ラン クに ある 基本 的な 諸制 定法 によ って 規定 され てい るこ とは あり うる
。換 言す れば
、法 的意 味の
﹃経 済憲 法﹄ につ いて 語る こと がで きる か否 かを 確定 しよ うと する 場合 に問 題と なる のは
﹃形 式的
﹄憲 法で はな く、
﹃実 質的
﹄憲 法な ので ある
。 実質 的経 済的 憲法 とは
、経 済的 な財 貨・ 労働 力・ 事業 の秩 序を
、統 一的 な、 ある いは いず れに せよ お互 い同 士が 相互 に 規定 しあ う最 上級 の法 規に よっ て、 自覚 的か つ明 瞭に 規律 する ひと つの シス テム であ る。 この よう なシ ステ ムが 形成 され るの は、 とり わけ
、政 治的
・社 会的 有機 体の 内部 で、 経済 の本 来的
・機 能的 意義 が把 握さ れ、 経済 が合 理的 な格 率に 従う 相対 的に は自 律的 なま とま りと して
、一 定の 法的 基本 形態 で規 律づ けら れる 場合 であ る。 こう した
﹃経 済国 家﹄ にお いて は、 所有 権秩 序、 財貨 の生 産・ 分配 シス テム
、生 産力
・生 産手 段の 投入 シス テム
、企 業の 経済 的な 処分 能力 の範 囲・ 限 界、 経済 的な 集団 およ び団 体の 種類
・構 造・ 有効 性、 従属 労働 に従 事す る人 々の 法的 地位
、経 済活 動に 対す る国 家の 作用 の程 度と 限界 とい った 諸事 項が
、実 質的 経済 憲法 でカ バー され る本 質的 な領 域で
( )
ある
﹂。
34
フー バー のい う﹁ 形式 的意 味の 経済 憲法
﹂と は、 以上 のよ うな
﹁実 質的 意味 の経 済憲 法﹂ が﹁ 形式 的意 味の 憲 法﹂ のな かに 盛り 込ま れた もの
、す なわ ち、 憲法 典中 の経 済原 則に 関す る諸 規定 であ る。
﹁憲 法典 が、 経済 的な 財 貨・ 労働 力・ 事業 の法 的秩 序を 規定 する 諸原 則を 完全 に受 容す るこ と、 ある いは その 主要 なも のを 受容 する こと は あり うる
。そ の場 合に は、 それ によ って
、形 式的 経済 憲法 が成 立
( )
する
﹂。
35
⑸
法の 内容 に着 目し た﹁ 経済 憲法﹂の 観念 は、 今日 のド イツ の実 定法 学に も受 け継 がれ てい る。 その 例示 とし
て、 標準 的な 教科 書の 一つ とし て版 を重 ねて いる フロ ッチ ャー の﹃ 経済 憲法 およ び経 済行 政法
・第 五版
﹄の 冒頭 部 分に ある 概念 の説 明を みて み
( )
よう
。
36
フロ ッチ ャー によ れば
、出 発点 とな る上 位概 念は
﹁経 済法
﹂
W i r t s c h a f t s r e c h t
で ある。﹁ 経済 法は
、経 済過 程の 全体 およ び個 人の 経済 活動 に直 接作 用す る法 規を 包括 する
﹂。
﹁経 済法
﹂は
、さ らに
﹁公 経済 法﹂
ö f f e n t l i c h e s W i r t -s c h a f t s r e c h t
と﹁ 私経 済法﹂
p r i v a t e s W i r t s c h a f t s r e c h t
に 分類 され る。 その うち﹁公 経済 法は
、経 済過 程お よび 個 人の 経済 活動 に直 接作 用を 及ぼ し、 その 際に
、す べて の人 に対 して では なく
