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1 はじめに世間では IoT や AI 自動化といった人に頼ることのないシステムの開発 導入がされつつある近年です これは労働力不足や人為的ミスによる様々なリスクを防ぐために社会がつくりだしてきた世の中の流れとなっています この自動化は効率化や省力化といった面からも生産性向上や品質向上 コスト削減な

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Academic year: 2021

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【特別賞】

アンカー乗り上げの列車を出発させないために

(お客様に安心される輸送を提供するために)

日本貨物鉄道株式会社

中央研修センター

渋川 仁

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51 1 はじめに 世間ではIoT や AI、自動化といった人に頼ることのないシステムの開発、導入がされつ つある近年です。これは労働力不足や人為的ミスによる様々なリスクを防ぐために社会が つくりだしてきた世の中の流れとなっています。この自動化は効率化や省力化といった面 からも生産性向上や品質向上、コスト削減など製造業の工場では以前から取り入れられた 技術でした。そのIoT や AI、自動化といった技術が近年、様々な産業へ広がりをみせてい ます。現在の社会情勢をみると労働力不足や非正規労働社員の増加などあげられ、外食産 業でも労働力不足や新規採用者の不足など新技術を導入しなければ成り立たない事態にき ているためです。そのため新たな技術の導入が迫られています。例えば調理経験の浅い作 り手でも味が変わらないように提供するためのフォーメーション化などが進んでいます。 そのほかにもセントラルキッチンのような一か所で集中的に調理することによって、各店 舗での設備などを持たずに、調理に関連する食材の仕入、調理を一元化し、店舗は配達さ れた調理済みの食品を電子レンジで温め、盛りつけるだけのみにし、接客に集中できるよ うにしています。これは店舗でも均質な味を、集中化により低廉な価格で提供できるよう にしているからです。このように以前は導入されていなかった外食産業でも様々な技術が 取り入れられている近年です。そんな時代に乗り遅れないためにIoT や AI、自動化といっ た最新技術をJR 貨物でも検討していかなくてはいけません。しかし最新技術を取り入れ るには様々なアイディアや発想力が大切です。新技術には長い時間をかけて研究を行い、 そして莫大な費用もかかるものです。そういう意味ではただ取り入れるだけではなく将来 を見据えた新技術の導入が必要となります。JR 貨物でも 10 年 20 年先を見据えた業務の 見直し、新技術の導入が急務となっています。 2 技術継承の問題 では、現在のJR 貨物を振り返ると、昭和 62 年に国鉄から JR へ民営化され、国鉄時代 末期には要員の見直しなどが行われ新規採用が行われませんでした。その結果、現在の社 員構成をみると40 台後半から 50 代前半の社員がほとんどいない歪な構成になっています。 今後、50 代後半の社員が大量退職していく中、今まで培ってきた技術や技能を継承してい くのに大きな課題となってきています。世間では、新卒社員の就職率は過去最高とも言わ れ企業が優秀な人材を求めて取り合いとなっています。それは JR 貨物にとっても大きな 問題となっており、要員の確保に苦労しています。そんな現在の状況の中、業務を振り返 ると10 年 20 年前から変わっていない仕組み、仕事があります。この人材不足の中、人に 依存した仕組み、仕事が多くあるのです。人は必ずミスをする。ヒューマンエラーはいつ の時代でも永遠のテーマとなっています。どのようにしたらなくなるのか。ハード対策、 ソフト対策と様々な方法があり、私たちは、そのヒューマンエラーをいかになくしていく かが大きな課題となっています。

