の (1)のウ ・「伝統的な言語 文化・・・」の(1) のアの(イ) 6 国語表現 小説の一部分を選び,班でオーディオ ドラマを作成する事例 小説を脚本化し,オーディオド ラマを作成しよう ・内容(1)のエ ・内容(1)のカ 7 現代文B 学校図書館を活用し,身近な環境問題 について調べ,発表する事例 身近な環境問題について,自分 の考えを深めよう ・内容(1)のウ ・内容(1)のオ 8 古典B 図書資料やインターネットで調べた ことをまとめ,発表する事例 歴史物語に描かれた人物につ いて調べることを通して,読み を深めよう ・内容(1)のウ ・内容(1)のア 9 古典B 課題に応じて情報を集めてまとめ,発 表する事例 漢詩の解釈を通して,作者の心 情,中国の自然を想像しよう ・内容(1)のウ ・内容(1)のオ 10 古典B 屈原,漁父それぞれの立場でディベー トを行う事例 様々な考え方を通して,自分の 人生を考えよう ・内容(1)のウ ・内容(1)のエ

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事例1:「書くこと」の指導と評価

1 科目名・単元名 国語総合・「水の東西」をもとに意見文を書こう 2 単元の目標 ・ 優れた表現に接してその条件を考えたり,書いた文章について自己評価や相互評価を行ったり して,自分の表現に役立てるとともに,ものの見方,感じ方,考え方を豊かにしようとする。 (関心・意欲・態度) ・ 優れた表現に接してその条件を考えたり,書いた文章について自己評価や相互評価を行ったり して,自分の表現に役立てるとともに,ものの見方,感じ方,考え方を豊かにする。 (書く能力)(B「書くこと」の(1)のエ) ・ 文や文章の組立て,語句の意味,用法及び表記の仕方などを理解し,語彙を豊かにする。 (知識・理解)(〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕の(1)のイの(イ)) 3 取り上げる言語活動と教材 (1)言語活動 東日本と西日本の違いを調べ,対比を利用した意見文を書くこと。 (2)教材 山崎正和「水の東西」 4 単元について 「水の東西」は高校1年生の冒頭で学習する評論文である。文章としては,中学校の説明文と比 べると格段に難しい。東洋と西洋の比較文化論であるという点から文章の構成を理解させたい。そ の上で,「水の東西」の構成を利用し意見文を書き,情報をもとに自らの意見を論理的に展開する 方法を生徒に学び取らせたい。また,自らの意見を持つことの大切さも実感させたい。 5 具体的な評価規準 関心・意欲・態度 書く能力 知識・理解 表現の仕方についての評価を 通して得たことを,論理の構成 や展開を工夫して書くことに生 かし,説得力のある文章にしよ うとしている。 表現の仕方についての評価を 通して得たことを,論理の構成や 展開を工夫して書くことに生か し,説得力のある文章にしてい る。 書くことに必要な文章の組立 て,語句の意味,語句の用法につ いて理解している。 6 単元の指導と評価計画 次 学習活動 言語活動に関する指導上の留意点 具体的な評価規準と評価方法 1 ○学習全体の見通しを持つ。 ○「水の東西」の内容を理解す る。 ・この文章が東洋と西洋の文化比 較論であることを確認させる。 ・評論の「対比の構造」を整理し ながら,筆者の主張を的確に読 み取らせる。 【評価規準】 ・書くことに必要な文章の組 立て,語句の意味,語句の 用法について理解している。 (知識・理解) 【評価の方法】 ・「行動の確認」 「記述(ノート)の確認」 2 ○「水の東西」の内容をもとに 意見文の書き方を確認する。 ・「序論―本論―結論」という論 の流れや,接続詞の使い方を確 認させる。 ・出典の記し方など,引用の方法 を確認させる。 ・グループ内,クラス内で話合い をさせる。 【評価規準】 ・書くことに必要な文章の組 立て,語句の意味,語句の 用法について理解している。 (知識・理解) 【評価の方法】 ・「記述の確認」

「水の東西」をもとに意見文を書く

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3 ○東西の文化の違いについて, 参考資料等を用いて調べる。 ・学校図書館を利用し,調べに当 たらせる。インターネットも活 用してよいことを伝える。 ・ここでの活動は,個人での調べ 学習を行い,グループ活動は不 可とする。 ・なるべく具体的な例を提示でき るよう指示する。 【評価規準】 ・表現の仕方についての評価を 通して得たことを,論理の構 成や展開を工夫して書くこ とに生かし,説得力のある文 章にしようとしている。 (関心・意欲・態度) 【評価方法】 ・「行動の分析」 4 ○意見文を書く。 ・一週間ほどの期間を設け,残り の調べ学習は宿題とする。 ・提出後,教師が添削して返却す る。その時,生徒の意見自体は 否定せず,論理の整合性などの み添削する。 (ワークシート①②使用) 【評価規準】 ・表現の仕方についての評価を 通して得たことを,論理の構 成や展開を工夫して書くこ とに生かし,説得力のある文 章にしている。(書く能力) 【評価方法】 ・「記述の分析」 5 ○意見文を校正する。 ・添削された意見文を読み,それ をもとに,生徒自身が意見文を 推敲して,書き直すようにさせ る。 ・添削をもとに,更に説得力のあ る文章を目指させる。 ・近くの生徒などと交換し,感想 を言い合わせる。 ・相手の意見文に対する否定的な 感想は控えるように指導する。 【評価規準】 ・表現の仕方についての評価を 通して得たことを,論理の構 成や展開を工夫して書くこ とに生かし,説得力のある文 章にしようとしている。 (関心・意欲・態度) 【評価方法】 ・「記述の分析」 ・「行動の分析」 6 学習指導要領との関連 本事例の指導事項は,次のとおりである。 エ 優れた表現に接してその条件を考えたり,書いた文章について自己評価や相互評価を行ったり して,自分の表現に役立てるとともに,ものの見方,感じ方,考え方を豊かにすること。 「国語総合」内容「B書くこと」の(1) この指導事項を指導するのにふさわしいと考えた言語事項は次のとおりである。 イ 出典を明示して文章や図表などを引用し,説明や意見などを書くこと。 「国語総合」内容「B書くこと」の(2) 7 言語活動充実の工夫 ○ 評論文(意見文)の構造・要素を理解する 本事例の指導では,意見文を書く上での見本として「水の東西」を提示している。それによって書 くことが苦手な生徒であっても,「水の東西」の構成を利用して意見文をまとめることができ,書く ことへの抵抗感が和らぐものと思われる。また評論文の読解を通して,「書き手の立場を明確にする こと」「意見や主張が明確で,しかも客観性を持っていること」「意見や主張を支えるだけの事実や 体験が提示されていること」など,説得力を持ちうる文章の必要要素も確認することができる。後日, 「水の東西」の文章構造に生徒自ら新たな例を当てはめて文章を書くことで,意見文の構造が復習で きる。 ○ 調べた情報を取捨選択し,まとめる 第1次で捉えた東西の違いをもとに,第3次では具体的な事例を調査していく。生徒が発見する情