、高 権的 権力 の担 当者 に対 して のみ 権 利を 付与 し義 務を 課す 法規 を包 括す る﹂
。フ ロッ チャ ーに よれ ば、
﹁公 経済 法﹂ には 憲法 と行 政法 が含 まれ るこ と、 すな わち
、﹁ 公経 済法
﹂が
﹁経 済憲 法﹂ と﹁ 経済 行政 法﹂ から 構成 され るこ とに は広 く見 解の 一致 があ る。 しか し、 個別 的に いか なる 法素 材が
﹁経 済憲 法﹂ に属 し、 いか なる 法素 材が
﹁経 済行 政法
﹂に 属す るの かを 明確 に識 別す る こと はで きな い。
﹁他 の多 くの 法分 野と は異 なっ て、 経済 憲法 と経 済行 政法 の基 本知 につ いて は、 これ まで 両者 の 確固 たる 序列
K a n o n
が 提示 され るこ とは なか った﹂。 フロ ッチ ャー 自身 は、 入門 書の 性質 上、 核心 問題 に焦 点を し ぼる とし て、
﹁経 済憲 法と して は、 国家 と経 済と の関 係、 なら びに 基本 法と ヨー ロッ パ共 同体 設立 条約 に規 定さ れ た経 済活 動の 保護 を取 り扱 い、 経済 行政 法と して は、 広義 の営 業法
、な らび に︵ 国内 とヨ ーロ ッパ の︶ 補助 金法 を 取り 扱う
﹂と 述べ てい る。
⑹
この よう に、﹁経 済憲 法﹂ は、 まず は内 容に よっ て他 の法 規範 から 識別 され る﹁ 実質 的概 念﹂ であ る。 しか し、 ヴァ イマ ル憲 法は
、﹁ ドイ ツ人 の基 本権 およ び基 本義 務﹂ と題 する 憲法 第二 篇の 第六 章﹁ 経済 生活
﹂の 章に お いて
、一 五一 条か ら一 六五 条ま で、 経済 原則 関係 の諸 規定 に実 に一 五
ヵ
条を 割い てい た( )
ため
、ヴ ァイ マル 憲法 時代
37
に﹁ 経済 憲法
﹂と して 念頭 に置 かれ てい たの は、
﹁形 式的 意味 の憲 法﹂ に盛 り込 まれ た﹁ 実質 的意 味の 経済 憲法
﹂ とし ての ヴァ イマ ル憲 法一 五一 条以 下で あ
( )
った
。ド イツ 基本 法の 場合 にも
、そ の制 定当 初は
、そ もそ も基 本法 には
38
﹁経 済憲 法﹂ が含 まれ るか とい う問 題提 起が なさ れ、 また 今日 では
、基 本法 およ びE U法 の経 済活 動関 係の 諸条 項 が、
﹁経 済憲 法﹂ の名 称で 一括 され るの が一 般的 なよ うで ある
。 たと えば
、上 述の よう にフ ロッ チャ ーも そう であ るが
、シ ュミ ット
・ア スマ ンと シ
ョ
ッホ を編 者と する﹃行 政法 各論
・第 一四 版﹄ で﹁ 公経 済法
﹂の 章を 担当 する ペー ター
・ミ ヒャ エル
・フ ーバ ーも
、次 のよ うに 述べ て、
﹁経 済 憲法
﹂と は、 ドイ ツ基 本法 とE U法 に含 まれ る経 済原 則に 関す る諸 規範 であ ると して いる
︵傍 線は 本稿 筆者
。︶
﹁し たが って
、公 権力 の担 当者 に対 して
、経 済生 活を 形成 しこ れに 影響 を及 ぼす 観点 から
、特 別の 権利 義務 を認 める 法 規の 総体 を、 公経 済法 とよ ぶこ とが でき る。 これ には
、E Uと ドイ ツの 経済 憲法 およ び経 済行 政法 とい う部 分領 域が 包括 され る。 経済 憲法 と経 済行 政法 を厳 密に 区別 する こと はで きな いと して も、 経済 憲法 が、 EU の第 一次 法レ ベル また はド イツ 基本 法レ ベル で、 経済 政策 およ び経 済行 政の 基盤 を規 律す るも ので ある のに 対し て、 経済 行政 法は
