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憲法の概念について

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(1)

憲 法 の 概 念 に つ い て

赤 坂 正 浩

一 は じ め に 二 伝統 的な 用語 法 三 佐々 木惣 一説 とそ の影 響 四 佐々 木説

・芦 部説

・佐 藤説 の問 題点 五 日本 国憲 法の 解釈 論と

﹁実 質的 意味 の憲 法﹂ 概念 六 日本 憲法 史・ ドイ ツ憲 法理 論研 究と

﹁実 質的 意味 の憲 法﹂ 概念 七 お わ り に 一

は じ め に 二〇 一〇 年九 月に

、文 部科 学省 の﹁ 専門 職大 学院 等に おけ る高 度専 門職 業人 養成 推進 プロ グラ ム﹂ の調 査研 究班 が、

﹁共 通的 到達 目標

︵コ ア・ カリ キュ ラム

︶モ デル

﹂の 第二 次案 修正 案を 公表 した

。コ ア・ カリ キュ ラム は、 法科 大学 院教 育の 質の 確保 を目 的と して

、法 律基 本科 目に つい て法 科大 学院 修了 時に 学生 が修 得し てい るべ き最 低限 の

(2)

内容 の目 安を 示す もの とさ れて いる

。 その うち 憲法 のコ ア・ カリ キュ ラム の﹁ 第一 章 憲法 総論

-

一 憲法 の観 念及 び立 憲主 義﹂ には 九つ の項 目 が列 挙さ れて いる

。そ の第 一項 目で は﹁

﹃形 式的 意味 の憲 法﹄ 及び

﹃実 質的 意味 の憲 法﹄ の意 味及 びそ の異 同に つ いて 理解 して いる こと

﹂、 第二 項目 では

﹁﹃ 立憲 的意 味の 憲法

近代 的意 味の 憲法 の︶ 意義 につ いて

、﹃ 固有 の意 味 の憲 法﹄ と対 比し て理 解し てい ると とも に、 それ と関 連付 けて

、憲 法の 制限 規範 性及 び憲 法典 の硬 性規 範性 につ い て理 解し てい るこ と﹂ が法 科大 学院 生に 求め られ てい る。 これ を読 んで 私が 違和 感を 覚え たの は、

﹁立 憲的 意味 の憲 法︵ 近代 的意 味の 憲法

﹂︶ の意 義に つい て、

﹁固 有の 意味 の憲 法﹂ と﹁ 対比 して 理解

﹂す ると いう くだ りで ある

。﹁ 対比 する

﹂と はど うい うこ とな のか 必ず しも 明瞭 では な いが

、対 立概 念で ある よう な印 象も 受け る。 こう いう 用語 法の 由来 に興 味を もっ て、 まず 参照 すべ き芦 部信 喜︵ 高 橋和 之補 訂︶

﹃憲 法・ 第四 版﹄ をひ もと いて みる と、 そこ に次 のよ うな 記述 があ った

。長 文に なる が、 全体 を引 用 して みる

﹁憲 法の 概念 は多 義的 であ るが

、重 要な もの とし て三 つ挙 げる こと がで きる

形式 的意 味 これ は、 憲法 とい う名 前で 呼ば れる 成文 の法 典︵ 憲法 典︶ を意 味す る場 合で ある

。形 式的 意味 の憲 法 と呼 ばれ る。 たと えば

、現 代日 本に おい ては

﹃日 本国 憲法

﹄が それ にあ たる

。こ の意 味の 憲法 は、 その 内容 がど のよ うな もの であ るか には 関わ らな い。

実質 的意 味 これ は、 ある 特定 の内 容を もっ た法 を憲 法と 呼ぶ 場合 であ る。 成文 であ ると 不文 であ ると を問 わな い。 実質 的意 味の 憲法 と呼 ばれ る。 この 実質 的意 味の 憲法 には 二つ のも のが ある

固有 の意 味

国家 の統 治の 基本 を定 めた 法と して の憲 法で あり

、通 常﹃ 固有 の意 味の 憲法

﹄と 呼ば れる

。国 家

(3)

は、 いか なる 社会

・経 済構 造を とる 場合 でも

、必 ず政 治権 力と それ を行 使す る機 関が 存在 しな けれ ばな らな いが

、こ の機 関、 権力 の組 織と 作用 およ び相 互の 関係 を規 律す る規 範が

、固 有の 意味 の憲 法で ある

。こ の意 味の 憲法 はい かな る時 代の いか なる 国家 にも 存在 する

立憲 的意 味

実質 的意 味の 憲法 の第 二は

、自 由主 義に 基づ いて 定め られ た国 家の 基礎 法で ある

。一 般に

﹃立 憲的 意味 の憲 法﹄ ある いは

﹃近 代的 意味 の憲 法﹄ と言 われ る。 一八 世紀 末の 近代 市民 革命 期に 主張 され た、 専断 的な 権力 を制 限し て広 く国 民の 権利 を保 障す ると いう 立憲 主義 の思 想に 基づ く憲 法で ある

。…

…こ の意 味の 憲法 は、 固有 の意 味の 憲法 とは 異な り、 歴史 的な 観念 であ り、 その 最も 重要 なね らい は、 政治 権力 の組 織化 とい うよ りも 権力 を制 限し て人 権を 保障 する こと にあ る。 以上 の三 つの 憲法 の観 念の うち

、憲 法の 最も すぐ れた 特徴 は、 その 立憲 的意 味に ある と考 える べき であ る。 した がっ て、 憲法 学の 対象 とす る憲 法と は、 近代 に至 って 一定 の政 治的 理念 に基 づい て制 定さ れた 憲法 であ り、 国家 権力 を制 限し て国 民の 権利

・自 由を 守る こと を目 的と する 憲法 で

( )

