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2 .   予備調査

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虫を題材とした描画法の試行

人間教育専攻

臨床心理士養成コース 根 岸 勇 己

1.  問題と目的

虫と人との関係は文化のなかに普遍的にみら れ,心理的にも特別な柄主であるといえる。臨 床心理学の歴史のなかにも,虫が描かれたこと がクライエント理解おより満画法の開発の発端

となった事例もみられた。また,投影法のなか で虫が解釈の対象とされることがあったり,呪 医による原始治療や「虫退治」など,虫あるし、

は虫のイメージを症状や問題とみなした心理療 法がみられたりするなどした。しかし,このよ うな背景のなかで心理療法の主題を論じる際に 虫が選ばれることはなく 虫を樹オとした心理 アプローチの可能性は停滞,埋没していたよう に思われる。

そこで,絵を描くことは必要な距離をもたら すこと,虫の描画表現が描き手理解の発端とな った事例に顧み,本研究では臨床的な有用性を 探求することを重調しながら「風景のなかの虫j

を求める描画法を誠子し,臨床場面でし、かに用 いることができるかについて考察する。

2 .   予備調査

E

盟:本描画法の概要や侵襲性についての知 見を得ることを目的とした。

方法:大学院生

50

名を対象に,

4

度に分けて 集団で、おこなった。あらかじめ枠どりをした画 用紙,

1 8

色のクーピーペンシル,4Bの鉛筆,

消しゴムを用意した。描画後に自由記述式のア ンケートにて,風景や描かれた虫の説明,描画

指 導 教 員 今 回 雄 三

後の気持ち, 日常での虫に対する印象に回答し てもらった。

結果と考察:描き手の好まない虫や描き手に とって異性のイメージのある虫が描かれたり,

虫に対してネガティブなイメージを持つ者から 豊かな描画体験の罰百主がみられたりするなど,

日常の虫のイメージは描画内容や描画体験に必 ずしも影響しないことが示唆された。

アンケートには「小さい頃,よくキャンプを しにいったところを思い浮べながら描いた。と ても懐かしい気持ちになった

J

r

退行した。幼 い頃の風景を思い出した」といった,描画体験 が退行を促すように働いたととれる反応や,描 画体験を楽しんでいたとみられる記述もあった。

描画のなかの虫には足などの特定の部位が省 略されている表現がみられた。虫には一部がそ の虫全体を象徴する,鞘敷づける部分を持つも のも少なくないが,虫のこのような性質のもと,

省略したり,いろどりを用いたり,擬人化した りするなどの表現方略が窺えた。これらの方略 は,虫をより自由に,より安全に描画する働き があるように見受けられた。

途中で席を立つ協力者や,描き切ることが困 難だったと明らかに窺えるような描画はみられ なかった。アンケートから,虫を描くことで負 の情緒が滑性化されたようにみられた描画につ いて考察し,侵襲性は表現された虫ではなく,

風去の描かれ方にあらわれるようで,また,侵

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襲│生は虫を描かないことではなく風去にコミッ トメントする姿勢の希薄さをもって宙避される ようであった。

以上のような理由から,非臨床群に施行した 場合,ある程度の安全性があると考えられた。

3 .  

本調査

e l  

El"J :面接で用いるための知見を得ることを 目的としておこなった。

方法:予備調査の協力者のうち描画体験がポ ジティブpだった者

1

名 句

2

歳,女性)。手続き は以下のとおりである。①イ,ンフォームド・コ ンセントおよび予備調査の描画の振り返りをお

こなった。②週に

1

度,計

4

回の描画を用いた 面接を知包した。予備調査に準じた画材を用意 し,筆者による枠づけののち「風景のなかの虫 を描いてくださいJと教示をおこなった。③4 回目の面接を終えたあと別日を設け,振り返り 面接を実施した。

結果と考察:描き手にとって虫を描ーくという ことは, 日常における虫のイメージとは関係な く表現できる過程であることが考察された.0 さ らにそれを表現することで自己洞察的な過程が 生じたりするなど,このたびの描画体験は描き 手にとって虫を描くという目的の遂行ではなく,

虫を通して自己表現をする営みがみられた。

虫を嫌いと語りながら描画過程をポジティブ

l

乙経験するなど,描き手に虫についてのイメー ジと虫の表現によって生じる気持ちとの解離に ついて尋ねたところ,虫がイメージであったか らそれが可能であったと語られた。虫をあっか う手段が描画であることや自由な表現を促すこ とが描画体験や描画内容を寸互倒にしないと考 えられた。

虫には自己像が見出しにくく,また,描き手 の嫌いな人のイメージが投影されるなど,虫は

自己像というよりかは影を託す対象として表現 されやすいのではなし1かと考察し

f

。こ

攻華性を表現しやすいかたちで虫を描くため に,虫に抱く負の要素を強調して描く可能性が 示唆された。面接の枠のなか,そして描画との 蹄住のもとで攻撃性が表現されることは,描き 手にカタノレシスをもたらすと考えられた。

虫についての連想は寸車のストーリーとなっ て語られることが多かった。虫と人との身近さ と,唯一無二な関係性が物語を促したり,物語 を豊かにしたりするように作用する可能性が示 唆された。

4 .  

総合考察

本研究で得られた知見やこれまで、の虫につい ての言及をもとに,①歴史的に影が託されてお り本研究においてもそれと解釈可能な場面が指 摘できた「影j,②いかに虫と携わる者の主観に 働きかける荊主であるかが指摘されてきた「主 観j

Q

猫き手の豊かな語りを引き出す「物語j, 似キのなかで攻撃性が表現されたりするなどの

「カタルシスj,信満画体験によって促されたと とれる記述などがみられた「退行j

5

点につ いて着目し,描画法の題材が「虫jであること の機序として求めた。

5 .  

今後の課題

本描画法を用いた面接の対象者は,倫理面か ら安全性を基準にサンプリングをおこなったた め,また,多くの先人の技法が臨床経験からヒ ントを得て確立されていった背景とは異なるた め,

r

臨床で用いることjが最大の課題といえる。

また調査の対象となった協力者は成人のみで、

あったが,心理発達の観点からの研究も肝要に なっていくように思われる。

参照

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