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TMI 中国最新法令情報

―(2012 年 4 月号)―

TMI 総合法律事務所

〒106-6123 東京都港区六本木 6-10-1 六本木ヒルズ森タワー23 階 TEL: +81-(0)3-6438-5511 FAX: +81-(0)3-6438-5522 E-mail: [email protected] 〒200031 上海市淮海中路 1045 号 淮海国際広場 2606 室 TEL: +86-(0)21-5465-2233 FAX: +86-(0)21-5465-5745 E-mail: [email protected] 皆様には、日頃より弊事務所へのご厚情を賜り誠にありがとうございます。 お客様の中国ビジネスのご参考までに、「TMI 中国最新法令情報」をお届けします。記事 の内容やテーマについてご要望やご質問がございましたら、ご遠慮なく弊事務所へご連絡下 さい。なお、バックナンバーについては、弊事務所のウェブサイトに掲載させていただきま すので、併せてご利用下さい。(http://www.tmi.gr.jp/office/china/index.html) 目次 一.中国最新法令 1.主な中央法令 (1) 輸入食品域外生産企業登録管理規定 (2) 商務部による自家用車輸入管理業務実施に関する通知 (3) 液晶ディスプレーパネル等 4 つの税目商品に対する輸入関税暫定税率の調整に関する 公告 (4) 税関総署による『中華人民共和国税関による「内地と香港との経済貿易関係緊密化に 関する手配」の下での「貨物貿易の原産地に関する規則」の執行に関する規定』の改 正に関する決定 税関総署による『中華人民共和国税関による「内地とマカオとの経済貿易関係緊密化 に関する手配」の下での「貨物貿易の原産地に関する規則」の執行に関する規定』の 改正に関する決定 二.連載 中国企業法実務/第二弾:各種契約締結の実務(第1 回 合弁契約) 三.上海法務事情 1.日本から上海への投資の傾向 2.「上海市著名商標認定保護弁法」の施行

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一.中国最新法令(2012 年 3 月中旬~4 月中旬公布分)

1.主な中央法令 (1) 輸入食品域外生産企業登録管理規定1 国家質量監督検験検疫総局 2012 年 3 月 22 日公布 同年 5 月 1 日施行 ① 背景 近年、中国は著しい経済発展を遂げている中、食の安全に関する問題は相変わらず深 刻な状況にあり、国民の最も関心の高い問題の一つとなっている。政府は安全・安心な 食品環境を提供するために、2009 年 2 月に、従来の「食品衛生法」を廃止し、「食品安 全法」を公布した。同法の公布により、衛生面だけでなく、もっと広い範囲での食品安 全問題に対処できるよう、食品安全の管理、監督等に関わる各政府部門の役割が明確に され、関連手続が具体化された。また、行政処罰等、食品安全問題が発生した場合の対 応措置も設けられ、実効性が高まった。 一方で、国内の食品安全について不安が残っていることから、域外から中国本土に輸 入する食品への信頼が高まり、需要も増えている。そのため、中国に輸入される食品に ついて、域外においてかかる食品を生産、加工又は貯蔵する企業に対しても同様な管理、 監督が必要と考えられた。そこで、今回、2002 年 3 月 14 日公布の「輸入食品国外生産 企業登録管理規定」が廃止され、「食品安全法」に基づき、「輸入食品域外生産企業登録 管理規定」(以下「管理規定」という)が制定された。管理規定では、上記「食品安全 法」の改正要点が加えられるとともに、香港、マカオ、台湾からの輸入品が増えている ことを念頭に、名称の中の「国外」が「域外」に改められた。 ② 主な内容 管理規定は、国家質量監督検疫総局の統一管理及び国家認証認可監督委員会の実際の 実施、監督管理の下で、「輸入食品域外生産企業登録実施目録」に基づき、対象企業を 中国において登録し、管理監督することについての行政法規である。 従来と比較し、主な改正要点は以下のとおりである。 (ア) 登録の有効期間は 4 年間。延長する場合は、期限の 1 年前から延長申請を行う必 要がある。(第 10 条) (イ) 域外生産企業の原因で重大な食品安全事故が発生した等、6 つの状況の内の 1 つ に該当する場合に、国家認証認可監督委員会によって登録が取消される。(第 15 条) (ウ) 登録対象企業であるにもかかわらず、登録せずに輸入を行った企業に対して、輸 入を差止め、違法所得を没収し、商品価値金額の 10%以上 50%以下の過料を科す。 (第 17 条) なお、廃止された「輸入食品国外生産企業登録管理規定」の下での登録実施目録で明 確に登録義務を定められたのは肉類を生産する企業だけとなっていた。改正後の管理規 1 《进口食品境外生产企业注册管理规定》(国家质量监督检验检疫总局令第 145 号)

