近畿大学工学部研究報告 No. 37,2003年,pp.85‑91 Research Reports of the School of Engineering,
Kinki University No. 37, 2003, pp. 85・91
湿式成形法によるアルミナ系セラミックスの焼結特性
生田明彦*深谷保博*山口由高**鈴木裕之***
S i n t e r i n g Pr o p e r t i e s o f A l umina C e r a m i c s U s i n g t h e W e t ‑ s h a p i n g P r ∞
l: e s s
A k i h i k o IKl月比* , Yas 吐 r i r o FUKAYA * , Y o s h i t a k a YAMAGUCHI * * and H i r o yuki SUZUKI * * *
S戸10pSお
In order to app1y 旬 acutting too1, the sintering properties of the compacted alumina ceramics using the wet‑ shapingpr
∞ ,
ess were investigated. The used ceramics were the reactive alumina, the mixed 12mass% of the partially stab出zedzirconia with the reactive alumina (alumina+ 血 ∞ ,
nia)and the alumina with a purity of 99.99% (high purity alumina), and sintered at 1573・1873Kfor 5.4・21.6ksin air. The re1ative density of the sintered reactive alumin and alumina+出'coniawere peaked at 1823 ,Kand stayed∞
m旬ntmore也.an1823K In high purity alumina, it was peaked at 1873K and S'旬yed∞
m句ntmore血.an1873K si.milar1y .
However, the Vickers h訂 白 白s,企acturetoughn邸sand 4‑point bendings廿engthof sintered reactive alumina and high purity alumina were decreased at more也anpeak temperature, respective1y .
At th白time,
the grain size ofboth sintered ceramics was deve10ped more than 2~. From血erω叫t,
itwas shown that the grain size must also be small although it was necessary 白makehigh density for mechanical properties. Key words: wet‑shaping pr∞ess, ceramics, t∞l,alur凶na,zir∞凶a,densi, y t
hardness, grain size, mechanical properties1. 緒言
切削工具には,長寿命化等の要求から高機能材料が用 いられてきた.その一つであるセラミック工具は,主に 鋳鉄の高速切削に使用される等の分野において着実な進 歩を遂げる一方,低靭性の特徴を持つ等の点から利用の 進んでいない分野もある.これら問題に対して,種々の 解決方法が考えられるが,そのーっとして焼結前の成形 体に着目した成形法の改善がある.これまでの一般的な セラミック工具の成形法として,ホットフ。レス, HIP等 が挙げられるが,これまで,あまり着目されていなかっ た成形法として湿式成形法がある.
湿式成形法とは,粉末を溶媒に分散させた泥紫を型に 充填した後,溶媒を排出して成形体を得る方法である.
このことから,一般的に湿式成形法には,混合粉末にお
* 近畿大学工学部機械工学科
近畿大学大学院工業技術研究科
*叫広島大学大学院工学研究科
85
いて均質な分散状態を得やすい,高い成形性を有する等 の特長がある.このょっな利点にも関わらず,これまで 湿式成形法が着目されていなかった理由のーっとして,
従来の湿式成形法は溶媒の排出を透湿性型の毛細管現象 によって行っており,成形体を迅速に得られない点が あった.この点を解決する方法として,泥紫を加圧して 充填し,透湿性型または型内に設置されたフィルタを用 いて迅速に溶媒を排出することにより成形体を得る加圧 鋳込み法がある.よって,この加圧型湿式成形法を用い れば,安価な材料を用いても高性能工具が作製できる可 能性がある.また,湿式成形法の特長から,混合粉末に よる複合化および成形プロセスを繰返すことによる傾斜 化が高い成形性を有したまま迅速に,かつ比較的簡単に 得ることができる可能性がある.
Department of Mechanica1 Engineering, Schoo1 of Engineering, Kinki U niversity
Gradua胞sch
, ∞
10fIndus出alτ凶mo10g y ,
Kinkiu : 国
versity Graduate Sch, ∞
1 of Engineering,
Hiroshima Universi勿86 近畿大学工学部研究報告 No.37
そこで,本研究では,複合化セラミックス工具作製の ために湿式成形法に着目し その基礎的な特性として,
湿式成形法による易焼結アルミナ,高純度アルミナおよ び易焼結アルミナージルコニア混合粉末成形体における 最適焼結条件を明らかにすることを目的とした.
