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密教研究 Vol. 1925 No. 18 006田邊 〓本「菩提心論及び大日経住心品疏に説かれたる菩提心義 (二) P109-143」

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(二)

前 に は 金 剛 手 が 九 句 を 發 問 し た と こ ろ ま で を 摘 示 し て 置 い た が そ れ に 對 し て 如 來 は 一 々 廣 く 細 か く 説 法 せ ら れ て ゐ る の が 以 下 經 の 終 り ま で の 文 で あ る 。 が 九 句 に 應 じ て 一 々 整 然 も 説 明 せ ら れ た の は な く て 或 は 後 の 問 を 先 に 答 へ 、 一 っ の 問 題 に 就 い て 何 回 も 色 々 の 方 面 か ら 説 明 せ ら れ 更 に 一 々 枝 葉 の 疑 問 が 湧 い て 來 る に 對 し 之 に 答 へ る 主 言 つ た 様 な 次 第 で 、 所 謂 形 式 的 で な く そ の 場 合 く に 適 應 す る 様 な 方 便 的 説 明 で あ る 。 依 っ て 一 見 發 問 と 答 説 こ の 間 に 何 等 の 鉤 鎖 連 絡 が な き か の 様 に 見 え る が 實 は 然 ら す 反 つ て 函 蓋 相 稱 必 然 的 に 言 ふ べ く し て 言 つ た 金 口 の 妙 方 便 で あ る 。 さ て 住 心 品 に 於 て 答 せ ら れ た る 文 大 い に 分 ち て 六 、 最 初 に 心 績 生 、 心 生 、 心 相 、 修 行 の 四 間 に 對 す る 極 め て 簡 略 な 略 答 。 次 に 心 績 生 の 答 説 。 三 、 心 相 の 答 説 こ し て 六 十 心 の 説 明 。 四 、 .心 相 及 び 殊 異 の 答 説 こ し て 三 劫 十 地 の 説 明 。 五 、 心 相 の 答 説 こ し て 六 無 畏 。 六 、 修 行 の 答 説 こ し て 十 縁 生 句 。 の 六 段 が 明 か さ れ て ゐ る 。 菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た る 菩 提 心 義   一 〇 九

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菩 提 心 論 及 び 大 日 經 佳 心 品 疏 に 説 か れ た る 菩 提 心 義  一 一 〇 而 し て 三 句 及 び 菩 提 心 説 等 に 於 け る 法 門 は 平 等 の 法 門 、 本 有 の 菩 提 心 の 説 相 な る に 對 し 、 以 下 の 答 説 は 二 々 に 差 降 を な し 、 比 較 對 辮 し て 説 い て ゐ る 。 即 ち 修 生 の 菩 提 心 説 で あ る 。 然 し 眞 言 大 日 宗 の 菩 提 心 の 本 領 は 前 に 説 い た 平 等 的 法 門 な る が 、 と れ に 達 す る に は 矢 張 修 生 の 對 辮 門 を 經 過 す る 必 要 が あ る 。 即 ち 未 到 を 到 と 思 ひ 、 未 了 を 已 了 ご 誤 解 し て 低 き 菩 提 に 滞 住 し て は な ら ぬ か ら で あ る 。 以 下 叉 簡 略 に 要 領 を 摘 出 し や う 。 一 、 四 間 略 答 ( 心 績 生 、 心 生 、 心 相 、 修 行 ) A 、 心 績 生 、 菩 提 心 は 虚 空 の 如 く 畢 竟 室 で あ る が 而 も 萬 法 の 具 依 た る が 如 く 畢 竟 常 浄 で あ る ご 共 に 又 始 終 雲 霧 去 來 し 萬 象 展 轉 す る 一 心 の 本 性 で あ る 。 こ れ 又 恰 も 水 と 波 も の 因 縁 の 如 く で あ つ て 元 來 大 海 の 波 浪 は 常 有 で も な く 、 常 無 で も な く 、 有 無 相 即 し 決 し て 偏 執 す べ き 現 象 で は な い 。 何 故 に 常 有 に あ ら す 主 い ふ な ら ば 風 飃 止 む 時 は 波 浪 も 亦 静 か で あ る 、 故 に 常 有 と い ふ べ か ら す 。 何 故 に 常 無 も い ふ べ か ら す や と い ふ に 風 騰 縄 か に 起 る 時 鼓 怒 相 績 す る 故 に 常 無 も い ふ ベ か ら す 。 か く の 如 く 本 來 不 生 の 菩 提 心 に し て 常 に 心 績 生 し 、 そ の 績 生 た る や 叉 本 不 生 を 出 で な い 。 即 ち 一 切 の 外 道 小 乗 等 の 了 解 出 來 な い 不 思 議 の 心 績 生 で あ る 。 B 、 心 生 、 根 本 無 明 の 一 念 動 く こ と に よ つ て 貧 瞑 癡 慢 疑 の 五 煩 惱 主 な り 、 五 煩 惱 各 々 に 境 に 應 じ て 偏 執 轉 生 し て 行 つ て 第 五 回 目 に 百 六 十 の 枝 末 煩 惱 主 分 れ る 。 と の 暗 黒 の 心 垢 盡 き た 主 こ ろ 之 れ が

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浄 菩 提 心 で あ つ て 乳 よ り 精 製 し て 初 め て 醍 醐 を 得 る が 如 き も の で あ る 。 と の 心 境 た る や 津 虚 空 の 如 く 、 空 に 即 し て 萬 法 荘 嚴 の 心 の 佛 國 を 見 る も の で あ つ て 堅 固 不 動 で あ る 。 と れ 菩 提 心 の 特 長 で あ る C 、 心 相 、 菩 提 心 は 大 虚 澄 浄 に し て 煙 雲 塵 霧 種 々 の 戯 論 煩 惜 に 汚 さ れ す 本 初 よ り 寂 滅 不 動 で あ る と の 寂 光 に 照 ら さ れ て 心 蓮 開 敷 乙 心 佛 湧 出 顯 現 す る 。 こ れ 菩 提 心 の 相 で あ る 。 D 、 修 行 、 か く の 如 き 初 地 澤 菩 提 心 に 達 す る に は 身 口 意 三 密 の 修 行 に よ つ て 達 す る の で 、 無 爲 坐 食 、 抽 手 傍 観 し て ゐ て 得 ら る ゝ も の で な い 。 即 ち 身 口 意 を 以 つ て 如 説 に 内 の 供 養 を 修 し 、 外 に 種 々 の 香 花 燈 明 等 の 供 養 物 を 供 へ る 等 の 内 外 の 修 行 に よ つ て か ゝ る 菩 提 心 に 達 す る 。 修 行 の 事 は 當 品 に 於 て 十 縁 生 句 の 觀 心 が 説 か れ 具 縁 品 に 於 て 委 細 に 説 か れ て ゐ る 。 二 、 心   績   生 浄 菩 提 心 の 初 め て 生 起 す る に 至 る ま で の 種 々 の 外 道 哲 學 や 從 來 印 度 に 於 て 行 は れ て ゐ た 信 仰 等 を ま と め て 心 績 生 こ し て 説 い て あ る 。 そ の 中 大 き に 分 つ て 違 理 の 心 も し て 三 十 種 外 道 の 説 を 挙 け 次 に 順 世 の 八 心 と し て 次 第 に 浄 菩 提 心 の 勢 力 を 顯 現 す る に 至 る 道 程 を 明 か し た も の も の 二 つ に な る 。 何 故 に 外 道 哲 學 を 佛 教 書 中 に 説 く や こ い ふ に こ の 外 道 哲 挙 は 佛 教 哲 學 の 前 提 こ な る も の で あ つ て 之 れ を 研 究 す る 事 は や が て 佛 教 哲 挙 の 研 究 に 入 る 階 梯 で あ る か ら で あ つ て 、 こ の 研 究 は む し ろ 欧 洲 に 於 て 盛 ん に 進 歩 し て ゐ る 由 、 日 本 に 於 て は 井 上 圓 了 博 士 著 ﹁ 外 道 哲 學 ﹂ や 木 村 泰 賢 博 士 著 ﹁ 六 派 哲 菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た ろ 菩 提 心 義   一 一 一

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菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た る 菩 提 心 義  一 一 二 學 ﹂ 等 が 權 威 あ る 書 で あ る 。 佛 教 書 籍 中 に こ の 外 道 論 が 散 見 す る 書 は 甚 だ 澤 山 あ つ て 涅 槃 經 、 楞 伽 經 、 維 摩 經 、 大 日 經 、 智 度 論 、 瑜 伽 論 等 の 四 十 二 種 の 經 論 が 外 道 哲 學 ( 一 入 三 頁 ) に 挙 げ て ゐ る 。 そ の 外 道 こ い ふ は 佛 教 以 外 の 諸 派 の 哲 學 を 呼 と で 外 道 こ い ふ の で 、 儒 家 に 於 て 老 荘 佛 家 等 を 呼 ん で 異 端 と い ふ 様 な も の で あ る 。 然 る に 古 來 の 解 釋 に 依 る ご 外 道 と は 他 説 他 教 の 意 味 で な く 邪 説 邪 教 を 指 し て か く 呼 と で ゐ る と こ を 知 る 。 そ の 邪 説 邪 教 と は 心 、 理 外 を 行 ふ を 總 じ て 邪 見 も 名 く と 言 つ て あ る 。 自 宗 に 於 て は 外 道 ご 内 道 ご を 分 つ に 就 い て 三 重 の 設 が あ る 。 然 し て 今 い ふ ご と ろ の 外 道 は 勿 論 初 重 に 於 け る そ れ で あ る 。 今 佛 教 書 籍 中 に 於 て 外 道 の 種 類 を 分 類 し て あ る を 見 る に ﹁ 二 種 ( 華 嚴 經 疏 、 大 日 經 疏 等 )

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六 種 或 ハ 六 師 ( 渥 槃 經 、 維 摩 經 等 ) 十 師 或 ハ 十 仙 (飾 宗 記 、 浬 槃 經 ) 十 一 種 或 ハ 十 三 種 (華 嚴 疏 鋤 、 唯 識 論 等 ) 二 十 種 ( 外 道 小 乗 渥 槃 論 ) 三 二 十 種 ( 大 日 經 住 心 品 ) 九 十 五 種 或 ハ 九 十 六 種 ( 華 嚴 經 . 浬 槃 經 . 智 度 論 等 ) ﹁ 九 萬 三 千 種 ( 鐸 摩 訶 術 論 ) 等 そ の 説 一 様 で な く 、 叉 右 の 如 く 學 派 の 種 類 よ り 分 類 せ す し て 所 執 の 主 義 に よ り 或 は 二 見 、 三 執 、 四 執 、 八 計 、 十 六 計 、 六 十 二 見 等 と 分 類 し た の も あ る 。 大 日 經 の 三 十 種 は 時 、 地 等 、 變 化 、 地 水 火 風 空 ( 五 大 外 道 ) 、 喩 伽 我 等 い ふ よ り 聾 生 、 非 聲 に 至 る ま で の 三 十 種 で あ る が 、 大 師 の 十 住 心 論 は 偶 を 以 て 示 し て 、 時 大 相 應 二 建 者 、 自 在 流 出 計 尊 貴 、 自 然 内 我 執 人 量 、 遍 嚴 壽 者 数 取 趣 、 識 藏 知 者 及 見 者 、 能 所 二 執 内 外 知 、 但 梵 人 勝 計 常 定 、 顯 生 二 聲 與 非 聲 如 是 三 十 大 外 道 、 各 各 迷 眞 如 輪 轉 菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 設 か れ た る 菩 提 心 義   一 一 三