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52 3 JR 貨物の業務 私たちの仕事は、お客様の大切な荷物を安全に安定して届けることが最大の使命であり、 そのことで、お客様から安心してお使いいただける会社でなくてはいけません。今の世の 中、頼んだ荷物が購入した翌日に届く、または指定した日に届くというのが当たり前とな っています。そういう社会の中、鉄道貨物は社会のインフラとして様々なところで多くの 人たちと関わっています。その安全、安定を揺るがすような事故や事象を発生させ社会に 影響を与えるようなことを絶対に起こしてはいけません。 JR 貨物の輸送は、一般的にはお客様からいただいた荷物をまず利用運送会社からコン テナによって集配され、最寄りの貨物駅へ持ち込まれ、トラックからコンテナ貨車(以下、 貨車という。)へフォークリフトを使い車両へ積み込みを行います。その後、駅での入換え で組成された車両が列車になり目的の貨物駅まで運ばれます。目的駅へ到着した列車は入 換え作業が行われコンテナホームへ載線し車両に積まれているコンテナをトラックへ積み 替え利用運送会社がお客様まで運ぶ流れとなっています。 JR貨物が行っている仕事は、利用運送会社から持ち込まれたコンテナを発駅から着駅 まで列車で運ぶ部分となっています。 4 積み付け検査 貨物駅の作業を見てみるとコンテナをトラックから貨車へフォークリフトによって積 み込む作業があります。国鉄時代は車扱が主流でありコンテナは今と違い少ない輸送量で した。近年、輸送の形態も変わり車扱からコンテナへとシフトされコンテナ輸送が主流と なってきました。しかしながらコンテナの積み付けは国鉄時代から変わらずフォークリフ トで行われており、その積み付け検査も人による検査となっています。フォークリフトは 人の操作によって行われます。その際どうしても積み付け不良などが発生してしまうこと があります。列車として本線を走る前に事前に積み付け検査が行われ不良箇所がないこと の確認をします。しかし、その点検は人の目に頼るものが大きく、とても大変な作業です。 しかも貨物列車の編成は長いもので26 両編成があり、すべて 12 フィートのコンテナを積 載すればひとつの貨車に5 個積載されますので 26 両編成であれば 130 個の積み付け検査 をしなくてはいけません。そして駅のフロント社員は、多いときには1 日 10 本近くの列 車の積み付け検査を行います。しかも昼夜を問わず行っており、場合によっては過密スケ ジュールの中、タイトな時間で点検を行わなくてはいけないこともあります。人の目によ る点検だけとなれば非常に大変な作業だということが想像できると思います。冒頭述べま したが人は必ずミスをする、ヒューマンエラーを発生させます。そんな中、積み付け検査 が人だけに頼っている検査でいいのか、考えなくてはいけません。人間ですから見落とす 危険性もあります。しかもその見落としが大きな事故を発生させ、社会を揺るがす事件に 発展する可能性があるのです。それは絶対にあってはなりません。そこで今回積み付け不 良を人の目によるものではなくハード面で対策ができないかの検討をすることにしました。

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53 積み付け不良には緊締装置の金具やピン、錠といった箇所の不良や隅金具のツイスト式、 ダボ式、ツイスト式の不良、アンカーの乗り上げ、コンテナ開扉など様々なものがありま す。 5 アンカー乗り上げ 今回はアンカー乗り上げに焦点をあてて取り上げることとします。通常、コンテナが貨 車に積み付けされるとき緊締装置部分にコンテナのアンカーが差し込まれ錠が飛び出し固 隅金具 ダボ式 ツイスト式 12 フィートコンテナ コンテナ貨車に5 個積載した場合 正常な状態 アンカー乗り上げ状態 ア ン カ ー 緊締装置