ある

﹂。 この

説明 で﹁ 実質 的意 味の 憲法

﹂﹁ 固有 の意 味の 憲法

﹂﹁ 立憲 的意 味の 憲法

﹂の 相互 関係 がど のよ うに 理解 され て いる のか は、 必ず しも 明確 でな い面 もあ ると 思う が、 一見 した とこ ろで は、

﹁実 質的 意味 の憲 法﹂ には

﹁固 有の 意 味の 憲法

﹂と

﹁立 憲的 意味 の憲 法﹂ の二 種類 があ り、 両者 は対 立概 念で ある とい う理 解に 立っ てい るよ うに 読め る。 コア

・カ リキ ュラ ムの

﹁対 比し て理 解﹂ せよ との 要請 も、 この 記述 に由 来す るも のと 推測 され る。 長年 憲法 の 教育 をな りわ いと しな がら

、芦 部教 科書 の冒 頭部 分を うっ かり 読み 飛ば して いた こと に恥 じ入 るが

、同 時に

﹁立 憲 的意 味の 憲法

﹂と

﹁固 有の 意味 の憲 法﹂ を対 立概 念、 ある いは 少な くと も対 概念 とす る理 解に は従 えな いも のを 感 じる ので

、あ らた めて

﹁憲 法の 概念

﹂に つい て振 り返 って おき たい 気持 ちに な

( )

った

。 本稿 の私 見を

、あ らか じめ

﹁テ ーゼ 風﹂ に︵ すな わち

、あ えて

﹁断 定調

﹂で 掲︶ げて みる と、 次の よう なこ とで あ

(4)

る。

﹁実 質的 意味 の憲 法﹂ と﹁ 形式 的意 味の 憲法

﹂と は対 立概 念で はな い。

﹁実 質的 意味 の憲 法﹂ と﹁ 固有 の意 味の 憲法

本来 的意 味の 憲法 と︶ は同 義で ある

﹁固 有の 意味 の憲 法﹂ と﹁ 立憲 的意 味の 憲法

﹂と は対 立概 念で はな い。

﹁立 憲的 意味 の憲 法﹂ は﹁ 固有 の意 味 の憲 法﹂ すな わち

﹁実 質的 意味 の憲 法﹂ の一 種で ある

④ 日本 国憲 法の 解釈 論に は﹁ 実質 的意 味の 憲法

固有 の意 味の 憲法 と︶ いう 概念 は不 要で ある

⑤ 日本 憲法 史や ドイ ツ憲 法理 論の 研究 には

﹁実 質的 意味 の憲 法﹂ の概 念が 有用 ない し不 可欠 の場 合が ある

︱︱

︱︱

二 伝統 的な 用語 法

﹁実 質的 意味 の憲 法﹂

﹁固 有の 意味 の憲 法﹂

﹁形 式的 意味 の憲 法﹂ とい う概 念は

、戦 前の 憲法 学に よっ てド イ ツの 公法 学か ら輸 入さ れた と推 測さ れる

。そ こで

、ま ず、 今日 のド イツ 語圏 の憲 法学

・一 般国 家学 では

、こ れら の

(5)

概念 がど のよ うに 継承 され 理解 され てい るの か、 代表 的な 概説 書の 解説 を拾 って みた い。

一九 五一 年に テオ ドー ル・ マウ ンツ が初 版を 公刊 して 以来

、ツ ィペ リウ スに よる 補訂 を経 て、 現在 はツ ィペ リウ ス

=

ヴュ ルテ ンベ ルガ ーと いう 形で 版を 重ね てい るド イツ 基本 法の 定評 ある 教科 書﹃ ドイ ツ国 法﹄ は、

﹁実 質 的意 味の 憲法

﹂と

﹁形 式的 意味 の憲 法﹂ の概 念を 次の よう に説 明し てい る。

﹁憲 法は

、国 家の 支配 を樹 立し

、組 織し

、制 限す る。 つま り、 憲法 は、 支配 を樹 立す ると とも に制 限す る。 憲法 は、 法 的基 本秩 序と して

、国 家の 業務

︵つ まり

、最 高国 家諸 機関 の形 成・ 任務

・権 限・ 手続

︶に 関す る基 本準 則、 共同 体秩 序の その 他の 基本 的政 治構 造︵ たと えば 権力 分立 と連 邦制

︶に 関す る基 本準 則、 さら には 国家 にお ける 市民 の地 位︵ 特に 彼ら の政 治的 権利 と基 本的 自由

︶に 関す る基 本準 則、 そし て最 後に これ らの 組織 規定 と権 利保 障の 根底 にあ る本 質的 な法 原則 およ び目 標に 関す る基 本準 則の 全体 を包 括す る。 これ が、 実質 的意 味の 憲法 であ る﹂

﹁ま た、 憲法 典に とり まと めら れた 制定 法が 憲法 とよ ばれ る。 この 憲法 典と いう 制定 法は

、憲 法制 定権 力に よっ て制 定 され

、単 純法 律よ りも 高次 のラ ンク

…… と高 次の 存続 保障 を認 めら れ、 その 結果

、安 定性 の保 障が 強化 され てい る。 適法 な改 正は

、憲 法が 定め た特 別の 手続 によ って のみ

︵た とえ ば、 基本 法七 九条 二項 のよ うに

、議 会の 特別 多数 によ って のみ とか

、あ るい は国 民投 票に よっ ての み︶ 許さ れる

。最 初に あげ た﹇ 実質 的﹈ 意味 と区 別し て、 この 場合 には 形式 的意 味の 憲法 につ いて 語る こと がで きる

。形 式的 意味 の憲 法の 内容 と、 実質 的意 味の 憲法 の内 容は

、広 範に 一致 する が、 必然 的に ぴっ たり 一致 する わけ では

( )

ない

﹂。

多少 の相 違は あっ ても

、ド イツ 語圏 では こう した 説明 が一 般的 だと 思わ れる

。こ こで はさ らに

、ド イツ 基本 法に 関す る記 念碑 的と もい える 壮大 な体 系書

、シ ュテ ルン

﹃ド イツ 連邦 共和 国国 法第 一巻

﹄の 記述 を紹 介し てお こ う。 シュ テル ンは 次の よう に述 べて いる

(6)

