博 士 ( 歯 学 ) 小 城 賢 一
学 位 論 文 題 名
修復材料と象牙質接着界面の長期耐久性評価 学位論文内容の要旨
【 背 景 と 目 的 】
近 年 の 高 分 子 歯 科 材 料 の 発 展 に 伴 い 、 コ ン ポ ジ ッ ト レ ジ ン は 審 美 性・ 接 着 性 に 優 れ てお ル ス タ ン ダ ― ド な 修 復 材 料 と な っ て き て い る 。 こ れ ら 材 料 に よ る 初 期 の 予 後 成 績 は 良好 で あ る と 考 え られ て い る ― 方 、 長 期 的 な レ ジ ン 系 修 復 材 料 と 象 牙 質 の 接 着 耐 久 性 に 関 し て は 不 明 な 点 が 多 い 。
ま た 、 本 邦 の 人 口 動 態 が 超 高 齢 化 社 会 へ 急 速 に シ フ トし て き て い る こ と、8020運動 等 の 予 防 歯 科 医 学活 動 の 推 進 に よ り 多 数 の 残 存 歯 を も っ た 高 齢 者 が 増 加 し てい る こ と な ど を 鑑み る と 、 臨 床 現 場に お い て 予 防 的 材 料 で あ る 従 来 型GICの 使 用 頻 度 は 今 後 さ ら に 増 加 す る と 考 え ら れ る 。
in vitroに お け る 修復 材 料 の 長 期 耐 久性 に 関 す る 報 告 は 数多 く あ る が 、in vivoに お け る報 告 は 少 ない 。さ ら に 近 年 、 ポ ン デ ィ ン グ レ ジ ン のR&Dに 伴 い 、 接 着 工 程 を 簡 略 化 し た シ ン グ ル ス テ ッ プ ポ ンデ ィ ン グ シ ス テ ム が 数 多 く 登 場 し て き て い る 。 こ の シ ス テ ム の 特 徴 は 、 操作 の 簡 便 性 で あ り今 後 広 く 普 及 す ると 考 え ら れ る が 、 こ の シ ス テ ム に お け る 象 牙 貿 ー レ ジ ン 接 着 界 面 の 詳 細 な 構 造 は 不 明 な 点 が 多 い 。 以 上 を 鑑 み て 、
@ 炭 酸 ガ ス レ ー ザ ー に よ る 被 着 象 牙 質 面 改 質
in vivoに お け る レ ジ ン 系 材 料 及 び 従 来 型 GICの 長 期 耐 久 性
◎ ワ ン ス テ ッ プ シ ス テ ム の 歯 質 接 着 構 造
に 対 す る 評 価 を 行 い 、修 復 治 療 の 予 後 向上 に 関 す る 考 察 を行 う こ と を 目 的 と した 。
【 実験 方 法 】
ぐD: レ ー ザ 一 処 理 象 牙 質 ・ レ ジ ン 接 着 界 面 のSEM観 察 と 弓I張 試 験 に よ る 評 価 を 行 っ た 。 Koshiro K.i InoueS. ,NiimiK. ,Koasek,Sano H.: Bond strength and SEM obseNation of C02 laser irradiated dentin bonded withSimpli罰ed・stepadheSiVeS.OperDent30(2) ;170・179,2005.
@ : サ ル の 口 腔 内 環 境 を 使 用 し 、 修 復 材 料 ‐ 象 牙 質 接 着 面 の 長 期 耐 久 性 を 、SEM・ TEM観 察 及び 引 張 試 験 に よる評 価を 行った 。
KoshiroK−,InoueS,SanoH,De MunckJ,Van MeerbeekB.
In vivo degradation of resin‑dentin bonds produced bya self‑etch and an etch‑and‑rinse adhesive.EurJ Oral Sci.;113(4):341‑8. 2005 Aug
Koshiro K, Inoue S, Tanaka T, Koase K, Fujita M, Hashimoto M, Sano H.
In vivo degradation of resin‑dentin bonds produced by a self‑etch vs. a total‑etch adhesive system.Eur J Oral Sci.;112(4):368‑75. 2004 Aug
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◎:象牙質一 ワンステップシス テム接着界面のTEM観察を行 った。
Koshiro K.Sidhu SK,InoueS,lkedaT;SanoH.