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菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た ろ 菩 提 心 義   一 一 四 と あ る 。 井 上 圓 了 先 生 は 組 織 を 立 て ゝ 説 明 し て ゐ る が 圖 式 左 の 如 く で あ る 。

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さ て 疏 に 於 て は 右 三 十 種 外 道 の 一 々 に 就 き 簡 單 な 説 明 は あ る が 果 し て 如 何 な る 説 を な す も の な る か 充 分 に 判 明 し て な い 。 た い 多 く の 外 道 説 が あ つ た 事 そ の 骨 目 と し た 主 義 等 が 朧 う に 顯 は れ て ゐ る に 過 ぎ ぬ 。 ﹁ 外 道 哲 挙 ﹂ に 於 て は 上 掲 の 圖 式 の 順 序 に 組 織 立 て ゝ 説 明 し て あ る か ら 了 解 し 易 い 委 細 は 同 書 に 就 い て 知 る べ き で あ る 。 上 來 は 違 理 の 心 た る 三 十 種 外 道 を 挙 げ た の で あ る が そ れ 等 は 皆 佛 教 の 正 信 よ り 見 れ ば 迷 信 に 屬 す る 。 因 果 の 理 法 主 衝 突 し 天 地 人 心 に 通 つ る 正 道 で な い 。 次 に 心 中 に 深 く 藏 せ ら れ て ゐ る 本 覚 の 薫 發 主 外 界 に 古 來 よ り 存 す る 善 悪 の 名 暴 の 外 縁 に よ つ て 世 間 的 善 心 が 發 動 し て 來 る 。 そ の 順 序 を 植 物 の 種 子 よ り 次 第 に 發 成 す る 順 序 に よ せ て 説 明 し て あ る の が 順 世 の 八 心 で あ る 。 第 八 心 に 於 て 更 に 二 心 を 開 い て 十 心 こ す る 。 十 心 を 極 め て 簡 單 に 述 べ と 。 一 種 子 心 -百 食 は す し て 身 を 節 し 飽 ぐ を 知 ら ざ る 貧 慾 の も ら は 票 ら 脱 す る 。 二 、 芽 種 心 -齋 に よ つ て 得 た る 所 有 物 を 父 母 親 戚 に 施 與 す る 。 菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た る 菩 提 心 義   一 一 五

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菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た る 菩 提 心 義   一 一 六 三 、 庖 種 心 更 に 非 親 識 の 者 に 授 與 す る 。 四 、 葉 種 心 -器 量 高 徳 の 者 に 與 ふ 。 五 、 敷 華 心 -歡 喜 し て 尊 宿 の 人 に 授 與 す る 。 六 、 結 實 心 -親 愛 の 心 を 以 て 尊 宿 等 に 供 養 す る 。 七 、 受 用 心 -前 來 の 因 果 を 達 觀 し そ れ に 随 順 し や う も し 戒 を 守 つ て 安 樂 を 獲 ん と す る 。 八 、 無 畏 心 -善 知 識 の 勸 導 に 随 つ て 世 間 在 來 の 諸 天 崇 拜 の 念 生 づ 。 九 、 殊 勝 心 -世 間 の 三 賓 の 中 最 も 殊 勝 な る も の を 擇 び そ れ に 歸 依 し て 解 脱 を 得 ん と す 。 十 、 決 定 心 -空 法 に 於 て 作 證 す る を ば 決 定 心 ご 名 く 。 か く て 佛 法 を 聞 か ば 必 す 之 れ に 歸 依 し 順 修 す る だ け の 心 の 調 練 が 出 來 、 浮 菩 提 心 が 明 顯 に な つ て ゐ る わ け で あ る が 、 と の 十 心 は 佛 教 の 果 上 に 於 て も 應 用 の 出 來 る 理 法 で あ つ て 所 謂 心 績 生 の 相 で あ る . 而 し て 前 に 略 答 せ る が 如 く 不 生 而 生 、 生 而 不 生 の 不 思 議 の 績 生 で あ つ て 諸 佛 の 秘 密 の 印 で あ る 。 世 間 の 偏 執 的 因 果 で は な い と 斷 つ て あ る 。 三 、 六   十   心 こ れ は 心 相 の 答 説 の 一 で あ る 。 心 相 の 答 説 と し て は と の 外 に 三 劫 の 説 明 ご 六 無 畏 の 解 説 が あ る の だ が 六 無 畏 は 名 字 の 示 す 如 く 悟 心 を 淡 と し て 心 相 を 説 き 三 劫 は 眞 妄 を 並 べ 挙 げ て 心 相 を 明 か し 今 の

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六 十 心 は 妄 心 染 心 を 表 に し て 心 相 を 説 い た も の で あ る 〇 六 十 心 と は 貧 心 、 無 貧 心 、 瞋 心 、 慈 心 、 癡 心 、 智 心 、 決 定 心 等 い ふ よ り 受 生 心 . 猿 猴 心 に 至 る 六 十 の 心 相 で あ る 。 經 文 に 於 て は 初 め に 名 を 列 ね 次 に 一 々 に 簡 單 な 説 明 を し て ゐ る が 疏 に 於 て は 一 々 解 説 を し そ の 心 垢 浄 除 の 方 法 を も 加 へ 明 か し て ゐ る 。 元 來 心 は 無 相 で あ つ て 如 何 な る も の な る か 一 寸 表 現 し 難 い が 偏 執 す る 心 に は 特 長 が あ つ て そ の 相 は 何 か に つ け て 顯 は れ る 。 火 が あ れ ば 必 す 煙 が 立 つ が 火 氣 が 上 る 様 な も の で あ る 。 そ れ 等 の 心 を 或 は 植 物 の 名 を か り 、 動 物 の 名 に 寄 せ 、 人 事 に か り 。 自 然 に ご り 或 は 法 に ご り 、 或 は 喩 に 寄 せ て 六 十 の 差 別 相 を 摘 出 し た の が 六 十 心 で あ る 。 狸 心 、 狗 心 は 動 物 、 風 心 、 水 心 は 自 然 理 象 、 商 入 心 農 夫 心 は 八 事 の 名 稱 等 、 と 極 め て 自 由 で あ り 大 き い 説 明 法 で あ つ て 面 白 い も の が あ る 。 猶 一 々 に つ い て 心 病 治 療 法 を も 加 ね て ゐ る と こ ろ 聖 者 の 幽 深 微 妙 の 心 中 も う か や は れ て 幽 し き も の が あ る 。 一 々 の 文 義 に つ き 反 省 し て 修 養 に 資 す る な ら ば 決 し て 煩 鎖 な 名 目 の 羅 列 で な い だ ち う 。 孔 子 が 多 く 。 弟 子 の 長 短 を 一 々 指 摘 し て 心 病 の 是 正 に つ と め ら れ た 様 に 老 成 の 阿 闍 梨 弟 子 の 心 品 に つ い て 一 々 懸 懃 に 訂 正 せ ら る ゝ に は 當 段 の 解 説 等 は 適 切 な も の が 多 い と 思 ふ 。 委 し き 事 は 本 文 を 参 照 す べ き の み 。 四 、 三   劫 十 地 最 初 根 本 無 明 に よ つ て 貧 順 癡 慢 疑 の 五 根 本 の 煩 悩 も な り 、 こ れ 、が 所 縁 の 事 象 に よ つ て 次 第 に 分 裂 菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た る 菩 提 心 義  一 一 七

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書 捉 心 論 及 ひ 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た る 菩 提 心 義   一 一 八 し て 五 回 目 に は 百 六 十 の 枝 末 の 煩 惱 こ な る 。 猶 一 々 に 細 論 す れ ば 無 量 の 煩 惱 こ な る の だ が 先 づ 五 根 本 の 煩 惱 が 五 同 展 じ た と こ ろ 即 ち 百 六 十 に な つ た も と ろ を 以 つ て 無 量 の 煩 惱 を 代 表 し て 置 く 。 個 人 々 々 の 心 病 の 展 轉 が か く の 如 き の み な ら す 印 度 古 代 の 神 話 に 於 け る 人 類 墮 落 の 説 話 も 亦 大 體 と の 浄 法 を 以 て 濁 悪 の 世 と な つ た と と を 説 い て ゐ る の で と れ は 阿 含 經 に 出 て ゐ る 由 、 而 し て 大 疏 と れ を 引 用 し て 自 説 を 助 け て ゐ る 。 こ の 百 六 十 心 の 煩 悩 心 垢 を 度 脱 し た ご と ろ が 浮 菩 提 心 で あ つ て 一 劫 よ り も 二 劫 、 二 劫 よ り も 三 劫 は 徹 底 的 に 心 の 實 相 を 觀 じ 浄 菩 提 心 の 全 用 を 發 揮 す る に 至 る の で あ る 。 三 劫 と は 劫 も は カ ル バ も い ふ 梵 語 に し て 譯 し て 二 義 と な る 。 時 分 或 は 妄 執 と い ふ 。 諸 々 の 顯 教 に 於 て は 三 阿 曾 祇 劫 の 長 年 月 の 間 の 修 業 に よ つ て 佛 果 に 達 す る 。 即 ち 密 教 の 所 謂 初 地 浄 菩 提 心 に 達 す る の で あ る が 今 と の 大 日 經 宗 に 於 て は 麓 、 細 、 極 細 の 三 つ の 妄 執 を 度 し て 了 つ た と こ ろ が 初 地 浄 菩 提 で あ つ て 一 生 に と の 三 劫 を 度 す れ ば 即 身 成 佛 す る と こ が 出 來 る も い ふ 。 頓 中 の 頓 こ い ひ 、 神 通 乗 も い ふ は か く の 如 く 速 疾 に 成 佛 す る こ と が 出 來 る こ い ふ 意 味 か ら で あ る 。 以 下 初 劫 二 劫 及 び 三 劫 を 各 々 別 論 す る が こ れ は 所 寄 齊 の 顯 教 の 教 理 の 極 意 を 簡 單 に 摘 要 す る の で あ つ て 佛 教 の 教 理 發 達 の 状 況 が そ の 中 に 了 解 出 來 る 。 而 し て こ れ も 一 面 能 寄 齊 の 眞 言 行 者 の 菩 提 心 の 轉 昇 ご 解 す る の で あ つ て わ が 密 教 が 横 統 佛 教 と い ひ 萬 機 普 盆 と い ふ 所 以 は こ ゝ を 以 つ て の 故 で あ る 。

