21世紀教養プロジェクト・書評コンクール
その他のタイトル Book Review
著者 高松 ひかり, 高田 紗希
雑誌名 人間健康学研究 : Journal for the study of health and well‑being
巻 4
ページ 101‑103
発行年 2012‑03‑31
URL http://hdl.handle.net/10112/00023279
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世紀教養プロジェクト・書評コンクール】池上彰著『伝える力』
幼少時代、幼稚園からの帰り道、そして帰宅後、
私は毎日「ねぇねぇ、聞いて。今日ね、あのね…」
「それとね、明日はね…」と、今日あったことや明日 の楽しみなどを毎日両親に話していた。母親に、「今 は忙しいからあとで聞くね。」と言われてもお構いな しにずっと話していた記憶がある。こういう経験は、
私以外でもほとんど誰でもしたことがあるのではな いだろうか。「他の人に何かを伝えたい。自分の主張 を他の人に理解してほしい。」一そう考えるのは、
人間が社会的動物である以上当然のことである。
しかし、私たちは大人になるにつれて伝えたいこ とを上手く伝えられなくなる。それは、例えば起承 転結の流れにうまくまとめることができず自分の文 章力に自信を無くしてしまったり、年相応に、もっ と難しい単語や熟語を使って筋の通った文章にしな ければならない、という考えに縛られたりするから だろう。そしてだんだんと人前で自分の意見、主張 などを伝えることにためらいを感じるようになる。
そうではあるが、何とかして「伝える」能力を高め たいと考えている人はたくさんいるのではないだろ うか。
本書は、そのような人のために、最近テレビなど のメデイアで大活躍の池上彰さんが「伝える力」の 高め方について述べているものである。著者は、「伝 える」とは、「話す」ことと「書く」ことの両方を含 み、さらに「聞く」ことも「伝える」ことの一つだ という。相槌を打ったり、返事をしたり、目を見た りあるいは目を逸らしたりする行為も、相手に何か しらのことを「伝える」ことになるからである。こ れらの「話す」「書く」「聞く」行為は言わば「コミ ュニケーション」であるが、では、その「伝える力」
をどのように磨き、高めていけばいいのだろうか。
著者はまず、「伝える力」を培うことから始めるべ きだという。伝えたいことは、自分自身が正確に理 解しておかなければ相手に伝わるはずがないため、
まずは自分自身が理解することが大切である。また、
何かを調べるとき、「学ぼう」「知ろう」という姿勢 にとどまることなく、全く知らない人に説明するに
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はどう話せば伝わるのか、ということを意識するこ とで理解が格段に深まる。このように、常に相手の 立場になって物事を客観的に見ることが大切だと主 張している。
さらに筆者は相手を惹きつけることも重要視して いる。私自身、自分に興味のある話題にはすぐ飛び つく。しかし、稀にそれほど興味があるわけでもな い話題にも関わらず、いつの間にか話の内容に惹き 込まれている時がある。それはおそらく、話し手の 話すリズムや流れ、口調などが聞いていて心地良い からだろう。それだけではない。大抵、話すのが上 手い人というのは、「つかみ」が上手いのである。
では、「つかみ」とは何か。一例えば、ある一つ のエピソードを誰かに話そうとする。その時、その エピソードを時間の流れに沿ってただ初めから話す だけではおもしろくない。そこで、「つかみ」が必要 になる。話の導入部に、聞き手の興味を喚起するた めのエ夫をするのである。「次はどうなるの?」と思 わせることが大切なのだ。この原理を上手く利用し ているのがテレビである。導入部はもちろん、コマ ーシャルの時にもチャンネルを変えられないよう、
さまざまな手を使い、工夫している。このような「つ かみ」によって「伝える力」を高めることができる のである。先ほども少し述べたが、私も実際に「つ かみ」が上手い人の話に惹き込まれ、熱中して聞き 入ったことがあるので、この文章を読んだときは深 く共感したし、思わず頷いてしまうほどであった。
本書を読み進める度にどんどん共感し、頷く回数 が増えていくのが良くわかったが、その中でも私が 最も印象に残り、これから「伝える力」を培ってい く中で気を付けたいと思ったのは、「どの事実を拾 い、どの事実をそぎ落とすのか」という取捨選択の 能力を身に着けることである。言い換えれば、「重要 なこと」と「重要でないこと」を判断する能力を身 に着けるということだ。私は今のようにレポートを 作成するときや、感想文を害くときなどに、ひたす ら同じような内容を繰り返し書いてしまったり、細 かい事実を羅列しすぎてしまって本当に言いたいこ とが何なのかが分かりにくくなってしまったりする ことがよくある。これを避けるためには、著者が指 摘するように謙虚に他人の意見に耳を傾け、視点を 変えることも重要であるが、さらに自分が伝えたい
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ことを見極め、しっかり整理することも重要だろう。
コミュニケーション能力はさまざまな場面で必要 とされている。その能力により業績が左右されるこ とも多々あるだろう。本書は主にビジネスパーソン 向けに書かれたものであるが、学生の私でもスラス ラとあっという間に読み終えることができるくらい 平易な文章で書かれている。ビジネスパーソンには もちろん、社会人になり、プレゼンなどが上手く伝 えられなかったという状況になる前にすこしでも早 く「伝える力」を身に着けるために、社会人になる 一歩手前の学生たちにも是非薦めたい一冊である。