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54 定されます。そのことでコンテナと貨車が機械的に固定され車両の揺動等で落下等しない ようにするものです。しかしこの緊締装置の錠を開錠しないままコンテナを積み付けたり、 緊締装置の開錠が不十分なときにコンテナを積み付けると乗り上げが発生します。これは コンテナを貨車に乗せたときに錠がロック位置のため、この部分に乗り上げてしまうから です。コンテナと貨車が固定されない状態のことをアンカー乗り上げと言います。ほかに も錠が突出していない状態などの荷役不良もありますし、積み付け不良には様々なケース があります。その中でアンカー乗り上げは、揺動などでコンテナが落下してしまう可能性 があり非常に危険な要因だと言えます。 6 防止対策の検討 どのような形でアンカー乗り上げの検知をすればいいのか?コンテナが貨車に積み込 まれ、その後、人によって積み付け検査が行われています。前提条件としては貨物駅を出 発して本線を走らせないことが絶対条件です。そうなるとまずはコンテナホームで停車し ているときにアンカー乗り上げを検知する案、次にコンテナホームから着発線に移動する ときにアンカーの載り上がりを検知する案、そして着発線で発車する前に載り上がりを検 知する案の3 つの案がありますが、着発線で発車前にアンカーの乗り上げを検知しても荷 役作業をやり直す時間がないですし、検知装置を取り付ける箇所が線路内となれば制約さ れた中での設備となるので現実的でありません。従ってコンテナホームで停車していると きに装置を使って検知するか、コンテナホームから着発線の移動中に検知する方法の2 つ しかないことが様々な状況から考えられます。その中で、今回は自動的に検知するという ことを考えれば、コンテナホームから着発線に移動するときにアンカーの載り上げが検知 できれば本線を走る前に手直しができることになるので、この形で検知できる装置の検討 をすることとしました。 7 過去の発生件数 では実際にどれくらいのアンカー乗り上げが発生しているのか確認しました。平成 28 年度に関東支社管内で調べたところアンカー乗り上げの事象が4 件発生しています。内訳 は以下のとおりです。7 月に東京貨物ターミナル駅、9 月に隅田川駅、10 月に新座貨物タ ーミナル駅、12 月に東京貨物ターミナル駅で発生しています。様々な箇所で発生し、また 同じ駅でも繰り返し発生していることがわかります。全国を見てもアンカー乗り上げが発 生しており関東支社の事象を含めると28 年度の 1 年間に 12 件も発生しています。月に 1 回は発生している計算となります。まだ大きな事故事象にはなっていませんが、大きな事 故にいつなってもおかしくありません。一つの要因がいくつもの要因と重なり取り返しの つかない事故が発生するのです。ハインリッヒの法則で述べられているように1 件の重大 な事故・災害には29 件の軽微な事故・災害があり 300 件のヒヤリハットがあるとされて います。このことからもわかるように様々な要因が重なり重大な事故や災害が発生するの

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55 です。 8 高さを考慮した検知 まず取り掛かったのは、実際に積み付け不良を確認することでした。どの程度アンカー が載り上がっているかの確認をすることとしました。緊締装置に載り上がっていれば貨車 とコンテナに隙間があることは予測していましたが実際に確認できたことはアンカー乗り 上げ状態のとき貨車とコンテナの離隔は 30 ㎜程度空くということでした。目視でも容易 に浮いていることが確認できました。積み付け不良は常に 30 ㎜離れるかわかりませんが コンテナの高さが変わるという視点から貨車とコンテナの高さを計算し、コンテナ上部の 高さを決めることで確認ができないか検討しました。 コンテナには様々な形式があります。12 フィートコンテナ 19D19F19G(以下 19 系 といいます。)では2500 ㎜、12 フィートコンテナ 20B20C20D20Eは 2600 ㎜の 2 種類 の高さがあり、まずは2500 ㎜の 12 フィート 19 系コンテナで検証することとしました。 貨車の高さは設計上、レール面から1000 ㎜の設計となっており、12 フィート 19 系コン テナの高さは2500 ㎜であることから、その高さを合わせた合計は 3500 ㎜になります。そ の高さ付近に検知装置を取り付けて高さの測定ができないかの検討に入りました。 実際に使用している電車線の支持物であるコンクリート柱や鉄柱に装置を取り付ける ことで測定は可能でないかと考えました。原理は線路側面の 3500 ㎜(貨車の高さ+コン テナの高さ)+α(乗り上げの高さ)からからレーザーを照射してコンテナの高さの位置 を確認するということでした。3500 ㎜+α上にレーザーを照射すればアンカーに乗り上げ が起きていなければ通常遮ることはありません。しかしアンカーに乗りあがっていればレ ーザーの照射が遮られ不良箇所が検知されるという仕組みです。しかしながら車両の構造 などを調べた結果、貨車の車輪の減り具合や各部品の摩耗などが考慮されており設計上で レール面から1000 ㎜であっても 10 ㎜程度の誤差があるということがわかりました。また コンテナを乗せた貨車は荷物1tに対して1㎜程度下がるという設計上の計算がされてい ます。その数字を当てはめると例えば貨車に40tの荷物が載ってしまえば 40 ㎜下がると いうことになります。12 フィート 19 系コンテナがアンカーに乗り上げて発生した 3500 ㎜+乗り上げの高さが 30 ㎜が発生してもコンテナ重量などによって高さが低くなり想定 していたアンカー乗り上げ高さに届かず検知できないことになります。 今回検討した側面から高さの確認をするということは高さが一定でなければ検知でき ないということがわかりました。コンテナの荷物は常に中身が変わり重量が変わるわけで すから当然コンテナの高さは一定ではなく今回検討した側面からの高さを元にアンカー乗 り上げの確認をすることができないことがわかりました。