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初 劫 の 中 が 湛 寂 も 寂 然 と の 二 つ に 分 け て 説 明 し て あ る 。 先 づ 湛 寂 と は 空 寂 不 生 の 義 で あ つ て 、 五 根 本 の 煩 惱 及 び 百 六 十 の 随 煩 惱 皆 畢 竟 じ て 不 生 に し て そ の 心 地 恰 も 深 淵 の 如 く 澄 湛 な る 菩 薩 を い ふ そ の 菩 薩 は 聲 聞 の 見 道 位 、 修 道 位 及 び 縁 覚 の 悟 空 の 位 等 に 相 當 す る も の で あ つ て 聲 縁 菩 三 乗 の 道 人 悉 く 空 理 を 以 て 諸 法 の 實 相 に 契 達 す る の で あ る が 聲 聞 は 法 性 の 空 を 悟 る 事 淺 き が 故 に 生 死 を 厭 怖 し て 自 ら 巳 に 涅 繋 を 得 も 謂 ひ 滅 度 の 思 ひ を 生 す 。 次 に 縁 覚 は 所 入 や ゝ 深 き が 故 に 生 死 に 於 て 甚 し く は 恐 れ を 抱 か な い 。 然 れ 共 未 だ 方 便 力 を 以 て 大 悲 を 發 起 す る に 至 ら な い 。 菩 薩 は 人 空 の 理 を 悟 る 時 心 垢 漸 く 除 き 、 こ の 故 に 浄 心 漸 く 現 す も 知 る 。 そ の 時 に 便 ち 菩 提 心 の 勢 力 を 得 て 能 く 不 住 の 道 を 以 て 種 々 の 度 門 を 學 ぶ 。 然 れ 共 未 だ こ れ 五 蘊 實 有 の 見 で あ る 。 人 空 を 證 す ご 雖 も 法 を 折 い て 空 を 見 る が 故 に 蕪 は 猶 存 し て 空 で な い 。 印 ち 法 障 を 度 し て ゐ な い 。 恰 も 蓮 華 の 已 に 濁 泥 を 離 れ た れ 共 尚 未 だ 水 を 出 で な い 様 な も の で あ る 。 次 に 寂 然 界 の 菩 薩 は 次 第 に 増 明 す る 菩 提 心 の 勢 力 に よ つ て 自 然 に 法 空 の 慧 生 じ 、 聚 沫 と 、 浮 泡 と 芭 蕉 と 、 陽 炎 と 、 幻 こ の 五 喩 を 以 て 五 蘊 等 の 萬 法 皆 衆 縁 和 合 に 依 つ て 生 つ る 事 を 觀 じ 縁 生 の 生 は 無 性 な り と 覚 じ て 色 の 本 不 生 ・ 受 の 本 不 生 等 諸 法 の 即 空 に 達 し 、 二 重 の 法 執 を 解 脱 す る を 以 て 漸 く 二 乗 の 境 界 を 出 過 す る 。 然 れ 共 但 知 六 識 の 分 齊 で あ つ て 七 入 二 識 を 知 ら す 、 所 證 の 眞 理 は 人 空 不 生 の 理 を 超 ね ざ る 故 に 初 劫 に 屬 す 。 寂 然 界 を 證 す る 時 に 、 漸 く 聲 聞 縁 覚 の 二 乗 の 境 界 を 出 過 す と 雖 も 、 未 菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た る 菩 提 心 義  一 一 九

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菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た る 菩 提 心 義   一 二 〇 だ 因 縁 所 成 の 諸 法 は 、 心 の 所 變 に し て 、 如 幻 虚 假 な る 理 を 知 ら ざ る に 由 つ て 、 人 空 、 法 空 倶 に 有 を 捨 て 、 偏 空 の 眞 理 を 證 す る 故 に 爾 初 劫 に 合 論 す 。 第 二 劫 よ り 以 上 は 大 乗 で あ る 。 第 二 劫 に 他 縁 乗 と 覚 心 乗 も の 二 心 あ う 。 先 づ 他 縁 乗 と は 現 流 の 宗 に 當 つ れ ば 、 即 ち 法 相 宗 で あ る 。 此 宗 は 阿 頼 耶 識 ご 末 耶 識 と 前 六 識 と の 八 識 を 立 て 萬 法 は 悉 く 第 八 阿 頼 耶 識 の 所 變 と 爲 す 。 一 切 衆 生 を 見 る と ご 自 身 を 見 る が 如 く 同 體 大 悲 心 を 起 し 誓 願 し て 悉 く と の 乗 に 入 ら し め と こ す る 故 に 他 緑 こ い ひ 叉 三 界 唯 心 の 理 を 證 知 す る 自 證 圓 極 す る 故 に 無 縁 乗 主 も 名 く 次 に 覚 心 乗 ご は 現 流 の 宗 旨 に 當 つ れ ば 、 即 ち 三 論 宗 で あ る 。 此 心 は 自 心 の 本 來 不 生 不 滅 に し て 、 前 際 も な く 後 際 も な き 旨 を 覚 の 故 に 覚 心 不 生 こ い ふ 。 思 ふ に 他 縁 乗 の 心 は 無 著 世 親 の 瑜 伽 思 想 で あ ら う 。 叉 覚 心 不 生 心 は 龍 樹 の 空 思 想 で あ ら う ご 思 ふ 大 日 宗 は 横 統 佛 教 の 故 に 前 來 の 佛 教 思 想 を 悉 く 綱 羅 し て ゐ る 。 た ゞ 惜 し む ら く は 歴 史 的 な 明 確 な 解 説 の な き 事 で あ る 。 第 三 劫 は 能 寄 齊 の 眞 言 行 者 に 就 き て 説 き 初 二 劫 と は 其 趣 を 異 に す 。 と は 印 度 に 寄 齊 す べ き 顯 教 が な き 故 で あ る 。 此 の 劫 に 空 性 心 ご 極 無 自 讃 心 こ の 二 心 あ り 。 疏 に 於 て は と の 二 心 を 説 く 前 に 秘 密 一 乗 の 功 徳 を 極 め て 讃 嘆 し て 而 し て 後 に 空 性 と は 即 ち 是 れ 自 心 等 虚 空 の 性 な り と 説 き 初 め て ゐ る 。 第 二 劫 に 於 て は 萬 法 唯 心 に し て 心 外 に 法 な し も 悟 る 。 今 は 此 心 即 ち 是 れ 如 來 の 自 然 智 な り 亦 是 れ 毘 盧

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遮 那 の 遮 一 切 身 な り も 觀 す 、 一 念 の 妄 心 既 に 本 不 生 際 に 住 す る 故 に 宇 宙 の 萬 有 も 亦 本 不 生 際 に 住 す ご 觀 す 。 此 を ﹁ 皆 入 阿 字 門 ﹂ と い ふ 。 若 し 高 組 の 意 に 依 て 、 現 流 の 宗 に 寄 齊 し て 鐸 せ ば 即 ち 天 台 宗 に 寄 齊 し て 説 く こ も が 出 來 る 。 又 更 に 此 の 如 き 微 細 の 慧 を 生 す る 時 一 切 の 染 津 の 諸 法 を 観 す る に 少 分 も 因 縁 よ り 生 せ な い も の は な い 。 因 縁 よ り 生 す る も の は 皆 自 然 の 性 な し 。 其 無 自 性 の ご と ろ 、 即 ち 阿 字 本 不 生 際 で あ つ て 自 心 の 實 相 な り と 觀 す る 位 を 極 無 自 性 心 と 云 ふ 。 君 し 高 組 の 意 に 依 つ て 現 流 の 宗 に 寄 齊 し て 釋 せ ば 華 嚴 宗 に 寄 齊 し て 鐸 す る 事 が 出 來 る 。 以 上 の 二 心 は 第 三 の 極 細 妄 執 能 越 の 心 で あ り 、 之 を 第 二 劫 に 對 し て 譬 へ を 以 て 明 か せ ば 蓮 華 が 既 に 游 泥 を 出 で 水 を 出 で 華 麗 な る 大 花 輪 を 満 開 し た 様 な も の で あ る 。 凡 そ 上 來 三 劫 に 於 て 説 い た 教 え の 本 旨 は 何 處 に あ る か ご い ふ に 悉 く と の 第 三 劫 を 越 ぬ て 眞 の 解 脱 境 に 達 せ し め と が 爲 め で あ つ た 。 即 ち 大 疏 は 説 い て 日 つ て あ る 。 ﹁ 行 者 一 切 の 業 煩 惱 を 解 脱 す る 時 即 ち 一 切 の 業 煩 惱 佛 事 に あ ら ざ る と こ な し 主 知 る 。 本 よ り 縛 あ る こ と な し 。 誰 を し て か 解 脱 せ し め と や 。 良 醫 の 毒 を 變 じ て 藥 と な し て 用 ひ て 衆 病 を 除 く が 如 し 。 又 虚 空 の 衆 相 を 出 過 す れ こ も 而 も 萬 像 の 具 依 た る が 如 し 。 若 し 此 の 不 思 議 解 脱 に 佳 す る 時 は 即 ち 是 れ 眞 の 阿 羅 漢 な り 。 有 爲 無 爲 に 著 せ す 一 切 世 間 に 廣 大 の 供 養 を 受 く べ し ﹂ 。 即 ち 有 爲 の 有 に も 捉 は れ す 、 叉 無 爲 の 空 に も 障 へ ら れ す 眞 の 解 脱 を 得 る 爲 め に 諸 佛 は 浄 知 見 を 開 き 玉 ふ た の で あ る 。 次 に 如 意 寳 珠 完 成 ま で の 因 縁 を 説 き 三 却 く 通 菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た る 菩 提 心 義     一 二一

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菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た ろ 菩 提 心 義   一 二二 論 し て 最 後 に 此 經 .に 淺 よ り 深 に 至 つ て 廣 を 心 相 を 明 す と も は 皆 菩 提 心 の 本 末 の 因 縁 を 開 示 せ と が 爲 め で あ る も 判 斷 し て あ る 。 十 地 。 と の 一 段 は 心 殊 異 の 答 説 で あ る 。 十 地 ご は 歡 喜 地 、 離 垢 地 、 發 光 地 、 焔 慧 地 、 難 勝 地 、 現 前 地 、 遠 行 地 、 不 動 地 、 善 慧 地 、 法 雲 地 を い ふ 。 と の 十 地 を 信 解 地 こ も 到 於 修 行 地 と も 通 稱 す る 。 初 地 浄 菩 提 心 以 上 の 心 地 修 行 は 皆 信 解 の 中 の 行 な る 故 で あ る 。 十 地 を 因 根 究 寛 の 三 心 を 以 て 統 ぶ る に 於 て 長 の 配 釋 と 短 の 配 鐸 ご が あ る と こ 疏 の 文 に 明 ら か で あ る 。 而 し て 又 有 惑 の 十 地 ご 無 惑 の 十 地 も の 二 説 も あ り 叉 本 有 の 十 地 も 修 證 の 十 地 こ の 別 も あ る 。 大 疏 は 無 惑 の 十 地 即 ち 十 地 に 於 て は 斷 盡 す べ き 惑 な く た 初 地 に 於 て 自 證 圓 極 す ご 雖 も 未 だ 化 他 の 業 を 修 習 せ ざ る を 以 て 十 地 は 次 第 に 分 證 し て 之 を 修 習 す ご い ふ 説 で あ る 。 然 る に 大 日 經 住 心 品 に は ﹁ 此 四 分 之 一 度 於 信 解 ﹂ の 文 あ つ て 之 を 根 本 無 明 た る 微 細 妄 執 を と の 十 地 に 於 て 分 斷 す も い ふ は 有 惑 の 十 地 説 で あ つ て 高 組 の 秘 藏 記 の 意 で あ る 。 入 地 以 上 は 方 便 の 相 異 に 依 つ て 差 異 を 立 つ る 事 も 示 さ れ て あ る 。 五 、 六   無   畏 此 一 段 も 亦 心 相 の 答 説 で あ る 。 三 劫 六 無 畏 及 び 高 組 の 十 住 心 を 配 屬 せ ば 左 の 如 く で あ る 。

