九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
市街地の住環境整備における計画立案手法に関する 研究
内田, 晃
九州大学人間環境学研究科都市共生デザイン専攻
https://doi.org/10.11501/3166831
出版情報:Kyushu University, 1999, 博士(人間環境学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
4. 3 r全体構想Jと「地織別構想」の関係から見た策定プロセスのタイプ
4. 3. 1 地域別構想、の策定状況
( 1 )地域別構想、の策定予定
都市計画マスタープランは一般的に「全体構怨」と「地域別構想、」によって構成されている。地 域別構想は、 都市計画法改正の大きな目的のひとつである「地域に符着したきめ細かな計|珂Jを 推進するためとの,意味合いが強い。建設省都市局長の通達I R)でも全体構恕と地域別柿位!の関係に ついて、『全体構想、に示されたものを地域別において、詳細化、 具体化する事現と、 逆に地域にお いて積み上げたものが全体構想となる事項が考えられるので、 相互的、 有機的な関係を保つよう に留意すること。』としてある。この通達に基づき、これまでに策定された全国の多くの都市で都 市マスの中に地域別構想が盛り込まれている。 しかし人口がある程度集積した大都市や、 人I 1M 加都市と異なり、 地方都市、 特に人口規模の小さな自治体や旧集落の集積で形成される内治体で は「全体Jと「地域」 の認識の違いがあり、 住民参加の地区単位の意識も行政上の単位と異なっ ている場合もあるのではないかと考えられる。そこでここでは地方都市における地域別格怨の策 定状況の特性を把握するためにまず、 地域別構想の策定予定があるかどうか、 ある場合は地氏|天 分数とl地区の人口 ・面積、 さらには地区区分の際の根拠についても尋ねた。
地域別構想、を策定する予定の有無に関する設問に対する回答を集計した結果を|苅4.3.1に示す。
通達も地域別構想を策定することを前提とした内容となっているが、実際に九州における実態を 見ると、 64自治体(全体の86.5%)が策定する予定としている。「予定なしJとした自治体は10 自治体(全体の13.5%)に過ぎない。 これらの自治体の人口規模は3万人以下の町( 9自治体) が多く、 また都市計画区域率が20%未満の都市が多い。 過疎化が進み、 都市計画としての機能を 果たす市街地の範囲も急速に減少したこのような都市では、地域別構想、のための地区を新たに設 定する必要性がないという判断がされたものと思われる。
図4.3.1 地域別機想、策定予定の有無
. 141 -
( 2 ) 地区区分数
さらに地域別構想を策定する予定があると11可答したれ治体については、そのj也I)(�I�分数とおお よその地区人口について尋ねた。 地区人口については、!日|答が得られなかった1'1 r台体に|辺り、1'1 治体の人口を地区区分数で除した値を使用している。
表4.3. Iは、 各自治体の地区区分数を人口規模別に表したものである。 当然のことながら人r J
規模が小さい自治体は地区区分数が少なく、人口規模が大きい自治体は地区区分数が多くなる傾 向にある。特に、50万人以上の自治体であげられた地区区分数は25地区、50地区とかなり多い。
表4.3. I 人口規模別地区区分数
地i疲区分数
2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 16 25 50 無回答 全体
人口規模 �l 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 2 1
0% 33% O<}も 0% 0% 0% 0% 0% 0% O<}も 0% O<}も 0% 0% 0% 67% 100%
1�3 1 9 5 5 2 。 。 。 。 。 。 。 。 6 30
3% 30% 17'1も17% 7% 0% 3% 0% 3% O'}も 0'1も O<}も 。1% 0% 0% 20% 100%
3�5 。 。 1 3 2 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 3 9
。,OÆ。 0% 11% 33% 22% 0% 0% 0% 0% 0'1も 0'1も 0% 0% 0% 0% 31% 100%
5�10 。 。 2 2 2 2 。 。 1 1 。 。 14
O<}も 0% 14% 14'1も 14% 7% 14% 7% 0% 0'1も 7<}も 7% 7% 0% 0% 7% 100%
1O�30 。 。 1 1 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 3
0'1も 0% 33% 33'1も 0% 0% 。,Olc。 0% 。IO,{。 33'1も 0'1も 0% 0% 0% 0% 0% 100'1も
30�50 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 3
0% 0'1も O<}も 33'1も 0% 33% 0'1も 0% 0% 0% O'}も O'}も O'}も 0% 0% 33% 100'1も
50� 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 。 .ー今
0% O'}も 0'1も 0% 0% 0% 0'1も O<}も 0% 0% 0% O'}も 0% 50% 50'}も 0% 100%1
全体 10 9 12 6 2 3 1 1 13 6111
2% 16% 14<}も 19% 9% 3% 5,}も 2,}も 2% 2% 2% 2% 2% 2% 2,}も 20% 100%1
( 3) 1地区の人口・面積
刈4.3.2に示すようにl地区の平均人口では1万人未満の規模に地区区分を行っているIJ治体 が圧倒的に多い。 平均地区人口の最小は、 1地区を約1,000人の地区に区分しており、 最大はl 地区を6万人の地区に区分している。また図4.3.3に示すように、 地区間積で見ると、2 0krnt未満 の自治体が25 (地域別構想策定予定自治体の39%)を占めている。最小の地区面積は、1 .5km2で、
取大の地区面積は 95.5km2とかなり幅広い分布となっている。
森村の東京23区の都市整備方針・地区別計画を対象とした調査3)によると、 東京23医がわーっ ている地区別計画の地区人口は1�6万人の間に大部分が属しており、 最小で約6,000人、 故大 で約16万人の区分となっている。 この調査と今回の九州における調査を比較すると、 九州の(1治 体の方が小規模の人口単位で地域別構想、を策定していることが分かる。 地区而積については、 1