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56 9 コンテナの幅を考慮した検知 では次に何があるのか。横からの高さがダメであれば別の視点はないのか?そこで今度 は横からではなく違う面から検知ができないか検討することにしました。それは車両を上 空から確認してコンテナの位置を確認ができないか検討に入りました。先ほども述べまし たがアンカー乗り上げの際に 30 ㎜ほど隙間が空くことをヒントに検討に入りました。鉄 道の設備は車両限界や建築限界といった厳しい制限の中、設備がつくられています。そこ で目をつけたのがコンテナの縦の寸法です。 コンテナの縦の寸法は2450 ㎜であり 12 フィートコンテナすべてが同じ数値であること でした。最初に検討した横からの高さではコンテナの種類が2 種類あり統一した検知が難 しかったですが、今回はコンテナの縦の幅を使うことで 12 フィートコンテナすべての検 知が可能となります。そして 2450 ㎜の幅を考慮して検知する方法は以下のとおりです。 線路の図書(わかりやすい線路の構造)を参考にコンテナ下部側で隙間が生じればコンテ ナが傾斜して上部と下部の位置が変わってくることを考えて縦の位置が変わることが理論 3715 2500 1000 (貨車の高さ) コンテナの種類 コンテナ貨車

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57 上、検知可能であることがわかりました。建築限界の計算式を引用することによってアン カー乗り上げの際についた傾斜(傾き)を計算し、アンカーの乗り上げの際のA が求めら れるのではないかと考えました。そのコンテナの傾斜で用いる計算式は次のとおりです tanθ=c/a=A/b によって A=b×c/a=2500×30/2450=30.6 ㎜と出ます。このようにして 30 ㎜の隙間が下部で起きた場合に上部での移動量が A 30.6 ㎜発生することがわかります。 そのことを考えて装置を取り付けるとしたら次のようになります。実際の使用している電 車線の支持物であるビームを利用してコンテナ上部の確認をできる装置を取り付けること です。ビーム上に検知装置を取り付けて上部からレーザーを照射してアンカーが載り上が っているかどうかを確認する方法です。この方法は正常にコンテナが積み付けされている 場合は作動せず、アンカーに乗り上がりが起きている不良状態のときに検知します。すな わち 2450 ㎜(コンテナの幅)+α(アンカー乗り上げに伴う移動量)の箇所にレーザー を照射することによってレーザーの照射が遮られることで検知することができます。 しかしながら現地での実車を確認するとこれも採用することができませんでした。構内 で行われている入換えの確認をしたところ車両の揺動が想像以上に大きいことでした。車 両にどれくらい揺動が発生するかなどの確認を行った結果、走りだしたときには、ほとん ど揺れは見られませんでしたが 10 両近く引き上げた頃にはかなり大きな揺れが見られま した。そのことで走り出した最初の車両部分は、ある程度精度が保たれた値の検知ができ るかもしれませんが車両の後ろに行くにつれて正確な値の検知ができないことです。車両 の揺動によって左右に振られ 2450 ㎜+α(アンカー乗り上げに伴う移動量)以上に数値 が出てしまい、㎜単位のシビアな数値を管理するうえでは非常に難しいことがわかりまし 2450