﹁G

・イ ェリ ネッ クは

、憲 法律 の﹃ 本質 的な 法的 メル クマ ール

﹄を

、憲 法律 が﹃ 加重 され た形 式的 な法 律的 効力

﹄を 有 する こと に見 出し た。 憲法 が、 単に 瞬間 的な 存在 に甘 んず るの では なく

、継 続的 な秩 序の 基盤 とな るた めに

、通 常は 加重 され た存 続保 護に よっ て特 徴づ けら れて いる こと は確 かで ある

。特 にそ れが 示さ れる のは 改正 の場 合で ある

。憲 法改 正に は特 別多 数が 必要 とさ れる か…

…、 たと えば 連邦 構成 国家 の承 認と いっ た別 の効 力発 生要 件の 充足 が必 要と され る︵ アメ リカ 合衆 国憲 法第 五条

︶。 しか しな がら

、こ うし た形 式的 観点 で、 憲法 の概 念が 捉え 尽さ れる わけ では ない

。こ うし た形 式的 観点 で、 憲法 の本 質が 十分 に記 述さ れる わけ では ない

。と りわ け、 この 種の

﹃加 重さ れた 形式 的法 律的 効力

﹄を もた ない 憲法 典は

、法 的意 味で 憲法 たり えな いの かと いう 疑問 がさ らに 残る こと にな る。 した がっ て、 G・ イェ リネ ック は、 憲法 概念 の純 粋に 形式 的意 義で は満 足し なか った

。イ ェリ ネッ クに とっ て、 実質 的 意味 の憲 法は

、﹃ 国家 の最 高機 関を 名指 しし

、そ れら の創 設方 法、 それ らの 相互 関係 およ びそ れら の行 動範 囲を 確定 し、 さら に国 家権 力に 対す る個 人の 基本 的な 関係 を確 定す る法 規﹄ であ った

。こ の実 質的 憲法 概念 は、 ささ いな 変形 はあ るも のの

、﹇ 今日 でも

﹈支 配的 と称 する こと がで きる

。実 質的 憲法 概念 は、 形式 的意 味の 憲法 とぴ った り一 致す る必 要は ない

。 実質 的意 味の 憲法 の内 容を なす すべ ての 法規 が、 憲法 典に 受容 され るわ けで はな いか らで ある

。実 質的 意味 の憲 法の 範囲 如何 とい う争 いの ある 問い が、 これ と結 びつ いて いる

。﹃ 憲法

﹄と いう 名称 をも つか

、あ るい は単 に語 の慣 用上 そう よば れて いる 法的 文書 のす べて が、

…… 実質 的意 味の 憲法 に属 する わけ では

( )

ない

﹂。

例と して もう ひと つ、 ドイ ツ語 圏で もド イツ とは 肌合 いの 異な るス イス の憲 法学 者の 著作 から

、ヴ ァル タ ー・ ハラ ーと アル フレ ート

・ケ ルツ の共 著﹃ 一般 国法

﹄の 説明 をあ げて おく

︵傍 線は 原文 イタ リッ ク︶

﹁形 式的 意味 の憲 法。 この 憲法 概念 は、 法規 範が 表明 され る形 式に もっ ぱら 焦点 を当 てる もの であ る。 形式 的意 味の 憲 法は

、通 常は

、単 純立 法と 対比 して 加重 され た改 正要 件を 保障 され た特 別の 手続 で成 立す る︵ たと えば

、議 会ま たは 義務

(7)

的国 民投 票の 特別 多数

︶。 憲法 はこ れに よっ て高 めら れた 安定 性を 獲得 する

。憲 法規 範は

、他 のす べて の法 規範 に優 先し

︵高 めら れた 妥当 力︶

、通 常は 特別 の憲 法典 に内 包さ れる

﹂。

﹁実 質的 意味 の憲 法に は、 国家 に関 する 基本 的な 諸規 範、 およ び国 家と 市民 の関 係に 関す る基 本的 な諸 規範 が含 まれ る。 つま り、 ここ で問 題と なっ てい るの は、 形式 では なく て内 容で ある

。あ る規 範が 実際 に基 本的 か否 かは 憲法 の理 解に 依存 して いる ので

……

、﹇ 実質 的意 味の 憲法 の範 囲を

﹈概 念的 に明 確に 境界 づけ るこ とは

、も ちろ ん不 可能 であ る。 とは いえ

、 一般 には 以下 のよ うな テー マ領 域に 関す る諸 規範 が、 実質 的意 味の 憲法 と性 格づ けら れる

・最 高国 家機 関︵ 国民

、議 会、 政府

、最 高裁 判所

︶の 組織 およ び権 限

・基 本権

・憲 法改 正お よび 立法 の手 続

・︵ 連邦 国家 の場 合︶ 連邦 と支 邦の

( )

権限

﹂。

以上 例示 した よう に、 現代 ドイ ツ語 圏の 憲法 理論 では

、﹁ 実質 的意 味の 憲法

﹂と は、 法形 式の 如何 を問 わず

、 最高 国家 諸機 関の 種類

・組 織・ 権限 等の 基本 事項 に関 する 法規 範、 およ び国 家と 市民 の関 係に 関す る基 本的 な法 規 範を 意味 し、

﹁形 式的 意味 の憲 法﹂ とは

、一 般に は改 正要 件が 通常 の法 律と 比べ て加 重さ れた

、憲 法と いう 標題 を もつ 制定 法を 意味 する と説 明さ れて いる

。 この こと 自体 は、 別に 目新 しい こと では ない

。た だし

、三 つの 点に 注意 を喚 起し てお きた い。 第一 は、 とり わけ ツィ ペリ ウス

=

ヴ ュル テン ベル ガー が簡 潔に 述べ てい るよ うに

︵﹁ 憲法 は、 国家 の支 配を 樹立 し、 組織 し、 制限 する

。 つま り、 憲法 は、 支配 を樹 立す ると とも に制 限す る。

﹂︶

、憲 法は

、国 家権 力を 制限 する 法規 範で ある のみ なら ず、 まず は国 家権 力組 織を 樹立 する 法規 範で もあ ると いう

︵私 見で は︶ 自明 の点 が明 確に 認識 され てい るこ とで ある

。あ と で論 ずる よう に、

﹁固 有の 意味 の憲 法﹂ と﹁ 立憲 的意 味の 憲法

﹂の

﹁対 比論

﹂は

、こ れと は異 なる 理解 に立 つよ う

(8)