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報は,意見文の対比例としてふさわしいものばかりではないはずである。また,対比の例はおそらく 一つ以上の例が発見されるだろう。生徒は社会制度,文化,芸術など様々な例の情報を収集し,その 中から自らの意見文に取り入れやすい(意見を出しやすい・考察しやすい)情報を,取捨選択する必 要が出てくる。教師側は情報検索の作業中,それぞれの生徒が意見文として書くのにふさわしい事例 を選べるよう適宜指導を行っていく。必要な情報を取捨選択し,まとめるという学習を行うことは, 相手や目的に応じた文章を書く力の育成を資するものである。 ○ 事例を考察し,自らの意見を述べる 意見文には,明確な一つの答え,正解の形はなく,論理的に整合性を持つ限り,独自性を持った文 章・意見が優れた意見文になりうる。対象とした生徒たちは,一つの正解を出す作業に慣れており, その作業に終始しがちである。そのため,自分の考えや理由を説明する力が不足している。また,い くつかの事実から自らの考察を広げる,という作業も,自由研究など以外ではほとんど行ったことが ないと考えられる。しかし社会においては,何らかの事実から自ら考察を行い,意見を述べる能力が 重視されている。これからの社会において活用できる国語の力を育成するのに,意見文は適している。 ○ 添削・相互評価を行う 生徒たちは自分の考えや理由を説明する力とともに,自分とは異なる意見を受け止める力も不足し ている。自分の意見と理由を述べる力を付けるとともに,異なる意見を認めていく態度も身に付けら れるようにしたい。そこで授業では,教師側の添削で文章の構成力を高めるとともに,清書した意見 文を他の生徒と相互評価する。そうすることで自分以外の考え方に触れ,生徒が新たな見地を広める ことを期待する。

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〔ワークシート①〕

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事例2:「書くこと」の指導と評価

1 科目名・単元名 国語総合・詩歌を書くことを通じて,自分の生き方について考えよう 2 単元の目標 ・ 優れた表現に接してその条件を考えたり,書いた文章について自己評価や相互評価を行ったり して,自分の表現に役立てるとともに,ものの見方,感じ方,考え方を豊かにしようとしている。 (関心・意欲・態度) ・ 優れた表現に接してその条件を考えたり,書いた文章について自己評価や相互評価を行ったり して,自分の表現に役立てるとともに,ものの見方,感じ方,考え方を豊かにする。 (書く能力)(「B書くこと」の(1)のエ) ・ 文や文章の組み立て,語句の意味,用法及び表記の仕方などを理解し,語彙を豊かにする。 (知識・理解)(〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕の(1)のイの(イ)) 3 取り上げる言語活動と教材 (1)言語活動:情景や心情の描写を取り入れて,詩歌をつくること。 (2)教材 :「生きる」谷川俊太郎 『生きる わたしたちの思い』谷川俊太郎 with friends(角川マガジンズ) 4 単元について 谷川俊太郎の「生きる」は,簡単な表現で構成された詩であるが,言葉の一つ一つに込められた 意味を考えていくことによって,自分の生き方や在り方について考えることができる作品である。 また,読者がその詩を読んで,インターネット上の掲示板に寄せた作品を読むことによって,より 詩を身近に感じることができると考えられる。様々な立場の人々の生き方を考えながら自分の創作 に生かし,考えを深めるきっかけにさせたい。 4 具体的な評価規準 関心・意欲・態度 書く能力 知識・理解 優れた表現に接してその条件 を考えたり,創作した詩につい て自己評価や相互評価を行った りして,自分の表現に役立てる とともに,ものの見方,感じ方, 考え方を豊かにしようとしてい る。 優れた表現に接してその条件 を考えたり,創作した詩について 自己評価や相互評価を行ったり して,自分の表現に役立てるとと もに,ものの見方,感じ方,考え 方を豊かにしている。 詩の構成,語句の意味,用法及 び表記の仕方などを理解し,語彙 を豊かにしている。 5 単元の指導と評価計画 次 学習活動 言語活動に関する指導上の留意点 具体的な評価規準と評価方法 1 ○学習全体の見通しを持つ。 ○「二十億光年の孤独」で学習 した表現技法や内容について 振り返る。 ○「生きる」を読み味わう。 ・声に出して読み,言葉を味わ う。 ・「二十億光年の孤独」で使用し たワークシートを見直しながら 振り返らせる。 (ワークシート①使用) ・範読をし,読みにくい漢字には 振り仮名を打たせる。 【評価規準】 ・詩の構成,語句の意味,用 法及び表記の仕方などを理 解し,語彙を豊かにしてい る。(知識・理解) 【評価方法】 ・「記述の確認」

詩歌を書くことを通じて,自分の生き方について考える

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・詩の中の言葉について,自分 がどう感じたかを発表させる ・一斉読みをして,言葉の響きを 感じさせる。 ・「ミニスカート」などの言葉が なぜ詩の中で使われているのか を考え,気付いたことを発表さ せる。 2 ○一般の読者が寄せた「生きる」 を読み,それぞれの背景につ いて考える。 ○自分にとっての「生きる」と は何かを考え,詩を書く。 ・それぞれの詩を読み,書き手の 心情を想像し,発表させる。 (ワークシート②使用) ・投稿された詩を参考に,自分に とっての「生きる」ことを考え させ,詩にさせる。 (ワークシート③使用) 【評価規準】 ・優れた表現に接してその条件 を考えたり,創作した詩につ いて自己評価や相互評価を 行ったりして,自分の表現に 役立てるとともに,ものの見 方,感じ方,考え方を豊かに している。 (書く能力) 【評価方法】 ・「記述の確認」 3 ○書いた文章を読み返し,その 詩を書いた背景となったこと を文章で表現する。 ○作品や文章を紹介し合い,ま とめとする。 ・自分で書いた詩の背景や,自分 の心情などを振り返り,文章化 させる。 ・自分の作品や文章を紹介し,他の 人が書いた作品を鑑賞させる。 【評価規準】 ・優れた表現に接してその条件 を考えたり,創作した詩につ いて自己評価や相互評価を 行ったりして,自分の表現に 役立てるとともに,ものの見 方,感じ方,考え方を豊かに しようとしている。 (関心・意欲・態度) 【評価方法】 ・「行動の確認」 ・「記述の確認」 ※単元を通して見ておき,3 次で評価する。 6 学習指導要領との関連 本事例の指導事項は,次のとおりである。 エ 優れた表現に接してその条件を考えたり,書いた文章について自己評価や相互評価を行ったり して,自分の表現に役立てるとともに,ものの見方,感じ方,考え方を豊かにすること。 「国語総合」内容「B書くこと」の(1) この指導事項を指導するのにふさわしいと考えた言語事項は次のとおりである。 ア 情景や心情の描写を取り入れて,詩歌をつくったり随筆などを書いたりすること。 「国語総合」内容「B書くこと」の(2) 7 言語活動充実の工夫 ○ 一般の人々が寄せた詩を読み,自分の表現に生かす 谷川俊太郎の「生きる」を読み味わうだけでなく,その詩に共感した人々がインターネット上に寄 せた詩を読むことで,谷川俊太郎の「生きる」の内容をより身近なものとしてとらえることができる と考えられる。詩の創作において抽象的な表現だけでなく,細かく描写することによっても自分の心 情を表現できることや,日常の生活の中に,詩に表現できることがあることにも気付かせたい。 高校生になると,他人に自分の心を伝えることを気恥ずかしく思う生徒も多くいると思われるが,

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その一方で,自分自身の悩みや葛藤と向き合おうとする時期でもあるため,様々な立場の人々の詩を 読むことによって,その思いに共感し,自分自身のことを振り返ることもできるはずである。そして, 読んだ詩の中から,自分の詩の内容にふさわしい表現を探すことで,よりよい作品作りができると考 える。 ○ 自分の詩の背景を,文章化する 本単元は,詩を読み,創作するだけではない。自分の詩に表現した思いや背景を,改めて文章とし て書く活動を第3次で設けている。授業の最後には,自分の作品を紹介し,どのような背景のもとで この詩が書かれたのかを,読み手に伝わるような表現で書くことによって,自分の表現したかったも のとは何かを改めて考えることができる。本単元の学習を通して,語彙や表現の幅を広げ,自分の言 語生活に役立てるだけではなく,心情を豊かにし,今後様々な詩や文章を読む上で必要な感性を養わ せたい。 〔ワークシート①〕

