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学位論文題名耐磨耗性インプラント材料用チタンの表面炭化

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 歯 学 ) 朱    禹 赫

学 位 論 文 題 名 耐磨耗性インプラント材料用チタンの表面炭化

【目的】

学位論文内容の要旨

  歯 学研究領 域におし ゝてイン プラントの分野はこれまで数多くの研究が行われ て い る が、 今後高 齢化社会 を迎える にあたり 、喪失し た歯牙の 機能を回復 する 方 法 と して のイン プラント はさらに 重要にな るであろ う。イン プラントは 様々 な 構 成 要素 によっ て成り立 っている が、イン プラント アバット ヌント部は 口腔 内 露 出 部位 であル プラーク や歯石が 付着しや すく、そ れらの除 去は良好な 予後 を 得 る ため の必要 不可欠な 要件であ る。アバ ットメン ト部の清 掃には表面 荒れ を 避 け るた め、金 属製スケ ーラーは 使用でき ず、耐磨 耗性材料 の使用が望 まし い 。 チ タン はイン プラント 材料とし てほぽ理 想的な性 質を有し もっともよ く使 用 さ れ てい るが、 表面の硬 度が低い 、耐磨耗 性に劣る 欠点があ り、表面粗 さの 悪 化 や 金属 の摩耗 が生じ、 その微細 摩耗粉が 炎症反応 を惹起す る可能性が ある な どとしゝう問題点がある。炭化チタン(TiC)は硬さが極めて高く、材料全体の物 性 や 強 度が 向上す ることが 知られて いるが、 インプラ ントヘの 応用を想定 した 研 究はほと んどなし ゝ。本研 究では、チタン表面を炭化処理し、耐磨耗性インプ ラ ント材料 としての 可能性を 検討した。

  第 一部 で はプ ラ ズ マCVD法 を 用い 、 第二 部と第 三部では 高周波誘 導加熱浸炭 処 理法を用 い、チタ ン表面を 炭化処理し た。

【材料と方法】

  板 状 (10X10X0.5mm)( 神戸 製 鋼 所) のJISI種チ タ ン を耐 水 研磨 紙 で#2000 まで 研磨後、21imから0.05limのダ イヤモン ド研磨液 を用いて研磨した。研磨し た チ タ ン を 蒸 留 水 、 工 夕 ノ ー ル 、 ア セ ト ン で の 順 で 超 音 波 洗 浄 し た 。   第 一 部 : 炭 化 チ タ ン コ ー テ ィ ン グ : 研 磨 し た チ タ ン 板 に 温 度800℃ 、 H2(200sccm,CH4(30sccm),TiCk(15sccm)の混合ガス雰囲気中でプラズマCVD法に よ ル チタ ン の 表面 に 炭化 チ タ ンを コ ーテ ィ ングした (プラズ マ電流100mA、 パ イアス電圧‐400V、デポジション時間2hr)。

  第二 部 と 第三 部 :800℃ 〜1200℃( 第 二部 )と1000℃〜1400℃(第三 部)の べ ン ゼン ガ ス雰 囲気中で高 周波誘導 加熱浸炭 処理法に より洗浄 したチタ ン表面 に炭化層を形成した。

(2)

  X線回折による生成物の同定、SEMとEDSによる試料表面と断面の観察分析、

表面粗さ形状測定機による中心線平均粗さの測定を行った。また、物性評価と して、マイク口ピッカース硬さ試験を行った。さらに耐摩耗性を評価するため に、マルテンス引っかき試験および超音波スケーラーを用いた磨耗試験を行い、

そ の 条 痕 を デ ジ タ ル マ イ コ ロ ス コ ー プ と 表 面 粗 さ 計 で 評 価 し た 。

【結果と考察】

  第一部:炭化処理したチタンの表面からのX線回折からはマトリックスのチ タンに加え、微細結晶のTiCが認められた。表面粗さの測定ではコーティング 前の0.05ymに対し、コーティング後ではl.lpmと表面粗さが大きかった。コー ティングしたチタン試料表面のEDS元素分析により、試料表面に炭素とチタン の元素が検出され、表面が炭化されていることが確認された。試料表面のSEM 観察では表面には球状の形態が観察され、断面の観察からは表面には6um前後 の厚さを持った炭化層の形成が認められた。またEDSによる試料の線分析の結 果、チタンは試料内部から表面方向へ減少し、逆に炭素は増加した。次にピッ カース硬さによる荷重依存性を検討した。その結果、基板のチタン試料のピッ カース硬 さは約134であるのに対し、TiCコーティング後の硬さは荷重lgfで 3500と高い値を示した。また荷重が増加するとともにピッカース硬さは減少し、

荷重100gfで2580、荷重500gfで1183となった。これは圧痕が厚さ約6ym前後 のTiC層 を突き抜け るとマトル ックスのチ タンに至る ためと考え られる。

