九州工業大学研究報告(工学)No.40 1980年3月 125
状態推定精度の判定関数とその電力系統への応用
(昭和54年10月5日 原稿受付)
情報工学教室高田等
情報工学教室大学院内野英治
電気工学教室高田茂夫
AJudging Function of the State−Estimation Accuracy
and Its Application to the Electric Power System
by Hitoshi TAKATA Eili UCHINO Shigeo TAKATAABSTRACT
We need the accurate estimates of all the state variables to perform the optimal controI policies. A great number of papers have been presented on the state estimation problems for that purpose, however there are quite few on judgement of accuracy for the resulting estimated values. Therefore, we present in this paper the judging function which judges whether the estimated values are close enough to the true values or not.
The remainder of the paper is devoted to the accuracy problem of the transient state estimation of a synchronous machine system with an infinite bus. We have obtained the splendid results by the computer simulations.
1.序論
システムを最適制御するためには,すべての状態量を できるだけ正確に知らなければならない。そのための状 態推定法としては,数多くの論文が提出されている。し
工(『)=f(エ(『), ) (1)
及び,離散形観測系が
〃々=カ(エ(ω) (2)
一 で与えられるシステムについて考察する。
かし,その結果の擬糠判定に関する研究は,ほとん ここで・苫は欲元状態ベクトル・〃は搬元酬べ ど見うけられない。 クトル τ 力はそれぞれ・ヵ次元及び勿次元ベクトル値 そこで,本稿では,状態推定の精度判定において、そ 関数である。観測は 1,…,玩…の時刻で行なわれ・
の規範となるような関数,言い換えれば描定値が真値 ;・における状態値はエ(ω⇒で襯測値は〃・であ に十分近くなったと判断するための基準となる判定関数 る。
を提案し,それについて考究した。 さて・一般に
最後に,例題として,一鰍限大母線系統の過渡状態 ㌦=〆ならば・臆の関数αこ対してGω=Gω 推定問題に本判定関数を適用した。その結果は十分に満 でなければならない。
足のゆくものであり,これにより本判定関数の有蝋が そこで特に・任意のc1級の関数9(釦))
実証された。 g:1〜〃一→1〜z (1≦1<。。)
を導入すれば,
2.推定精度の判定関数
連続力学系力㍉ 緩σω一誓)諺一雑)緬)(3)
である。ここで,(3)式の両辺の積分の差をG(轟)と定義 llθ(瓦)Il=0 (4)
すれば・ となるこどである。なお,その際観測値に関する観測予 G(工克)全卿一9(副一∫1二∂癬)臨, )詞測誤差}・ついても・
である.よって擬値館関し橘一鋤であれば少な ll〃・一劇=° (5)
くとも, でなければならない。このことから・(4)・(5)式が推定精 Gぼ此)=① 度の判定に寄与することがわかる。
が成立する.即ち識=エ、であるための必要条件は任 よって・次のよう頃みを付けた(正規化)・(4)・(5)式 の2乗和の関数
意のノルムll・llに関して,
ノ。刷一 ・−1∂エ . +1〃・当・ll22llρ(エ・)−9(翻一∬禦τ(司12
・+ll9(釧r・+ll9(エ・−1)ll・+ll£1禦 (3, )4r l2ε+ 庵+∂白
を,判定関数と定義しよう。もちろん判定関数は2乗和 苅(の=δ(の一δ・・, エ・( )=δ(の に限定されるものではない。なお,εは正定数(ε>0) を定義すると,(6),(7)式は
議鰹1鑓:⊇ 元慧力イ:に㌧(〜靭』
従って, 観測系 み=x、(τ々) (9)
ノ泌(々)=0 となる。
が島=品の必要条件であり,ノ。d(〃)が十分0に近づ ただし,〃々は観測周期をτとした時の時刻 々=〃7 で いた時をもって推定値が真値に十分近づいたと判断する の観測量である。
のである。 ここで用いた定数は単位法(p.u.)表示で なお,関数g(エ)の選び方や十分条件に関しては,今
〃=2H/ω=0.0265(H=5)(P.u.)
後に残された課題である。
1)=0.005 (p.u.)
3.電力系統への応用例 几m=1.0(p.u.)