,....__. 3 krn2の区が多いが、 最小で 0. 67km�、 最大11. 61 km2の分布となっている。 人円砕け交の泣いがあ
るため、 東京の事例と比較すると1地区がより広い範囲で設定されていることが分かる。
- 142 -
23(35.9九) 17(26.6九)
4(6.3九) 0---0.5
1--- 1. 5
2---2. 5 2.5---3 3以上 ト5---2 0.5--- 1
(〈同)ロ〈
25 20
13(20.3九)
10 15
自治体数
。 無回答
1地区平均人口別の自治体数 図4.3.2
16(25.0%)
19(29.7九) 6(9.4九)
0--- 10---
20--
モ30--
� 距40--
回凶50"""
安 60--- 70---
20 13(20.3%)
15 10
自治体数
。 不明
1地区平均地区面積別の向治体数
- 143 - 図4.3.3
( 4 )地域区分の根拠
さら に、 地域別構想、を策定予定の自治体 に対して、 地域I�分の桜拠と与えられる5つの項tIを 提示し図4. 3. 4 に示す複数回答結果を得た。 ここで「物用的宅問分断要点」と は、 道路、 河川な どのことを示している。
全体的に多かったのは、 「小学校区」を単位として地区区分を行う自治体で8 rtI J 4町(地域別 構想策定予定自治体の34%)あった。次いで多いのが「行政区界・自治会」を取枕とした地医|足 分を行う自治体で12市5町(地域別構想策定予定自治体の27%)ある。 また、 I打の万が多いのが
「中学校区」と「行政区界・自治会Jで、IßJの方が多いのは「小学校区」と「物理的宅l1iJ分断要点J とな っている。特に「行政区界・自治会」を選択した市は市全体の40%もあるのに対して、 O1Jは 市の半数にとどまっており、 逆に「物理的空間分断要素Jを選択した町は町全体の33%あるのに 対して、 市は6.5%とかな り開きが見られた。
小学校区 25.8%
45.5九
中学校区 6.5%
行政区界、 自治会 盟 41.9%
18.2%
6.5%
物理的空間要素 33.3九
その他|
」16.1九口市 口町
0% 10% 20% 30首 40% 50%
図4.3.4 地区区分の根拠
ー144 -
4. 3. 2 策定プロセスのタイプ分け
以上のように、 九州でも8割を超える自治体で地域別構想を策定している、 又は策定の予定が あること、 しかし地域別の地区規模はより少ない人口、 より広い而積で設定されている傾向が分 かった。 さらにアンケート調査の 「策定プロセスの問題点」の設問においても「小さいIIlyである のに地域別構想をする必要があるのか」 などという疑問点もあげられていた。
そこでここでは全体構想と地域別構想という関係に配慮し、対象向治体を両楠想、の策定粁手時 期と完了時期によって大きく3つの型の7タイプに分類、した(図4.3. 5)。
「全体構想、型」は地域別構想を策定せず.に全体構想、のみの都市計向iマスタープランを策定するタ イプである。「完全分離型Jは全体構想、の策定を完了してから地域別構想に着手するタイプで、地 域別構想、は完全に全体構想の枠の中での策定となる。従っていわゆるトップダウン的なマスター プランとなる可能性が高い。「同時進行型」 は、 全体構想、と地域別構怨が同時に進行するlI!jWJがあ るタイプで、 その時期にお互いの調整や検討内容のやり取りを行うことで、 より整合性の向いマ スタープランとなる可能性がある。このタイプは全体構惣と地域別構想の着手・完了時期の違いに より更に5つのタイプに細分類、できる。タイプ1は全体構想策定中に地域別構想、に取りかかり、全 体構想が先に策定完了するタイプ。タイプ2は同じく全体構想中に地域別構惣、に取りかかるが、同 時に策定完了するタイフ。 タイフ3は全体構怨策定期間中に地域別構想に取りかかり、 地域別構
-全体構想型 -完全分離型
手 完了
全体構想 全体構想
地域別構想 地域別構想
圃同時進行型
タイプ1 タイプ2
若手 完了 手 完了
全体構想 全体構想
地域別構想 地域別構想
タイプ3 タイプ4
着手 完了 手 完
全体構想 全体構想
地域別構想 地域別構想
タイプ5
望号手 完了
全体構想 地域別構想
図4. 3. 5 策定プロセスのタイプ
ー145 -
煙、が先に策定完了するタイプ。 タイプ4は全体構恕、 地域別構危!ともr�iJ11.子持Tllijll.'j:7é (するタイ プ。 タイプ5は同時着手するが、 全体構似が先に策定完(するタイプ。 大きく分けて以上のタイ プに分類できた。
次に表4. 3.2に示すように各タイプに該当するr-I治体を人口規模や線引きの有無、 都市計1I1lÎr)(�
域率等とのクロスから考察する。「全体構想型」は74自治体のうち10白治体が談、líし、 そのすべ てが人口5万人未満の都市で、 未線引きの小都市がほとんどを市めている。行政区域にr'îめる都 市計画区域の面積も20%未満の都市が多く、全体と地域を区分する必要のないという認I識の強さ が表れている。
「完全分離型Jに該当する13自治体のうち9自治体が未線引きで、人n 3)j人未満の都市が10 自治体と「全体構想型」と傾向は似通っているが、
都市計画区域面積の比率が「全体構位!1�Jに 該当する自治体よりも相対的に高く、地域別構想、を策定する必要性があることが分かる。しかし、
治体によっては地域別構想を住民主体で策定する意向はあるものの、まだ地域が成熟していな いため、 まず全体構想、を策定し、 地域の成熟にあわせて地域別構想、を策定するという考えのもと にこのようなプロセスで策定しているところもある。
「同時進行型Jの5つのタイプの中ではタイプ2やタイプ4のように全体構想と地域別精怨を同 時に完了するプロセスが最も一般的で、特に同時着手同時完了であるタイプ4は線引きの有無 人口規模に関係なく幅広く用いられている。 や
表4.3.2 策定プロセスのタイプと人口指標とのクロス
全体構想型 完全分離型 同時進行型
タイプ1 タイプ2 タイプ3 タイプ4 タイプ5
置手 寛T薗"" ""7竃手 ヲn睡手 ""7薗手 ""71.等 ""7竃手 完了
無回答 合計
プロセスの 全体構想 " 同町・・・令 _...‘
=tr:;:
..タイプ
地減見1)構想 醐田園砂 圃闘争 園間+
市町T別 市 2 (2.7%) 4 (5.4%) 2 (2.7'>) 8 (HI.8"'.) J (1.4".) J 2 (lb.2U.) o (11.11'>)
�
�5叫) 33 (判lJn'ø)町 8 (10.8"'.) 9 (12.2".) 2 (2.7".) 4 (5.4".) J (1.4"'.) J 1 (14.�".) 3 (41".) 3 (4.1"'.) 4 1 (55.4'1.)
