• 検索結果がありません。

肺癌の抗がん剤感受性における スフインゴ糖脂質の機能解析

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "肺癌の抗がん剤感受性における スフインゴ糖脂質の機能解析"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 薬 学 ) 野 口 真 理 子

学 位 論 文 題 名

肺癌の抗がん剤感受性における スフインゴ糖脂質の機能解析

学位論文内容の要旨

  スフィンゴ糖脂質は、セラミドに糖鎖が結合した分子であり、全ての脊椎動物に存在 する生体膜構成成分である。ガングリオシドはシアル酸を分子内に含有する酸性糖脂質 の総称であり、細胞の分化や増殖あるいは接着の調節・制御に関わっている。今日まで にガングリオシドの生合成異常が様々な病態と関連していることが示唆されてきた。例 え ば 癌化 の 過 程 にお い て ガン グ リ オシ ド組成 は著し く変化し 、一般 的にGM1やGDla など の高級 なガング リオシ ドからGM3など の単純な ガングリ オシド ヘ移行することが 知られている。しかしながら、現在までにガングリオシド組成の変化そのものによる機 能的意義についての統一的な見解がなされていない。そこで、本研究ではガングリオシ ド生 合成経 路の出発 物質で あり、最 も基本 的な構造 を持っガ ングリ オシドGM3と抗癌 剤感受性との関連性について明らかにするため、分子レベルおよび臨床レベルでの検討 を行った。

  マ ウ ス3LLル イ ス 肺 癌 細 胞 野 生 株 よ り 単 離 さ れ たGM3欠 損 株J5にGM3合 成 酵 素 (SAT‑I)遺伝子 を導入 したGM3再構成細 胞J5/SAT‑Iを樹 立し、 内因性GM3の癌細胞に対 する機能解明を試みた。以前の研究で、本細胞において軟寒天培地中での足場非依存性 増殖 能の増 大やマウ スにお けるm vivo造 腫瘍能の 亢進が見 られ、GM3高発現による悪 性度 の亢進 が示唆さ れた。 そこでGM3と抗 癌剤感受 性との関 連性を 明確にするため、

抗が ん剤感 受性試験を行ったところ、GM3再構成細胞はエトポシドやドキソルピシンに 対し て薬剤 抵抗性を獲得していることが明らかとなった。GM3再構成細胞では、細胞ス トレ スによ ってりン 酸化さ れるp53の15番目 のセリン 残基が ェトポシド処理によルリ ン酸化を受けたが、カスパーゼ‐9、カスバーゼ‐3の活性化が顕著に抑制されており、ア ポトーシスシグナル経路がカスパーゼー9の上流で抑制されていることが示唆された。ま た、アポトーシス抑制因子Bcl・2の発現量が蛋白質レベルで亢進していることが明らか と な った 。 さらにGM3再構 成細胞 では、エ トポシ ドの標的 分子トポ イソヌ ラーゼIIa のエ トポシ ド処理時における発現量が高く、トポイソヌラーゼII8の分解が抑制されて いる ことが 示唆され た。一 方、TNF‑a処理に よるDNA断片化 やカスパ ーゼ―8,カスパ ーゼ −3の活性化 にGM3再構成細 胞では遅 延が認 められ、TNF受 容体を介するアポトー シスに対して若干の遅延が見られることが明らかとなった。以上の結果から、内因性の ガン グリオ シドGM3の発現 によるBcl‑2の蛋白質レベルでの発現量亢進、およびトポイ     ―735―

(2)

ソメ ラー ゼIIaの分 解抑 制を 介し た新 たな 抗癌 剤抵 抗性 機序 の存 在 が示 唆された。

  以 前よ り、 種々 の抗 がん剤耐性株においてGM3発現量が変化するという報告がなさ れており、GM3発現 量と抗がん剤感受性との関連性が示唆されてきた。由来する細胞株 や糖脂質のパックグラウンドの違いにより、相反する報告もなされており、癌における GM3の意義について不明な点が多く残されている。そこで、病態としての肺癌に着目し、

非小 細胞 肺癌 にお けるGM3と その 合成 酵素SAT‑Iの機能的役割について明らかにする ため、臨床検体を用いた検討を行った。抗がん剤治療開始前の非小細胞肺癌患者組織40 検 体 に お け るSAT‑I mRNA発現 量お よび 糖脂 質の 解析 を行 っ た結 果、SATImRNA発現 量は腺癌の中でも細気管支肺胞上皮癌(BAC)所見を示す組織で高く、一方、扁平上皮癌 および大細胞癌では有意に低かった。また、扁平上皮癌や大細胞癌においては、正常組 織と 比較 してSAT‑I mRNA発現量が低下しており、癌化の過 程においてSAT‑Iの遺伝子 発現制御が行われている可能性が示された。また糖脂質解析の結果、全ての組織分類に お い てGM3が 主 要 な ガン グリ オ シド であ り、SAT‑I mRNA発 現量 とGM3発現 量は 相関 性を示すことが明らかとなった。近年、非小細胞肺癌治療薬として認可された上皮成長 因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤ゲフィチニプは分子標的治療薬であり、本剤 に対して奏効性を示す患者では、高頻度にEGFRの遺伝子変異が見られることが報告さ れて いる 。腺 癌患 者組 織18検体 にお け るEGFR変 異の解析結果、SAT‑I mRNA発現量と の間に相関性は認められなかった。一方でEGFR変異のないヒト非小細胞肺癌細胞株に おい て、EGFRチロ シン キナ ーゼ 阻害 剤AG1478お よびゲフィチニプに対するIC50値と SAT‑I mRNA発 現量 は負 の相 関性 が見 ら れる こと が明らかとなった。従ってEGFRに変 異の ない 条件 下に おい て、SAT‑I mRNA発現 量が 高ければEGFRチロシンキナーゼ阻害 剤が有効であるという、ガングリオシド合成酵素遺伝子が薬剤選択の際の新たな判断材 料となりうる可能性が示唆された。

