• 検索結果がありません。

のコミュニケーションにおける係わり手 との関係性

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "のコミュニケーションにおける係わり手 との関係性"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

論 文

先天性盲ろうの子ども

1)

のコミュニケーションにおける係わり手 との関係性

一 接 近 ・回 避 の 文 脈 に 視 点 を お い た 弱 視 難 聴 二 事 例 に よ る 考 察 一

土 谷 良 巳:

弱視難聴二重障害の子 どもとかかわ り手 とで取 り組む授業場面における活動 を観察 し、そのコミュニケーシ ョン活動 について トラ ンスクリプ トを作成 し、 1 ) コミュニケーシ ョンにおける 「 発信 ・受信の方向性 ( 一方向的一双方向的)」、 2) コミュニケーシ ョン における 「関係性 ( 接近一回避)」及び 3) コミュニケーション活動の展開の様相 (自全態一不全態)の観点か ら分析 した。

その結果、一人の対象児のコミュニケーション状況は、子 どもか らかかわ り手へ、かかわ り手か ら子 どもへの相互の発信がなされ ても、子 どもの活動 は不全態 に止 まったまま展開 し、子 どもによる回避行動が頻発するようにな り、やがてかかわ り手 を叩 く行動が 発現 し、 コミュニケーシ ョン ・システムであるオブジェク トキューを放 り投 げることで活動 は終止 した。一方他の対象児の場合 は、

相互の発信のなかで子 どもの発信 はかかわ り手によって受容 され、活動は自全態 により展開 し終止 した。その経過 において、子 ども からかかわ り手への接近行動が頻発 し、二人が向 き合 ってコミュニケーシ ョン ・システムの写真 カー ドを持ち合 うなかでの双方向の 発信 ・受信活動が成立 していた。

以上の結果か ら、 コミュニケーシ ョンにおける子 どもか らかかわ り手への接近行動、回避行動の発現は、 コミュニケーション活動 が自全態で展 開するか、不全態で展開す るかの様相 と関連 していることが示唆 された。

キー ・ワー ド :弱視難聴二重障害 コミュニケーシ ョン活動 における関係性 事例研究

Ⅰ 問題 と目的

1 コミュニケーシ ョンにおける共同性 と相互性

コミュニケーシ ョンは辞書的には 「 伝達」あるいは 「 交信」

と同義 とされる ( 新村 出

、1955)

。障害のある子 どもの学校教 育において も、 コミュニケーシ ョンについて 「 受容 と表出」の 観点か ら捉 え られてお り ( 文部省

、2000)

、発声、指 さし、身 ぶ りサイン、絵 ・写真 カー ド、手話、音声言語、文字言語等の コミュニケー シ ョン ・システムに よる伝達 的側面 ( 発信 ・受 伝)が強調 されている。 しか し、 コミュケ‑シ ョンの語源 をラ テン語 に遡 る視点か らは、「 共にあること、共有すること」 ( 文 部省

、1992)

とい う共同性の視点が強調 される。 したがって、

障害のある子 どもの コミュニケーシ ョンを考 える際に、「 共 に あること :共同性」 と 「 伝 えあ うこと :相互性 ( 交信性、伝達 性

)

」の両面か ら考察することが欠かせ ない視点 となる。

本論では、土谷

(2006)

が指摘す るように、 コ ミュニケー ションをその共同性 と相互性の二面か ら捉 えることにする ( 衣 1 参照) 0

表 1 コミュニケーションにおける共同性 ・相互性 共 同性

(Sharing)

相互性

(Mutuality)

注意の共有

Sharedattention

Jointattention

イメー ジの共有

Sharedimage

意味の共有

Sharedmeaning

活動の共有

Sharedevent

情動の共有

Sharedemotion

重ね合い/響 き合い

Resonance

掛け合い

Alternation/Atunement

( 能動受動 の)交替

Turntaking

対話

Dialogue

交渉

Negotiation

(土谷2006を一部改変)

