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吉   田   和   夫

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(1)

信頼利益︵幻①一一Q﹈PO① り口什①﹃Φωけ︶に関する﹈考察

吉 田 和 夫

はじめに

       ︵1︶ 本稿では︑英米法における﹁信頼利益﹂ ﹁履行利益﹂概念の検討を行う︒なお︑英米法においては日本法や大陸法

とは異なり︑﹁履行利益﹂の代わりに﹁期待利益︵Φ×bΦOけ9一一〇ロ 一昌一①戦Φω一︶﹂という表現が用いられる︒両老は契約が

履行されたのと同様の経済的状況を作り出すことを目的とするものであって︑ほぼ同義語と言い得る︒

 さて︑一般に︑契約違反に対する第一義的救済手段は金銭賠償としての損害賠償であり︑特定履行が二次的な救済

手段とされる点で︑英米法は若干体系を異にすると言うことができる︒それでも︑最近では現実の履行の可能性が考

慮されるに至っている︒なぜならば︑損害賠償の付与が現実の履行の代替手段と見倣されるようになり︑そのため実

際に履行がなされたならばその結果もたらされたであろう価値に基づいて賠償額が算定されるようになったからであ

︵2︶る︒また︑損害賠償の目的は︑原告を契約が履行された場合と同等の状況に置くことではなく︑単に契約が締結され

早稲田社会科学研究 第37号(S63.10)

151

(2)

る前の地位に置くためのものだと言うことも可能となる︒後者の算定手段は︑被告が原告の利益を害する前に存在し       ︵3︶た原状に服せしむることをその目的とする不法行為法においては通常の算定手段であるし︑特に現代契約法の起源そ      ︵4︶      ︵5︶れ自体が不法行為的であるとすれば︑契約法も同様の立場を採るものと考えることも可能である︒

152

︵1︶ ﹁期待利益﹂及び﹁信頼利益﹂に関しては︑木下毅﹃英米契約法の理論︹第2版︺﹄︵東大出版会.昭和六〇年︶三九五頁

  以下︑同﹁アメリカ契約法における約束の法的拘束力と損害賠償の範囲﹂私法四八号︵有斐閣.昭和六一年︶二三五頁以

  下︑悶巳一肩卸囹臼αβρ↓詳勘乳帖§£ぎ欝蒸︒︒肺§○§ミ99b飛§︒鷺切−μ①K>ピ国ピ.一.認噸ωお︵H8①︶・参照︒

︵2︶ しD.竃●を諺oo>竃ρ↓寓財ピ﹀≦o閲OoZ↓幻︾o弓ω㎝︒︒O︵卜⊃像①Pお︒︒心Y﹁そして︑契約違反に対して損害賠償を与える際

  に︑請求している当事者は︑金銭賠償によって可能である限りは︑契約が履行されたならば置かれていたであろうと同様の

  状況に置かれるべきであるというのが法の一般意思である﹂︵ピ︒匹﹀詩ぢざω9じ団芝雲一げぎく.〇三8三ぎ一℃巳℃Oo.︑

  口㊤嵩︺諺・ρGoOピOoOS︶

︵3︶いO・閃島呂2ρ目鴇罫≦○﹁目︒零ω①2幽︵㊦讐①像﹂㊤︒︒ω︶・

︵4︶ =o旨乱Nミ無ミ驚ミ肉︒§織ミき蕊ミミミミ蕊O§ぐ貸凶猛職詳︒︒刈=♪国く・ピ・幻円く・O嵩︵這謹ソにおいて︑彼は︑契約違

  反賠償に関する﹁通常な﹂準則として期待利益を裁判所が確立したのは18世紀末になってからだと指摘したが︑ ωぎOωo昌

  はそれを批判する︵ωぎbω︒p↓ミきミ蹄§aし・§こミミ§蓮ミ︒ミ§登軽①d・0臼﹄・亡く・㎝ω・︒︵§㊤︶・︶︒

︵5︶≦>oo︾竃︒︒℃肋§ミ88卜︒嫡僧け器O・

一 損害の算定一概観

損害額は︑原則として︹損害賠償額11価値差損+それ以外の損失−支出を免れた費用一回避された損失︺という算

(3)

信頼利益(Rehance InterestNこ関する一考察

       ︵6︶定式によって計算されることになる︒

 ①﹁価値差損︵δωω尊く巴器︶﹂とは︑債権者が受けるはずであった覆行の額と︑︵もし受け取った物があるとす

るなら︶実際に受けたものの価値との間の差額である︒価値差損は︑仮定的合理人を対象とするのではなくて︑当

該当事者自身にとっての損失を基礎とする︒②﹁それ以外の損失﹂とは︑﹁付随的︵一昌O一◎ΦづけP一︶﹂損害及び﹁結果的

︵8口ω①ρ器暮一汗︶﹂損害を指す︒付随的損害賠償の対象には︑それ以上の損失を避けるために合理的と評価し得る努

力を行ったにもかかわらず結果的に被った損害も含まれる︒結果的損害には︑違反によって生じた人または物に対す

る被害等が含まれる︒例えば︑債権者に対してサービスを提供する際に物に対する損害を生ぜしめた場合︑その損

失を回復することがでぎる︵積極的債権侵害類似の状況︶︒③履行がなされたとしても︑支出したはずの費用を節約

したことによって結果的に債権者に利益がもたらされることがあり︑このような節約を︑ ﹁支出を免れた費用︵ooωけ

p<o己Φq︶﹂と呼ぶ︒例えば︑注文者の契約違反に対して履行を中断した建築請負業者が結果的に支出せずにすんだ

追加的支出が﹁支出を免れた費用﹂にあたる︒④違反がなけれぽ契約の履行に充てなけれぽならなかった財産の一部

または全てを利用し再配分することによって︑結果的に債権者にとって利益がもたらされることがある︒その結果生

じた節約が﹁回避された損失︵一〇ωω ㊤<O同島Φα︶﹂となる︒例えば︑建築請負業者が注文者の違反を理由に契約を解除

した後で他の契約に基づいて残った資材を使用した場合︑その際に生じた節約が回避された損失である︒あるいは使

用者から解雇された従業員が他の職に就いた場合には︑その職から過去または将来獲得した額は︑回避された損失と

いうことになる︒

153

(4)