第二 部と第三部 :X線回 折から炭化 処理チタン 表面にはTiCの生成が認めら れた。SEM観察から表面には粒状物が形成され、加熱温度、時間とともに、サ イズが1〜4l.1,mと増加した。断面観察からは1〜25ymの厚さの炭化層の形成が 認められた。研磨後の0.05ymに対し、高周波誘導加熱炭化後では0.1〜0.86hun と表面粗さが大きくなった。EDSマッピング分析により、炭化層内、炭素とチ タン元素の分布が明瞭に観察されました。EDS線分析では、炭素濃度は表面か ら試料内部方向へ減少し、逆にチタンは増加した。ビッカース硬さは荷重200gf で純チタンの134から、炭化処理後2470と飛躍的に増加し、測定時の荷重増加 とともに減少した。これは荷重増加すると圧痕が厚さ1〜25 ptmのTiC層を突き 抜け、軟らかいマトリックスのチタンに至るためと考えられる。さらに炭化層 下地の金属チタンに対しビッカース硬さ試験を行ったところ、内部の硬さ200 に対し、表面近くの硬さは440を示しました。このことは炭素が基板に浸入し たた めと考えら れます。SEMと表面粗さにより、加熱温度1400℃、ベンゼン 分圧2x J:0‑3Pa、加熱時間10secのものでは試料表面に緻密で平滑な炭化層が形成 された。そして、1400℃試料について、マルテンス引っかき試験、超音波スケ ーラーによる磨耗試験を行った。マルテンス弓1っかき試験により、純チタン表 面に明瞭な条痕が形成され、1400℃試料では荷重50gfまで条痕が認められず、

(3)

100gf以上でも純チタンに比ベ浅いことが確認された。痕跡深さは1000gfに対し チタンでは約28 y,m、炭化チタンでは17Umと小さく、炭化チタン層を母材チタ ンと強固に固着し形成されていることが示唆された。また超音波スケーラーに よる磨耗試験磨耗試験において、チタン表面ではチタン自身が削られ溝が形成 されたが、炭化チタン表面では炭化チタンは削られず、溝ではなくステンレス チップのほうが削られたことが分かった。炭化チタンはチタンと比較し極めて 高しゝ耐摩耗性を有し、臨床使用時に想定される50gf程度の荷重では1400℃試料 の表面の摩耗痕は認められなかったことから、臨床使用条件下ではステンレス 製チップを使用しても1400℃試料表面の損傷はほぽ起こさないと予測された。

【結諭】

プラズマCVD法と高周波加熱浸炭処理法によルチタン表面への炭化層(TiC)形 成が可能となった。1400℃の試料表面に緻密で平滑な炭化チタン層を形成され、

炭化チタンのピッカース硬さは約2000と純チタンの約15倍の硬さを有するこ とが確認された。マルテンス引っかき試験及び超音波スケーラーによる磨耗試 験による炭化チタン層を母材チタンと強固に固着し形成され、きわめて高しゝ耐 摩耗性があり、一般的臨床使用条件(50gf)では試料表面の損傷はほぼないものと 予測される。以上より表面炭化したチタンの耐磨耗性に優れたインプラント材 料としての可能性が示唆された。

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(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

耐磨耗性インプラント材料用チタンの表面炭化

  審査は 、主査、副 査が一堂 に会し始 めに論文 提出者か ら概要の 説明を求めた 後 、 論 文 の 内 容 と そ の 関 連 事 項 に つ い て 口 頭 試 問 を 行 っ た 。   審査論 文の概要は 以下のと おりであ る。

【目 的 】歯 科 イ ンプ ラ ン トの構成 要素のう ち、アパ ットメン ト部は口 腔内露出 部位 で あル プ ラ ーク や 歯 石が付着 しやすく 、それら の除去は 良好な予 後を得る ため に 必要 不 可 欠で あ る 。チタン はインプ ラント材 料として ほぽ理想 的な性質 を有しも っともよ く使用され ているが 、硬さが 低く耐磨耗性に劣る欠点があり、

表面 荒 れや 摩 耗 が生 じ や すい問題 点がある 。このた めアバッ トヌント 部の清掃 には 表 面荒 れ を 避け る た め、金属 製スケー ラーは使 用できず 、プラス チック製 のものを 用いてお り、耐磨耗 性の向上 が望まれ る。炭化 チタン(TiC)は 硬さが極 めて 高 いこ と が 知ら れ て いるが、 インプラ ントヘの 応用を想 定した研 究はほと んど な い。 本 研 究で は 、 チタン表 面を炭化 処理し、 耐磨耗性 インプラ ント材料 としての可能性を検討した。  .