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〔ワークシート②〕

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事例3:「読むこと」の指導と評価

1 科目名・単元名 国語総合・古文を読み深め,物語の続きを考えよう 2 単元の目標 ・ 文章に描かれた人物,情景,心情などを表現に即して読み味わおうとする。 (関心・意欲・態度) ・ 文章に描かれた人物,情景,心情などを表現に即して読み味わう。 (読む能力)(内容の(1)のウ) ・ 文語のきまりを理解する。 (知識・理解)(〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕のア(イ)) 3 取り上げる言語活動と教材 (1)言語活動:読み取った情報をもとにその後の物語を創作すること。 (2)教材 :竹取物語 4 単元について これまでに学習してきた,宇治拾遺物語「児のそら寝」「検非違使忠明」,そして古典文法の学 習を経て,1年生で学習する古文教材のまとめとなる単元である。かぐや姫を得て,翁の,かぐや 姫に対する気持ちがどう変わっていったかに注意しながら本文を読み取らせたい。また,物語の続き を書かせることにより,文章を読み込み,味わう機会とさせたい。さらに,作成した作品を相互評 価させることにより,生徒相互の読みを深めさせたい。 5 具体的な評価規準 関心・意欲・態度 読む能力 知識・理解 文章に描かれた人物,情景, 心情などを表現に即して読み深 めようとしている。 文章に描かれた人物,情景,心 情などを表現に即して読み深め ている。 古文を読むことに役立つ,文 語のきまりを身に付けている。 6 単元の指導と評価計画 次 学習活動 言語活動に関する指導上の留意点 具体的な評価規準と評価方法 1 ○学習全体の見通しを持つ。 ・本単元では,「竹取物語」を 読み深め,読み取った情報を もとに翁がその後どうなった かという,物語の続きを創作 することを理解する。 ○「竹取物語」の内容を理解す る。 ・「竹取物語」の冒頭場面の原 文を読み,内容をとらえる ・かぐや姫を得て以降,翁の, かぐや姫に対する気持ちがど う変わっていったかを読み取 る。 ・物語の続きを書くために,文章 を読み深める必要があることを 意識させる。 ・追従読みやペアでの読み合いな ど言語活動を充実させることに より,文章に親しませる。 ・時間の経過を示す表現や,翁の 気持ちを表す言葉,翁がかぐや 姫のおかげで豊かになったと分 かる箇所などに着目させる。 【評価規準】 ・古文を読むことに役立つ, 文語のきまりを身に付けて いる。(知識・理解) 【評価の方法】 ・「行動の確認」

「物語」の続きを創作する

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2 ○かぐや姫昇天の場面を読解す る。 ・かぐや姫が昇天する場面の現 代語訳を読み,翁の態度を読 み取る。 ・「血の涙」などの表現に着目さ せる。 【評価規準】 ・文章に描かれた人物,情景, 心情などを表現に即して読 み深めている。(読む能力) 【評価の方法】 ・「行動の確認」 3 ○読み取った情報をもとに,か ぐや姫昇天後の翁がどうなっ たのかを考え,物語の続きを 書く。 ・勝手な想像に走るのではなく, 本文の描写をもとに考えるとい うことを意識させる。 【評価規準】 ・文章に描かれた人物,情景, 心情などを表現に即して読 み深めている。(読む能力) 【評価の方法】 ・「記述の確認」 4 ○書いた作品について,自己評 価や相互評価を行い,さらに 考えを深める。 ・翁の生活や態度,かぐや姫に向 けていた愛情がどうなったのか を考えさせる。 ・自己評価の際は工夫した点やう まくいかなかった点,相互評価 の際は自分の作品にない表現な どに注意させる。 【評価規準】 ・文章に描かれた人物,情景, 心情などを表現に即して読 み深めようとしている。 (関心・意欲・態度) 【評価の方法】 ・「記述の分析」 ・「行動の分析」 7 学習指導要領との関連 本事例の指導事項は,次のとおりである。 ウ 文章に描かれた人物,情景,心情などを表現に即して読み味わうこと。 「国語総合」 内容「C 読むこと」の(1) この指導事項を指導するのにふさわしいと考えた言語事項は次のとおりである。 ア 文章を読んで脚本にしたり,古典を現代の物語に書き換えたりすること。 「国語総合」 内容「C 読むこと」の(2) 8 言語活動充実の工夫 ○ 読みを深めるために,物語の続きを書く。 既存の物語の続編を書くためには,その物語を深く読み込まなければならない。「竹取物語」の翁 は,かぐや姫を実の娘であるかのように愛する。それは,「帳のうちよりも出ださず,いつき養ふ。」 「翁,心地悪しく苦しき時も,この子を見れば,苦しきこともやみぬ。」などといった描写からも読 み取れる。これらの描写が読み取れていれば,かぐや姫が昇天した後の翁の様子について考えた場合, 嘆き悲しむ翁の姿がおのずと想像されるはずである。 読解の際には,上記のように翁のかぐや姫への想いが書かれている箇所に注目させる。また,「帳」 などの古典文化に関わるものについての説明や,「いつく」「心地悪し」などの古文単語の意味調べ などを通して,本文に描かれた人物・心情・情景を表現に即して,鮮明にイメージする工夫を心がけ ている。 ○ 相互評価を行い,読みを深める。 作成した物語の続きを,5~6人のグループで交換して読み合うことで,読みをさらに深めさせる。 自分が扱っていない箇所を根拠に作成した作品や,自分とは違った解釈をしている作品との出会いを 通して,生徒は読みをさらに深めることができ,古典に対する興味がより広がると考えられる。