高松ひかり(人
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久石譲著『感動を作れますか?』
「感性」とは何か?そんなことをまず考えさせられ る。
この本の著者である久石譲氏といえば、宮崎駿監 督のアニメの音楽などで知られる日本を代表する音 楽家である。そんな有名で一流の世界にいる人が書 く本なのだから、さぞかし難しいことが書かれてあ るのだろうと思っていた。しかし、そんな先入観は 覆された。
最初に、ものづくりに必要なものとして、久石氏 は「感性」をあげている。そして、「感性」は、今ま での経験の蓄積と直感によるものであるということ が具体的な例を交えながら、分かりやすく述べられ ている。私は以前から、「感性」とは、その人の才能 によるもので、生まれもったものなのではないかと 感じていた。しかし、読み進めていくうちに、「感 性」は経験や知識によって磨かれていくものなのだ ということが分かり、生きていくうえで豊かにして いくことができるのだと気づいた。
私は、今、サークル活動として創作ダンスをして いるため、その活動の中では、ものづくりをしてい ると言えるが、一流の芸術家が考えることが、素人 に理解できるのだろうか?という疑問があった。け れども、そこには驚くほど共感できる部分がある。
まず、アイデアは普段の何気ない行動の中で浮かん でくるというのは、いつも感じていたことだった。
いいものを出そうとしてそのことに集中し、考えれ
ば考えるほど行き詰ってしまう。それについて言及 されていて、共感できる部分を見つけた瞬間、一瞬、
久石氏がとても近く感じられた。そして特に、「二つ 道があると、どうも困難なほうを選んでしまう傾向 がある。」という久石氏の言葉に私はすごく共感を得 た。簡単なほうへ行けば楽であることは分かるのだ が、それよりも、困難を乗り越えて何かを達成した ほうが後に得られる喜びが大きいと考えると難しい 方を選びたくなる。これは、ものづくりでなくとも、
大きな喜びを得たいというのは多くの人が感じるこ とで、普段の生活のあらゆる場面で言えることであ るのではないかと思う。
音楽の仕事について述べられているところは、共 感するというよりも、勉強になるというのが自然か もしれない。音楽についての具体的な内容は、私た ちの生活からはかけ離れているかもしれないが、そ の中の、仕事に取り組む姿勢や、それまでの過程、
他人との関わり方を見ると、なるほど、と思えるこ とがいくつもある。この本の中に、「コラポレーショ ンが自分の可能性を広げる」という項目がある。私 は以前、創作ダンスでソロの作品を創ったことがあ った。そのとき、一人で自由に創ることのしんどさ を思い知った。いつも複数のメンバーで作品を創る ときには比較的色々なアイデアが浮かんできて面白 いと思えるのだが、ソロになると、自分の思いのま まにできる反面、一度止まると進めなくなる。つま り、行き詰ってしまえばそれまでなのである。そん な経験を久石氏は代弁してくれているかのように、
一人の作業は「矮小化しやすい。」と述べ、コラポレ ーションによって、「一人でする仕事とは違った自分 の可能性を広げていく楽しさ、面白さがある。」と記 述している。これは、ものづくりに限らず、どんな 仕事をするにもあてはめられることであると思う。
この本では、音楽と言う視点だけでなく、人間そ のものをとらえた視点で語られていることがいくつ もある。特に、久石氏の視線は、自分は一流の人間 だ、というような上から目線ではなく、常に、私た ちと同じ目線で、あるいは、下から救いあげるよう な目線である。「失敗の原因は必ず自分のうちにあ る」という項目があるように、久石氏からとても謙 虚な姿勢を感じられる。そして、読者は考えを押し 付けられることもなく、身近な感覚でうなずくよう
21世紀教養プロジェクト・書評コンクール
に読み進めることができる。それは決して、作者が 最初から完璧なのではなくて、失敗などを繰り返し、
間違いや過ちに気づき修正するという試行錯誤をし てきたからこそ語られることなのだろうと感じた。
これも、「感性」を磨くということにつながっている のだろうと思う。
私は、久石氏がこの本を通じて、これからやるべ きことについて私たちにメッセージを送っているよ うに感じた。例えば、「感じる心が正常に機能してい れば、人間は人として誤った方向には傾かないと僕 は信じる。」ということや、「よりよいところを目指 すことをやめてはいけない」という言葉には、現代 人に警鐘を鳴らしているようにも感じ取れる。そし て、人間は常に変化しているもので、その変化の中 で模索していかなければならないということも書か れてある。何かで成功した経験があったとしても、
そのときと同じことを次の機会にもしていてはうま くいかないということである。そのためにはやはり、
「感性」を磨くということが必要になってくるのでは ないだろうか。
私はこの本を通じて、自分がこれからよりよい道 を歩いていくためには、様々な経験をして、自分の 中に吸収していくこと、そして同じ場所にとどまら ず、積極的に行動し、変化を恐れないことが必要で あると改めて感じた。
自分はこの先どのように行動し、どういう姿勢で 他人と関わり、生きていくべきなのか。そんなこと を考え、模索するための「感性」を、この本を読む ことで磨いてみてはどうだろうか、と私は推奨した いと思う。
高田紗希(人
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