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日本の大学における正課外教育プログラムの現状

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日本の大学における正課外教育プログラムの現状

大竹 秀和,諏佐 賢司

  【要旨】

学士課程教育の充実を図る上で、正課外教育がその一翼を担うものにすることは 重要な課題である。本研究では、先行研究で手薄だった正課外教育の領域の 1 つで ある正課外教育プログラムの現状を明らかにするため、アンケート調査及びヒアリ ング調査を実施した。その結果、大学の設置形態によって実施されている取組が異 なることが示唆されたほか、正課外教育は未だ正課教育の「補充的機能」、大学教 育の「付帯的活動」としての位置づけに止まっていること等が明らかとなった。ま た、参加者やスタッフの確保等の課題・問題点を解消することが重要であること、

各大学の今後の計画・展望には 2 種類があり、それぞれに応じた対応が必要である ことがわかった。

キーワード:学士課程教育、正課外教育、正課外教育プログラム、

      カリキュラム・ポリシー、教育効果

1 .研究の背景と目的

近年、日本の学士課程教育における正課外教育の重要性に関する認識が高まっている。

日本の大学における正課外教育は、戦後アメリカの大学から導入された SPS(Student PersonnelServices)という「厚生補導」または「学生助育」と訳される理念のもと、各大 学で学生部を中心に展開されてきた。学徒厚生審議会答申「大学における学生の厚生補導に 関する組織およびその運営の改善について」では、正課外教育は単に正課教育の援助手段と して考えるべきものではなく、正課教育が果たすことのできない固有の役割を担当するもの と見るべきとした上で、正課外教育について以下のとおり述べている(学徒厚生審議会 1958)。

学生生活の環境的条件を調整するとともに、学習体験の具体的な場面に即して、各学生の 主体的条件に働きかける教育指導を行うことによって、その人格形成を総合的に援助する ことが正課外の教育の目的であり、このような目的をもって組織的・計画的に行われる大 学の活動が厚生補導業務である。

また、学徒厚生審議会答申は、厚生補導の13領域1 )を示しており、その中の課外教育が

(2)

正課外教育に該当する領域である。

学徒厚生審議会答申以後で、正課外教育に言及している答申には、1963年の中央教育審議 会答申「大学教育の改善について(答申)」(以下、「38答申」)がある。38答申は、大学にお ける人間形成が正課教育を通して行われるものの、伝統的な教育方法のみによっては、学生 の人間形成の課題に十分対処しえない事態となっていることを指摘した(中央教育審議会 1963)。

その上で「学生の厚生補導の中心的機能は、人間形成を目的として行なわれる課程外の教 育活動および大学教育に対する適応を図り修学効果を高めるための活動」(中央教育審議会 1963)であり、「厚生補導の機能を生かし、その効果をあげるためには、大学の教育計画の 一環として組織的計画的にこれが行なわれる必要がある。」(中央教育審議会1963)と正課 外教育の重要性と大学教育の一環として行われることの必要性を改めて述べている。

一方、1960年代から1970年代前半にかけて大学紛争や学生運動が全国的に活発になった。

五藤が「厚生補導を担っていた学生部等の学生対応部署は大学紛争等の対応に追われ、

SPS の理念とはかけ離れたキャンパス環境、教育秩序の維持等に奔走する日々が続いた。」

(五藤2009:431- 2 )と述べているとおり、正課外教育を含む厚生補導は停滞を余儀なくさ れた。

このような停滞を経て、1998年の大学審議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策につ いて-競争的環境の中で個性輝く大学-」(以下、「21世紀答申」)で正課外教育の重要性が 改めて指摘されるまで38答申から35年を要した。21世紀答申では、「幅広い知識と豊かな人 間性をかん養するためには、授業だけではなく課外活動を含む大学生活全般を通じて学生が 学んでいくことが重要」(大学審議会1998)と述べている。

以上のように、1958年の学徒厚生審議会答申から長年にわたって正課外教育の重要性が指 摘されて来たものの、各大学においては38答申が指摘したとおり「正課教育の『補充的機 能』、大学教育の『付帯的活動』」としての位置づけがなされているだけであった。

正課外教育の転換期となったのは2000年の「文部省高等教育局大学における学生生活の充 実に関する調査研究会」による「大学における学生生活の充実方策について―学生の立場に 立った大学づくりを目指して―(報告)」(以下、「廣中レポート」)である。会の座長の名を とって通称廣中レポートと呼ばれるこの報告は「正課教育を補完するものとして考えられて きた正課外教育の意義を捉え直し、そのあり方について積極的に見直す必要がある。」(文部 省高等教育局大学における学生生活の充実に関する調査研究会2000)と指摘した。また、

2008年の「学士課程教育の構築に向けて(答申)」(以下、「学士課程答申」)は、学士課程教 育の学習成果に関して「一般教育や共通教育、専門教育といった科目区分にとらわれること なく、また、学生の自主的活動や学生支援活動を含む教育活動全体を通じて検討されるべき である。」(中央教育審議会2008:12)としている。このように政策文書の指し示すところ は一致している。すなわち、正課外教育の認識を一新し、それを正課教育とともに学士課程 教育を担うものにすることが重要な課題だというものである。言いかえれば、正課外教育が

(3)

学士課程教育において期待されている役割が改めて注目され、それを担うことのできる状況 が整ってきたといえる。

正課外教育プログラムに関する主な先行研究には、百合野(2010)、大竹(2012)がある。

百合野は、正課外教育プログラムについて「クラブ・サークルに所属しない個々の学生に 対して、そのことがもたらすデメリットを少しでも埋め合わせることを期待して実施されて いる、どちらかというと『教育』的性格を有するプログラム」(百合野2010:199)と述べ ている。また、正課外教育プログラムを①建学の精神の理解・大学への帰属意識を向上させ るプログラム、②学生個人への啓発支援、発達支援に資するプログラム、③大学という空間 の構築に資するプログラム、④体験や幅広い教養を身につける機会を提供するプログラムに 細分化できるとしている(百合野2010:199)。