に思 われ る。 第二 は、 なお 丹念 な調 査を 要す るこ とで はあ るが

、ド イツ 語圏 の憲 法理 論の 場合

、﹁ 固有 の意 味の 憲法

︵本 来的 意味 の憲 法︶

﹂と いう 用語 は使 用さ れて いな いよ うに 見受 けら れる こと であ る。

﹁固 有の 意味 の憲 法﹂ また は﹁ 本来 的意 味の 憲法

﹂と いう 日本 語が

V e r f a s s u n g i m e i g e n t l i c h e n S i n n e

とい うド イツ 語の 翻訳 であ ろう こと は容 易に 想像 され るの で、 これ は意 外な こと であ る。 しか し、 探索 のか ぎり 今︶ 日の ドイ ツ語 圏の 憲法 学で は一 般的 な用 語 では

( )

ない

。例 外的 なケ ルゼ ンの 記述 をす ぐあ とで 紹介 する

。 第三 は、 ドイ ツ語 圏で は

K o n s t i t u t i o n a l i s m u s

の 語が 日本 でい う﹁ 立憲 主義

﹂と はや や異 なる 意味 合い や文 脈で 使用 され てき たか らだ と推 測さ れ

(% )

るが

、﹁ 立憲 的意 味の 憲法

﹂と いう 用語 も見 受け られ ない 点で

(&

)

ある

いま 述べ たよ うに

、ド イツ 語圏 の文 献で は、

﹁固 有の 意味 の憲 法﹂ とい う用 語は 一般 には 使用 され ない

。ケ ルゼ ンが

﹁国 事裁 判権 の本 質と 発展

﹂と いう 論文 で憲 法概 念を 検討 した 部分 は、 管見 に属 する まれ な例 であ る。 や はり 該当 箇所 を逐 語的 に訳 して おく

︵傍 線は 本稿 筆者

。︶

﹁憲 法の 概念 が経 験し てき たさ まざ まな 変形 のな かか ら、 つね に手 を触 れら れる こと なく 続い てき た確 固た る核 心を つ かむ とす るな らば

、法 秩序

・国 家秩 序の 全体 を規 定し

︵こ の秩 序に よっ て形 成さ れた

︶共 同体 の本 質を 決定 する 最上 級の 原則 とい う観 念に いき つく

。憲 法の 概念 をど のよ うに 定義 する とし ても

、そ の定 義は

、そ の余 の秩 序が その 上に 建設 され る国 家の 基盤 を把 握す ると いう 要請 に直 面す る。 仔細 に見 ると

、憲 法の 概念 はこ の文 脈で は国 家形 態の 概念 と重 なり 合 い、 とり わけ 状況 によ って は政 治的 権力 の現 状が

、そ こに その 法的 表現 を見 出す ひと つの 原則 が想 定さ れて いる

。こ の原 則と は、 法律

、す なわ ち、 裁判 所や 行政 官庁 のよ うな 国家 機関 の活 動が その 執行 であ ると ころ の一 般的 規範 の成 立を 決定 する 準則 のこ とで ある

。と りわ け国 家秩 序を 形成 する 法規 範の 産出 に関 する 準則

、す なわ ち立 法の 機関 と手 続に 関す る準

(9)

則、 これ が固 有の

、始 原的 な、 狭義 の憲 法概 念で ある

。こ の基 本準 則の 定立 は、 国家 とい う共 同体 を形 成す る人 間の 相互 行為 を規 律す る法 規範 の成 立に とっ て不 可欠 の条 件で あり

、こ の準 則の 適用 と執 行に 必要 な機 関と その 行動 を規 定す る法 規範 にと って も不 可欠 の条 件で ある

。憲 法の 基本 準則 はす べて の国 家秩 序の 確固 とし た、 した がっ て可 能な 限り 永続 的な 基盤 を成 すと いう 考え 方か ら、 憲法 規範 と法 律規 範と の区 別の 必要 性と いう 観念 が生 ずる

。憲 法規 範は 法律 規範 と同 じ簡 単さ で改 正す るこ とは でき ない

。通 常の 法律 形式 から 区別 され た憲 法形 式と いう 概念 が成 立す る。 すな わち

、立 法手 続と は異 なる

、加 重さ れた 要件 と結 びつ いた 憲法 制定

︵憲 法改 正︶ 手続

﹇の 概念 であ る﹈

。理 想的 なケ ース では

、﹇ 加重 され た 制定

・改 正手 続と いう

﹈特 殊な 形式 は、 この 狭義 かつ 固有 の意 味に おけ る憲 法だ けに 限定 され るの で、 あま りよ い言 い方 では ない がふ つう はそ う言 い慣 わさ れて いる 実質 的意 味の 憲法 が形 式的 意味 の憲 法で もあ り、 実質 的意 味の 憲法 だけ が形 式的 意味 の憲 法で もあ るの で

(( )

ある

﹂。

右の 訳の うち

、傍 線を 付し た第 一の 文章 から わか るよ うに

、ケ ルゼ ンの

﹁実 質的 意味 の憲 法﹂ の概 念内 容は 通説 的理 解よ りも 狭く

、﹁ 立法 の機 関お よび 手続 の準 則﹂ を意 味し

、こ れを ケル ゼン は﹁ 固有 の、 始原 的な

、狭 義 の憲 法概 念﹂ とよ んで いる

。そ の上 で、 ケル ゼン によ れば

、理 想的 には この

﹁固 有の 意味 の憲 法﹂ だけ が加 重さ れ た特 別の 法典 の形 式で 守ら れる べき であ り、 そう なっ てい れば

、﹁ 固有 の意 味の 憲法

﹂と

﹁形 式的 意味 の憲 法﹂ の 規範 内容 は完 全に 一致 する こと にな る。 この 趣旨 を述 べた 二番 目の 傍線 を引 いた 文章 の末 尾で ケル ゼン は、

