複合拡散法 による鉄合金の耐摩耗表面処理
香 川 明 男
Ha r d ‑ f a c l n gO fI r o nAl l o y sb yCo u p l e dDi f f u s i o nMe t h o d
by
AkioKAGAWA
[ 概 要]
鋼材表面 に耐摩耗性 に優 れた
TiCやVCを接合 あ るいは コー テ ィン グす る際 に,界面 に発生 す る応 力 を分散 させ る効果 が期待 され る傾斜組成 を銅材表面近傍 に形成 させ る方法 として複合拡散法 を適用 した。
中間層 に純鉄 を用 い,その表 ・裏面 か らチ タンあ るいはバナ ジウム と炭素 を順 次拡散 させた ときの炭化物 の形成条件 とその分布 の制御条件 につ いて調 べた。拡散能の大 きな炭素 の拡散処理 に先立 ってチ タンやバ ナ ジウム を拡散 させ,逆方 向か ら炭素 を拡散 させ る こ とに よって,表面 か ら内部 へ 向か うなだ らかな炭化 物 分 布 が得 られ る こ とが知 られ た。 またチ タンの拡散 に おい て拡 散 層 内 に形 成 され る金 属 間化 合物 ,
TiFe
及 び
TiFe:あ るいはバ ナ ジウムの拡散処理時 に形成 され る q相 はその後の炭素の拡散 処理時 に分解 して
TiCあ るいは
VCを形 成 し,炭素拡散 後 の炭 化物 分布 はチ タンやバ ナ ジウム拡散 時 のそれ らの濃度 分布 に依存 す る こ とが知 られた。最適条件下 で複 合拡散処理 を施 した試料 の表面近 傍 には
TiCあ るいは
VC
炭化物単層 が形成 され,内部 に向か って緩 やかに減少す る炭化物 分・ 布 が得 られた。残留応 力の シ ミュ レーシ ョンか ら,その ような傾斜組成 を有す る材料 においては クラ ックの発生 を抑制 す る応 力分散効果 が 期待 で きるこ とを示 した。
1 .緒 言
近年 ,材料 に対す る要求 が高 ま る中で,金属 とセ ラ ミックス との接 合,複合や コー テ ィングが重要 な課題 とな って きてい るが,多 くの場 合 , これ らの材料 間の 比較 的大 きな熱膨張差 によ り生 じる熱応 力 に よって界 面強度の低下 や界面剥離 が生 じ,その ような接合不 良 が接合体 の強度 や信頼性 の低下 の一 国 とな ってい る。
この ような熱応 力の緩和策 と して, これまで インサー トメ タル法や傾斜組成法 な どの対策 が採 られて来 てい る1 ) 。 これ らの方 法 の内,傾 斜組成法 は応 力分散 効果 が期待 され,温度上昇 を伴 う複合 ,接合材料 な どの界 面 において発生 す る熱応 力の緩和策 として幅広 い応用 が期待 されてい る。
他方 ,耐摩耗表面処理 については,鋼材表面 か らク ロムやチ タン,バナ ジウムな どの炭化物形成元素 を拡 散 させ る と同時 に銅 材 中の炭素 と反応 させて, これ ら
の元素の炭化物 を表面 に形成 させ る研究が数多 く報告 されて い る
2)。 しか し,例 えばチ タンを工具鋼 や鋳鉄 に直接拡散 させ る と,チ タンに比 べて炭素 は拡散 係数 が大 きいためにチ タン/ 基材界面 においてチ タン と基 材 中の炭 素 との反 応 に よ り
TiCが形 成 され
,TiCと 基材 との間 には明瞭 な界面 が形成 され る。 その際 ,両 者 の熱膨張 係数 が大 き く異 な るために,高温 で拡散処 理 を行 った試料 の
TiCと基 材 との界面 には室温 への 冷却過程 で非常 に大 きな熱応力が発生 し,界面剥離 を 生 じ易い。 この ような界面 への応 力集 中を避け る対策 として,予 めチ タンな どの炭化物形成元素 を適 当な拡 散媒 体中 に拡散 させた後 に,炭素 を拡散 させれば,炭 化物形成元素 と炭素 の反応 に よ り形成 され る炭化物の 割合 が表面 か ら内部 に向か ってなだ らかに減少 してい
く傾斜組成 が得 られ る こ とが予想 され る。
本研究 では工具鋼 や鋳鉄 の表面 に優 れた耐摩耗性 を
平成
9年
10月
28日受理
材料工学科
(DepartmentofMaterialsScienceandEngineering)有す る炭化物 を形成 させると同時に,内部へ向かって なだ らかに減少する炭化物分布を もつ傾斜組成 を材料 表面近傍に形成 させる
2段拡散処理法 ( 複合拡散法 と 呼ぶ)の開発 を 目的 として,鉄を中間層 として用い, その表 ・裏面か らチタンあるいはバナジウム. と炭素を 順次拡散 させた ときの炭化物の形成条件 と炭化物分布 の制御条件な らびにこの ような表面改質処理 による応 力分・ 散効果について調べた。
2.