、行 政の 任務 と権 限、 およ び経 済過 程に 参加 する 人の 公法 上の 権利 義務 を設 定し
、制 限し
、廃 棄す るこ とに よっ て、 公的 機関 が危 険の 防止 や経 済過 程の 分配
・指 導・ 促進 を目 的と して 作用 を及 ぼす 諸法 規を 包括
( )
する
﹂。
39
この よう に、 現代 ドイ ツの 法学 では
、﹁ 形式 的意 味の 憲法
﹂の 一部 分が
﹁経 済憲 法﹂ と理 解さ れて いる とい って よい
。し かし
、憲 法典 やE U法 の諸 規定 のど れを
﹁経 済憲 法﹂ とし て識 別し 一括 する かは
、個 々の 条項 の内 容解 釈 抜き には 定ま らな い。 その 意味 では
、﹁ 経済 憲法
﹂の 概念 は依 然と して
﹁実 質的
﹂な ので
( )
ある
。
40
︵
︶ これ に対 して
、ド イツ の法 学部 の講 義課 目で ある
﹁ド イツ 憲法 史﹂ の叙 述は
、少 なく とも 一六 四八 年の ウェ スト ファ リア 条約 によ る領 邦絶 対 25 主義 の確 立期 以降 を対 象と する から
、﹁ 実質 的意 味の 憲法
﹂概 念を 不可 避と して いる
。ド イツ 憲法 史研 究は
、歴 史学 系の 研究 者の みな らず
、 むし ろ憲 法学 者に よっ て遂 行さ れて きた ので
、ド イツ の憲 法学 者に とっ ては 実際 的な 問題 であ る。 翻訳 のあ るも のを 例に とる と、 F. Ha rt un g,
De ut sc he Ve rf as su ng sg es ch ic ht ev om 15 .J ah rh un de rt bi sz ur Ge ge nw ar t, 9. Au fl ., 19 69 .ハ ルト ゥン グ/ 成瀬 治・ 坂井 栄八 郎訳
﹃ド イツ 国制 史﹄ 岩波 書店 一九 八〇 年は
、表 題ど おり 一五 世紀 以降 の﹁ 憲法 史﹂ を叙 述対 象と し、 Ch . -F. Me ng er ,D eu ts ch eV er fa ss un gs ge sc hi ch te de rN eu ze it , 5. Au fl ., 19 86 .メ ンガ ー/ 石川 敏行 他訳
﹃ド イツ 憲法 思想 史﹄ 世界 思想 社一 九八 八年 も同 様で ある
。
︵
︶ 主要 な憲 法解 説書 は、 明治 維新 から 明治 憲法 制定 まで の期 間を
、ま がり なり にも 立憲 主義 的な 成文 憲法 であ る明 治憲 法の 制定 前史 と位 置づ け 26 て、 明治 政府 の動 きや 自由 民権 運動 につ いて ごく 簡単 にふ れる のを 通例 とし てお り、 この 期間 の︵ 実質 的意 味の
︶憲 法を 叙述 する とい う発 想に は欠 けて いる
。芦 部・ 憲法 一八 頁、 伊藤 正己
﹃憲 法・ 第三 版﹄ 弘文 堂一 九九 五年 三七
~四
〇頁
、佐 藤幸
・憲 法六 五~ 六七 頁、 樋口 陽一
﹃憲 法・ 第三 版﹄ 創文 社二
〇〇 七年 五一
~五 三頁
、野 中俊 彦= 中村 睦男
=高 橋和 之= 高見 勝利
﹃憲 法Ⅰ
・第 四版
﹄有 斐閣 二〇
〇六 年四 五~ 四六 頁︵ 高見
︶、 戸波 江二
﹃憲 法・ 新版
﹄ぎ ょう せい 一九 九八 年一 九~ 二一 頁、 辻村 みよ 子﹃ 憲法
・第 三版
﹄日 本評 論社 二〇
