奈良教育大学学術リポジトリNEAR
バスケットボール競技のゲームについての一考察
(特にドリブル終了時のプレーについて)
著者 岡本 重夫
雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要
巻 13
ページ 21‑27
発行年 1977‑03‑25
その他のタイトル A Study on Basketball Game ― with emphasis on the play after dribbling ―
URL http://hdl.handle.net/10105/6374
バスケットボール競技のゲームについての一考察
*
(特にドリブル終了時のプレーについて)
**
岡 本 重 夫
/体育学教室〕
昭和47年日本体育学会(福岡)大会において,バスケットボール競技の個人技術の中のドリ ブルをとりあげて,熟練者と非熟練者の二群を比較・検討して発表した。これにより熟練者は,
静止した位置でのドリブルの場合も,条件にしたがって前後左右に移動しながらのドリブルの場 合も,手掌とボールが触れている時間が長く,よくボールをコントロールしていることが明らか になり,同様に右手と左手との比較においても殆ど差がないことが認められた。これに比べて,
非熟練者の方は,明らかにボールと手掌が触れている時間が短くて,熟練者に比べて,コントロ ールの悪さが指摘できた。また、右手・左手の差が大きくて,利手とその逆の場合のちがいが,
極めて大きいことから,周囲の状況を見ながら(ボールから眼をはなして)プレーすることをむ っかしくしていることが明らかになった。
今回は,個人の技術としてのドりブルがゲームの場でどのように用いられ,相対する2チーム の中の,勝チーム・敗チームではどのようなちがいがあるか,という点から,只ドリブルを練習 するということから前進して,ゲーム場面で味方チームに有益なドリブルとはどうあるべきか,
という問題について研究した。この結果から,ゲーム場面でのトリプルが,より良いプレーとな る為に具体的な方法や,考え方を明らかにしようと考えた。
本研究は,従来とりあげられたことのない,ドリブルの終了時のプレー・を3グループ・69ゲ ームの中で用いられたドリブル全部について調査した。その結果を,対戦した2チームごとに比 較分析して行った。
方 法
1.対象 奈良県内の高校男子による全国高校選抜大会県予選会のゲーム14,同大会近畿地 区予選大会の予選リーグのゲーム6,同決勝リーグ4の計24ゲームが第1グループ。大学生男 子によるインターカレッジ(学生選手権大会)参加32チームによる1・2回戦のゲーム14,
同大会の決勝リーグに参加を決める4ブロックの決勝のゲーム4,同大会の決勝リーグに出場し た4チームによる決勝リーグのゲーム6,の計24ゲームが第2グループ。高校女子は第1グル ープと同じ大会の奈良県予選大会のゲーム11,近畿地区予選大会の予選リーグのゲーム6,同
* A Study o11 Basketba11Game_witb e㎜pllasis on t止e pIay after dribbling_
** Sbigeo Okamoto {Department of Pbysicol Ed凹。ation,NaI・a Univesity of
Education,Nara)
決勝リーグ4の計21ゲームが第3のグループ,として,合計69ゲームについて調査した。記 録はすべてゲームを見ながら本研究の為に作製した用紙を用いた。
2.調査期間 高校生の分は昭和51年1月〜3月。大学生の分は昭和51年11月。
3.調査内容と手続き (1)対戦する2チームが,ゲーム開始から終了までに用いたドリブルを 全部記録,(2)それぞれのドリブルは,何回床にはずませたか,ドリブル終了時に次のプレーをす るまでに要した時間はどれ位が,の2点をすべて記録用紙に記入した。ついで集計用紙にドリブ ルを種類別に区分して,対戦したチームごとに集計し,更に2チームの集計を併記する為の記録 用紙に,ゲームの前半・後半・合計,の3種類の記入をしたものを資料とした。とりあげたゲー ムは,前述の69ゲームを各グループごとに更に3段階に区分して資料を集計・整理して検討を
加えた。
結 果 と 考 察