  GM3とEGFRチ ロシ ンキナーゼ 阻害剤感受性との関連性を明らかにするため、先に樹 立に したGM3再 構成 細胞J5/SAT‑Iを用 いて 解析 を行 った とこ ろ、 本 細胞 ではEGFR発 現量が蛋白質レベルで増加し、ゲフィチニプに対する感受性が亢進していることを見出 し た 。 ま た 、GM3再 構成 細胞 で はEGF刺 激に よりEGFRのり ン 酸化 およ びそ の下 流の シグ ナル であ るERKl/2の活 性化 が亢 進 して おり 、ゲフィチニプ処理によりEGFRのり ン酸化が顕著に阻害されることが明らかとなっ た。以上の結果から、GM3再構成細胞で はゲフィチニプによりEGFRを介するシグナル伝 達経路が遮断され、ゲフィチニブ感受 性が亢進することが示唆された。

  GM3高発現による ェ卜ポシド抵抗性獲得機序およびゲフィチニブ感受性亢進機序、さ らに はSAT‑I mRNA発現 量とEGFRチロ シ ンキ ナー ゼ阻害剤感受性の負の相関性を示す 機構とその意義についてはさらなる検証が必要であり、現在詳細な解析を行っている。

また、ゲフィチニプ投与患者におけるSAT‑I mRNA発現量の解析と臨床成績との関連性 についての検討を試みている。本研究を足がか りにSAT‑I mRNA発現量を治療薬選択の 指 標 と し た テ ー ラ ー ヌ イ ド 治 療 へ 応 用 さ れ る こ と が 期 待 さ れ る 。

736

(3)

学位論文審査の要旨

主査   教授   五十嵐靖之 副査   教授   有賀寛芳

副査   教授   井/ 口仁一(東北薬科大学)

副査   助教授    木原章雄

学 位 論 文 題 名

肺癌の抗がん剤感受性における スフインゴ糖脂質の機能解析

  ス フイ ンゴ 糖脂 質 は、 セラミドに糖鎖が結合した分子であり、 全ての脊椎動物に 存在 する 生体 膜構 成 成分 である。ガングリオシドはシアル酸を分 子内に含有する酸 性糖 脂質 の総 称で あ り、 細胞の分化や増殖あるいは接着の調節・ 制御に関わってい る。 今日 まで にガ ン グリ オシドの生合成異常が様々な病態と関連 していることが示 唆さ れて きた 。例 え ば、 癌化の過程においてガングリオシド組成 は著しく変化し、

一 般 的 にGM1やGDlaな ど の 複 雑 な ガ ン グ リ オ シ ド か らGM3な ど の 単 純 な ガ ン グリ オシ ドヘ 移行 す るこ とが知られている。しかしながら、現在 までにガングリオ シド 組成 の変 化そ の もの による機能的意義についての統一的な見 解がなされていな い。 ガン グリ オシ ド 生合 成経路の出発物質であり、最も基本的な 構造を持っガング リ オ シ ドGM3と 癌 の 悪 性 度 と の 関 連 性 が 示 唆 さ れ て い る こ と か ら 、 本 研 究 で は GM3の癌細 胞iニ対する機能解明を目的 として、抗がん剤感受性との関連性を検討し、

分子レベルおよぴ臨床レベルでの解析 を行った。

  マ ウ ス3LLル イ ス 肺 癌 細 胞 野 生 株 よ り 単 離 さ れ たGM3欠 損 株J5にGM3合 成 酵 素(SAT‑I)遺 伝 子 を 導 入 し たGM3再 構 成 細 胞J5/SAT‑Iを 樹 立 し 、 内 因 性GM3の 癌細 胞に 対す る機 能 解明 を試みた。本細胞ではエトポシドやドキ ソルビシンに対し て 薬 剤 抵 抗 性 を 獲 得 し て いる こと が明 らか と なっ た。 また 、GM3再 構成 細 胞で は エト ポシ ド処 理時 に おい てカ スパ ーゼ う、 カス パー ゼ‐3の活性 化が顕著に抑制さ れており、アポトーシスシグナル経路 がカスパーゼ‐9の上流で抑 制されていること が示 唆さ れた 。さ ら に、Bcl・2の発現量が蛋白質レベルで亢進し ており、さらにト ポイ ソメ ラー ゼIIaのエ トポ シド 処理 時に おけ る 発現量が高く、 トポイソメラーゼ IIaの 分 解 が 抑 制 さ れ て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。 一 方 、TNF‑a処 理 に よ るDNA断 片化 やカ スパ ーゼ ‐8′ カス パー ゼ‐3の活 性化 にGM3再構成細胞 では遅延が認めら れ、TNF受 容体 を介 する アポ トー シス に対 して 若 干の遅延が見ら れることが明らか     ―737ー