︵6︶国・>9男﹀胃Z︒︒≦O閃↓芦OO2↓幻︾o↓ω︒︒鼻堅︒︒ミ︵巳︒︒悼︶●

154

二 期待利益を保護すべき根拠

 以上のような方法によって算定された期待利益を保護すべぎ根拠に関しては契約の基礎理論との関係で若干争いの

あるところである︒例えば︑この問題に対する回答としては︑心理学的要因︑契約に関する意思理論︑経済的または        ︵7︶制度的アプローチ等が上げられるほか︑近時︑以下のような様々な説明がなされている︒

 第一は︑毒茸の意義・市場経済等の経済的側面を重視するものであって︑約因によって支持された約束に基づいた

期待利益を保護することは︑人が自分の側の債務を履行することを奨励し︑その結果︑最も必要とされているところ      ︵8︶へ商品やサービスが流れていくという市場経済の機能を支持することになるというものである︒つまり︑当事者が信       ︵9︶頼利益しか回復できないとするならば︑そのような履行へのインセンティブは存在しないことになる︒同様のアプロ

ーチは︑法経済学者によっても採られている︒それによれば︑契約法とは︑経済的効率性と社会福祉とを増進させる

準則及び原則の体系であるとする︒そして︑交換取引約束に関する期待利益は︑原告には︑被告の履行があったなら

ぽ与えられたはずの価値を与え︑被告には︑最も高い価値を与える者と資源を交換するインセンティブを提供し︑そ       ︵10︶の結果︑効率的結果が促進されるのであると︑いう︒

 第二は︑﹁意思﹂・﹁道徳︵ヨO同胞︶﹂を重視するものであり︑不法行為とは対照的に契約上の義務は︑被告の自由意      ︵11︶思による債務の引受に依拠するものと考えるのをその出発点とする︒比較的最近にこの立場を強調するフリードの理

(5)

信頼利益(Reliance Interest)に関する一考察

論は古くからある意思理論のリバイバルであるとも言われ︑契約法全体を﹁意思理論﹂によって統一的に説明する点

に特徴がある︒

 このような﹁意思理論﹂に対する批判ないし反論の第一として︑実際には債務者が自由意思によって債務を引き受      ︵12︶けたとは言い得ない場合でも契約違反を理由として期待利益賠償が与えられることがあるとの批判がある︒その論者

によれぽ︑約束としての契約についてのより完全な理論とは︑約束は一応道徳的拘束力を有するものの︑それは約束

老の意思のためではなく︑正確には︑受約者の期待を裏切り︑約束老が受話者に与えた信任と信頼を裏切ること11悪

だからなのであるという︒このように解すると︑この見解は約束遵守の根底にある道徳と直接的に一致するので︑期

待利益規準が回復の自然な規準となり︑フラー㌧ハーデューの市場経済とポズナーの経済的効率性の説明は︑約束が      ︵13︶交換約束である場合に原告の期待利益を保護することの付加的理由を与えるにすぎなくなると結論付ける︒

 ﹁意思理論﹂に対する反論の第二として︑﹁意思理論﹂︵批判者の表現によれぽ﹁リベラル・セオリー﹂︶によれぽ︑

約定された履行の完全な価値−期待利益に対する権利一の付与は約束理論から当然に派生するものとされるけれ

ども︑標準的商事契約以外では︑期待利益賠償よりも︑信頼利益賠償が相当な場合がより多いことは現在一般に承認      ︵14︶されているとする︒つまり︑現実の法が期待利益付与につぎ消極的であるならぽ︑そこには︑履行義務を創造するの

は約束であるということにつぎ疑念があるに違いないとの認識に立つわけである︒さらに︑ミティゲイショソ法理      ︵15︶︵後述︶の理論的な扱いに難があるという︒すなわち︑ミティゲイショソという制約によって債権者は履行利益賠償を

受けられなくなる場合︑最終的な賠償額を約束者の意思に帰せしめることが困難となると主張する︒

 以上のように︑理論上ないし説明上の問題は残るものの︑ともかく期待利益賠償が相当︵碧胃8二讐①︶でないと

155

(6)

判断される場合には︑ ﹁信頼利益﹂に限って賠償を認めるのは確立した判例の立場となっているといえよう︒

︵7︶︵8︶

︵9︶

︵10︶

︵11︶

︵12︶︵13︶

︵14︶

︵15︶ 閲二=O村俸℃O﹃住二ρ切ミ㌧︑亀ロOけ⑦ピ9け窃刈1①ρ﹀.ψ噸ゆ9窮○≦ω.図にζ鵠︒覇ω閏O涛日○即日ω﹀乙︶ゆ幻国>o寓O男Ooz↓幻>O日一G︒︵δGo刈︶.ミ・国.諺.勺QωZ国幻噛国OOZO竃お>Z>P団ωあO閃ピ﹀要①㎝︷︷●︵口住oF6唱︶ρ喝皆曽yOQZ月勾諺O↓﹀○︒℃カO竃お国⁝﹀↓自国○凋畷○切OO2同訓︾O↓O>﹇O国﹇δ﹀↓δ2︵一㊤QoH︶の切q菊幻○≦ωサ恥ミ特︑a旨O掃ト僧けH¢・ミ曾勺・ω・︾叶ぐpF目げ︒=ぴ巽雪目ケΦo蔓︒︷Oo三二9ゆぎ国ψω﹀ピ○︒OZOOZ↓閃︸O︑門昌昌︵おOc①︶.ミ・