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定についての実施目録は、国家認証認可監督委員会によって制定されると定められてい るが、現在のところまだ公表されていない。 (2) 商務部による自家用車輸入管理業務実施に関する通知2 商務部 2012 年 3 月 23 日公布 同年 4 月 1 日施行 ① 背景 中国では、自動輸入許可管理制度が採用されており、これは、一部の輸入製品につい て、数量等の制限なく輸入でき、企業又は個人の申請に応じて、自動輸入許可証を発行 し、これらの商品の輸入状況を管理する制度である。自動輸入許可証を発行できる機関 は、商務部又は商務部の授権を得た地方の商務部門となるが、毎年更新され、公布され ている「自動輸入許可管理貨物目録」において、それぞれの商品品目及びそれについて の許可証を発行できる政府のレベルが定められている。近時の中国では自家用車の需要 が増え、また国内自動車産業の発展により、輸入数が増加し、それに伴って申請も増え ていることから、商務部は一部の商品の自動輸入許可証の発行権限を地方の商務部門に 付与することにし、本通知を発表した。 ② 主な内容 (ア) 自家用車の輸入を簡便にするために、本来、地方商務管理部門(地方機電弁)が 審査し、商務部に報告してから、商務部により自動輸入許可証を発行される自家用 車商品等について、かかる自動輸入許可証を発行する権限を地方商務管理部門に与 えることにする。 (イ) 「自動車製品自動輸入許可証発行管理実施細則」によって定められている要件を 満たしている申請について、原則として、申請の受理日から、10 業務日以内にか かる自動輸入許可証を発行することとする。 (3) 液晶ディスプレーパネル等 4 つの税目商品に対する輸入関税暫定税率の調整に関す る公告3 税関総署 2012 年 3 月 29 日公布 同年 4 月 1 日施行 ① 背景 中国では、税関の「輸出入関税規定」において、輸入優遇税率及び輸出税率が定めら れている。その中で、国家の経済、又は政治政策によって、特定の工業・農業生産原料 及び機器・電子製品部品等に対して、さらに低い優遇税率、いわゆる輸入関税暫定税率、 を定める場合がある。かかる税率は年度ごとに見直され、改定されている。本公告では、 2012 年 4 月 1 日から改正された項目が示されている。 3 品目については、輸入を促進するために、最恵国税率を下回る優遇税率が設定され たが、液晶パネルに対する優遇税率は最恵国優遇税率に戻された。これまで、中国国内 2 《商务部关于做好自用车进口管理工作的通知》(商产函[2012]177 号) 3 《关于对液晶显示面板等 4 个税目商品进口关税暂定税率进行调整的公告》(海关总署公告 2012 年第 17 号)