線引き 有 J (1.4".) 4 (5.4%) 2 (2.7'も) 6 (8.1"'.) 1 (1.4",) 9 (12.2司j 。(0.(門} J (14匂} 24 P2.4司}
無 9 (12.2".) 9 (12.2'も) 2 (2.7弓} 6 (8.1'>) J (1.4".) 14 (IH.Y".) 3 (4.1'>) 6 (81%) 50 ("7""')
人口規模 1万�3万人3万�5万人1万人未満 J (1.4".) 6 3 (4.1 '>) (8.1".) 9 J (1.4'>) J (1.4%) (12.2".) 2 1 。(0.0匂)(1.4弔)(2.7'>) 2 (2.7",) 3 o (4.1".) (U.O".) o 1 o (1.4".) (0.(門)(110".) 10 (日5Ø'ø)3 1 (41".) (1.4"'0) 。(0.1内}2 (2.7%) 1 (1.4".) 4 o 1 (1.4'>) (5.4'>) (11.11".) 10 36 (岨(,I"'I'.)6 (11句".)(8.1".)
5万�10万人 o ((1.(1".) J (1.4".) J (1.4'>) 5 ('..8".) J (1.4'>) 5 (1・B".) o (0.0".) J (1.4".) 14 (18切司}
10万�30万人 o (り0%) o ((1.(1".) 。(0.0司) 2 (2.7弔} 。(11.1円} J (1.4".) o (0.11".) 。(011".) 3 (4 l'もj 30万�100万人100万人以上 o 。(0.0'>)(0.0句} 。(11.0'>)1 (1.4'>) o 。(0.0%)(11。弓) o o (0.11'も}(り()Cl'.) 。(0.0".)o (0.0",) 2 (2.7".) 1 (14%) 。(011%)o (111内} o 1 (0.(円)(1.4"'1 2 3 (4.1".) (2.7"1
20%未満 8 (10.84ら} 1 (1.4'>) 1 (I.4".) o (11.0"0) o (0.0。も} 5 ('..8'も) o (“υ".1 2 (2.7".) 17 m(内}
20-40、未満 1 (14'>) 3 (4.1喝} 。(0.11".) 2 (2.7".) J (1.4'\) 2 (27'も} o (11.11".) 2 (2.7'>) J J (144".)
行政区波面積に
40-60\未満 1 (1.4".) 3 (4.1・ー} 1 (1.4叫} 2 (2.7弓} o (0.11"'.) 4 (5.4",) 。(00"') o (00"') 1 1 (14句".)
対する都市計画
60-80\未満 J (l.4�) 1 (14%1 2 (2.7'\) 。(0白Qt".) 1 (14%) o (0.1)'\1 1 (14'も}
区減面積 o (11日号)
6 (8.1".)
80-100\ o (日f円) 5 (68"') 1 (1.4"') 5 (l.H叫) 1 (1.4"'1 9 (122�1 2 (2.7'�) 2 (2.7%) 25 pl.8"o1
不明 o (O.lI".j o (00句} o (00引 1 (14弓} o (Oll"'j 2 (27'も} 1 (}4'\) 。 {り11'も} 4 (5.4".)
合計 10 (135%) 13 (P.b".) 4 (5.4%) 12 (16.2弔} 2 (27"<) 23 ()l.l略) 3 (41弓} 7 (Y 5・川 74 (11川.11".)
.146.
4. 3. 3 小結
ここでは各自治体の策定プロセスと住民参加方法の関係や特徴をIY1らかにするために、「全体的 惣、」と 「地域別構想J 策定の有無や策定時期などの関係から策定プロセスの似[r1Jを犯挺した。
地域別構想、については全体の8割を超える自治体で策定予定としていること、逆に地域別構危!
の予定のない自治体は都市計画区域率が20%未満の都市が多いことが分かった。
さらに全体構想と地域別構想の有無により策定プロセスのタイプを「全体構想、別J、 「完全分離 型」、「同時進行型Jの大きく3つの型に分類し、 さらに「同時進行型」についてはその符手とン.己 了の時期の違いによりさらに5つのタイプに細分類、した。 最も一般的だ、ったのはrIrîJ 11与進行}I�IJJ で、 全体の6割を占め、 その中でも全体構想、と地域別構想が同時に完了する2つのタイプが全体 の5割近くを占めた。特に同時着手同時完了であるタイプは線引きの有無や人円 規模に関係なく 幅広く用いられていることが分かった。
また「全体構想型」に該当するすべての自治体が人口5万人未満の都市で、 未線引きの小若jSrb"
がほとんどを占めており、 同様に「完全分離型」に該当する自治体も人口3万人未満で未線引き の都市が多かった。 完全分離型を採用した自治体の中には、 地域別構想、を住民主体で策定する意 向はあるものの、まず全体構想、を策定し、住民参加の下地を作り、地域の成熟にあわせて順次、地 域別構想、を策定するという考えがあるととも分かった。
このように自治体の規模や住民参加に対する意識の違いが、策定プロセスの選択に大きな影響 を与えることが分かった。 次節では策定プロセスにおける住民参加の動向を把隠するために、 作
自治体がとった住民参加の手法について分析する。
" 147噌
4. 4 住民参加タイプの分類と特徴
4. 4. 1 住民参加の手法
住民参加については「計画素案作成段階Jと「計画素案促示後」の2段階に分けて�-え、 それ ぞれ 11項目を提示し、 複数選択で回答して もらった。 図4.4. 1と凶4_4.2はそれぞれの集計紡果 である。各項目の内容は、 自治体の全住民に対して行ったアンケート (全住民アンケート)、 一部 の住民を 対象としたアンケート(一部住民アンケート)、 広報誌に ハガキ等をつけでな凡を募集す
る(広報誌による意見収集 (以下、 広報誌))、 公聴会 、 地域説明会 、 住民代表をつ;めて計|而を策 定する策定委員会 (住民を含めた策定委員会 (以下、 策定委員会))、 ワークショップの実施、rn
画策定 参加者の募集 (参加者募集)、 その他と なっている。
( 1 ) 計画素案作成段階の住民参加
まず、 計画素案作成段階の住民参加については、 市町と もに 「一部住民アンケート」を 利用し ている自治体 が最も多く50自治体(全体の68%)に ものぼる。「全住民アンケート」も合める(以 下、「一部住民アンケートJと「全住民アンケート」をまと めて「アンケートJと表_gl)と全体の
88%の自治体 がアンケートの利用により、 住民の意向を把握している。 また、「地域説明会の開催」
(以下、 地域説明会)、「関係者へのヒアリングJ(以下、 ヒアリング)、「住民を含めた策定委員会J (以下、 策定委員会) も それぞれ20%を趨えている。
「アンケー卜」、「公聴、会Jは市・町を問わず利用され る手法であるが、「広報誌による,意見の収 集J(以下、 広報誌に「地域説明会の開催J、「ヒアリングJ、「地域別協議会」、「住民を含めた策定 委員会」、「ワークショップJは市の方が利用している割合が高い。特に「広報誌J、「ヒアリング」、
「策定委員会Jではその傾向が顕著である。
県別の傾向としては「アンケート」はどの県で も 利用され る割合が高い。 佐賀県では割合が他 と比べて低いが、 これは佐賀県のアンケート調査回答 自治体のすべて がほとんど住民参加を実施 せずに 策定したという特徴があるためである。 長崎県は他県と比べて「全住民アンケート」実施 している自治体の割合 が非常に高く、「策定委員会J rヒアリングJの割合も高い。 また、「ワーク
ショップJの利用による計画策定を 行っている自治体はほとんどが福岡県のÎl治体であった。
( 2 ) 計画素案提示後の住民参加
計画素案提示後の住民参加で 市町と もに 多いのは、 「地域説明会の開催Jで32ドI r内体 (全体の 43 %)を占めている。 「広報誌」 も20向治体 (全体の27%) が実施している。 ーノjで「全住民ア
ンケートJ r参加者 公募Jを行っている自治体はなかった。「一部住民アンケートJ、「広報誌」、「ヒ アリングJ、「地域別協議会J、「策定委員会」、「ワークショップjはrUが利川している割合が向い。
「公聴会」は町で 利用され ている割合が市の約3倍高くなっている。
- 148-
全住民アンケート 一部住民アンケート
広報誌による意見収集
2411!"