上越教育大学

表 1 にお ける相 互性 は、二者 いず れかの表 出行動 ( 発信行 動)に対 して、他方が応 じる ( 受信行動)関係が成立 している という発信 一受信関係 として捉 えら才しる。 この相互の発信 一受 信 によって成立する活動 を二者が受容 しあう場合 には、その場 には共有 された活動 ( 共同活動)が成立 していると捉 えること がで きる。そこには、「 注意の共有」、「イメージの共有」、「意 味の共有」 という様相が認め られる。 また、共同性が深 まるな かで、「 情動の共有」 を生 じさせることもある。

2 コミュニケーションにおける接近 と回避の文脈

一般 に生体 の行動 は環境事象 (と くに他 の生体 :他者) に 対す る接近 ・回避の文脈 で捉 える ( アイブルアイベス フェル ト

、1978)

ことがで きる。 イ トヨの生殖行動 ( テ ィンバーゲ ン

、1975)

Parten

が観察 した幼児 の協 同遊 び

(Parten,M.

B

.,1932)

は二者 間の接近行動 の代表的な例 である。回避行動 は闘争の形態 をとることもある ( ティンバーゲ ン

、1975)

。 ま た接近 ・回避 の文脈では ときに葛藤が生 じるが、その状況で は、か も類 の転位行動 ( テ ィンバ ーゲ ン

、1975)

やチ ンパ ン ジーにみ られるマウンテ ィング行動 ( アイブルアイベスフェル ト

、1978)

のように、儀式行動が出現することが明 らかになっ ている。

障害のある子 どもとのコミュニケーション関係 を接近 と回避

の文脈で捉 えるな らば、他者か らの発信 に対 して、視線をそ ら

す、耳 をふ さぐ、あるいは他者の提示する絵 カー ドや写真 カー

ドを拒む といった受信行動 はコミュニケーションにおける回避

行動 ( 土谷

、1993)

として捉 えることがで きる。 また、相手に

対す る強い拒絶 は攻撃の形態 をとる ( 梅津

、1976)

こともあ

る。一方、互いに視線 を向け合 う注意の共有 ( 則松

、2004)

あるいは外界の事象 を対象 として共有 し共に視線 を向ける共同

(2)

土 谷 良 巳

注意 ( 則松

、2004)

は、 コミュニケーシ ョン活動 における共同 性 の様相であると同時に、係 わ り合 う二者の接近行動 として捉

えることがで きる。

また、係 わ り合 う二者のいずれかに回避行動が発現す る事態 においては、 コミュニケーシ ョン活動 は容易 には展 開 しないの は言 うまで もない。 しか し障害のある子 どもの係 わ り手 に対す る接近行動や回避行動が形成 ない しは促進 される条件 に関す る 研究 は見あた らない。

3

コ ミュニケーシ ョンにおける方向性

コ ミュニケー シ ョンを発虐 ・受信 の相 互的活動 と捉 える と き、そ こに発信、受信 の方向性 を兄 いだす こ とがで きる ( 管 原、松 田、土谷、中沢

、1992)

0

本研 究 で は、係 わ り合 う二者 をⅤ( 例 えば障害 の あ る子 ど も) 、A( 例 えば係 わ り手) とす る な らば 、 Ⅴか ら A に向か う 発信 をⅤ ‑A、A か らⅤへ 向か う発信 を Ⅴ ‑A と記述 し、 この 関係 を一 方 向 的 コ ミュニ ケ ー シ ョン と定 義 す るO また

、Ⅴ

A

が相 互 の発信 ・受信 を連 結 し合 う関係 にあ る場 合 は、

Ⅴ ‑A‑ Ⅴ ‑A 一 ・‑ ない し A‑ Ⅴ ‑A‑ Ⅴ‑ ‑ ・と記述 し、

相互的 コミュニケー ションと定義す る。 さらに前項で述べた よ うに∴注意の共有や共同注意の ように、二者が相互 に見つめ合 う、あるいは二者で一つの事物 を手 に しあい、その事物 に注意 を向けあ うような事態 を ⅤごA と記述 し、 この 「 VごA 」の関 係 を双方向的コミュニケー シ ョンと定義す る。