大竹は、学徒厚生審議会(1958)、中央教育審議会(1963、2008)、大学審議会(1998)の 答申並びに廣中レポート、社団法人日本私立大学連盟の報告書(以下、「私大連報告書」)に 基づき、正課外教育プログラムを「クラブ・サークル活動支援を除く、大学によって主催さ れる、学生の人間的成長の機会を提供することを目的とした、教育的側面を持った単位とな らない各種プログラム」(大竹2012:11)と定義した。また、百合野(2010)及び私大連報 告書、立教大学における正課外教育プログラムの実施状況に基づき、正課外教育プログラム を実施する目的を以下の 4 つに分類した(大竹2012:12)。

① 「自校教育目的」(建学の精神の理解・大学への帰属意識向上)

② 「自己・他者理解、発達支援目的」(学生個人への啓発支援、発達支援に資する取組)

③ 「学生参画目的」(大学の教育・研究・社会貢献活動に学生が参画)

④ 「教養・体験目的」(体験する機会や幅広い教養を身につける機会の提供)

大竹(2012)は、社団法人日本私立大学連盟(以下、「私大連」)の加盟大学123校に対し てアンケート調査を実施し、正課外教育プログラムの各取組の外部委託化が進んでいるこ と、同じような取組内容であっても大学によって実施目的が異なること等を明らかにした。

しかしながら、アンケート対象が私大連の加盟大学に限られているため、私立大学におけ る正課外教育プログラムの現状の一部を明らかにするにとどまっている。

要するに、正課外教育プログラムの研究は皆無とは言えないまでも、他のクラブ・サーク ル支援等の領域に比べて、研究が十分とはいえない。また、国立大学及び公立大学における 正課外教育プログラムの現状は明らかになっていない。廣中レポートや学士課程答申が学士 課程教育における正課外教育の重要性を指摘していることを鑑みると、その領域の 1 つであ る正課外教育プログラムに関する研究を行うことは学士課程教育の充実を図る上で意義があ るといえる。

私大連報告書は、正課外教育を①クラブ・サークル支援、②正課外教育プログラム、③ボ ランティア活動支援、④インターンシップ、⑤地域交流を意識した取組の 5 つの領域に分類

(4)

している(社団法人日本私立大学連盟2007: 8 )。本研究は、これらの領域のうち、正課外 教育プログラムを対象とするものである。

本研究では、正課外教育について新たな提言をするのではなく、その前提として、先行研 究において手薄だった日本の大学における正課外教育プログラムの現状を明らかにすること を目的とする。具体的には、全国の国公私立大学を対象とするアンケート調査及びヒアリン グ調査の結果を用いて、①正課外教育プログラムの実施状況、②学士課程教育における位置 づけ(カリキュラム・ポリシーにおけるキーワードの有無、体系化の状況)、③教育効果の 検証状況、④実施上の問題点・課題、⑤今後の計画・展望を分析・考察する、という作業を 試みたい。その意味で、本研究は、正課外教育に関する研究の欠落部分を埋める試みでもあ る。

2 .方法

アンケート調査の対象は、公益財団法人文教協会が発行している『平成25年度全国大学一 覧』に掲載されている国公私立大学のうち、学生募集を停止した大学を除いた772校とし た。調査期間は、2014年 2 月28日から2014年 3 月31日までとし、調査票の送付先と回答者

表 1  正課外教育プログラムの具体的な取組内容

No 取組内容

1 自大学を知るプログラム(自大学に関する講演会、ウォークラリー等)

2 学生参加型プログラム(学生広報、オープンキャンパス、キャンパスツアースタッフ、ホー ムカミングデー企画)

3 ピア・サポート型プログラム(学生による学生支援、学生生活・就職等のメンター制度)

4 学生スポーツ(体育会等)応援

5 新入生を対象とした導入教育としての合宿 6 コミュニケーション実習・ワークショップ

7 国内・海外フィールドワーク(単位付与されないもの)

8 人権、ハラスメント、マナー、モラル向上啓発セミナー 9 課外活動のリーダー養成プログラム、研修会

10 外国人留学生へのサポート(チューター制度、交流会、歓迎会)

11 宗教的プログラム(写経、聖書に親しむ会、座禅、クリスマス行事等)

12 救急救命講習会

13 球技大会(スポーツ大会)・ボディワーク(ヨガ・ダンス等)

14 企業等社会見学

15 芸能鑑賞(落語・演劇・コンサート等)

16 上記以外の講演会・シンポジウム 17 その他の取組

(注)大竹(2012)にある30の取組内容のうち、「国内フィールドワーク」と「海外フィールドワーク」

を「国内・海外フィールドワーク(単位付与されないもの)」にまとめる等の改変をした。

(5)

は、正課外教育を担うことが多い部署である学生支援部局の担当者とした。調査方法は、郵 送による配布、回収であり、回答者の希望があった場合は、調査票の電子データを送信し、

電子メールにて回答を受け付けた。正課外教育プログラムの定義は大竹(2012)のものを用 い、正課外教育プログラムの各取組内容は大竹(2012)を踏まえ、表 1 のとおり分類した。