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のカラーテレビ産業を後押しするために、液晶パネルの輸入コストを引下げる必要があ ったが、それが原因でテレビの基幹部品である液晶パネルを輸入に依存してしまい、国 内産業の発展の妨害となっていたため、最恵国優遇税率に引上げたと見られる。今回の 改定で、国内産業のカラーテレビ産業に対して積極的な影響を与え、中国国内のテレビ 産業の競争力を高めることが期待されている。 ② 主な内容 本公告によって、液晶パネルなど 4 品目の商品についての優遇税率が調整された。 具体的には、視度調整機能を持つ輸入カメラ用接眼レンズと他の視度調整機構を持つ 接眼レンズについて 15%の最恵国税率を下回る 10%の輸入関税が適用され、カッター 用輸入スリッターナイフユニットの暫定税率は、8%の最恵国税率を下回る 3%が適用 される。一方、32 インチ以上のバックライトモジュール非内蔵輸入液晶パネルについ て、これまでの 3%の暫定税率の適用が廃止され、5%の最恵国輸入関税率が適用され る。 (4) 税関総署による『中華人民共和国税関による「内地と香港との経済貿易関係緊密化 に関する手配」の下での「貨物貿易の原産地に関する規則」の執行に関する規定』 の改正に関する決定4(以下、「決定 1」という) 税関総署 2012 年 3 月 30 日公布 同年 4 月1日施行 税関総署による『中華人民共和国税関による「内地とマカオとの経済貿易関係緊密 化に関する手配」の下での「貨物貿易の原産地に関する規則」の執行に関する規定』 の改正に関する決定5(以下「決定 2」といい、「決定 1」と併せて、「本決定」という) 税関総署 2012 年 3 月 30 日公布 同年 4 月1日施行 ① 背景 2003 年、中国の中央政府と香港特別行政区政府及びマカオ特別行政区政府との間に、 それぞれ「内地と香港との経済貿易関係緊密化に関する手配」(以下「手配 1」という) 及び「内地とマカオとの経済貿易関係緊密化に関する手配」(以下「手配 2」という。「手 配 1」と併せて「手配」という。)が締結された。手配は、内地と香港及びマカオとの 間の関税のゼロ化及び非関税障壁の撤廃を趣旨としており、開放度が非常に高い協定と なっている。手配の締結後、8 回にわたって補充合意が付加えられ、2011 年 12 月 13 日、14 日に、それぞれ手配 1 と手配 2 に関して、「補充合意八」が締結され、2012 年 4 月 1 日から施行された。それに合わせて、手配の下での「貨物貿易の原産地に関する規 則」の執行に関する規定に対して、それぞれ改正が行われ、本決定が出された。 ② 主な内容 「決定 1」について、 4 《海关总署关于修改〈中华人民共和国海关关于执行《内地与香港关于建立更紧密经贸关系的安排》项下《关 于货物贸易原产地规则》的规定〉的决定》(海关总署令(第 206 号)) 5 《海关总署关于修改〈中华人民共和国海关关于执行《内地与澳门关于建立更紧密经贸关系安排》项下《关 于货物贸易原产地规则》的规定〉的决定》(海关总署令(第 207 号))

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(ア) 第 6 条第 4 項の「「従価比率」とは完全に香港で獲得した原料、組立て部品、労 働力価値及び製品開発支出価値の総和と輸出完成品の船渡価格(FOB)との比率」 という記述を「「従価比率」とは香港原産の原料、組立て部品の価格及び香港で発 生する労働力価値及び製品の開発支出価格の合計と輸出完成品の船渡価格(FOB) との比率」に改めた。 (イ) 第 6 条第 6 項に「香港において、内地原産の原料又は組立て部品を使用し、香港 で輸出完成品の組成部分を構成したものについて、当該輸出完成品の従価比率を計 算する際、当該内地原産の原料又は組立て部品は香港原産とみなす。当該輸出完成 品の従価比率は 30%以上であり、かつ当該内地原産の原料又は組立て部品価格を 算入しない場合の従価比率は 15%以上でなければならない。」を追加した。 第 6 条は、原産地の判定基準の一つである「実質的加工」についての定義を定める条 文となっているが、(ア)の改正によって、香港原産でない原料又は組立て部品の価格は、 従価比率を計算する際に、除外されることとなる。そのため、香港において実質的に加 工されたと認定する基準は改正前より厳しいものとなったと考えられる。但し(イ)の改 正では、内地原産の原料又は組立て部品について、例外的に、みなし規定が設けられた。 しかし、その条件として、内地原料又は組立て部品価格を算入しない場合の従価比率は 15%以上でなければならないという制限がかけられており、前条とのバランスを取ろう としているように見受けられる。 また、「決定 2」についても、同様な内容の改正が行われた。 (彭涛、瀋暘・中国弁護士)