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無 畏 こ い ふ は 阿 滋 縛 裟 と い ふ 梵 語 の 譯 で あ つ て 正 譯 は 蘇 息 處 と い ふ 。 妄 心 を 斷 じ て 浄 心 の 勢 力 次 第 に 優 盛 と な り 行 道 の 心 、 安 隙 無 怖 畏 な る 程 度 を 六 つ に 分 つ て 六 無 畏 と い ひ 三 劫 に 封 し て 心 相 が 明 か さ れ て ゐ る 。 善 無 畏 主 は 十 善 業 道 を 行 じ て 十 不 善 の 業 を 退 治 し 世 間 道 に 於 て 無 畏 を 得 る 位 、 之 を 能 寄 齊 の 眞 言 行 者 に 約 す れ ば 初 め て 三 昧 耶 に 入 り 三 密 の 供 養 に 依 つ て 修 行 す る 位 此 れ ご 齊 等 で あ る 。 身 無 畏 主 は 自 己 の 身 他 八 の 身 を 觀 す る に 不 浄 觀 を 以 て し て 執 著 し な い 。 の み な ら す 受 は と れ 苦 、 非 は こ れ 無 常 法 は こ れ 無 我 と 觀 じ て 四 顛 倒 を 離 る 、 位 。 眞 言 行 者 本 尊 の 三 昧 の 衆 相 現 前 す る 時 の 位 こ れ と 齊 し 。 無 我 無 畏 、 ご は 唯 蘊 無 我 な り も 觀 じ て 我 不 可 得 な る 事 を 證 知 す る 位 、 眞 言 行 者 瑜 伽 の 境 界 に 於 て 心 不 可 得 な り ご 観 す る 位 此 れ ご 齊 等 で あ る 。 法 無 畏 ご は 心 諸 蘊 に 著 す る 時 十 縁 生 句 を 観 じ て 法 空 を 觀 す る 位 、 眞 言 行 者 に は 瑜 伽 の 境 界 は 皆 鏡 菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た ろ 菩 提 心 義  一 二 三

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菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た る 菩 提 心 義   一 二 四 像 水 月 の 如 し と 悟 る 時 の 位 ご 同 じ 。 法 無 我 無 畏 ご は 無 縁 乗 の 心 を 以 て 法 無 我 性 を 觀 密 し 心 外 有 無 の 影 像 に 於 て 智 す べ て 無 所 得 で あ り 心 王 且 在 に し て 本 不 生 を 覚 る 時 の 位 、 法 の 扼 縛 を 離 る ゝ 位 で あ る 。 若 し 眞 言 行 者 な ら ば 瑜 伽 道 の 中 に 於 て 心 に 自 在 の 用 を 得 る 時 の 位 は 此 れ ご 等 し 。 一 切 法 自 性 平 等 無 畏 は 先 の 第 三 劫 の 空 性 心 及 び 極 無 自 性 心 の 位 に 當 る 即 ち 業 煩 櫛 に 於 て 解 脱 す れ 共 而 も 業 煩 惱 の 具 依 こ な る こ い ふ 虚 空 無 垢 の 初 地 津 菩 提 心 を 證 す る 爲 め の 斷 惑 の 方 面 が と の 位 に 相 當 す る 。 即 ち 一 切 法 に 於 て 自 在 平 等 で あ る 位 で あ る 。 六 、 十   縁 生 句 と れ は 修 行 の 句 の 答 説 で あ る 。 行 者 一 切 の 作 業 を 作 す 時 と の 十 縁 生 句 を 観 じ て 心 垢 を 浄 除 す べ き で あ る か ら 最 も 肝 心 な 法 門 で あ る 。 然 る に 上 來 三 劫 段 に 於 て 、 又 六 無 畏 段 に 於 て 唯 蘊 無 我 心 こ か 他 縁 大 乗 心 等 に 於 て 或 は 五 喩 或 は 六 喩 を 觀 じ て 人 法 の 二 空 を 悟 る 事 を 教 ね ら れ て あ つ た が 佛 教 は 實 際 こ の 空 を 悟 る こ い ふ 事 が 最 も 肝 心 な 基 準 に な つ て ゐ る 。 そ れ で 唯 蘊 無 我 観 の 時 の 幻 等 と 観 す る を 即 空 幻 と 名 け 、 佗 縁 大 乗 心 の 時 萬 法 一 心 主 観 す る は 唯 心 幻 と 名 け 、 今 の 業 煩 惱 に 於 て 解 脱 す れ 共 而 も 業 煩 惱 の 具 依 た り と い ふ 不 思 議 解 脱 を 得 る 空 觀 は 即 不 思 議 幻 と 名 け て ゐ る 。

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何 故 に 不 思 議 幻 と 名 く る や こ い ふ を 解 し て 疏 に ﹁.且 く 行 者 瑜 伽 の 中 に 於 て 自 心 を 感 と し 佛 心 を 應 も す る 、 感 應 の 因 縁 を 以 て 即 時 に 毘 慮 遮 那 所 憙 見 の 身 を 現 じ 、 所 宜 聞 の 法 を 説 き 給 ふ が 如 き は 、 然 も 我 心 も 亦 畢 竟 浄 な り 、 佛 心 も 亦 畢 竟 津 な り 、 若 し 我 心 を 自 も す る に 望 む れ ば 即 ち 佛 心 を 佗 と す 。 今 此 境 界 は 自 よ り 生 す る か や 佗 よ り 生 つ る か や 。 共 し て 生 す る か 。 無 因 に し て 生 す る か 、 中 論 の 種 々 の 門 を 以 て 之 を 觀 す る に 生 不 可 得 な り 、 而 も 形 聲 宛 然 と し て 即 ち 是 れ 法 界 な り 。 幻 と 論 す れ ば 即 ち 幻 な り 。 法 界 と 論 す れ ば 即 ち 法 界 な り 。 遍 一 切 處 と 論 す れ ば 即 ち 遍 一 切 處 な り 。 幻 と 論 す る が 故 に 不 可 思 議 幻 と 名 く ﹂ 。 ご 説 明 し て あ る 。 即 ち 假 諦 空 諦 中 諦 體 一 を 親 じ 有 爲 無 爲 に 著 せ す 一 切 法 に 於 て 自 在 を 得 る 爲 め の 觀 法 で あ る 。 而 し て 十 縁 生 句 と は 幻 、 陽 炎 、 夢 、 影 、 乾 闥 婆 城 、 響 、 水 月 、 浮 泡 、 虚 空 華 、 旋 火 輪 、 の 十 種 の 線 生 無 性 空 を 觀 す る と も で あ つ て 或 は 又 十 喩 と も 稱 せ ら れ る 。 獨 り 當 經 に 於 て 説 か れ て ゐ る の で は な く て 大 品 般 若 、 智 度 論 、 略 出 念 誦 經 、 碓 識 論 等 皆 其 名 目 に 於 て 多 少 の 相 異 は あ る が 皆 こ の 空 觀 を 説 い て ゐ る 。 即 ち 一 切 の 佛 法 は 皆 衆 生 の 心 垢 を 浄 除 し て 眞 の 解 脱 を 、 眞 の 阿 羅 漢 を 得 し め ん が 為 め に 説 か れ て ゐ る 事 を 知 る の で あ る 。 疏 に 於 て は 十 喩 一 々 に 別 説 し た る 後 行 々 歎 じ 修 す べ き を 勸 め て 文 を 結 ん で ゐ る 。 委 細 又 は 本 丈 に ゆ つ る 。 菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た る 菩 提 心 義  一 二 五

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菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 回品 疏 に 説 か れ た る 菩 提 心 義   一 二六 第 四 章   雨 書 比 較 評 論 上 來 菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 の 大 意 を 明 し 了 つ た 。 菩 提 心 論 に は 眞 言 行 者 無 時 暫 忘 の 戒 體 た る 三 種 菩 提 心 の 行 相 を 明 か し て あ り 、 大 疏 の 方 に は 眞 言 行 者 の 戒 體 た る 無 爲 本 性 戒 た る 浄 菩 提 心 や 或 は 三 句 或 は 心 績 生 心 相 心 殊 異 或 は 修 行 の 句 等 敷 多 の 教 相 の 解 説 が あ つ た 。 雨 書 は 夫 々 に 異 つ た 昧 が あ り 異 つ た 形 式 に 於 て 吾 心 を 啓 發 し て 呉 れ る 。 菩 提 心 論 の 方 は 極 め て 簡 結 で あ り 明 瞭 で あ る 。 聖 者 の 心 を 三 つ に 開 い て あ ら は さ れ た も の で あ り 以 て 吾 等 も こ れ を 戒 こ し て 止 住 し な け れ ば な ら な い 大 疏 の 方 は 或 は 外 道 を 説 き 或 は 顯 教 を 朋 か ∼ 或 は 浄 菩 提 心 を 説 き 或 は 十 喩 の 觀 を 説 い て ゐ る の で す べ て が 菩 提 心 説 主 は 見 ら れ な い 。 殊 に 鐸 義 の 為 め の 疏 な る 故 に 時 に 題 名 の 鐸 に 、 時 に 序 分 の 解 鐸 に 種 々 な 説 解 を な し て ゐ る の で 今 問 題 こ す る 菩 提 心 に 就 て 甚 だ 不 得 要 領 の 感 が あ る 。 こ れ を 如 何 に 比 較 し 如 何 に 評 論 す る か ご い ふ 事 に 一 寸 窮 す る 位 だ が 始 め に も 述 べ た 如 く 大 師 は 十 住 心 論 及 び 賓 鑰 に 於 て 如 何 に 爾 書 を 接 近 せ し め 大 師 の 判 教 組 織 に 御 取 り 入 れ な さ れ あ る か を 見 る 事 に す る 。 次 に 菩 提 心 論 は 不 空 の 徒 の 集 と い ふ 説 に 本 き 不 空 と は 如 何 な る 思 想 系 統 に 屬 し 密 教 史 上 如 何 な る 地 位 を 占 め て ゐ る か 、 叉 そ の 主 と し て 説 か れ た 金 剛 頂 の 大 法 ご は 如 何 な る 性 質 特 長 が め り 大 日 經 系 と は 如 何 な る 特 異 鮎 を 持 つ か を 見 更 に 大 疏 の 解 説 者 善 無 畏 ご は 如 何 な る 組 師 に し て そ の 大 日 經 主 は 如 何 な る 性 質 の 經 典 な る か を 見 る 事 に す る 。

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先 づ 寳 鑰 に 於 て 第 一 異 生 羝 羊 心 よ り 第 十 秘 密 荘 嚴 住 心 に 至 る 十 住 心 一 々 の 建 立 の 依 憑 と な る 經 論 を 挙 げ て ゐ る を 見 る に 大 日 經 及 び 菩 提 心 論 の 文 が 骨 幹 を な し 時 に 鐸 摩 詞 術 論 、 守 護 國 界 經 或 は 金 剛 頂 經 等 の 文 を 錯 へ て 蕪 嚴 を 加 え て あ る 。 特 に 全 體 の 構 想 は 言 ふ ま で も な く 大 日 經 の 八 心 三 劫 の 説 に よ つ て ゐ る も の で あ る 。 そ の 各 住 心 に 相 應 す る 文 が 同 じ く 菩 提 心 論 の 勝 義 の 菩 提 心 説 及 び 三 摩 地 段 に あ る と こ に よ つ て 大 師 は 一 層 確 心 を 得 ら れ か く て 十 住 心 の 建 立 ご は な つ た も の ご 拝 察 す る 。 先 づ 第 一 異 生 羝 羊 心 の 依 憑 こ し て 大 日 經 の 方 は 心 績 生 の 説 段 秘 密 室 無 始 生 死 愚 童 凡 夫 執 著 我 名 我 有 分 別 無 量 我 分 云 々 と あ る 三 十 外 道 の 説 文 を 挙 げ 、 菩 提 心 論 は ﹁ 謂 く 凡 夫 は 名 聞 利 養 資 生 の 具 に 執 著 し て 務 む る に 安 身 を 何 て し 恣 に 三 毒 五 慾 を 行 す 、 眞 言 行 人 誠 に 厭 患 す べ く 誠 に 棄 捨 す べ し と い ふ 文 を 挙 げ て ゐ る 。 次 に 第 二 愚 童 持 齋 心 に 於 て は 大 日 經 の 愚 童 凡 夫 或 時 に 一 法 の 想 生 す る こ と あ り 、 所 謂 持 齋 な り ﹄ も い ふ よ り ﹁ 叉 此 施 を 以 て 親 愛 の 心 を 發 し て 之 を 供 養 す る は 是 れ 第 六 の 成 果 な り ﹂ こ い ふ ま で の 文 を 挙 げ て ゐ る の で 即 ち 齋 施 の 善 心 を 明 か す 文 を 以 て 當 住 心 の 所 依 こ し て ゐ る ・ 而 し て 當 住 心 に 於 て は 菩 提 心 論 の 文 を 引 證 し て な い が そ れ に 就 い て 菩 提 心 論 宥 快 鈔 に と れ を 辮 じ あ 筋 ば 委 細 見 る べ き で あ る 。 次 に 第 三 嬰 童 無 畏 心 に 於 て は 大 日 經 の ﹁ 秘 密 主 彼 れ 戒 を 護 つ て 天 に 生 す る は 是 れ 第 七 の 受 用 種 子 菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た ろ 菩 提 心 義   一 二 七