156

三 利益の分類

 契約違反による損害賠償法の目的は︑契約が履行されたときと同一の経.済的状況を作り出すことにあるという旧来

の立場に対して︑賠償の要素に関する新たな分析を行ったとして評価されているのがフラー論文である︒フラー論文       ︵16︶は︑三種類の利益を次のように定義する︒①原状回復利益QΦω葺信二〇ロぎ8お馨︶一原告が被告の約束を信頼して

何らかの価値を付与しているが被告は約束を履行しない場合︑裁判所は︑原告から受け取った価値を返還することを

被告に命じることができる︒その目的は︑一方当事者の犠牲の下に相手方が利得するのを回避することである︒②信

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信頼利益(ReHance Interest)に関する一考察

頼利益︵﹁①一一旨旨OΦ 一昌汁O﹁Φω汁︶1←原告は被告の約束を信頼してその地位を変更している場合︵例えば︑土地の買主が

売主の権原の調査に費用を支出し︑または他の契約を締結する機会を失った場合︶︑被告の約束を信頼したことによ

って原告が被った害悪を除去する目的で原告に損害賠償を与えることがでぎる︒その目的は︑約束がなされる前に彼

       ロ が置かれていたのと同じ状況に置くことである︒③受約者の信頼または約束者の利得とは関係なく︑約束が作り出し

た期待の価値を受約者に与︑捻ることができる︒特定履行訴訟において実際に原告に対して約束した履行を提供するよ

うに被告に命じることがでぎ︑または損害賠償訴訟において履行の金銭価値の支払を被告に命じることもできる︒こ

こでの目的は︑被告が約束を履行していたならば置かれていたであろうと同じ状況に原告を置くことである︒フラー

論文は︑第二次・ステ⁝ソ走大きな影響を与え㊥以上の・うな分析は従来の損害算定方法と対立するもので

はなく︑たんに同じ経済的堤を異な・た形式で芒たものに過ぎないともいえ菊建・リステイトメソトの規定

に対してではあるが︑利益を三種類に分類するだけでは何の準則にもなぞいないという織があるものの・Zフー

論文が提示した三種類の利益分析が現実の判例に相当程度定着し︑重要な機能を果たしていることは確かと言えよ

う︒

︵16︶団巨2即男︒a目︒鴨︒・§ミぎけ⑦ピ彗器凸卜

︵17︶ ここでは︑契約の無効は必ずしも前提ではないと考えられる︒

︵18︶ 第二次リステイトメソトでは︑次のような条文が新たに設けられた︒﹁第三四四条︹救済方法︵お日⑦巳︒の︶の目的︺本リ

  ステイトメントの定める諸準則に基づく司法上の救済方法は︑受約者の以下の利益の一つまたは複数を保護するためのもの

  である︒㈱﹁期待利益︵ΦもΦ︒$鉱§貯紳霞︒象︶﹂︑すなわち︑受約者が︑契約が履行されていたならばおかれていたであろ

157

(8)

  うと同じぐらい良好な状態におかれることによって︑交換取引利益︵げ㊦改心詳︒︷甑ωげ99品野鶏︶を取得することの利益 ㈲       58  ﹁信頼利益︵﹁¢一一曽︼POO 一口一〇﹃①ωけ︶﹂︑すなわち︑受約者が︑契約が締結されていなければおかれていたであろうと同じぐらい 1

  良好な状態におかれることによって︑契約に対する信頼から生じた損失を填補される︵﹁O一口σ口﹃o陰O︶ことの利益 ㈲﹁原状

  回復利益︵円①ωけ一けβ一一◎︼P 一HF一〇﹃O匂〇一︶﹂︑すなわち︑受約者が相手方に与えた利益︵σ⑦昌︒簿︶を自己に回復することの利益︶︵な

  おりステイトメント条文の翻訳は原則として︑松本恒雄﹁第二次契約法リステイトメント試訳︵一︶t︵五・完︶﹂民商法雑

  誌九四六四号五三三頁︑同五号一一五頁︑同六号八一九頁︑九五巻一号一三六頁︑同二号三亜七頁︵昭和六一年︶に依っ

  た︶︒

︵19︶ ︸・∪O諺ぴ︾ζ諺皆や一.冨.℃南家﹇ピρ日寓国ピ♪≦O男OQZ円幻>O↓ω㎝Obo︵ω乙OPHOGQ刈︶・なおイギリスでは︑ 一般に

  以上のような利益概念が認められているわけではないが︑実質的に期待利益賠償が妥当とされないような状況においては︑

  信頼利益のみの賠償が認められている︵しd¢幻O≦ω噛恥愚ミロ08直り舞卜︒6︶.

︵20︶ 出ロ臣oPミ累ミミ鱗導馬..さ疑§ミ含肺ミ霧肺..℃①刈Oo幻Z国Fい・署員・ざ心隔ざ刈︵一㊤︒︒b︒︶畳

四 期待利益賠償を制約する要因

ω﹁ミティゲイショソ︵9凶鉱σq鋤二8︶﹂による制約︵損害縮減義務ないし損害拡大回避義務違反があったとされる

場合︶

債権者は自らが実際に被った損失を基礎として期待利益の賠償を請求することができるというのが原則であるが︑

例外的に︑裁判所の目から見て損害賠償請求権者の側で当該状況の下で相当と思われる努力をすることによって回避      ︵21︶することが可能であったであろう損失に関しては︑損害賠償請求権者は賠償を得ることはできないという法理が確立

(9)

信頼利益(Reliance Interest)に関する一考察

している︒債権者も違反から生ずる結果を減少させるために自らできることを行うことが求められるのである︒損害

賠償請求権者が行うべき行為とは何か︑ということはそれぞれの事実によって異なってくるが︑特に重要な問題は︑

履行のための準備行為を中断することによって損害の拡大を回避すべき義務︵消極的義務ないし不作為義務︶及び他

の者と新たな代替的契約︵霊げω宰取①費鑓昌αqΦ目①昌叶︶を締結することによって損害の拡大を回避すべき義務︵積極的

義務ないし作為義務︶に関連して生じる︒       ︵22︶ まず︑第一に損害賠償請求権者が行うべきこととして︑履行のための行為の中断があげられる︒損害賠償請求権者