﹁固 有 の意 味の 憲法

﹂は

、﹁ あま りよ い言 い方 では ない がふ つう は﹂

﹁実 質的 意味 の憲 法﹂ と﹁ 言い 慣わ され てい る﹂ とし てい る。 ここ から

、﹁ 固有 の意 味の 憲法

﹂と

﹁実 質的 意味 の憲 法﹂ は同 義で ある が、 ドイ ツ語 圏で は一 般に

﹁実 質 的意 味の 憲法

﹂と いう 用語 が使 用さ れて いる とい うの がケ ルゼ ンの 理解 であ るこ とが わか る。

日本 の学 界で もド イツ 語圏 の伝 統に 忠実 な用 語法 をと る例 は

( )

多い

。こ こで は、 その 例証 とし て、 第二 次大 戦

10

前で は美 濃部 達吉

、戦 後に つい ては 小嶋 和司 をあ げて おき たい

(10)

美濃 部﹃ 憲法 撮要

﹄の 憲法 概念 の説 明は 以下 のと おり であ る︵ 漢字 カタ カナ 混じ り旧 字体 の原 文を 漢字 ひら がな 混 じり 新字 体に 改め た︶

﹁憲 法と いふ 語は 種々 の意 義に 用ゐ らる

。第 一に 其の 実質 的意 義と 形式 的意 義と を区 別す るこ とを 要す

。実 質的 の意 義 にお いて は、 憲法 とは 国家 の組 織及 作用 に関 する 基礎 法を 意味 す。 詳言 すれ ば国 家の 領土 の範 囲、 国民 たる 資格 要件

、国 家の 統治 組織 の大 綱、 国家 と国 民と の関 係に 関す る基 礎法 則は 此の 意義 に於 ける 憲法 に属 す。

…… 実質 の意 義に 於け る憲 法は

、其 の形 式よ り謂 へば

、総 ての 国法 と同 じく

、或 は成 文法 を以 て定 めら るる もの あり

、或 は 不文 の慣 習法 又は 理法 とし て存 する に止 まる もの あり

。第 十八 世紀 の米 国及 仏国 の革 命に 至る 迄は 諸国 の憲 法は 大部 分は 不文 法よ り成 るを 普通 と為 した るに 反し て、 米国 及仏 国の 革命 後立 憲制 度が 各国 に普 及す るに 随ひ

、此 の趨 勢は 全く 一変 して

、各 国は 新に 立憲 制度 を採 ると 共に 何れ も文 書を 以て 国家 の基 礎法 を定 め、 之を 其の 国の 憲法 とし て公 布し

、而 して 形式 上之 を普 通の 法律 と区 別す るに 至れ り。 此の 如く 形式 的に 憲法 とし て定 めら れ、 普通 の法 律と 区別 せら るる もの を形 式の 意義 に於 ける 憲法 又は 成文 憲法 と

( )

謂ふ

11

第二 次大 戦後 の日 本の 学界 にお いて

、憲 法の 概念 に関 する 最も 詳細 な考 察を 展開 し、 伝統 的用 語法 を整 理確 認し た憲 法学 者の 代表 とし ては

、小 嶋和 司を あげ るこ とが でき る。 その 体系 書の 解説 を引 いて おく

︵傍 線は 本稿 筆 者︶

, c o n s t i t u t i o n

の語 義さ なが らに

、国 家ま たは 政府 の構 造・ 組織 の秩 序を さし て用 いら れる

。秩 序が 成文 であ ると 不 文で ある とを とわ ずに もち いら れ、

﹃国 家あ ると ころ

、憲 法あ り﹄ とい われ る場 合の

﹃憲 法﹄ はこ の意 味の もの であ る。 歴史 家が

﹃古 代ア テネ の憲 法﹄

﹃古 代ロ ーマ の憲 法﹄ とい う場 合の

﹃憲 法﹄ はこ の意 味で

、法 学者 はこ れを

﹃本 来的 意味

(11)

の憲 法﹄ また は﹃ 実質 的意 味の 憲法

﹄と よん でい る。

- ,

の 意味 での 憲法 の中

、と くに 立憲 主義 を内 容と する もの をさ して

﹃憲 法﹄ とさ れる こと があ る。 この 場合 も、 そ の秩 序が 成文 であ るか 不文 であ るか は問 わな い。

﹃英 国は 憲法 の母 国で ある

﹄と いう 場合 の憲 法が これ で、 学者 はこ れを

﹃立 憲的 意味 の憲 法﹄ とよ んで いる

.

国家 構造

・政 府組 織を 規定 する

、あ る種 の制 定法 が﹃ 憲法

﹄と よば れる こと があ る。 どの よう な制 定法 が﹃ 憲法

﹄ とさ れる か、 その 基準 のと り方 は一 様で はな く、 次の ごと きが ある

制定 法の

﹁表 題﹂ に着 目す るも の。

……

制定 法の

﹁内 容﹂ に着 目す るも の。 すな わち

、﹃ 本来 的意 味の 憲法

﹄の 概要 の叙 述を 内容 とす る場 合、 当該 制定 法 は﹃ 憲法

﹄と よば れる

。一 九四 九年 の﹃ ドイ ツ連 邦共 和国 基本 法︵

G r u n d g e s e t z

﹄は

、実 は意 識的 に﹃ 憲法

V e r f a s - s u n g

︶﹄ の名 称を 避け ての 命名 であ った が、

﹃西 ドイ ツ憲 法﹄ とか

﹃ボ ン憲 法﹄ と俗 称さ れる のは

、こ の例 であ る。

制定 法が もつ

﹃法 的権 威﹄ に着 目す るも の。 すな わち

、第 三共 和制 フラ ンス の政 治組 織の 基本 は複 数の 憲法 的法 律

l o i s c o n s t i t u t i o n e l l e s

︶に よっ て定 めら れ、 それ らは 通常 の法 律に 優る 法的 権威 をも つと され た。

…… わが

﹃大 日本 帝国 憲法

﹄﹃ 日本 国憲 法﹄ は右 のど の基 準に よっ ても

﹃憲 法﹄ とさ れる

。け れど も、 一八 一四 年の フラ ンス

﹃憲 法﹄ は

の意 味で は﹃ 憲法

﹄で あっ たが

の意 味で はそ うで はな かっ た。 一八 四八 年の サル ジニ ア憲 法︵ 一八 六二 年イ タリ ア憲 法と され る︶ は

の意 味で のみ

﹃憲 法﹄ で、

の 意味 では そう では ない

。そ のた め、 学者 は右

い ずれ の基 準に よる かを 明示 した 上で

、こ れら によ って

﹃憲 法﹄ とす る場 合に

﹃形 式的 意味 の憲 法﹄ とよ んで

( )

