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論文審査結果の要旨

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Academic year: 2021

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氏 名 授 与 し た 学 位 専攻分野の名称 学 位 授 与 番 号 学位授与の日付 学位授与の要件

学位論文の題目

論 文 審 査 委 員

小林 暉政 博 士 歯 学

博甲第6172号 令和2年3月25日

医歯薬学総合研究科社会環境生命科学専攻

(学位規則第4条第1項該当)

Effects of coffee intake on oxidative stress during aging-related alterations in periodontal tissue

(加齢による歯周組織中の酸化ストレスに対するコーヒー摂取の効果の検討)

大原 直也 教授 髙柴 正悟 教授 佐々木 朗 教授

学位論文内容の要旨

【 目 的 】

加 齢 と と も に 細 胞 に お け る 活 性 酸 素 種(ROS)の 産 生 が 増 加 し 、酸 化 ス ト レ ス に よ っ て ミ ト コ ン ド リ ア のDNA損 傷 や ア ポ ト ー シ ス が 誘 導 さ れ る 。 し た が っ て 、 抗 酸 化 物 質 に よ りROSを 減 少 さ せ る こ と は 、 全 身 へ の 作 用 だ け で な く 局 所 に お い て も 加 齢 プ ロ セ ス の 抑 制 に 役 立 つ 可 能 性 が あ る 。 歯 槽 骨 吸 収 は 加 齢 と と も に 進 行 し 、ROSの 関 与 が 指 摘 さ れ て い る 。 ま た 、 抗 酸 化 物 質 は 歯 周 病 の 予 防 に 効 果 が あ る 。 一 方 、 コ ー ヒ ー は 多 く の 国 で 消 費 さ れ て い る 飲 料 で あ り 、 強 力 な 抗 酸 化 能 を も つ 。 過 去 の 疫 学 研 究 に お い て 、 コ ー ヒ ー の 摂 取 量 が 多 い 患 者 は 歯 周 病 の 重 症 度 が 低 い と 報 告 さ れ て い る 。 そ の 一 方 で 、 コ ー ヒ ー や 高 用 量 カ フ ェ イ ン の 摂 取 に よ り 歯 周 状 態 が 悪 化 す る と い う 報 告 も あ る 。 し か し 、 コ ー ヒ ー の 摂 取 が 加 齢 に 伴 う 歯 周 組 織 の 変 化 に ど の よ う な 影 響 を 及 ぼ す か に つ い て は 不 明 で あ る 。

以 上 の 背 景 か ら 、コ ー ヒ ー の 摂 取 が 全 身 の 抗 酸 化 能 を 高 め 、局 所 に お い て も 加 齢 に 伴 う 歯 周 組 織 中 の 酸 化 ス ト レ ス の 増 加 を 抑 制 し 、 歯 槽 骨 吸 収 を 抑 制 す る と い う 仮 説 を 設 定 し た 。 本 研 究 の 目 的 は 、 ラ ッ ト の 加 齢 に 伴 う 歯 周 組 織 中 の 酸 化 ス ト レ ス 産 生 お よ び 歯 槽 骨 吸 収 に 対 す る 、 コ ー ヒ ー 摂 取 に よ る 抑 制 効 果 に つ い て 検 討 す る こ と で あ る 。

【 方 法 】

8週齢のFischer344系雄性ラットを、ベースライン群、通常食群、コーヒー含有粉末食群(0.62%コーヒー

群と1.36%コーヒー群)の4群に分けた(各群8匹ずつ、計32匹)。ベースライン群は直ちに屠殺し、その

他の群は12週間飼育後に屠殺し、血液、下顎骨、そして歯周軟組織を採取した。血清中の酸化ストレスの 指標としてROSによる代謝産物の一つであるreactive oxygen metabolites(ROM)を、抗酸化能の指標として

OXY adsorbentを測定した。歯槽骨吸収の評価として、第一臼歯のセメント-エナメル境と歯槽骨頂間の距

離を測定した。歯周軟組織中の酸化ストレスの評価として、8-hydroxydeoxyguanosine(8-OHdG)の免疫染色 を、抗酸化能の評価として、nuclear factor erythroid 2-related factor 2(Nrf2)の蛍光染色を行い、8-OHdGの陽 性細胞率およびNrf2の核内移行率を算出した。さらに、採取した歯周軟組織を凍結破砕した後、RNAを抽

(2)

出し、酸化ストレスおよび抗酸化防御関連遺伝子を対象とした逆転写定量 PCR アレイ解析を行い、歯周軟 組織中の酸化・抗酸化関連遺伝子について発現が変動するものを検索した。多群間の比較にはTukey法を、

