平成28年11月18日
大里生涯学習センター
あすねっと にて
平成28年11月18日、熊谷市自治会連合会講演会を開催しました。今回 の研修は東京都立川市大山自治会相談役佐藤良子氏をお招きし、「命を守る自治 会活動―会長として15年間で取組んできたこと―」をテーマに、御講演をいた だきました。
講演内容
はじめに
みなさんこんにちは、大山自治会相談役の佐藤と申します。
立川市自治会連合会の砂川支部長も務めています。本日は大
勢の方にお越しいただきありがとうございます。皆様の自治
会の活動に少しでもお役に立てば幸いです。女性の出席者も
いらっしゃるので、私にとっては心強いです。女性の方にプ
レゼントも持参してきています。
最近の受けた相談から思うこと
最近、高齢の女性から離婚したいという相談を受けました。夫から毎日嫌が
らせを受けているそうです。お前は俺の年金で食事ができているのだぞという
言葉を浴びせられているそうです。そこで、ご主人と面会しましたが、話し合
いにならずに出ていけと言われてしまいました。すると、この女性はすぐに離
婚届に印を押しました。女性をあなどってはいけません。女性は褒められれば
喜んで仕事をします。男性の方は女性を褒めましょう。女性に対する心遣いは
重要だということを最近考えています。
別の相談も受けました。ある男性がカラオケを通して女性と出会い、結婚し
たいという相談を受けました。この男性は妻と死別し17年が経ち、相手の女
性も夫と死別して8年が経っています。入籍して二人で暮らしていきたいので、
保証人をお願いされました。男性と女性それぞれの子どもは結婚に反対してい
ますが、二人は「これからは自分のために人生を送りたい」という考えをお持
ちです。最終的に、二人はささやかな結婚式を挙げ、私は保証人になりました。
昨今は、今までに受けたこともない相談を受けるようになりました。
女性を自治会役員に
「自治会は活動が大変で役員の成り手もいない」という質問をどこに行って
もよく受けます。この質問を受けたら、私は「役員に女性を一人入れてくださ
い。」と答えています。女性が一人加わると、組織の雰囲気が変わります。心
配り、気遣い、目配りできるのが女性の力です。数年前に熊本で講演をした時
にも同じ話をしましたが、実際に役員に女性を加えた自治会からお手紙をもら
ったことがあります。その手紙には、今までは女性はお茶汲みくらいしか仕事
が無かったのに、女性を加えると雰囲気が変わり、女性が生き生きと活動でき
熊谷市も女性の役員が少ないようですね。大山自治会は会長1名、副会長5
名、会計2名、加入世帯数1,600世帯ですが、今年から役員8名中4名が女性
になり、良い雰囲気で活動できています。自治組織は、男性・女性・高齢者な
ど様々な人々で構成されています。みんなで支え合って活動していくことを考
えると、活動には女性の目線も必要です。参考にしてみてはいかがでしょうか。
自治会活動に関わったきっかけ
大山自治会は、54年目を迎えました。昭和38年の設立当時は、940世帯で
した。設立から36年間、男性が自治会活動の主体でした。当時は、女性は世
帯主でないと役員になれないという規約がありました。どんなに素晴らしい女
性がいても活動することはできませんでした。その結果、毎年の総会も男性だ
けの出席となり、長年の活動の中で、当たり前のことが当たり前でなくなって
きたのだと思います。
ある時、私の夫が会計監査の役にあたりました。夫の仕事の都合で、私が代
わりに会計監査をすることになりました。領収書や帳簿を確認したところ、領
収書が偽造されていたり、帳簿が破られたりしていました。会長を追及したと
ころ、事情をよく把握しておらず、会長の仕事は副会長に任せきりでした。会
計担当者も、会計事務を副会長に任せていたそうです。このようなごまかしの
会計は当然認めることはできず、私は一週間の猶予を与え、会計上の誤りを全
て是正するように話しました。しかし、お金は戻らず、総会を延期せざるを得
ませんでした。最終的には、役員は責任をとって総辞職し、総会は一か月遅れ
で開催しました。
この間、私は住民に事情を説明しました。そして、このようなことになった
のは、役員任せにした住民にも責任があると考え、今後はもっと自治会に関心
を持ってほしいと呼びかけました。そして、私は平成8年に区長に立候補し、
自治会活動を本格的に始めることになりました。(大山自治会では、1号棟1
区、2号棟2区というように棟ごとに区長がいる。)
自治会組織の改革
区長に就任した私は、まずは自治会組織そのものをよくすることを考えまし