は︑債務者に鰻行ずる意思のないことを知った場合には︑通常︑自らの履行も中止することによってそれ以上の損害

の拡大を回避すべきであるという原則である︒代表的判例としては︑橋の建築契約をカウソティと締結していた業者

が︑カウソティが橋に通じる道路を建築しないことを決定し︑業者に工事中止を通知した後で被った損害の回復を求       ︵23︶めたところ︑裁判所はカウソティの責任を否定したというものがある︒

 損害賠償請求者が行うべきことの第二として︑他の者との間で代替的契約︵第三者への転売等を含む目的物の処分      ︵24︶行為等︶を行うことがあげられる︒損害を回避する目的で単に作業を中止するだけではなく︑さらに進んで相当な代

替的契約を締結するという合理的・積極的な行為を行うことが損害賠償請求権者に期待されるわけである︒

 なお︑損害拡大回避義務に関しては︑ ﹁損害回避行為は速やかに行われなければならない﹂他︑その相当性も要求

される︒②﹁予見可能性︵hoおω8︐︒甑=蔓︶﹂による制約

159

(10)

 予見可能性についてリステイトメソトは次のように規定する︒ ﹁三五一条  ︹予見不可能性および関連する損害賠

償の制限︺①違反をした当事者が︑契約を締結した時点では︑その違反から生じる蓋然性があると予見しうべきでな

かった損失に対しては︑損害賠償を請求することができない︒②損失は︑次の場合に︑その違反から生ずる蓋然性の

あるものとして予見可能であるとされる︒㈲事の通常の経過︵o乙ぎ帥蔓oo弩ω①oh①<窪一ω︶において生じた場合︑

または︑㈲事の通常の経過を越えてはいるが︑違反をした当事者が知りうべきであった特殊事情の結果として生じた

場合︒③裁判所は︑逸失利益︵一〇ωωoh冒︒簑︶に対する損害賠償を除外することによって︑または信頼によって被

った損失に対する損害賠償のみを許すことによって︑または諸般の事情を考慮して不均衡な補償を避けるために公平

の観点から必要であると自ら判断した場合にはその他の方法によって︑予見可能な損失に対する損害賠償を制限する

ことができる﹂︒予見可能性そのものが重大な問題ではあるが︑本稿では省略する︒

160

 ㈹損失の﹁確実性︵o①﹁$ぎ蔓︶﹂による制約

 一九世紀の中葉において︑契約上の損害賠償を付与する際の陪審員の自由裁量をコントロールする目的からイギリ

スの裁判官が予見可能性の要件を導入したのに対して︑アメリカの裁判官は︑同一の目的のための法理−不確実性      ︵25︶の要件を形成することに努めた︒この法理によって︑契約違反に対する損害賠償は︑﹁明確かつ満足な証拠によって︑      ︵26︶実際に被ったことが立証され﹂かつ﹁確実性をもって︑見込み又は推測の余地を残さずに︑立証される﹂ことが要求

される︒それは債権者に対して︑証拠の優越によって立証しなければならないという通常の要件よりも明らかに重い      ︵㌘︶負担を課するものであって︑金銭評価が困難または不可能な権利を承認することへの司法の消極さを表している︒

−字

(11)

︵21︶︵22︶

︵23︶

︵24︶

︵25︶

︵26︶

︵27︶ <Oユ賃﹁O<・関蹄3Qこ宍Oぴ一〇刈①9Q◎軋国≧O・国国℃︒ ◎◎Q・司﹀謁Zoり≦O刃円押簑︑︑亀ロ08P暮OQ①Ohh︒幻oo匹ロひqゲpヨOo虞ロ蔓く・ピ億曾Φ口bdユ侮oqoOo二ω㎝男ba傷ωOμ︵転けゴ AU一﹁ HO卜◎㊤︶.腎﹀カZω≦Oカ↓国噛防ミ︑︑職ロO臼O卜Q噛⇔酔oo①H︒ミ・麟酔○OoOゲO凶︷鵠昌く・O巳くOひH①Z・団●幽OQり●駆ゆH・閃諺幻Zω≦○刃︑円=燭肋鷲辱︑亀ロOけO卜⊃噛けGoGQ一●

信頼利益(Reliance Interest)に関する一考察

      ︵28︶

信頼利益賠償の付与が相当とされる場合

 通常の契約賠償準則によれぽ︑請求当事者は︑金銭賠償で充分な場合に限り︑契約が履行された場合と同様の地位

に置かれる権利を有する︒原告が有利な契約を締結したことを立証でぎる場合には︑通常の準則によって完全な賠償

が与えられる︒しかし︑それに加えて契約を信頼して行った出費を回復する権利を原告は有しない︒何故ならば︑そ

のような出費は︑約定の履行を得るためにはいかなる場合であっても行わなけれぽならなかったであろうものだから

である︒その一方において︑契約が原告にとって利益とならないものであった場合には︑その出費は約定履行の価値

を越えることがある︒ある意味では︑被告の違反によって不利な契約から解放されるという点で︑原告に有利となる

こともある︒

︑つまり︑ ﹁信頼﹂が賠償額算定手段として重視されざるを得ない事実︑ないし履行価値ではなく支出の信頼が争い

161

(12)