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事例4:「読むこと」の指導と評価

1 科目名・単元名 国語総合・和歌を三つの言語で味わおう 2 単元の目標 ・ 文章の内容や形態に応じた表現の特色に注意して読もうとする。 (関心・意欲・態度) ・ 文章の内容や形態に応じた表現の特色に注意して読む。 (読む能力)(C「読むこと」の(1)のア) ・ 言語文化の特質や我が国の文化と外国の文化との関係について気付き,伝統的な言語文化への 興味・関心を広げる。 (知識・理解)(〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕の(1)のアの(ア)) 3 取り上げる言語活動と教材 (1)言語活動:和歌を現代語訳してその歌に詠まれた心情を理解し,さらにその歌を英訳すること で,言語の違いと解釈の違いから,文化について考える。 (2)教材 :『国語総合 改訂版』(三省堂),『新訂 最新国語便覧』(浜島書店), 『対訳古典文法』(第一学習社),『英語で読む万葉集』(リービ英雄・岩波新 『現代語から古語を引く辞典』(金田一春彦(序),芹生公男・三省堂) その他,生徒所有の国語辞典・古語辞典・英和辞典・和英辞典・英英辞典・百科事 典等 4 単元について 基礎的な古典文法と現代語訳の方法を学び終えた段階で,古文の読みを楽しむための単元とした いと考えた。現代語訳をする上で,逐語訳や辞書知識の引用だけでは本当に古文を理解できたとは 言えず,文化や時代背景にも意識を向けることで深く読み味わうことができるということを生徒に 気付かせたい。これは古文に限らず,あらゆる異文化理解の場面で必要な姿勢なので,生徒自身が その事実を実感する機会として英訳にも取り組ませる。このような活動を通して,必要な情報を収 集する能力や,様々な言語を使って自分の考えを的確に表現する力を養う機会にもつなげたいと考 える。 5 具体的な評価規準 関心・意欲・態度 読む能力 知識・理解 和歌を,表現の技法や語句の 使い方など書き手の工夫を捉え て読もうとしている。 和歌を,表現の技法や語句の使 い方など書き手の工夫を捉えて 読んでいる。 伝統的な言語文化へ多様な方 面から迫り,我が国の言語文化の 独自の性格やその価値に気付い ている。 6 単元の指導と評価計画 次 学習活動 言語活動に関する指導上の留意点 具体的な評価規準と評価方法 1 ○学習全体の見通しを持つ。 ○和歌に関する基本的な知識を確 認する。 ○和歌の現代語訳をする。 ・ 指導者が提示する歌の中から一 首を選んで,現代語で訳す。 ○和歌の英訳の例を知る。 ・ 指導者,和歌を一首英訳する。 ・和歌の表現上の特色や基礎知識を 再確認する。 ・書き手の心情を考えながら,逐語訳 ではなく自分なりに解釈するように 促す。 ・英訳の手順や,英訳されることで生 じる面白みなどを紹介する。 【評価規準】 ・伝統的な言語文化へ多様な方 面から迫り,我が国の言語文 化の独自の性格やその価値に 気付いている。 (知識・理解) 【評価の方法】 ・「行動の確認」

和歌を三つの言語で味わおう

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○和歌の英訳をする。 ・生徒が選んだ一首を,自力で英 訳する。(宿題) ・現代語訳で行った解釈を反映する ように指示する。その際,インターネ ットや図書室の資料を活用してよい と周知する。 2 ○英訳の検討 ・同じ和歌を訳した者同士で班を 作り,各々の訳を突き合わせて決 定稿を一つ作る。 ・他の班の訳を読んで,なぜそうな ったのかを考える。 ・決定稿をつくる話合いの途中で「な ぜその訳に決めたのか」をメモする ように指示する。 ・授業後に決定稿を回収し,プリント にまとめて配布する。 【評価規準】 ・和歌を,表現の技法や語句の 使い方など書き手の工夫を捉 えて読んでいる。 (読む能力) 【評価の方法】 ・「記述の確認」 3 ○英訳のグループ発表 ・各グループが,決定稿となぜその 英訳になったかを解説する。 ・授業の終わりに,自己評価を提出 する。 ・翻訳が困難であった部分ほど,文 化間の違いが強く表れることに気付 かせ,言語を通して文化的背景や 歴史について考えることができると いう発見をさせる ・上記を踏まえて,自分の訳について 評価するよう指示する。 【評価規準】 ・和歌を,表現の技法や語句の 使い方など書き手の工夫を捉 えて読もうとしている。 (関心・意欲・態度) 【評価の方法】 ・「記述の確認」 ・「行動の確認」 ※単元を通して見ておき,3次で 評価する。 7 学習指導要領との関連 本事例の指導事項は,次のとおりである。 ア 文章の内容や形態に応じた表現の特色に注意して読むこと。 「国語総合」内容「C読むこと」の(1) この指導事項を指導するのにふさわしいと考えた言語事項は次のとおりである。 エ 様々な文章を読み比べ,内容や表現の仕方について,感想を述べたり批評したりする文章を 書いたりすること。 「国語総合」内容「C読むこと」の(2) 8 言語活動充実の工夫 ○ 言語という媒体を通して,異文化理解の基本姿勢を養う。 和歌の意味をとることや現代語訳することに苦手意識を感じる生徒は多いと感じる。しかし,それ は「古典文法にさえ忠実に読めば意味がとれるはずだ」という姿勢で和歌の読みに臨んでいるからこ そ起こることではないだろうか。そこで,古典文法や和歌の規則を踏まえた上で,「ウタ」という文 芸作品としての和歌を読み,その表現を味わい,自由に解釈する楽しさを知ってもらいたい。 ある文化の中では誰もが自然に理解できる表現が,別の文化に属する人間には全く理解できない, ということは,異文化接触において常に起こることである。例えば「ぬばたまの」であれば,生徒は 工夫して,現代日本語においては「カラスの羽」のような例をすぐに想像できるかもしれないが,英 訳となると恐らく骨が折れるだろう。その「困難」の経験が,常に異文化理解にはつきまとうのだと いうことを,身をもって知ってもらいたい。また,指導者からは下の<図2>に図示したような,翻 訳によって歌に二重・三重の意味が生まれ,別の文化圏において新しい楽しみ方が可能な例を挙げて, 解説する。 和歌の表現は芸術性が高く,解釈には高度な思考が求められるが,それは逐語訳では決して上手く いかない領域である。表現やその響きの美しさを理解した上で,その由来や本来の意味を知り,自分 なりに読もうとする姿勢が必要だということを学ぶ機会としたい。

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男 の 「 あ な た が 心 変 わ り し て い な い か 心 配 だ 」 と い う 歌 へ の 返 歌 。 女 は 「 私 は あ な た を 忘 れ た り な ど し な い 。 あ な た の 心 の ほ う が 風 に 吹 か れ て 頼 り に な ら な い 。 ( 心 変 わ り し た の は そ ち ら で し ょ う 。 ) 」 と 詠 ん だ 。

英 語 を 使 用 す る 文 化 圏 に お い て , 馬 は 「 遊 び 人 の 男 」 の 象 徴 の 一 つ な の で , 英 訳 す る 場 合 , 地 名 「 有 馬 山 」 に も 意 味 を 持 た せ る こ と が で き る 。 → Near The Horse hill

, Blowing wind and waving bamboo grasses,

You will swing like them, But I never cheat on

you. ・ 古 語 辞 典 … ぬ ば た ま : 枕 詞 。 「 夜 」 「 髪 」 を 導 く 。 = ひ お う ぎ 。 ・ 国 語 辞 典 … ひ お う ぎ : 葉 が 檜 扇 を 開 い た よ う に つ く の で こ の 名 が あ る 。 黒 色 の 種 を 「 ぬ ば た ま ・ う ば た ま 」 と い う 。

ぬ ば た ま =× 植 物 の 種 の 名 前 ◎ 「 黒 々 と し た も の 」 の 名 前 ? → 逐 語 訳 で な く , 分 か り や す い 喩 え を 工 夫 す べ き ? ○ 情報収集の手段と,収集した情報の活用法を示す 和歌に限らず,自分にとって未知のものに出会い,それを読み解こうとするときには,必要な情報 の収集と,収集した情報の活用という段階が必要になる。今回は,「あるものを理解したい場合に, 何を用いてどのような情報を集め,集めた情報をどう使うか」ということの学習として,和歌の訳を 素材としたい。 下の<図1>の場合,「ぬばたまの」は枕詞であるが,「ぬばたま」はヒオウギ(カラスオウギ) という植物の種で,この種が黒々としているから「夜」「髪」を導く枕となっている。ここまでの知 識は古文・国語辞典から得られる。ここから現代日本語に訳す場合には,「ヒオウギの種のように」 と訳したのでは読者に意味が伝わりにくいということを意識させ,「『ぬばたま』という表現で本当 に重要なのは,誰もが漆黒を想像するという点だったのだ」という発想で,別のもので喩える可能性 を示す。また,高校生が普段用いる辞書では「ぬばたま」の英訳は出てこない。そこで考えられる手 段は,より専門的な植物辞典などで「ヒオウギ」の英訳を調べるか,英語圏の人々にも伝わるような 「漆黒を意識させるもの」で置き換えて喩えるかの二つだが,どちらを選択するかは生徒に任せるの がいいだろう。このように,「今ほしい情報は何で,何を使えば手に入るのか」ということと,「得 られた情報をどのように使えば,効果的な表現ができるのか」ということを意識させる。 また,可能であれば,授業にはALTの先生に入っていただき,生徒から出た疑問や質問に対して, ネイティブスピーカーの立場から話をしていただければ,より学習としての深みが出ると考えてい る。 <図1>