Ⅴと A との コミュニケー シ ョン関係 において 、 Ⅴ ‑A の一方 向的発信 に止 まるな らば、そ こには子 どもり 発信が優位 となる 関係が成立 し、極端 な場合 には係 わ り手が子 どものいいな りに なる関係 になるともいえる。 またⅤ ‑Aの一方 向的発信 に止 ま るな らば、同様 に係 わ り手の発信が優位 となる関係が成立 し、

極端 な場合 には、係 わ り手が子 どもを支配す る関係が生 じるこ とになるともいえる。

したが って、 コミュニケー シ ョンにおける発信、受信の方向 性 における優位関係 は、障害のある子 どもの係 わ り手 に対す る 接近 ・回避の文脈 における関係性 と関連 をもっている と仮定す

ることがで きる。

4 コ ミュニケーシ ョン活動 における自全態p t不全感

コ ミュニケーシ ョンも他の一般的な行動 と同様 に、その活動 は発 現 し、展 開 し、終止 し、次の活動へ と切 り替 わ ってい く

( 梅津

1976)

。 また、発現 した行動 は十分 な展 開 を経 て終止 に 至 り他 の行動‑切 り替わってい く場合、す なわちその行動が 自 全態 の うちに終止す る場合 もある し、十分 な展 開を経 ることな く、す なわち不全態 に止 まったまま終止あるいは他 の活動‑ の 転換 を余儀 な くされる場合 もある ( 梅津

、1976)

0

この ことは、係 わ り合 う二者が展 開す るコミュニケーシ ョン 活動 において も同様であ り、 コミュニケーシ ョン活動の展 開を 自全態 ・不全態の視点か ら捉 えることがで きると考 え られる。

つ ま り、障害のある子 どもの発信行動が係 わ り手 との関係のな かで十分 な展 開 を経て終止 に至 る場合、その コミュニケー シ ョ ン活動 は 自全態の うちに終止 した といえる。一方、子 どもの発 信行動が係 わ り手 との関係 のなかで十分 に展 開す ることな く、

例 えば係 わ り手 によって抑制あるいは変換 を余儀 な くされる場

合、その コミュニケーシ ョン関係 は不全態の うちに終止 した と

・ いえる。

コミュニケー シ ョン活動 は係 わ り合 う二者 によって共有 され ていると捉 えることがで きることか ら、 コミュニケー シ ョン活 動の展開における自全態、不全態の様相 と、係 わ り合 う二者 に おける (とくに子 どもか ら係わ り手 に対す る)接近 ・回避の文 脈 における関係性 との間には何 らかの関連がある と仮定す るこ

とがで きる。

5

障害のある子 どもからみたコミュニケーション関係 これ までの論議 を踏 まえ、 障害 のあ る子 どもとの コ ミュニ ケー シ ョンに関 して、子 どもの発信行動 に焦点 を当て る視 点 ( 土谷

2006

、菅原 ・松 田 ・土谷 ・中沢

1992

、松 田

1997

、川住

1999

、細淵

1988)

に立 って整理す るな らば、図

1

に示 した枠組 み によって、Ⅴか らみた コミュニケー シ ョン関係 を捉 えること がで きる。

自全態

一方向性 双方向性

不全態

図 1 コミュニケーション状況特性

本研究では、障害のある子 どもとの コ ミュニケー シ ョン活動 において、 j ミュニケ‑ シ ョンにおける方向性 ( 一方向性、双 方向性)及びコミュニケー シ ョン活動 における展 開の様相 (自 全態、不全態)が、係 わ り手 に対す る子 どもの接近行動、回避 行動 とどの ように関係 しているのか を事例的に明 らかにす るこ

とを目的 とす る。

方法 1 手続 き

弱視難聴である二人の子 ども Vj 、Vh を対象事例 とし、所属 す るⅩ盲学校 において、それぞれが担任 Aj 及 び Ah と取 り組 む 活動 を参加観察 し、 ビデオ映像 に記録す る。 ビデオ映像記録か ら抽出 したエ ピソー ドを基礎資料 とし、 コ ミュニケー シ ョンが 展 開す る様相 に関 して トランスクリプ トを作成 し、分析 の資料 とす る。その際、表 2 に示 した枠組みに よって 、Vj ‑Aj 間、及 び Vh‑Ah 間にお けるコ ミュニケー シ ョン活動 に関 して分析 す る。