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二.連載 中国企業法実務

第二弾:各種契約締結の実務(第

1 回/全 5 回)

1 回 2012 年 4 月号 合弁契約 第 2 回 2012 年 5 月号 賃貸借契約 第 3 回 2012 年 6 月号 労働契約 第 4 回 2012 年 7 月号 技術ライセンス契約 第 5 回 2012 年 8 月号 代理店契約 先月までの第一弾では、現地法人の設立についてご案内致しました。今月からは、5 回シ リーズにて、現地法人設立の前後において締結されることが多い類型の契約について、実務 上のポイントをご案内致します。

1 回 合弁契約

1.概要 合弁契約とは、外国の企業又は個人と中国企業とが、共同出資により中外合弁経営企業6 (以下「合弁企業」という)を設立する場合に、各合弁当事者の合弁企業に関する権利義務 を定める契約をいう7 。合弁企業設立のために、最も重要な契約である。 中国でも、「契約法」8により、契約自由の原則が採用され9、契約内容は当事者が自由に 決められるのが原則であるが、合弁契約については、契約内容が法定され、効力発生につ いては政府の認可を条件としている10 従って、合弁契約については、規定内容及び効力発生について、法の要求に従った規定 を置く必要があり、これと異なる内容の規定を置く場合には、審査認可機関より、修正を 求められることがあることに注意が必要である。 2.合弁契約の交渉・締結に関する注意事項 (1) 契約相手方の信用調査 合弁契約締結に当たり、契約相手方と何度も面会(交渉)を行って、契約内容を詰めて いくのが通常であるが、契約相手方について、当該合弁企業の中国側出資者となるにふさ わしい会社であるか、まず、信用調査を行う必要がある。 最低限行うべきこととしては、相手方から営業許可証の写しの提供を受けることである。 6 根拠法令は、「中外合弁経営企業法」(2001 年 3 月 15 日改正施行、以下「合弁企業法」という)及びその実 行細則としての「中外合弁経営企業法実施条例」(2001 年 7 月 22 日改正施行、以下「実施条例」という)。 7 実施条例第 10 条第 1 項。 8 1999 年 10 月 1 日施行。 9 契約法第 4 条。 10 実施条例第 13 条、第 14 条。