実 験 方 法
2.1 TiC表面処理
Fig.la
に示 す ように
Fe‑Ti系
3)においては
,αFeへのチ タンの固溶限は非常 に小 さ く,約
30wt%と
50 wt%Tiにおいて
TiFe2や
TiFeな どの金属間化合物 が生 じる。 また,さらに高チタン濃度側においては約
1358K以上 で液相 が生 じる。 そ こで本研究 では,以 下 に示す実験 により, これ らの金属間化合物 と液相の 存在 がチタンの濃度分布 に どの ような影響 を及ぼすか について調べ,さらに,これ らの化合物 と炭素 との反 応 により
TiCを形成する条件 について調べた。
a)Fe‑Ti
N.9JnleJOduo1 642iiLl■̲
00
. 0 0 ‑‑‑
TidjffusiontrealmentyFL
【00 1
5 2 3 K
、 .規13
β¶ TiFe モ■'#5.さじ.Ti父 F0
2
β¶ TiFe モ■'#5.さじ.Ti父 F0
2
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
¶ wt%Fe Fe
b)Fe・V
抑Ⅷ16。。Ⅷ120010。
。
⁝N.aJnteJaduK)i
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
Vanadium .mass%
Fig.1 Fe‑TiandFe‑Vphasediagrams3).
2.1.1
チタンの拡散条件
中間層 としての純鉄へのチタンの拡散条件 とチタン の濃度分布な らびに拡散距離の関係を調べ るために,
Fig.2に示すチ タン拡散処理用お よび接合用真空加熱 炉 を用いて,厚 さ
100/Jmのチ タン箔を直径
25mm,厚 さ
3mmの純鉄の円板で上下か ら挟み,炉 内の工具鋼 製の支柱の間に装着 した。 この際,秩/ チ タン/鉄サ ン ドイ ッチ試料 には上部の支柱 と重 りの重 さの計
3 kgの荷重 を負荷 したO炉内を
1Ⅹ10‑5Torrに減圧 した のち,アル ゴンガス雰囲気下で
,1323K,1423Kある いは
1523Kの所定の温度 まで
20K/分の速度で昇温 し, その温度 に
30分
〜 5時間保持 してチ タンを拡散 させ た。拡散処理後,炉冷 した試料の断面において組織観 察な らびに
EPMAによるチ タンの濃度分布の測定 を 行 った。
WeJlght
Fig.2 Schematicdrawingofvacuumfurnacefordif‑ fusionheat‑treatmen
t .
