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糖尿病性腎症治療の新規夕ーゲット探索

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Academic year: 2021

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博 士 ( 獣 医 学 ) 大 友 秀 一

学 位 論 文 題 名

糖尿病性腎症治療の新規夕ーゲット探索

一高インスリン血症,HIF ― la, ならびにメグシンが 糸球体と尿細管問質に及ぼす影響とその機序

学位論文内容の要旨

  透析を必要とする 末期腎不全患者数は増加の一途をたどっており、この状況を打開すべく腎臓病、特 に透析導入原疾患の 第ー位である糖尿病性腎症の治療を目指した研究が世界中で行われている。血糖な らびに血圧を正常域 に保つことにより腎臓傷害が軽減されることが明らかになり、糖尿病性腎症患者の 透析導入時期を遅延 させることが可能となったが、依然として腎機能低下の阻止や低下した腎機能の回 復は適わず、透析導 入は不可避である。糖尿病性腎症に対する、より効果的な治療方法が世界的に求め られる中、本研究では糖尿病性腎症治療業の新たな開発ターゲットとして、高インスリン血症、hypoxia inducible factorくHIF)、メグシンの3つの可能 性を示した。

  第 一章 で は、II型 糖 尿病性 腎症モデルラットSHR.Cg‑LeprcnlNDmcr(以下SHR/NDmcr‑cpと省 略)

にピオグリタゾンも しくはインスリン製剤を投与し、腎傷害および腎機能に対する影響について比較検 討を行い、高インス リン血症が糖尿病性腎症において腎傷害性に働くことを示した。高インスリン血症 による、腎臓組織中 の酸化ストレス、 ペン卜シジン量に 対する明らかな影響は認められなかったが、

Transforming growth factor (TGIり・ロRNA量の増加が 認められた。培養近 位尿細管細胞IRPTCにお いて 、インスリン濃 度依存的にTGF‑ロRNA量、タ ンパク質量の増加 が認められ、TGF・ロ発現増 加が 高インスリン血症に よる腎傷害メカニズムのーつと推察された。II型糖尿病性腎症に多く認められる耐 糖能異常状態である 高インスリン血症は、糖尿病性腎症における重要な治療ターゲットと考えられる。

  第 二章では、コパ ルトをSHRINDmcr.印へ投与 し、コバルトによ り腎傷害の抑制、HIF゜laの 分解 抑制、尿細管問質領 域の虚血・低酸素状態の軽減がもたらされることを示した。コバルト投与により、

酸化ストレス、ペン トシジン、TGF.ロ、connec缸gtissue名rawthfactor(CTC扛りの抑制が認められ、

これらは虚血・低酸 素状態の軽減に主 に起因していると 推察された。mF.18分解抑制による腎臓中の エリスロポェチン、va8cuユaでendotheHal訂Owth轟ctor(vEGF)、hemeoxyge弧a8e缸o).1の発現増加 を中心として、糸球 体傷害の軽減、腎臓虚血・低酸索状態の軽減、問質線維性変化の軽減がもたらされ たと推察され、HIF.1ゼシグナルを促進する薬剤が、糖尿病性腎症における腎傷害および腎機能低下に 対する新たな治療法 となる可能性が考 えられた。

  第三章では、糖尿 病性腎症における糸球体マトリックスの増加の一因として、高血糖により発現増加 したメグシンによる 、プラスミン、matr泣metauoprote血ase(MMP)‐2、MMP.9の活性低下の可能性 を示 した。SH剛NDmば‐印の腎 臓組織およびラッ トメサンギウム細 胞RMCを用 いた検討より、メ グシ ンRNA量の 増加は、グルコー ス濃度の上昇に起因 してもたらされる ことが示唆された。メグシンによ り、プラスミン活性 が抑制され、その 結果MMP‐2、MMP.9の活性化が抑制される可能性を示した。ま た高 グル コ ース 培地 で 培養 したRMCで はMMP‐2お よ びMMP‐9活 性が 低下す るが、メグシン中 和抗 体MS18aを 高 グ ル コ ー ス 培 地 に 加 え て 培 養 し たRMCではMMP.2およ びMMP.9活 性低 下 が抑 制さ れる ことを示し、メ グシンが高グルコ ース条件におけるMMP‐2およびMMP‐9活性低下のー因で ある 可能性を示した。メ グシンは、糖尿病性腎症の糸球体組織変化をもたらす原因のーつである可能性が推 察され、その阻害剤 は糖尿病性腎症の腎傷害抑制をもたらす新たな治療法となる可能性が考えられる・

  過去15年以上にわ たり糖尿病性腎症 の治療を目指してbゝくっもの薬剤の開発が進められてきたが、

成功に至った薬剤は これまでにない。 本論文で提示した3つの開発ターゲット候補についても、げっ歯 類に比べてよルヒト により近いとされるサルを用いた薬効評価や、II型糖尿病患者のゲノム解析データ ベースを用いた評価 といった、これまでにない新たな手法を用いてさらに評価を行い、より確かなター ゲットを選別し絞り 込んでいくことにより、成功への道は切り開かれていくと考えられる。糖尿病性腎 症は、数ある疾患の 中でも治療薬開発が困難な部類に入ると思われるが、本研究で示した高インスリン 血症、Hmシグナル、 メグシンをターゲ ットとした薬剤研 究により、糖尿病性腎症に対する新たな治療 法がもたらされるこ とが期待される。