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営業許可証には、企業名称、法定住所、登録資本、法定代表者のほか、経営範囲が記載さ れており、これにより、当該交渉相手が実際に存在すること、そして、合弁契約上期待さ れる役割(例えば原料供給や販売等)を適法に果たし得る会社であるか等を確認すること ができる。 また、相手方の会社の定款、役員や財務状況の概要を確認したい場合には、工商局に保 管されている登記・届出資料の閲覧・謄写11により、基礎的情報を取得することができる。 (2) 契約締結権限のチェック 中国の会社の法定代表者は、通常、董事長であり12、契約書の署名者は会社を代表する 権限を有する法定代表者とすることが望ましい。董事長以外の人が企業を代表して契約に サインする場合には、適法に委任を受けた授権書面(委任状等)の提供を求めるべきであ る。なお、中国側には、署名のほか、社印(公章)の押捺を求めることになる。 (3) 交渉過程の留意点 最終的には契約締結に至らなかった場合であっても、所謂「契約締結上の過失」の理論13 に基づき、①悪意の交渉をするとき、②故意に重要な事実を隠蔽し、又は虚偽の状況を提 供するとき、又は③信義則に違反するその他の行為のあるときには、損害賠償責任を負う 恐れがある。また、契約の成否にかかわらず、契約締結過程で知りえた商業秘密を漏洩又 は不正に使用した場合にも損害賠償責任を負う恐れがあるので、注意が必要である。 (4) 言葉の壁の克服 日中間の合弁契約においては通常日本語と中国語が正文とされるスタイルが圧倒的に多 い。この場合、両国語版の整合性の確認が非常に重要である。この点、確かに、規定上は、 中国語版と外国語版の合弁契約等の書類は、同等の効力を有するとされるが14 、中国の審 査認可機関や登記機関は、中国語版に基づいて、審査、認可、登記を行うため、両言語版 が不一致のままでは、日本側当事者が、日本語版において理解しているのと違う内容によ る会社が設立されてしまうことにもなりかねない。 また、中国側当事者と契約交渉は通訳を介して行われることが多いが、当事者間の認識 不一致を招かぬよう、能力のある通訳者の確保に加え、交渉時の話し方の注意(分かりや すく、かつ通訳をする間をおいて話す等)のほか、契約交渉過程での合意事項の書面化が 重要となる。 3.合弁契約の主な記載事項 (1) 経営目的及び経営範囲 11 中国の弁護士には、かかる調査を行う権限がある。 12 定款の規定により、執行董事又は総経理が法定代表者となることもある(会社法第 13 条)。 13 中国では、契約法第 42 条で明文規定がある。 14 実施条例第 7 条第 2 項。

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合弁企業の経営目的及び経営範囲は、合弁契約の必要的記載事項である15。特に「経営 範囲」(日本の定款に記載する「目的」に相当する)について、中国では、企業は経営範囲 内でのみ活動することができ、経営範囲の逸脱は、無許可営業として処罰の対象となるた め、注意が必要である。なお、「外商投資産業指導目録」等の規定に基づき、一定の事業に 関しては、外資に対する禁止又は制限が存在するため、経営範囲の検討に当たっては、合 弁会社が当該事業を為し得るか、また、特別な認可が必要でないかを最初に確認する必要 がある。 (2) 投資総額及び登録資本 「投資総額」とは、合弁契約及び定款所定の生産規模に応じて投入する必要のある基本 建設資金及び生産流動資金の総和をいう16「登録資本」とは、合弁企業を設立するために 登記管理機関において登記する資本総額をいい、合弁当事者が引き受けた出資額の総和を いう17。合弁企業の投資総額及び登録資本は、何れも合弁契約の必要的記載事項となる18 投資総額と登録資本に関する詳細は、本連載第一弾第 4 回(2012 年 2 月号)をご参照さ れたい。 (3) 出資方法及び出資期限 各合弁当事者は貨幣を用いて出資することができ、また、建物、工場建屋、機器設備そ の他の物料、工業所有権、ノウハウ及び土地使用権等を価額評価して現物出資することも できる。現物出資の場合、その価額評価については、各合弁当事者が公平かつ合理の原則 に従い協議して確定し、又は各合弁当事者の同意する第三者に委託して評価決定させるこ とになる19 各合弁当事者は、出資を一括払いで払い込む場合には、営業許可証発行日(会社設立日) から 6 か月以内に払い込まなければならない。2 年以内の分割払込みも可能であるが20 、そ の都度、送金・出資検査・営業許可証の書換えを行い、コストと手間がかかるため、資金 的な余裕があれば、一括払込みが便利である。 (4) 当事者の責任 各当事者の合弁企業における役割分担として、当事者の責任という章が設けられる。 中国側合弁当事者の責任としては、出資の履行のほか、合弁企業設立のための手続(認 15 実施条例第 11 条。 16 実施条例第 17 条。 17 実施条例第 18 条。 18 実施条例第 11 条。 19 実施条例第 22 条。 20 第 1 回目の出資は全出資額の 15%を下回ってはならず、法定の登録資本最低限度額(3 万元)を下回っては ならず、かつ、会社成立の日から 3 か月内に全額を払い込まなければならない。その余の部分は会社成立の 日から 2 年以内に払い込む必要がある。(外国投資家投資の会社の審査・認可及び登記管理の法律適用に係 る若干の問題に関する執行意見(2006 年 4 月 26 日施行)第 9 条、会社法第 26 条第 1 項。)

