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中国知財法の最新動向

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Academic year: 2021

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世界経済グローバル化が加速するのに伴い,

知的財産制度の重要性はこれまでになく高く なり,特に経済が著しく発展してきた中国の 知的財産権保護問題は国際社会の注目を集め ている。

現在,中国は世界で最大のそして最も急速 に成長している重要な市場であり,世界の特 許出願大国としても急速に成長しつつある。

1985 年に「特許法」が施行されてから 15 年 間の発展を経て,2000 年に特許出願の累計 件数が初めて 100 万件を突破。そのわずか4 年2ヵ月後の 04 年3月 17 日には 200 万件を 超えた。06 年には 300 万件を超える見込みと なっている1。2003 年から,中国の実用新案 と意匠の出願件数は3年連続世界一となって いる2。また,中国の年間商標登録件数も6 年連続で世界一となっている。ちなみに,日 本から中国への特許出願も年間3万件を超え ている。

また,世界基準に向けた共同の取り組みの 結果,中国における知的財産の保護やエン フォースメントの果たす役割の重要性はます ます高まってきている。これまでも個別に対 応を取ることにより,大きな実績を残してい るが,法令が整備されることによって逆に形 式主義が蔓延することを避けつつ,今後の中 国市場は,特別なマーケットでない,グロー バル市場のひとつとして他のマーケットと同

様に,より高度な法治社会に向かって行くこ とになるだろう。

なお,知的財産権は,企業が自身を強化す るのに必要な私権なので,企業自身も中国の 知財法制度を正確に理解し,知財保護を怠ら ないようにする責務がある。

最近

DVD

の特許使用料問題3や海信電子と シーメンスの商標問題など,中国の企業が受 ける知的財産権紛争の圧力は次第に強まって いる4。当初の予測より5〜 10 年早く,中国 はすでに海外との知的財産権紛争の多発期に 突入したという5。中国の国内でも,7月に は発明特許侵害案件について,2980 万元の 損害賠償の支払いを命じる判決が下された。

同案件は中国国内の特許侵害案件としては,

最大規模のものである6。また,国内企業間 の特許紛争も熾烈化してきている。

一方,99 %の中国企業は特許等を出願し ておらず,独自の知的財産権を取得した企業 はわずか数千社のみで,企業総数の万分の三 にすぎない7。特許出願のうち発明特許はわ ずか 18 %で8,自らのブランドを持つ企業は わずか 40 %である9

現在,中国は知財国家戦略の策定や特許法 改正の検討など,知財保護重視に舵を切りつ つあるところ,企業界や学界の要望が知財国 家戦略や制度・運用の改善に反映されるよう,

制度・運用の整備や知財保護の強化などの研 究を急いでいる。

中国知財法の最新動向

兪 風雷

* 早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程,

早稲田大学 21世紀COE《企業法制と法創造》

総合研究所・知的財産法制研究センター・リ サーチアシスタント。

(2)

特許法第三次改正

中国国家知識産権局の主導で「特許法」の 第3次改正に向けた準備作業を急いでいる。

今回の改正は,特許制度などに存在する主な 問題の全面的解決を目指している。「特許法」

第3次改正作業の一環として行われていた専 門テーマ研究もすべて完了した10。内容とし ては,特許出願と特許審査の簡略化,発明と 実用新案特許の重複出願問題,「特許条約」

との合致問題,特許客体の拡大,新規性,創 造性と既存技術の定義問題,特許侵害判断基 準,間接侵害,知財専門法院の設立,権利濫 用,職務発明と権利帰属問題および報酬制度 の改善,無効宣告審査条件の改善,遺伝資源 の原産地の開示義務,法執行活動の強化など 20 項目が含まれている11

現行法では,新規性の基準の定義方式も世 界で一般的に採用されている定義方式とは異 なっている。中国の特許制度は最初から混合 型の新規性基準を採用し,文献公知について は絶対的基準を採用し,特許出願日より前に 世界のどの場所で公開された出版物でも,新 規性の判断対象となる。また,公知公用技術 には相対的基準を採用し,特許出願日より前 に中国だけで発生していた公知公用技術だけ が,新規性の判断対象となる。現在,特許法 の国際的な趨勢としては,既存技術について どちらも絶対新規性の基準を採用している。

