中国において,知的財産権は司法ルートに よって保護されるだけではなく,また,行政 の法執行ルートによって保護されることがあ る。もちろん,当事者が行政の法執行過程に おける関連行政処分を不服とする場合には,
行政訴訟を提起して,司法による覆審を受け ることができる。本報告では,中国の裁判所 および上海の裁判所における知的財産権に対 する司法保護の概況について簡単に紹介する こととする。
裁判所における知的財産権審判機関の 概況
最高人民法院は 1996 年 10 月に知的財産権 法廷を設立し,全国の知的財産権審判を統括 的に指導および監督してきた。地方の各レベ ルの裁判所は当該地方の知的財産権審判情況 に応じて,知的財産権法廷,あるいは専ら知 的財産権を審理するための合議制法廷を相次 いで設立し,知的財産権紛争案件の審理を担 当してきた。2000 年に,最高裁判所は知的 財産権審判法廷を基礎として,民事審判第三 法廷を設立した。その役割は依然として全国 の知的財産権審判の指導および監督を担当す ることである。これに応じて,全国の各高級 人民法院も民事審判第三法廷あるいは相応す る機関を設立して,知的財産権案件の審理を 担当させるようにした。
最高人民法院の司法解釈によれば,第一審
の特許紛争案件は各省,自治区,直轄市の政 府所在地の中級人民法院および最高人民法院 が指定した中級人民法院の管轄に服する。現 段階の中国では,合計 47 の中級人民法院は 第一審特許紛争案件の管轄裁判所である。最 高人民法院の司法解釈によれば,著作権関連 の民事紛争案件は中級以上の人民法院の管轄 に服する。各高級人民法院は当該管轄地域の 情況に応じて,若干の基層人民法院を第一審 著作権民事紛争案件の管轄裁判所として定め ることができる。商標関連の民事紛争案件は 中級以上の人民法院の管轄に服する。各高級 人民法院は当該管轄地域の実際情況に応じて,
最高人民法院の許可を得たうえで,比較的,
大規模な都市で1ないし2の基層人民法院を 第一審商標関連民事紛争案件の管轄裁判所と して定めることができる。特許復審委員会お よび商標審議委員会の審判決定や裁定に不服 するために提起した行政訴訟は,北京市の高 級,中級人民法院の管轄に服する。また,最 高人民法院の司法解釈によれば,裁判所の受 理した特許権あるいは登録商標の専用実施権 にかかわる民事訴訟において,当事者が同一 の特許あるいは商標について,特許復審委員 会の無効審判の決定あるいは商標審議委員会 の裁定に不服するために訴訟を提起した際の 行政案件は,知的財産権法廷が審理する。特 許復審委員会あるいは商標審議委員会の復審 決定あるいは裁定に不服するために提起した その他の行政案件は,行政審判法廷が審理す る。
中国において,前述した特許復審委員会お
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中国の裁判所および上海の裁判所に おける知的財産権保護の概況
張 暁都
** 中国上海市高級人民法院民事第三法廷裁判 官。
よび商標審議委員会の決定あるいは裁定に不 服するために提起した行政訴訟は知的財産権 案件の審理を担当する法廷で審理されるが,
知的財産権関連の民事事件,行政事件および 刑事事件はそれぞれ異なる法廷で審理される。
2003 年5月に,最高人民法院民事審判第三 法廷は,『刑法による知的財産権保護の関連 問題に関する調査研究報告』において,次の ことを提案した。すなわち,知的財産権にか かわるすべての刑事,民事および行政案件は,
中級以上の人民法院の知的財産権専門法廷が 一括して審理する。
1994 年2月 15 日に,上海市の高級,中級 人民法院は一斉に知的財産権審判法廷を設立 した。浦東新区人民法院は 1994 年6月に知 的財産権審判法廷を設立して,知的財産権関 連の民事,刑事,行政案件を一括して知的財 産権審判法廷で審理するように試みた。黄浦 区人民法院は 1996 年9月に知的財産権審判 法廷を設立した。1998 年8月 25 日より,浦 東新区人民法院,黄浦区人民法院を除くほか,
上海市の高級人民法院,第一および第二中級 人民法院は知的財産権関連民事案件の第一審 裁判所となった。2001 年に,上海の裁判所 は相次いで知的財産権審判機構の設置を調整 した。上海市高級人民法院,浦東新区人民法 院および黄浦区人民法院は従来の知的財産権 法廷を民事審判第三法廷に改名し,第一,第 二中級法院は従来の知的財産権法廷を民事審 判第五法廷に改名した。浦東新区人民法院民 事第三法廷および黄浦区人民法院民事第三法 廷は,特許紛争以外の知的財産権案件を審理 することができる。知的財産権関連の民事案 件を集中的に審理するほか,上海市高級人民 法院の民事審判第三法廷,第一,第二中級人 民法院の民事審判第五法廷および浦東新区人 民法院の民事審判第三法廷はまた渉外商事事 件の集中審理を担当する。また,浦東新区人 民法院民事審判第三法廷は知的財産権の刑事,
民事,行政案件の一括審理を実験的に続行し ている。
知的財産権案件の概況
1998 年から 2002 年まで,中国各レベルの 裁判所が結審した知的財産権関連民事案件は 合計 23
,
636 件であり,過去5年間に比べると 40 %の増加となる。2002 年度に受理した知 的財産権関連の民事一審,二審,覆審の案件 は 7,
800 件であり,そのうち,受理した一審 案件は 6,
201 件,二審案件は 1,
544 件,覆審案 件は 55 件である。2002 年度に結審した知的 財産権関連の民事案件は 7162 件である。2001 年4月 11 日から 2003 年3月 25 日まで,
全国の各裁判所が受理した知的財産権侵害案 件は 851 件で,1
,
288 人である。そのうち,結審したのは 775 件で,1
,
207 人である(5 年ないし7年の有期懲役判決を 143 人に,5 年以下の有期懲役判決を 582 人に下した)。1998 年から 2000 年まで,上海の各裁判所 が受理した第一審知的財産権民事および刑事 案件は 919 件であり,結審したのは 867 件で ある。そのうち,受理した第一審知的財産権 関連民事案件は 893 件であり,結審したのは 842 件である。受理した第二審知的財産権関 連民事案件は 257 件であり,結審したのは 280 件である。
2001 年,上海の各裁判所は第一審知的財 産権関連民事案件 451 件,第二審知的財産権 案件 77 件(高級人民法院は 62 件),知的財産 権関連刑事案件 35 件を受理した。2002 年,
上海の各裁判所は第一審知的財産権関連民事 案 件 603 件 , 第 二 審 知 的 財 産 権 案 件 104 件
(高級人民法院は 91 件),知的財産権関連刑 事案件 34 件を受理した。
2003 年,上海の各裁判所が受理した第一 審知的財産権関連民事案件は 623 件であり,
結審したのは 602 件である。受理した案件の 分類については次の表を参照。
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2003 年,上海の各裁判所が受理した知的財産権関連の二審,上申,覆審民事案件はそれぞれ 119 件,2件および1件である(高級人民法院は 102 件。これには問合せ案件 1 件および再議案件 1件が含まれる)。結審したのは 115 件(高級人民法院が結審したのは 94 件)である。高級人民法 院が受理した案件の分類については次の表を参照。
2003 年,上海の各裁判所が受理した知的財産権関連刑事案件は 48 件であり,結審したのは 51 件 である。
(翻訳:袁 藝)
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