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イ ネい もち 病菌 の

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 工 藤 亮 子

学 位 論 文 題 名

イ ネい もち 病菌 の DNA 組換え修復遺伝子 Rhyn54 の解析 学位論文内容の要旨

  いもち病はイネの最重要病害であり,その病原菌は,子のう菌類のいもち病菌Magnaporthe oryzaeである.いもち病菌はイネ品種への感染範囲に従って「病原性レース」に分類されて いる,いもち病防除における最重要課題は圃場に導入した抵抗性品種に感染可能な病原菌が 出現するいわゆる「抵抗性の崩壊」である,抵抗性の崩壊は,いもち病菌の宿主範囲が広が るような変異,いわゆる「病原性レース変異」が生ずることによると考えられている,いも ち病菌の宿主特異性は「遺伝子対遺伝子説」に従うことが知られており,病原性レースの変 異は非病原性遺伝子の変異ととらえることができる.これまでの非病原性遺伝子の解析成果 から,病原性レースの変異には点変異に加えて,トランスポゾンの挿入や遺伝子そのものの 欠失が関わっていることが知られている.さらにいもち病菌は染色体構造が菌株毎に高度に 多様化しており,高頻度の染色体再編成が起こっていることも,上記のレース変異に何らか の影響を与えていると考えられる,転移因子の転移や,遺伝子の欠失,染色体再編成はDNA 鎖の組 換えを伴う現象である.生体内でのDNA鎖の組換えは組換え修復に関与するRAD52 遺伝子群のコードするタンバクが行っていることが知られている.これまでにいもち病菌に おけるRAD54ホモ口グで あるRhm54がクローニングされ,さらにRhm54の転写が様々なス トレスにより上昇することが明らかにされている.

  いもち病菌は圃場において様々な物理的,化学的ストレスに曝されており,これらがいも ち病菌の組換え修復を誘導している可能性がある.そしてこの組換え修復により生じる遺伝 子の欠失や染色体再編成がいもち病菌における遺伝的多様性や病原性の多様化に寄与してい ると推 測される.しかし,これらの関連性についての研究はほとんどなされていない.

  そこで本研究では,いもち病菌における相同組換えの役割について明らかにするため,

Rhm54遺伝子破壊株を作成し,その表現型の解析を行った,さらに,経時的にRhm54の発現 変化をモ二夕ーするため,GFPをレポーターたんぱく質として,Rhm54の発現レベルの定量 及びめvivoでの発現について観察した,

1. Rhm54遺伝子破壊株の作成とその表現型の解析

  いもち病菌のおけるRhm54の機能を調べるため,Rhm54遺伝子破壊ベクターを構築し,欠 損株を作成 した.Rhm54を 破壊する ためのベ クターはAbeら(2006)によって開発された pDESTRシステムを利用して構築した,このシステムに基づぃて,まずゲノムDNAを制限酵 素処理し,セルフライゲーションを行った.この産物を鋳型にしてインパースPCRを行った,

    ‑ 1207ー

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こ の 産 物 を エ ン ト リ ー ベ ク タ ーpENTR/D‑TOPOベ ク タ ー にTOPOク 口 ー ニ ン グ し , pENTR‑Rhm54を得た. このべク ターをpDESTRに 導入し,Rhm54破壊用ベクターを構築し た.このベクターをいもち病菌株Ina168及びIna86‑137に形質転換し,得られた形質転換体 の中から,目的とするRhm54を破壊された株をPCR及びサザンハイプリダイゼーションを用 いて同定した.Arhm54株の表現型について解析を行った結果,これらの株では生育に遅滞 が見られ,この生育速度の違いはDNA損傷試薬や細胞ストレス因子の存在下でより大きくな ることが示された.またIna168株においてArhm54株で分生子形成能が低下していた.分生 子のMMSに対する感受性はArhm54株で増加し,DNA修復系に阻害があることが示された.