公聴会の開催
地主義説明会の開催 244�U
30"1"
20(�'h
関係者へのヒアリング 26% 39%
地I妥別協議会の設置
住民を含めた策定委員会 22% 3びy"
ワークショップ
参加者公募 - 全体(74)
市
その他 輯露軍 町(41 )
0% 20% 40% 60%
図4.4.1 計画素案作成段階の住民参加
図4.4.2 計画素案提示後の住民参加
- 149 -
68れ'/n 6 ;'�。
6A'目白
80%
ここまで、計画素案作成段階の住民参加と計画素案提示後の住民参加をそれぞれ凡てきたが、こ こで各段階の住民参加の特徴を比較する。
素案作成段階の住民参加は「アンケート」 を行っている向治体が全体の88 %を内めていたのに 対して、 提示後の住民参加では全体の5%の自治体しか行っていない。 逆に、 素案作成段階には、
ふ体の12%であった 「広報誌J は27%に、 「公聴会Jは5%から12%に、 「地域説明会」 は24%
から43%にそれぞれ増えている。
また、「地域別協議会」、「策定委員会」、「ワークショップJは各段階で割合にあまり変化が見ら れない。「地域別協議会Jを行っているのは素案作成段階で7自治体、 素案提示後で6白治体であ るが、 両段階で、継続的に行っている自治体は4自治体となっている。 同様に、 「策定委員会」は、
素案作成段階16自治体、 素案提示後15自治体で、 そのうち継続的に行っている円治体は11 ,',治 体ある。 さらに「ワークショップJ では、 素案作成段階6自治体、 提示後4自治体で、 うち3口 治体は継続的に行っている。
以上の結果をまとめると、 計画素案を作成する段階で、 住民の意向を知るために「アンケート」
などの間接的に意見を公聴するような手段が多く利用され、 素案提示後は、 その素案に対する意 見を求めるために 「広報誌J、 「公聴会」、「地域説明会」、 「ヒアリングJ などの手法を用いて、 住 民の素案に対する意見を求める住民参加が行われていることが明らかになった。 これは、 住民参 加の位置づけや目的が、素案作成段階は住民の意向を聴取するための参加であったのに対して、促 示後の参加は素案周知とそれに対する意見公聴のための参加へと変化しているめと忠われる。ま た「地域別協議会」、 「策定委員会」、 「ワークショップ」 など、 計画策定の現場へ直接住民が参加 する手法は素案作成段階から提示後まで継続的に行われている傾向が明らかになった。
- 150 -
4. 4. 2 住民参加タイプの分類
日リ節ではアンケート調査から九州地域の自治体において取られている住民参加の手法を「素案 作成段階」及び「素案提示後」に分けて考察した。 ここでは都市マス策定において各自治体がど のような住民参加の手法を組み合わせているか、さらにはどの時点で住民参加を実施しているか という都市マス策定の一連のプロセスにおける住民参加タイプの実態を詳細に肥医するために、肢 も住民参加の性質の違いに影響があると思われる 「素案提示」を節目と促え、 住民参加タイプを
「計画素案作成段階Jと 「計画素案提示後Jという2段階に分けて住民参加の分類、を行う。
都市マスの策定における住民参加の手法にはその意図や利用される時期によって以下の3つの 手法に分けられる。第1の手法は住民の意向を調査・把握するための「 意見収集・周知手法J(ア ンケート、ヒアリング等)、第2の手法は計画素案作成後に素案を提示し、それに対する住民の怠 向を把握する「公聴手法J (ヒアリング、 広報誌による 意見の収集、 公聴会等)である。これら2 つの手法は都市局長通達18)の中で提示されている住民参加手法(1)とほぼ一致している。さらに第 3の手法は素案作成段階と素案提示後の両段階で用いられる「協議・検討手法J (住民を含めた策 定委員会、 地域別協議会、 ワークショップ等)である。素案作成段階では住民が行政との共同作 業を通して策定現場で計画を検討し、さらに素案提示後は提示された素案の内容を深くしていく ための作業を行う。住民と行政の対話を中心とした 手法であることから、 計画案への住民意向を 反映する上で重要な役割を果たすものであり、 通達のイメージを超えるものであると言える。本 論ではこれら3つの手法の 「素案作成段階」、「素案提示後」での選択の組み合わせによって、 住 民参加タイプを図4.4.3に示す8つのタイプ(2)に分類した。
-151 -
1111td公聴ありれUMi--↓一D二段階協擁タイプ
c公
憶与しDへ一尉略協議タイプ
ハ〕公聴後協議タイプ
ふ公聴なし協議タイプ
円凶作成段階協纏タイプ
公聴タイプ 住民参加手法の選択
白吋 白吋
( ì 意貝 ( ì
I
fi I竺干 f主| 政1:::写| 民 1
\ ) 、J 来型�鋭明 1.. ) 、J
8T8
分類タイプ
gJl�.'/if1忽ヲEM
く主な司書加手法〉
全住民アンケート 一部アンケート 七アリング
・広報箆による意見の収集
協議・検討手法
く主な多加手法>
・住民を含めた策定委員会 地峻別協!I会 つーワショッづ
公厳ヲE,)f
く主な司書加手,圭〉
-ヒアリング
・広報箆による意見の収集公健会
地減説明会
担S議・検討手法
く主な司書加手法〉
住民を含めた策定委員会 地域別協議会 -つ一勺ショッづ
通達レベル通達レベル
計画素案作成段階計画素案提示後
i D 二段階重視型
1 I
c 繁耳H@示後ー視型
,-...l一- -一 円j_ � I 、 A行政主導型
!