国家知識産権局は現在,報告用の意見・提 案の総括や分析を進めている。今後,これら 提案を改正草案の形にまとめ,下半期にも公 開し,一般からの意見を収集する。9月に調 査団が日本,米国を訪れ,特許庁や連邦裁判 所と意見交換を行う予定である。

また,「弁理士条例」もうすでに修正案が 国務院法制弁公室に提出され,国家知識産権 局は国務院法制弁公室による審議に積極的に 協力している。同条例は国務院の今年の立法 計画にも含まれる12

インターネット著作権条例

中国は 2006 年6月末時点のインターネッ トユーザー数は1億 2

,

300 万人で,ブロード バンドが 7

,

700 万人に達し,

CN

ドメイン名の 登録数は前年同期比で 56 万件以上増加し,

119 万 6

,

017 件に達した13。こうした状況に あって,権利者,ネットワークサービス提供 者と作品使用者との間の関係を如何にうまく 調整するかが,ネット時代の重要任務である と認識されている。中国は,行政立法という 形でネットワークにおける権利侵害紛争を解 決するため,今年7月1日から正式に施行さ れた「情報ネットワーク配信権保護条例」14 において,法に特別な規定がある場合を除き,

いかなる組織や個人も,他人の作品,番組,

録音録画コンテンツをネットワークに通じて 公衆に提供しようとする場合,権利者の許諾 を得,報酬を支払うべきであると規定してい る。例外としては,時事ニュースを公衆向け に報道する場合に,既発表作品の再現や引用 を可避不能など八つの場合に限り,著作者の 許諾を得ず,報酬を支払わなくてもよいと規 定している。

また,いかなる組織や個人も,権利者の許 諾を得ずに,情報ネットワークを通じて公衆 に提供された作品・番組・録音録画コンテン ツの権利管理電子情報を故意に削除或いは変 更をしてはならないとしている。若し権利者 の許諾なしに権利管理電子情報が削除,ある いは変更されたことが明白な場合には,それ らの作品・番組・録音録画製品は情報ネット ワークを通じて公衆に提供する行為自体を禁 止するとしている。

今後権利者が,あるサイトで提供されてい る作品・番組・録音録画コンテンツが,自ら の情報ネットワーク配信権を侵害し,自らの 権利管理電子情報を削除または変更している と認められる場合は,当該サイトに書面で通 知の上,当該作品,番組,録音録画コンテン

(3)

ツの削除を求めることができ,また,当該作 品,番組,録音録画コンテンツとのリンクを 断ち切ることもできる。

独占禁止法草案

中国の現行の行政法規にも,独占を禁止す る規定はあるものの,市場経済や国際競争が 進む現在では,すでに時代に合わなくなって いる。中国では 1993 年,不当競争防止法が 制定され,抱き合わせ販売,不当景品,入札 談合等の禁止が規定された。また,1997 年 には価格法が制定され,価格カルテルの禁止 等が規定され,2003 年には同法に基づき,

価格独占行為禁止暫定規定が制定された。

現行の独占行為関連法規および行政法規は,

中国が国際競争力を備えた国家として発展し,

名実ともに市場経済国としてさらなる発展を 遂げるのに適していないため,商務部を主導 として独禁法を起草し始めることになった。

6月8日の国務院常務会議で「中華人民共 和国独占禁止法」15草案の討論が行われ,原 則可決した。さらに修正を加えた上で,全人 代16常務委員会で審議される予定17である。

草案は,中国の実情を踏まえ,国外の有益な 経験を参考にして,独占をもたらす協議禁止,

市場における支配的な地位の濫用行為,独占 行為に対する調査処理,独占行為の範疇明記 などの内容が盛り込まれている。

目指すのは,独占禁止法は企業および行政 による独占行為を防止乃至は抑制し,自由競 争を主とする市場秩序を保つ重要な措置とし て機能することである。系統的・全面的な独 占禁止法の制定は,公平かつ秩序ある市場環 境の整備,国の経済的な活力の維持,健全な 市場経済の発展に向け,より一層の法的保障 を与えるものとなる18

しかし,6月 23 日の第 10 期全人代第 22 回 会議では審議されなかった19。今回の会議に て審議される法案件数と審議日程にも原因で あるが,草案には議論・修正すべき点がまだ