なお、統計的検定の有意水準は 5 %及び 1 %とした。

アンケート調査の回答を踏まえ、学士課程教育における位置づけや教育効果の検証状況等 の詳細を把握するため、 3 校にヒアリング調査を実施した。 3 校のうち、A大学は地方にあ る国立大学、B大学及びC大学は関東にある私立大学である。A大学には2014年 7 月18日、

B大学には2014年 7 月25日、C大学には2014年 7 月29日に各大学の正課外教育プログラム担 当職員に対してヒアリングを実施した。

3 .結果

3.1 アンケート調査

772校(国立大学:86校、公立大学:84校、私立大学:602校)へのアンケート調査の有効 回 答 数 及 び 有 効 回 答 率 は、 全 体 で は284校(36.8%)、 設 置 形 態 別 で は 国 立 大 学33校

(38.4%)、公立大学39校(46.4%)、私立大学212校(35.2%)であった。

3.1.1 正課外教育プログラムの実施状況

正課外教育プログラムの実施状況と設置形態の関連をまとめたものを表 2 に示す。全体で は、228校(80.3%)が正課外教育プログラムを実施しており、いずれの設置形態でも正課 外教育プログラムを実施している割合が高かった。しかし、設置形態と正課外教育プログラ ムの実施状況の関連を、カイ 2 乗検定を用いて検定した結果、有意差は認められなかった

(P>0.05)。

表 2  正課外教育プログラムの設置形態別実施状況 設置形態 実施している 実施していない 合計

国立 27(81.8%) 6(18.2%) 33(100%)

公立 27(69.2%) 12(30.8%) 39(100%)

私立 174(82.1%) 38(17.9%) 212(100%)

合計 228(80.3%) 56(19.7%) 284(100%)

    χ2=3.49、df= 2 、P=0.17

次に、正課外教育プログラムの実施状況を取組内容及び設置形態別にまとめたものを表 3 に示す。全体で実施割合が高い取組内容は、No.2「学生参加型プログラム」(79.4%)、No.10

「外国人留学生へのサポート」(61.4%)、No.13「球技大会・ボディワーク」(53.5%)であっ た2 )

(6)

また、実施割合が低い取組内容は、全体では No.15「芸能鑑賞」(16.2%)、No.1「自大学 を知るプログラム」(18.4%)、No.11「宗教的プログラム」(21.5%)であった。

取組内容の中には、No.4「学生スポーツ応援」やNo.11「宗教的プログラム」のように、

国立大学及び公立大学では実施割合が低いものの、私立大学では実施割合の高いものがあ る。これを踏まえ、設置形態とNo.4「学生スポーツ応援」の実施状況の関連を、カイ 2 乗検 定を用いて検定した結果、有意差が認められた(χ2=11.62、df= 2 、P=0.003<0.01)3 )

表 3  正課外教育プログラムの取組内容別実施状況

No. 取組内容

設置形態 合計

(n=228)

国立

(n=27)

公立

(n=27)

私立

(n=174)

1 自大学を知るプログラム 4

(14.8%)

2

( 7.4%)

36

(20.7%)

42

(18.4%)

2 学生参加型プログラム 19

(70.4%) 20

(74.1%) 142

(81.6%) 181

(79.4%)

3 ピア・サポート型プログラム 15

(55.6%) 10

(37.0%) 82

(47.1%) 107

(46.9%)

4 学生スポーツ応援 1

(3.7%)

2

( 7.4%)

48

(27.6%)

51

(22.4%)

5 新入生を対象とした導入教育としての合宿 17

(63.0%)

10

(37.0%)

91

(52.3%)

118

(51.8%)

6 コミュニケーション実習・ワークショップ 4

(14.8%)

5

(18.5%)

49

(28.2%)

58

(25.4%)

7 国内・海外フィールドワーク 9

(33.3%)

7

(25.9%)

46

(26.4%)

62

(27.2%)

8 人権、ハラスメント、マナー、モラル向上啓発セミナー 7

(25.9%)

9

(33.3%)

70

(40.2%)

86

(37.7%)

9 課外活動のリーダー養成プログラム、研修会 15

(55.6%)

5

(18.5%)

72

(41.4%)

92

(40.4%)

10 外国人留学生へのサポート 21

(77.8%) 15

(55.6%) 104

(59.8%) 140

(61.4%)

11 宗教的プログラム 0

( 0.0%)

2

( 7.4%)

47

(27.0%)

49

(21.5%)

12 救急救命講習会 11

(40.7%) 14

(51.9%)

82

(47.1%)

107

(46.9%)

13 球技大会・ボディワーク 11

(40.7%) 14

(51.9%) 97

(55.7%) 122

(53.5%)

14 企業等社会見学 9

(33.3%)

9

(33.3%)

61

(35.1%)

79

(34.6%)

15 芸能鑑賞 4

(14.8%)

2

(7.4%)

31

(17.8%)

37

(16.2%)

16 上記以外の講演会・シンポジウム 5

(18.5%)

9

(33.3%)

58

(29.3%)

72

(31.6%)

17 その他の取組 8

(29.6%)

7

(25.9%)

36

(20.7%)

51

(22.4%)

(注)下線太字箇所は、各設置形態または全体で、実施割合の高い取組内容上位 3 つ(同数のものを含む)であることを 示す。グレー網掛け箇所は、実施割合の低い取組内容下位 3 つ(同数のものを含む)を示す。

(7)

3.1.2 学士課程教育における位置づけ

3.1.2.1 カリキュラム・ポリシーにおけるキーワードの有無

カリキュラム・ポリシーに、正課外教育プログラムまたは正課外教育に関するキーワード

(例:「正課外教育」、「課外教育」、「正課外教育プログラム」「課外教育プログラム」など)