(4)

となった。以上の結果から、内因性のガングリオシドGM3の発現によるBcl‑2の 蛋白質レベルでの発現量亢進、およびトポイソメラーゼIIaの分解抑制を介した新 たな抗癌剤抵抗性機序の存在が示唆された。

  以前より、種々の抗がん剤耐性株においてGM3発現量が変化するという報告 がなされており、GM3発現量と抗がん剤感受性との関連性が示唆されてきた。

そこで病態としての肺癌に着目し、非小細胞肺癌におけるGM3とその合成酵素 SAT‑Iの機能的役割について明らかにするため、抗がん剤治療開始前の非小細胞 肺癌 患者 組織 検体 にお ける 解析を 行った。その結果、SAT‑ImRNA発現量は腺 癌の中でも細気管支肺胞上皮癌(BAC)所見を示す組織で高く、一方、扁平上皮 癌および大細胞癌では有意に低かった。また、扁平上皮癌や大細胞癌においては、

正常組織と比較して SAT‑I mRNA発現量が低下しており、癌化の過程において SAT‑Iの遺伝子発現制御が行われている可能性が示された。糖脂質解析の結果、

全て の組 織分 類に おい てGM3が主 要なガングリオシドであり、SAT‑I mRNA発 現量とGM3発現量は相関性を示すことが明らかとなった。近年、非小細胞肺癌 治療薬として認可された上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤ゲ フィチニブが奏効する患者では、高頻度にEGFRの遺伝子変異が見られることが 報告 され てい るが 、腺 癌患 者組織 検体におけるEGFR変異の解析結果、SAT‑I mRNA発現 量と の間 に相 関性 は認め られ なか った 。一 方で 、EGFR変異のない ヒト 非小細胞肺癌細胞株において、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤AG1478およ びゲ フア チニ ブに 対す るIC50値とSAT‑ImRNA発現量は負の相関性が見られる こ と が 明 ら か とな っ た 。従 ってEGFRに変異 のな い条 件下 にお いて 、SAT‑I mRNA発現 量が 高け ればEGFRチロシ ンキ ナー ゼ阻 害剤 が有 効で あるという、

ガングリオシド合成酵素遺伝子が薬剤選択の際の新たな判断材料となりうる可能 性が示された。

  ま た、GM3とEGFRチロ シン キナ ーゼ阻害剤感受性との関連性を明らかにす るため、GM3再構成細胞J5/SAT‑Iを用いた検討を行ったところ、本細:ユでは EGFRの蛋白質発現量が増加し、ゲフィチニブに対する感受性が亢進しているこ とを 見出 した 。ま た、GM3再 構成 細胞 ではEGF刺 激に よりEGFRのりン酸化お よびERKl/2の 活性 化が 亢進 してお り、 ゲフ アチ ニブ 処理 によ りEGFRのりン 酸化が顕著に阻害されることが明らかとなった。

  本研究では、ガングリオシドGM3によるエトポシド抵抗性機序の分子メカニ ズ ム を 明 ら か にし 、 ま た、SAT‑ImRNA発現 量を 肺癌 治療 にお けるEGFRチ ロ シンキナーゼ阻害剤使用の判断基準として臨床応用できる可能性を見出した。

よって、申請者は博士(薬学)の学位を受領するに十分な資質を有する者である ことを認めた。

738

参照

関連したドキュメント

単変量解析の結果,組織型が境界域ではあった

特に 2021 年から 2022 年前半については、2020 年にパンデミック受けての世界全体としてのガス需要減少があり、その反動

詳細情報: 発がん物質, 「第 1 群」はヒトに対して発がん性があ ると判断できる物質である.この群に分類される物質は,疫学研 究からの十分な証拠がある.. TWA

関係委員会のお力で次第に盛り上がりを見せ ているが,その時だけのお祭りで終わらせて

以上のことから,心情の発現の機能を「創造的感性」による宗獅勺感情の表現であると

わからない その他 がん検診を受けても見落としがあると思っているから がん検診そのものを知らないから

In vitro での検討において、本薬の主要代謝物である NHC は SARS-CoV-2 臨床分離株(USA-WA1/2020 株)に対して抗ウイルス活性が示されており(Vero

コロナ禍がもたらしている機運と生物多様性 ポスト 生物多様性枠組の策定に向けて コラム お台場の水質改善の試み. 第