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段差を有する外ダイアフラム形式 CFT 柱梁接合部パネルの弾塑性挙動
池田 竜輔 1.はじめに 兵庫県南部地震(1995 年)において,多くの鋼構造 建築物は柱梁接合部の完全溶込み溶接部近傍に重大な損 傷を受けた1). そのような被害を防止するため,完全溶込 み溶接が不要な外ダイアフラム形式柱梁接合部に着目し た研究がこれまでに多く行われ,さらに施工性の向上を 図った分割外ダイアフラムが提案されている2). 近年では,多くの超高層建築物において,柱にコンク リート充填鋼管(以下,CFT)が採用されている.また, 東北地方太平洋沖地震(2011 年)での津波被害を受け, 耐衝撃性能の向上を目的として,CFT の需要は増加する と見られる.外ダイアフラム形式柱梁接合部は内部に突 起物がなく,コンクリートの充填に際して有利である. 実際の設計では,機能性や経済性の観点から,柱の両 側に取り付く梁のせいが異なる場合も少なくないが,分 割外ダイアフラムを用いれば,梁せい差にも容易に対応 できる.柱に中空角形鋼管を用いたそのような接合部パ ネル(以下,段違いパネル)については,既に研究が行 われている3).また,実際の建築物の梁上には多くの場 合,スラブが取り付いている.既往の研究において,中 空角形鋼管柱の場合,パネルをスラブを含めて拡大した 段違いパネルとして耐力を評価できることが示されてい る4).しかしながら,柱にCFT を用いたそれらの接合部 パネル関する研究は行われていないのが現状である. そこで本研究では,スラブの影響も含めた,段差を有 する外ダイアフラム形式CFT 柱梁接合部パネルの力学 性状を明らかにし,耐力評価法を構築することを目的と する. 2.実験概要 2.1 試験体概要 図1 に試験体形状の一例,表 1 にシリーズ I の試験体 一覧,表2 にシリーズ II の試験体,表 3 に鋼材の機械的 梁1:BH-300 × 120 × 6 × 12 (SN490B) 柱:□-200 × 200 × 9 (BCR295) 梁2:BH-225 × 120 × 6 × 12 (SN490B) スリット (5mm) 2700 14 00 80 40 12 0 120 45° BH-300 × 120 × 6 × 12 (SN490B) □-200 × 200 × 9 (BCR295) 外ダイアフラム詳細 頭付きスタッド f13 h=60 @100mm D10 @100mm (SD295) 120 12 0 40 12 0 45° 85 10 00 11 00 14 00 2700 3000 外ダイアフラム詳細 図 1 試験体(左図:No.2,右図:No.5) 表 1 試験体一覧(シリーズI) No. (BCR295)柱 (SN490B)梁1 (SN490B)梁2 外ダイアフラム(SN490B) Dd b (mm) コンクリート 圧縮強度 (N/mm2) 載荷方法 td (mm) (mm)hd (mm)Bd (mm)a 1 □-200 × 200 × 9 BH-300 × 120 × 6 × 12 BH-300 × 120 × 6 × 12 12 40 120 120 0 36.0 繰返し 2 BH-225 × 120 × 6 × 12 75 36.5 3 BH-150 × 120 × 6 × 12 150 37.9 4 36.8 負側単調 表 2 試験体(シリーズII) No. (BCR295)柱 (SN490B)梁 外ダイアフラム(SN490B) 床スラブ スラブ筋 (SD295) コンクリート圧縮強度 td (mm) (mm)hd (mm)Bd (mm)a (mm)ts (mm)Bs (mm)Ls (N/mmCFT2) (N/mmスラブ2) 5 □ -200 × 200 × 9 BH-300 × 120 × 6 × 12 12 40 120 120 85 1000 2700 D10@100 40.2 20.8 ※ td:外ダイアフラム板厚,hd:外ダイアフラムせい,Bd :外ダイアフラム端部幅,a:外ダイアフラム出寸法 ts:床スラブ厚,BS:床スラブ幅,LS :床スラブ長さ67-2 表 3 鋼材の機械的性質 部位 鋼種 板厚・公称径(mm) ヤング率(N/mm2) 降伏応力(N/mm2) 引張強さ(N/mm2) 破断伸び(%) I 外ダイアフラム 梁フランジ SN490B 11.9 207,000 351 503 24.8 梁ウェブ SN490B 6.2 202,000 398 531 20.7 角形鋼管 BCR295 9.0 192,000 371 432 32.8 II 外ダイアフラム 梁フランジ SN490B 12.1 181,000 358 528 41.3 梁ウェブ SN490B 6.5 202,000 399 546 33.9 角形鋼管 BCR295 9.0 197,000 404 445 36.2 スラブ鉄筋 SD295 9.4 189,000 354 515 25.5 性質,表4 にコンクリートの機械的性質を示す.