  第 一 部で は プラ ズ マCVD法 を 用い 、 第 二部 と 第三 部 で は高周波 誘導加熱 浸炭 処理法を用い、チタン表面を炭化処理した。

【 材 料 と 方 法 】 板 状 (10X10X0.5mm)( 神戸 製 鋼所 ) のJISI種チ タ ンを#2000 まで の 耐水 研 磨 紙、 さ ら に2limから0.05 fimま でのダイ ヤモンド ベースト を用 い て 研 磨 後 、 蒸 留 水 、 エ タ ノ ー ル 、 ア セ ト ン で の 順 で 超 音 波 洗 浄 し た 。   炭 化 チ タ ン コ ー テ ィ ン グ と し て 第 一 部 で は プ ラ ズ マCVD法 に よ り800℃ 、 H2(200cn13),CH4(30cm3),TiCl4(15cm3)の混合ガス雰囲気中で、チタン表面に炭化チ タン を 積層 し た (プ ラ ズ マ電 流lOOmA、 バイ ア ス電 圧 一400V、デポジ ション時 間2hr)。

  第二部と 第三部で は高周波誘 導加熱浸 炭処理法によりベンゼンガス雰囲気中、

800℃‑1200℃ ( 第二 部 ) と1000℃〜1400℃(第三部 )で炭化 層形成を 行った。

夫 昇

文  

  敦

理 畑

亘 大

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

  X線回折による生成物の同定、SEMとEDSによる試料表面と断面の観察分析、

表面粗さ形状測定機による断面プ口ファイルおよび中心線平均粗さの測定を行 った。また、マイク口ビッカース硬さ試験に加え、耐摩耗性を評価するために、

マルテンス引っかき試験および超音波スケーラー磨耗試験を行い、その条痕を デジタルマイコ口スコープと表面粗さ計で評価した。

【結果と考察】第一部:炭化処理後X線回折からマトリックスのチタンに加え、

微細結晶のTiCが認められ、表面粗さはコーティング前の0.05ymからl.lymと 大きくなった。EDS元素分析により、試料表面に炭素とチタンの元素が検出さ れ、炭化が確認された。表面のSEM観察では球状生成物が、断面観察からは6ym 前後の炭化層の形成が認められた。またEDS線分析では、チタンは試料内部か ら表面方向へ減少し、相補的に炭素は増加した。ピッカース硬さの荷重依存性 を調 べると荷重lgfでチタ ンの約134に対し、TiCコーティング後は3500と著 しく高しゝ値を示した。荷重の増加とともに硬さは減少し、荷重100gfで2580、 荷重500gfで1183となった。これは圧痕が厚さ約6Ltm前後のTiC層を突き抜け るとマトリックスのチタンに至るためと考えられる。

第二部と第三部:高周波誘導加熱炭化処理によルチタン表面に粒状物の形成が SEMで観察され、加熱温度、時間とともに、サイズが1〜4limと増加した。断 面観察からは1〜25 timの厚さの炭化層の形成が認められた。表面粗さは炭化前 の0.05ymから0.1〜0.86ktmに大きくなった。第一部と同様にX線回折による TiCの生成確認、EDS分析による炭化層およびチタンマトリックス内における炭 素とチタン元素の分布、ビッカース硬さの荷重依存性を認めた。緻密で平滑な 炭化層が形成された1400℃、ベンゼン分圧2xl0‑3Pa、10sec処理の試料について、

さらに特性を検討した。マルテンス引っかき試験では純チタン表面に明瞭な条 痕が形成されるのに対し、1400℃試料では荷重50gfまで条痕が認められず、

1000gfでも痕跡深さはチタンの28limに対し17ymと小さく、炭化チタン層は母 材チタンに強固に固着していることが確認された。超音波スケーラー磨耗試験 では、チタン表面では切削溝が形成されるが、炭化チタン表面では溝は形成さ れず、ステンレスチップのほうが摩耗することがわかった。臨床使用時に想定 される50gf程度の荷重では摩耗痕は認められず、ステンレス製チップを使用し ても損傷は起こさないと予測された。

【結論】プラズマCVD法と高周波加熱浸炭処理法によルチタン表面への炭化層 (TiC)形成が可能となった。1400℃処理の試料表面に緻密で平滑な炭化チタン層 が形成され、ピッカース硬さ約2000と純チタンの約15倍の硬さを有すること が確認された。マルテンス引っかき試験及び超音波スケーラー磨耗試験から炭 化チタン層は母材チタンと強固に固着して形成され、耐摩耗性はきわめて高く、

一般的臨床使用条件(50gf)下では試料表面の損傷はほぽ起こらないと予測され る。以上より表面炭化したチタンの耐磨耗性に優れたインプラント材料として の可能性が示唆された。

(6)

審 査委 員か ら、

1) 炭 化 膜 と 基 材 の 接 着 カ に つ い て 2) 炭 化 層 の 製 作 条 件 に つ い て 3)表 面粗さ と歯 石が 付着 の関連について 4)TiCとTiNの比 較に つい て

5) 改 質 し た 試 料 の 溶 出 性 に つ い て 6)臨 床応用 につ いて

  等 の質 問が なさ れた が、 論文 提出者はそれぞれに的確に回答し、背景となる 当該 分野 の基 礎的 知識 につ いて も深い学殖が認められた。今後相対する新たな 課題 に対 して も十 分に 対応 でき る問題解決能カと将来臨床へ活用する展望を有 し、博士(歯学)の学位授与に値すると判断し、主査ならびに副査は合格と判定し た。

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