2.1.2
チタンの拡散および浸炭条件
純鉄へのチ タンの拡散 によ り形成 される
TiFe及 び
TiFe2と炭素 との反応 による
TiCの形成条件な らびに
TiC分布の制御条件 を検討 す るために,厚 さ
300FLmの純鉄箔 と厚 さ
100FLmのチ タン箔 を重ねて
Fig.2の
炉 内に装着 し,所定の温度な らびに保持時間でチ タン
を拡散 させた試料 に固体浸炭処理 を施 した。固体浸炭
は,黒鉛粉末 と炭酸バ リウムの混合粉中に試料 を埋込 衣,
10‑3Torrの減圧下で行 った。 この際 ,チ タンを 拡散 させた表面 と同一表面 か ら浸炭 した場合 と裏面か ら浸炭 した場 合 について
TiCの生成 ・分布状態 を調 べた。
2.1.3
チ タン拡散試料 と工具鋼 お よび鋳鉄 との接合 上記の純鉄へのチ タンの拡散処理 ( 第 1段拡散処理) においてなだ らかな濃度分布 が形成 され る条件でチ タ ンを拡散 させた厚 さ
250FLmの純鉄箔の裏面 に,直径
25 mm,厚 さ約
3mmの工具鋼
(SKDl l),片状黒鉛鋳
秩 (FC200)あ るいは球状黒鉛鋳鉄
(FCD450)の 円 板 を重 ね
,1323Kで種 々の時 間保 持 して接 合 す る と 同時 に基材中の炭素 をチタンの拡散 とは逆方 向に拡散 させた ( 第
2段拡散処理 )。第
2段拡散処理 後の試料 の断面 におけ る表層近傍の溶質元素の濃度分布 を EP‑
MA
に よ り測定 し
,TiCの面積分率分布 を
TiC/秩 中間層の界面 に平行 に
10jLm間隔で点算法 に よ り測定 した。 また硬 さ測定 はアカシ製 ミクロヴ ィッカース硬 度計 によ り荷重
10g,負荷時間
20秒の条件 で行 った。
2.2 VC
表面処理
複合拡散処理 におけ る第
1段の純鉄へのバナ ジウム の拡 散 条 件 につ いて は
,Fig.lbに示 す
Fe‑Ⅴ 状 態 図
3)で q相 と
α相が共存す る温度
(1183K)か ら q相, γ相 と
α相の
3相が現れ る温度域
(1273‑1473K),α相 とγ相 が現 れ る温度
(1528K)お よび
α単相の温度
(1673K)
につ いて調 べ た。 直径
20mm,厚 さ
100′′mのバナ ジウム箔 を直径
20mm,厚 さ
2mmの純鉄板 の 間に挟 み込んだサン ドイ ッチ試料 を
,Fig.2の上下の 工具鋼製 の支柱 の間に固定 して炉 内の均熱帯の中央部 にセ ッ トした。炉 内をアル ゴン ガスで置換 し,
5K/分 あ るいは
15K/分の加熱速度 で所定 の温 度 に昇温保 持 したのち,同一速度で室温 まで冷却 した。拡散処理 試料の中心 を通 る断面 において組織観察 な らびに EP‑
MA
に よるバ ナ ジウムの濃度分布 の測定 を行 い,バ ナジウム濃度分布 な らびに拡散距離 と拡散処理条件 と の関係 につ いて調 べた。第
2段 の工具鋼
(SK3)と の拡散接合条件 においては,直径
20mm,厚 さ
100FJmのバナ ジウム箔 と直径
20mm,厚 さ
200fLmの純鉄箔 を 重 ねた ものを第
1段処理 と同様 に して所定の温度で拡 散接合 させた。 ひ き続いて, このバナジウム拡散試料 の裏面 を
SK3と
1273K,1‑10hrの条件 で拡散接 合 し,断面 におけ るバナジウム と炭素の濃度分布,
VC炭 化物 の面積 分率 分布 と硬 さ分布 をチ タン拡散 処理
( 前項
2.1.3)と同様 の方法 で測定 した。
3.
結果 と考察
3.1
チ タンお よびバナジウムの第
1段拡散処理
Fig.3に一例 として
,1423Kでチ タンを拡散 させた 純鉄試料な らびに種 々の条件 でバナ ジウムを拡散 させ た純鉄試料の断面 におけ るチ タンお よびバナジウムの 濃度分布 を示 す。チ タン拡散試料 においては,液相 を 生 じな
い1323Kの拡散処理温 度 では,チ タン/ 拡 散 層界面 のチ タン濃度 は,ほぼ
100%であ ったが,界面 か ら内部 に
10‑20f〝n入った領域 で急激 に減少 し,そ の後 ,曲線 の勾配 は幾分緩 やかにな り
,α‑Fe領域 と
α‑Fe+TiFe22相共存域 の境界近傍 で顕著な折 れ曲が りがみ られた。この ような急峻 な濃度変化は
,TiFe2や
TiFe中のチ タンの拡散能 が非常 に小 さい こ とを示唆 してい る。一方 ,液相 を生 じる
1423Kでは
,Fig.3aにみ られ るように,チ タン/拡散層界面のチ タン濃度 は
Fig.1の状態 図 に対応 した液 相濃 度 にな り, また
鞘
■rl0 50 100 150 200 250 300 350
Distance,Llm
Fig.3 a)Titanium and b)Vanadium concentration profilesonthesectionofFe/TiandFe/Vdif‑ f
usion couplessubjected to the lststage heat‑treatmen
t .