ここでは,例題として同期発電機の過渡状態推定問題 B・=0・8(P・u・)
を取り扱う.無限大母絢、直結した_機の鵠機の動揺 丁=1/60(sec)
特性は・δを負荷角とすると・ である。
〃δ(の+Dδ(r)+P,msinδ(r)=B, (6) (8),(9)式のシステムに対し拡張線形オブザーバー(2)・(3)
で与えられる。ここに,〃は慣性定数,Dは摩擦係数, を合成したときの推定問題に対し・関数9(エ)が次の場合 P,mは最大電気出力, B,は機械入力である。 の判定関数ノ鋤(〃)について考究した。(付録参照)
観測量としては,速度成分
1) 91(エ)=克1十ズ2
〃=δ( ) (7) 2)9、ω=。1+。;
を選んだ・ 3)9,ω=。汁。、品+。1
定常状態では・δ一δ一゜より 4)9、(エ)−1。9(1+。1繍 P・・si・δ・・=B・・ 5)9、ω=si・・1+・…2 ここで,次のような2つの状態量 6)g、(エ)=exp(パ+克1)
s
;6亘 き
零 o o
#
苧
災 言
CASE 1 ^『
め づ 這 ユ CAs 2 )。。
o Tl能〔sεc}
:
0.0 。132 ・.6 1 ・.% L28 1・6・ °・° °・32 °・仙 ゜・96 ・28 1・50 二
1 〔ASE 1 三
こ
Estimation ofエ1( ) E8timation of∫2(τ)
Fi忌1 E8timation ofエ( )in Hunting Regio1㌔Ca8e l and Ca8e 2
≧
_二 三
⊇ 二
ご 二
苔○
ご゜
呂[こ゜
三
:
二
_言 三 弓 ニ
ニ ニ
塁二 二
≧㌻
三 言
こ :三 き 三 CASε2 『 Ω 苔〇 二゜
盲㌣
サ ロ CASE 1 ) 二
丁lHE(SεC) 『
ロ
。.。 。.52 。、仙 。.肪 1.28 1.6。 ・・… 32 °・5勾 ゜・% L28 1・6°
Fi苦1・191(エ). Fi苦1・29・(エ)・
ε。
皇
A o
:23
』d三
:
ε6 皇
CASE 2
〆 『
嵩己 5 ド 』己 口 CAsε1 :
TIHE(SEC) 0
0.0 0.32 0.仙 OIgC L28 1.60 0.0 0・32 0・6勾 0・96 1・28 1・60 Fig.1−3 σ3(エ). Fi苦1・4 gr4(エ).
= 6 善 「 o CASE 2 r c :2 3 コ む ∂ CAsε1 r o
TlHε(SEC) 『
。.。 。ぼ2 、.6、、 。.9b 、.28 1,6。 ・・… 32 ・・仙 ゜・96 1・28 1・°
Fi苦1.5 95(エ). Fig 1−6 gr6(エ).
ス 竺
● CASE 1 = 二
≡
.三 き
§ ㌻ 二 C、、、2
こ 2 丁川E(5EC) 〇 一琴゜・° °・32 °・6q °・96 ・ 1・6°
T V UE O o 8
: 三
Tl能(sεc)
0.0 0,32 0,5q o,96 1,28 1.60
E8timation of x1(τ) E8timation ofズ、(の
Fi1夢2E8timation ofエ(『)in Step−Out Region, Ca8e l and Case 2
N N → 一 「 〔
鴎 8
0 ・
o
_日 8
← o A
) ← oロ ザ
弓 9
工 C^SE 2 「3
0 .
o 詫 撃
o
o ☆ 鼠 o o
自 CASε o
・ → o ・
o
o o o o
O・0 0.32 0.64 0,⊆托i 1.28 1.60 0,0 0,32 0,C叫 0,96 1、23 1.60
Fi跡2.1 ρ1(エ). Fi苦2−2 92(エ).
N N ・ 4
→ 口
巴 8
0 6
↑8 露
這o :、〔
コ リ
つエ C…2 ξ話
o 己 こニ r 写 ⇔ 〔 へ ○ 自 o 〔 呂 CASEユ ・9
コ ロ
o ξ r Tm巨{sεc) o o 〔
0.0 0.32 0,仙 0,96 1.28 1.60 0・0 0.32 0.6∫| 0,96 1、28 1,60
Fi営2■3 93(エ). Fig.2・4 94(エ).
へ
三 コ 8 呂 o o 9:6 ε〔
皇 〔・SE 2 § s
o o
宰 寄
o o
§ §
自 完
o ロ
ニ T臆(・ε・) 二
〇.0 0、32 0、仙 0.% 1.28 1.60 0.O n.ハ2 0.伊↓ 0.96 1ち28 ユ.60
Fi&2−5 σ5(エ). Fi苦2・6 σ6(⑳).