た。各区長は自治会の選考委員を務めます。選考委員会では、規約の改正、規
約委員会の設置、選考委員会そのものの改正等を話合いました。その中で、最
も大きく変わったのは、住民投票の仕組みを導入したことです。今までは、会
長が役員を決めていましたが、これからは住民投票で役員を決めようという取
組みです。その結果、20代~70代まで全ての世代がバランスよく役職に就き
ました。これは、同じ世代の人が同じ世代の候補者に投票する傾向があるから
住民が望んでいることを調べてみて
さらに、アンケート調査も実施しました。その中に、「自治会はあった方が
いいか?ない方がいいか?』という設問を設けました。すると、65%は自治会
があった方がいいという回答でした。理由は、仲間ができたから、ここで生涯
過ごすから、周りの人も親切で他の場所には行きたくないというものです。し
かし、自治会がない方がいいという回答もありました。その理由は、高齢や病
気などで役員をやりたくない、人との関わりが嫌いというものです。このよう
な回答が寄せられたことから、班ごと、区ごとの相談会を開催しました。住民
が望んでいることを調査し、解決すべきことが見えてきました。
その一つに、お葬式がありました。高齢者から、お葬式は高額で負担になる、
何とか安くできないかという相談がありました。実際に自治会員の中に、葬儀
をするのに借金をしなければならない人もいて、自治会で葬儀費用を貸したこ
ともありました。同じようなことが続いたため、自治会で葬儀をすることを考
えつきました。市で葬儀をするとおよそ150,000円ですが、自治会で葬儀をや
ると32,000円程度で済みます。自治会内には葬儀のお手伝いをする葬儀ボラ
ンティアもいます。安くて近くでお見送りができるのが自治会葬です。平成11
年から自治会葬を始めました。
役員をやりたくない人たちについても考えました。役員をやれない人を飛ば
したら、その人たちが一人ぼっちになってします。意見を良く聞くと、高齢者
や障害者の方は誰かがサポートしてくれればできるという答えが返ってきま
した。そこで、その人たちを支える準備をしました。役員1人につき2人のサ
ポーターを付けることにしました。車イスの方にも2人、高齢者の方にも2人、
サポーターをつけました。その結果、役員をやらなくなる人はいなくなりまし
た。この体制では、3人が仲間になります。役員もひとつのコミュニティなの
です。仲間作りをして孤立させない状況をつくることが重要です。
役員の負担軽減と自治会事務所
自治会長の携帯は常に電源を入れ、24時間の対応を
しています。役員の仕事も多岐に渡ります。会長や役
員の負担を軽減するため、大山自治会では、正規職員
(事務職員)1人と予備職員2人を雇っています。職
員には、市の規定に沿って給料を支給し、ボーナスも出ます。自治会内に事務
所があり、週4日勤務しています。自治会内の回覧文書の作成や市からの配布
物の配布などの仕事は事務職員の仕事です。議事録の作成や高齢者の方のお宅
の蛍光灯の交換受付までやっています。お金がかかることなので、全国どこで
もできるわけではなく、実現するには総会も必要だと思いますが、大山自治会
自治会運営の基盤=「市・能・工・商」
(1)市…住民主体の自治会
自治会に必要なことは、住民が主人公のまちをつくることです。住民が不満
をためない、課題をスピーディーに解決することです。行政がいないときに、
自治会でどういう対応ができるかが自治会への信頼につながります。
(2)能…能力、技術者の人材バンク
自立する自治組織を意識して、行政に頼らず自分達でできることは自分達で
やっています。自治会には様々な経験や技術を持った人がいます。能力のある
人の人材バンクを作っています。
(3)工…工夫、アイデアで企画運営
自治会運営には工夫が必要です。大山自治会では、孤独死ゼロの取組みも行
っています。今年、残念ながら引越ししてすぐの方が孤独死してしまい、もう
一度気を引き締めて取り組んでいるところですが、それまでは13年間孤独死
ゼロの状態でした。
孤独死を防ぐには、24時間以内に見つけないといけません。そこで、最初に
住民に両隣の見守りを義務付けました。玄関ポストに新聞がたまっているなど
何か異変があったら連絡するシステムです。しかし、それだけでは不十分で、
年間4,5人が孤独死していました。次に考えたのは、電気・ガス・水道メータ
ーの検針の会社との見守り協力です。さらに、新聞配達業者とも同じ協力体制