2. 供試材料および実験方法 2.1 供試材料
本研究では,セラミック工具として,最も一般的な材 料のアルミナおよび混合することによりアルミナを強化 できる材料としてジルコニアに注目した.アルミナには 比較材として,昭和電工(株)製易焼結アルミナAl・
160SG‑4 (以下,アルミナ)および工具に用いられる昭 和電工(株)製純度99.995%以上の高純度アルミナUA‑
5105 (以下,高純度アルミナ),また,部分安定化ジル コニアには東ソー(株)製スリップキャステイング用TZ‑
3YS (以下ジルコニア)粉末を用いた.Table 1はこれら 粉末の特性および化学組成を示したものである.なお,
アルミナージルコニア混合体のアルミナには易焼結アル ミナを使用し,ジルコニア混合比は,アルミナの高靭性 化に対して最も効果が高いとされる9...16mass%の中 から1), 12mass%を選択した.
2.2 泥紫の調整方法
泥紫の調整条件をTable2に示す.調整には湿式ボー ルミリングを行い,アルミナおよびアルミナージルコニ
ア混合体の場合,アルミナ製ポットおよびボールを用 い,高純度アルミナの場合,不純物の混入をさけるため ナイロン製ポットおよび高純度アルミナ製ボールを用い て90rpmにて1.8ks回転させた.次に,溶媒として蒸留 水および分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム塩 (東亜合成化学製 アロンA‑6114)を加え, 60rpmにて 79.2ks回転させた.さらに,結合剤としてアクリルポリ マ(中央理化工業製 リカボンドSA‑204)を加え,90rpm にて86.4ks回転させ,泥紫を得た.なお,各材料の混合 比は文献2)より引用した.
2.3 成形体作製方法
成形は,まず得られた泥紫色底部にシート状フィル タ(酢酸セルロース製,厚さ125μm,孔径0.2問1)を設 置した内径24mm,高さ10mmの成形型に5X10・9m3充 填した.この成形型に0.98MPaの内圧を1.8ks間加え,
成形型底部より溶媒を排出させて成形を行った.成形体 は型から離型した後,圧力333Paの真空中で3.6ks間乾 燥を行い,成形体とした.
2.4 焼結体作製方法
得られた成形体は仮焼結を行わず,大気中で,昇温速 度O.06K1s,焼結時間5.4ks一定とし,焼結温度を1573, 1673,1773, 1823および1873Kと変化させて焼結を行っ た.さらに,焼結時間の影響を検討するため,大気中で,
昇温速度0.06K1s,焼結体の相対密度がほぼ一定となる 焼結温度について,アルミナージルコニアにおいては
Table 1 Properties of reactive alumina, high purity alumina and zirconia powder used.
a) Reactive alumina Average
particle size (μm)
0.6
Al203 99.58 b) High purity alumina
Average pa同iclesize
{μm) 1.055
白一 川
c) Zirconia Average
particle size {μm)
0.57
Lg‑Ioss 0.42 Table 2 Conditions of the slip.
Reactive alumina Alumina + Zirconia High purityalumina Ballmilltype 4刈0・7m3Alumina pot 4刈0・7m3Alumina pot 7刈0・7m3Nylon pot
Balltype 制Omm <j>10mm
。
11mmReactive alumina ball Reactive alumina ball High purity alumina ball
Total ball mass (g) 400 400 806
Total powder mass (g) 195 195 394
Solvent mass (g) 75 75 131
Dispersion agent mass (g) 1.8 1.8 3.2
Binder mass (g) 0.3 0.3 0.5
Dispersion til1!~(~ 172.8 172.8 172.8
湿式成形法によるアルミナ系セラミックスの焼結特性
1823K,高純度アルミナにおいては1873K一定とし,焼 結時間を5.4, 10.8, 16.2および、21.6ksと変化させて焼 結を行った.なお,冷却速度はいずれの焼結条件におい ても炉冷とした.
2.5 焼結体の評価
焼結体の基本的評価として,密度測定,組織観察およ び粒径測定を行った.また,機械的性質を調べるため,
硬さ,破壊鞍性値の測定および4点曲げ試験を行った.