表 2 コミュニケーション活動を捉える枠組み

分析の枠 分析の軸

発信 ・受信の方向性

一方的 双方 向的

展 開の様相

自全態 不全態

関係性

接 近

一 回避

(3)

行動の指標 は、対象事例が弱視難聴であることか ら、視線、

表情、手指の動 き、及び身体全体の動 きとして捉 えられる粗大 運動 とする。すなわち、接近行動に関 しては、視線 による注意 の共有、視線 ・手指の動 きによる共同注意、身体接触 を指標 と する。 また回避行動 においては、同様 に表情、視線 ・手指の動

きによる回避、身体接触への回避、攻撃行動 とする。

2

対象事例

Vj ( 盲学校小学部重複学級 3 年)

主たる障害はチ ャージ連合 による弱視難聴であ り、発達 に遅 れがみ られるが、食事、排涯等 の身辺処理 はほぼ 自立 してい る。移動 に困難はない。

視覚に関 しては、眼前での手振 りがみ られるが、葉書大の写 真カー ド、幼児用のマラカス、 コップ等の 日用品を見つけると 手に取 ることがで きる。 また眼前であれば/オシマイ/、/コ‑

タイ/等の簡単な身ぶ りサイン ( 以下、身振 りサイ ンを / 〇〇〇

/と記述す る。)を受信することがで きる。

聴覚 に関 しては、音、音声言語 に対 して振 り向 く動 きか ら

70dB

程度の聴力 レベル と推定 されるが、補聴器 は装用 してい ない。音楽の授業ではピアノに接 して座 り、 ピアノの音 に対 し ては身体 を揺するなどの反応 をみせ る。

学校 においては、ほぼ教室の トランポ リン上 を居場所 として いる。 トランポ リンでは係わ り手の跳ぶ動 きに合わせて身体 を ダイナ ミックに動か して跳び、笑顔 をみせ るが、 トランポ リン から降 りるように誘われると、強い拒みをみせ る。係わ り手に 誘われることで、 トランポ リン以外の活動、あるいは食堂、体 育館への移動等の切 り替えが起 きる場合 には、その都度弱い拒 みをみせ、手 を引かれる、身体 を押 される等の誘導 にはほぼ従 うものの、 ときに床や窓ガラスへの唾付 け行動が挿入 される。

コ ミュニケー シ ョン ・シス テ ムは、 オブ ジェ ク トキ ュー (

Bloom,Y

.

,1990、Park

,K.

,1995)

、写真 カー ド、簡単 な身ぶ りサインを受信で きるが、それ らのキューをみずか ら手にし、

発信することはみ られない。

Vh( 盲学校幼稚部

6

歳児 クラス)

生下児体重が

1,000

グラム弱の低 出生体重児で、弱視難聴で ある。乳児期の気管切 開によ りカニュー レを装着 し

、4、50

分 おきの嬢の吸引が必要である。. また下肢 に軽度の肢体不 自由が あ り、四つ這いで素早 く移動 していたが、数か月前か ら係わ り 手が手引 きで支えれば、不安定であるが足早での歩行移動が可 能になった。食事、排涯等の身辺処理はほぼ自立 している。

視覚に関 しては、絵本 を見つけると手に取 り、顔 を近づけれ ば切手大のキャラクターの絵 を見つけて指 さす ことがで きる。

葉書大の写真 カー ドは区別 している。

聴覚に関 しては、補聴器 を装用 してお り、係わ り手の音声言 語での呼びかけに振 り向 くこと、 また幼児用の音楽 をカセ ッ ト デ ッキか ら聞 き取 る際の音量か ら

、40‑50dB

程度の聴力 レベ ルにあるとみ られる。

学校 においては、教室内では絵本 をみる、音楽 を聴 く活動 を 好み、 また教室外で もスクールバスをみる、図書室で絵本 を探 す、教室巡 りをする、校庭 に出て隣地の施設をのぞ き込む等の 活動 を活発 に展開する。