1 使用されたドりブルの数と時間による性質のちがい 各ゲームにおいて相対する2チームの プレイヤーによって使用されたドリブルの全体の数と,それぞれのドリブルの終了時にドリブラ ーがどのように次のプレーへ移ったか,をまとめたのが第1表である。3つのグループ別に,左 に勝チーム,右に敗チームを言己入した。1チームの左端は,前後半を通して行われたドリブルの 全体の数,第2列は,全体の中で,ドリブル終了時に殆どボールを保持することなく次のプレー
/シュート・パス)に移った数であり,第3列は,ドリブルの終了後ボールを保持して1秒以上 時間が経過してからプレーした回数を示している。表を見て考えられることは次の諸点である。
(1)勝チームよりも,敗チームの方が1ゲーム中にドリブルすることが大学男子の場合には,
非常に多く,24ゲーム中,22ゲームに見られる。また高校男子の場合と,高校女子の場合は,
それほど偏らないで約半分位は勝チームにより多くのドリブルがみられる。この差は,それぞれ の技術の水準がちがうことが原因と思われる。つまり,一バスケットボールのゲームは,他のボー ルゲームと同じく,常に攻める技術と,守る技術の争いであり,高い水準のゲームになるほどそ の防御の方法は,変化に富み,速度を増し,攻撃するチームもこれに対応する為のいろんな手段,
方法が要求されるものである。現行の規則によれば,ゲーム中ボールを得たチームは,30秒以 内にシュートが行われなかったり,あるプレイヤーが,ボ■ルを5秒以上持ちつゾけたり,バッ クコート(守るべきゴール側のコートで全体の半分)でチームが10秒以上ボールを保持したな どの場合には,規則に反した(バイオレーション)ものとして,相手チームにボールが与えられ る為に時間の制限内にボールを進めたり,シュートにまでもちこむことを求められるわけである。
(2)ゲーム中に,ボールをとめずに円滑に前方へ進める為には,そのチームのメンバー相互の 間に高いパスの能力が必要なのはいうまでもない。しかし実際には,相手チームはそのパスの連 続を防害してボールを奪取することにつとめるし,それがむつかしい時には,何とかしてパスを 遅らせることに努力する。そこでパスが妨げられた時にはドリブルが用いられるが,そのドリブ ルにも妨害があり,ドリブルを続けることもむっかしくなると,ドりプルをやめる。そしてドリ ブルを終了した時,つまり保持したボールをどれだけす早く次のプレーにむすびつけるかが問題 となる。第1表の2行目は,それぞれのチームが1ゲーム中にドリブル終了時に,すぐ次のプレ
一22一
第 表
Nω
高 校 男 一子 大 学 男 子 高 校 一女 ・・子・
勝チ 一 ム
敗チーム勝チ 一 ム
敗チーム月歩チ ーム 敗チ 一 ム
1
203 172
31 191 14546
1168 162
6170 163
13 1 165 13728 178 143 35
2
196 179
17144 127
17 2I43 129
14 161146
15 2 1O183
18124 77 47
3
98 93
5148 116
32 3152 137
15200 i63 37
3129 124
5l16
12145
4 152 124 28 147 93
544 198 182
16219 175 44 4 184 123
61222 188
345
117 98
19159 136 23
5189 170 ユ9 199 164 35
5178 146
32183 148 35
6
165 127 38 183 150 33
6162 139 23 201
17130 6
12899 29 86
4145
7
179 164
I5209 194
15 7144 143
1208 192
16 7 161135
26134 93
418
93 70
2386 68
188
141138
3176 170
68 140 95 45 95
5936
9
151143
8120 9五 29 9 166 160
6177 174
3 9158 136 22 124
97 271O
I53 135
18278 213 65
1O135 135
O153 144
9 1O120 103 126 105
2111 P2
172 P70
104 W4
68
W6103 P26
50 T5
53
V111 O2
153 P26
146 P22
74
185
P63 173 P56
12
@7
11
160 127
33118
7543
13
1ユ3 98
15106 74
32 13143 133
10165 156
914
149