密度測定はアルキメデスの原理を用いた水中重量法に よって測定を行った.この時,相対密度算出のために使 用したアルミナの理論密度は3.98Mg/m33>,ジルコニア の理論密度は6.05Mg/m3心とし,アルミナージルコニア 混合体については 両者の混合比率より理論密度を 4. 288Mg/m3として測定を行った.組織はSEMにより破 面および断面の熱腐食面を観察した.粒径測定は断面の 熱腐食面をSEM観察した結果を用い,線分析法により 求めた値から三次元の値を得るため,係数として1.78を 乗じてゆ求めた.また,硬さ,破壊靭性値の測定および 4点曲げ試験については,それぞれJISR 1610, JIS R
1607およびJISR 1601に基づいて行った.
3. 焼結性におよぼす焼結条件の検討
3.1 焼結体密度におよぼす焼結温度および焼結時間の 影響
Fig.1は,湿式成形法を用いて作製した各セラミック ス成形体の焼結体相対密度と焼結温度との関係を示した ものである.この結果より,いずれにおいても焼結温度 の上昇とともに相対密度も高くなることがわかる.アル ミナおよびアルミナージルコニア混合体については,焼 結温度1823Kにおいて,相対密度はそれぞれ約98%お よび約96%でほぼ一定となっている.一方,高純度アル ミナについては焼結温度1873Kにおいて,相対密度は約 97%とほぼ一定となっている.これらのことから,いず れのセラミックスにおいてもほぼ焼結は完了していると
100
(4 r) hZ
一
ωZ@ 唱︒
Z H 6 3 z
Slntering conditions Atmosphere: Alr Heatlng rate: O.06K1s Slnterli1g tlme: 5.4ks
‑0‑Reactive alumlna
可 与Almina + Zlrconia fーコHIghpurlty alumlna
~%-OO
Fig. 1 Relation between relative density of sintered ce‑ ramics出ldsintering temperature.
87
思われる.また,アルミナージルコニア混合体の相対密 度は他のセラミックスと比較してやや低い値を示した が,一般的にアルミナより焼結性の劣るジルコニアの影 響があるものと考えられる.このように,各セラミック スの焼結体密度におよぼす焼結温度の影響については明 らかとなったが,高純度アルミナにおいては,焼結温度 1873Kで、あっても相対密度が完全に一定となっているか 若干の疑問が残る.さらに,アルミナージルコニア混合 体においては,より高密度な焼結体が望まれる点があ る.そこで,さらなる高密度化を検討するためには,焼 結時間の影響を調べる必要があると考えられ,アルミナ ージルコニア混合体については相対密度がほぼ一定とな る焼結温度1823K,高純度アルミナについては本実験に おける最高焼結温度1873Kにおいて焼結時間の影響を調 べることとした.
Fig.2は湿式成形法を用いて作製したアルミナージル コニア混合体および高純度アルミナの焼結体相対密度と 焼結時間との関係を示したものである.この結果より,
相対密度は焼結時間が長くなるにつれ,アルミナージル コニア混合体は約0.4%とわずかに上昇し,高純度アル ミナは約1%と比較的大きく上昇した.これらのことか ら,実用的な焼結時間の範囲で、考えた場合で、あっても,
焼結時間を増すことにより,いずれも若干の相対密度の 上昇が望めるものと考えられる.しかし,本焼結体を切 削工具として使用することを考えた場合,後述するよう に単純に若干の焼結相対密度のみを上昇させることに関 して,機械的性質の面から考慮する必要があると思われ る.
3.2 焼結体組織におよぼす焼結温度の影響
続いて,焼結温度が焼結体組織にどのような影響をお よぼしているかを調べた.Fig.3は各セラミックス焼結 体の焼結温度ごとにおける破面の観察結果を示したもの である.アルミナについては,低い焼結温度1573およ び1673Kで粒界破面はあるが,結晶も成長しておらず綴
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10 20 30S i n t e r i n g t i m e ( k s )
日g.2 Relation between relative density of the sintered ceramics and sintering time.
88 近畿大学工学部研究報告 NJ.37
密化が進行していない.焼結温度が1773Kになると敏密 化が進行し,典型的な粒界破面が支配的となるが,粒界 部に多くの気孔等が観察されわずかに粒内破面も観察 されるようになる.さらに,焼結温度が1823および 1873Kと上昇すると より綴密化が進行して結晶粒径が 大きくなっており,気孔等のほとんどない粒界および粒 内の混在破面となっている.また アルミナージルコニ ア混合体については,微細なジルコニアが観察され,破 面状態はほぼアルミナの場合と同様の傾向を示すことが わかる.一方,高純度アルミナについては,比較的低い 焼結温度1673および1723Kで、あっても粒界破面が支配 的であり,低温で、あっても高い焼結性を持つものと考え られる.焼結温度が1773Kになると粒界破面となり,こ の温度以下では観察されない粒内での気孔が観察される ようになる.さらに,焼結温度が1823および1873Kと 上昇すると,破面状態に変化は少ないが気孔が減少して いる様子が観察される.これらの結果は, Fig.1で示し た焼結温度の上昇にともなって焼結相対密度が上昇した 結果とよく一致し,破面はいずれのセラミックスにおい ても焼結温度1823K以上において優れた焼結組織の形態 を示すことがわかった.