受信で きるコミュニケーシ ョン ・システムは、オブジェク ト キュー、写真 カー ド、手指の動 き、視線、及び呼びかけ等の簡 単な音声言語であ り、オブジェク トキュー、写真 カー ドによっ て活動 を切 り替えることがで きる。発信 は手指の動 き、視線に よって係わ り手の注意を引 き、写真 カー ドによって行 きたい場 所 を伝 えることがで きる

。4、50

分お きに必要な疾 の吸引の際 は、オブジェク トキューであるカニュー レを示 されると、好み の活動中であって も教室へ戻 ることできる。

結果 と考察

1 基礎資料 :エ ピソー ド記録

Vj と Vh が所属するⅩ盲学校 において、それぞれが担任 Aj 及 び Ah と取 り組む活動 を参加観察 し、記録 したビデオ映像か ら エ ピソー ドを抽出 した。その概要は以下の とお りである

ト 1

)エ ピソー ド Vj:

2004

年1

2

13

日記録 ( ローマ数字 は記 述の便宜上分けた活動ユニ ッ トを示す。 また 、/ 〇〇〇 /は身ぶ りサ イ ン 、「 〇〇〇」 は音声言語 、「 / 〇〇〇/ 」 は身ぶ りサ イ ンと音声言語が重ね られて発信 されたこと 、[ 〇〇〇 ]は写真 カー ドによって

、OC:

〇〇 〇 はオブジェク トキューによって 発信 されたことを示す。以下同様である。)

(Ⅰ) トランポ リン上で 、Vj は Aj と向 き合い両手 をつないで 跳んでいる 。Vj の表情 には笑みが浮かんでいる。

(Ⅱ)やがて Aj か ら 「 /オシマ イ、 コ‑ タイ / 」 と発せ られ る 。Aj が トラ ンポ リンか ら先 に降 りると 、Vj は Aj を追いか けて トランポ リンを降 りる。そ こで Aj は再度 「 /コ‑ タイ / 」

と発 しつつ [ 音楽室]の写真 カー ドを見せ

、OC:

音楽室 ( 普 楽室のオブジェク トキュー)を手渡す。

(Ⅲ)Vj

は Aj を探 し 、Aj を見つけると手 をつかんで トランポ リンに戻 ろ うとす る 。Aj は再度 「 /オシマイ、 コ‑ タイ / 」 と 発信 しその場 を去ろうとする。

( Ⅳ)vj は教室の出口で靴 を履 き替 え、教室 を出る様子 をみ せ るが 、Aj と交代す る他 の教員 Aj 2 を見つけるとその手 をつか んで トランポリンへ向かお うとする。だが、かなわない。

( Ⅴ)Aj 2 に促 され、手渡 された

OC:

音楽室 を手 に して、音 楽室 に入室する 。Vj は上体 をピアノに接触 させていすに座 る。

Aj 2 は Vj と向 き合い手 を取 って、 ピアノの音楽 に合わせて リズ ミカルにその手 を動かす。

( Ⅵ) vj は Aj 2 の働 きかけを受 け入れるが、徐 々に手か ざし や手遊 びをす るようになる。やがて表情が険 しくな り 、Aj 2 の 手 を払 う、膝 に顔 を打ち付 ける動 きが激 しくなって くる。

Aj 2 は音楽 にあわせて Vj の手 を取 り、なだめるように働 きか けるが 、Vj は Aj 2 の胸のあた りをたた き始める。たた く動 きは 繰 り返 され徐 々に強 くなる 。Aj 2 は Vj をなだめ ようとするが、

Vj はいすか ら立ち上が り、 さらに激 しく Aj 2 をたた く。

( Ⅶ)突然 Vj は Aj 2 の手 をとり、音楽室か ら出て行 こうとす る。音楽室の出入 り口においた

OC:

音楽室 を手 に取 り 、Aj 2 と手 をつないで、音楽室 を出て教室に向か う。

( Ⅷ) vj は教室 に入 ると、数個のオブジスク トキューが並べ られたテーブルに向かい、激 しく振 り払い放 り投 げる。続けて Aj 2 を繰 り返 したた き 、Aj 2 になだめ られる。

( Ⅸ) vj は トランポ リンに上 り、 うな り声 を出す。

(4)

土 谷 良 巳

1‑2)