金属間化合物中のチ タンの拡散能 も大 き くなるため, それ らの化合物 を生 じるチ タン濃度域 において も比較 的緩 やかな減少 を示 したが, この場合に も
α‑Fe領域 での折れ曲が りがみ られた。 この ような
α‑Fe領域で の拡散距離 は
,1523Kでは さ らに長 くな り, また保 持時間の増加 によ?て も増大 した
。Fig・3bのバナジ ウム拡散試料 において
,o相 を生 じる
1473K以下の拡 散処理温度では
,Fe/V界面近傍 でバナジウム濃度は 急激 に低下 し
,α(Fe)/α(Fe)+α相境界のバナジウム 濃度 を境 に低濃度域では緩やかに減少 している
。α相を生 じない
1528Kで保持時間ゼ ロの拡散処理 を行 っ た試料のバナジウム濃度分布は,図の ように表面か ら 内部へ向かって比較的なだ らかに減少す る濃度分布 を 示 した。 しか し
1528Kお よび
1673Kではバ ナ ジウム の拡散能 は大 きいために
,1528Kでは
30分保持 で,
1673Kでは加熱 中に拡散層 の厚 さは数百 ミクロンに 達 した
。Fig.4にチ タンお よびバナ ジウムの拡散層厚 さ ( L) と保 持 時 間 ( t) の関 係 を示 す。 両者 の間 には 各温度 において
L2∝tで表 わ され る直線関係 がみ ら れた。拡散距離
Lは拡散 係数(D)と保持時 間の関数
0.30
0.25
0.20
N
E
o.1512:
J
O.10
0.05
0
0.30
0.25
0
. 2 0
NE o.15
〜.」
0.10
0
.
05
0 1 2 3 4 5
Holdingtime,hr
0 0.5 1.0 1.5 2.0
HoldingtimeI,hr
Fig.4 L2‑tplot(L:thicknessofdiffusionlayer)
として
,L∝Jf Wで与 え られ 拡散係数は
D‑Do exp (‑Q/RT)で与 え られ るか ら
,L2∝Dotexp(‑Q/RT)
。すなわち
,Fig.4の直線の勾配の
2乗の対数 と 温度の逆数 との間には直線関係がみ られ, この懐 きよ り求めたみかけの活性化 エネルギ
(Q)は,チ タン とバ ナジウムに対 して,それぞれ
,248kJ/molお よび
180 kJ/molとな った。前者 の値 は γ ‑
Fe中のチ タンの拡 散の活性化 エネルギ
,251kJ/mo14)にはば等 しいが, 後者 では γ ‑
Feや
α‑Fe中のバナジウムの拡散 の活性 化エネルギ,それぞれ
264,239kJ/mo14)に比べてかな
り小 さな値であ った。
3.2
チ タン複合拡散処理
チ タン拡散処理 後の純 鉄試料 に浸炭処理 を施 す と き,試料 中のチ タンは
,β‑Ti,α‑Fe及 び r
Feに固 溶 した状態 あるいは
TiFeや
TiFe2の ような金属間化 合物 の状態 で存在 す る
。β‑Tiと炭素 は容易に反応 し て
TiCを形成す る 。γ ‑
Fe固溶体中の
TiCの溶解度積
は次式で与 え られる
5)0
log[%Ti][%C]‑5.13‑10780/T
‑ i ‑ ‑ ‑ ( 1 ) いま,浸炭温度 を
1323Kとし
,[%C]を
0.1wt%とす る と
,[%Ti]>0.001wt%の
rFe中では
TiCが生成 す る。 同様 に
α‑Fe中において も
TiCが形成 され る ことが知 られる
6)。他方
,TiFeと炭素 との反応 により
TiCを生成す る条件は,以下の式で与 え られる
7)oTiFe+Cg‑Fe+Tic
AG ニー34200+6.8T (cal/mo
l ) ‑‑‑ ・ ‑ ‑
I(3)ここで
,[%C]‑0・lwt%で,炭素活量 を
ac≒【 %C1 とする と,
Cg‑C̲,(0・1%)
AG‑ 10800‑14.8T(Cal/mol)5)
I ‑ ・ ・ ・ ・ . ・ ・ ・ ・ ・
・(5)これ よ り,
TiFe+ C̲,‑Fe+Tic
・ ‑・ ・ ・ ・ ‑ ‑・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ‑ ・ ・ ・ . ・ ・
・・(6) AG ‑‑45000+21.6T(Cal/mol ). ・ ・ ・ ‑・ ・ ・ ・ ・ ・
・・・.・・(7) (6)式の反応 は
1323Kにおいては,
AG≪ 0で
TiFeと炭素 との反応 に よ り
TiCが形成 され るこ とが知 ら れ る。文献
7には
TiFe2の標準生成 自由エネルギが 与 え られて いないが,
TiFe2と炭素 との反応 に よ り
TiCが生成す ることも同様 に予想 され る
。Fig.5に厚
さ
250〝mの純鉄 箔 に
1423Kで
2時間チ タンを拡散 さ
せた表面 と同一表面 か ら
,1323Kで
2時間の条件 で
30
㌔ J看
>r 20 U l二
10
0 50 一oo 15
0
200DIStanCefromthesurface,叩 DIStanCefronlthesurfaK=e・p・m
Fig.5 MicrostmctureandTic distributionofthe specimenssubjectedtothecoupleddiffusion treatmentwithdifferentschemeofthe2nd stage diffusion beat‑treatment.Tiand C weresuccesivelydiffusedfrom a)thesame surfaceofironinterlayer,andb)fromtheop‑
positesurfaceofironinterlaye
r .
