博 士 ( 理 学 ) 小 林 智 加 志
学位論文題名
Ix/Iicroscale Turbulent Structure and Turbulent Flux in the Upper Layer of the Western Equatorial Paci :丘 COCean (西太平洋赤道域海洋表層の極微細乱流構造と乱流フラックス)
学位論文内容の要旨
大 気 一 海 洋 相 互 作 用 に お い て は 海 面 水 温 が海 洋 の 変 動 を大 気 に 伝 え る 窓口 と な る が 、 海 洋 混 合層 は 海 洋 内 部の 変 動 を そ の 海面 水 温 に 反 映す る メ カ ニ ズム の 鍵 を 握 って いる 。エル ニ ー ニ ョ ・ 南 方 振 動(ENSO)現 象 の 引 き 金 と な っ て い る と 考 え ら れ て い る 西 部 太 平 洋赤 道 域 で は 非常 に 深 く 海 洋表 層 混 合 層 が 発達 し て お り 、海 洋 表 層 の 変動 に 重 要 な 役割 を果 たして い る と 考え ら れ る 微 細乱 流 構 造 を 把 握す る こ と は 、大 気 ← 海 洋 相互 作 用 を 理 解す る上 で、極 めて 重要 なこと である といえ る。
本 研 究 は 、西 部 太 平 洋 赤 道域 海 洋 表 層 の鉛 直 微 細 乱 流観 測 の デ ー タを 解 析 する ことに よ り 、 海 洋表 層 に お け る鉛 直 微 細 乱 流 混合 と そ れ に 伴う 乱 流 フ ラ ック ス の 構 造 の特 性を 把握す る こ と 、そ し て 海 洋 内の 物 理 的 諸 量 のフ ラ ッ ク ス の見 積 も り や 数値 モ デ ル に おい てサ ブグリ ッ ド ・ スケ ー ル の 乱 流を 表 現 す る 上 で必 要 と さ れ る鉛 直 渦 拡 散 係数 の パ ラ メ ータ リゼ ーショ ンに っい て検割 うーる ことを 目的と して 行った 。
1984年 の0°,140°Wにお け る 集 中 観 測を き っ か け とし て 、 特 に 東部 お よ び 中部 太平洋 赤 道 域 に おい て 鉛 直 微 細乱 流 構 造 の 観 測が 、 主 に ア メリ カ の 研 究 者を 中 心 と し てさ かん に行わ れ る よ うに な っ た 。 しか し 、 こ れ ま で西 部 太 平 洋 赤道 域 で は 本 格的 な 観 測 は 行わ れて こなか っ た 。 本研 究 で 用 い たデ ー タ は 、1992年II月 に 赤 道 上 の定 点 (0° ,156゜E) で 約2週間に わ た り 行 わ れ たTOGA‑COARE集 中 観 測 で 得 た も の で あ る 。 そ の 意 味 で 、 本 研 究 は 西 部 太 平 洋 赤道 上で 行われ た微細 乱流観 測の初 めて の解析 と言え る。
ま ず、第2節 では、 本研究 で解 析した データを観測する際に用いた、Microstructure Profiler (MSP)に っ い て 紹 介 し た 。MSPは サ ン プ リ ン グ 間 隔 がO.Olsecと 非 常 に 短く 、 ま た シ ア ープ ロ ー ブ と呼 ば れ る 微 細流 速 シ ア ー を 観測 す る こ と が出 来 る 特 殊 なセ ン サ ー を 備え てお り、こ れ に よ っ て 海 洋表 層250〜300mの 微 細 乱 流 構 造の 観 測 を 行 う。 取 得 さ れ るデ ー タ は 、 水温 、 電 気 伝 導度 、 深 さ ( 圧力 ) 、 水 温 ・ 電気 伝 導 度 そ れぞ れ の 微 細 鉛直 勾 配 、 そ して 微細 流速シ ア ー で ある 。 特 に 微 細流 速 シ ア ー か らは 、 乱 流 混 合の 基 本 的 な パラ メ ー タ で ある 乱流 エネル ギー 散逸 率(E)が 求めら れる。
第3節 で は 、 前 半 で1992年2月 にTOGA‑COARE観 測 に 先 立 っ て 行 わ れ たJAPACS92 観 測 に おい て 得 ら れ た子 午 線 観 測(160°E,175°E) の デ ータ を用い て、エ ネル ギー散 逸率の 子 午 線 分布 を 調 べ た 。太 平 洋 赤 道 域 では 、 表 層 を 西向 き に 流 れ る南 赤 道 海 流 の下 を赤 道潜流 が 東 向 きに 流 れ る こ とに よ っ て 、 そ の間 に 平 均 流 の鉛 直 シ ア ー が大 き い 領 域 が存 在す る。こ
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の よ う な シ ア ー が 大 き な 領 域 で は 、 し ば し ばり チャ ー ドソ ン数 恥 (= N2/S2、Nは浮 力 振動 数 、Sは 平 均 流 の 鉛 直 シ ア ー ) が 臨 界 値 (O.25)を 下 回 る 。 こ の よう な恥 の 値が 低い 領 域で 発 生 す る 不 安 定 が 乱 流 を 発 生 さ せ る 原 因 と なる こと か ら、 微細 乱 流観 測で 得 られ る代 表 的な パ ラ メ ー タ で あ る 乱 流 エ ネ ル ギ ー 散 逸 率 が 子 午 線 分 布 に お い て 赤 道 域 で ピ ー ク を 持 っ こと が 予 想 さ れ る 。 こ の よ う な 特 徴 は 、 微 細 乱 流観 測が 多 く行 われ て いる 東部 太 平洋 赤道 域 にお い て 結 果 が 報 告 さ れ て い る が 、 本 研 究 の 解 析結 果か ら も、 西部 太 平洋 赤道 域 にお いて も 赤道 近 辺 に 散 逸 率 の ピ ー ク が 存 在 す る 事 を 示 し た 。 特 に175°Eで は 恥 が 低 い 領 域 で 散 逸 率 が高 くなるとの関 連がはっきりと見 られた。