2群間の比較にはStudent t検定を用いた。有意水準は5%とした。

【 結 果 】

血 清 中 のROMは 、 ベ ー ス ラ イ ン 群 で い ず れ の 群 よ り も 有 意 に 低 く (p = 0.023) 、 コ ー ヒ ー 摂 取 の2群 で は 通 常 食 群 よ り も 低 い 傾 向 に あ っ た が 、有 意 な 差 は な か っ た 。一 方 、血 清 中 のOXY adsorbentは 、1.36% コ ー ヒ ー 群 で い ず れ の 群 よ り も 有 意 に 高 か っ た 。歯 周 軟 組 織 中 の8-OHdG 陽 性 細 胞 率 は 、通 常 食 群 で ベ ー ス ラ イ ン 群 よ り も 有 意 に 高 く(p < 0.001)、1.36% コ ー ヒ ー 群 で は 通 常 食 群 お よ び0.62% コ ー ヒ ー 群 よ り も 有 意 に 低 か っ た(p = 0.001お よ びp = 0.018)。歯 槽 骨 吸 収 量 は 、通 常 食 群 で ベ ー ス ラ イ ン 群 よ り も 有 意 に 大 き く(p < 0.001)、1.36% コ ー ヒ ー 群 で は 通 常 食 群 よ り も 有 意 に 低 か っ た 。Nrf2核 内 移 行 率 は 、1.36% コ ー ヒ ー 群 で 通 常 食 群 よ り も 有 意 に 高 か っ た(p = 0.008)。ま た 、1.36%コ ー ヒ ー 群 の 歯 周 軟 組 織 中 で 通 常 食 群 よ り も 発 現 量 が2倍 以 上 で あ っ た 酸 化・抗 酸 化 関 連 遺 伝 子 と し て 、抗 酸 化 関 連 遺 伝 子 で あ るGlutamate cysteine ligase、Ferritin、 そ し てHypoxanthine phosphoribosyl transf erase 1を 検 出 し た 。

【 考 察 】

血 清 中 のOXY adsorbentが1.36%コ ー ヒ ー 群 で 通 常 食 群 よ り も 有 意 に 増 加 し た こ と か ら 、 コ ー ヒ ー 摂 取 に よ っ て 全 身 血 清 中 の 抗 酸 化 能 が 亢 進 し た と 考 え ら れ る 。

歯 周 組 織 に お け る8-OHdG陽 性 細 胞 率 が 、通 常 食 群 で ベ ー ス ラ イ ン 群 よ り も 有 意 に 高 い 一 方 、 1.36%コ ー ヒ ー 群 で は 通 常 食 餌 群 よ り も 有 意 に 低 か っ た 。 さ ら に 、Nrf2核 内 移 行 率 が1.36%コ ー ヒ ー 群 で 通 常 食 群 よ り も 有 意 に 高 か っ た こ と と 、1.36%コ ー ヒ ー 群 の 歯 周 軟 組 織 中 で 通 常 食 群 よ り も 発 現 量 が2倍 以 上 で あ っ た 抗 酸 化 関 連 遺 伝 子 が 検 出 さ れ た こ と か ら 、 加 齢 に よ っ て 歯 周 組 織 で 産 生 さ れ た8-OHdGがNrf2を 介 し た 抗 酸 化 反 応 に よ っ て 減 少 し た と 考 え ら れ る 。

歯 槽 骨 吸 収 量 が 、通 常 食 群 で 有 意 に 大 き く 、1.36%コ ー ヒ ー 群 で 有 意 に 小 さ か っ た と い う 最 終 的 効 果 を 現 し た 。 こ の 効 果 に 至 る ま で は 、 コ ー ヒ ー を 継 続 的 に 摂 取 す る と , コ ー ヒ ー 中 の ポ リ フ ェ ノ ー ル ( ク ロ ロ ゲ ン 酸 類 な ど ) が 血 中 へ 移 行 す る こ と で 、 全 身 の 血 液 中 の 抗 酸 化 能 が 高 ま る 。 全 身 循 環 か ら 歯 周 組 織 へ 至 る と 、 歯 周 軟 組 織 の 細 胞 に 存 在 す るNrf2の 核 内 へ の 移 行 を 促 す 。 核 内 へ 移 行 し たNrf2はAntioxidant responsive ele ment(ARE) に 作 用 し 、 抗 酸 化 物 質 を 放 出 し 、 酸 化 ス ト レ ス と そ れ に 伴 う 骨 芽 細 胞 の 機 能 低 下 お よ び 破 骨 細 胞 の 活 性 化 を 抑 制 す る こ と で 歯 槽 骨 吸 収 の 進 行 を 抑 制 す る こ と が わ か っ て お り 、 本 実 験 に お い て も 加 齢 に 伴 う 歯 周 組 織 中 の 酸 化 ス ト レ ス 産 生 と 歯 槽 骨 吸 収 の 進 行 を 抑 制 し た 可 能 性 が 考 え ら れ る 。