<図2>

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事例5:「読むこと」の指導と評価

1 科目名・単元名 国語総合・漢詩文の内容を短歌にしてみよう 2 単元の目標 ・ 文章に描かれた人物,情景,心情などを表現に即して読み味わおうとする。 (関心・意欲・態度) ・ 文章に描かれた人物,情景,心情などを表現に即して読み味わう。 (読む能力)(「C読むこと」の(1)のウ) ・ 訓読のきまりなどを理解する。 (知識・理解)(〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕の(1)のアの(イ)) 3 取り上げる言語活動と教材 (1)言語活動:唐詩や史話に表現された情景や心情を短歌にすること。 (2)教材 :東京書籍「国語総合」古典編 「唐代の詩文」より「絶句」「登鸛鵲楼」「送元二使安西」「涼州詞」「送友人」 「香炉峰下,新卜山居草堂初成,偶題東壁」 「史話」より「臥薪嘗胆」,「鶏鳴狗盗」 4 単元について 本単元では,漢文における「読むこと」の指導として,漢詩や漢文で表現された作品の情景や登 場人物の心情を,五七五七七の短歌の形式で表現するという言語活動を通して,作品に対する生徒 の読みを,さらに深めさせようとするものである。 漢文の学習について生徒は,これまでに「格言と故事」,「史話」を学習しており,基礎的な事 項については一通り理解している。ただ,漢詩についての学習は初めてであるので,基本的なこと を理解させながら,作品のもつ魅力を深く味わわせたい。 5 具体的な評価規準 関心・意欲・態度 読む能力 知識・理解 漢詩や漢文に描かれた人物, 情景,心情などを表現に即して 読み深めようとしている。 漢詩や漢文に描かれた人物,情 景,心情などを表現に即して読み 深めている。 近体詩のきまりや語句の意味, 用法などを理解している。 6 単元の指導と評価計画 次 学習活動 言語活動に関する指導上の留意点 具体的な評価規準と評価方法 1 ○近体詩のきまりと6編の唐詩 の内容を理解する。 ・近体詩のきまりについて理解 する。 ・6編の唐詩を,教師の範読に 続いて音読する。 ・6編の唐詩の内容と作者につ いて理解する。 ・近体詩の構成,対句,押韻等に ついてきまりや基礎的な知識を 理解させる ・6編の唐詩を範読に続いて斉読 させる。大きな声で,リズムよ く読むことに留意させる。 ・詩の内容理解については詩形, 語釈,押韻,口語訳などの基本 的なことを押さえるにとどめ, 生徒に自由な想像力で作品に向 かわせるようにする。 【評価規準】 ・近体詩のきまりや語句の意 味,用法について理解して いる。(知識・理解) 【評価規準】 「記述の点検」

漢詩文の内容を短歌にしてみよう

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2 ○唐詩に詠まれた情景,心情など を短歌にする。 ・6編の唐詩の中から1編を選 び,唐詩に描かれた情景や心 情を短歌の形式で表現する。 工夫した点も書き添える。 ・作成された短歌の一覧表を見 て,もとの唐詩と比較しなが ら,一番よいと思う作品を一 つ選び,選んだ理由を書く。 ・グループでそれぞれの意見を 話し合う。 ・詩に詠まれた情景や心情を,詩 の表現に即して,短歌で表現さ せる。(ワークシートを使用) ・詩の構成や用いられている語な どに注目させて,もとの唐詩の 雰囲気が伝わるような短歌を作 るように指導する。 ・生徒の作品を,詩ごとに一覧表 にする。 ・級友が作成した短歌を読み,自 分が選ばなかった唐詩について も理解を深めるようにさせる。 ・グループで意見交換をさせる。 【評価規準】 ・漢詩に描かれた人物,情景, 心情などを表現に即して読 み深めている。(読む能力) 【評価方法】 「記述の分析」 3 ○史話に描かれた人物,情景, 心情などを短歌にする。 ・「臥薪嘗胆」,「鶏鳴狗盗」 で印象に残った場面や,登場 人物の心情を短歌の形式で表 現する。また,その短歌を作 った自分なりの意図を書く。 ○学習の振り返りをする。 ・短歌にしようとする場面や,登 場人物の心情を,まず決めさせ てから短歌を作成させる。 ・二編の史話で用いられている表 現や語句に注目させながら,作 品の雰囲気が伝わるような短歌 を作るよう指導する。 ・短歌の作成を通して,読みが深 まったかどうか考えさせる。 【評価規準】 ・漢文に描かれた人物,情景, 心情などを表現に即して読 み深めている。(読む能力) 【評価方法】 「記述の分析」 【評価規準】 ・漢文に描かれた人物,情景, 心情などを表現に即して読 み深めようとしている。 (関心・意欲・態度) 【評価方法】 「記述の確認」 ※単元を通して見ておき,3 次で評価する。 7 学習指導要領との関連 本事例の指導事項は,次のとおりである。 ウ 文章に描かれた人物,情景,心情などを表現に即して読み味わうこと。 「国語総合」内容「C読むこと」の(1) この指導事項を指導するのにふさわしいと考えた言語事項は次のとおりである。 ア 文章を読んで脚本にしたり,古典を現代の物語に書き換えたりすること。 「国語総合」内容「C読むこと」の(2) 8 言語活動充実の工夫 ○ 漢詩文を短歌で表現する 漢詩や漢文の指導事項は主に「読むこと」の内容になるが,実際の授業では,語釈や口語訳が中心 となり,生徒が作品を読み味わうまでには至らないことが多い。本単元では,漢文における「読むこ と」の指導として,漢詩や漢文で表現された作品の情景や登場人物の心情を,五七五七七の短歌の形 式で表現するという言語活動を通して,作品に対する生徒の読みをさらに深めさせようとするもので ある。

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生徒にとって短歌は,小学校以来なじみ深いものである上,現代文でも「短歌抄」を学習するので, 素地は十分にできていると思われる。また,短歌形式であれば,それ自体一つの作品として成立する ので,発想から言葉選びに至るまでより細心の注意を払うことができ,作者の思いにより迫ることが できるのではないかと考え,短歌作成を言語活動に設定した。 生徒に,漢詩文の面白さに気付かせ,漢詩文に対する興味をより持たせることができればと思う。 ○ 生徒の短歌を一覧にし,成果を共有する 自分が選ばなかった唐詩についても理解を深めるようにするために,生徒の短歌を一覧にし,生徒に 配布する。級友が作った短歌の一覧表を見て,もとの唐詩と比較しながら,一番よいと思う作品を一つ 選び,選んだ理由を書かせるようにし,詩の理解を深めさせたい。また,グループで話し合うことを通 して,自分が気付かなかった唐詩の魅力について気付く生徒もいるだろう。唐詩を短歌にするという言 語活動を通して,漢詩文により親しませたい。 〔ワークシート〕