を築き、12時間ごとの見守りが実現しました。協力体制の構築に5年かかり、
孤独死ゼロを実現できたのが平成16年でした。
孤独死ゼロが8年続いた時に、市全体で取組めるように大山自治会の取組み
を紹介しました。最初は市の反応は良くなかったのですが、市内の孤独死が無
くならないこともあり、平成25年より市全体で取組んでいます。
(4)商…コミュニティビジネスで有効活用
自治会の収入といえば会費ですが、それ以外に収入を得ることも重要です。
大山自治会では、駐車場(730台分)の管理を請け負っています。具体的には、
高齢者の事業団をつくり、駐車場清掃を月2回行っています。時給1000円で、
月4時間働いてもらいますが、働くことが生きがいにもなっていると思います。
さらに、周辺の公園の清掃も請け負っています。今まではシルバー人材センタ
ーが清掃していましたが、地元の自治会が公園清掃することで、地域の見守り
活動にもつながります。これで、年間50万円の収入が得られます。
これからは大山自治会以外にも活動範囲を広げ、人数も拡大していきます。
高齢者が仕事をする場所があり、地域の交流が広がっていくことが、これから
の時代に必要なことではないでしょうか。実際の例として、高齢者が作った手
作りのペンケース販売をご紹介します。とても良くできていて、多くの注文が
ますが、作ったものを販売することは高齢者のやりがいにつながります。売上
はすべて製作したサークルに入るので、サークルはどんどん自立します。活動
が活発化し、高齢者のコミュニティの場にもなります。私は、サークル立上げ
のお手伝いをしてきました。会則の作り方、会計処理のやり方を指導し、10
年で180のサークルを作りました。自分のサークルを大事にするため、会費を
取るよう指導しています。さらに、サークル同士の横のつながりをつくるため、
180のサークルを集めて、9月に2日間で文化祭を開催しています。つながり
をつくることで、災害に強いまちも作ることができるのです。
防災訓練
防災訓練の一環として、ウォークラリー大会を開催しました。まちを知るこ
とが目的で、同時に避難所運営の訓練も実施しました。ウォークラリーの参加
には、「家族で参加してください」「仲間と参加してください」という条件をつ
けました。仲間ができて、連絡体制がとれるような狙いがあります。
ウォークラリーでは、避難所がゴールで、チェックポイントではクイズを出
しています。(クイズの例:エレベーターに乗車中に地震が発生したら、エレベ
ーターのボタンはどれを押せばよいか。⇒答え:全部のボタンを押す。)
今ある事業をそのまま続けることも重要ですが、何かひとつ新しいアイデア
を加えると、すごく良くなります。住民が関心を持つきっかけにもなります。
広報紙の発行
広報紙を毎月発行し、全世帯に配布しています。広報紙には、出生や訃報、
防犯情報、認知症の徘徊の予防などを掲載しています。イベント情報や生活マ
ナーも記事になります。日々の自治会活動で様々な問題が発生しますが、それ
らは広報の材料にもなるのです。
これまで苦労したことも
全てのことが一気にうまくいったわけではありません。一つひとつの活動の
積み重ねの結果なのです。会長に就任したことで、嫌がらせを受けたこともあ
りました。ポストにヘビや毛虫を入れられたことや自転車を何回もパンクさせ
られたこともありました。何回も修理してもしょうがないので、新しい自転車
を買いましたが、3日後に壊されてしまいました。玄関のドアの鍵穴に接着剤を 入れられることもありました。会長に不満を持っている人が主導して、自治会
を 2 つに分割しようとする動きもありました。その時は、住民投票の結果、自 治会は分割しませんでしたが、その後もポストに嫌がらせの手紙を入れられた
り、自治会内の連絡用ポストを壊されたりもしました。
は違法駐車の取締ができないので、自治会で違法駐車撲滅運動をしました。最
初に取締パトロールのボランティアを募ったところ、15 名が集まりました。毎 晩パトロールして、路上駐車禁止のチラシを車のフロントに挟みました。しか
し、うまくいかずに、チラシをフロントガラスに貼りました。それでもうまく
いかず、ガムテープで貼りつけて違法駐車を減らすことができました。中には、
抵抗していた人もいましたが、最後は違法駐車しなくなり、その後は自治会に
協力的な姿勢を見せて、区長に立候補するようにまでになりました。人間を排
除するのは簡単です。根気強く向き合うことが重要だと感じました。
人と人とをつなぐ意識を
住民の安心と安全を守るため、違法駐車の撲滅に加えて、交通安全運動、地