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可及び登記の申請等)を担当し、機械設備及びその他の物品を輸入する際の通関手続、人 材の確保、用地・建物の手配、インフラの整備、外国籍従業員の入出国手続等が規定され るのが一般的である。 日本側合弁当事者の責任としては、出資の履行のほか、技術指導・研修の提供、国外に おける各種設備調達等への協力が主になることが多い。 なお、合弁企業が日本側合弁当事者の商標や技術を使用する場合には、合弁契約におい て概括的規定を置くほか、別途ライセンス契約を締結する必要がある。 (5) 董事会及び監事 董事会は、合弁企業の最高権力機構(意思決定機関)であり21、その定員及び構成は、 合弁契約の必要的記載事項となる22 董事会の定数は、3 名以上 13 名以下の範囲で特定の人数を定める。董事の人数構成は、 各合弁当事者が出資比率を勘案して協議の上、合弁契約と定款に規定する。なお、董事長 をある合弁当事者が任命する場合、副董事長は他方の合弁当事者が任命するものとされて いる23。また、董事は、董事会における会社の重大な意思決定を担うが、日常の経営を遂 行する立場にはないため、現地に常駐する必要がない。 合弁企業法と実施条例には監事(会)に関する規定が存在しないが、2006 年施行の会社 法24と、同年公布された関連規定25により、合弁企業は監事又は監事会を設置すべきことが 明定された。なお、董事と同じく、監事も合弁企業に常駐する必要がない。 (6) 経営管理機構 合弁企業は、経営管理機構を置き、企業の日常的経営管理業務に責任を負わせる。経営 管理機構には、総経理 1 名及び副総経理若干名を置く。副総経理は、総経理の業務に協力 する26。総経理、副総経理その他の高級管理者の職責、権限及び任用方法は、合弁契約の 必要的記載事項である。総経理、副総経理は、合弁企業に常駐することが望ましい。 (7) 労働管理 労働管理、賃金、福利及び労働保険等の事項に関する規定は、合弁契約の必要的記載事 項とされる27。但し、労働管理に関する事項については、法令が複雑であり、かつ、内容 も頻繁に変更されることから、合弁契約において詳細に規定することは適切ではなく、別 途、社内規則にて規定するのが望ましい。 21 実施条例第 30 条。 22 実施条例第 11 条。 23 合弁企業法第 6 条第 1 項。 24 会社法第 52 条。 25 外商投資の会社の審査・認可及び登記管理の法律適用に係る若干の問題に関する執行意見第 3 条第 1 項。 26 実施条例第 35 条。 27 実施条例第 11 条。