いる

﹂。

12

日本 国憲 法の 体系 的解 説書 とし ては

、最 も詳 細と いっ てよ い小 嶋の 以上 の解 説に は、 本稿 冒頭 の﹁ テー ゼ﹂

①~

⑤の うち

①~

③が すべ て含 まれ てい る。 すな わち

、第 一に

、成 文・ 不文 を問 わず

、国 家の 構造

・組 織の 秩序 に関 する 法規 範が

、﹁ 本来 的意 味の 憲法 また

(12)

は実 質的 意味 の憲 法﹂ とよ ばれ る。

﹁本 来的 意味 の憲 法﹂ は﹁ 固有 の意 味の 憲法

﹂と 同じ であ るか ら、 ここ には

﹁実 質的 意味 の憲 法﹂ と﹁ 固有 の意 味の 憲法

﹂と は同 義だ とい う理 解が 示さ れて いる

。 第二 に、

﹁実 質的 意味 の憲 法﹂

︵本 来的 意味

=

固 有の 意味 の憲 法︶ のう ち、

﹁立 憲主 義を 内容 とす るも の﹂ が﹁ 立憲 的意 味の 憲法

﹂で ある

。﹁ 立憲 的意 味の 憲法

﹂は

、﹁ 固有 の意 味の 憲法

﹂の 一種 であ り、 下位 概念 であ る。 第三 に、

﹁形 式的 意味 の憲 法﹂ とは

、次 の三 つの 要件 を

a n d / o r

で充 足す る制 定法 を意 味す る。 すな わち

8

﹁憲 法﹂ とい う標 題を もつ

9

﹁実 質的 意味 の憲 法﹂ を内 容と して いる

:

︵改 正要 件が 加重 され るな ど︶

﹁特 別の 法 的権 威﹂ をも つと いう 三要 件で ある

。し たが って

、小 嶋の 理解 を敷 衍す れば

、﹁ 実質 的意 味の 憲法

﹂と

﹁形 式的 意 味の 憲法

﹂は

、一 方は 法形 式の 如何 を問 わず 特定 の内 容の 法規 範、 他方 は特 定の 形式

・内 容の 制定 法と いう

、異 な る観 点か ら選 択さ れた 法規 範の 集合 であ って

、対 立概 念で はな い。

R. Zi pp el iu s/ Th .W ür te nb er ge r, De ut sc he sS ta at sr ec ht ,3 2. Au fl ., 20 08 ,S .4 1f .

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使

%

&

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(

H. Ke ls en ,W es en un dE nt wi ck lu ng de rS ta at sg er ic ht sb ar ke it ,1 92 9, in :W RS .S .1 81 9.

(13)

10

稿

11

12

三 佐々 木惣 一説 とそ の影 響

以上 のよ うな 用語 法が

、ド イツ およ び日 本の 憲法 学の 伝統 的な 言葉 遣い であ ると すれ ば、

﹁は じめ に﹂ であ げた

﹃憲 法・ 第四 版﹄ に示 され た芦 部説 は、 明ら かに 伝統 的用 語法 とは 異な る。 この 点を もう 一度 確認 する ため に、 憲法 の概 念に つい てい っそ う詳 細な 考察 を展 開し てい る﹃ 憲法 学Ⅰ

﹄も みて おこ う。 そこ には 次の よう な記 述 があ る。

﹁実 質的 憲法 概念 のう ち、

…… 国の 統治 の基 本に 関す るル ール

︵国 家の 基礎 法︶ とし ての 憲法 を、 通常

﹃固 有の 意味 の 憲法

﹄と 呼ぶ

﹂。

﹁こ れに 対し て、 実質 的憲 法概 念の うち

、…

…立 憲的 な︵

c o n s t i t u t i o n a l

︶諸 制度 に関 する ルー ルと して の 憲法 は、 市民 革命 期に

、政 治権 力を 制限 する 規範 体系

・規 範秩 序と して 説か れた

……

﹂。

﹁実 質的 憲法 概念 の① と②

、す な わち

、﹃ すべ ての 国に 憲法 は存 する

﹄と いう 命題

﹇固 有の 意味 の憲 法﹈ と、

﹃憲 法は 自由 国家 の基 本法 であ る﹄ とい う命 題

﹇立 憲的 意味 の憲 法﹈ は、 論理 的に は結 びつ かな いも ので ある

。そ れが 同じ 実質 的憲 法と いう カテ ゴリ ーに 一括 して 分類 され たの は、

…… 法実 証主 義の 憲法 理論 では

、一 般に

、法 の内 容は 法の 概念 に非 本質 的な もの と考 えら れ、 憲法 の場 合

(14)

も、 実質 より も成 文な いし 硬性

…… とい う形 式こ そが 重視 され たか らで

( )

ある

﹂。

13

また

﹃憲 法学

Ⅰ﹄ では

、﹁

﹃実 質的 意味 の憲 法﹄ を﹃ 固有 の意 味の 憲法

﹄…

…に 限定 し、

﹃近 代的 意味 の憲 法﹄

…… を実 質的 概念

・形 式的 概念 の区 別と は別 のカ テゴ リー の概 念と して 説く 学説 も有 力﹂ だと して

、佐 々木 惣一

、 清宮 四郎

、小 嶋和 司の 著作 があ げら れ、 芦部 自身 はそ れに は従 えな いこ とも 示唆 され て

( )