となった事案でイギリスで問題となったものとして︑︾昌σq=9︒目︒δ乱ωざ旨い箆・く.閑Φoα︹一〇醤︺一の.bd●①O︒があ

る︒本件では︑役者たる被告は原告制作のテレビフィルムで主役を演じることを約束し︑原告は︑被告との合意以前

に︑制作準備のために支出を行った︒被告の履行拒絶に対して原告は制作をキャンセルし︑企画を放棄した︒損害賠

償に関する通常の算定手段を適用すると︑キャンセルされなかった場合にもたらされたはずの利益の評価がなされる

必要があろう︒しかし企画が成功した場合の利益を算定することは極めて困難である︒企画が成功する可能性が大き

い場合には︑企画を放棄せずに代わりの役者を見つけるべく努力することが望まれるであろう︒イギリス控訴院は︑

契約賠償の通常の算定手段の代替として︑契約前支出を含む出費を回復することを選択する権利を有すると判示し

た︒その選択を説明する一つの方法として︑もし彼が望むならば︑契約がなされる前に置かれていたであろう地位に

置かれるべぎ権利を原告は有すると言う︒しかしこれでは︑被告が何らの義務をも引き受ける前に原告が支出したと

言わざるを得ない契約前の出費の回復を説明できない︒デニソグ卿は契約前支出の回復を次のように述べて正当化し

た︒ ﹁彼︹被告︺は︑もし契約に違反すれば︑それが契約締結の前後いずれであるかを問わず︑全ての支出が無に帰

することを予期すべきであった一あるいはともかくも彼に転嫁されることが合理的である︒彼は無に帰した全ての

出費に代わる損害賠償を支払わなけれぽならない﹂︵讐①軽︶︒しかし︑これに疑問を呈する見解によれぽ︑契約前支出

が被告の違反によって﹁無に帰した﹂という結論は︑被告が契約に違反しなかったならば支出は﹁浪費﹂されなかっ

たであろうという仮定を含むからであり︑言い換えれば︑被告が契約を雁行していたならば契約前支出を含む出費は      ︵29︶回復されていたであろうということが前提なのであって︑まさに原告が立証でぎないこととされる︒

 それにもかかわらず︑本件の結果は︑当該映箇の正否可能性の証明がない場合には︑当該企画は少なくとも失敗

162

(13)

し︑少なくとも収入によって当該支出は回復されていたであろうということについては︑

働くべぎであるという・とを根拠として支持することが可能であるとされ麺その他に・

裁判上の救済は信頼利益賠償に限定されることになる︒ 違法行為者の不利に推定が以下に掲げるケースでも︑

信頼利益(Reliance Interest)に関する一考察

 ω﹁合理的な確実性︵同$ωO多重①O費鼠ぼ蔓︶﹂の要件を充足しないために期待利益付与が認められないケース

 損害金額を合理的な確実性をもって評価することが可能な場合には︑期待利益賠償が認められる︒確定性が問題と

なるのは︑結果的損害に関する賠償が請求される場合が多い︒算定が不能と評価される場合には︑いくつかの代替的

算定方法がある︒例えば︑不動産が契約の目的となっており︑買主側がそこから上げることができたであろう収益を

立証できなかった場合等では︑賃貸価値︵賃料相当分︶の賠償のみが認められる︒また︑被告の違反が原因となって

失われたチャンスまたは機会の価値の賠償のみが認められる場合もある︒最も重要なのは︑期待利益賠償が﹁合理的      ︵31︶確実性﹂をもって算定され得ない場合に認められる信頼利益賠償である︒

 例・兄ば︑X︵製造業者︶とY︵運送会社︶との間で︑ある製品を展示会に出品するために船で運搬することを契

約︒製造業者の期待は︑その展示が即座に売上に結び付くことにはなく︑将来の売上に結びつくような興味を引けば

十分と考えていた︒運送会社の方でもそのような意図を知っていたとする︒展示したことによって将来の売上につな

がるか否かは不明であって︑製造業者の期待利益賠償額を合理的な確実性をもって算定することはできない︒そこで

信頼利益賠償が問題となる︒この場合の信頼利益は︑展示スペースの賃借料及び従業員を展示会に派遣する際の費用

  ︵23︶である︒また︑〇三80qoOo=︒αΦ=ヨ9ロげく・Uoヨ陽¢メト◎Oq冒ト︾bやU誌︵HOω鱒ソで︑プロモーターはボクサーた

163

(14)

る冒︒閃∪①日bω①団との間で︑世界ヘビー級チャンピオンを決める試合を行うことを契約したところ︑ボクサーが契

約に違反したという事案で︑プロモーターの得べかりし利益の喪失は損害賠償として回復するにはあまりに思惑的に

すぎると判示された︒しかし︑プロモーターには︑ボクサーが契約を履行するであろうことを信頼して被った出費

1すなわち︑試合が行われるはずであったスタジアムでのプランのために建築家に支払った金額︑ボクサーの身体

検査を行わせる目的で試合地に赴いた従業員の合理的な出費︑交通費等一の賠償に限り認められた︒

164

      ︵33︶ ② 履ゲ汀不能⁝または目的の挫折のケース

 履行不能または目的の挫折が起こった場合︑契約は消滅し︑両当事者とも責任を免れる︒後発的事実発生の前に一

方当事者が相手方に何かを交付していた場合には︑返還義務が生ずる︒問題となるのは︑後発的事実発生の前に一方

が信頼支出を行っていたが︑それが相手方に何の価値ももたらさない場合である︒この場合︑判例は明示的には回復

の代替手段として信頼利益賠償を認めてはいないものの︑事実上判例の多くは︑実際の利益は交付されていない場合

であっても現実には信頼利益賠償を認めていると解する余地もある︒

 例えば︑原告は被告所有の家を第三ストリートから第一ストリートへ移築することを契約︒大体中央地点まで運ん      ︵鈎︶だ後に︑原告の過失によらずして︑火災によって焼失した︒履行が不能となったため︑両当事者は義務を免れた︒こ

の場合︑原告は期待利益賠償を得ることはできない︒しかし︑同様のケースにおいて︑提供したサービスが被告に

何の利益ももたらさなかった場合であっても︑提供したサービスの合理的な価値の原状回復が許されることもあり得

︵錫︶る︒

(15)