4 B 繁案作成段階軍視主2 1住民参加が素案提示前後のどちらに重点が置かれているかに着自した類型化
住民参加の時期]とその内容から見た8つのタイプ分け
- 152 - 図4.4.3
4. 4. 3 住民参加タイプの特徴
図4.4.3に示すように、 住民参加がどの時点で重要視されているかによってiA行政主導刷l iB素案作成段階重視型J i C素案提示後重視型J iD -段階屯視烈」の4つの引に分けられ、
さらに「素案提示後Jにおける住民参加手法の選択の違いによってAaからDdまでの8つのタ イプに分類できた。 ここでいくつかのタイプについて特徴を述べる(表4.4. 1)。最も多く談、11し たのは 「行政主導型」である iA b公聴タイプJで29内治体が該当した。 このタイプはぷ楽-促 不前後とも通達で提示されている住民参加手法(1)を選択したタイプで、 最も通達のイメージに近 い一般的なタイプであると言える。素案提示後に住民の意向を聞き、 意見を計Ilhjに反映できる点 では評価できるが、素案作成段階では収集された意見やその反映方法等が行政内部に閉じられ、策 定作業現場の公開性がないので計画素案自体は行政サイド寄りの計阿と言える。
同様に 「行政主導型」であるiA a 意見収集タイプJには13臼治体が該当する。 素案作成段 階ではアンケートやヒアリングの意向調査のみで、 どのように怠見が反映されているか等の策定 現場が、 住民に対して公開されていない。さらに素案提示後も一切の住民参加を行わない公開性 のないタイプで、 通達で求められているレベルをほとんど満たしていないと言える。
逆に両段階で様々な手法を組み合わせ、 最も広く深く住民参加を求めたタイプとして「て段階 重視型JであるiDd 公聴あり二段階協議タイプ」があげ.られる。住民全体に対して周知lを行い ながら、 さらに一部住民は策定現場に入り深いレベルまで検討している。また提示後も継続I'I'�に 公聴を行いつつ、 広く深い住民参加を求めた最もバランスのとれた組み合わせと言える。しかし ながら時間も技能も必要となるため経験や蓄積の少ない自治体にとってはかなりの負担になると も考えられる。
住民参加9イプ
A行政主導型
日素案作成段 階重視型
素案提示後 C重筏型
D二段階重俊型
Aa意見収集骨イプ
Ab公聴骨イプ
B.作成段階 tßl量ヲイプ
Dd 公聴あり 二段階。�n直ヲイプ
表4.4.1 住民参加タイプの特徴
素案作成段階の 住民参加
怠見収u.とのみで、1-
素案提示後の住民多加
令くなし
特徴
井��,定悦'1刊をも υ'J(/){1 J(参加を1ih/�\、公開刊のたいタイプで. JI�
体的に怠見をf-rう場 泊必でilt'l'さJl亡し、ろ11 !(参加lのイメーパ'沿いlî\、 般的化ケイ l土少ない IJffイミされたみ匂に対して11î(1二|プ 指定拠'1哨的公聴:-tり,Q礼行十l巾11"1:.(映できるが、井i矧j.)戊
芯}l収lI!í量、 部iの
対する公聴をlrう If!lr.排出tWlされた岱凡地・11政内部にI�Iしら*1�j;'),Hllhi�.'.t:n(.1.
1:1行政ザイド'!.�りのa�III'Jと,fえる 令< I�し
" 153 -
13 I (17.6%)
29 I (39.2%)
ウ (2.7%)
その意味では、 住民参加lの経験や蓄積が少ない白治体 にとって実情にあった参加タイプとJiえ るのが「素案作成段階重樹型JのrB b協議後 公聴タイプjで8rì治体がl淡、11する。 ぷ案作成段 階では住民全体に幅広く周知し、 怠見を得ながら作成し、 素案提示後は素案に対するなはを公聴 する比較的バランスがと れたタイプで、 住民の主体的な参加 ではないが、H引Hl(1サ. f支能的にも比 較的簡易な手法の組み合わせによって広範囲の 住民の意向を知ることができる。以上の4タイプ で全体の9割近い65自治休が該当する。
4. 4. 4 小結
ここでは策定プロセス における住民参加の動向を把握するために、各ド1m体がとった住民参加!