New concept of resin‑dentin interfaCialadheSion:thenanointe旧CtionZOne.JBiomedMaterReSBAppl Biomate『.;77(2):401−8.2006May
【実験結果及 び考察】
ぐDより、炭酸ガスレー ザ―処理象牙質は 、耐酸性は向上す るものの現在市販さ れているボンディングシス テム の 被着面と しては適していな いことがわかった 。これにより修復治 療を前提とした炭 酸ガスレーザー の使用は注意 が必要であると考 えられた。
そこ で@において、in vivoにお けるボンディング レジンの主流である セルフエッチング 及びエッチ&リン ス シ ステ ムの長期耐 久性を検証した。 どちらのシステムを 使用した場合も長 期的に象牙質―レ ジン接着強 さ は 低下 するものの 、接着界面の形態 学的劣化が観察され たのはエッチ&リ ンスシステムのみ であった。
更 に 、従 来型GICを使用した場 合、接着界面に何 らかの改質が起こ っていることを形態 学的に認めた。GIC の長 期耐久性について は、更なる検証を行 っている途中であ る。
ワ ンス テッ プシステムは 、セルフエッチン グシステムである。 すなわち、酸性モ ノマーにより歯質 を脱灰 すると同 時に、脱灰された 歯貿に対しモノマー の浸透が行われる 。◎において接着界面を検証したところ、
界 面形 態は 各 シス テム に 含ま れて いる酸性モノマー の脱灰カに依存し ており、接着界面は3種類に 分類さ れた。す なわち、
1:従来のエッチ& リンスシステムと 同様の接着界面 2:従来のセルフエ ッチングシステム と同様の接着界面
3:従来の接着シス テムでは確認され なかったナノレペ ルの樹脂含浸層の形 成 (NlZ: nano intaraction zoneと命名)であ る。
【 まと め】
以 上の 結果 よ り、
・ レジ ン修 復 の前 処置 と して 炭酸 ガ スレ ーザ ー は用 いる ぺ きで はな い こと
・ 象牙 質― レ ジン 接着 界 面の 長期 耐 久性 につ い ては 、接着界面に 存在するコラ―ゲ ン線維の劣化及びモ ノ マー の 不十 分な 浸 透な どが 影 響を 与え て いる と考 え られ るこ と
・ ワン ステ ッ プシ ステ ム の接 着界 面 性能 や長 期 耐久 性については 未だ不明な点が多 いため、使用に際し て は慎 重 に選 択す る 必要 があ る こと
・GICが 接 着 界 面 に 与 え る 様 々 な 影 響 に つ い て は 今 後 更 な る 検 証 を 進 め る 必 要 が あ る こ と を もっ てま と めと する 。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
修復材料と象牙質接着界面の長期耐久性評価
審査は審査担当者が一同に会して約
2
時間かけて行った.申請者に本論文の概要の説明を求め,同時進 行で口頭試問の形式で提出論文の内容及び関連分野について試問した.申請者は論文の概要を以下のよ うに説明した.【背景と目的】
コンポジットレジンはスタンダードな修復材料となってきている。また、超高齢化社会へのシフトによ り従来型
GIC
の重要性も再認識されている。これらのin vitro報告は多くあるがinvivo報告は少なぃ。また、シングルステップボンディングシステム(以下ワンステップシステム)も登場しているおり、今 後普及すると考えられる。以上を鑑みて、◎炭酸ガスレーザーによる被着象牙質面改質◎in vivoにお け るレ ジ ン 系及 び 従 来型
GIC
の 長 期 耐 久性◎ワ ンステッ プシス テムの歯 質接着 構造に対 する評 価 を行った。【実験 方法】
@ : レ ー ザ ー 処 理 象 牙 質 ‐ レ ジ ン 接 着 界 面 の
SEM
観 察 と 引 張 試 験 に よ る 評 価 を 行 っ た 。◎:サ ルの口 腔内環境 を使用し 、修復材料―象牙質接着面の長期耐久性を、SEM.
TEM
観察及び引張 試験に よる評 価を行っ た。◎:象 牙質一 ワンステ ップシス テム接 着界面の
TEM
観 察を行っ た。【実験結果及び考察】
@より、炭酸ガスレーザー処理象牙質は、耐酸性は向上するものの現在市販されているボンディングシ ステムの被着面としては適していないことがわかった。これにより修復治療を前提とした炭酸ガスレー ザーの使用は注意が必要であると考えられた。そこで◎において、in vivoにおけるボンディングレジン の主 流である セルフ エッチン グ及びエッチ&リンスシステム、従来型GICの長期耐久性を評価したと ころ、レジンシステムにおいてはセルフエッチングシステムが優れていることがわかった。更に、従来 型
GIC
を使用 した場 合、接着 界面に 何らかの 改質が 起こっていることを形態学的に認めた。GIC
の長 期耐久性については、更なる検証を行っている途中である。ワンステップシステムは、セルフエッチン−477一
彦 夫
孝
英 文
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野 理
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佐 亘
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授 授
授
教 教
教
査 査
査
主 副
副
グ システムである。◎において接着界面を検証したところ、界面形態は各システムに含まれている酸性 モ ノマーの脱灰カに依存しており、従来のセルフエッチングシステムでは確認されなかったナノレベル の 樹脂含浸層の形成(NIZ: nano intaraction zoneと命名)を認めた。今回の研究結果より、従来型GIC は 接着界面を改質するという特徴があり長期耐久性の観点 からも非常に興味深い材料であることがわ か った。レジンシステムを使用する場合は、コラーゲン線維を露出させなぃ酸性度がマイルドなセルフ エ ッチングシステムが推奨されるべきであると考える。
各審査委員が行 った主な質問は,以下の通りである.
1
)歯面に対し炭酸ガスレーザー照射を行う メリットとデメリット2
) 象 牙 質 ― レ ジ ン 接 着 界 面 劣 化 の 起 点 は ど こ か 、 そ の フ ァ ク タ ー は な に か3
) 前 述 の 劣 化 を 抑 制 す る た め に は ど の よ う な 材 料 特 性 が 必 要 と 考 え る か4
) ワンステップボンディングシ ステムに関して、前述の解を踏まえどのように評価する か5
)予防医学的、リハビリテーションとして の歯質修復のあり方はどのようをものと考えるかこれらの質問に対して,論文申請者から明快な回答ならびに説明が得られ,さらに今後の研究の発展性 についても明確な方向性を持っていると判定した,
審査委員は全員,本研究が学位論文として十分値し,申請者が博士(歯学)の学位を授与される資格を有 するものと認めた.
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