一方,アデニンの生合成に関与する遺伝子んたイをターゲットとして相同組換え効率を測定し たが,コント口ールでの組換え効率が低かったため,Rhm54の破壊による組換え効率の変化 を評価することは困難であった.しかし,ARhm54株においても相同組換え能が残存してい ることが示され,完全に相同組換え経路が阻害されているわけではないことが示された,

  イネに対する接種試験の結果,Arhm54株でコント口ール菌株と比ベ病班のサイズや数は 大きく低下しており,病原性の低下が示された.分生子の付着器形成率と付着器の浸透圧耐 性を調べた結果,ロthm54株では付着器の形成率が低下し,さらに浸透圧に対する感受性が 増加していることが示された,Arhm54株において見られたイネに対する病原性の低下は,

感染の過程で重要な付着器の形成及び付着器の成熟の両段階が阻害された結果と推察された

2.GFPレポーターを利用したRhm54の枷vivo発現解析

  Rhm54の発現を解析するため,Rhm54プロモーター領域を上流に持つGFP発現ベクターを 構築した.Rhm54の上流に潜在的なタンバク質コード領域がRhm54の転写の方向と逆方向に 存在していたため,その領域の直前からRhm54遺伝子の開始コドン直前までをRhm54のプロ モーター部位とした.プ口モーターの下流にEGFP遺伝子,さらに形質転換体の選択マーカ ーとしてハイグロマイシン耐性遺伝子を持つべクターを構築し,このべクターを持つ形質転 換体をIna168株およびIna86‑137株を用いて作成した.この株に熱ショックを与えるとGFP の量がIna168株で3倍,Ina86‑137株で3.2倍増加することが示され,ノザン解析の結果と一 致した.これによりGFPの発現がRhm54プロモーターの活性を示しており,レポーターとし て機能していることが示唆された,続いて,いもち病菌とイネとの相互作用時のRhm54の発 現変化を観察するため,形質転換体をプラステイック板上で付着器形成させ,感染サイクル に伴ういもち病菌の形態変化におけるRhm54の発現をモ二夕ーした.その結果,分生子,発 芽管,付着器の全てにおいてGFP螢光が観察された.また,いもち病菌に対し親和性である イネ品種,新2号に対する接種試験では,イネ細胞中のいもち病菌侵入菌糸においてもGFP が観察され,イネへの感染行動時においても恒常的にRhm54が発現していることが示された,

  以上の結果から,イネいもち病菌においてRhm54は常に発現し,栄養成長,病原性など生 活環を通して機能していることが示唆された.このことはいもち病菌が常にDNAに損傷を受 けており,その損傷を修復しつつ増殖を続けていることを意味している,DNA相同組換えが イネいもち病菌中に多数報告されているトランスポゾン等の反復配列問で起これば,遺伝子

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の欠失や転座の原因となる.本研究は,DNA相同組換え修復と病原性の関連を初めて明らか に し た も の で あ り , 今 後 の い も ち 病 菌 研 究 の 新 た な 視 点 を 示 す も の で あ る ,

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査   准教 授   曾根 輝雄 副 査    教 授    浅 野 行 蔵 副 査    教 授    今 井 亮 三 副査   准教授   田中みち子 副 査    助 教    吹 谷    智

学 位 論 文 題 名

イ ネ い も ち 病 菌 の DNA 組 換 え 修 復 遺 伝 子 Rhyn54 の 解 析

  本 論文 は, 全8章 から なる 総頁 数90ベー ジの 和 文論 文で ある 。論 文に は図27, 表1,引用 文献33が 含ま れ, 別 に参 考論 文1編が 添え られ て いる 。

  いも ち病 は イネ の最 重要 病害 であり,その病原菌は,子のう菌 類のいもち病菌Magnaporthe oryzaeであ る .い もち 病菌 はイ ネ品 種へ の感 染範 囲に 従っ て「病原性レース」に分類されて い る. いも ち 病防 除に おけ る最 重要 課題 は抵 抗性 の崩 壊で ある.抵抗性の崩壊は,いもち病 菌 の宿 主範 囲 が広 がる よう な病 原性 レー ス変 異が 生ず るこ とによると考えられている.いも ち 病菌 の宿 主 特異 性は 「遺 伝子 対遺 伝子 説」 に従 うこ とが 知られており,病原性レースの変 異 には 非病 原 性遺 伝子 の点 変異 に加 えて ,ト ラン スポ ゾン の挿入や非病原性遺伝子そのもの の 欠失 が関 わ って いる こと が知 られ てい る. さら にい もち 病菌の染色体長多型も上記のレー ス 変異 に何 ら かの 影響 を与 えて いる と考 えら れる .こ れら の現 象に 関 わる 生体 内で のDNA鎖 の 組換 えは , 組換 え修 復に 関与 する 酵母RAD52遺伝 子群 のコ ード する タン バク が行 っている こ とが 知ら れ てい る.