浸炭 した場合 と裏面 か ら浸炭 した場合の,断面 におけ る組織 とチ タンお よび炭 素 の濃 度分布 な らび に
TiCの分布状態 を示 した。チ タン と炭素 を同一表面 か ら拡 散 させた試料 では裏面 に
TiCが生成 し, 内部 への炭 素の拡散はみ られなか った。 そ こで高チ タン濃度の表 層 を削 り落 とした表面 か ら浸炭 させた場合には
,Fig.5a
にみ られ るように炭素 は内部 へ拡散 し
,TiCの形 成 がみ られたが,表面 の
TiC面帯分率 は低 い もの し か得 られなか った。一方,チ タン と炭素 を表 ・裏面 か
ら拡 散 させ た試 料 で は , チ タン を拡 散 させ た表 面
(Fig.5bの左側 )近 くに黒 い帯状 の
TiC層 が形成 さ れ,内部 に向か ってなだ らか に減少 して い く
TiC分 布が得 られた。
Fig.6
にチ タン拡 散 処 理 (
1423K,2時 間 ) 級 ,
SKDと
1323Kで
2h拡散接 合 した試料 の断面組織 ,
TiCの面積 分率 ( 近 似的 に体積分 率 に等 しい と考 え られ る)分布 と硬 さ分布 を示 した。チ タン// 鉄 中間層 界面近傍 には厚 さ約
10‑20FLmの
TiC層 が形成 されて お り,内部 に向か ってなだ らか に減少 す る
TiC分布 がみ られ,基地は少量のパー ライ トを含むフ ェライ ト であ った。 また
,TiC層 ,傾斜複 合層 と基材 の間 に は クラ ックはみ られなか った
。Fig.6bにみ られ る よ うに
,TiC分布 はチ タン拡散処理 後 の チ タン濃 度分 布 に対応 して い る。 この こ とは
1323Kでの拡散接 合 処理 においてはチ タンは拡散する間 もな く炭素 と反応 して
TiCを形成 した こ とを示 してい る。
Fig.6Cに み られ るように
,TiC層
(Fig.6aの黒 い帯状) の硬 さは約
3200Hvで,その内部の数
10〃mの領域 におい て硬 さは急減 し,その後は比較的緩 やかに減少 してい
00射釦00
加
r」‑■%
LL.■%lO^U!1>H‑SSauPLdエSLaq3!^0LU!n 弼㈹50。㈱50。㈹5332211 0( E t c h i n g b yMu r a k a ml l sr e a g e n t
+nitaI)
0 50 100 150 200 250 300
Distance,tJ,m
Fig.6 a)Microstructure,b)Tic vo1% andc)hard‑
ness distribution on the section of the specimensubjectedtothecoupleddiffusion treatment.(thelststageTidiffusionat1423 Kfor2handthe2ndstagediffusionbonding withSKDat1323Kfor2h)
る.硬 さが急減 す る位置 は
TiC分率 が
50%q )位置 に ほぼ対応 している。一般 に複合材料の硬 さは複合則 か ら大 き く負 に変位 す る。 これは
,TiC間 に連 が りが み られ る高
TiC分率 の額域 においては比較 的高 い硬 さが得 られ るが
,TiC間の連 が りが失われ る低
TiC分率 の領域 においては
α‑Feマ トリックスの硬 さを反 映 した もの と考 え られ る。
複合拡散処理 の第
2段炭素拡散処理 においては,塞
材 に炭素 を含む鋳鉄 を用 い るこ とがで きる。厚 さ
150 fLmのチ タン箔 と厚 さ
250FLmの純鉄箔を
1423Kで
2時
間拡散接合 させた試料の純鉄側の表面 に片状黒鉛鋳鉄
(FC)あ るいは球状黒鉛鋳鉄
(FCD)を
1323Kで
2時間
拡散接 合 した試料 の断面組織 を
Fig.7に示 した。 こ
れ らの試 料 のチ タン/ 鉄 中間層界面 には黒 い帯状 の
TiC層 がみ られ,内部 に向か って なだ らか に減少 す
る
TiC分布が界面か ら約
150/̀mにわた って得 られた。
この帯状 の
TiC層 は鉄 中間層/ 基材界面 か ら
250‑270fLm
の位置 にあ ることか ら
,Fig.3aに示 したチ タ ン/鉄中間層界面 よ り幾分チタン側 に入 った位置 に形 成 されることが知 られた。 また, ここでは