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(8) 利益配当 合弁各当事者の利益分配の比率は、合弁契約の必要的記載事項である。なお、税引き後 の利益分配の原則は、①三項基金の控除、②董事会の決議、③出資比率に基づく分配であ る28 。 (9) 経営期間 合弁企業の合弁期間も、合弁契約の必要的記載事項である29 なお、合弁期間満了後も合弁企業の経営を継続するためには、合弁当事者の合意の上、 合弁期間満了の 6 か月前までに審査認可機関に対して申請を行わなければならない30 (10) 合弁企業の解散及び清算 解散及び清算の手続は、合弁契約の必要的記載事項である。 合弁企業の解散事由については、実施条例第 90 条第 1 項に列挙されているが、列挙事由 は抽象的であるため、当該合弁企業において想定される撤退事由を具体的に解散事由とし て規定することが望ましい。 (11) 準拠法及び紛争解決方法 中国国内で履行される合弁契約については、中国の法律を準拠法とすることが義務付け られている31 他方で、紛争解決方法については、仲裁条項を置くのが一般的である。日本と中国はと もに仲裁判断の承認・執行に関するニューヨーク条約の加盟国であり、条約に基づいて、 一方の国においてなされた仲裁判断が、他方の国で、承認・執行されることが保障されて いる。中国の仲裁機関を選ぶ場合には、渉外案件についての取扱実績が豊富な中国国際経 済貿易仲裁委員会(CIETAC)を仲裁機関に規定することが多い32 。 [応用編―意向書、定款、その他の契約との関係] 合弁企業設立の交渉を開始するに当たって意向書を締結することが多い。意向書の締結 は義務ではないが、合弁契約締結交渉の道標として、また、秘密保持条項等により、交渉 中の当事者間の関係を律するためにも、これを締結することが望ましい。意向書は、通常 法的拘束力を持たないものとして締結し、仮に合弁契約が締結できなかったとしても、相 互に法的責任を負わないものとされるが、極端な場合には本文に述べたような契約締結上 の過失により、損害賠償責任が生じることもあり得る。また、拘束力がないといっても、 28 実施条例第 76 条。 29 実施条例第 11 条。 30 合弁企業法第 13 条。 31 契約法第 126 条第 2 項、実施条例第 12 条。 32 公平性の確保のため、被告地主義、即ち、中国側が日本側を訴える場合には、日本(日本商事仲裁協会) で、日本側が中国側を訴える場合には中国(中国国際経済貿易仲裁委員会)で仲裁を行うと規定することが、 一つの案として考慮に値する。

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当事者間で合意して書面化したもの(特に合弁の基本的条件)について一方当事者から変 更を申し入れるのは、交渉上実際には困難なことが多いため、意向書の内容が具体的であ ればあるほど、その締結には慎重を期す必要がある。 定款は、合弁契約とセットで作成し、ともに審査認可機関の認可を受ける、合弁契約設 立の必要書類である。合弁契約の記載事項と定款の記載事項は大半が重なるが、各当事者 の権利義務については、合弁契約にて詳細に記載するのに対し、定款においては、会社運 営の基本的事項をより詳しく書く(董事会の議事規則等)点が異なる。また、定款につい ては、近時、会社法の規定通りの規定とすることが当局から要求される傾向にあり、カス タマイズをしたい場合には、敢えて、定款には書かないで合弁契約に補充して書くという 対応も有効である。この点、合弁契約の効力は定款より上位にあると解されており、その 優劣規定を、合弁契約と定款に置くことが望ましい。 合弁契約と定款の変更については、審査認可機関の認可が必要となる。そのため、頻繁 な変更が想定される、合弁企業と、各当事者間の取引契約等については、合弁契約に規定 せずに、別途締結する方が便利である。他方、取引契約であっても、合弁企業に不可欠な 技術等のライセンスに関するものについては、敢えて合弁契約に組み入れて(別紙として 添付する方法もある)、安易に変更できないようにする、という方法もある。 (山根基宏・弁護士)

三.上海法務事情

1.日本から上海への投資の傾向 祖国日本の、震災からの復興のエネルギーを 受けてか、昨年後半から今年にかけて、日本企 業の中国進出が加速し、当事務所でも、進出の ご相談が増えている印象がある。 日本人駐在員の子女が通う上海日本人学校 でも、虹橋校 1,568 名(前年比 135 名増)、浦 東校 1,495 名(前年比 214 名増)と、合計で過 去最高の在籍数となった模様であり、企業進出 の増加を反映している。 先日、この「感覚」を裏付ける数字が、上海市統計局から発表された。 これによれば、上海市における 2012 年第一四半期(1 月~3 月)の外国からの直接投資は、 688 件あり、その内、独資会社設立が 584 件、合弁会社設立が 100 件であった。産業別では、 第 3 次産業(サービス業)が、件数で約 94%を占めたが金額では約 76%にとどまったのに