信頼利益(Reliance Interest)に関する一考察

       ︵%︶ ③ 詐欺防止法の適用される契約

 詐欺防止法によって強行不可とされる口頭契約も違法または公序違反というわけではないのであるから︑履行を拒

否した被告に対し利益を与えている原告はそれを原状回復として回復でぎるということは判例上確立している︒しか

し︑同法によって期待利益の回復が禁じられているというのもまた確かである︒ここでも困難な問題は︑信頼利益

−被告に何らかの利益を交付している原告の支出一が回復可能かどうかということである︒最近まで︑判例の多

数は︑信頼出費の賠償を認めることは︑制定法に違反するものと解していた︒しかしながら︑少数の判例は︵﹁利得﹂

要件の緩和を伴った︶ ﹁原状回復﹂理論︑または受約者の予期し得た信頼は約束者が詐欺防止法を採用することを禁

ずるとの理論︑によって救済を認めている︒

 例えば︑農夫が口頭で土地所有者と︑テキサスの所有者の土地を一年間管理・運営し︑それと収獲物の一定割合を

受け取るという契約を締結した︒農夫がテキサスに到着し︑一年間という期間が始まった︒契約を信頼した農夫は︑

ケンタッキーにある自宅を売却し︑相当額の支出を行って家族共々テキサスに移った︒農夫到着直後︑所有者は契約      ︵訂︶を拒絶︒当該口頭契約は︑詐欺防止法の﹁一年間﹂条項に該当するために︑強行し得ない︒最近までの多数判例は︑

農夫の移動費用は︑そのような信頼支出は何ら所有者に利益をもたらすものではないから回復でぎないとしていた︒

しかし現在では︑裁判所によっては︑農夫は所有者の要求に従って支出を行い︑ ﹁利益﹂をもたらしているというこ

とを根拠としてそのような費用の原状回復を認めている︒また︑農夫の予見可能な信頼は︑所有者の詐欺防止法の援      ︵38︶用を禁ずるとの理論によって回復を認めるものもある︒

165

(16)

       ︵39︶

 ω 作為または不作為を誘引する贈与約束等i約束的禁反言

      66 リステイトメソト九〇条は次のように規定する︒﹁︹作為または不作為を合理的に誘引する約束︺①約束が作為また 一

は不作為を受約老または第三者の側において誘引することを約束者が合理的に予期すべき場合であって︑実際にその

ような作為または不作為を誘引した場合は︑約束の強行によってのみ不公平が避けられるときは︑その約束は拘束力

をもつ︒約束違反に対して認められる救済は︑公平の観点から制限することがでぎる︒②慈善的寄付約束︵oげ費田鼠巨①

ω二σの自首江︒づ︶または婚姻継承的不動産処分︵日園丁σq①ω①巳Φヨ①馨︶は︑その約束が実際に作為または不作為を誘引

したとの証拠がなくとも︑第一項に基づく拘束力をもつ﹂︒この場合︑約因によって支持されない約束も強行可能と

されるが︑正義の求めるところによってL︵同条コメントd︶制限される︒このような非交換取引︵昌︒㌣び鎚σq簿ぎ︶の

強行根拠は︑ ﹁救済は︑時として約束の条項ではなく受約者の信頼によって算定される﹂というものである︒救済に

課されたそのような制約は︑裁判所の自由裁量内で︑ ﹁正義の求めるところによって﹂決定される︒

 例えば︑経済的に困窮した甥がロースクールに入学する可能性のあることを知った叔父は︑甥の二五歳の誕生日に

一二︑○○○ドルを贈与すると約束︒叔父の約束を信頼して︑甥はロースクールに入学し︑教育︑本︑その他の費用

のために六︑○○○ドルを他から借金した︒甥の二五歳の誕生日の一週間前に︑叔父は約束を撤回する意思を甥に通

知した︒叔父の約束は︑それが素因によって支持されていなかったとしても︑拘束力を有するのであって︑裁判所

は︑自由裁量を行使して︑約束全額の強行︑すなわち一〇︑○○○ドルの支払を命令することもでぎる︒しかし両者

間には﹁交換取引︵げ費σqρぎ︶﹂がないために︑裁判所は︑正義は期待利益の賠償を求めていないと判断する可能性も

あり︑また叔父に信頼利益賠償すなわち六︑○○○ドルの支払を命じることによって甥に救済を与えることを選択す

(17)