  そこ で本 研 究で は, いも ち病 菌におけるDNA相同組換えの役割にっいて明らかにするため,

RAD52遺 伝 子 群 に 属 す るRAD54遺 伝 子 の い も ち 病 菌 ホ モ口 グRhm54遺 伝子 破壊 株を 作成 し,

そ の 表 現 型 の 解 析 を 行 っ だ. さら に, 経時 的にRhm54の発 現変 化を モ二 夕ー する ため ,GFP を レポ ータ ー たん ぱく 質と して ,Rhm54の 発現 レベ ルの 定量及びin vivoでの発現について観 察 した .

  ま ず , い も ち 病 菌 の お けるRhm54の機 能を 調べ るた め,Rhm54遺伝 子破 壊ベ クタ ーを 構築 し , 欠 損 株 を 作 成 し た .Rhm54を 破 壊 す る た め の べ ク タ ーpDESTR‑Rhm54を い も ち 病 菌 株 Ina168及 びIna86‑137に 形 質 転 換 に よ っ て 導 入 し , 目的 とす るRhm54を 破壊 され た株 をPCR 及 び サ ザ ン ハ イ ブ リ ダ イ ゼー ショ ンを 用い て同 定し た.Arhm54株の 表現 型に つい て解 析を 行 った 結果 , これ らの 株で は生 育に 遅滞 が見 られ ,こ の生 育速 度の 違 いはDNA損傷 試薬や細

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胞ストレス因子の存在下でより大きくなることが示された,またIna168株においてロthm54 株で 分生子形成能が低下していた.分生子のMMSに対する感受性はロthm54株で増加し|

DNA修復系に阻害があることが示された,一方,アデニンの生合成に関与する遺伝子瓜み羽 をターゲットとして相同組換え効率を測定したところ,ARhm54株においても相同組換え能 が残存していることが示され,完全に相同組換え経路が阻害されているわけではないことが 示された.イネに対する接種試験の結果,Arhm54株でコント口ール菌株と比ベ病班のサイ ズや数は大きく低下しており,病原性の低下が示された.分生子の付着器形成率と付着器の 浸透圧耐性を調べた結果,Arhm54株では付着器の形成率が低下し,さらに浸透圧に対する 感受性が増加していることが示された,Arhm54株において見られたイネに対する病原性の 低下は,感染の過程で重要な付着器の形成及び付着器の成熟の両段階が阻害された結果と推 察された,

  続いて,Rhm54の発現を解析するため,Rhm54プ口モーター領域を上流に持つGFP発現ベ クターを構築した.Rhm54プ口モーターの下流にEGFP遺伝子,さらに形質転換体の選択マ ーカーとしてハイグ口マイシン耐性遺伝子を持っべクターを構築し,このべクターを.持っ形 質転換体をIna168株およびIna86−137株を用いて作成した,この株に熱ショックを与えると GFPの量がIna168株で3倍,Ina86‑137株で3.2倍増加することが示され,ノザン解析の結果 と一致した.これによりGFPの発現がRhm54プロモーターの活性を示しており,レポーター として機能していることが示唆された.続いて,いもち病菌とイネとの相互作用時のRhm54 の発現変化を観察するため,形質転換体をプラステイック板上で付着器形成させ,感染サイ クルに伴ういもち病菌の形態変化におけるRhm54の発現をモ二夕ーした.その結果,分生子,

発芽管,付着器の全てにおいてGFP螢光が観察された.また,いもち病菌に対し親和性であ るイネ品種,新2号に対する接種試験では,イネ細胞ギのいもち病菌侵入菌糸においてもGFP が観察され,イネヘの感染行動時においても恒常的にRhm54が発現していることが示された,

  以上の結果から,イネいもち病菌においてRhm54は常に発現し,栄養成長,病原性など生 活環を通して機能していることが示唆された.このことはいもち病菌が常にDNAに損傷を受 けており,その損傷を修復しつつ増殖を続けていることを意味している.DNA相同組換えが イネいもち病菌中に多数報告されているトランスポゾン等の反復配列間で起これば,遺伝子 の欠失や転座の原因となる.本研究は,DNA相同組換え修復と病原性の関連を初めて明らか にしたものであり,今後のいもち病菌研究の新たな視点を示すものである.よって審査員一 同は ,工藤亮 子が博士( 農学)の 学位を受 けるに十 分な資格 を有するものと認めた.

参照

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