試験体 数は5 体であり,2 期に分けて実験を行う. ⅰ)実験シリーズⅠ(段違いパネル) 実験変数は左右の梁の梁せい差および載荷方法とす る.No.4 は No.3 と同一の試験体であるが,載荷方法を 負側単調載荷とする.なお,以下では,梁せいの大きい 方の梁を梁1,小さい方の梁を梁 2 とし,両側に梁が取 り付く部分をパネル1,片側のみに梁が取り付く部分を パネル2 とする. ⅱ)実験シリーズⅡ(スラブ付き) スラブが接合部パネルに与える影響を調査する.鋼管 柱や梁の断面形状はシリーズI と同一であるが,直交梁 の有無や外ダイアフラムの詳細は異なる.また,本試験 体は文献5)の完全合成梁の条件を満たす.なお,以下では, スラブが圧縮を受ける場合を正曲げ,引張を受ける場合 を負曲げとする. すべての試験体は接合部パネルが柱・梁に先行して降 伏するように設計されている. 2.2 載荷および計測概要 載荷装置を図2 に示す.制御は両側の梁回転角bq が等 しくなるように保持した状態で層間変形角Rにより行い, No.1~3,5 は R= ± 0.005,0.01,0.02,0.03,0.04rad 油圧ジャッキ (500kN) 18 00 ピン ローラー ピン 面外移動 拘束材 2700 A 正面図 A 断面 + - - + 図 2 載荷装置 表 4 コンクリートの機械的性質 部位 No. (day)材齢 圧縮強度(N/mm2) ヤング率(N/mm2) CFT 1 45 36.0 27,500 2 52 36.5 29,300 3 66 37.9 28,200 4 71 36.8 30,000 5 69 40.2 32,200 スラブ 5 41 20.8 23,300 ※外ダイアフラム・梁フランジ・梁ウェブ・ 角形鋼管:JIS5 号 図 3 計測項目と定義 接合部パネル g pQ R R bq bq V1 V2 dL (a) 全体パネル pg pQ pQ p2Q p1Q p1Q p1g p2g db1 db2 dc dc の振幅で各2 サイクルおよび R= ± 0.05rad で 5 サイク ル載荷したのち,正方向に装置の限界に達するまで載荷 する.No.4 は図 2 の負側に単調載荷とする. 左右の梁せん断力b1Q,b2Q は油圧ジャッキに取り付け たロードセルにより測定する.層間変形角R は左右の梁 端および柱頭・柱脚で計測した変位を用いて算出する(図 3).パネルせん断変形角pg はシリーズI ではパネルの対 角変位より,シリーズII では 4 点で計測した水平および 鉛直変位を用いて算出する.図4 に段違いパネルの応力 状態と定義を示す. 3.実験結果 3.1 パネルの履歴性状 図5 にパネルのせん断力pQ とせん断変形角pg の関係 を示す.No.1~3,5 ではいずれの試験体でも急激な耐力 低下は見られず,紡錘形の履歴性状を示している.いず れの試験体でも各振幅の1 サイクル目に比べて 2 サイク ル目の方が塑性化後の剛性,最大耐力ともに小さいが, これは鋼管の充填コンクリートやコンクリートスラブの 損傷の影響であると考えられる.段違いパネルでは,梁 せい差が大きい試験体ほどパネルの変形量が小さい.こ れは梁の耐力が相対的に低いため,層間変形角に占める 梁の変形分担が大きくなり,かつ鋼管壁の局部変形が大 dU 図 4 段違いパネルの定義 (b) パネル 1,2
67-3 -1500 -1000 -500 0 500 1000 1500 -10 -5 0 5 10 -10 -5 0 5 10-10 -5 0 5 10 -10 -5 0 5 10 -10 -5 0 5 10 図 5 パネルせん断力pQ -せん断変形角関係pg pg( × 10-2rad) pQ(kN)
(a) No.1(標準型パネル) (b) No.2(Ddb=75) (c) No.3(Ddb=150) (d) No.4(Ddb=150) (e) No.5(スラブ有)