いる

14

こう した 理解 は、 ドイ ツの 実証 主義 公法 学が

﹁固 有の 意味 の憲 法﹂ と﹁ 立憲 的意 味の 憲法

﹂を

﹁実 質的 意味 の憲 法﹂ の下 位概 念と 捉え てい ると いう 認識 にお いて も、 小嶋 説が

﹁立 憲的 意味 の憲 法﹂ を﹁ 実質 的意 味の 憲法

﹂と 独 立の 概念 とし て位 置づ けて いる とい う認 識に おい ても

、到 底正 確と はい えな いだ ろう

。私 見に よれ ば、 むし ろ芦 部 説こ そ、 その 注で あげ られ た佐 々木 惣一 の用 語法 の影 響を 色濃 く受 けて いる よう に思 われ る。 そこ で次 に佐 々木 惣 一の 見解 をみ てみ るこ とに した い。

佐々 木の 明治 憲法 時代 の体 系的 解説 書﹃ 日本 憲法 要論

﹄は

、憲 法の 概念 を以 下の よう に整 理し てい た。 ここ でも 煩を 厭わ ずに 原文 を引 用す る︵ 漢字 カタ カナ 混じ り旧 字体 の原 文を 漢字 ひら がな 混じ り新 字体 に改 めた

︶。

﹁憲 法の 概念 に就 ては 其の 本来 の概 念と 近代 の国 家論 に於 て用 ゐら るる 概念 とを 区別 する を要 す。 今後 者を 前者 に対 し て憲 法の 近代 的概 念と 云ふ

。 第一

憲法 の本 来の 概念

。憲 法の 本来 の概 念に 就て も亦 実質 的概 念と 形式 的概 念と を区 別す るを 要す

。 一 憲法 の実 質的 概念

。実 質的 概念 とし て、 憲法 とは 国家 の根 本法 即ち 国家 に関 する 根本 規範 を定 むる 法を 謂ふ

。之 を 実質 憲法 と名 く。

…… 実質 的概 念た る憲 法は 国と して 之を 有せ ざる はな し。 但是 れ国 家前 に成 立し て而 して 後に 国家 が必 ず憲 法を 定む と云 ふ

(15)

に非 ず。 国家 の成 立と 共に 必ず 憲法 あり

。憲 法な くし て国 家あ るを 得ざ るな り。 二 憲法 の形 式的 概念

。形 式的 概念 とし て、 憲法 とは 憲法 なり しと て制 定発 布せ られ たる 法を 謂ふ

。之 を形 式憲 法と 名 く。 即ち

、国 家が 特に 其の 法を 以て 国家 に関 する 根本 規範 を定 め他 の法 と区 別す るこ とを 示し たる もの なり

。…

… 第二

憲法 の近 代的 概念

。近 代の 国家 論に 於て 憲法 と云 ふと きは

、特 殊の 意義 を有 し、 特に 国家 の根 本法 にし て立 憲政 体を 定む るも のの みを 指す の慣 例と す。 此の 意義 に於 ける 憲法 は立 憲国 のみ 之を 有す

。其 の形 式憲 法即 ち所 謂成 文憲 法た ると 実質 憲法 即ち 不文 憲法 たる とは 問ふ 所に 非ざ る

( )

なり

﹂。

15

他方

、佐 々木 の日 本国 憲法 の体 系的 解説 書﹃ 日本 国憲 法論

﹄で は、 以下 のよ うな 説明 にな って いる

﹁法 の中 特に 憲法 と呼 ばれ る特 別の もの があ る。 憲法 の概 念に つい ては その 概念 を構 成す る場 合の 着眼 点を 定め なく て はな らぬ

。 第一

規定 の性 質に 着眼 する 概念

これ に本 来の 概念 と近 代的 の概 念と の区 別が ある

。 一 憲法 の本 来の 概念

本来 の概 念と して

、憲 法と は国 家の 根本 法を いう

。即 ち根 本的 の見 地で 国家 に関 して 規律 す る法 をい う。

…… かか る意 味の 憲法 はい かな る国 家に おい ても 存在 する

。憲 法な き国 家と いう もの は論 理的 に考 えら れな いの であ る。

…… 二 憲法 の近 代的 概念

ここ に憲 法の 近代 的概 念と は、 憲法 の概 念と して 近代 に至 つて 成立 した もの であ る。 近代 の 国家 論に おい て憲 法と いう とき は、 国家 の根 本法 であ つて 立憲 政体 を定 める もの のみ を指 して いう の例 であ る。

…… 第二

存在 の形 態に 着眼 する 概念

これ に実 質的 の概 念と 形式 的の 概念 との 区別 があ る。 一 憲法 の実 質的 概念

実質 的概 念と して

、憲 法と は国 家の 根本 法た る性 質を 有す る法 を指 して

、国 家が これ を根 本 法と する 意思 を表 示す ると 否と に関 せず

、称 する

。略 して 実質 憲法 とい う。

(16)

二 憲法 の形 式的 概念

形式 的概 念と して

、憲 法と は国 家が 国家 の根 本法 であ ると して 制定 公布 した 法を いう

。略 し て形 式憲 法と いう

。…

…右 の形 式的 概念 とし ての 憲法 は、 法そ のも のと して は、 前述 の本 来的 意味 の憲 法と 一致 する

。併 しこ れを 見る 着眼 点が 異な る。 然し なが ら、 前述 の近 代的 概念 とし ての 憲法 とは 一致 しな い。 立憲 政体 を認 めな い根 本法 であ つて も、 形式 憲法 たる 根本 法で ある こと を妨 げな いか らで

( )