Fig.3aか ら知 られるチ タンの拡散層厚 さよ り少 し厚めの鉄中間 層 を用 いたが,鉄 中間層 内には
TiCの未生成域 が約
100JJmあ るこ とか ら
,Fig.7の条件では,鉄 中間層 の厚 さは
150FLm が適当である と考 えられ る。
(
EtchedbyMura k a m ■ ■ s r e g e a n t ) ( E t c h e d b y N i t a l ) F C
ヽ..l級 . t 、 4. ?
1< .
.:
二闘 ‑ . 露L 七 , 等 デ I ー : : . i ∴ . ! 7 〝 . 'J ト r ん T i r ' l
F○inIB血叩T , 玩T i
Fe I n t
○rbLy●r ,F‑CFCD1̲ FCD ';‑
当≡喜 ̲i hL‑ ・,、一一 ‑.〜
ill一一一 .、.r; ‑i:,‑r.,I; L竺竺」
Fig.7 MicrostmctureoftheFCandFCDspecimens subjectedtothecoupleddiffusiontreatment.
(thelststageTidiffusionat1423K for2h a
ndthe2ndstagediffusionbondingwithFC andFCDcastironsat1323Kfor2h)
3.3
バナジウム複合拡散処理
バナジウム複合拡散試料 における第
2段炭素拡散処 理時の
VC炭化物の形成条件 は
α‑Feお よび
γ‑Feに おける
VC炭化物の溶解度積か ら知 られる。
log(%V)(%C)‑2.72‑6080/T(a‑Fe
8 ) ) ・ ・ ・ ・ ・
・(8) log(%V)(%C)‑6.7219500/T(7‑Fe5))・ ・ ・ ・
・.(9)いま
,1273Kにおいて
,(%C)‑0.5mass%とする と, α
‑Feにおいては
(%V)>0.018mass%,γ‑Feにおい ては
(%Ⅴ)>0.36mass%の領域で
VC炭化物が生成 す る。
1173Kでは
γ‑Feにおいて も
(%Ⅴ)>0.084 mass%で
VC炭化物 が生成 する こ とか ら,第
2段拡 散処理後の冷却時 には
α,「Fe中のバ ナ ジウムはは
ば VC炭化物 に変わる もの と考 え られる
。Fig.lbよ り
,1273Kの炭素拡散処理温度 においては
,27‑63 mass%のバ ナジウム濃度域 に α相が存在す るが,級 述 す る ように q相 は第 2段拡散処理後 には消失 して いることか ら,第
2段拡散処理時 に拡散 して きた炭素
.ps。
∈'uO!teJluaDuODUy^%+10^.U>d%SSe∈■>LO.〇^HJssoupJ
eH0075
5。25。2。‑。008。6。4。加・。帥伽022l I b) l
l
I
l
V
l
l
c
0 50 1tX) 150 2(泊 250
Distance,pm
Fig.8 a)Microstructure,b)solutedistributionpro‑
files,C)distributionofVCvol% andd)hard一 mess distribution on the section of the specimensubjectedtothecoupleddiffusion treatment.(thelststageVdiffusionat1528 Kwi仇outholdingandthe2mdstagediffusion bondingwithSK3steelat1273Kfor3h)
と反応 して
VC炭化物 を形成するもの と考 えられる。
また
,1273Kでのバ ナジウム と炭素 の拡散能 の違 い か ら,. 炭素拡散処理時にはバナジウムはほ とん ど拡散 することな く
VC炭化物に変わる と考 え られる。
鉄中へのバナジウムの拡散条件 として比較的なだ ら
かな濃度分布 が得 られた
1528Kで保持時間ゼ ロの条
件 を採用 し, この拡散条件で予 めバナジウムを拡散 さ
せた鉄箔試料の裏面 を
SE3と拡散接合 した
。Fig.8に
1273Kで
3時間の炭素拡散処理 を行 った試料の断
面組織 と溶質濃度分布
,VC炭化物の面済分率分布 お
よび硬 さ分布 を示 した。バナ ジウム/鉄中間層界面 に は,バナ ジウム と基材 の