があると回答があった大学は、表 4 のとおり全体では228校中42校(18.4%)であり、キー ワードがない大学が多かった。

回答があった大学のうち、特に正課外教育プログラムに関するキーワードがカリキュラ ム・ポリシーにあるという大学は私立大学 1 校であり、その内容は以下のとおりであった。

正課外教育においては、正課外教育プログラム(オリエンテーション、キャンプ等)、正 課外活動(クラブ、サークル等)、キャリア支援プログラムの領域にわたって種々の学 習・体験の機会を提供し、すべての教育目的を達成する事を目指します。

3.1.2.2 体系化の状況

正課外教育プログラムを正課教育のカリキュラムのように体系化しているかについての回 答をまとめたものを表 5 に示す。全体では、プログラム全体を体系化している大学が10校

(4.4%)、個別の取組を体系化している大学が44校(19.3%)であり、体系化していない大学 が158校(69.3%)と最も多かった。

表 4  カリキュラム・ポリシーにおけるキーワードの有無 設置形態 キーワードあり キーワードなし 合計

国立 2( 7.4%) 25(92.6%) 27(100%)

公立 3(11.1%) 24(88.9%) 27(100%)

私立 37(21.3%) 137(78.7%) 174(100%)

合計 42(18.4%) 186(81.6%) 228(100%)

表 5  正課外教育プログラムの体系化の状況 設置形態 体系化して

いる    個別の取組を 

体系化している 体系化して

いない   無回答 合計

国立 1(3.7%) 6(22.2%) 17(63.0%) 3(11.1%) 27(100%)

公立 1(3.7%) 3(11.1%) 20(74.1%) 3(11.1%) 27(100%)

私立 8(4.6%) 35(20.1%) 121(69.5%) 10( 5.7%) 174(100%)

合計 10(4.4%) 44(19.3%) 158(69.3%) 16( 7.0%) 228(100%)

(8)

3.1.4 実施上の問題点・課題

正課外教育プログラムを実施する上での問題点・課題について、228校中64校(国立大学:

9 校、公立大学: 5 校、私立大学:50校)から回答があった。回答の全体像を把握するた め、回答中で 2 回以上用いられていた語を分析した結果、118種類の語が得られた4 )。その うち、 4 回以上用いられていた38語を表 7 に示す。

表 7 を見ると、「学生」(47回)「実施」(21回)「参加」(20回)「プログラム」(15回)と いった、正課外教育プログラムに関連する一般的な語が多く出現していることがわかる。

具体的な問題点・課題に関連すると思われる語としては、「難しい」(11回)「少ない」( 9 回)」「必要」( 7 回)「困難」「差」(各 5 回)といったものが多く出現している。他には、「体系 化」( 6 回)「教育効果」( 4 回)という本研究に関連する語が出現していることが目にとまる。

3.1.3 教育効果の検証状況

正課外教育プログラムの教育効果の検証状況を設置形態別にまとめたものを表 6 に示す。

教育効果を検証している大学は、全体では73校(32.0%)であり、検証していない大学の 方が多かった。

表 6  教育効果の検証状況

設置形態 検証している 検証していない 無回答 合計 国立 10(37.3%) 13(48.1%) 4(14.8%) 27(100%)

公立 3(11.1%) 21(77.8%) 3(11.1%) 27(100%)

私立 60(34.5%) 105(60.3%) 9( 5.2%) 174(100%)

合計 73(32.0%) 139(61.0%) 16( 7.0%) 228(100%)

表 7  頻出38語のリスト

抽出語 出現

回数 抽出語 出現

回数 抽出語 出現

回数

学生 47 多い 7 正課外教育 5

実施 21 必要 7 予算 5

参加 20 学生スタッフ 6 連携 5

プログラム 15 参加学生 6 教育効果 4

課題 12 集まる 6 参加率 4

難しい 11 体系化 6 職員 4

正課外教育プログラム 10 確保 5 全学 4

教員 9 協力 5 大学 4

少ない 9 効果 5 内容 4

時間 8 向上 5 費用 4

取組 8 困難 5 本学 4

検証 7 5 問題 4

行う 7 参加者 5

(9)

表 8  正課外教育プログラムを実施上の問題点・課題の回答例 参加者やスタッフの確保

・実施は必要であるが、参加者が極端に少ないものがあること。

・位置づけが正課外のため、実施スタッフの確保が困難であり、固定化されるケースがある。

日時の確保や時間帯の設定

・全体が参加できる(しやすい)実施日時の確保が難しい。

・広く学生を対象にしようとした時、時間帯の設定が難しい。

正課外教育の体系化や教育効果の検証

・正課外教育について、体系化できていない。また、正課教育との連携や総合的な教育効果につ いて、本学の独自性を含めて検証することができていない。

・正課教育との連携・連続性の保持が困難であること。正課外=任意の取組と捉えられがちであ り、そのため、成果の確認・検証を組織的に行うことの必要性を認識したり、学部・大学全体 で共有することが難しいこと。

参加意欲・意識の差

・学生の参加意識・意欲の差がある。

(注)実際の回答において「難しい」「少ない」「必要」「困難」「差」「体系化」「教育効果」という語 が用いられている部分に下線を引いた。

これらの語が実際の回答においてどのように用いられていたかを確認したところ、表 8 の とおり、「参加者やスタッフの確保」「日時の確保や時間帯の設定」「正課外教育の体系化や 教育効果の検証」「参加意欲・意識の差」に関するものが複数の大学から寄せられたことが わかった。

3.1.5 今後の計画・展望

正課外教育プログラムの今後の計画や展望について、228校中34校(国立大学: 2 校、公 立大学: 5 校、私立大学:27校)から回答があった。実際の回答を確認したところ、表 9 の とおり、「部署、教員、他大学との連携」「地域貢献・地域連携や地域課題の解決」「正課外 教育プログラムの体系化」「学生の主体性の養成」「学生の交流促進」「語学に関する学習相 談や学修支援」に関するものが複数の大学から寄せられたことがわかった。