多くあると判断され,審議は見送られると思 われる。これは「物権法」,「破産法」に続き 三回目の,審議の直前に取り下げられた重要 な法律草案となった。

知財戦略の策定

中国は現在,知的財産権の実力がまだ乏し いため,企業は知的財産権保護の意識と自主 開発能力を高め,積極的に国内外で特許を出 願して,海外市場における国際商標登録の意 識を高めなければならない20。知財保護をめ ぐる全体的な状況は,経済や科学技術,社会 の発展に比べると遅れており,国際社会の新 情勢にも対応できていない。

中国は 2020 年までに,知的財産権分野で 世界の中等クラスとなることを目指し,最終 的には知的財産権強国への成長を図っており,

そのための知的財産権戦略策定作業は,すで に実体研究の大詰段階に入っている。今後 15 年間のプランとして「国家知的財産権戦 略」が年内にも発表される予定である。

2005 年8月8日,国務院弁公庁は国家知 的財産権戦略の策定プランを承認した。その 後約 1 年をかけて下準備,実体研究,意見収 集,最終総括が進められてきた。最近,要綱 とテーマ別報告 20 項目が纏められた。テー マ報告はすでに最終報告段階に入り,専門家 の討論が行われている。このほか,国家知的 財産権戦略の重要措置の一つとして,迅速か つ効率なリスク警報システムも整備する方針 である21

中国知財戦略の原案は8月に明らかされる 見通しである22。戦略の策定に当たり,知財 権の管理機関合併および具体的な合併案な ど,焦点となる問題の行方に関心が集まって いる23。現在,専利(特許,実用新案,意匠), 商標,著作権(版作権)の管轄先は,それぞ れ知識産権局,商標局,国家版権局の三つの 部門に分かれている。三大政府機関の合併の 是非について,検証したうえで,職責の再配

(4)

分が行われるとみられる24

中国の知的財産問題への取り組みは大きく 進んでいるが,知財事業が急速な発展を遂げ,

大きな成果を上げる一方,依然として「最大 の知財侵害国」の汚名を残しているままであ る。米国国際貿易委員会(

USITC

)が中国に 対して行った 337 条25調査件数は現在でも増 え続け,実施された 111 件のうち,42 件が中 国本土や香港に関係している。

その一方,「日本の主な投資先として注目 される中国において知的財産保護が現実にど のように図れるのかを知ることの必要性は,

わが国の産業界において極めて高い。忘れて はならないことであるが,知的財産権は単に 先進工業国の利益を擁護するだけではなく,

これから発展しようとする国々にとってもそ の基礎を固める素材を提供するものであって,

東アジア諸国が手を携え,知恵を出しあって 知的財産の確実な保護制度を確立していくこ とは,それぞれの産業・経済や文化の発展に 大きく貢献するものである」26

このような広い視点に立って,早稲田大学 21 世紀

COE

《企業法制と法創造》総合研究 所内に設置された知的財産法制研究センター

RCLIP

)が3年程の間に蓄積してきた知的 財産権関係判例英訳データベースを最大限に 活用し,特許庁プロジェクトの一環として,

2006 年2月 17 日に,著作権,商標権,特許 権の紛争処理および事例を紹介・検討するア ジアセミナー『東アジアにおける産業財産権 関連紛争の裁判上の処理(中国編)』が弘済 会館(四谷)で開催された。北京大学法学院 の張平教授,清華大学法学院の王兵教授,人 民大学法学院の郭禾教授と中山大学法学院の 李正華助教授,上海高級人民法院知財法廷張 暁都裁判官が,それぞれ中国の特許権保護,

中国の著作権問題,北京における商標裁判の 状況,広東省における知財権裁判及び中国に おける特許権侵害の基本判断手法について講 演を行った27

当日は,中国の知的財産権法権威である五 人の先生が揃った注目されるセミナーであり,

貴重な生の現場の声を聴く機会で,100 人余 りの参加者が集まった盛況ぶりであった。

以下,第二回アジアセミナーにおいて中国 知的財産紛争処理について 4 名の著名な学者 と1名の裁判官が提出した論文を載録してあ るので,是非参照して頂きたい。

1 国家知識産権局の発表によると,2006年1 月〜6月では,特許・実用新案・意匠の出願 件数が 250,703件で,前年同期に比べ 25.4%

増えた。そのうち,国外からの出願件数が 49,668件で,前年同期比8.1%増であった。

2 3種類の特許(発明特許,実用新案と意匠)

