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(4)イネいもち病菌―テブフロキン―

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Academic year: 2021

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― 48 ― 植 物 防 疫  第 70 巻 第 8 号 (2016 年) 546 は じ め に テブフロキン(商品名;トライ)は Meiji Seika ファ ルマ(株)で創出された 4―キノリノール骨格を有する 特徴的な構造を持つ殺菌剤であり,イネいもち病,チャ 輪斑病,ダイズ紫斑病,アスパラガス茎枯病等に高い防 除効果を示す。 また,テブフロキンは,ベンゾイミダゾール系,フェ ニルアミド系,ストロビルリン系(QoI 剤)やアゾール 系といった薬剤に耐性を示す既報の種々の耐性菌に対し て交叉耐性を示さない(松村,2010)。さらに,ミトコ ンドリア複合体 III に作用し電子伝達系を阻害するが, ヘム c1 およびヘム b の還元を阻害しない(松村,2012) ことから,既存の電子伝達系阻害剤とは異なる作用機作 を持つと考えられる。 特に,テブフロキンは散布部位から速やかにイネ葉身 を移行することや,葉いもち病斑における胞子形成に対 して高い阻害活性を示す(山本,2015)ことから,イネ いもち病に対して優れた予防効果と治療効果を示すと考 えられる。 本稿では,イネいもち病菌のテブフロキンに対する感 受性検定方法およびその結果について紹介する。 I 感受性検定方法 テブフロキンはイネいもち病菌に対し寒天培地上で, 菌糸伸長阻害活性(松村,2012),胞子形成阻害活性や 胞子発芽阻害活性を示す。胞子の調製が不要である点や 菌叢の直径を肉眼で測定できる点など,操作性がよいこ とから,菌糸伸長を指標とした検定方法を採用した。 1 検定用のイネいもち病菌の調製 検定に用いるイネいもち病菌は,常法に従いイネに形 成された病斑から単胞子分離したものを用いる(大畑ら, 1995)。しかしながら野外から採取したいもち病の罹病 葉や罹病穂首には,雑菌が付着していることが多く,イ ネいもち病菌を採取材料から直接分離することが困難な 場合がある。そのような場合は,ポットに栽培したイネ を採取材料とともにビニール袋に入れて(図―1),25℃ で 24 時間培養することで,イネいもち病菌を感染させ, 形成された病斑から常法に従い単胞子分離を行う。 2 検定菌の前培養 単胞子分離したイネいもち病菌を PSA 培地に移植し, 25℃で 4 日間培養して得られる菌叢を検定に用いる。 3 検定培地の調製 トライフロアブル(テブフロキン 15%)を滅菌水を 用いて所定の濃度に希釈し,高圧蒸気滅菌して温度が 50℃程度に下がった 9 倍量の PSA 培地に添加しよく撹 拌する。この培地をシャーレに分注し,検定培地とする。 全農での試験においては,トライフロアブルの代わりに 乳剤(テブフロキン 12.5%),PSA 培地の代わりに PDA 培地を用いた。 4 培養 前培養して得られたイネいもち病菌の菌叢の端を直径 A Method for Monitoring the Sensitivity of Pyricularia oryzae to

Tebufl oquin.  By Kentaro YAMAMOTO and Makoto MATSUMURA (キーワード:イネいもち病,テブフロキン,感受性検定) 図−1 野外採取材料からポットに栽培したイネへの イネいもち病菌の感染

(4)イ ネ い も ち 病 菌

―テブフロキン―

山本 憲太朗・松村 誠 

Meiji Seika ファルマ株式会社 植物防疫基礎講座: 植物病原菌の薬剤感受性検定マニュアル2016

(2)

― 49 ― (4)イ ネ い も ち 病 菌 547 6 mm のコルクボーラーで切り取り,検定培地の上に静 置した後,25℃で 4 日間培養する。 5 検定 検定培地に形成された菌叢の直径をノギスで測定す る。検定培地とコントロール培地(テブフロキンを含ま ない培地)に形成された菌叢の直径から菌糸伸長阻害率 を 下 記 の 式 を 用 い て 算 出 し,50% 菌 糸 伸 長 阻 害 濃 度 (EC50)を求める。なお,検定培地に形成された菌叢の 直径から静置した菌叢ディスク分(6 mm)を差し引い た分を菌叢の直径とする。 菌糸伸長阻害率(%)=(コントロール培地での菌叢 の直径−検定培地での菌叢の直径)/コントロール 培地での菌叢の直径× 100 II 検 定 結 果 2007 ∼ 11 年にかけて全国からイネいもち病菌を採取 し,分離した 79 株についてテブフロキンの EC50を算出 し検定した結果,EC50の平均値が 2.16μg/ml,最小値 が 0.1μg/ml,最大値が 4.07μg/ml のほぼ一峰性の分布 を示した(図―2)。 また,JA 全農 営農技術センター 農薬研究室にて実 施された,2005 年に分離されたイネいもち病菌 93 株の 感受性検定結果を示した(図―3)。この試験における EC50の平均値は,1.17μg/mlで,範囲が0.50μg/ml ∼ 2.04 μg/ml であり,EC50の値が平均値近傍の一定の範囲に 存在した。 III 考   察 実験材料は異なるものの,2005 年に分離された株, 2007 ∼ 11 年にかけて分離された株の検定結果は,いず れも一峰性の分布を示し,EC50の平均値はいずれの検 定においてもほぼ同程度であった。テブフロキンに対す る感受性検定には,PSA 培地,PDA 培地のいずれを用 いても EC50の値に大きく影響しないことが示唆された。 また,今回の検定で用いた菌株は,テブフロキンの上市 前に分離された株であることから,今回の検定で得られ た値がテブフロキン感受性のベースラインに相当すると 考えられた。 末筆ながら,感受性検定にあたり貴重な菌株を分譲く ださった各研究機関の方々,また感受性検定を実施して くださった JA 全農 営農技術センター 農薬研究室の 方々に深く感謝申し上げる。 引 用 文 献 1) 松村 誠(2010): 第 27 回農薬生物活性シンポジウム講演要旨 集 : 1 ∼ 4. 2) (2012): 第 22 回殺菌剤耐性菌研究会シンポジウム講 演要旨集 : 29 ∼ 38. 3) 大畑貫一ら(1995): 作物病原菌研究技法の基礎―分離・培養・ 接種―,日植防,東京,p.37 ∼ 41. 4) 山本一美(2015): ファインケミカル 44(6) : 17 ∼ 22. 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 ∼ 0.1 0.1 ∼ 0.5 0.5 ∼ 2.5 2.5 ∼ 12.5 12.5 ∼ 50%菌糸伸長阻害濃度(μg/ml) 菌株の割合︵ % ︶ 図−2 2007 ∼ 11 年にかけて分離したイネいもち病菌の テブフロキンに対する感受性 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 ∼ 0.1 0.1 ∼ 0.5 0.5 ∼ 2.5 2.5 ∼ 12.5 12.5 ∼ 50%菌糸伸長阻害濃度(μg/ml) 菌株の割合︵ % ︶ 図−3 2005 年に分離したイネいもち病菌のテブフロキン に対する感受性(JA 全農 営農技術センター 農薬 研究室にて実施)

参照

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