SK3か ら拡散 して きた炭素 との反応 に よ り形成 された厚 さ約
20/′mの
VC炭化物 層 が認 め られ る
。VC層 は約
2600Hvの高硬度 を示 し,
VC層の厚 さは拡散接 合時 間 とともに増大 した
。Fig.8
Cにみ られ るように
,VC層 と複合層
(VC+基地) の界面近傍 においては
VC分率 は幾分急激 に低下 す る が,その内部 ではなだ らかな
VC分布がみ られ,基地 は フ ェライ トとパ ー ライ トの混合組織 であ った
。VC分布は図中に破線で示 した第 1段の拡散処理後のバナ ジウム濃度分布 に対応 してい る. これは
SK3とq )紘 散接合温度
(1273K)におけ る炭素の拡散 係数 がバナ ジウムの約
100倍大 きいため
4),バ ナジウムが拡散 す る 前 に炭素 との反応 に よ り
VC炭化物 が形成 された もの と考 え られ る
。Fig.8dの硬 さ分布 は
,Fig.6Cのチ タン複 合拡散試料 と同様 に
,VC/鉄 中間層界面 か ら 約
5FLmの領域 で急激 に減少 したりち緩 やかに低下 し てい る。
以上の ことか ら,第
2段 の拡散処理時間が長 くなる と,複合層の基地中の炭素濃度 は基材の
SK3のそれ に近 づ くが
,VC炭化物分布は第 1段処理時のバ ナジ ウムの濃度分布 に強 く依存す ることが知 られた。また, 第
2段の炭素拡散処理の保持時間が長 くな る と,表面 近傍の
VC炭化物層の厚 さは増大す るが,複合層の組 織 には顕著な違 いはみ られなかった。
3.4
複合拡散処理試料 におけ る応 力分散効果
Fig.9
はチ タン箔 を直接工具鋼 で挟 んだサン ドイ ッ チ試料 を
1323Kで
2時間拡散接 合 させた試 料 の断面 組織 で,約
20FLm厚 さの
TiCが界面 に形成 されている が,基材 との界面 には明瞭な界面剥離が見 られ る。界 面近傍 に形成 される
TiCの熱膨張係数
(α‑7.6Ⅹ106(EbhedbyMurakami'sreagcnt) A100LLm1
Fig.9 MicrostructureonthesectionofTifoil/tool steel(SKDl1)sandwichspecimensubjected tothedirectdiffusion‑bondingwithoutiron interlayerat1423Kfor2h.
K 1)9)
は基材のそれ
(α〜16Ⅹ1 0
6 K l)4)の約
1/2で あ り
,1323Kで拡散接 合 させた試料 においては,袷 却 中 に塑性 変形 が生 じない とす る と,室温 では
1500 MPaを超 え る大 きな熱応 力が界面 に生 じるこ とにな る
。Fig.10は表面 に厚 さ
20/Jmの
TiCを生成す る条件
(Fig.6に対応 )で反応拡散処理 を行 った厚 さ
2mmの工 具鋼
SKD(A)と工 具鋼裏 面 に直接 厚 さ
20〃mの
TiCを同一温度で接 合 した場合
(C)に,室温 において 両試 料 の表層 近傍 に生 じる応 力分布 を平板 積層 モ デ ル
10)を使 って計算 した結果 であ る。 図には傾斜複合 層
(Comp.)中の
TiC分布が直線的であ る場合
(B)に つ いての計算 結果 を併 せて示 したo シ ミ ュレー シ ョ ンにおいては,厚 さ
20FLmの
TiC層 ,厚 さ
180pmの
Comp層 と界面近傍 の
SKDを
10FLm間隔 で分割 し, 各層 の熱膨張 係数 な らびに弾性定数 は
,TiCと工 具 鋼の文献値
4・9・11)を使 い
,TiC分率の一次関数 として 与 えた
。TiCを直接
SKDに接 合 した
Cモ デ ル には
1323Kか ら室温 まで冷却 した ときに約
1700MPaの大 きな残留応 力が Ti C /基材界面 に生 じ
,Fig.9にみ ら れ る ような界面剥離 が生 じるこ とが予想 され る。 他 方,複合拡散処理 を行 った
Aモデルでは, この ような 応 力集 中は軽減 されて お り
,Comp層 中の
TiC分布 が直線的である場合 ( Bモデル) には, さらに顔著 な 応 力集中の軽減効果が期待 で きるこ とを示 している。
lmodelA,B]
ed H
.SS 巴 1S
500 Tension
q
.