のうち経済価値が最も高い「発明特許」の出 願数は出遅れている。05年の発明特許出願件 数は世界第4位,1人当たり平均ではまだ先 進国との格差がまだ大きい。

3 中国企業はDVDプレーヤー1台を生産す るのに 4.5ドルの特許料を払わなければなら ず,これまでに 30億元を支払っている。特 許権が失効するまで,さらに 200億元もの大 金を払い続けなければならない。

4 知的財産権紛争のジャンルも拡大し,ライ ター,ファスナー,ペンなどの旧来の産業か ら,バイオ製薬,デジタルチップなどのハイ テク産業に至るまで,特許は規格と技術障壁 が影でその力を発揮している。

5 国家知識産権局の田力普局長が山東省青島 市で,「中国はすでに海外と知的所有権紛争 の多発期に入った」と述べた。北京週報2006 年第28期(7月)

6 河南省鄭州市の中級人民法院は,鄭州拓普 軋制公司が訴えていた天宏泰隆冶金機械技術 公司・北京泰隆自動化設備公司に対し,ただ ちに権利侵害行為を停止するよう命じるとと もに,北京泰隆に対し,鄭州拓普へ 2980万 元の損害賠償を支払うようと命じた。(「人民 法院報」2006年7月 14日http://rmfyb.china court.org/public/detail.php)

7 新京報 2006年4月27日

8 米ビジネスウィーク誌の番付「世界のトッ プブランド 100」にランクインした中国ブラ ンドは,8年連続でゼロである。

9 4月 26日の世界知的財産権デーに,国家 知識産権局の田力普局長が,中国知的財産権 保護の情勢についてそのふうに指摘した。

(5)

10 国家知識産権局条法司の宋建華副司長によ ると,研究を担当した高等教育機関,研究機 関,司法部門などの専門家が,計 37部のレ ポートを提出した。

11 中国信息時報2006年6月8日を参照 12 法制日報 2006年5月31日

13 中国ネットワークインフォメーションセン ター(CNNIC)は 2006年7月 19日,中国の インターネット普及状況をまとめた「第 18 次中国互換網発展状況統計報告」による。

14 温家宝総理が5月 10日に招集した国務院 第 135回常務会議で,「情報ネットワーク配 信権保護条例」可決され,7月1日から施行 される。

15 中国語で「中華人民共和国反壟断法」とい う。

16 日本の国会に当たる全国人民代表大会と指 す。

17 国務院常務会議が6月7日,温家宝総理の 召集により開かれた。

18 解放日報2006年6月8日 19 第一財経日報2006年6月15日

20 情報産業部の 2005年の資料により。家電 大手のTCL集団が営業収入 521億元で4位に ランクインしている。TCL集団の研究開発経 費は 21億元だった。2005年末までTCL集団 の特許は 1200件,国内外で登録した商標は 418個に達している。ちなみに,2005年電子 企業百強の営業収入上位 10社はレノボ,ハ イアール,京東方科技集団股フン有限公司,

TCL集団,華為技術有限公司,美的集団有限 公司,海信集団有限公司,上海広電集団有限 公司,熊猫電子集団有限公司,北大方正集団 有限公司の順となっている。

21 北京青年報 2006年5月29日

22 国家知的財産権戦略策定作業指導チーム事 務室の文希凱事務長は5月 17日,「中国経済 報」の取材に対して明らかにした。

23 中国経済報2006年5月20日

24 中国社会科学院の知的財産権センターの李 明徳研究員によると,同問題は,社会科学院 を中心に検討が進められている最中という。

25 米国内の知的財産権の侵害に関する関税法 26 高林龍 平成 17年度特許庁研究事業,大 学における知的財産権研究プロジェクト研究 成果報告書「東アジアにおける産業財産権関 係紛争の裁判上の処理に関する実態調査」の はじめにを参照,2006年3月早稲田大学比較 研究所。

27講演およびディスカッションの詳細は平成17 年度特許庁研究事業,大学における知的財産

権研究プロジェクト研究成果報告書「東アジ アにおける産業財産権関係紛争の裁判上の処 理に関する実態調査」第 283ページ以下に参 照してください。2006年3月早稲田大学比較 研 究 所http://www.21coe-win-cls.org/rclip/

activity/pdf1.html

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