の手法 について 分析を行った。
計画素案を作成する段階では、 住民の意向を知るために 「アンケートJ などの間後的に怠見を 公聴するような手段が多く利用され、 素案提示後 は、 その 素案 に対する意見を求めるために「広 報誌」、「公聴会」、 「地域説明会」、「ヒアリング」 などの手法を用いて 、住民の素案に対する志thl を求める住民参加が行われていることが明らかになった。 また「地域別協議会J、「策定委員会」、
「ワークショップJなど 、計画策定の現場へ直接住民が参加 する手法を採る門治体は数こそ 少ない が、 素案 作成段階から提示後まで通して継続的に行われている傾向が明らかになった。
さらに住民参加が作成段階と提示後のいず‘れの時点で重要視されているかによって住民参加タ イプを「行政主導型」、 「素案 作成段階重視型」、「素案提示後 重視型」、「二段階重視型Jの4つの 型に大分類し、さらに素案提示後 における住民参加手法の選択の違いから「意見収集タイプJ、「公 聴タイプ」、 「作成段階協議タイプ」、「協議後公聴タイプ」、 「公聴なし協議タイプJ、 「公聴後 協議 タイプ」、 「公聴なし二段階協議タイプJ、「公聴あり 二段階協議タイプJの 8つの住民参加タイプ に分類した。 その結果全自治体の6割近くが「行政主導型」である「公聴タイプJ と 「意見収集 タイプ」 に該当して おり 、 住民 に対する公開|生が少なく 行政サイド寄りの住民参加手法が依然と して主流であることが分かった。
- 154 -
4. 5 結論
本章では九州地域の自治体に対するアンケート調資を行い、都市計i'I!îマスタープランの策定動 向を把握する と ともに、「全体構想」と「地域別構想、」の関係から策定プロセスのタイプ分けを行 い、 さらには「素案作成段階」及び「素案提示後Jの各段階で取り入れた住民参加の手法をその 組み合わせから8つのタイプに分類し、 その特徴を明らかにした。結論としては以ドの4点にま とめられる。
1 )策定プロセスにおける問題点としては、「効果的な住民参加の方法が不明」、「計i'hjへの反映 方法が不明」など住民参加の課題をあげた自治体が多かった。 また住民参加の経験が少ない人11 規模の小さい地方小都市ほど、 その傾向が強いことが分かった。
2) 都市マスの活用方法 としては、 人口1万人未満では都市計|同区域や市街化区域等のi[天城 天分・地域地区Jの決定・見直しでの活用、 1'"'-'5万人では「区域区分・地域地区Jの決定・見 直しに加え「都市施設」 の整備を行う際の活用、 10万人以上では「計画的なまちづくりの桁針J といったように、 都市の人口規模によって都市マス策定の狙いに傾向があることが分かつた。
3) 地方都市においては「全体構想」 と「地域別構惣」 と区分して考えることは少なく、 両1T の「同時進行型」で計画策定を行っている傾向にあった。 さらに都市計画医域面積の狭い地方小 都市では地域別に分割すること自体の必要性が問われており、全体構想、のみで、策定を行っている 都市もあった。 このような小都市では全体構想が 地域の詳細な計両までをカバーすることが求め られ、 そのためには地域の細かい意見を汲み取るための幅広い住民参加が不可欠となることを指 摘した。
4) 素案作成段階では全くの非公開で、 素案提示後も非公開もしくは単なる通達や公聴のみに 終わる「行政主導型」が多いことがわかった。 地方小都市においては策定する自治体側も参加す る住民側も住民参加に対する意識が弱く、 経験も少ないことから、 各自治体が「全体構怨と地域 別構想の関係」や「策定における参加住民の役割」を明確に整理し、 地域の課題にあった手法を 組み合わせて選択する必要があることを指摘した。
- 155 -
補注
(1 )通達には「公聴会・説明会の開催Jí広報誌やパンフレットの活用J íアンケートの実施等j を適宜行うことが明示されており、 さらに決定に際しては「審議会の義を終る」、),1;1知lのため の措置として「庁舎への図書の備付け及び閲覧J í積械的な広報の実施J í概要パンフレット の作成・配布等jが明示されている。
(2)本来4つの選択・非選択によるタイプ分けは4X4の16 iIJíりであるが、 計t1lrjぷ案段附の 「ぷ 見収集・周知手法Jは建設省通達により都市マス策定の上で義務づけられていることから、す べての自治体で選択されているものとして、 ここでは8タイプを住民参加のタイプとした。
参考文献
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の策定過程とその成果の評価J円本都市計画学会学術論文集, 第33号, pp.469-474
13)小林隆,日端康雄(1998)í都市マスタープランの策定過程におけるインターネットの活用可能
- 156 -
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14)村木美貴,仁11井検裕(1997)r都市計l両マスタープランの地域別,U街地像策定のためのまちづく り協議会の役割に関する一考察」 日本都市計画学会学術論文集, 第32 f}, pp.247-252 15)野津康, 村木美貴(1998)r既存の地域住民参加システム(住IX�協議会)と部,Jjr汁IllJjマスターブ
ラン地域協議組織との関係に関する研究」日本都市計画学会学術論文集,第33け, pp. 45卜456 16)坂口陽子, 村田亜紀子, 伊藤史子, 渡辺俊一(1998)rr市民版マスタープラン」による都市計IrTlj
マスタープランへの意見反映」日木都市計画学会学術論文集, 第33号, pp. 463-468
17)後藤知彦,渡辺俊一,伊藤史子(1998)r市民参加の新手法としての「市民版マスタープランJの 現状」日本都市計画学会学術論文集, 第33号, pp.475-480
18)建設省都市局通達, r市町村の都市計画に関する基本的な方針についてJ, 1993年6J]25flili 設省都計発第94号
ー157 -
第5章
総括第5章 総括
5. 1 各章のまとめ
本研究では、 市街地の住環境整備や再編手法を検討し、 計画立案手法を住民参加の視点から論 じるために、 九州と北海道の旧産炭地域の公的基盤整備地区を対象として、 石炭産業衰退以後の 様々な振興政策の評価を通してその再編手法を検討した。さらに面的整備が実施されていない広 盤整備が遅れた地区を対象として、 街区特性、 道路特性の2つの側面から市街地を評価し、 地灰 の再編手法を検討した。 これら公的基盤整備地区においても既成密集市街地においても、地以特 性に応じた再編プログラムと、住民参加による有機的な連携が効果的な事業につながることを桁 摘した。それを受けて策定過程において住民参加が義務づけられた都市計画マスタープランを対 象として、 自治体が選択した策定プロセスと住民参加手法の関係や特徴を明らかし、 今後の計l同 立案における示唆を得た。