Q111 123 P714
26 R97
191
QIg1
141 D1653
50
T38
14
2161
P54.4132 Q028
9 P33
192 Q575
185 Q332
7
Q43 1624 1308 316 1556 1147 409
x I50.8 122.4 28.4 156.5 118,1 38.4
x
154.4 144.99.5
183.9 166.6ユ7.4
X 147.6 118.9 28.7 141.5 104.3 37.215
153 125 28 179 147 32
15197 145
52155 I27 28
12203 173 30 198 156 42
16
i66 144 22 166 133 33
16135 97
38173
l1558
13218 193
25170 126 44
17 219 184 35 254 220 34
17153 122
31187 150
37 14193 153 40 213 174
3918 161
143
18226 190 36 旦8 214 158
54 191125 66
15207 I68 39 I45 117 28
19
145 124
21 301268 33 699 522 175 706 517 189
16229 209 20 187 143 44
20 143 116 27
351174 177 x
174.8 130.5 43,8 176.5 129.3 47.3 17180 159
21223 197
26987 836
151i477 1132 345
19162 162
0196 193
31230 1055
17.51136 913 223
マ 1−64.5
139.3 25,2 246,2 188.7 57.520 183 183
0208 200
8 T 205.O五75.8 29.2・
189.3 152.2 37.221 141
95 46 137 102 35
21170 164
6251 236
15 18174
13539 156 130 26
22 163 113
50 157123 34
22142 142
O169 167
2 19158 114 44 186 143 43
23 186 153
33 138109 29 23 189 189
O212 207
5 20212 172 40
181140
4124
151I22
29206 169
3724 186 186
O203 200
3 21215 162
53196 134 62
641 483
158638 403 135 1032 1026
61239 1203 36 759 583 176 719 447 I72
一をした回数(ノーキープのプレー)が行われた回数である。単なる数の上での多小はそのま㌧
ゲームの結果に影響を与えるとは考えられないが、ゲーム中防御チームの防ぎ方によっては妨げ られて思うように次のプレーこ移りにくい状態におかれることが多い。 (3)3行目は、一連の トリプルを終了してボールを保持したプレイヤーが、次のプレーに移るまでにボールを持ったま
㌧1秒以上を経過した回数を集計したものである。
以上の3つの点から表を見ると1ゲーム中に、ドリブルが使用されるチームが良い結果を得る 書1」合いが多いように考えられ、またトリプル終了時のノーキープのプレーを多用するチームも良 い結果に結びっくように表の上からは考えられる。また、1秒以上キープしなければ次のプレー に移れないことが多いことは、ゲーム中円滑なボール扱いに欠けるように思われるが、これらに ついて分析・検討した結果では、以上の3つの点においては、勝チームと、敗チームの間には、
有意差を認めることはできなかった。つまり、ゲーム中には、いかにうまくポールが動いていて も、それが勝敗を決定する大切な要素にはなっていない。ということが明らかになった。もちろ んボールを移動させるのに、パスとともにドリブルは、ボール扱いの上から大切なことではある が同時に、直接ゲームの勝敗に結びつく得点となるシュートの為の各種の要素やその確実性とか、
相手のチームに、得点をさせない為の条件や、防御の方法など多様な要素が重なりあってはじめ てゲームの結果が左右されるのであるが、ドリブルは、攻撃の為の1つの有力な技術ではあって
もゲームを決定する条件としては不十分なものであることが明らかになった。また、ドリブルは、