(10)

3.2 ヒアリング調査 3.2.1 A大学

3.2.1.1 大学の基本情報

A大学は、地方にある大規模国立大学であり、表 1 の取組内容のうち、No.2「学生参加型 プログラム」、No.3「ピア・サポート型プログラム」を実施している。カリキュラム・ポリ シーに正課外教育プログラムまたは正課外教育に関するキーワードの記載はなく、正課外教 育プログラムを体系化していないが、教育効果を検証している。ヒアリング回答者は担当部 署の係長である。

3.2.1.2 正課外教育プログラムの実施状況

A大学では、「学生参加型プログラム」として、学生が大学を活性化させる取組と学生間 の修学及び研究意欲を促進する取組を学生が自主的に行っており、毎年度200名近い参加者 がある。

これらの取組に対して、大学は年度毎に申請を受け付け、選考の上、必要な物品を大学が 購入し、学生達に提供する形の援助を行っており、毎年度報告書を作成するとともに、報告

表 9  正課外教育プログラムの今後の計画や展望に関する回答例 部署、教員、他大学との連携

・部署間で連携を図り、全学的に体系化されたプログラムの策定を検討している。

・教員と連携して、学生のニーズに合った効果的なプログラムを企画・展開できると良い。

・地域社会や他大学との連携を種にしたプログラム展開。

地域貢献・地域連携や地域課題の解決

・大学の方針に地域連携・地域貢献があるので、地域とタイアップした正課外教育プログラムを 展開する予定。

・COC(知の拠点整備事業)を通じた地域課題の解決に向けた地域や企業との対話の場への学生 の参加促進。

正課外教育プログラムの体系化

・2014年度より、キャンパスコミュニティデザイン構想のもと、部署内の情報共有や参加する学 生への情報発信を合同で行うなどの統一や体系化などに向けた動きを計画している。

学生の主体性の養成

・学生の主体性をはぐくみ、特に課題解決能力を高めるようなプログラムが必要であると感じて います。

学生の交流促進

・留学生が多数在籍しているが、日本人学生との交流はあまり盛んではないので、既存の留学生 向けプログラム(イベント中心だが)を再検討したい。

語学に関する学習相談や学修支援

・英語の基礎学力に不安のある学生の学習相談や補習対応を行う。

・語学力向上のための学修支援等。

(11)

会を実施している。A大学における「学生参加型プログラム」は、学生の自主性によって行 われる様々な取組に対して援助をするものであり、教職員は援助対象の選考を行っている。

また、報告書作成の際に自己評価をする項目内に、「今後の学生生活に役立つ経験であっ た」等、満足度に近い項目を設けており、2013年度に実施された17企画のうち、15企画が「非 常に満足している」、 2 企画が「満足している」との結果であった。

「ピア・サポート型プログラム」については、2009年度にピア・サポート室を設立し、設 立時の目標として「学生による学生支援組織」を掲げている。相談内容は特に限定しておら ず、授業のことはもちろん、学生生活全般の相談に対応している。ピア・サポート室設立の きっかけは、ピア・サポートに関する取組が文部科学省の各種GP(GoodPractice)に採択 されていることと、当時の学生支援系の担当教職員の方針によるものであった。

ピア・サポート室には、個別の相談に応じる学生スタッフとして、ピア・サポーターが常 駐している。ピア・サポーターには、学部生だけでなく、大学院生も含まれており、2013年 度に初めて学内公募するまでは学生支援系職員やピア・サポーター学生の個人的なつなが り、いわゆる「口コミ」で募集していた。ピア・サポーターは、雇用契約を結ぶアルバイト として業務に従事しており、学生と関わり、個別相談も受けるため、A 大学は2013年度に 様々なケースを想定したロールプレイ等、計 6 回の学生支援・学生相談に関する研修を実施 している。

ピア・サポート室は、相談をしなくても自由に使えるスペースでもあり、勉強をしたり、

友人と談笑したりという形で使う学生も増えており、2013年度の入室者数は延べ8,761名、

個別相談者数は延べ405名であった。

3.2.1.3 教育効果の検証状況

「学生参加型プログラム」について、A大学では年度毎の報告会の実施と報告書の作成作 業を教育効果の検証の機会としている。報告書には、各取組の自己評価を記載することと なっており、報告会の発表時に、自己評価を他の関係者に客観的に確認してもらう機会とし ている。

「ピア・サポート型プログラム」については、同様に年度毎の報告書の作成を教育効果の 検証の機会としている。報告書の作成にあたっては、単なる活動報告ではなく、様式や論文 の引用方法など、学術論文形式での執筆をピア・サポーターである学生自らが行い、学生達 の手で報告書をほぼ完成させている。ピア・サポーターには大学院生もおり、報告書の書き 方等についても、ピア・サポーター間で指導が行われている。

3.2.1.4 実施上の問題点・課題

「学生参加型プログラム」では、企画のマンネリ化が課題であり、2013年度の採択企画は、

新規企画が 4 に対して、継続企画が13と、継続企画が大半を占めている。「ピア・サポート 型プログラム」については、最も学生数の多いキャンパスのみでの実施となっており、他の キャンパスではピア・サポート室を設けていないことが大きな課題である。

今後、A大学は「学生参加型プログラム」について、学生たちの様々な活動を支える援助

(12)

金制度の見直し等も含め、より学生の自主性を高めることにつながる効果的な学生支援の方 法を、「ピア・サポート型プログラム」については、キャンパス間の差を解消するための方 法を検討していくこととしている。