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事例6:「話す・聞くこと」と「書くこと」の指導と評価

1 科目名・単元名 国語表現・小説を脚本化し,オーディオドラマを作成しよう 2 単元の目標 ・ 目的や場に応じて,言葉遣いや文体など表現を工夫して効果的に話したり書いたりしようとす る。 (関心・意欲・態度) ・ 目的や場に応じて,言葉遣いや文体など表現を工夫して効果的に話したり書いたりする。 (話す・聞く能力)(書く能力)(内容の(1)のエ) ・ 国語における言葉の成り立ち,表現の特色及び言語の役割などについて理解を深める。 (知識・理解)(内容の(1)のカ) 3 取り上げる言語活動と教材 (1)言語活動:小説一部分を選び,班でオーディオドラマを作成すること。 (2)教材 :教科書,図書資料,プリント,視聴用CD 4 単元について 本単元では「話す・聞く能力」と「書く能力」を育てるため,多様な言語活動を通して指導する ことを考えた。これは,様々なメディアに囲まれた中で自己表現が求められる生徒達にとって必要 な力を養うことを目指したものである。脚本作りを通して,理解した内容が聞き手に正確に伝わる ような言い回しや効果音などを考えさせ,豊かな表現力を身に付けさせたい。また他班の表現方法 などについて自己評価・相互評価させることで,作品をより深く味わわせたい。 5 具体的な評価規準 関心・意欲・態度 話す・聞く能力,書く能力 知識・理解 目的や場に応じて,言葉遣い や文体など表現を工夫して効 果的に話したり書いたりしよ うとしている。 目的や場に応じて,言葉遣い や文体など表現を工夫して効果 的 に 話 し た り 書 い た り し て い る。 国 語 に お け る 言 葉 の 成 り 立 ち,表現の特色及び言語の役割 な ど に つ い て 理 解 を 深 め て い る。 6 単元の指導と評価計画 次 学習活動 言語活動に関する指導上の留意点 具体的な評価規準と評価方法 1 ○学習全体の見通しを持つ。 ・資料内容を読み取る。 ・CDの視聴をする。 ・原本と台本の比較をし,小説 の脚本化についてポイントを 見い出し,メモをとる。 ・最初に,指導者が作成したものを 提示し,これからの学習の見通し をもたせる。 (配布資料・CD使用) ・原本と台本を提示し,生徒に表現 の違いを理解させる。 【評価規準】 ・国語における言葉の成り立ち, 表現の特色及び言語の役割に ついて理解を深めている。 (知識・理解) 【評価の方法】 ・「行動の確認」 ・「記述の分析」

小説を脚本化し,オーディオドラマを作成する

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2 ○課題に対する情報を図書から 収集する。 ・5人グループ(男女混合)に 分かれ,紹介する小説を選ぶ (班) ・本文を読む。(個人) ・ストーリーの展開や内容,人 物の特徴についてまとめる。 (班) ・小説のどの部分を紹介するか 話し合う。(班) ・作者の経歴や他作品,作品が 描かれた背景などを調べる。 (個人で調べた後,班で検討 する) ・図書資料のみを使用して情報を収 集するよう指示する。(小説につ いては,学校図書館担当者と連携 し,適当な図書を紹介する。その 際,複数の登場人物の会話をもつ ものを,学校図書館の蔵書から選 ばせる。) (ワークシート①使用) ・複数の図書を用いさせ,内容が偏 ることのないよう指導する。 ・指導者が適切な資料を紹介する。 ・使用した図書資料については,す べて出典を明らかにし,発表の際 に提示するよう指導する。 (ワークシート②使用) 【評価規準】 ・国語における言葉の成り立ち, 表現の特色及び言語の役割に ついて理解を深めている。 (知識・理解) 【評価の方法】 ・「行動の確認」 ・「記述の確認」 3 ○発表資料の作成(ストーリー の確認と録音) ・第2次でまとめた小説のあら すじ,人物の特徴などをもと に,台本原稿を作成する。 ・作成した台本をもとに読み合 わせをする。(班) ・録音機器を用いて記録し,自 己評価と相互評価を行う。そ の後録音する。(個人・班) ・原稿作成については発表を聞いた 後,聞き手が作品や作者に興味を 持つような箇所を選ぶよう指導す る。 ・作品を音声言語として捉えた時, 聞き手に対して効果的な表記方法 とは何かを考えさせる。 (ワークシート③使用) ・録音されたものを聞き,声の大き さ,声質に応じた配役,朗読の速 さ,間の取り方,効果音の必要性 などについて考えるように指導す る。 (ワークシート④使用) 【評価規準】 ・目的や場に応じて,言葉遣い や文体など表現を工夫して 効果的に話したり書いたり している。 (話す・聞く能力) (書く能力) 【評価の方法】 ・「行動の確認」 ・「記述の分析」 4 ○各班の発表(自己評価と相互 評価) ・班ごとに発表する。 ・発表を聞いて評価し,評価コ メントを書く。 ・発表の自己評価をする。 ・発表する際,声の大きさや言葉遣 い,姿勢などに注意するよう,促 す。 ・評価シートの各項目に注目して評 価させる。コメントについては良 い点を積極的に評価させ,具体的 に書くよう促す。 ・学校図書館担当者と連携し,発表 資料を紹介するコーナーを設ける 。 ・映像化されている作品があれば紹 介し,表現の違いを味わわせる。 【評価規準】 ・目的や場に応じて,言葉遣い や文体など表現を工夫して 効果的に話している。また, 発表を注意して聞いている。 (話す・聞く能力) 【評価の方法】 ・「行動の分析」 ・「記述の分析」 【評価規準】 ・目的や場に応じて,言葉遣い や文体など表現を工夫して 効果的に話したり書いたり しようとしている。 (関心・意欲・態度) 【評価の方法】 ・「行動の分析」 ・「記述の分析」 ※単元を通して見ておき,4次 で評価する。

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6 学習指導要領との関連 本事例の指導事項は,次のとおりである。 エ 目的や場に応じて,言葉遣いや文体など表現を工夫して効果的に話したり書いたりすること。 「国語表現」内容の(1) この指導事項を指導するのにふさわしいと考えた言語事項は次のとおりである。 イ 詩歌をつくったり小説などを書いたり,鑑賞したことをまとめたりすること。 「国語表現」内容の(2) 7 言語活動充実の工夫 ○ 小説から脚本をつくることで,場面に応じた表現方法を理解させる 生徒の読書時の反応は,主人公に共感し作品の展開や内容を抵抗なく受け止めるという反応を示す か,作品の世界観がつかめず背を向けてしまうか,というものである。これでは作品を受容する態度 としては不十分で,テクストに沿った読みにはなっていない。自分の経験などに頼った恣意的読みで はなく,小説から脚本を作成する過程を通して表現の細部に目を向けさせることで,文学作品におけ る表現は,作品世界を構築し読み手を引き込むために多くの技法が用いられていることを理解させた いと考えた。 書かれている文章に対する新鮮な興味は一度読むことで失われてしまうが,本事例で生徒は脚本を 作るために小説を繰り返し読むことになる。こうして繰り返し作品と向き合うことで作品に対する理 解は深まっていくであろう。今回は個人活動の後に必ずグループワークを設けている。各自の読みを 深めるきっかけとなった表現を持ち寄り,話し合いの中でそれらの表現の影響や効果を具体的に考え させ,それを脚本に反映させたい。 ○ 音響効果を考え,適切な表現をする 本事例は生徒が作成した脚本を生徒自身の声と効果音で表現させた。それは小説から読み取ったこ とを音声で表現させることにより,文章と音声言語との違いを実感し聞き手に伝わる表現方法を模索 させるためである。また場面に応じた表現方法を育てるためでもある。 生徒達は,ドラマ化・映画化された小説などを楽しむことはあっても原作と比較するに至る者は少 ない。制作側に立たせ,作品世界を伝えるためどのような工夫がなされているのか考えさせることと した。さらに完成作品を互いに視聴することで,作り手の意図や表現の仕方,作品の捉え方を受けと め,評価できる力も身に付けさせたい。 【生徒の作品】