〇九 年三 三~ 三五 頁、 長谷 部・ 前掲 注︵
︶四 七頁 参照
。 20 これ まで のと ころ 日本 憲法 史を 対象 とす る唯 一の 通史 的叙 述で ある 大石 眞﹃ 日本 憲法 史・ 第二 版﹄ 有斐 閣二
〇〇 五年 は、
﹁実 質的 意味 の憲 法 を中 心と する 日本 憲法 史﹂ を構 想す るが
︵同 書八 頁︶
、全 一〇 章中
、第 一章 から 第六 章ま でを 占め る明 治憲 法制 定前 の時 期の 叙述 は、
﹁憲 法体 制成 立史
﹂︵ 同書 六頁
︶の 観点 に立 って 明治 憲法 と附 属法 令の 制定 の経 過を 追う もの で、 やは り必 ずし もこ の時 期の
﹁実 質的 意味 の憲 法﹂ を叙 述す ると いう 発想 には 立っ てい ない よう に思 われ る。 ちな みに 大石 眞と の対 談の なか で山 室信 一は
、中 国に は日 本の 明治 維新 から 明治 二三 年 まで の期 間に つい て、
﹁予 備立 憲期
﹂と いう 呼称 があ るこ とを 紹介 して いる
。大 石眞 /高 見勝 利/ 長尾 龍一 編﹃ 対談 集・ 憲法 史の 面白 さ﹄ 信山 社一 九九 八年 三八 頁。 注︵ ︶ に掲 げた 堀内 健志
﹁﹃ 憲法
﹄概 念と 憲法 学︵ その 二︶
﹂七 二頁
、八
〇頁 注︵
︶参 照。 40
︵
︶ 森田 寛二
﹁宮 沢俊 義と ケル ゼン
﹂︵ 長尾 龍一
=新 正幸
=高 橋広 次
=土 屋恵 一郎 編﹃ 新ケ ルゼ ン研 究﹄ 木鐸 社一 九八 一年
︶二 五七
~二 五八 頁。
︵ 27
︶ 基本 権と 国家 組織 の双 方を 一冊 で取 り扱 った ドイ ツ基 本法 の定 評あ る教 科書 とし て長 い寿 命を 保っ てい るZ ip pe li us /W ur te nb er ge r, De ut s -c 28 he sS ta at sr ec ht ,3 2. Au fl ., 20 08 と、 P. Ba du ra ,S ta at sr ec ht ,4 .A uf l. ,2 01 0を 例に とる と、 前者 の事 項索 引に は﹁ 経済 憲法
﹂﹁ 財政 憲法
﹂﹁ 文化 憲 法﹂
﹁宗 教憲 法﹂
﹁防 衛憲 法﹂ が掲 げら れて おり
、後 者の 事項 索引 にも
﹁経 済憲 法﹂
﹁財 政憲 法﹂
﹁宗 教憲 法﹂
﹁防 衛憲 法﹂ の語 があ げら れて い る。 バド ゥー ラの 国法 の索 引に はK ul tu rv er fa ss un gは ない が、 Ku lt ur st aa t﹁ 文化 国家
﹂の 語が 掲げ られ てい る。
︵
︶ P. Ba du ra ,W ir ts ch af ts ve rf as su ng un dW ir ts ch af ts ve rw al tu ng ,3 .A uf l. ,2 00 8, S. 6.
︵ 29
︶ Vg l. E. R. Hu be r, Wi rt sc ha ft sv er wa lt un gs re ch t, ,2 .A uf l. ,1 95 3, S. 21 . 30
Ⅰ
︵
︶ E. R. Hu be r, aa O. ,S .2 3.
︵ 31
︶ E. R. Hu be r, aa O. ,S .2 3f .
︵ 32
︶ E. R. Hu be r, aa O. ,S .1 8, S. 48 .
︵ 33
︶ E. R. Hu be r, aa O. ,S .2 7f .
︵ 34
︶ E. R. Hu be r, aa O. ,S .2 8. 35