〈Hunting Region>
4.結論 システムの初期真値及びオブザーバーの初期値は,
∫、(0)=_0.327, κ,(0)=0.200 判定関数Jud( )の分母のノルムが0に近くなった場 元1,。1.、ニ0.0 , 姦。1.、=0.0 合には・推定が進んだにもかかわらず・Jud( )の値がか
蒜㌶㌫㌶蹴り・正定値対称::蕊㌶㌔蕊㌶…欝
方によっては,εは不要になるかも知れない。また,3節 C・・e1:C・1−1ニ゜・1∫・y・=1°−5
@ の実験データによればJ。d(〃)の曲線は9ωの種類に
C・・e2:C・1−1=°・1∫・γ・=1°2
@ はほとんど影響を受けていな・・.このことは、本手法を
ただし・∫は2×2単位行列である。 現実の問題に適用する場合には,簡単な関数(例えば,
Case 1は高い推定精度が得られる場合の例であり・ 9(エ)=自エ…(9))で十分であることを示している。
トゴCase 2は・ほとんど得られない場合の例である。判定関 いずれにしても,関数9(⑳)の最適な選択及び, Jud 数のεとしては・ε=1・0を選び・積分としては最も簡単 (ん)=0がるた=エ鳶であるための十分条件などについて な台形公式を採用した。また・ノルムとしては・関数9(エ) の研究は今後に待ちたい。
がスカラー関数であるため,絶対値ノルムを採用した。
参 考 文 献
〈Step−Out Region> 1)高田(等),内野,磯,高田(茂):状態推定度の判定関
システムの初期真値は・ 2慧瓢4欝認竃㌶識欝翻1!も。,h,
エ、(0)=−0.722, ∬、(0)=0.205 Estimation of Transient State of Power System by Discrete Nonlinear Observer . IEEE Transactions on
であり・他の値はHunting Regionの場合と同じものを Power ApParatus and Systems, Vol. PAS−94, No.6,
選んだ。 November/December 1975.
以下}・・C・・e1・Case 2の各場合}・おいて・関数 3!E、㍊窯,。:・写蕊。: S:1:hi職。㍊1蒜
σ1(エ)〜g、(虚)を使った時のノ。ば(r)のグラフを推定状況 power System by Extended Linear Observer。, IEEE と共に示す。Hunting Region Case 1のみd(『)のスケー Transactions on Power ApParatus and Systems・Vol・
ルがC、、e 2のそれの,(・10−1)になっていることに注意。 PAS−96, N・・2・M・・ch/Ap「il 1977・
疏は(付一6),(付一7)式から
付 録
㈱、〕 β・=斑∂謄)・δ・
非線形連続系から線形離散形系への変換 として計算できる。
次のような非線形連続系 疏=〔0 1〕, 九=0 虚(『)= (エ(r)) (付一1)
〔付録2〕
が与えられた時,エ伍.1)=エ( 々十τ)の2次までの
Taylor展開により,(付一1)式は カルマンフィルター形ゲインを用いたオブザ■バー
1⊇ぽω+発(ω ア㍑嘉己述されるシステム
=耐ττ(臨)+芸・∂蒙)・f(エ・) φ。+1−A。・φ。+βκ
全9(工〃) (付一2) 〃κニHκφκ+苑κ と離散化される。 に対するアルゴリズムは,
さらに,(付一2)式は硫のまわりのTaylor展開にお (0)先験値 φ、1。, C、1。を与える。
いて,1次まで考慮すれば, (i)γκを与える。
ぬ+1ニσ(δ向)+∂3豊)(ぬ一工A) (i? 」『κ=(三・κ一1 」6「」〔 κCκ・κ一1ピ+γk〕−1
=∂謄)疏+〔9(疏∂纏司 :鷲隠こll:ご瓢㍍竺1κ一一加〕
全、4ピ品+B向 (付一3) (v)φκ+11κ=・4κφκ1κ+Bκ と,線形離散形系へ変換できる。 (vi)cκ+11κ= 4κcκ1κAI
非線形観測系 (vii)κ=κ+1として(i)へ帰る。
〃、=σ・(∬盈) (付一4) Cll・とγκは任意の正定値対称行列である。
も,(付一2)式とまったく同様に
仇=Hピぬ+九 (付一5)
と,線形化できる。
本文中の例題,(8),⑨式に対する.牟,泓,疏,伽 の計算値は次のようになる。
品+1=9(工力)
一轟+T
m∫2,々一号・・,・一腸m・i・(耐δ・・)+副
T2+一
ム
ムー∂」)=
一9・ 一守・i・(・ +δ・・)+霊
争・,・C・・(・1,・+δ・・)+曇・・,・
+膿m・i・(・1,・+δ・・)一膿 (付一6)
「1一手守…(品δ・・) τ一干・9
手・守τ・,・si・(元1,々十δ。。) 1一弓+;2・君:
一τ・ …(元1,・+δ・・)+手・瑞曇・C・・(元1,・+δ・・)一芸・昔…(f1,・+δ・・)
(付一7)