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肝移植後門脈血流動態評価に関する研究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 唐    少 珊

     学 位 論 文 題 名 超音波ドプラ法を用いた

肝移植後門脈血流動態評価に関する研究

(Portal Venous Hemodynamics after Living‑Related Liver    Transplantation with Pulsed Doppler Ultrasound)

学位論文内容の要旨

「 目的 」肝 移植 術後 グラ フト の血 管合 併症 は移植不成功の最も主要な原因のーつである 。超音波 ド プラ 法は 肝移 植後 グラ フト 脈管 の評 価に おける最も非侵襲的で,有用な検査手段であ る。本研 究 では ,生 体肝 移植 後グ ラフ ト門 脈波 形を 定性 的 に分 析し ,波 形と 合併 症の 関係 を解 析し た。

「 対 象 と 方 法 」1997年9月 か ら2000年6月 ま で に 北 海 道 大 学 病 院 で 行 わ れ たLRLT (Living−related liver transplantation) 33例 を 対 象 と した 。そ のう ち,5例はauxiliary partial orthotopic liver transplantation (APOLT:レシピェントの肝臓の一部分カ濺される)術 式が 行わ れた 。女 性23例. 男性10例 。年 齢 は8ケ月 から57歳 (平 均34.8歳)であった。また,正 常volunteers14名 を対 照群 とし た。 超音 波 ドプ ラ法 にて グラ フト 内の 門脈の血流を術 後2週間違 目測 定し ,そ れ以 後は 患者 の状 態に 応じ て 不定期で検査し た。超音波検査は全例が仰臥位,平静 呼吸下,絶食の状態で行った。

  門 脈の 波形 は: (1) 定常 流(2) 拍動 流 (3)乱 流の 三っ に分 類し た 。また,患者の体型,特 にる いそ うに よる 影響 を削 除す るた めにbody mass index(BMI二ニweight/height2)を体型の指 標として用いた。

  患者群の門脈波形とグラフト体積(the graft volume)/標準肝臓体積(liver standard volume) の比 率(GV/SV ratio),BMIに 関し て患 者 群と 正常 対照 群と の比 較に はStudent st―testを用 いた。

「結果」正常対照群の門 脈波形は全例で定常流だった。

肝移植後ニ週間内の患者 群の門脈波形は,定常流波形19例(57.6%),拍動流波形10例(30.3%),

乱 流波 形4例(12.1%) であ った 。拍 動流 波形 群10例 のう ち4例は 臨床 上血管合併症が疑われた た め , 移 植 後 二 週 間 内 に 肝 動 脈 造影 或い は肝 動脈 造 影CTが施 行さ れた 。そ のう ち3例 に動 脈―

門 脈(A―P)シ ャン ト,1例に 高度 肝静 脈狭 窄が認められた。以上の4症例は治療を受けた後,門 脈 波形 は全 例が 定常 流に なっ た。 他の 拍動 流群 の6例 は肝 機能 障害 の所 見を認めなかったため血 管 造 影を 施行 しな かっ た が, 治療 なし に定 常流 に戻 った 。4例 の乱 流群 のう ち3例 は経 過観 察中 に 門 脈 の 瘤 状 拡 張 が 見 ら れ た 。GV/SV比 率 で は 拍 動 流 群 は38.85+9.2T,<, 定 常 流 群 は

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58. 65+20. 34%, 乱 流 群 は45.13+22.60%で あった 。拍動流 群のGV/SVは定常 流群に 比ベ,有 意に 小さか ったが(p<0.01), 拍動流 群と乱流 群,ま たは定常 流群と乱 流群に は明らかな有意差は認め なかった。

  BMIは拍動流群は21. 73+2. 40,正常対照群は19. 39+3. 00で有意差は認めなかった(p二ニ0.053)。

「 考察 」様々な 肝疾患 において ,門脈 血流方向 や波形 に変化が 見られる 。著明 な門脈拍 動流は う つ 血性 心不全や 三尖弁 機能不全 で右心 圧が上昇 を示し ている場 合に見ら れる。 正常人に おいて も 特に痩 せてい る人に門 脈の拍動 流がみ られるこ とがあ り,それ はbody mass indexと逆の相関を示 す。

  自 験 例 の三 分 の ーに 門 脈 拍動 流 が見られ ,またそ のうち3例にA―Pシャ ントが認 められ た。従 っ て,A‑Pシ ャ ン トは 門 脈 拍動 流 の原因 のーっと 推察さ れ,拍動 流はA―Pシヤント の血流 を反映 し て い る と 考 え ら れ る 。 文 献 に よ る と ,A一Pシ ヤ ン ト に は ニ つ の 経 路 が あ る 。 一 っ は transsinusoidal routeで,肝 硬変やBudd−Chiari syndromeの症例に 見られ ,門脈血 流は遠肝 性 で ある 。もうー っはtransvasal routeで悪性肝 腫瘍, ショック 等の状 態で見ら れ,求 肝性血流 で あ ると さ れ てい る 。 自験 例 のA一Pシ ャ ント はtransvasal routeである ため拍動 流が求 肝性であ っ たと 推測され る。肝 移植を成 功させ るため、 適当な グラフト サイズの 選択は 重要な条 件のー つ で ある 。GV/SV ratioが46%よ り 大 きい 場 合 肝移 植 手 術は 安 全だと 報告され ている。 自験例 中,

拍動流群のGV/SV ratioは38. 85+9. 2T,<と定常流群より有意に小さく(p〈.01)。拍動流群中30%

(3/10)の 症例に はf&f査てA―Pシヤン トが証 明された。従って,グラフト体積の過小がA−Pシヤ ン ト発 生の原因 のーっ と考えら れる。 過小グラ フトは 門脈血流 の増加が 必要で ,本来機 能して い ないA−Pシャントを開通させているのかもしれない。