-2 -1 0 1 2 -1500 -1000 -500 0 500 1000 1500 -2 -1 0 1 2 きくなるためである.No.1 のパネルの変形量が正負で対 称でないのは,R=0.05rad 振幅時で計測に不備が生じ, 左右の層間変形角を対称に制御できなかったためであ る.No.4 については載荷終了まで耐力低下は見られず, No.3 の負側と概ね同等の挙動を示した.また,No.5 の スラブ付き試験体においてR=0.04rad 振幅以降,載荷途 中で剛性がわずかに上昇している.これはスラブが負曲 げを受ける際に柱フェイスから10~20mm 程度離間した 後,正曲げを受けることで再び接触し,スラブとしての 耐力を発揮するためであると考えられる. 3.2 パネル耐力の実験値 表4 に各試験体の降伏耐力pQy,全塑性耐力pQp,最 大耐力pQmaxを示す.ここで,降伏耐力・全塑性耐力の 実験値はそれぞれ,初期剛性の1/3 接線剛性点,0.35% offset 点である.段違いパネルでは,梁せい差が大きな 試験体ほど耐力は低くなる傾向が見られるが,各試験体 の正負で明瞭な差は見られない.スラブ付き試験体の場 合,材料特性の違いから直接比較することは難しいが, 標準型パネルと比較して,降伏・全塑性耐力で5% 程度, 最大耐力で15% 程度上昇する.降伏・全塑性耐力の上昇 幅が小さいのは,スラブ付きの場合,コンクリートスラ ブの損傷によって,パネルの塑性化が早まるためである. 3.3 パネルの変形量の比較 図6 に段違いパネルのパネル 1 と 2 の変形量の比較を 示す.図の縦軸はパネル1 と 2 のせん断力p1Q,p2Q,横 軸はせん断歪p1g,p2g である.いずれの試験体でも,パ ネル1 に比べて,パネル 2 はほとんど変形しておらず, パネル1 のみが部分的に降伏していることがわかる. 図7 にスラブ内鋼管のせん断歪とパネルゾーンのせん 断歪の比較を示す.図の縦軸は左図の歪ゲージの位置に 対応し,横軸はせん断歪である.歪はそれぞれの平均値 であり,各載荷振幅のピーク時のみを○でプロットして いる.スラブから支圧を受けるにも関わらず,段違いパ ネルと同様にスラブ内の鋼管はほとんど変形していなこ とがわかる. 3.4 パネルの崩壊性状 図8 に実験後のパネルの状況の一例を示す.鋼管部に おいてパネル1 のみが大きくせん断変形していることが 確認できる(図8(a)).また,パネル部の充填コンクリー トは正負いずれの加力時でも,圧縮を受ける外ダイアフ ラム近傍を起点として,ひび割れが生じていることがわ かる(図8(b)). -4 -2 0 2 4 80 15 0 42 .5 42 .5 15 0 図 6 パネル1 と 2 の変形量の比較 (b) No.2(Ddb=75) (c) No.3(Ddb=150) 図 7 スラブ内鋼管のせん断歪 -2 -1 0 1 2 (c) No.4(Ddb=150) 表 4 各試験体のパネル耐力実験値 No. Ddb (mm) 正側加力時 負側加力時 pQy (kN) (kN)pQp p(kN)Qmax (kN)pQy (kN)pQp p(kN)Qmax 1 0 1007 1119 1269 967 1087 1251 2 75 823 1033 1141 848 997 1162 3 150 698 918 1050 754 914 1063 4 - - - 694 859 1109 5 スラブ有 1049 1206 1480 924 1193 1470 p1Q,p2Q (kN) p1g,p2g ( × 10-2rad) :パネル1 :パネル2 せん断歪 ( × 10-2rad) (b) 充填コンクリート
+
- -+
(a) 鋼管パネル部 図 8 パネルの崩壊性状(No.2) スラブ内鋼管 パネルゾーン歪67-4 Dq b1M b2M cQU cQL パネル1 パネル2 db2 Ddb db1 kx Dq Ddb d b +t s/2 db ts/2 図 9 パネルの崩壊機構(鋼管パネル+ 接合部) (d) スラブ付き接合部 パネルの崩壊機構 (a) パネル全体崩壊機構 (機構E) (b) 正側パネル部分崩壊機構(機構PA) 表 6 パネル耐力の計算値と実験値の比較 No. Ddb (mm) 正側加力時 負側加力時 pQpg (kN) pQpc (kN) (kN)pQpe p pe pc p Q Q pQpc (kN) (kN)pQpe p pe pc p Q Q 1 0 992 1119 0.89 992 1087 0.91 1109 2 75 877 1033 0.85 891 997 0.89 -3 150 774 918 0.87 799 914 0.87 -4 - - - 795 859 0.93 -5 スラブ有 1130 1206 0.93 1130 1193 0.94 1117 (a) 機構 E,PA (b) 機構 PB (c) 正側パネル部分崩壊機構 (機構PB) 図 10 充填コンクリートの抵抗機構 (c) スラブ有 4.