次に, Fig.4は各セラミックス焼結体の焼結温度ごと における熱腐食面の観察結果を示したものである.アル ミナについては,綴密化の進行していく傾向はFig.3と 同様の結果となっているが焼結温度が1823K以上にな ると気孔がほとんど観察されない状態となる.アルミナ ージルコニア混合体についてもアルミナの場合とほぼ同 様の結果となっている.この中で ジルコニアはアルミ ナ中にいずれの焼結温度においても微細な状態でほぼ均 一に分散しており,混合体の良好な分散状態を得やすい
湿式成形法の特徴をよく示している.また,高純度アル ミナについては,ここでも敏密化の進行していく結晶粒 径の成長および気孔の減少傾向はFig.3と同様の結果と なっている.ただしこの場合, Fig.3では不明瞭であっ た未焼結部分が焼結温度1823Kまでは多く観察される のに対し, 1873Kではほとんど観察されない点が挙げら れる.これらのことから, Fig.3においてはいずれのセ ラミックスにおいても焼結温度1873K以上において優れ た焼結組織の形態を示したが, Fig.4の結果を考えあわ せると,アルミナおよびアルミナージルコニア混合体に ついては,同様に焼結温度1823K以上において優れた焼 結組織の形態と考えられるものの,高純度アルミナにつ いては焼結温度1873K以上において優れた焼結組織の形 態になるものと考えられる.
前述したFig.3および、日g.4の結果より,いずれのセ ラミックスについても焼結温度の上昇にともない比較的 明瞭に鍛密化の進行していく傾向がみられた.そこで,
Fig.5は各セラミックス焼結体の結晶粒径と焼結温度と の関係を示したものである.なお,粒径の測定に当たっ ては,粒界が明瞭なものについてのみ実施した.ここで,
アルミナが焼結温度1823K以上において粒径がほぼ一定 になっていると考えられる以外は, 1823K未満のアルミ ナ,アルミナージルコニア混合体および高純度アルミナ において,焼結温度が上昇するにつれて粒径も成長して いることがわかる.この時,それぞれのセラミックで他 の焼結温度では異なる粒径を示すが,本実験における最 高焼結温度1873Kに着目すると,粒径は約2.0~ 2.3凶n でほぼ同様の値となる.また,このような傾向を持つ各 セラミックスにおいて アルミナージルコニア混合体は 他のセラミックスと比較して粒径が小さくなっている.
日g.3 Fracture surfaa of the sin民 間daramiω.
湿式成形法によるアルミナ系セラミックスの焼結特性 89
日g.4 Microstructure of the sin飴 陀d白.rami岱 .
これは,結晶粒の微細化による強化が望める反面,組織 から高温での焼結温度では敏密化していない様子は観察 されなかったものの ジルコニアが一種の焼結阻害因子 として働いたためと考えられ,ジルコニアの添加量につ いては十分な検討が必要であることを示唆しているもの と考えられる.
3.3 硬さおよび破壊靭性値におよぽす焼結温度の影響 Fig.6は各セラミックス焼結体のピッカース硬さと焼 結温度との関係を示したものである.結果より,いずれ のセラミックスについても焼結温度の上昇にともない硬 さも上昇する全体的な傾向がみられた.この傾向は前述 したFig.lの場合の傾向と比較的よく一致している.し かし,高温の焼結温度については若干の違いがみられ る.アルミナについてはその違いはあまりないが,アル ミナージルコニア混合体については,密度の場合,焼結 温度1823Kでほぼ一定の傾向を示すのに対し,硬さは
3.0
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‑{]‑Hlgh purlty .Iumln.
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N窃Z 冒﹄︒
1 % ' o o
Fig. 5 Relation between grain size of sint旬er吋ωC怠rami悶c岱s andsin飴ring旬mperature.