  門 脈拍 動流の もうーつ の原因は 肝静脈 狭窄と考 えられ る。肝静 脈の閉 塞により ,動脈の 流出路 が閉塞し,類洞を経由して門脈に流入すると考えられる。

  拍 動 流 が自 然 経 過で 定 状 流に 変 わ る 例が あ る 。拍 動 流 群のう ち4例 は治療 を受けた が,他 の6 例 は治 療なしに 門脈の 波形が定 常流に 変わった 。動静 脈瘻は自 然に消失 するこ とが少な く,ま た 大 きなA−Pシヤ ントは門 脈圧亢進 症にな るが,小 さなAーPシャント の場合 は二週か ら数年 間に自 然 修復 が で きる と い う報 告 が ある 。自験 例中自然 に拍動 流から定 常流に なった6症例は 小さな シ ヤント があっ て,肝細 胞の再生 によル シヤント が自然に修復されたと考える。これらの結果から,

超 音波 ドプラ法 で門脈 拍動流を 検出し ,肝機能 の低下 をみる場 合は,血 管造影 を施行す るべき で あ る。 一方,拍 動流が 見られて も肝機 能低下が ない場 合は,拍 動流は特 別な治 療なしに 自然に 消 失 する 可 能 性が 高 い ので , 超 音波 ド プ ラ 法で 一 週 間程 度 経過 観察する ことが 適当だと 考える 。   自 験 例 中4例 に 門脈 内 の 乱流 を 検出し た。門脈 の乱流 は肝内門 脈一一 静脈シャ ントまた は部分 的 門脈 血栓の症 例にみ られると いう報 告がある が,自 験例には これらは 存在し なかった 。乱流 群 4例中3例 に経過 観察中に 門脈の瘤 状拡張 を認め, 他の波 形の群に は認め なかった ことより ,門脈 内の乱流は門脈の瘤状拡張の原因と考えられた。

「結諭」 肝移植 後早期に 超音波ド プラ法 で,門脈 に拍動 流が見ら れる場 合がある 。特に小さなグ ラフトに 見られ る。門脈 拍動流は 血管の 合併症に 起因し 治療を要 する場 合がある が、多くは治療 せずに自 然に消 失する。

(3)

学位論文審査の要旨

     学 位 論 文 題 名 超音波ドプラ法を用いた

肝移植後門脈血流動態評価に関する研究

(Portal Venous Hemodynamics after Living‑Related Liver    Transplantation with Pulsed Doppler Ultrasound)

   本研究の目的は、生体肝移植後グラフト門脈波形を定性的に調ベ、波形と合併症の関係を 分析する事である。

北 海道 大学 病院 で行 われ た生 体部 分肝 移植 33 例 を対 象とし た。 正常 volunteer14 名を対 照 群と した 。超音波ドプラ法にてグラフト内の門脈の血流を術後2 週間連目測定し、それ以 後 は患 者の状態に応じて不定期で検査した。門脈の波形は:(1 )定常流(2 )拍動流(3 ) 乱流の三っに分類した。また、患者の体型、特にるいそうによる影響を除外するためにbody masslndex (BMI 二ニ weight/height2 ) を体型の指標として用いた。患者群の門脈波形とグ

ラフ ト体 積(the graft volume) /標準肝臓体積(liver standard volume) の比率(GV /sv ratio ),BMI に関して患者群と正常対照群との比較を行った、統計学的検定にはStudent s t ―test を用いた。

正常対照群の門脈波形は全例で定常流だった。肝移植後二週間内の患者群の門脈波形は、

定常 流、 拍動 流、 乱流の 三つ の波 形が 見ら れた 。拍 動流 波形群10 例のうち3 例に動脈イヨ

和 正

(4)

脈 (A−P)シ ャント、1例に高度肝静脈狭窄が認められた。以上の4症例は治療を受けた後、

門脈 波形は全例 が定常流 になった 。他の拍 動流群の6例は肝機能障害の所見を認めなかった た め血管造影 を施行し なかった が、治療 なしに定 常流に戻 った。4例の 乱流群のうち3例は 経過 観察中に 門脈の瘤状 拡張が見 られた。GV/SV比率では 、拍動流 群のGV/SVは定常流群に 比ベ、有意に小さかったが(p<0. 01)。拍動流群と乱流群、または定常流群と乱流群には明ら かな有意 差は認め なかった。BMIは正常対 照群、定 常流群、拍動流群、乱流群はいずれも有 意差は認 めなかっ た。

これ らの結果か ら、門脈 の拍動流 は小さな グラフト に見られ る傾向があった。門脈の拍 動流は 血管の合 併症に起因し治療を要する場合があるが、拍動流が見られても肝機能低下が ない 場合には治療せず自然に消失する。また、門脈内の乱流が見られる症例には術後一年内 に門脈の瘤状拡張が見られる可能性が高い。

口 頭発表に 際し、浅香 教授より 他肝疾患のA−P shuntにおける拍動流の有無、乱流の原 因につい て,藤堂教授より門脈血流変化と動脈波形の関係について、宮坂教授より解剖学的 にA―P shuntの存在部位と血管造影や治療の選択の時期について質問がなされた。申請者は

自身の臨床データや発表された研究結果などを弓|用し、概ね妥当な回答を行った。

これまで 、生体部分肝移植後連続して経時的に門脈血流動態を測定し、三つの門脈波形発 現の機 序、臨床 合併症との関係について検討を加えた研究は少ない。これらの研究結果は移 植術後経 過観察に有用な情報を提供すると考えられる。

審査員 一同は、 これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども併 せ 申請者が 博士(医 学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判断した。

参照

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