3.2.2 B大学

3.2.2.1 大学の基本情報

B大学は、関東にある大規模私立大学であり、表 1 の取組内容のうち、No.5「新入生を対 象とした導入教育としての合宿」、No.7「国内・海外フィールドワーク」、No.17「その他の 取組」の 3 つを除く14の取組を実施している。カリキュラム・ポリシーに正課外教育プログ ラムまたは正課外教育に関するキーワードの記載はないが、個別の取組を体系化するととも に、教育効果を検証している。ヒアリング回答者は学生支援部署の担当者である。

3.2.2.2 正課外教育プログラムの実施状況

B大学では、正課外教育プログラムの多くを学生が企画、運営しており、「ピア・サポー ト型プログラム」が正課外教育プログラムの中心となっている。

B大学の正課外教育プログラムは、2007年度にピア・サポートに関連する取組が、文部科 学省の学生支援GPに採択されたことが大きな転換期となった。この取組の学生スタッフと して活動している学生達が中心となり、B大学の各種正課外教育プログラムを企画立案し、

実行している。

学生スタッフの募集は公募制をとっており、2014年度は 1 年生から 4 年生までの計32名が 学生スタッフとして活動している。B大学には 3 つのキャンパスがあるが、キャンパス毎に 学生スタッフがおり、各キャンパスでのミーティングを毎週実施しているほか、 3 キャンパ ス合同のミーティングを定期的に実施している。

2013年度は、教職員中心に運営されるものを含め、75企画を実施し、延べ約5,000名が参 加した。例えば、「学生参加型プログラム」では、キャリアセンターの学生サポーター、図 書館のライブラリーサポーター、オープンキャンパスのスタッフといった取組を実施してい る。これらの取組の学生スタッフの知名度や人気は高く、募集時は選考を行うくらいの人数 が集まっている。

3.2.2.3 学士課程教育における位置づけ

一部の取組については、受講や参加資格に「事前に○○に参加していることが望ましい」

等、基礎的な取組を受講した後、受講できるものを設ける等、体系化している。

3.2.2.4 教育効果の検証状況

「ピア・サポート型プログラム」の学生スタッフを担う学生に、民間企業が開発した社会 人基礎力のテストを年度の初めと終わりに実施し、学生の社会人基礎力の進捗状況を測定し ている。しかし、このテストは取組自体の教育効果を図るというより、学生スタッフを担っ た学生達の成長を確認するという意味合いが強い。

(13)

3.2.2.5 実施上の問題点・課題

最も大きい問題としては、ピア・サポートの学生スタッフを担う学生間の意識の差が大き いことである。やる気のある学生、意識が高く様々な企画を立案する学生と居場所としてな んとなく参加している学生が混在しているため、ファシリテーターとして職員が介入してい る場合もある。また、学生スタッフが年度毎に変わるため、各企画や運営体制の継続性の確 保も大きな課題となっている。学生間での引継ぎがうまくいかず、職員がフォローに回る場 合もある。

今後、B 大学はピア・サポートを中心に様々な取組を行っていることを踏まえ、学生ス タッフとなった学生への教育効果の検証を行うため、学生スタッフのみに実施している社会 人基礎力のテストを、全学生を対象として実施し、結果を比較することを検討している。

3.2.3 C大学

3.2.3.1 大学の基本情報

C大学は、関東にある大規模私立大学であり、表 1 の取組内容のうち、No.4「学生スポー ツ応援」を除く16の取組を実施している。カリキュラム・ポリシーに正課外教育プログラム または正課外教育に関するキーワードを記載し、正課外教育プログラムの体系化するととも に、教育効果の検証を行っている。回答者は、学生支援部局の課長である。

3.2.3.2 正課外教育プログラムの実施状況

C大学では、様々な部署で正課外教育プログラムを実施しており、実施スタッフは職員が 多い。基本的には各取組を企画した部署の職員が実施スタッフを担当するが、フィールド ワーク等、一部の取組は学内から実施スタッフを公募している。

C大学のプログラムでは、「国内・海外フィールドワーク」のようなフィールドワーク系 の取組に、職員が実施スタッフとして学生に同行することが特徴的である。他大学でも フィールドワーク系の取組を実施しているが、C大学のように教員が同行せず、職員が中心 的な役割を担う形で実施するのは珍しい。また、C大学の正課外教育プログラムは、学生相 談と連動する形で、文部科学省の特色GPに採択されている。

さらに、C大学は「学生参加型プログラム」として、オープンキャンパススタッフを実施し ている。学生スタッフは公募制で、学生の認知度も高く、毎年募集定員は埋まっている。運 営は学生にほぼ任せており、中核を担う学生スタッフは、前年度からの継続参加学生が多い。

「ピア・サポート型プログラム」は、キャリアセンターが実施している内定者による後輩 へのキャリア支援、新入生が入学前に参加する合宿の学生スタッフ等が主な取組である。

内定者による後輩へのキャリア支援は自主性が高く、学生スタッフとして様々なプログラ ムを企画・実施している。また、新入生が入学前に参加する合宿の学生スタッフは、プログ ラムの内容がある程度決まっており、学生スタッフは職員と協働しながらファシリテーター 役を務めている。

加えて、C 大学はキリスト教の精神に基づく教育を建学の理念として掲げていることか

(14)