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菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た る 菩 提 心 義   一 二 八 な り ﹂ と い ふ よ り ﹁ 諸 法 の 空 を 知 ら ざ れ ば 彼 れ 能 く 涅 槃 を 知 る に あ ら す 、 是 故 に 應 さ に 空 を 了 知 し て 斷 常 を 離 る べ し ﹂ と い ふ ま で の 文 、 則 ち 十 心 の 中 第 七 受 用 心 よ り 第 十 決 定 心 ま で の 間 世 間 在 來 の 諸 天 龍 質 等 の 信 仰 を 説 け る 文 を 挙 げ て ゐ る 。 叉 菩 提 心 論 の ﹁ 諸 舟 の 外 道 等 は 其 身 命 を 懸 ふ て 或 は 助 く る に 藥 物 を 以 て し 仙 宮 の 住 壽 を 得 或 は 復 天 に 生 す る を 究 覧 と 以 爲 へ り 、 眞 言 行 人 應 さ に 彼 等 を 観 す べ し 、 業 力 若 し 霊 く れ ば 未 だ 三 界 を 離 れ す 煩 惱 術 存 し 宿 殊 未 だ 殄 び す 悪 念 旋 起 す 、 彼 の 時 に 當 つ て 苦 海 に 沈 淪 し て 出 離 す べ き 事 難 し 、 當 さ に 知 る べ し 外 道 の 法 も 亦 幻 夢 陽 焔 に 同 じ ﹂ と い ふ 文 を 挙 げ て ゐ る 。 又 次 に 第 四 唯 蘊 無 我 心 に 於 て は 大 日 經 の ﹁ 謂 く 是 の 如 く 唯 蘊 無 我 を 解 し 根 境 界 に 淹 留 す る に 於 て 修 行 す る な り ﹂ も い ふ 三 劫 段 の 中 の 初 劫 の 聲 聞 の 修 道 位 を 明 か せ る 文 を 挙 げ て ゐ る 。 而 し て 菩 堤 心 論 の 證 文 は ﹁ 下 の 文 の 心 も 雑 へ 挙 げ た る が 故 に 抄 せ す 行 相 下 に 臨 ん で 如 る べ し ご あ る 。 即 ち 次 に 引 け る 菩 提 心 論 の 文 ﹁ 二 乗 の 人 聲 聞 は 四 諦 の 法 を 執 す ﹂ こ い ふ を 指 さ れ た も の で あ る 。 叉 次 に 第 五 抜 業 因 種 心 に は 大 日 經 の 縁 覚 は 業 煩 悪 の 株 机 ご 無 明 の 種 子 の 十 二 因 縁 を 生 す る を 抜 く 云 々 の 文 を 挙 げ 菩 提 心 論 の 方 で は ﹁ 又 二 乗 の 人 聲 聞 は 四 誦 の 法 を 執 し 縁 覚 は 十 二 因 縁 を 執 す 、 四 大 五 陰 は 畢 覚 磨 減 す ご 知 つ て 深 く 厭 離 を 起 し 衆 生 執 を 破 す の 文 を 引 い て ゐ る 。 次 に 第 六 住 心 に 於 て は 大 日 經 の 秘 密 主 大 乗 の 行 に 於 て 、 無 縁 乗 の 心 を 發 し 法 に 於 て 我 性 無 し 云 々

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の 交 即 ち 第 二 劫 の 他 縁 乗 の 心 を 挙 げ て ゐ る 。 又 菩 提 心 論 の 方 で は ﹁ 衆 生 有 つ て 大 乗 の 心 を 發 し 菩 薩 の 行 を 行 じ 諸 々 の 法 門 に 於 て 遍 修 せ ざ る な ー 云 々 の 文 を 挙 げ て ゐ る 。 次 に 第 七 覚 心 に 於 て は 大 日 經 の ﹁ 秘 密 主 彼 れ 是 の 如 く 無 我 を 捨 つ れ ば 心 主 自 在 に し て 自 心 の 本 不 生 を 覚 る 何 を 以 て の 故 に 秘 密 主 心 は 前 後 際 不 可 得 な る が 故 に 、 是 の 如 く 自 心 の 性 を 知 る 是 れ 二 劫 を 超 越 す る 瑜 伽 の 行 な り ﹂ と い ふ 第 二 劫 の 覚 心 不 生 心 を 明 す 文 を 引 い て ゐ る 。 叉 菩 提 心 論 の 方 は ﹁ 當 に 知 る べ し 一 切 の 法 は 空 な り 已 に 法 の 本 無 生 を 悟 れ ば 心 の 體 自 ら 如 な り 、 身 心 を 見 す 、 寂 滅 究 竟 眞 實 の 智 に 住 し て 退 失 無 か ら し む 。 妄 心 若 し 起 ら ば 知 つ て 随 ふ こ と 勿 れ 、 妄 者 し 息 む 時 は 心 源 空 寂 な り こ い ふ 文 を 挙 げ て ゐ る 。 次 に 第 入 如 實 一 道 心 に 於 て は 大 日 經 の 津 菩 提 心 觀 を 明 か す 文 を 引 い て 菩 提 心 論 の 丈 は 引 い て な い 次 に 第 九 極 無 自 性 心 に 於 て は 大 日 經 の ﹁ 有 爲 無 為 界 を 離 れ 諸 々 の 造 作 を 離 れ 眼 耳 鼻 舌 身 意 を 離 れ 極 無 自 性 心 生 す 、 等 虚 空 無 邊 の 一 切 の 佛 法 此 に 依 つ て 相 績 し て 生 す 、 秘 密 主 是 の 如 き 初 心 を ば 佛 成 佛 の 因 と 説 き 玉 へ り 。 業 煩 悩 に 於 て 解 脱 す れ 共 而 も 業 煩 惱 の 具 依 た り も い ふ 第 三 劫 の 極 無 自 性 心 の 文 、 即 ち 六 無 畏 に 移 す る な ら ば 第 六 一 切 法 自 性 平 等 無 畏 に 相 當 す る こ と ろ を 挙 げ て ゐ る 。 叉 菩 提 心 論 の 方 は ﹁ 夫 れ 迷 途 の 法 は 妄 想 よ り 生 す 乃 至 展 縛 し て 無 量 無 邊 の 煩 惱 こ な り 六 趣 に 輪 廻 す 、 若 し 覺 悟 し 已 な ば 妄 想 止 除 し て 種 々 の 洪 滅 す 、 故 に 自 性 有 る 事 な し 、 復 次 に 諸 佛 の 慈 悲 は 眞 な り 用 を 起 し 菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た ろ 菩 提 心 畿   一 二九

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菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た る 菩 提 心 義   一 三 〇 て 衆 生 を 救 攝 す 。 病 に 應 じ て 藥 を 與 ふ 、 諸 々 の 法 門 を 施 し 其 煩 悩 に 随 っ て 迷 津 を 對 治 す 。 機 に 遇 ふ て 彼 岸 に 達 し ぬ れ ば 法 巳 に 應 に 捨 つ べ し 、 自 性 無 き が 故 に 、 乃 至 妄 若 し 息 む 時 は 心 源 空 寂 な り 、 萬 徳 斯 に 具 し 妙 用 無 窮 な り 、 此 心 を 具 す る 者 は 能 く 法 輪 を 轉 じ て 自 他 倶 に 利 す ﹂ と い ふ 文 を 挙 げ て あ る 。 最 後 に 第 十 秘 密 荘 嚴 住 心 に 於 て は ﹃ 大 日 經 に 云 く 復 次 に 秘 密 主 眞 言 門 に 菩 薩 の 行 を 修 行 す る 諸 々 の 菩 薩 は 無 量 無 敷 百 千 倶 胝 那 庚 多 劫 に 積 集 す る 無 量 の 功 徳 智 慧 と 具 さ に 諸 行 を 修 す る 無 量 の 智 慧 方 便 ご 皆 悉 く 成 就 す ﹂ と い ふ 本 文 と ﹁ 此 れ は 初 め て 眞 言 に 入 る 菩 薩 の 功 徳 を 歎 す し と い ふ 解 の 文 を 挙 げ て ゐ る 、 而 し て 菩 提 心 論 の 方 は 三 摩 地 段 の 文 悉 く 引 用 し て ゐ る の で あ る 。 さ て 上 來 各 住 心 を 明 か す に 於 て 大 日 經 住 心 品 及 び 菩 提 心 論 の 文 を 引 用 せ ら れ た る 箇 所 文 句 を 大 體 摘 示 し た が 、 と れ を 通 觀 す る に 大 日 經 は 入 心 三 劫 の 段 及 び 浄 菩 提 心 觀 を 網 羅 し 菩 提 心 論 は 勝 義 三 摩 地 全 體 に わ た つ た 文 を 引 用 し て ゐ る 。 菩 提 心 論 は 大 日 經 住 心 品 の 意 を 以 て 勝 義 段 の 説 を な し た か 如 何 か は 知 ら な い が 兎 に 角 爾 書 は 一 致 し て ゐ る 。 と ゝ に 於 て 眞 言 宗 爾 部 共 通 の 菩 提 心 は 矢 張 り 最 初 に か へ つ て 菩 提 心 論 に 明 さ れ た 三 種 菩 提 心 に 盡 き て ゐ る 。 即 ち 一 向 行 悪 不 修 微 少 善 の 最 低 の 心 よ り し て 次 第 に 向 上 し た 人 心 、 次 に 佛 教 の 中 原 始 佛 教 の 生 硬 な る 教 義 更 に 印 度 に 於 て は 最 上 の 發 達 た る 三 論 法 相 の 教 義 史 に 一 層 進 と で 支 那 の 天 台 華 廣 の 圓 融 無 磯 、 理 論 と し て は 圓 熟 の 最 極 に ま で 至 つ た 兩