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58 た。今回の考えた原理は「上部からコンテナの位置を検知する」でしたが静的には可能で すが動的になると検知の精度を欠く結果となりました。 10 共通の課題 二つの検討をしていくうえでさらに大きな課題が見えてきました。それは軌道の問題で す。車両は必ずレール上にいます。ではレールは常に一定の状態であれば問題ありません。 ですがすべての線路に言えることですが、常にまっすぐな線路はあり得ないということで す。線路自体も左右の高さである水準変位やレールの高さの高低変位があります。そのこ とでもわかるようにレールの高さも一定ではないのです。ですから㎜単位の管理を確認し ようとしてもかなり厳しいことがわかってきました。 11 新たな検知方法 ではコンテナの高さやコンテナの横の移動量でアンカー乗り上げの検知ができないの であればまったく違う方法を考えなくてはいけません。そこで着目したのが、画像認識に よる検知方法です。画像認識は近年、精度があがってきています。解像度の高い撮影機器 が一般的になり、質の高い画像データを得ることが容易になったことに加え、携帯電話に は標準的にカメラが内蔵されるようになり、世の中の画像データは日々増加しています。 コンピュータの高性能化や大容量記憶媒体が普及したことで、画像データを有効に活用す るため、画像処理技術は目覚ましい成長を見せています。防犯や医療、福祉、製造、メン テナンス、流通、エンタテイメント等、様々な分野で注目されています。 そのことからカメラを設置して画像認識によるアンカーの乗り上げを検知できないか の検討をすることにしました。この設置方法も現在、使用している電車線の支持物、コン クリート柱や鉄柱の側面にカメラを取り付けることで画像認識することができます。実際 にアンカーの乗り上げが目視で確認することができるので画像確認によってアンカーの乗 り上げが確認できるようになります。 そこでどのような方法があるのか検討すると2つの案を考えました。1つはエリア侵入 検知による方法、もう一つが画像認識とマッチングパターンによる方法の2つの方法を検 討することとしました。 12 検知エリアを設定した画像認識 まず一つ目の案のエリア侵入検知による原理は、映像の中に検知エリアを設定しコンテ ナが一部でも侵入した場合に異常を検知する方法です。検知実現には、検知アリアの背景 の一定性や車重の沈み込みによる未検知、偶発的な鳥、雨、雪などの映り込み、車両の搖 動や跳ね等による誤検知など課題は多いですが実際に実証することによってどの程度の精 度が出せるかなど検討の余地はあると考えます。実証にあたっては既存の監視カメラ等の 侵入検知の仕組みを応用できることから早期の実証実験が行えると考えます。

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59 13 マッチング手法を用いた画像認識 2つ目の案が画像認識とマッチングパターン(以下、画像マッチングという。)による 検知方法です。画像マッチングは、検知したい箇所の正常画像をテンプレートとして用意 し、検査対象となる画像との差異により異常を検知します。その為、積付け不良時に明確 な差異が現れると検知することが可能になるというわけです。案1に比べ鳥などによる誤 検知発生状況が少なくなります。それからカメラ設置箇所が案1に比べると低く容易にメ ンテナンスできます。この案で大きな課題は、アンカー乗り上げの形状の抽出等の画像認 識ロジックについての新規開発が必要になるということです。検討用のデータを収集しな がらソフト開発をしますので時間がかかります。両案にいえることですが入換する車両の 変化する走行速度と認識精度の整合性が必要となり雨、雪、曇り、光等の影響など現地の 状況により検知が難しいところもあります。

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60 14 画像認識の課題 今後の課題として実際の貨車にアンカー乗り上げを発生させたその状態を何度も検証 する必要があります。それから画像認識からの検知をするうえで今までのアンカー乗り上 げ不良時の様々な状態を収集することが大切であり、どのようなケースがあったか把握す る必要があります。実車を使って多くの不良箇所のケースを確認、実証を繰り返すことに よってアンカー乗り上げ防止の糸口がみつかるはずです。実証確認は、下記のような設置 方法で実証を行います。 案1 案2