ある

﹂。

16

この よう にみ てみ ると

、佐 々木 の憲 法概 念論 には

、戦 前と 戦後 で看 過で きな い相 違が ある

。そ こで まず

、戦 前の 憲法 概念 論の 特色 とそ の問 題点 をみ てお きた い。 戦前 期佐 々木 説の 第一 の特 色と

︵私 見に よれ ば︶ 同時 に問 題点 は、

﹁憲 法の 本来 の概 念﹂ と﹁ 憲法 の近 代的 概念

﹂ とを

、ま ず区 別し なけ れば なら ない とし てい る点 であ る。 もし

、佐 々木 が、 これ によ って

、伝 統的 用語 法と 同じ く

﹁憲 法の 近代 的概 念﹂ は﹁ 憲法 の本 来の 概念

﹂の 一種 であ ると いう 趣旨 を述 べた かっ たの だと すれ ば、 両者 を並 列 的に 掲げ てそ の区 別を 強調 する 表現 形式 はミ スリ ード だと いう こと にな るだ ろう

。ま た、 もし

、佐 々木 が、

﹁憲 法 の本 来の 概念

﹂と

﹁憲 法の 近代 的概 念﹂ とを 対置 して いる ので あれ ば、 佐々 木の いう

﹁憲 法の 近代 的概 念﹂ とは

、 立憲 政体 をと る国 家の 根本 法で ある から

、こ れと 対置 され る﹁ 憲法 の本 来の 概念

﹂と は、

﹁立 憲政 体を とら ない 国 家の 根本 法﹂ を意 味す るこ とに なる はず で、

﹁憲 法の 本来 の概 念﹂ のさ らに 下位 区分 とさ れる

﹁憲 法の 実質 的概 念﹂ が、 立憲 的た ると 非立 憲的 たる とを 問わ ず﹁ 国家 の根 本法

﹂の 意味 だと され てい るこ とと 平仄 が合 わな い。 戦前 期佐 々木 説の 第二 の特 色と 問題 点は

、﹁ 憲法 の本 来の 概念

﹂と

﹁憲 法の 実質 的概 念﹂ を区 別し

、﹁ 憲法 の本 来 の概 念﹂ を﹁ 憲法 の実 質的 概念

﹂お よび

﹁憲 法の 形式 的概 念﹂ の上 位概 念と 位置 づけ てい るこ とで ある

。引 用し た 箇所 を確 認す れば わか るよ うに

、こ の位 置づ けの 結果

、佐 々木 のい う﹁ 憲法 の本 来の 概念

﹂は

、奇 妙な こと に定 義 を欠 いた もの とな って いる

。﹁ 憲法 の本 来の 概念

﹂は

、そ の下 位概 念で ある はず の﹁ 憲法 の実 質的 概念

﹂と 実際 は

(17)

同義 のよ うに もみ える し、 また

﹁憲 法の 近代 的概 念﹂ との 対置 から する と、 上述 のよ うに

﹁非 立憲 的憲 法﹂ を指 す よう でも あっ て、 はな はだ 明確 を欠 く。 戦前 期佐 々木 説の 第三 の特 色と 問題 点は

、﹁ 憲法 の実 質的 概念

﹂と

﹁憲 法の 形式 的概 念﹂ の区 別の 仕方

、特 に

﹁憲 法の 実質 的概 念﹂ の理 解の 仕方 にあ る。 佐々 木の いう

﹁憲 法の 本来 の概 念﹂ が、 さら に﹁ 憲法 の実 質的 概念

﹂ と﹁ 憲法 の形 式的 概念

﹂と に区 別さ れる こと から

、﹁ 憲法 の近 代的 概念

﹂の ほう も、 それ が﹁ 憲法 の本 来の 概念

﹂ の下 位概 念で ある にせ よ、 対立 概念 であ るに せよ

、﹁ 実質 的概 念﹂ と﹁ 形式 的概 念﹂ に区 別さ れる こと にな ると 思 われ る。 現に 佐々 木は

、﹁ 近代 的意 味の 憲法

﹂と は﹁ 特に 国家 の根 本法 にし て立 憲政 体を 定む るも のの みを 指す の 慣例 と﹂ し、

﹁其 の形 式憲 法即 ち所 謂成 文憲 法た ると 実質 憲法 即ち 不文 憲法 たる とは 問ふ 所に 非ざ るな り﹂ とし て いる

︵傍 線は 本稿 筆者

。︶ ここ では

、﹁ 形式 的意 味の 憲法

﹂は 成文 憲法

、﹁ 実質 的意 味の 憲法

﹂は 不文 憲法 と等 置さ れ、

﹁形 式的 意味 の憲 法﹂ と﹁ 実質 的意 味の 憲法

﹂と が対 立概 念と 考え られ てい る。 しか し、 伝統 的用 語法 では

﹁実 質的 意味 の憲 法﹂ とは

、そ の内 容が 国家 の最 高諸 機関 の種 類・ 組織

・権 限の 基本 事項 等に 関す る法 規範 のこ と であ るか ら、 それ は不 文憲 法と 同義 では ない

。憲 法典 にま とめ られ てい ても

、複 数の 法的 文書 に分 散し てい ても

、 ある 部分 は法 典化 され

、あ る部 分は 不文 の慣 習で あっ ても

、そ うし た形 式と はま った くか かわ りな く、 内容 的に 最 高国 家諸 機関 の種 類・ 組織

・権 限の 基本 事項 等に 関す る法 規範 であ れば

﹁憲 法﹂ とよ ぶ、 とい う趣 旨な ので ある

。 つま り、

﹁実 質的 意味 の憲 法﹂ と﹁ 形式 的意 味の 憲法

﹂は

、法 規範 に関 する 異な る次 元の 分類 基準 なの であ って

、 対立 概念 では ない

。戦 前期 佐々 木説 には

、こ の点 の誤 解が ある よう に見 受け られ る。

憶測 を逞 しく すれ ば、 これ らの 不都 合に 気づ いた のか

、戦 後の 佐々 木説 は、

﹁性 質﹂ に着 眼す る分 類と

﹁存 在の 形態

﹂に 着眼 する 分類 との 区別 とい う新 たな 観点 を導 入し

、﹁ 憲法 の本 来の 概念

﹂と

﹁憲 法の 近代 的概 念﹂ を

﹁性 質﹂ に着 眼し た分 類、

﹁憲 法の 実質 的概 念﹂ と﹁ 憲法 の形 式的 概念

﹂を

﹁存 在の 形態

﹂に 着眼 した 分類 と位 置づ

参照

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