域内の危険箇所のチェックを実施しました。防災組織を組織拡大し、多くの方
が防災リーダーになりました。昨日も防災リーダーを集めて講習会を実施した
ところです。自宅にいるとき、仕事場にいるとき、車を運転中の時にとるべき
行動を学びました。さらに、バス会社とも協力関係にあり、バスを自治会に呼
んで、バスの乗り方教室を実施したこともあります。そのような教室を開くと、
バス会社がおみやげを用意してくれるのです。
このような全ての取組で私が意識しているのは、「人をつなげる」ということ
です。自治会にたくさんの部門を作り、人と人とがつながり、ひとつのまちを
形成する。そうすると、仲が良い地域が実現できます。
住んで良かった地域づくりのテーマとして次の3つを掲げています。
①行きたい学校がある
まずは、学校との連携が重要です。大
山自治会では、学校を支援する組織を作
りました。
②帰りたい家がある
家族で何でも話合えるような家庭を作
ってほしいとお願いしています。関連し
て、何かの事情で子どもの面倒が見られ
ないときのためのホームステイや一緒に
留守番する制度も作りました。病院の付
添や買い物・ゴミ捨てのお手伝いをする
こともあります。
③住み続けたい地域がある
地道に自治会活動を継続することで、住民が住んで良かったと思うように
自治会活動に力を注げるきっかけとなった過去の出来事
私は東北生まれですが、東京で自治会長をやるとは夢にも思いませんでした。
自治会活動に力を入れる理由はひとつです。上京してきた頃、子育てはとても
大変でしたが、近所のおじちゃんおばちゃんにとても助けられました。子ども
をよく預かってくれました。私が風邪をひいて寝込んでいると、ご飯を持って
きてくれたこともありました。人の温かさを感じたのです。
今は隣に誰が住んでいるかも分からない時代です。昔のような人と人が助け
合う温かい地域に戻したいのです。地域への恩返しの思いもありますし、これ
からもずっとここで暮らしていきたいと思います。おかげさまで、今は自治会
活動を楽しくやることができています。やはり活動に取組む時は、楽しく取組
むべきです。楽しく取組めば、自然と人も集まってくると思います。
高齢化が進行し、大山自治会の高齢者の割合も30%ほどになりましたが、近 くの大学の学生が自治会活動のお手伝いに来てくれます。これも人と人とのつ
ながりです。「チェーン社会」、「ご縁がある社会」をつくることを意識して活動
しています。
最後に…役員に必要な五気力
最後に、役員のみなさんへのメッセージです。「五気力」をご紹介します。
・元気…何事も元気に取組む
・陽気…明るくあいさつ。名前を覚える。
・根気…すぐにあきらめない。根気強く取組む。
・強気…行政にも強気でぶつかる。
・やる気…全ての行動の源。やる気があれば何でもできる。
自治会活動をリードする立
場の皆様には、ぜひこの「五
気力」を覚えておいてほしい
と思います。役員が「疲れた」
と言うのはNGです。役員の
言葉の一つひとつが次の世代
を育てることにつながります。
私は今、地域のおふくろと
呼ばれることもあります。会
長としての 15 年間は地域の 人に支えられ、会長を勤めることができました。これからの人生は、違う分野
質疑応答
・大山自治会は会費が月400 円とのことですが、それ以外に防災費など会費 を集めていますか?
⇒防災については市からの補助があります。月の会費400 円のほかには、団 地の管理費を1500円、区費を100円集めています。
・広報紙の作成は素晴らしいです。
活 動 を 知 ら し め る こ と は 重 要 だ
と思うが、発行はどのくらいのペ
ースで行っていますか?
⇒月1回発行しています。さらに、
イ ベ ン ト の 前 に は 特 別 号 を 発 行
しています。作成は事務職員が行
っています。
・役員に手当はどのくらい支払っていますか?
⇒手当は非常に少ないと思います。年間で会長3万円、副会長1万円、区長
5000 円、専門部長は 5000 円です。値上げ前は会長が 1 万円でした。総会
で、もっと役員手当を増やしてはという意見も出されましたが、私自身はお
金ではなく皆さんの自 治会に関心を持ってい るという気持ちがほし いと答
えました。
・生活保護者も自治会費を支払っ
ていますか?
⇒ 生 活 保 護 者 か ら 自 治 会 費 を 免 除
し て ほ し い と い う 意 見 も あ り ま
したが、生活保護費には自治会費
も 含 ま れ て い る と い う 考 え 方 で 、