         ︵40︶︵41︶る可能性もあるという︒

信頼利益(Reliance Interest)に関する一考察

︵28︶ 以下に掲げるリステイトメソト条文の中で︑﹁信頼利益﹂という文言を用いているのは︑第三四九条︑第一五八条︑第二

  七二条だけであって︑その他は学説上﹁信頼利益﹂賠償を認めているとされる条文である︒

︵29︶ 期待の価値が証明されない場合を扱うリステイトメントの条文は三四九条及び三五一条である︒ ﹁三四九条︹信頼利益に

  基づく損害賠償︺第三四七条に定める損害賠償額の算定に代わる方法として︑被害を受けた当事者は︑履行のための準備ま

  たは履行そのものにおいてなされた出費を含む信頼利益を基礎とした損害賠償を請求する権利を有する︒ただし︑契約が履

  行されていたとしても被害を受けた当事者がこうむっていたであろうことを︑違反当事者が相当の確実性をもって立証しえ

  た損失額については控除される﹂︒本条に対応する第一次リステイトメソト第三三三条は次のように規定していた︒﹁三三三

  条︹如何なる場合に損害賠償金は一部履行に関する費用を標準としてこれを算定することができるか︺原告が契約の履行に

  関しまたは履行のために必要な準備に関してなした出営︵o巻︒ロ岳一霞︒ω︶で相当と認むべきものの額は︑以下の制限内にお

  いて賠償的損害金中に包含せしめられる︒ ︵イ︶右の出揖は︑被告の約束した契約価額の全額︵︷巳一8巨茜♀寓一8︶を超

  過してこれが償還を請求することはでぎない︒ ︵ロ︶準備に要する費用は︑利益および損失を見積もるにあたってこれを履

  行費の一部とみるのを正当とすべき場合を除いて︑償還を請求することはできない︒ ︵ハ︶契約価格の賦払金で既に受領さ

  れたものおよび履行完了に全部費消されるはずであった手持材料の価格はこれを控除しなければならない﹂︵末延三次訳﹃条

  解 米国契約法﹄︹弘文堂・昭和三二年︺に依る︶︒また端的に︑期待の完全な補償が過度と見られるときを扱うのは三五一

  条③である︒﹁三五一条︹予見不可能性および関連する損害賠償の制限︺③裁判所は︑逸失利益︵一〇器oh蔑︒津︶に対する

  損害賠償を除外することによって︑または信頼によって被った損失に対する損害賠償のみを許すことによって︑または諸般

   の事情を考慮して不均衡な補償を避けるために公平の観点から必要であると自ら判断した場合にはその他の方法によって︑

  予見可能な損失に対する損害賠償を制限することができる﹂︒

︵30︶一・冨・団閃篤︒寓>700Z↓幻>O↓図国ζ国u閏ωH8︵H㊤︒︒一︶.の事例      67      1噛︵31︶ 関連するリステイトメント条文は以下の通り︒ ﹁一五八条︹原状回復を含む救済︺①本章に定める諸準則の適用を受ける

(18)

  すべての場合において︑いずれの当事者も第二四〇条︹﹁合意された等価物としての一部履行﹂︺および第三七六条︵﹁契約  を取消す・とができる場合の原状回復﹂︺に定める準則に基づき・原状回復を含む救済窪胴焦することができる・②本章に鵬

  定める諸準則の適用を受けるすべての場合において︑本章に定める諸準則と第一六章︵﹁救済方法﹂︶に定める諸準則とをと

  もに適用しても不公平が避けられないときは︑裁判所は︑公平の観点から必要とされる条項に基づいて︑同当事者の信頼利

  益の保護を含む救済を与えることができる﹂︹本条の適用対象は︑錯誤︺︒﹁二七二条︹原状回復を含む救済︺①本章に定め

  る諸準則の適用を受けるすべての場合において︑当事者のいずれも第二四〇条および第三七七条︹﹁実行不能︑達成不能︑

  条件の不成就または受益者による拒絶の場合の原状回復﹂︺に定める準則に基づき︑原状回復を含む救済を請求することが

  できる︒②本章に定める諸準則の適用を受けるすべての場合において︑本章に定める諸準則と第一六章に定める諸準則とを

  一緒に適用しても不公平が避けられないときは︑裁判所は︑公平の観点から必要とされる条項に基づいて両当事者の信頼利

  益の保護を含む救済を与えることができる﹂︹本条の適用対象は︑履行の実行不能と目的の達成不能︺︒

︵32︶ 蜀力田O蜜諺Z.肋愚ミμ9ω9け目OPの事例︒

︵33︶ ω.嵐・≦﹀uU>寓ω噛↓躍閻ピ︾≦○勾∪︾蜜>O霧G︒お︵巳︒︒ω︶・

︵34︶ ミ.

︵35︶ 局幻濁U竃>7切§ミぎ8も︒9暮HO卜Q・

︵36︶ リステイトメント条文は以下の通り︒ ﹁一三九条︹信頼して行為したことを理由とする強行︺①ある約束が受忍者または

  第三者の側に作為または不作為を誘引することを約束者が合理的に予期すべきであり︑かつ実際に作為または不作為を誘引

  した場合︑約束の強行によってのみ不公平が避けられるときは︑その約束は詐欺防止法の規定にもかかわらず強行すること

  ができる︒約束違反に対して認められる救済は︑公平の観点から制限することができる︒②約束の強行によってのみ不公平

  が避けられるのか否かの決定にあたっては︑以下の事情が重要である︒㈹他の救済方法︑とりわけ解除および原状回復の利

  用可能性ならびにその適切さ ㈲求められている救済と関連した当該作為または不作為の明確かつ実質的性質 ω契約条項

  についての証拠が当該作為または不作為によって補強される程度︑または契約の締結および契約条項が明白かつ説得力ある

  証拠によって他の方法で証明される程度 ㈲当該作為または不作為の相当性 ㈲当該作為または不作為が約束者によって予

  見可能であった程度﹂︒

(19)