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61 長所 短所 両案の課題 案1 エリア侵入検知に よる方法 ・既存監視カメラ等の侵 入 検 知 の 仕 組 み を 応 用 できる。 ・案2比べ、検証開始ま での準備期間が短い。 ・車両重量の沈み込みや振 動による高さの位置の変 動に弱い。 ・コンテナ上部の降雪、ご み等で誤検知する可能性 がある。 ・コンテナ形状(高さ規格) の変更の応用が難しい。 ◆変化する走行速度 (最大25Km/h)と認 識精度の整合性が必 要。 ◆雨、雪、曇り、光等 の影響については、現 地状況により検知が 難しい。 ◆走行中のアンカー 乗り上げ状態をつく り検証が必要。 ◆運用手順の明確化 (パトランプ、メール 送信など追加機能の 検討) ◆カメラ設置、撮影条 件等の妥当性の検証 が必要。 案2 画像認識と パ タ ー ン マ ッ チ ン グ による方法 ・人による確認箇所と同 位 置 で あ り ロ ッ ク 異 常 の撮影解像が明確。 ・案1に比べ鳥などの誤 検 知 状 況 の 発 生 が 少 な い。 ・画像の位置補正等が可 能 で あ る た め 重 量 に よ る 沈 み こ み 等 の 影 響 が ない。 ・高所設置でないためカ メラ工事、故障等のメン テナンスがし易い。 ・ロック部形状の抽出等の 画像認識ロジックについ て新規開発が必要。 ・ロック部形状の(特徴) 抽出がし易いようにロッ ク部の塗色などの定期的 メンテナンスが必要。 各案の比較と課題

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62 15 マーキングによる精度向上 またこれ以外にも貨車とコンテナの両端にマーキングすることによって画像認識の精 度をあげる方法もあるのではないかと考えています。例えば四角や丸型といったマーキン グをつけて正常の状態であればその形がそのまま写りますが、アンカーに乗り上げている 貨車とコンテナでは隙間が空くことによって形が構成されなくなり、その差異で検知でき るのではないかと考えました。このマーキングは蛍光塗料や褐色性の良いものを使えばよ り精度の高い画像となりアンカーの乗り上げ判断ができるのではないかと考えます。貨車 には塗布できる箇所が限られていますのでこの方法も実際に検証が必要となります。最初 に述べましたが検知装置を取り付ける箇所は屋外ですので天候や時間帯(光の加減)、入換 え速度、照明の設置や画角の調整など様々なことをさらに検証しなければいけません。 今後多くの実験、検証をしていくことでアンカーの乗り上がった列車を検知する仕組みが 作り上げられ安全な貨物列車が出発していきます。 16 今後の展開 今後の展開についても少し述べたいと思います。この検知方法が確立されれば、コンテ ナホームから引きあげられた入換車両が着発線に向かう際にアンカーの乗り上げが発生し た場合でも異常を検知することができます。検知後すぐにコンテナホームへ戻し荷役作業 の手直しができるようになります。列車として出発する前に貨物駅構内で未然に防げると いうことです。これはアンカーの乗り上げが本線で走ることがなくなり安全で安定した輸 送を提供できるようになるはずです。本テーマの「アンカー乗り上げの列車を出発させな いために」私たちは常に様々なことに挑戦し続けることが大切です。そして安全な輸送を 提供し続けることでお客様の信頼を得てお客様が安心して荷物を預けてくれるそんな会社 にしていかなくてはならないのです。そして近い将来には、システム化などが進み携帯端 末やタブレット端末に情報が送信されアンカーの乗り上げがあった場合にはすぐに駅社員 が対応できるようなシステムが構築されるのではないでしょうか。

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63 17 最後に さらにこの方法を用いることにより、今後の可能性についてです。この画像認識をさら に発展させ将来的にはアンカー乗り上げの他にも緊締装置の金具やピン、錠といった箇所 の不良、隅金具のツイスト式、ダボ式、ツイスト式の不良、コンテナ開扉や扉のロック状 態、コンテナの破損検知も行うことが可能になると思われます。積み付け不良は昔から発 生している同種事故です。鉄道の事故事象は、新たに発生するよりも繰り返し発生する事 故が多く起きています。まさに歴史は繰り返されてきました。JR 貨物でも6つの特定事 故に指定されているコンテナ開扉のハード対策の実現もできるのではないでしょうか。こ れからの鉄道貨物輸送もIoT や AI、自動化などの最新技術を取り込むことによってさらに 発展させ、社会に大きく貢献できる会社にしていかなくてはなりません。人からシステム へ変更することで人為的ミスがなくなり大幅な事故事象の減少につながるはずです。鉄道 貨物輸送は日本にただ一つの会社であり、今まで培ってきたノウハウをさらに蓄積し、そ して新技術を取り込みながら大きな世界へ羽ばたいていければと考えています。私たちは 10 年、20 年先を見続け将来JR 貨物がどのように進化して進んでいくのかを常に考えなが ら向かっていきます。 未来のイメージ

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