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宗 の 極 意 を 達 觀 し 、 こ れ 等 を 甚 礎 に し て 更 に 雨 部 大 經 の 骨 目 た る 三 密 の 觀 行 、 阿 字 觀 , 五 相 成 身 觀 等 の 眞 言 觀 法 を 打 ち 建 て る こ と 、 こ れ が 眞 言 行 者 の 菩 提 心 で あ る 。 而 し て 最 極 の 理 想 は 現 生 に 成 佛 す る も い ふ こ と で あ る 。 時 に 方 便 と し て 世 間 の 巧 利 的 な 願 望 の 法 も あ る が 皆 一 様 に 導 い て 成 佛 こ い ふ 出 世 の 大 願 に 歸 し て ゐ る 。 而 し て 佛 の 大 精 神 の 本 質 は 大 慈 悲 で あ る 、 即 ち 行 願 の 心 で あ る 。 盲 目 的 な 小 慾 我 愛 で な く 磨 か れ た 大 智 の 上 に 發 す る 大 慈 悲 で あ る 。 こ れ 行 願 で あ り 大 智 が 勝 義 で あ る 。 そ れ に 達 す る に 三 摩 地 の 法 を 以 て し か く て 更 に 二 心 を 發 す 。 二 心 よ り 叉 三 摩 地 心 に 歸 す る 。 即 ち 三 者 は 一 の 中 に 二 を 具 し 二 者 は 又 一 を 具 す ご い ふ 様 な 有 機 的 組 織 を な す 大 精 神 の 作 用 こ れ が 眞 言 行 者 の 菩 提 心 で あ る 。 即 ち 爾 書 は 決 し て 異 つ た 事 を 言 つ て あ る の で は な く 三 種 菩 提 心 の 開 合 で あ り 表 面 の 相 異 の み で あ つ て 菩 提 心 論 の 方 へ ま と む れ ば 三 句 或 は 澤 菩 提 心 觀 に 一 致 す る の で あ る 。 次 に 善 無 畏 及 び 不 空 雨 三 藏 及 び 大 日 經 金 剛 頂 經 の 大 體 の 系 統 相 異 を 一 瞥 し て 見 や う 。 古 來 の 付 法 の 傳 説 た る 大 日 金 剛 薩 唾 龍 猛 智 金 剛 智 不 空 善 無 畏 一 行 恵 果 弘 法 主 謫 々 相 承 し た こ い ふ 事 は 簡 軍 で は よ い が 、 歴 史 的 に 考 ね る 時 は こ う し て も 満 足 が 出 來 ぬ 。 幸 に し て 大 村 西 崖 氏 の 密 教 發 達 史 出 で ゝ こ の 奇 談 を 破 し 新 し き 發 達 史 を 建 て ら れ た 事 は た と へ 少 々 の 瑾 あ り こ す る も 密 教 の 為 め 學 界 の 爲 め に 感 謝 す べ き 事 で あ つ た 。 今 そ の 發 達 史 に よ つ て 教 興 よ り 階 に 至 る 第 一 巻 、 初 唐 の 密 教 た る 第 二 巻 を 大 略 見 來 つ て 第 三 巻 盛 唐 の 密 教 に 至 つ て と ゝ に 善 無 畏 の 傳 に 接 す る 。 菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た る 菩 提 心 義   一 三 一

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筈 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た ろ 菩 提 心 義   一 三 二 善 無 畏 梵 名 は 戌 婆 掲 羅 曾 訶 と い ひ 浄 師 子 の 義 な る が 意 を 以 て 善 無 畏 ご 義 翻 す 。 釋 尊 の 季 父 甘 露 飯 王 の 後 に し て 其 先 組 は 中 天 竺 摩 掲 陀 國 に 住 ん で ゐ た が 國 難 に よ つ て 去 つ て 烏 茶 の 王 こ な つ た 。 父 を 佛 手 王 主 い ふ 。 善 無 畏 幼 よ り 聰 明 一 度 王 位 を 嗣 ぐ も 諸 兄 の 爲 め に 位 を 避 け 諸 國 を 遊 行 し 、 衆 藝 道 術 を 挙 ぶ 。 傳 に 、 無 畏 風 儀 爽 俊 、 聰 叡 超 レ 群 、 該 究 二 五 乗 一道 解 二 三 學 一總 持 釋 觀 妙 達 二 其 源 一 藝 術 伎 能 、 亦 悉 精 練 、 是 以 名 震 二 五 天 も あ る 。 後 那 蘭 陀 寺 に 至 り 達 磨 掬 多 ( 法 護 ) に 師 事 す 。 同 師 の ﹁ 汝 有 縁 于 震 旦 、 今 可 行 突 こ い ふ に 依 つ て 迦 灘 彌 羅 國 烏 萇 國 等 を 過 ぎ 雪 山 を 越 え 所 謂 北 路 を 經 て 道 中 種 々 の 奇 怪 の 事 に 遭 遇 し つ ゝ 開 元 四 年 長 安 に 至 り 立 宗 の 禮 遇 を 受 け 齎 す と こ ろ の 梵 本 は 皆 朝 廷 へ 進 納 し た 。 五 年 入 月 に 虚 空 藏 求 聞 持 法 經 を 鐸 す 。 こ れ 金 剛 頂 部 譯 經 の 初 出 で あ る 。 次 い で 十 三 年 一 行 の 爲 め に 大 日 經 を 聖 善 寺 に 譯 し 供 養 念 誦 法 を 撰 述 す 〇 二 十 三 年 十 月 寂 す 、 九 十 九 、 法 臘 入 十 。 そ の 善 無 畏 の 譯 せ し 大 日 經 は 前 に 無 行 が 將 來 し 華 嚴 寺 に 安 置 し て あ つ た 梵 本 に 依 つ た 事 常 の 傳 の 如 く で あ る が 無 行 は と の 經 を 那 燗 陀 寺 に 得 た も の ゝ 如 く 師 は 同 寺 に 於 て 瑜 伽 を 聴 き 中 観 を 習 ひ 倶 舎 を 研 味 し 律 典 を 探 求 す も 傳 へ ら る ゝ に よ つ て 同 寺 と は 因 縁 深 き 様 で あ る 。 後 故 國 に 還 ら と こ し て 北 天 竺 に 至 つ て 不 幸 に し て 斃 れ た が そ の 將 來 の 梵 本 は 勅 命 に 依 つ て 迎 還 し て 西 京 の 華 嚴 寺 に 安 置 し 開 元 十 三 年 に 至 つ て 善 無 畏 三 藏 之 に 依 つ て 譯 す る 事 と な つ た 。 殊 に そ の 在 天 の 日 唐 に 寄 せ た 書 面 に ﹁ 新 た に 眞 言 教 法 あ り 挙 國 崇 仰 す ﹂ と い ふ 文 あ る に 依 つ て 現 代 の 大 村 氏 が 密 教 發 達 史 の 撰 述 の 動 機 と も

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な つ た 由 で あ る 。 而 し て 大 村 氏 は 種 々 の 文 書 を 考 證 し た 結 果 斷 定 し て ﹁ 眞 言 密 教 の 完 成 す 其 れ 正 し く 初 唐 の 際 に 在 り て 永 徽 顯 慶 以 前 に 上 ら す ﹂ と し て 種 々 の 書 を 考 證 し て あ る 。 即 ち 唐 の 高 宗 の 末 年 に し て そ の 作 者 は ﹁ 或 は 達 磨 掬 多 興 こ し て ゐ る 。 大 日 經 は か く の 如 く に し て 餘 程 後 世 に 那 燗 陀 寺 の 達 磨 掬 多 が 正 し く 大 日 如 來 の 三 摩 地 に 入 つ て 感 得 し 從 來 の 密 教 思 想 を 大 成 し た も の で あ る と い ふ 想 定 が 出 來 る 。 次 に 前 に も 述 べ し 如 く 菩 提 心 論 は 古 來 龍 猛 菩 薩 造 不 空 三 藏 譯 と 傳 へ ら れ て ゐ る が 密 教 發 達 史 に は ﹁ 其 鐸 義 に 大 日 經 、 華 嚴 經 、 観 無 量 壽 經 、 涅 槃 經 等 の 諸 經 を 引 い て ゐ る が そ の 中 に 善 無 畏 の 所 撰 た る 大 日 經 供 養 次 第 法 を 引 い て あ る 。 龍 猛 堂 唐 代 の 善 無 畏 の 言 を 引 く 事 あ ら う か 、 且 つ 又 論 の 首 め の 大 阿 闊 梨 云 の 五 字 を 一 本 に は 大 廣 智 阿 闍 梨 云 に 作 つ て あ る 。 故 に 安 然 の 教 時 義 巻 三 に 云 く ﹁ 或 目 録 に 云 く 、 菩 提 心 論 は 不 空 の 集 な り と ﹂ 按 す る に 是 の 書 は 乃 ち 不 空 の 徒 が 其 師 説 を 録 す る の み 、 荷 く も 雙 眼 を 具 す る 者 は 誰 か 之 を 観 破 し な い だ ら う か 。 故 に 圓 珍 些 々 疑 文 に 曰 く 、 菩 提 心 論 は 或 は 龍 樹 の 造 と い ひ 或 は 興 善 三 藏 の 集 も 言 つ て ゐ る 。 此 未 だ 決 解 し な い 。 私 か に 謂 へ ら く 、 後 説 を 正 も す ご 蓋 し 正 直 に 判 斷 す れ ば 大 村 先 生 の 斷 定 の 如 く で あ ら う 。 そ の 不 空 が 菩 提 心 論 の 如 き 説 を な す 爲 め に は 果 し て 彼 が 如 何 な る 思 想 經 歴 系 統 に 屬 す る か を 考 ね ね ば な ら ぬ 。 不 空 は 南 天 竺 師 子 國 の 人 、 唐 の 中 宗 神 龍 元 年 西 暦 七 〇 四 年 に 生 る 。 梵 名 は 阿 目 怯 跋 折 羅 と い ひ 幼 菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 設 か れ た ろ 菩 提 心 義   一 三 三

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菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た ろ 菩 提 心 義   一 三 四 に し て 聰 明 早 く 道 を 慕 ひ 開 元 五 年 甫 め て 十 三 、 閣 婆 國 に 於 て 金 剛 智 に 見 え 師 事 し 開 元 入 年 始 め て 東 洛 に 至 る 。 開 元 二 十 九 年 師 化 寂 す 。 乃 ち 道 書 を 奉 じ て 再 び 天 竺 に 往 か ん と 欲 す 。 十 二 月 海 路 よ り 出 向 す 、 途 中 大 風 ぜ 鯨 群 主 の 難 に 遇 ふ も 幸 に し て 不 空 の 修 法 の 功 徳 を 以 て 漸 く 免 る 事 を 得 、 漸 く に し て 師 子 國 に 達 し 王 の 歡 迎 を 受 け 佛 牙 寺 に 於 て 普 賢 阿 闍 梨 に 就 い て 重 ね て 灌 頂 を 受 く 。 爾 來 常 師 な く 廣 く 密 藏 及 び 諸 經 論 を 受 ぐ 。 天 寳 五 年 不 空 金 剛 頂 瑜 伽 等 八 十 部 、大 小 乗 經 論 梵 夾 二 十 部 、 千 二 百 巻 を 齎 し 小 使 彌 陀 を 伴 ひ て 師 子 國 よ り 歸 る 。 詔 を 奉 じ て 經 を 譯 し 、 灌 頂 壇 を 開 く 。 同 十 三 年 に 西 平 郡 王 の 爲 め に 金 剛 頂 攝 大 乗 經 、 菩 提 場 所 説 一 宗 頂 輪 王 經 、 一 字 頂 輪 王 瑜 伽 經 、 同 念 誦 儀 軌 等 を 講 す 。 爾 來 屡 々 天 皇 に 奏 請 し 或 は 灌 頂 道 場 を 作 し 或 は 經 を 譯 す 。 大 暦 九 年 六 月 遂 に 不 塞 寂 す 。 壽 七 十 膿 五 十 弟 子 慧 朗 灌 頂 位 を 紹 ぐ 。 不 室 の 遺 書 に 曰 く 、 ﹁ 吾 當 代 灌 頂 三 十 餘 年 、 入 壇 受 法 の 弟 子 頗 る 多 し 。 五 部 琢 磨 成 立 八 箇 、 淪 亡 相 次 ぐ 。 唯 六 人 あ り 。 そ れ 誰 か と れ を 得 た る 。 則 ち 金 閣 の 含 光 、 新 羅 の 慧 超 、 青 龍 の 慧 果 、 崇 福 の 慧 朗 、 保 壽 の 元 皎 、 覚 超 あ り 。 後 學 疑 あ ら ば 汝 等 開 示 せ よ ご 。 次 に 不 空 の 師 普 賢 は 賓 覚 三 藏 の 弟 子 で あ つ て 金 剛 頂 法 を 受 け て 佛 牙 寺 に 住 す 。 不 空 再 往 の 時 賓 覚 は 既 に 世 を 去 つ て ゐ た 。 而 し て 普 賢 に 受 け た と こ ろ は 蓋 し 金 剛 頂 法 で あ り 費 し 歸 つ た と こ ろ の 經 は 則 ち 金 剛 頂 經 で あ つ た ら う 。 ご 而 し て 大 日 經 を 費 し 叉 胎 藏 法 を 受 け た 事 は 遺 書 の 中 に も 奏 請 の 表 中 に も 何 等 に 見 え な い 。 然 る に 獨 り 趙 遷 の 行 状 及 び 飛 錫 の 碑 文 に ﹁ 十 八 會 金 剛 頂 瑜 伽 、 井 毘 盧 遮 那 大