第3節 の 後 半 で は 、1992年II月 に 行 わ れ たTOGA‑COARE観 測 の デ ー タ か ら 、 海 洋 表 層 に お け る 乱 流 熱 フ ラ ッ ク ス と 熱 収 支 を 見 積 も っ た 。 こ の 観 測 では 、 特に2週間 にわ た る定 点 観 測 で79と い う こ れ ま で に な い 多 く の 鉛 直 プ ロ フ ァ イ ル を 得 た 。 微 細 乱 流 混 合 に よ って 等 密 度 面 を 横 切 る フ ラ ッ ク ス が 駆 動 さ れ る こと から 、 海洋 表層 内 にお ける 乱 流混 合は 、 大気
―海 洋 間の 熱や 塩 分( 淡水 ) 交換 の媒 介 とし ても重要な役 割を果たしている 。特に、warm water poolと 呼ば れる 西 部太 平洋 赤 道域 は、 暖 かい 海水 面 温度 が大 気 に強 い影 響 を及 ぼす こ とから、
海 洋 表 層 の 熱 収 支 を 把 握 す る こ と は 重 要 で ある 。本 研 究の 結果 か ら、 海洋 表 層の 貯熱 量 の変 化 は 主 に 海 表 面 を 通 じ て の 熱 流 量 と 南 北 の 移流 によ っ て説 明さ れ 、乱 流熱 フ ラッ クス は 海洋 表 層 内 に お け る 熱 を 分 配 す る 役 割 を 果 た し て い る に 過 ぎ な い こ と を 示 し た 。 第4飾 で は 、 次 に 、 乱 流 を 特 徴 づ け る2つ の 無 次 元 数 、 オ ー バ ー タ ー ン フ ル イ ド 数(FrT
£・ON‑lLC伽)とオーバータ ーンレイノルズ数(RcT £l′3Lc4′3V.I)を用いて、海洋表層の微 細 乱 流 構 造 の 特 徴 を 調 べ た (Lcは オ ー バ ー タ ー ン ・ ス ケ ー ル 、vは 粘 性 係 数 、Nは 浮 力 振動 数 ) 。 こ こ で ま ず 、 海 洋 表 層 を そ の カ 学 的 特徴 から 、 海表 面の 日 射に 応答 し て日 変化 す る層
(mixinglayer) 、80m以 浅 に 発 達 し た ほ ば 等 温 の 層 (n淑edlりer) 、80m以 深の サー モ クラ イン の3つ の 領域 に分 類 した 。80m以浅 の ニっ の領 域 (mixinglayer,血xedlりcr)では、約90% の 領 域 が 鉛 直 フ ラ ッ ク ス を 維 持 で き る レ ベ ルで 乱流 が 発達 して い るが 、サ ー モク ライ ン 内で は20〜40% の 領 域 に 過 ぎ な い 。 ま た 、 サ ー モク ライ ン 内に おけ る 乱流 の発 達 は、 海表 面 の冷 却よりも風に 強く影響されるこ とが明らかになった 。
最 後 に 、 第5節 で 鉛 直 渦 拡 散 係 数 (K。 )の パラ メ ータ 化に っ いて 検討 し た。 乱流 混 合の パ ラ メ ー タ 化 は 通 常 用 い ら れ る 測 器 で 測 定 で き る 量 と 乱 流 混 合 と を 関 連 付 け ら れ る こ とが 望 ま し い が 、 こ れ は 第1に 比 較 的 簡 単 な 観 測 で 乱 流 フ ラ ッ ク ス を 見積 もる こ とが 出来 る よう に な る こ と 、 第2に 数 値 モ デ ル に お い て サ ブ グ リ ッ ド ス ケ ー ル の 現象 であ る 乱流 混合 の 効果 を 表 現 で き る よ う に な る こ と 、 と い う2つ の 要 請 に と っ て 重 要 と なる 。ま ず 、Pac孤owshand PmI孤der(1981) 型と よば れ るり チャ ー ドソ ン数 恥 によ る渦 拡 散係 数の 関 数化 を試 み た。゜そ の結果、これ までの研究(Pctcrsetal.,1989;K孤面etal.,1992)と同様に 鉛直渦拡散係数を恥 の 関 数 で 表 現 で き る こ と を 示 し た が 、 同 時 に関 数に 用 いら れる 定 数が これ ま での もの と 大き く 異 な る こ と 、 デ ー タ の ば ら っ き が 非 常 に 大き いこ と とい う問 題 点が ある こ とを 示し た 。こ れに 対 して 、無 次 元パ ラメータ の解析からオーバ ーターンレイノルズ 数と乱流強度く£v.lN12) の 間 に 強 い 相 関 関 係 が あ る こ と を 見 出 し た 。 こ の 関 係 を 用 い る と 、LcとNに よ っ て 、 鉛 直 渦 拡 散 係 数 がK。 箆Lc2Nの 形 で パ ラ メ ー タ 化 で き る こ と を 明 ら か にし た。 こ の結 果は 従 来の 恥 に よ る パ ラ メ ー タ リ ゼ ー シ ョ ン に 比 べ は る か に デ ー タ の ば ら っ き が 小 さ い 結 果 を 与 える も の で あ る 。 ま たkは 密 度 の プ ロ フ ァ イ ル か ら 求 め ら れ る 量 で あ る こ と か ら 、 乱 流 混 合 の パラメータ化 の目的に大きく前 進したといえる。
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