1873Kに至っても約Hvl鎚Oで一定になる傾向を示さな い.また,高純度アルミナについては,焼結温度1773K において約Hv1750でピークをむかえ,それ以上では逆 に焼結温度が上昇するにともない硬さが低下する傾向を 示している.これらのことから 焼結温度が低い領域で は密度が硬さに影響をおよぼし,焼結温度か高い領域で は別の要因が硬さに影響をおよぼしているものと推察さ れる.
次に, Fig.7は各セラミックス焼結体の破壊靭性値と 焼結温度との関係を示したものである.アルミナについ ては焼結温度1873Kにおいてやや上昇するものの,いず れの焼結温度についても破壊靭性値は約5MPa‑mM!程度 でほぼ一定した値となっている.また,アルミナージル コニア混合体および高純度アルミナについては焼結温度 1773Kにおいて上昇し,それ以上ではそれぞれ約4およ び約7MPa・m四でほぼ一定した値となっている.これら
e .
〉 1500 ω ωE 2
1000z
. .
ω. 。
話
。
〉
1 % ' o o
F抱.6 Relation between Vickers h紅 白 白sof sinteredω・
ramics and sin飽~ring 飴mperature.
90 近畿大学工学部研究報告 No.37
のことから,焼結温度1773K以上において靭性に優れた 焼結体が得られるものと考えられる.なお,他のセラ ミックスと比較して アルミナージルコニア混合体にお ける破壊靭性値が低くなっているのは,破壊靭性値算出 のために使用した弾性率の値が現状では不明なため,ア ルミナと同様の値を用いたことによるものと考えられ る.しかしながら,破壊靭性値の定量的な比較はできな いものの,焼結温度との関係については傾向を得られて いると考えられる.
4. 工具への適応性に関する検討 4.1 焼結体の4点曲げ強度
これまでの各セラミックスにおける焼結性の評価か ら,特に焼結温度について考えると,概ねアルミナおよ びアルミナージルコニア混合体については1823K,高純 度アルミナについては1873Kで密度,硬さおよび草現性に 優れる焼結体が得られるものと考えられる.そこで,工 具として特に具備すべき機械的性質として曲げ強さを測 定した.Fig.8はアルミナおよびアルミナージルコニア 混合体については1823K, 高純度アルミナについては 1873Kにおいて焼結した焼結体の4点曲げ強さを示した ものである.結果より,それぞれの値はアルミナ 633MPa,アルミナージルコニア混合体724MPaおよび 高純度アルミナ605MPaとなった.アルミナについては 同様な粉末をホットプレス等で焼結した場合の曲げ強さ 500MPa程度ωと比較して,高い値を示し,湿式成形法 の特徴がよく表れているものと思われる.アルミナージ ル コ ニ ア 混 合 体 に つ い て は ア ル ミ ナ と 比 較 し て 約 100MPa高い値を示し ジルコニアの添加により強化さ れたものと考えられる.また,高純度アルミナについて は他のセラミックスと比較してやや低い値となった.本 研究に使用した高純度アルミナは,高純度のみならず平 均粒子径も1仰n以下の微細粒を使用している.本来的に
はもう少し高い曲げ強さを示すものと考えられるが, 4 点曲げ試験に供した焼結体は前述したように密度,硬さ および靭性に優れると考えられる高い焼結温度条件のも
~- 8
E
Sintering temperature (K)
Fig. 7 Relation between仕acture加ughnessof sintered ceramics and sintering temperature.
のを使用した.しかし,ここでも3.3で指摘したように,
焼結温度か高い領域では密度等とは別の要因が硬さに影 響をおよぼしているものと推察される.
4.2 工具としての焼結体評価
前節までに指摘したように,特に焼結温度が高い領域 では焼結体に影響をおよぼす要因が変化する可能性を示 した.ここでは,それらについて考察するため,機械的 性質におよぽす焼結体の結晶粒径に着目した.Fig.9は 各セラミックス焼結体のピッカース硬さと結晶粒径の関 係を示したものである.この結果から,各セラミックス とも粒径が成長するにつれて硬さも上昇する傾向を示す が,約2J.llll以上になると逆に低下する傾向が見られる.
従来までの報告ではセラミックスの硬さの組織依存性に ついては,あまり活発な論議がなされていないのが実情 であるが,曲げ強さの組織依存性については比較的活発 な論議がなされている.Duckworthによれば,セラミッ クスの気孔率と曲げ強さの関係について式(1)が示され ているの.