信頼利益(Reliance Interest)に関する一考察

︵37︶ 悶勾高b竃>7防ミV︑職ロ08Q◎O・暮H鍵●

︵38︶ 同所所掲の事例︒

︵39︶ 関連するリステイトメント条文は以下の通り︒ ﹁八六条︹受取済みの利益に対する約束︺①以前に約束者が受益者から受

  け取った利益を認めてなされた約束は︑不公平を防ぐのに必要な限度において拘束力をもつ︒②約束は︑次の場合または限

  度において︑第一項に基づく拘束力がない︒㈲受益者が利益を贈与として供与していたか︑または他の理由で約束老の不当

  利得とはならなかった場合︑または㈲その価値が利益と不釣合である限度︒なお本条は性質としては準契約的であって︑受

  け取った利益が限度とされる﹂︒﹁八七条︹オプション契約︺①申込は︑次の場合にオプション契約として拘束力をもつ︒㈲

  それが︑申込者の署名入りの文書でなされ︑申込をすることに対する塗壁と称するものについて述べ︑かつ公正な契約条項

  に基づく相当期間内の交換を提案するものである場合︑または㈲制定法によって撤回不可能とされる場合︒②申込が︑承諾

  の前に︑実質的性質をもった作為または不作為を被申込者の側において誘引することを申込者が合理的に予期すべき場合

  で︑かつ︑実際にそのような作為または不作為を誘引した場合には︑その申込は︑不公平を避けるのに必要な限度において

  オプション契約としての効果をもつ﹂︒﹁八九条︹未履行契約の変更︺いずれの側でも完全には履行されていない契約に基づ

  く義務を変更する約束は︑次の場合または限度において拘束力をもつ︒㈹契約締結時に両当事者によって予期されていなか

  つた事情を考慮して︑変更が公正かつ公平である場合︑または㈲制定法によって定められた限度︑またはω約束を信頼して

  なされた重大な地位の変更を考慮して︑公平の観点から強行が必要とされる限度﹂︒

︵40︶ 周国国∪竃>7簑ミ縞ぎ88噂讐同O刈・

︵41︶ なお以上の他にリステイトメント第一五条も﹁信頼利益﹂賠償を認めた条文とされている︵匡乱︒︒︑簑ミ犠ロ08b︒9鉾

  刈8・︶︒﹁第一五条﹁心神喪失または心神耗弱︺①心神喪失または心神耗弱により以下の状態にある者は︑取引に入ることに

  よって取消しうる契約上の義務を負担するにすぎない︒㈹その取引の性質または結果を合理的な態様で理解しえない場合︑

  または︑㈲その取引に関して合理的な態様で行為しえず︑かつ相手方がその者の状態を知りうべき場合︒②契約が公正な条

  項に基づいて締結され︑かつ相手方が心神喪失または心神耗弱の事実を知らない場合︑第一項の取消権能は︑契約が全部も

  しくは一部履行されたことにより︑または事情の変化により︑取消が不当となる限度において消滅する︒そのような場合に 69       1  おいて︑裁判所は︑公平の観点から必要とされる救済を与えることができる﹂︒

(20)

おわりに

170

 アメリカ損害賠償法の特徴は次のような点にあるものと思われる︒まず︑完全賠償・期待利益︵履行利益︶賠償を

あくまでも原則としながらも︑︑三アィゲイショソ︑予見可能性︑損害の確実性等の制約要因を活用し︑当事者間で損

害の公平な分担を図ろうとする志向が強い︒

 期待利益賠償を原則とするという点に関しては︑そもそも当事者が契約に拘束されるのは何故かという契約の拘束

力に関する最近盛んな論争との関連も無視できない︒そこで︑意思理論に疑問を呈し︑むしろ両当事者とも未だ履行

に着手せずに﹁約束﹂があるに過ぎない完全未履行状態の契約について︑無条件で拘束力を与えるのは妥当でないと       ︵42︶し︑契約の拘束力を認めるとしても︑期待利益賠償を認めることは例外的であると強調する見解さえ存する︒しか

し︑様々な議論のあるところではあるが︑期待利益賠償を原則とする基本的立場は変更されるには至っていないと評

        ︵43︶価することができる︒

 ︑・・ティゲイショソが争点となる事案は我が国では︑過失相殺または因果関係の中断等の理論によって法的に処理さ

れるものと思われるが︑我が国では過失相殺は不法行為の領域ではかなり研究が進んでいるものの︑債務不履行に関

しては必ずしも重視されていなかったのではないかと思われる︒

 予見可能性については︑アメリカにおいては︑損害の確実性の原則とともに︑損害の公平な分担を実現する際に︑

期待利益賠償に何らかの制約を課するための一つのファクターとして利用するのが専らであるのに対して︑我が国で

(21)

信頼利益(Reliance Interest)}こ関する一考察

は予見可能性を前面に打ち出し︑かつ予見可能性ないし因果関係の存否のみを理由とする傾向が強いと思われる︒そ

して︑そのようにして制約された損害賠償を端的に﹁信頼利益﹂と呼び︑期待利益賠償が相当でない局面でi期待

利益賠償では過大であるがためにi信頼利益賠償のみに限って与えるという発想は我が国とは大きく異なってい

︵44︶る︒そこには︑期待利益︵履行利益︶は契約の有効を前提とし︑信頼利益は契約の無効を前提とするという発想も存

しない︒ 例えば藏疵担保責任・契約締結上の過失責任等について特にそうであるように︑一応法的構成を異にすると見るべ

き我が国においてアメリカ法の示唆するものを直接に採用することは困難ではある︒しかしながら︑契約の拘束力の

問題を再検討するとともに損害賠償の範囲を統一的理論によって処理するという点は日本法にとっても大いに参考に       ︵45︶なるものと考える︒

︵42︶ 頃.ω●﹀↓頃﹀押目出国害ω国︾Z︼︶聞>FO閃岡力両国uOζO句OoZ↓幻︾o↓〒刈︵6お︶§二℃即O舅︒︒霧噛寓︒閑﹀﹇ω曽>2︼︶

  ピ﹀≦㎝よ︵一①Oo一︶.等︒

︵43︶ 芝﹀∪∪︾ζの讐⇔§ミロ︒εωωゆ暮㎝お・

︵44︶ 例えば︑ 国四賢主導く.旨oOoo・寓・国●一H心志=①﹀︑①凸︵一㊤b︒㊤︶は次のような事実︒原告患者が手に火傷を負って被告

  医師のところに治療を受けに行ったところ︑皮膚移植に興味を持っていた被告外科医は手術によって手を完全な状態に回復

  させることを契約した︒ところが手術は失敗に終わり︑手術前よりもかえって悪化させてしまった︒契約違反を理由とする

  損害賠償請求においては︑手術前の手の状態と手術後の手の状態を比較した場合の差額1すなわち信頼利益言置iと︑

  完全な手の状態と手術後の手の状態を比較した場合の差額〜すなわち期待利益賠償iとが検討された︵結果的には︑期 71      1  待利益賠償が認められた︶︒

(22)

︵45︶ ただ︑契約の拘束力の問題︵拘束力の根拠付け︶と損害賠償の範囲の関係については︑木下教授が既に指摘されているよ

  うに︵木下・前掲注︵1︶論文二三四頁︶︑両者は事実上結びついているとしても︑本来的・理論的にも結びつくものなのか

  一あるいは結びつくべきものなのか一という点については︵論証が困難だということも含めて︶依然として疑問の余地

  がない訳ではないと思われる︒また︑当然ながら︑本稿で概観したようにかなり柔軟な法的処理を許容する場合には︑裁判

  官の果たす役割がより大きくなり︑その自由裁量の余地も広くなる︒判例を総合的に分類・検討し︑個々の問題の詳細な比

  較及び解釈論を行うことは今後の課題とさせていただきたい︒

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