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対し、第 2 次産業(工業)は、件数では約 6%にとどまるものの金額では約 24%を占め、特 に前年比 1.7 倍となり、サービス業中心の進出の大勢の中で、工業分野の進出が復調した。 投資元の国(地区)別では、金額ベースで、1 位が香港(約 46%)、2 位が米国(約 14%)、 3 位が日本(約 9%)であるが、米国が前年度比約 45%減であったの対し、日本は前年度比 約 40%増と、急増した33 また、上海市商務委員会によれば、「震災後、日本企業の上海への投資は新たな増加局面 を迎え、2011 年には、日本からの投資が 645 件、2010 年に比べて 14%増、投資額では 20.53 億米ドル、2010 年に比べて 58.13%も増加した」とのことである34 なお、日系企業の 6 割以上が、投資総額 100 万米ドル以下の中小企業と言われる。そこで、 昨年 9 月にオープンした「上海金山日本企業産業園」(上海南郊の金山区に位置する)は、 この度、「上海日本中小企業産業園」に名称を変更して、日本の中小企業の進出を中心に受 け入れる方針を前面に打ち出した。 2.「上海市著名商標認定保護弁法」の施行 3 月 21 日に公布された、「上海市著名商標認定 保護弁法」が 5 月 1 日より施行される。 上海市では、1996 年に上海市工商局により制定 された「上海市著名商標認定保護暫定弁法」の下 で、これまで 16 回にわたり、917 件の「上海市著 名商標」が認定されてきた。 「上海市著名商標」は、上海市工商局により、 商標権者の申請により認定される。申請条件とし ては、①商標登録人が上海市の戸籍若しくは居住証を有する自然人又は上海市において設立 された法人等であること、②商標が中国で登録されて 2 年以上かつ実際の使用が 3 年以上あ り、比較的高い知名度を有すること、③商品の品質が信頼でき、安全で、良好な評判を有す ること、④過去 3 年間の売上、利益、税金等の主要な経済的指標が上海市の当該業界内で上 位にあること、⑤品質に対するクレームや紛争の処理制度が確立され、良好に運用されてい ること、⑥商標の使用・管理制度が良好であること、⑦過去 3 年間に重大な違法行為がない ことが挙げられる。申請は無料である。 区、県レベルの工商局が申請を受理してから、著名商標審査委員会が審査を行う。従来の 制度では、「認定委員会」と言われていたが、今回の新弁法の下では、委員の構成の明確化、 利害関係のある場合の回避制度の規定等により、「公開、公平、公正」の原則を強化した。 認定された「上海市著名商標」の有効期間は 3 年で、期間満了の 6 か月前に延長申請を行 うことができる。「上海市著名商標」の認定を受けた権利者は、認定された商品について、 33 http://www.stats-sh.gov.cn/fxbg/201204/242163.html 34 http://www.scofcom.gov.cn/sfic/sc/list.jsp?menuId=47&sonMenuId=69&rightMenuId=0&id=271261

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パッケージや広告で「上海市著名商標」との表示を行うことができるほか、他人が同一また は類似の商号を企業名称に使うことを禁じ(工商局がかかる企業名称の登記を許可しない)、 さらに、同一又は類似の名称等の使用により消費者に誤認を与える場合には、不正競争防止 法等により、取締りを行う等の保護を受ける。 なお、「上海市著名商標」は、商標法にいう「著名商標」(中国語で「馳名商標」)とは異 なり、何らかの紛争等の存在を必要とせずに、独立の手続として申請できるものである。 上海市著名商標の取得者は、従前は老舗と呼ばれるようなローカル企業が多かったが、 2005 年に、豆腐を製造する合弁会社である上海旭洋緑色食品有限公司がこれを取得したほ か、2011 年には、3 社の日系企業が取得し、今後は、上海を市場とする日系企業の間にも、 取得例が増えるものと思われる。 (山根基宏・弁護士) TMI 中国最新法令情報―2012 年 4 月号― 発 行:TMI 総合法律事務所 監 修:何連明・外国法事務弁護士 編集主幹:山根基宏・弁護士 発 行 日:2012 年 4 月 30 日

参照

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