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悲 胎 藏 、 五 部 灌 頂 、 眞 言 秘 典 、 經 論 梵 爽 、 五 百 餘 部 、 倉 以 て 其 所 傳 を 得 ﹂ ご あ る 。 宋 高 曾 傳 主 付 法 傳 ご は 並 び に 其 説 を 受 け て ゐ る 。 蓋 し 趙 遷 飛 錫 の 誤 耳 も 發 達 史 は 斷 じ て あ る 。 故 に 不 空 唐 に 歸 つ て 後 弟 子 等 に 授 く る と と ろ 自 ら 金 剛 界 を 主 も し た の で あ る 。 但 し 不 空 は 曾 て 金 剛 智 に 随 つ て 兼 ね て 胎 法 を 受 け た 。 金 剛 智 は 乃 ち 之 を 善 無 畏 に 受 け た の で 金 善 互 受 も い ふ 事 は 大 日 經 傳 法 次 第 記 に 出 て ゐ る 事 で あ る 。 が 是 固 よ り 勇 修 に し て 主 こ す る こ と ろ 矢 張 り 金 剛 頂 法 で あ る 。 然 し 不 空 の 得 た 金 剛 頂 經 は 初 會 初 品 の 外 は 唯 十 萬 頌 の 法 藏 の 印 可 あ つ た の み で 未 だ 十 入 會 全 部 の 大 經 本 を 賓 し た も の で は な い 。 そ の 十 入 會 指 歸 は 所 得 の 印 可 の 意 に 随 つ て 金 剛 頂 宗 の 義 を 體 得 し て 難 意 を 以 て 制 作 し た も の で あ る も い は れ る 。 斯 く し て 不 空 は 雑 密 ・ 蘇 悉 地 ・ 胎 ・金 ・ 瑜 祇 の 五 部 を 一 身 に 得 各 々 發 達 し 或 は 渾 然 と し て 融 合 し た 不 空 の 密 教 史 上 に 於 け る 功 は 實 に 偉 大 で あ る 。 そ の 金 剛 頂 經 た る や 南 天 に 於 て 次 第 に 發 達 し て 來 た も の で あ つ て 南 天 に は 別 に 叉 密 教 の 萌 芽 が あ つ た の で あ る 。 大 般 若 經 の 理 趣 分 等 は 金 剛 頂 經 の 成 立 に 非 常 な 材 料 を 提 供 し て ゐ る と い ふ 。 か く の 如 く 大 日 經 ご 金 剛 頂 經 と は 別 々 に 成 立 し 發 達 し た も の で あ つ て 一 法 身 た る 大 日 如 來 が 説 き 龍 猛 が 傳 授 し た も の で は な い 、 大 村 氏 は 龍 猛 非 密 組 ご ま で 極 言 し て ゐ る の で あ つ て 菩 提 心 論 が そ の 龍 猛 の 作 で な い 事 は 極 め て 明 白 な 事 で あ る 左 に 密 教 發 達 史 に 説 い て あ る 、 南 天 及 び 中 天 の 密 教 の 相 異 比 較 の 文 を 少 々 抜 抄 せ ん 。 菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た る 菩 提 心 義  一 三 五

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菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た る 菩 提 心 義   一 三 六 ﹁ 瑜 伽 観 の 發 達 は 南 天 を 勝 れ た り こ す 。 故 に 無 畏 の 供 養 法 を 作 る に 當 つ て 是 に 取 る と と ろ あ り 。 此 餘 の 南 天 密 教 は 大 く 大 日 經 宗 に 影 響 せ す 。 一 字 佛 頂 、 千 臂 千 鉢 文 殊 、 金 剛 界 十 六 大 菩 薩 、 四 攝 入 供 、 及 び 愛 染 王 等 の 胎 藏 曼 茶 羅 に 入 ら ざ る 亦 以 て 徴 す る に 足 る 。 之 に 反 し て 白 傘 蓋 佛 頂 の 如 き 陀 羅 尼 集 經 以 後 の 出 現 に 係 る ご 雖 も 胎 臓 曼 茶 羅 に 列 ぬ 。 蓋 し 臼 傘 蓋 呪 は 中 天 に 成 れ る も の で あ る 惟 ふ に 印 度 密 教 の 源 流 素 ご 中 天 南 天 の 爾 派 あ り 。 前 者 は 即 ち 大 日 經 宗 こ な し 、 後 者 は 即 ち 金 剛 頂 法 こ な る 。 夫 れ 南 北 の 土 を 殊 に す る 入 情 も 亦 同 じ か ら す 、 北 方 は 質 實 を 術 ぶ 。 南 人 は 空 理 に 富 む は 東 西 揆 を 一 に す る と こ ろ 。 仲 尼 は 阪 邑 に 生 る 。 老 聴 は 苦 縣 に 出 づ 。 道 ふ ご こ ろ 各 々 異 り 。 商 勒 、 李 斯 、 屈 原 、 宋 玉 の 輩 の 如 き に 至 つ て は 亦 秦 楚 相 反 の 甚 し き を 見 る べ し 。 而 し て 六 朝 の 清 淡 は 獨 り 専 ら 江 南 に 行 は る 。 君 し 夫 れ 中 天 の 密 教 は 曼 茶 羅 を 以 て 勝 れ た り ご 爲 ば 南 天 の 密 教 は 長 を 瑜 伽 観 に 見 る 。 殆 ご 亦 斯 理 を 逸 せ ぎ る 者 飲 。 胎 藏 大 法 の 發 達 ご 其 渦 程 の 脈 絡 ご 凡 そ 上 述 の 如 ー 。 東 晋 呪 經 の 初 出 よ り 初 唐 に 至 る 實 に 四 百 年 也 、 其 間 幾 多 の 人 師 、 思 を 凝 し 、 慮 を 潜 め 、 研 鎖 工 夫 積 集 適 進 、 遂 に 以 て 此 大 成 を 致 す 。 三 國 の 世 龍 猛 一 人 を 以 て 一 朝 能 く 之 を 出 さ と や 。 然 り 而 し て 此 經 に 至 つ て 諸 々 の 成 就 の 法 厭 勝 に 似 た る も の 殆 ざ   を 絶 ち 唯 即 身 謹 成 作 佛 の 法 式 を 説 く 。 此 經 ( 金 剛 頂 經 ) 叉 始 め て 法 身 毘 盧 遮 那 佛 の 説 く ご と ろ 主 な す 。 所 謂 純 密 經 は 是 を 以 て 噛 矢 も な す 。 從 前 の 諸 經 は 則 ち 皆 釋 尊 若 く は 観 音 文 殊 等 の 菩 薩 之 を 説 く 。 而 し て 其 受 法 、 持 誦 の 功 徳 は 専 ら 世 間 の

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諸 願 成 就 に 在 り 。 今 は 專 ら 即 身 成 佛 大 菩 提 の 願 を 以 て 教 法 の 旨 歸 と な す 。 純 密 の 尊 た る 所 以 は 其 唯 成 佛 の 大 用 に 存 す 。 さ て 先 に 金 善 互 授 の 事 あ り 不 空 も 亦 胎 藏 に 通 曉 し な い 者 で は な い 。 然 し 弟 子 を 灌 頂 し 叉 平 生 の 観 行 は 專 ら 金 剛 界 に 依 る も の ゝ 如 く で あ つ て 菩 提 心 論 が 金 剛 頂 部 に 屬 す る 事 も と れ が 為 め で あ る 。 故 に 眞 に 雨 部 を 兼 傳 す る 者 は 思 ふ に 慧 果 を 以 て 初 粗 こ せ な け れ ば な ら な い 。 吾 が 高 組 又 恵 果 に 受 學 し 今 H 雨 部 灌 記 に 於 て 初 胎 後 金 の 例 あ る は 恵 果 よ り 籾 ま る も の で あ る 。 元 來 印 度 に 於 け る 密 教 は 事 相 が 殆 ご 全 部 分 で あ つ た 。 そ の 教 相 は 支 那 に 來 つ て 他 の 顯 教 の 教 相 を 加 味 す る 事 に よ つ て 初 め て 發 達 し た の で あ る 。 か く て 吾 が 大 師 は 淳 和 帝 の 勅 詔 に よ つ て 天 長 中 十 住 心 論 及 び 秘 藏 賓 鎗 を 製 作 せ ら れ 、 と ゝ に 大 日 經 及 び 菩 提 心 論 が そ の 立 説 の 基 誦 を な し た の で あ る 。 そ の 鮎 に 關 し て は 前 に 述 べ た 。 と ゝ に 千 百 年 後 の 淺 學 愚 鈍 な る 末 弟 . 大 日 經 住 心 品 疏 を 讀 み 叉 菩 提 心 論 を 讀 み 更 に 秘 藏 賓 鍮 を 拜 讃 し て 一 味 貫 通 す る 共 通 の 問 題 た る 菩 提 心 義 を 捉 へ 來 つ て 論 す る 事 と は な つ た の で あ つ た 。 今 章 は か ゝ る と と ろ に ご v め ん 。 五 、 結 論 (余 の 信 仰 ) 余 の 信 仰 余 は 上 描 の 論 題 の 下 に 貧 弱 な 自 己 の 知 識 を 組 織 し て 發 表 し た 。 何 等 新 し い 發 見 も な い 。 廣 い 問 題 を 少 々 短 か く 纒 め た と こ ろ に 多 少 の 苦 心 も 在 る わ け だ が 反 つ て 眞 面 目 を 失 ふ て ゐ る か も わ 菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た ろ 菩 提 心 義   一 三 七