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〔ワークシート①〕 〔ワークシート②〕

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〔ワークシート④-1〕

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事例7:「読むこと」の指導と評価

1 科目名・単元名 現代文B・身近な環境問題について,自分の考えを深めよう 2 単元の目標 ・ 文章を読んで批評することを通して,人間,社会,自然などについて自分の考えを深めたり発 展させたりしようとする。 (関心・意欲・態度) ・ 文章を読んで批評することを通して,人間,社会,自然などについて自分の考えを深めたり発 展させたりする。 (読む能力)(内容の(1)のウ) ・ 語句の意味,用法を的確に理解し,語彙を豊かにするとともに,文体や修辞などの表現上の特 色をとらえる。 (知識・理解)(内容(1)のオの前段及び後段の前半) 3 取り上げる言語活動と教材 (1)言語活動:学校図書館を活用し,身近な環境問題について調べたことを発表し合うこと。 (2)教材 :「環境問題への視点」(「精選現代文」東京書籍) 4 単元について 身近な問題を扱った文章に触れ,筆者の提起する事柄を自らの問題として捉えさせたい。文章を 読んで終わりにするのではなく,そこから発展的な読みをさせるために,グループワークを取り入 れ,情報収集し,分析,整理をしながら自分の考えを表現させることで,自らの考えを深めさせた い。 5 具体的な評価規準 関心・意欲・態度 読む能力 知識・理解 文章の内容を踏まえて,環境 問題に対する自分の考えを深め ようとしている。 文章の内容を踏まえて,環境問 題に対する自分の考えを深めて いる。 文章の内容を理解し,語句の意 味や用法,文章の構成を理解して いる。 6 単元の指導と評価計画 次 学習活動 言語活動に関する指導上の留意点 具体的な評価規準と評価方法 1 ○学習全体の見通しを持つ。 ○「環境問題への視点」の内容 を理解する。 ・論の展開に即して筆者の主張 を正しく理解する。 ・地球温暖化に対する筆者の主 張をまとめる。 ・地球温暖化に対する筆者の主張 を正確に理解させる。 【評価規準】 ・文章の内容を理解し,語句の 意味や用法,文章の構成を理 解している。 (知識・理解) 【評価の方法】 ・「行動の確認」 2 ○身近な環境問題について調べ て,自分の考えをまとめる。 ・あらかじめ用意した複数のテ ーマから興味関心のあるテー マを決定する。 ・決定したテーマに沿って学校 図書館にある関連図書やイン ターネットを活用して,各自 で調べる。 ・テーマに沿った問題点,その問 題が起こった理由,解決策等を 具体的に調べさせる。 ・自分が決めたテーマに沿って調 べ,それについての自分の考え を持たせる。 (ワークシート①使用) 【評価規準】 ・文章の内容を踏まえて,環境 問題に対する自分の考えを 深めている。 (読む能力) 【評価規準】 ・「記述の確認」

身近な環境問題について考えよう

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3 ○同じテーマを選んだ生徒でグ ループをつくり1枚のワーク シートを作成する。 ・自分の意見を各グループ内で 発表し合う。 ・持ち寄った情報を分析,整理 する。 ・各グループで意見をまとめる 。 ・グループ内で必ず役割ができる ように配慮する。 ・各グループの活動の様子を見な がら必要に応じて助言する。 ・時間配分を考えて作業できるよ うに助言する。 (ワークシート②使用) 【評価規準】 ・文章の内容を踏まえて,環境 問題に対する自分の考えを 深めている。 (読む能力) 【評価方法】 ・「記述の分析」 4 ○各グループで発表する。 ・相互評価を行いながら発表を 聞く。 ○学習の振り返りを行う。 ・他のグループの発表内容をしっ かり聞くよう助言する。 ・相互評価表にはよかった点を具 体的に記入するよう助言する。 (ワークシート③使用) 【評価規準】 ・文章の内容を踏まえて,環境 問題に対する自分の考えを 深めようとしている。 (関心・意欲・態度) 【評価方法】 ・「記述の分析」 ・「行動の分析」 ※単元を通して見ておき,4 次で評価する。 7 学習指導要領との関連 本事例の指導事項は,次のとおりである。 ウ 文章を読んで批評することを通して,人間,社会,自然などついて自分の考えを深めたり発展 させたりすること。 「現代文B」内容の(1) この指導事項を指導するのにふさわしいと考えた言語事項は次のとおりである。 エ 文章を読んで関心をもった事柄などについて課題を設定し,様々な資料を調べ,その成果をま とめて発表したり報告書や論文集などに編集したりすること。 「現代文B」内容の(2) 8 言語活動充実の工夫 ○ 学校図書館を利用して情報を収集してまとめ,発表し合うことで,読みを深める 「環境問題への視点」は身近な環境問題を扱った評論文である。「科学」と「生きる」が対比され 「科学万能主義」に対して「生きること」を中心に環境問題の解決策を探るという筆者の独特の考え が論旨となっている。身近な問題であるため,自分を取り巻く問題として考えるきっかけにしたい。 そのために,言語活動としてグループごとの発表を取り入れる。ただし,はじめからグループ活動に すると消極的な生徒が発言できずに終わってしまう可能性があるため,まずは一人一人に課題を課 し,それをグループ内で発表させる。持ち寄った様々な情報を発表内容に合わせて,分析,整理して 資料を作成させる。発表はグループごとに行うが,発表内容は相互評価とし,特に良かった点を具体 的に記入するなど,今後の言語活動にもつながるような評価内容としている。 ○ 学習の振り返りを行う 本単元の目標は,「文章を読んで批評することを通して,人間,社会,自然などついて自分の考え を深めたり発展させたりする」ことにあるので,4次で自己の考えを深めるための学習活動を設定し ている。個人が調べた内容をグループに持ち込み,他の生徒の意見を聞き,同じテーマでも調べ方や 資料の活用方法は違ってくる。様々な意見に触れることで,一つの物事を様々な視点から見ることで 考え方も変わってくる。言語活動を通して,自己の考えがどのように変わったか,あるいは変わらな かったか,物事を多面的に捉えるとはどういうことかを振り返って考えてもらいたい。