I 〜\ \ l A l l
500 \
B\ \
DOO C
omp r e s s i
on \ \
0 50 1 00 150 200 220
DIStanCefromthesurface.けm
Fig.10 a)Sandwich models for Tic hardfacing specimenandb)residualstressdistribution atroom temperature.
a)E一ement No
.
modelA)mode一ら)
b) 1 000
ー 2000
C ) 500 0
† q
& ‑ 500 U ) u ) 4 ) 去 ‑ 1 000
‑ 1 500
‑ 200 0
l l
l2.3日 5… llqlllH H.門 …日
‑ 30tension :.model I
B
IIqA
Icompression
0 1 00 200 300
Distancefromthesurface,pm
300 50 0 7 0 0 9 0 0 1 1 00 1 3 00
Temperature,K
Fig.ll a)Sandwich models for VC hardfacing specimen,b)residualstressdistributionat room temperatureandc)variationofstress generatedoncoolingfrom the2ndstagedif‑ fusion‑bondingtemperature.
Fig.8
のバナジウム複合拡散試料 について も同様の応 力集中の軽減効果 を示すシ ミュレーシ ョン結果が得 ら れた
(Fig.ll)。 これ らの シ ミ ュレー シ ョン結果 は
Fig.6と
Fig.9の実験結果 の相違 を良 く説 明 してお り,複合拡散処理 を行 った試料 において債斜複合層に よる応力分散効果が働 いていることを裏付けている。
4.
結 論
鉄箔をチタンあるいはバナジウムの拡散媒体 として の中間層 として用い,予めその表面か らそれ らの元素 を拡散 させたのちに裏面を工具鋼 あるいは鋳鉄 と接合 す ると同時に炭素 を,チタンやバナジウム とは逆 に, 表面 に向かって拡散 させる複合拡散処理 によって表層 近傍 に形成 される炭化物の生成条件 とその分布の制御
条件な らびにその ような炭化物の傾斜分布 を もつ試料 の応力分散効果 について調べ,以下の結論 を得た。
1)純鉄にチ タンやバナジウムを拡散 させた試料の溶 質濃度分布 においては
,TiFe及 び
TiFe2あ るい は q相 を生 じる濃度近傍 において折 れ曲が りが み られたが,チタン及びバナジウムの拡散距離の 二乗 と時間の間には直線関係がみ られた。それ よ り得 られた見かけの活性化エネルギは,チ タンの 場合は
rFe中のチ タン拡散の活性化エネルギに 等 しかったが,バナジウムの場合はフェライ トお よびオーステナイ ト中のバナジウム拡散の活性化 エネルギ よりかな り小 さい値 となった。
2)TiC
及び
VC面積分率の分布は第
1段のチタンや バナジウムの拡散処理の条件 に左右 されるが,そ れ より低温で行 う炭素拡散の条件 にはほ とん ど影 響 されない。
3)チ タン と炭素 を同一表面か ら拡散 させた試料では
表面の
TiC分率 が低 い もの しか得 られなか った が,チ タン と炭素 を表 ・裏面か ら拡散 させた試料 では表面近傍 に
TiC層 が生成 し,内部 へ向か っ てなだ らかな分布 を もった組織が得 られた。後者 の方法でバナジウムの複合拡散処理 を行 った試料 の表面 には
VC炭化物層が生成 し,内部へ向かっ てなだ らかに減少する
VC体賛分率分布 をもった 組織 が得 られた。 この ような
TiCあ るいは
VC分布を もった試料では残留応力の分散効果が期待 されることを示 した。
参 考 文 献
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