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学位論文審査の要旨

主 査   教 授   稲 葉   睦 副 査    教 授   安 居 院 高 志

副査    教授    昆    泰寛 副査    教授    滝口満喜

学 位 論 文 題 名

糖尿病性腎症治療の新規夕ーゲット探索

―高インスリン血症,HIF −1 ぱ,ならびにメグシンが      糸球体 と尿 細管問 質に 及ぼす影響とその機序

   腎臓病、特に透析導入原疾患の第一位である糖尿病性腎症治療法の開発は世界的な課題であ る。血糖ならびに血圧を正常域に保っことにより腎臓傷害が軽減されることが明らかになり、糖 尿病性腎症患者の透析導入時期を遅延させることが可能となったが、さらに腎機能低下の阻止等 を可能とする、より効果的な治療法の確立が求められている。本研究は、糖尿病性腎症治療薬の 新たな開発ターゲットとして、疾患の基礎因子である高インスリン血症に着目し、この病態が腎 尿細管と糸球体とに及ぼす影響とそのメカニズムを明らかにするとともに、糖尿病性腎症におけ る様 々 な 代謝 障 害 が腎 臓 の 組織 傷 害 と機 能 障 害 をも たらす 機序の解 明を試 みている 。    第ー章で は、メ タポリッ クシン ドローム様徴候を呈するII 型糖尿病性腎症モデルラット SHR Cg‑Ler: ′洲 DmCr (以下SHR/NDmcr ー卵と省略)にチアゾリジン系薬剤、あるいはインスリン 製剤を投与して、高インスリン血症を悪化、あるいは改善させて腎臓の組織と機能に対する影響 にっいて比較検討するというユニークな実験を行い、高インスリン血症が糖尿病性腎症における 組織傷害の原因となることを示した。高インスリン血症による、腎臓組織中の酸化ストレス、ペ ントシジン量に対する明らかな影響は認められなかったが、transforminggrowthfaCtor (TGF )−

ロ:NA 量の増加が認められた。また、培養近位尿細管細胞IRPTC において、インスリン濃度依 存的に TGF ‐pRNA 量、タンパク質量の増加が認められた。これらの知見から、TGF ―ロ発現増加 が高 イ ン スリ ン 血 症に よ る 腎の 組 織 傷害 を 生 じ るメ カニズ ムのーっ と考察 している 。    第二章では、虚血・低酸素状態が腎臓組織に傷害を与えるプロセスがhDoxiainduciblefactor 1 ―a (HIF ー1 りを介した経路による、という仮説をもとに、コバルトを SHR/NDmCr ー卵^投与し て組織の観察を行った。その結果、コバルト投与がHIF −1 ゼの分解抑制によるそのシグナル経路 の活性化と尿細管問質領域の虚血・低酸素状態の軽減をもたらすことを明らかにした。さらに、

コバルト投与により、酸化ストレス、ペントシジン、TGF ーロ、ならぴにconneCtingtiSSue5roWth

Iactor の抑制が認められ、これらが虚血・低酸素、糸球体組織傷害、ならびに問質線維性変化

の軽減をもたらした可能性を示した。

   第三章では、糖尿病性腎症にみられる糸球体マトリックスの増加のー因として、高血糖下で発 現が増加するメグシンによる、プラスミン、ロatrixmetalloproteinaSe ( MMP )ー 2 、臓P ー9 の活性 低下の可能性を検討した。SHR パDmcr ―印の腎臓組織、およびラットメサンギウム細胞脚C を用 いた解析により、グルコース濃度の上昇によってメグシンRNA 量の増加が生じ、これによって生 成が増すメグシンがプラスミン活性を抑制、その結果、職P ―2 とM 肝ー9 の漕陸化が抑制されるこ

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とを示した。

   以上のように、本研究は、高インスリン血症という病態が糖尿病性腎症における腎臓の組織傷 害の原因となることを解明し、さらに RIF とメグシンという物質が、それぞれ糖尿病性腎症の発 症に果たす役割とその機序を明らカ叫こして、それぞれが薬物治療のターゲットとなり得る可能性 を提示したものである。残念ながら現時点ではこれら相互間の明確な関連付けは行われていをい が、本研究は、糖尿病性腎症の発症機構解明への基盤となる知見を提供するものであり、それぞ れの病態や異常をもたらす分子にっいて詳細な検討を重ねることにより、従来困難であった糖尿 病性腎症治療薬開発の具体的薬剤ターゲット同定に大きく貢献するものである。したがって、審 査員一同は、上記博士論文提出者大友秀一氏が博士(獣医学)の学位を授与きれるに充分な資格 を有するものと認めた。

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参照

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