その使用如何によっては、チームに不利をもたらすことも多い。ドリブル技術が不十分なことか ら、視野が狭くそのために、パス・シュートの好機を逃したり、ドリブラーが不利な位置に追い こまれて、チームとしてのボール保持を失う原因となる場面は、ゲームを見でつねに注意をしな ければならない点である。又、ドリブル技術が低いためにひきおこすチャージング(攻撃側がお こしやすい身体接触を伴う反則)なども、ボディコントロールとともにドリブル技術の拙さが原 因していることと考えられる。
2 ドリブル終了時のプレーがゲームに及ぼす結果 1 においてもすこしふれたがここでは、
1つのゲームで相対する2チームが、ドリブル終了時に、1秒以上の時間ポールを保持してから 次のプレーに移った場合をとりあげた。1ゲーム中に使用したドリブルのうち、ノーキープのプ
レーが、全体のドリブル数の中のどれくらいの割合いを占めているか、を示したのが第2表であ る。表によって明らかなように、3つのグループ(高校男子・大学男子・高校女子)を3つの段 階に区分した9つの部分のうちで、高枝男子・女子の決勝リーグの2つの部分で敗チームにおい て、勝チームより高い平均値を示している。これらの結果から次の諸点について考察した。
1 チームのプレイヤーが、ドリブル終了時にすぐ次のプレーに移ることができることは、チー ムにとって攻撃をよりよいもの(早いボールを進める〕につながることが多いようである。つま り、そのドリブラーはドリブルを終了するまでに、終了した時に、直ちに次のプレーに移れるよ うに予想をしており、ドリブルを終了した時にすぐ実行している、ということである。プレーに ついての意志の決定がそれ以前になされている為にそのことが可能となるのであろう。このこと
は、ドリブルを含めた攻撃のためのいろんな技術と共に大切な要素といえる。特に大学の男子の
一24一
第 二 表
高校男子
大学男子 高校女子勝チーム 敗チーム 勝チーム 敗チーム 勝チーム 敗チーム
1 84.7 75.9 1 96.4 92.6 1 83.O 80.3
2 91.3 88.2 2 90.2 90.7 2 82.2 62.1
3 94.9 78.4 3 90.1 81.5 3 96.1 72.9
4一Fo 81,6
W3.8
63,3 W1.8
45 91,9
W9.9
79,9 W2.4
45 91,8
W2.O
84,7 W0.9
6
77.O 82.O 6 85.8 85.16
77,3 50.6ワ 一8 91,6
V5.3
92,8 V9.O
78 99,3
X7.9
82.7
X616
78 83,9
U7.9
69,4 U2.1
9
94,7 75.8 9 96.4 98.39
86.1 78.210 88.2 76.6 lO 1OO.O 94.1 1O 85.8 83.3
11 60.5 48.5 11 95,4 93.5 11 79.4 63.6
12 49.4 43.7 12 96.8 95.7
13 P4
86,7 W2.6
69,8 V3.8
13 P4
93,0 X3.6
94,5 X6.4
マ
82.1 73,5丁
94.1 90.3 x 83.2 71.6SD
P5
13,3 W1.7
14,2 W2.1
SD
P5
4,1
V3.6.6,5
W1.9
SD
P2
7,4 W5.2
11.0 V8.8 16
P7
86,7 W4.O
80,1 W6.6
16 P7
71,9 V9.7
66,5 W0.2
13 P4
88,5 V9.3
74,1 W1,7 18
P9
88,8 W5.5
84,1 W9.O
18
s 73,8V4.8 65,4V3.5
15 P6
81,3 X1.3
80,7 V6.5
20 81,1
W4.6
49,6 V8.6
SD
P9
3.4 P00.O
8,8 X8.5
17 88,3
W5.7
88,3
x
W0.OSD 3.O 14.5
20
1OO.O 96.2 SD 4.6 4.921 67.4 74.4 21 96.5 94.O 18 77.6 83.3
22 Q3
69,3 W2.3
78,3 V9.O
22 Q3
1OO.O
HOOlO
98,8 X7.6
19
Q0
72,2 W1.1
76,0 V7.3
24
80.8 82.024 lOOlO
98.5 21 75.9 79.3τSD
75.0V.7
78.4
R二1
マSD
99.4P.4
97.3
P17
TSD 76.7
R.7
79.0