総括として各章で得られた知見を以下にまとめる。
第1章では序論として、 研究の背景・目的、 論文の構成を整理するとともに、 既往の研究から 本論文の意義について述べた。
第2章では、 公的基盤整備地区を対象として住環境の現状や課題を比較分析し、 今後の地区の 再編手法を検討した。具体的には九州筑豊地域と北海道空知地域の旧産炭地域を対象として両地 域の特性を比較し、公的基盤整備地区の立地特性と課題を整理することでその再編方策の検討を 行った。 結論としては以下の5点にまとめられる。
1 )筑豊、 空知両地域ともに急速な成長と、 長期間にわたる衰退を経験した点では共通してい るが、 閉山後に取られた都市政策の選択が現在の両地域の都市環境、 とりわけ都市基盤整備の充 実度には大きな違いとなって表れた。
都市基盤の充実した空知では人口が減少し、逆に鉱害復旧で都市基盤の整備が遅れた筑豊では、
結果的に鉱害復旧が失業対策事業として雇用の創出を生みだし、 大幅な人口減少を食い止めた。
2)両地域における公的基盤整備地区の共通する特性として、老朽化地医が市街地全域にわたっ て広範囲に立地していることが分かった。
しかし空知では人口減により空き家が増加し、 特に空き家の多い地区は、 市域の中で分散的に 立地している。 筑豊では潜在的な需要が高いにもかかわらず、 鉱害復旧との絡みや複雑な権利関 係による老朽炭鉱住宅の改良が大きく立ち遅れている。 両地域では、 直面する課題はこのように 大きく異なっており、閉山以後の都市政策の違いが公的基按整備地区の課題にも大きな影響を与 えたことが分かつた。
3 )公的基盤整備地区の再編方策としては、 空知では、 利用率が低くなった地区の統合や他の 用途としての再利用を図ることで、 分散化する市街地を線的ネットワーク上に配置し、 行政サー
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ビスの効率化を推進することが必要であることを指摘した。 筑豊では、 周辺の公共事業との機能 的連携や高齢者福祉施策や中心市街地活性化施策との整合を12<1りながら公的基盤幣備地!実の格備 プログラムを展開する必要があることを指摘した。
一般に、 インフラ整備の遅れた地区においては、 このような公的基盤整備地区を合んだ、f呼称iが 都市機能の一層の回復、 充実のために有効であることを示した。
4)空知と異なり日常的な交流活動が盛んな筑豊では、 今後の交通体系の整備によって汀)J都 市圏との連携がますます強化され、 住宅都市としての可能性が高まることが則待できる。ìjtにハ コモノの住宅を供給するだけではなく、 公的住宅であれ分譲住宅であれ、 プラスαの何かがない と大都市やその近郊から人を引きつけることはできない。つまり大都市では得られない住宅まわ りの住環境の質を高めると共に、教育や文化水準も含めた地域の魅力を高めていく必要があるこ とを指摘した。
5)炭鉱の全盛期には 炭鉱集落ごとに形成されていた強いコミュニティ社会が舟在していたが、
炭鉱社会の崩壊や時代の変化と共にそのようなコミュニティ意識は縛れ、また閉山後の公共事業 中心の都市政策の中では、住民が都市基盤整備などの環境整備に積駆的に関われる機会は皆無に 等しかった。
今後、 旧産炭地域の都市だけでなく、 我が国の多くの産業都市が住み良い都市としての魅力を 両め、 基幹産業に頼ることなく自立していくためには、 地域の住民が自らの住宅周辺の環境改善 を自らが考え、自らの手で育成していくという住民参加のプロセスを継続することが必要である ことを指摘した。
第3章では、 面的整備の行われていない既成密集市街地を対象として街区単位、 道路単位の2 つの側面から対象市街地の類型化を行い、 街区タイプ、 道路タイプともそれぞれ5つのタイプに 分類することができた。さらに各対象地区において類型化した街区タイプと道路タイプの分布を 見ることで、それぞれの地区の特性や課題を明らかにし、今後の地区再生に向けた提案を行った。
結論としては以下の4点にまとめられる。
1 ) 各対象地区において密集市街地の現状と課題を明確に示すことができ、 その課題に即した 整備誘導の方向性の違いを示すことができた。 その意味では本研究手法で用いた「街区」と「道 路Jによる密集市街地の類型化は有効であった。
2)密集市街地の再編には既存不的確建築物の建て替えによる狭|溢道路の拡幅が肢も効果があ ることは疑う余地もないが、 街区タイプ、 道路タイプの特性を把握し、 その地区にあった再編手 法を取るべき必要性を示した。 今後、 密集市街地において事業の可能性を検討する段階では、 こ のような地区の特性を詳細に肥握し、その特性や課題に応じた再編プログラムを榊築していく必 要があることを指摘した。
3) 密集市街地の中、 特に狭除道路が入り組んでいる地医では、 住民が向主的に紋を育成する など環境形成に大きく貢献している地区が見られた。 このことは、 地域の環境向上に寄与してい くのはほかでもない地域住民であることを示している。密集市街地を解消するためになんらかの
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事業によって狭路道路の拡幅や建物のセットパック等を行うだけでは、 このような地域の住民が 玄成してきたコミュニティを維持していくことは肉難である。 2)で述べた地氏の特↑"1:や課題に 応じた再編プログラムと、協調的な住環境形成に向けた積極的な住氏参加の両τ』?が事業のプロセ スの中で有機的に連携することで、 より効果的な密集市街地の再生につながることを提示した。
4) 地区の課題の改善へ向けた発意を起こすのは、 住民の役割であり、 その発怠に対して、 行 政側が応え、 密集市街地の再生へ向けて住民・行政の双方がお互いに議論しながら地区の将米像 を描いていく というプロセスが求められることを指摘した。
第4章では九州地域の自治体に対するアンケート調査を行い、 都市計阿マスタープランの策定 動向を把握する と ともに、「全体構想」と「地域別構想、Jの関係から策定プロセスのタイプ分けを 行い、 さらには「素案作成段階」及び「素案提示後」の各段階で取り入れた住民参加の下法をそ の組み合わせから8つのタイプに分類し、 その特徴を明らかにした。結論としては以ドの4点に ま とめられる。
1 )策定プロセスにおける問題点と しては住民参加に関するものをあげた自治体が最も多く、計 画立案に際して住民参加の経験が少ない人口規模の小さい地方小都市では、 特にその傾向が強い ことが分かった。
2) 都市マスの活用方法としては、 人口1万人未満では都市計画区域や市街化医域等の「区域 区分・地域地区Jの決定・見直しでの活用、 1�5万人では「区域区分・地域地区Jの決定・見 直しに加え「都市施設」の整備を行う際の活用、 10万人以上では「計画的なまちづくりの指針J といったように、 都市の人口規模によって都市マス策定の狙いに傾向があることが分かった。