σ=σa'exp何万一一一一一一一一一一一一一一一一一一(1) ここで, σ。は気孔率が0%における曲げ強さ, Pは気孔 率, aは材料による定数である.さらに,セラミックス の硬さはヤング率が低くなるほど下がることが一般に知 られており,ヤング率の気孔率依存性は式(1)と同様の 関係を持つことが知られている.すなわち,定性的には 硬さを検討することにより,曲げ強さの検討を行うこと ができると言え,本節で検討しているように,硬さに対 しても組織依存性があることは明らかであると言える.
ここで,
Kn
udsenは強さと粒径の関係について,式(2) のような提案を行っている8)σ =AG-m 一一一一一..~...・H・-一一一一...・H・---・H・...一---・H・...一一--ベ2) この時, Aおよびmは材料による定数, Gは結晶粒径で ある.さらに,これらの中で
り0.5程度と報告されていることからω只,アルミナおよぴ 高純度アルミナについて,曲げ強さを硬さと考えれば,
Fig.9の高温領域における硬さが低下する傾向は定性的
n u n u n u n u n u n u n u n u n u
司 ︐‑ n u e o a U
4
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Reactlve Almlna Hlgh purlty alumlna ZlrCbnla ahimfna
Fig. 8 4 ‑point bending streng仕1of sintered ceramics.
湿式成形法によるアルミナ系セラミックスの焼結特性
変化としてよく一致する.よって これらセラミックス は:焼結温度を上昇させると綴密化が進行することによ り,一定以上の粒成長が起こり,これによって硬さおよ び曲げ強さが低下したことが考えられる.一方, Fig.8 において高強度を示したアルミナージルコニア混合体は 本研究における焼結条件内で、は粒径が約2μm以上に成 長していない.これは,焼結温度の上昇にともない,敏 密化は進行するが ジルコニアが添加されているため,
これが焼結阻害因子となり 粒成長を妨げたことが考え られる.そのため,他のセラミックスと比較して撤密化 していても粒径が小さく,結晶粒の微細化による強化機 構も作用したことにより,高い曲げ強さを示したと推察 される.また,焼結時間を長くすることに対しても,同 様に一定以上の粒成長が起こることが考えられるため,
焼結温度をこれ以上安易に長くすることは好ましくない ものと考えられる.
以上のことより,工具に適用することを考慮した場 合,各セラミックスにおいて級密化を十分行った上で,
特に重要な強度などの機械的性質を低下させない焼結条 件を検討する必要があると考えられる.本研究において は,実験結果より,各セラミックスとも焼結温度1823K および焼結時間5.4ks程度が最も工具としてバランスの
とれた焼結体の得られる条件であると推察される.
5. 結言
本研究では,工具への適用を検討するため,湿式成形 法による易焼結アルミナ,易焼結アルミナージルコニア 混合粉末および高純度アルミナ成形体における最適焼結 条件を明らかにすることを目的とし焼結条件を変化さ せた焼結体の密度,硬さ,粒径および曲げ強さの測定な
らびに組織観察を行った結果,以下の結論を得た.
(1) アルミナおよびアルミナージルコニア混合体につ いては,焼結温度1823Kにおいて,相対密度はそれ ぞれ約98%および約96%,高純度アルミナについて は焼結温度1873Kにおいて,相対密度は約97%とほ
2000
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1.0 2.0 3.0 Grain size (μm)
Fig. 9 Relation between Vickers hardness and grain slZe.
91
ぼ一定となった.また,これらの焼結温度における 組織観察の結果,綴密化し,気孔の少ない良好な焼 結組織となっていた.
(2) アルミナおよび高純度アルミナについては焼結温 度1773または1823K以上の高温領域において,結 晶粒径が約2μ血以上に粒成長し,綴密化は促進され るが,粒成長によると考えられる硬さ,破壊鞍性値 および曲げ強さが低下する傾向が認められた.一方,
アルミナージルコニア混合体はこのような傾向はほ とんど示さず,良好な焼結体が得られた.
(3) 工具に適用することを考慮した場合,アルミナ,
アルミナージルコニア混合体および高純度アルミナ ともに,綴密化を十分行った上で機械的性質を低下 させない焼結条件として,焼結温度1823Kおよび凝 結時間5.4ks程度が最も工具としてバランスのとれ た焼結体の得られる条件であると推察された.
謝辞
本研究は文部科学省の科研費 (15760085)の助成金を 得たものであることを付記し,謝意を表します.
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