【 結 論 】

1.36%コーヒー含有飼料を摂取したラットでは、全身血清中の抗酸化能が上昇し、局所の歯周軟組織の

細胞においても Nrf2核内移行が増加することで加齢に伴う歯周組織中の酸化ストレス産生と歯槽骨吸収 が抑制されることが示唆された。

(3)

論文審査結果の要旨

加齢とともに活性酸素種(ROS)が増加し、ROSは歯槽骨吸収の進行に関与することが指摘 されている。一方、コーヒーは抗酸化能をもつことが知られているが、その摂取が加齢に伴う 歯周組織の変化にどのような影響を及ぼすかについては不明である。本研究では、歯周軟組織 中の加齢に伴う酸化ストレスの産生、そしてコーヒーの摂取がその軽減に与える影響、その結 果として加齢に伴う歯槽骨吸収に与える影響を検討した。

8週齢のFischer344系雄性ラットを、ベースライン( BL)群、通常食群、コーヒー含有粉末食

群(0.62%コーヒー群と1.36%コーヒー群)の4群に分けた(各群 8匹ずつ、計32匹)。BL群は直 ちに屠殺し、その他の群は12週間の飼育後に屠殺し、血液、下顎骨、そして歯周軟組織を採取 した。血清中の酸化ストレスの指標としてReactive Oxygen Metabolites(ROM)、抗酸化能の指 標としてOXY adsorbentを測定した。歯槽骨吸収の評価として、第一臼歯のセメント-エナメル 境 と 歯 槽 骨 頂 間 の 距 離 を 測 定 し た 。 歯 周 軟 組 織 中 の 酸 化 ス ト レ ス の 評 価 と し て 、 8- hydroxydeoxyguanosine ( 8-OHdG)の免疫染色を、抗酸化能の評価として、 nuclear factor erythroid 2-related factor 2 (Nrf2)の蛍光染色を行い、8-OHdGの陽性細胞率およびNrf2 の核内移行率を算 出した。さらに、採取した歯周軟組織からRNAを抽出し、酸化ストレスおよび抗酸化防御関連 遺伝子を対象とした逆転写定量PCRアレイ解析を行い、歯周軟組織中の酸化・抗酸化関連遺伝 子について発現が変動するものを検索した。多群間の比較には Tukey法を、 2群間の比較には Student t検定を用いた。有意水準は5%とした。

血清中のROMは、BL群でいずれの群よりも有意に低く( p = 0.023)、コーヒー摂取の 2群で は通常食群よりも低い傾向にあったが有意な差はなかった。一方、血清中のOXY adsorbentは、

1.36%コーヒー群でいずれの群よりも有意に高かった。歯周軟組織中の8-OHdG陽性細胞率は、

通常食群でBL群よりも有意に高く(p < 0.001)、1.36%コーヒー群では通常食群および0.62%コ ーヒー群よりも有意に低かった(p = 0.001およびp = 0.018)。歯槽骨吸収量は、通常食群で BL 群よりも有意に大きく(p < 0.001)、1.36%コーヒー群では通常食群よりも有意に低かった( p

= 0.001)。 Nrf2核内移行率は、 1.36%コーヒー群で通常食群よりも有意に高かった(p = 0.008)。

また、 1.36%コーヒー群の歯周軟組織中で通常食群よりも発現量が2倍以上であった酸化・抗酸

化 関 連 遺 伝 子 と し て 、 抗 酸 化 関 連 遺 伝 子 で あ る Glutamate cysteine ligase、 Ferritin 、 そ し て Hypoxanthine phosphoribosyl trans ferase 1 を検出した。

以上のことから1.36%コーヒー含有飼料を摂取したラットでは、コーヒーに含まれる有効成 分であるポリフェノールが小腸などの消化管で吸収され、全身血中へと移行することで、歯周 軟組織の細胞におけるNrf2の核内移行が増加し、抗酸化物質を放出することで加齢に伴う歯周 軟組織中の酸化ストレス産生と歯槽骨吸収が抑制されることが示唆された。

本論文は、すでに学術誌「In Vivo」に受理されている。

よって、審査委員会は本論文に博士(歯学)の学位論文としての価値を認める。

参照

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