ら、各種クリスマス行事を「宗教的プログラム」の一環として実施している。

他に「その他の取組」に該当するものとして、障がいを持った学生を支援するためのサ ポートスキル修得のプログラムや、図書館の活用講座等を実施している。

C大学が実施している正課外教育プログラムには、毎年度延べ人数で約13,000人の参加が あり、学部学生総数約19,000人のうち、約 7 割が参加している。

3.2.3.3 学士課程教育における位置づけ

C大学では、カリキュラム・ポリシーに、正課外教育プログラムに関するキーワードを記 載し、学士課程教育において、正課教育とならび正課外教育プログラムが重要な位置づけで あることを示している。

C大学では、正課外教育プログラムの体系化の一環として、各取組を目的毎に①大学生に なる、②まなぶ、③学生同士で支えあう、④様々な世界を体感するの 4 つに分類している。

学生が様々な取組をまとめて知ることができるため、興味・関心を持つ取組を自分で選択 し、参加することを可能にしている。また、学内で実施している正課外教育プログラムをま とめた冊子を2005年度より学生に配布している。

3.2.3.4 教育効果の検証状況

各取組の終了時に参加者にアンケートを実施し、次年度の改善の参考としている。しか し、調査項目を踏まえると、参加者の満足度調査という意味合いが強い。

3.2.2.5 実施上の問題点・課題

学生支援部署の中で様々な取組を実施しているが、例えば学生部では、近年危機管理の問 題に忙殺され、個々の取組の検証や見直しに手を付けられていないことが最も大きな課題で ある。

また、各取組の実施スタッフを務める職員は、ルーティンの業務を抱えながら各取組を運 営しているほか、取組の企画・開発に関わる専従職員もいないため、恒常的に人手不足であ ることも課題である。

C 大学では現在、学士課程教育全体のカリキュラムの見直しを行っており、これに合わ せ、正課外教育プログラムの各取組を検証していくことを予定している。また、C大学の正 課外教育プログラムには、大学の理念を具現化するようなものが多く、若手・中堅の職員に 実施スタッフを担わせることで、大学の理念を体感する機会としていくことも課題である。

4 .考察

本研究の成果は、日本の大学における正課外教育プログラムの現状を知り、各大学が今 後、どのように正課外教育プログラムを実施していくかを検討する上で有用ではないかと考 える。具体的な成果は以下のとおりである。

正課外教育プログラムの実施状況について、実施の有無については大学の設置形態による 有意差は認められなかったが、個別の取組内容については「学生スポーツ応援」のように大 学の設置形態によって実施状況に有意差が認められるものがあった(表 2 、 3 )。このこと

(15)

は、大学の設置形態によって、実施されている正課外教育プログラムの取組が異なることを 示唆している。一方で、ヒアリング調査を行った各大学のように文部科学省のGPに採択さ れたことが取組を推進する機会となったり、C大学の「宗教的プログラム」のように建学の 理念と関連させた形で取組を実施したりしている例があることから、補助金や建学の理念と いった要因が正課外教育プログラムの実施状況に影響している可能性がある。

学士課程教育における位置づけについては、カリキュラム・ポリシーに正課外教育プログ ラムまたは正課外教育に関するキーワードがある大学は限られており(表 4 )、正課外教育 プログラムに関するキーワードがある大学は 1 校のみであった。また、正課外教育プログラ ムや個別の取組を体系化している大学も限られていた(表 5 )。さらに、正課外教育プログ ラムを実施する上での問題点・課題として、正課外教育の体系化や教育効果の検証があり、

具体的には「正課教育との連携・連続性の保持が困難であること。正課外=任意の取組と捉 えられがちであり、そのため、成果の確認・検証を組織的に行うことの必要性を認識した り、学部・大学全体で共有することが難しいこと。」という回答があった(表 8 )。

これらのことから、学士課程教育における正課外教育プログラムを含む正課外教育は、38 答申や廣中レポート、大竹(2012)が指摘したとおり、未だ正課教育の「補充的機能」、大 学教育の「付帯的活動」としての位置づけに止まっていると考えられる。

正課外教育プログラムの教育効果を検証している大学は限られており(表 6 )、前述のと おり、正課外教育の体系化や教育効果の検証が問題点・課題として挙げられている。ヒアリ ング調査においても、年度毎の報告会の実施と報告書の作成作業(A大学)、民間企業が開 発した社会人基礎力のテスト(B大学)のように、その検証方法は様々であった。これらを 踏まえると、各大学は教育効果の検証の必要性を感じつつも、検証することができていない か、検証している場合でも手探りで行っていると推察される。

正課外教育プログラムを実施する上の課題・問題点には、①参加者やスタッフの確保、② 日時の確保や時間帯の設定、③正課外教育の体系化や教育効果の検証、④参加意欲・意識の 差があった(表 8 )。ヒアリング調査においても、企画のマンネリ化(A大学)、学生間の意 識の差、各企画や運営体制の継続性の確保(B 大学)、取組の検証や見直しができないこ と、恒常的な人手不足(C大学)という回答があり、アンケート調査及びヒアリング調査に よって明らかとなった課題・問題点を解消することが正課外教育プログラムを充実させる上 で重要であることがわかる。

正課外教育プログラムの今後の計画・展望としては、①部署、教員、他大学との連携、② 地域貢献・地域連携や地域課題の解決、③正課外教育プログラムの体系化、④学生の主体性 の養成、⑤学生の交流促進、⑥語学に関する学習相談や学修支援があった(表 9 )。これら を見ると、①部署や教員、他大学との連携、③正課外教育プログラムの体系化のように、前 述の課題・問題点の解消に向けたものがあるほか、大竹(2012)が分類した正課外教育プロ グラムを実施する 4 つの目的と関連が見られるものがある。具体的には、「自校教育目的」

に⑤学生の交流促進、「自己・他者理解、発達支援目的」に④学生の主体性の養成、「学生参

(16)