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〔ワークシート①〕

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事例8:「読むこと」の指導と評価

1 科目名・単元名 古典B・歴史物語に描かれた人物について調べることを通して,読みを深めよう 2 単元の目標 ・ 古典を読んで,人間,社会,自然などに対する思想や感情を的確にとらえ,ものの見方,感じ 方,考え方を豊かにしようとする。 (関心・意欲・態度) ・ 古典を読んで,人間,社会,自然などに対する思想や感情を的確にとらえ,ものの見方,感じ 方,考え方を豊かにする。 (読む能力)(内容の(1)のウ) ・ 古典に用いられている語句の意味,用法及び文の構造を理解する。 (知識・理解)(内容の(1)のア) 3 取り上げる言語活動と教材 (1)言語活動:図書資料やインターネットで調べたことをまとめ,発表すること。 (2)教材 :『大鏡』「左大臣時平」(原文,現代語訳) 4 単元について 歴史物語は,当時の社会が分かる歴史資料としても価値のある作品である。特に,『大鏡』は登場 人物がとても生き生きと描かれているため物語としても面白く,心情を理解するという点でも読み やすい作品である。登場人物について自分の興味のある観点から調べて発表することで,作品に関心を 向けることができるだけでなく,読みを深める手立てになると考え,本単元を設定した。 5 具体的な評価規準 関心・意欲・態度 読む能力 知識・理解 登場人物の心情を表現に即し て読み取り,自分の立場に置き 換えて考えようとしている。 登場人物の心情を表現に即し て読み取り,自分の立場に置き換 えて考えている。 語句の意味や用法を理解し,本 文の内容を正しく把握している。 6 単元の指導と評価計画 次 学習活動 言語活動に関する指導上の留意点 具体的な評価規準と評価方法 1 ○学習全体の見通しを持つ。 ○『大鏡』についての概略を学 習する。 ・本文に対する興味や関心を持っ て読解に移れるように事前に調 べ学習を実施する。 ・『大鏡』は歴史物語であり,史 実をもとにしていることをおさ え,調べ学習への意欲を喚起さ せる。 【評価規準】 ・語句の意味や用法を理解し, 本文の内容を正しく把握し ている。 (知識・理解) 【評価の方法】 ・「行動の観察」 2 ○調べ学習をする。 ・図書資料やインターネットを 使ってグループごとに調べる 内容を決定し,資料を作成す る。(グループ,個人) ・調べる内容に偏りが出ないよう に指導者は机間巡視して適宜指 示する。 【評価規準】 ・登場人物の心情を表現に即し て読み取り,自分の立場に置 き換えて考えている。 (読む能力) 【評価の方法】 ・「行動の観察」 ・「記述の確認」

歴史物語に描かれた人物について調べることを通して,読みを深めよう

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3 ○調べた内容を発表する。 ・内容がより深まっていくように 発表順は指導者が提示する。 【評価規準】 ・登場人物の心情を表現に即し て読み取り,自分の立場に置 き換えて考えている。 (読む能力) 【評価の方法】 ・「行動の確認」 4 ○本文の読解をする。 ・太宰府に左遷される場面,左遷 後から亡くなるまでの場面,死 後,雷神になる場面を取り上げ る。 ・場面ごとの道真の心情を丁寧に 確認する。 【評価規準】 ・登場人物の心情を表現に即し て読み取り,自分の立場に置 き換えて考えようとしている (関心・意欲・態度) 【評価の方法】 ・「行動の分析」 ※単元を通して見ておき,4 次で評価する。 7 学習指導要領との関連 本事例の指導事項は,次のとおりである。 ウ 古典を読んで,人間,社会,自然などに対する思想や感情を的確にとらえ,ものの見方,感じ 方,考え方を豊かにすること。 「古典B」の内容の(1) この指導事項を指導するのにふさわしいと考えた言語事項は次のとおりである。 エ 古典を読んで関心をもった事柄などについて課題を設定し,様々な資料を調べ,その成果を発 表したり,文章にまとめたりすること。 「古典B」の内容の(2) 8 言語活動充実の工夫 ○ 読みを深めるための活動である 本事例は調べ学習がメインではなく,本文を読解するための足がかりとして取り組むものである。 『大鏡』は登場人物が生き生きと描かれ,物語として読みやすく,心情理解もしやすい作品であると いえる。しかし,あえて史実を調べることによって物語に真実味を加え,生徒自身が積極的に登場人 物を自分の立場に置き換えて考え,心情を理解しようとすることができると考える。 ○ 本文は様々な部分を読む 様々な場面を読むことで,多様な心情理解を促すように工夫する。今回の場面は,道真が左遷され る場面,左遷されてから亡くなるまでの場面,死後雷神となる場面を取り上げ,場面ごとの心情だけ でなく,心情の変化にも注目させたい。 死後怨霊となったという記述は,史実とは程遠い物語ならではのものである。しかし,史実と結び つけることによって,昔の人々が怨霊や呪術などを信じていたことを知ることができる。特に身近に ある天満宮が,その道真の霊を鎮めるものであることに話を発展させることで,怨霊となるに至った 道真の心情を理解する上でのヒントとなると考えられる。 ○ 身近な歴史に興味を持つ 道真は,自分たちの生活に根付いているということを生徒に再認識させ,そこから,身近な歴史に 興味を持ち,自ら進んで古典に触れようとする態度を養いたい。

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今回は生徒自身に調べさせるという学習活動を取り入れたが,歴史の授業と関連付けた指導をする など,本文に関する内容で他教科との連携をはかり,興味を喚起させる工夫をしていきたい。

【生徒の作品例】

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事例9:「読むこと」の指導と評価

1 科目名・単元名 古典B・中国の詩(一)漢詩の解釈を通して,作者の心情,中国の自然を想像しよう 2 単元の目標 ・ 古典を読んで,人間,社会,自然などに対する思想や感情を的確にとらえ,ものの見方,感じ 方,考えた方を豊かにしようとしている。 (関心・意欲・態度) ・ 古典を読んで,人間,社会,自然などに対する思想や感情を的確にとらえ,ものの見方,感じ 方,考えた方を豊かにする。 (読む能力)(内容の(1)のウ) ・ 古典を読んで,我が国の文化の特質や我が国の文化と中国の文化との関係について理解を深め る。 (知識・理解)(内容の(1)のオ) 3 取り上げる言語活動と教材 (1)言語活動:課題に応じて情報を集めてまとめ,発表すること。 (2)教材 :中国の詩(一) 自然のうた「辛夷塢」「春夜」 旅情のうた「峨眉山月歌」「秋風引」「磧中作」 憂愁のうた「送友人」「登高」 副教材 :常用国語便覧 4 単元について 1年次の国語総合で学習した漢詩の基礎の上に立ち,中国唐代の人間・社会・自然などに対する ものの見方を深め,作者の人生やその文学に対する興味関心を抱かせることのできる教材である。 班別学習を取り入れ,調べる・まとめる・発表する・聞く・味わうの段階を踏んで,漢詩の世界の おもしろさを感じさせたい。 5 具体的な評価規準 6 単元の指導と評価計画 関心・意欲・態度 読む能力 知識・理解 人物,情景,心情などを,ど のように作者が描いているのか をとらえ,言葉の美しさや深さ に気付こうとしている。 人物,情景,心情などを,どの ように作者が描いているのかを とらえ,言葉の美しさや深さに気 付いている。 読むことに必要な文の組み立 て,語句の意味,語句の用法,表 記の仕方について理解している。 次 学習活動 言語活動に関する指導上の留意点 具体的な評価規準と評価方法 1 ○学習全体の見通しを持つ。 ○近体詩についての復習をする ○「辛夷塢」の解釈を聞く。 調べ学習,発表の方法の一例 を知る。 ・「近体詩について」のプリント に用語を記入させながら,復習 させる。 ・班別の調べ,レジュメ作成,発 表,相互評価を行う前に,その 例として「辛夷塢」の解釈を行 い,各班で見通しを持たせる。 (ワークシート②を使用) 【評価規準】 ・読むことに必要な文の組み 立て,語句の意味,語句の 用法,表記の仕方について 理解している。 (知識・理解) 【評価方法】 ・「記述の点検」

漢詩の調べ学習及び発表を通して,漢詩の読みを深める

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