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菩 提 心 論 及 び 大 日 經 佳 心 品 疏 に 説 ザ れ た ム 菩 提 心 義  二 三 八 か ら ぬ 。 最 初 と の 論 文 を 思 ひ 立 つ た の は 先 づ 大 疏 を 一 讀 し て 了 解 し た ご と ろ も あ り 猶 了 解 出 來 な い ご と ろ も あ つ た が そ の 眼 目 の あ る も と ろ は 菩 提 心 説 だ と い ふ 事 だ け が わ か り 、 次 に 菩 提 心 論 を 讃 と で 又 同 様 の 感 を 生 じ 、 次 に 賓 鍮 を 一 讃 し 又 十 住 心 論 の 大 略 を 讃 破 し て わ が 大 師 十 住 心 論 を 建 立 し 玉 ふ た の は 主 こ し て 爾 書 に よ ら れ て ゐ る 事 を 明 白 に 知 つ た 。 そ と で 菩 提 心 論 及 び 大 疏 の 爾 者 に は 異 つ た と こ ろ 主 共 通 な ご と ろ ご が あ る が そ れ を 明 自 に 了 解 し 自 分 の 信 仰 を も 築 い て 見 度 い こ い ふ 發 憤 に 發 し た の で あ る 。 且 叉 右 の 如 き 教 相 の 書 が 吾 々 の 心 根 に 鯛 れ て 感 發 す る 事 の 少 き を 憤 り も う 少 し 生 き く も し た ご と ろ を 味 ひ 自 他 共 に 盆 を 受 け や う こ い ふ 希 望 に 出 發 し た 。 然 し 元 來 か ゝ る 書 は 別 に 忠 臣 孝 子 の 悲 憤 の 涙 を 流 し た り 人 情 の 悲 痛 を 訴 へ た 様 な 文 章 で な い か ら 熱 涙 を 落 し た り 掌 に 汗 す る 様 な 事 は な か つ た 。 然 ら ば 最 初 の 豫 期 は す べ て 裏 切 ら れ て 何 物 も 得 な か つ た か ご い ふ ご 左 様 で も な い 。 先 づ 第 一 に 古 來 傳 法 の 口 傳 た る 雨 部 大 教 は 大 日 如 來 金 剛 薩 唾 に 授 け 薩 唾 南 天 鐵 塔 に 臓 め て 龍 猛 菩 薩 の 出 つ る を 待 つ て 之 に 付 法 し 云 々 こ い ふ 甚 だ 奇 怪 な 神 話 は 傳 説 と し て は 認 め ら れ る が 事 實 も し て は 受 け 入 れ ら れ ぬ 事 こ な つ て 雨 部 の 思 想 は 地 理 的 に 又 歴 史 的 に そ れ い 異 つ た 發 達 を な し た も の だ こ い ふ 事 が 密 教 發 達 史 を 通 じ て 了 解 出 來 た 。 そ し て 眞 言 宗 の 意 義 が 根 底 か ら 科 學 的 に 要 當 に 築 か れ た 事 は 秘 か に 満 足 す る 事 の 一 つ で あ る 。 か ゝ る 事 は 昔 流 の 判 斷 に よ る ご 異 端 邪 説 こ し て 大 い に 歴 迫

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を 受 け る 事 で あ ら う が 何 こ い つ て も 現 代 の 科 學 思 想 の 普 及 し た 眼 か ら 見 れ ば 何 等 怪 し む べ き 串 で な く 反 つ て 神 怪 な 傳 説 と そ 不 都 合 な り こ し て 詮 索 を 受 け る の で あ る 。 と の 事 か ら し て 人 生 に 於 て は 不 可 思 議 的 な 神 變 こ か 奇 怪 こ い ふ 現 象 は 自 然 や 人 事 の 法 則 を 破 つ た 例 外 的 な 現 象 で は な く し た 一 日 ご 些 細 な 事 功 を 積 ん で 大 果 を 生 じ 小 さ い 人 の 力 を 集 め た 多 勢 の 協 力 の 結 果 が 愈 々 目 前 に 顯 は れ た 爵 の 相 で あ る 事 を 知 る 。 彼 の 不 可 思 議 な 南 天 鐵 塔 説 も 近 く わ が 栂 尾 教 授 に よ つ て そ の 正 體 が 説 か れ ア マ ラ ヴ ク ィ の 塔 こ い ふ 事 に な つ て 來 た で は な い か 〇 一 體 速 疾 力 三 昧 に よ つ て 宙 を 飛 ぶ 事 を 夢 み る よ り も 人 智 を 一 鮎 に 集 中 す る 事 に よ つ て 産 み 出 さ れ た 現 代 文 明 の 産 物 た る 飛 行 機 に 乗 す る 事 が 賢 明 で あ る 。 然 れ ば 不 思 議 も す べ き は 例 外 的 の 想 像 よ り も 規 則 正 し い 自 然 の 法 則 人 心 の 作 用 等 に 驚 畏 す べ き で あ る 。 と れ ま た 深 く 近 代 の 文 明 が 吾 々 の 鷹 底 に 潜 浸 し て ゐ る 爲 め に 興 味 の 方 向 が か く 轉 じ て ゐ る の で 動 か す 事 の 出 來 ぬ 信 仰 の 一 と な つ て ゐ る わ け で あ る 次 に 菩 提 心 こ い ふ 事 は 要 す る に 吾 等 の 心 の 各 方 面 を 磨 き 出 し 充 分 に 發 達 活 動 せ し め る 事 で あ る こ い ふ 事 を 知 つ た 。 大 悲 こ い ひ 大 智 も い ひ 大 定 こ い ふ 皆 心 の 一 徳 の 最 高 處 で あ る 。 而 し て と れ 等 は 軍 獨 に 分 け ら れ る も の で は な く て 結 局 大 阿 閣 梨 こ し て の 一 人 格 に 統 一 せ ら る べ き も の で と の 阿 闇 梨 の 方 便 究 寛 こ れ が 佛 教 の 目 的 で あ る 。 故 に 知 的 方 面 の 活 勤 に 從 事 す る 者 は 專 ら 智 を 磨 き 情 を 謹 む で 精 進 し そ の 道 の 奥 を 極 め 最 も 尊 い 道 の 起 原 中 心 生 命 に 鯛 れ る 様 に せ ね ば な ら ぬ o 哲 學 者 も 科 學 者 も 皆 菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た る 菩 提 心 義   一 三 九

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菩 提 心 論 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た ろ 菩 提 心 義   一 四 〇 其 專 門 の 道 に 忠 實 で な け れ ば な ら ぬ 。 情 的 方 面 の 活 動 も 今 同 様 で あ つ て 微 妙 な 繊 細 な 情 の 機 微 を 掴 み と れ を 味 ひ 李 凡 人 の 味 ふ 事 の 出 來 の 主 と ろ を 持 ち 出 し て 人 生 を 幸 幅 に せ ね ば な ら ぬ 。 た い そ れ の み に 偏 し て と れ 等 を 統 一 す る 事 を 怠 り 本 來 の 人 間 の 暖 昧 こ い ふ と ご を 忘 れ 所 謂 專 門 家 こ し て の 不 具 的 人 格 許 り で は 不 健 全 な 社 會 で あ つ て 、 と れ 等 を 綜 今 し 機 に 應 じ 時 に 適 す る 方 便 圓 滑 自 在 な 圓 熟 者 と な ら ね ば 嘘 で あ る 。 故 に 菩 提 心 論 で は 巻 首 の 大 阿 闍 梨 云 の 大 阿 闍 梨 、 そ れ は 不 空 三 藏 と い ふ 事 に 大 體 決 定 し て ゐ た が 、 そ の 様 な 人 格 者 、 大 疏 で あ る な ら ば あ の 經 疏 の 編 纂 者 或 は 講 讃 者 の 如 き 大 阿 闍 梨 こ な る 事 が 吾 々 の 理 想 で な け れ ば な ら ぬ 。 決 し て 近 代 文 明 を 排 斥 し た り 不 平 を 言 つ た り し な い で そ れ 等 を 更 に く 進 め る ご 同 時 に と れ を 腹 の 底 に 藏 め て 暖 い 土 地 を 踏 む 自 然 人 と し て の 潤 ひ の あ る 阿 闍 梨 こ な ら ね ば な ら め 。 特 に 智 的 に 菩 提 心 を 解 釋 す る 時 は 組 織 の 完 成 も い ふ 事 で あ る ご 思 ふ 。 故 に 小 乗 槽 大 乗 實 大 乗 等 皆 一 々 に 一 の 菩 提 で あ つ た わ け で あ る が 、 眞 言 行 者 の 菩 提 心 は 夫 等 を 悉 く 統 一 し て 更 に 自 家 の 特 長 を も 安 成 し た ご と ろ が 眞 言 行 者 の 菩 提 心 で あ る 。 か く 見 て 自 分 が 今 粗 略 で あ り 狭 少 で は あ る が 纒 め る 事 を 終 つ た ご と ろ に 一 の 法 界 が 展 開 し た わ け で 、 一 の 小 さ き 悟 り で あ る 筈 で あ る 。 完 成 の 上 か ら 見 れ ば そ の 組 織 内 の 事 象 は 皆 必 然 的 な 羅 列 で あ つ て チ ヤ ン と 系 統 が あ り 決 し て 偶 然 的 な 無 方 針 な 道 行 き は な い 。 即 ち 法 則 も し て 組 織 内 の も の を 支 配 す る 主 こ ろ の 或 力 と と し て 認 め ら れ る の で あ つ て ー

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の 權 威 で あ る 。 高 組 大 師 は 入 唐 し て 受 け 玉 ふ た 附 部 の 教 系 、 そ れ に 御 幼 少 の 頃 か ら 深 く 修 め ら れ た 儒 教 道 教 佛 教 等 を も す べ て 綜 合 し 組 織 し て 十 住 心 論 の 組 織 を 完 成 し 玉 ふ た の で こ れ 菩 提 即 ち 覚 り で あ つ た の で あ る 。 一 々 の 住 心 皆 夫 れ 自 身 主 し て は 猫 立 し た も の で あ つ た が 其 等 が 統 一 せ ら れ る 事 に よ つ て 更 に 全 體 こ し て 眞 言 宗 の 菩 提 心 と し て の 新 し い 意 味 が 生 れ る の で 吾 宗 が 横 統 一 切 佛 教 こ い ひ 萬 機 普 盆 の 教 こ い ふ は か ゝ る 大 組 織 の 完 成 の 上 か ら 云 ひ 得 る の で 一 切 の 世 界 を 眞 言 の 教 相 の 色 に 包 む ご い ふ 大 智 の 眼 の 開 け た 事 を 意 味 す る 。 す べ て を 綜 合 し て 如 何 な る 安 心 を 決 定 し 處 世 の 羅 針 盤 主 す る か ご い ふ に 、 今 綜 合 す る と と ろ に 依 つ て 自 己 の 身 を 置 く 眞 言 宗 の 依 つ て 來 る こ こ ろ を 明 に し 、 そ の 組 師 の 御 精 神 の 存 す る も と ろ を 伺 ふ た わ け で あ る 。 故 に と の 教 相 を 通 じ 、 眞 言 宗 を 理 解 し 、 自 己 を 理 解 し て カ の 注 ぐ べ き と こ ろ を 知 っ た わ け で あ る 。 更 に 單 に 眞 言 宗 の 一 員 こ し て の 自 己 の み な ら す 八 類 の 一 員 と し て の 自 己 を 自 覚 し 、 人 類 愛 の 爲 め に 自 他 同 利 盆 の 爲 め に 赤 誠 を 捧 げ 作 る と こ ろ な く 手 主 な り 足 こ な り 協 同 一 致 以 て 小 さ く し て は 眞 言 宗 、 大 に し て は 國 家 乃 至 人 類 の 爲 め に 努 力 を し 苦 辛 を も 厭 は す 法 城 護 持 の 為 め に 粉 骨 砕 身 身 命 を も 捧 ぐ べ き で あ る も い ふ 信 念 を 得 て と ゝ に 力 を 注 ぐ 事 が 出 來 る ご 思 ふ 。 凡 そ 吾 々 人 類 が 人 類 こ し て の 特 別 の 文 明 を 持 ち 道 徳 を 持 ち 宗 教 を 持 つ の は た や 輩 に 物 質 生 活 の み な ら す 精 神 生 活 を し て ゐ る ご と ろ に 基 い す る の で あ る 。 餓 ゆ れ ば 自 然 の 果 物 を 食 ひ 渇 す れ ば 自 然 の 水 を 飲 み 方 を 定 め 菩 提 心 験 及 び 大 日 經 住 心 品 疏 に 説 か れ た る 菩 提 心 義   一 四 一

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