3)地方都市においては「全体構想Jと「地域別構想Jと区分して策定を行う考えは少なく、 現 実には両者の「同時進行型」で策定を行う傾向が多いことを指摘した。 さらに都市計画区域間積 の狭い地方小都市では、 地域別に分割 することの必要性が問われており、 全体構想、のみで策定を 行っている都市もある。 このような小都市では、 全体構想が地域の詳細な計画までをカバー する ことが求められ、 そのためには地域の細かい意見を汲み取るための幅広い住民参加が不l可欠とな ることを指摘した。
4)素案作成段階では全くの非公開で、 素案提示後も非公開もしくは単なる通達や公聴のみに 終わる「行政主導型Jが多いことが分かつた。 地方小都市においては策定する内治体制IJも参加す る住民側も住民参加に対する意識が弱く、 経験も少ないことから、 各自治体が「全体構惣と地域 別構想、の関係Jや「策定における参加住民の役割」を明確に整理し、 地域の課題にあった手法を 組み合わせて選択する必要があることを指摘した。
1 61
5. 2 総括と今後の課題
以上本論文では、まず公的基盤整備地区及び既成密集市街地について、具体的な地区を対象に 地区の課題を整理し、今後の整備方策を示した。 さらに地方都市における都市計阿マスタープラ ン立案の際の住民参加手法についてその特徴を明らかにした。総指としては以下の2点にまとめ られる。
1 )公的基盤整備地区や基盤未整備の既成密集市街地の住環境改善は、地区の特性や課題に応 じた再編プログラムを構築していくことが必要である。特に地方都市では、 1つの事業が周辺地 区や都市全体へと与える影響は大きいので、立ち遅れた都市基盤の充実にも大きく貢献できる。1 つのプロジェクトが地域や都市全体に貢献する役割を見据えながら計阿を立案していくことが必 要であると考えられる。
2)以上のような再編プログラムを策定していくためには、住民参加型方式による策定が期待 される。 しかしながら、住民参加手法は、「行政主導型」が 多い。 いまだ住民参加に対する知識や 経験に乏しく、行政側ももちろん住民側にとっても、 時間と労力には限界があることから、地ノJ 都市においては特にその傾向が強い。 しかし、案を作成する段階での住民参加、さらに案提示後 に再び住民にフィードバックする手法による計画 立案が必要不可欠であると言える。
以上のように本論文では、地区の再編・改善や都市計画マスタープランにおける計画立案手法 を提示した。 具体の事業候補地区における住民の合意や同意を得ていくプロセスは非常に難し いことは言うまでもない。道路の改良、 日照環境の向上、防災性能の向上、住宅の質の向上な ど、
その目指すべき方向性は地区別に異なっており、どこにフライオリティを付けるかが課題である。
今後は研究側には、地区の住環境を包括的に評価し、説得力のある地区再編方策を導き出すこと の出来る新たな評価軸を考えていく必要がある。
また今回の都市計画法改正による都市計画マスターフランの制度は計画立案において住民参加 を義務づけた点で大きな転機となった。しかし現在、多くの自治体で策定段階であることから、作 民参加によって 立案された計画が評価されるのはこれから5年、10年先のこととなる。 今回、 内 治体が選択した住民参加タイプによって、本来その都市が目指した都市像が実際に具現化できた のか、 またいかなる手法で具現化したのかを、 今後時間をかけて評佃1していく必要があろう。
162
謝辞
本研究の執筆にあたって、 萩島督教段には、 学部の4年/1-:として研究引に配同以米、 7 {t�もの 長きにわたりご指導頂きました。 また副査の多賀直恒教段、fr]知;長教授の1�IJI",jrrには、 本論文の 審査にあたり、 貴重なご助言とご意見を限きました。 心より御礼巾しI �げます。
九州大学在学中はゼミの指導教官として、 卒業論文、 修上論文から本論文にでるまで懇切]'í容 にご指導いただいた出口敦助教僚をはじめ、 坂井猛助教授、 有馬隆文助教授、 組IIt良助教授、f�:�
心治講師(山口大学) に、 数々のご教示を頂きました。 厚く御礼巾しヒげ ます。
平成6年に福岡県山田市でHOPE計阿策定のお手伝いをさせて頂いて以来、刻化にでる まで、
建設省建築研究所の岩田司先生には、 幅広い視点より多岐に渡りご指導を頂き ました。 また制|吋 県庁の吉田須美生氏、 長谷川保宏氏、 林m企画の林田英行氏、 まちづくり計画研究所の今泉垣敏 氏、 並びに武信弘隆市長、 中村仁彦助役(現:福岡県総務部地方課長補佐)、 井手政義住宅課長(刻:
福祉事務所長)、大村朋彦 まちづくり課長をはじめとする山田市役所の諸氏には、研究活動への多 大なるご支援とご助言を頂きました。山田で得た経験は、 その後の研究活動にとって何よりも代 え難い貴重な経験であり ました。 心より感謝の意を表します。
旧産炭地域の研究では、北海道大学の瀬戸口剛助教授、(株)北海道開発コンサルタントの今野 面氏、北海道庁の椿谷敏雄氏に共同研究の貴重な機会を与えていただき、 また北海道での調子どの 際には多大なご協力を頂き、 深く感謝申し上げ ます。
また都市計画マスタープラン研究会では、福岡大学の井上信附先生、佐賀大学の一三島イI�雌先生、
(株)都市環境研究所の玉田孝二氏、 (株)地域総合プランニング研究所の永旧伊沖犬氏、 (株) 計 画工房の木本洋介氏、 abc研究設計の玉井輝大氏、(株)都市・計画・設計研究所の仁賀奈俊ー 氏、 (株)地域計画研究所の山辺真一氏の諸氏に貴重なご助言を頂き、 深く感謝I �rしtげます。
昨年4月に赴任した財団法人北九州都市協会で、は、出口隆会長をはじめ研究部顧問の柴m -QIS 先生(九州産業大学)、 大島治主任研究員、 神山和久主任研究員、 伊藤解子主任研究員、 円高|三一 郎前主任研究員(九州産業大学)、松田俊康研究部次長の諸氏に数々のご助許や研究活動へのご山 解を頂き ました。心より感謝申し上げるとともに、 この1年間本業である仕事が疎かになったこ とを深くお詫びいたします。
さらに九州大学のゼミで共に学んだ、 巾野浩志氏、LlJ本賢治氏、 熊谷将信氏、 川村浩之氏、 松 浦照氏、 平岡公章氏、 近藤富美氏をはじめとする数多くの先輩後輩諸氏、 並びに同じ同上記長ねの 大学院生として研究活動を共にした佐谷宣昭氏には、 多大なご助言とご協力、 さらには励ましを 頂きました。皆様方とともに恵 まれた環境で研究できたことは大変有志義な経験であり、 誇りに 思っております。
最後に福岡県、 北海道、 田川市、 赤平市、 歌志内市など、 資料提供やヒアリング等でご協力回 いた数多くの自治体の方々に御礼申し上げるとともに、 研究を進める上で、保々な形でご協力いた だいたすべての方々に心より感謝の意を点します。
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2000年I J 1 内田 晃