パネルの全塑性耐力算定法 4.1 崩壊機構 図9,10 に崩壊機構を示す.図 9(a),10(a) は加力方向 によらず,全体パネル(パネル1+2)の鋼管が塑性化し, 全体パネルで充填コンクリートがアーチ機構を形成する パネル全体崩壊機構(以下,機構E),図 9(b),10(a) は正 側加力時に,パネル1 のみで鋼管が塑性化し,全体パネ ルで充填コンクリートがアーチ機構を形成し,かつ外ダイ アフラム接合部が塑性化する機構(以下,機構PA)であ る.図9(c),10(b) は負側加力時に,パネル 1 のみで鋼管 が塑性化し,パネル1 で充填コンクリートがアーチ機構 を形成し,かつ外ダイアフラム接合部が塑性化する機構(以 下,機構PB)である.図9(d),図 10(c) は床スラブ付きパ ネルを床スラブを含めた圧縮側の応力中心位置(スラブ 厚の中央)まで拡大した段違いパネルの部分崩壊機構と みなす機構である.なお.算出仮定については割愛する. 4.2 耐力の計算値と実験値の比較 表5 に段違いパネルの各機構の計算値,表 6 に計算値 と実験値の一覧および比較を示す.また,表6 中のpQpg とは本報の機構E に加えて,充填コンクリートの耐荷機 構に鋼管フランジの拘束によるアーチ機構を考慮した文 献6) のパネル終局耐力である. 段違いパネル試験体はいずれの場合でも,パネル部分 崩壊機構を呈する結果となった.すべての試験体で計算 値は実験値を1 割程度過小評価している.一方,本提案 式に鋼管の拘束によるアーチを付加したpQpgは標準型パ ネルであるNo.1 の実験値と概ね一致している.よって, 過小評価の一因として,鋼管の拘束による充填コンク リートの耐力上昇を考慮していないことが考えられる. 5.まとめ 本研究では外ダイアフラム形式CFT 柱梁接合部パネル を対象として,以下の知見を得た. 1) 段違いパネルおよびスラブ付きパネルにおいて , 安 定した紡錘形の履歴が得られた. 2) 段違いパネルとすることでパネル耐力は標準型パネ ルと比べて低下する傾向が見られた.また,スラブ 付きパネルは標準型パネルに比べて耐力が上昇した. 3) 段違いパネルおよびスラブ付きパネルに対して,崩 壊機構を仮定し,全塑性耐力算定式を誘導した. 4) 耐力計算値は実験値を1割程度過小評価するものの, 実験結果の傾向と概ね一致した. 参考文献 1) 日本建築学会近畿支部鉄骨構造部会:1995 年兵庫県南部地震鉄骨 造建築物被害調査報告書,1995.5 2) 松尾真太朗 他:分割外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の 弾塑性挙動に関する実験的研究,日本鋼構造協会鋼構造論文集, Vol.15,No.59,pp.87-98,2008.9. 3) 松尾真太朗 他:段差を有する外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁 接合部パネルの力学的挙動,日本建築学会構造系論文集,第692 号, pp.1823-1830,2013.10. 4) 吉敷祥一 他:床スラブの影響を含めた柱梁接合部パネルの弾塑 性挙動の考察,日本建築学会構造系論文集,第75 巻 第 654 号, pp1527-1536,2010.8 5) 日本建築学会:各種合成構造設計指針・同解説,2010.11 6) 日本建築学会:コンクリート充填鋼管構造設計施工指針,2008.10 db1 db2 db d b +t s/2 表 5 段違いパネルの各機構の耐力と耐力比 No. Ddb (mm) 正側加力時 負側加力時 pQE (kN) (kN)pQPA ppQQPAE pQE (kN) (kN)pQPB ppQQPBE 1 0 992 - - 992 - -2 75 995 877 0.88 995 891 0.90 3 150 1001 774 0.77 1001 799 0.80 4 - - - 996 795 0.80 ※ pQE:機構E の耐力,pQPA:機構PAの耐力,pQPB :機構 PBの耐力 ※ pQpc:全塑性耐力計算値,pQpe:全塑性耐力実験値