画目的」に②地域貢献・地域連携や地域課題の解決、「教養・体験目的」に⑥語学に関する 学習相談や学修支援が関連していると考えられる。

以上のことから、各大学の今後の計画・展望には、課題・問題点の解消に関するものと正 課外教育プログラムを実施する目的に関連するものという 2 種類があり、それぞれに応じた 対応が必要であることがわかる。

5 .今後の課題

今後の課題は大きく 2 点ある。 1 点目は、正課外教育の位置づけの明確化を目指す理論的 研究の実施である。明確化にあたっては、各大学の建学の理念、目的や養成する人材像を踏 まえ、正課外教育を正課教育と同様に体系化するとともに、正課教育とどのように連携させ るかを考える必要があるだろう。本研究では、カリキュラム・ポリシーにおける正課外教育 に関するキーワードの有無を確認したが、正課外教育を含む学生生活を通じて学ぶのであれ ば、ディプロマ・ポリシーに正課外教育を組み込む必要があると考えられる5 )。また、参加 者やスタッフの確保、参加意欲・意識の向上のためには、正課外教育の実施時期も課題とな る。特に、就職活動や教育実習、医師や看護師等の国家試験に重なる時期には正課外教育を 実施しにくいと推察される。

2 点目は、正課外教育プログラムの教育効果の検証方法の開発である。本研究では、教育 効果の検証状況や個別の大学における検証方法を調査したが、汎用性のある検証方法は明ら かにできていない。今後は、正課教育に関連して実施されているアセスメントテストや学校 法人河合塾と株式会社リアセックが共同開発したジェネリックスキルを測定する「PROG

(ProgressReportOnGenericSkills)」テストのような、教育効果を測定するツール等、各 大学が参考とできるような検証方法の検討・開発が必要となろう。

正課外教育プログラムを含む正課外教育が正課教育の「補充的機能」、大学教育の「付帯 的活動」という位置づけを越え、学生生活を通じて学生の人間的な成長を図り、自立を促す 役割の一翼を担うものとなるよう、今後はこれらの課題に関する研究を実施していきたい。

1 )厚生補導の領域として、①入学者選考、②オリエンテーション、③修学指導、④課外教育、⑤適応相 談、⑥記録・調査・テスト、⑦学寮の運営、⑧奨学援護、⑨厚生福祉、⑩保健指導、⑪職業指導、⑫女 子学生の世話、⑬特別指導の13領域が示されている。

2 )アンケート調査では各取組内容を「学生参加型プログラム(学生広報、オープンキャンパス、キャンパ スツアースタッフ、ホームカミングデー企画)」のように記載して実施状況を訪ねたが、本文中では「学 生参加型プログラム」のように括弧内を省略した形で記載する。

3 )「宗教的プログラム」についても、カイ二乗検定を用いて検定した結果、有意差が認められた(χ2 13.71、df= 2 、P=0.001<0.01)。

4 )語の抽出等、テキスト分析には「KHCoder」を用いた。「KHCoder」はフリーソフトウェアであり、

インターネット(URL:http://khc.sourceforge.net/)からダウンロードできる。分析手法等については

(17)

樋口(2014)に詳しい。

5 )例えば、立教大学(2016)のように、ディプロマ・ポリシーに正課外教育を組み込んでいる大学もある。

謝辞

本研究は、平成25年度公益財団法人文教協会研究助成の助成を受けたものである。なお、

本稿は公益財団法人文教協会に提出した研究成果報告書に加筆修正を行ったものである。

引用(参考)文献

中央教育審議会,1963,「大学教育の改善について(答申)」.

中央教育審議会,2008,「学士課程教育の構築に向けて(答申)」.

大学審議会,1998,「21世紀の大学像と今後の改革方策について―競争的環境の中で個性が輝く大学―(答 申)」.

学徒厚生審議会,1958,「大学における学生の厚生補導に関する組織およびその運営の改善について」.

五藤勝三,2009,「第11章学生生活への支援」社団法人日本私立大学連盟編『私立大学マネジメント』東信堂,

431-52.

樋口耕一,2014,『社会調査のための計量テキスト分析―内容分析の継承と発展を目指して』ナカニシヤ出版.

文部省高等教育局大学における学生生活の充実に関する調査研究会,2000,「大学における学生生活の充実方 策について―学生の立場に立った大学づくりを目指して―(報告)」.

大竹秀和,2012,「私立大学における正課外教育プログラムの現状と可能性―日本私立大学連盟加盟校へのア ンケート調査と立教大学との比較から―」桜美林大学大学院大学アドミニストレーション研究科大学 アドミニストレーション専攻研究成果報告.

立教大学,2016,「立教大学学位授与の方針」(https://www.rikkyo.ac.jp/aboutus/philosophy/programs/

objective/purpose/,2016.11.11).

社団法人日本私立大学連盟,2007,「大学生が人間(ひと)として成長するために―正課外教育の重要性の再 認識―」.

百合野正博,2010,「大学における人材育成のキーポイントについての一考察:正課外教育の視点から」『同 志社商学』商学部創立60周年記念号,190-208.

表 8  正課外教育プログラムを実施上の問題点・課題の回答例 参加者やスタッフの確保 ・実施は必要であるが、参加者が極端に少ないものがあること。 ・位置づけが正課外のため、実施スタッフの確保が困難であり、固定化されるケースがある。 日時の確保や時間帯の設定 ・全体が参加できる(しやすい)実施日時の確保が難しい。 ・広く学生を対象にしようとした時、時間帯の設定が難しい。 正課外教育の体系化や教育効果の検証 ・正課外教育について、体系化できていない。また、正課教育との連携や総合的な教育効果につ いて、本学の独自

参照

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