エ ピソー ド

Vh:2004

4

30

日記録

(Ⅰ)vhはAh

と教 室 で テ ー ブ ル を挟 ん で 向 か い合 い 、 歌 の 絵 本 に よる活 動 に取 り組 んで い るが、徐 々 に活 動 へ の集 中が 途 切 れ て くる。

(Ⅱ)Ah が 「 / ソ ウ ダ ン シ ョウ

/

」 と

Vh

に話 しか け なが ら、

束 に な っ た写 真 カー ドを見 せ る と

、Vh

は そ の 写 真 カー ドの 束 に ち ら りと視 線 を向 け る

。Ah

はす か さず 「 / ドゥス ル ノ

/

」 と

Vh

に 聞 く

。Vh

は1 メ ー トル ほ ど離 れ た写 真 カー ドの貼 られ た ボ ー ドに向 か い、[ 図書 室]( 図書 室 の写真 カー ド) を手 に取 り\

Ah

に手 渡 す 。続 け て写真 カー ドを入 れ る袋 を

Ah

に手 渡 す 。 ( Ⅲ)Ah は

Vh

と向か い合 い、 写 真 カー ドの束 を示 す と

、Vh

はそ の写 真 カー ドの束 を手 に取 る

。Vh

Ah

は 向 か い合 い、 互 い に両 手 で 束 に な っ た 写 真 カー ドを持 ち合 っ て 、 一 枚 ず つ め

くって い く。

vh

Ah

の顔 に視 線 を向 け る。 そ の と き

Vh

の 手 に は [ 教 室 巡 り] の写 真 カー ドが 持 た れ て い る

。̲Ah

は 「 / ワ カ ッ タ ヨ

/」

と声 をか け

、Vh

の胸 の あ た りをか る くタ ップす る

。Vh

は [ 教 室 巡 り] の写真 カー ドを取 りだ し、 カー ド入 れ に差 し込 む。

( Ⅳ)

vh

Ah

と手 をつ な ぎ、 教 室 巡 りに で か け る

。Ah

「イ ッシ ョニ イ コ ウ」 と声 をか け る

。Vh

は満 面 に笑 み を うか べ 、喜 びの声 を発 しなが ら、 元 気 よ く廊 下 を行 き来 し、 教 室 を の ぞ き込 む。教 室 巡 りは続 き、 や が て 自教 室 に向 か うが 、足 早

く通 り過 ぎよ う とす る。

( Ⅴ)Ah が 「ソ ウ ダ ンシ ョウ カ」 と声 をか け写 真 カー ドの束 をポ ケ ッ トか ら取 りだ そ う とす る と

、Vh

は立 ち止 ま り

、Ah

の 顔 に視 線 を向 け、 向 き合 って立 つ

。Vh

Ah

は写 真 カー ドの束

を両 手 で 支 え る よ う に して持 ち合 い

、Ah

が 一 枚 ず つ 写 真 カー ドをめ く り、声 に出 して い くの をみ て い る。 や が て

、Vh

Ah

の手 の上 に手 を重 ね て、 写 真 カー ドを一枚 ず つ め く り始 め る。

Vh

の視 線 は写 真 カー ドに集 中 し、 カー ドを一 枚 ず つ 確 か め る よ うにめ くって い く。

( Ⅵ)

Vh

は [ビュー タ くん] の写 真 カー ドを取 り出 し、 じっ と見 つ め る

。Ah

は 「 / ワ カ ッ タ ヨ

/

」 と声 をか け

、Vh

の胸 の あ た りをか る くタ ップす る

。Vh

は [ビ ュー タ くん] の カー ドを

もち

、Ah

の手 を引 い て廊 下 を進 む。

2 トラ ンス ク リプ トに よ る分 析

1

)結果 と考察

(Vj)

・ 基礎 資料

1‑1

) エ ピ ソー ド

Vj

に よ り作 成 した トラ ンス ク リ プ ト ( 表 3 を参 照 ) か ら

Vj

の コ ミュニ ケ ー シ ョン活 動 を捉 え る と以下 の よ うに整 理 で きる。

( 1)発 信 ・受信 の方 向性 に関 して は、 当初 の トラ ンポ リ ン上 で跳 ぶ活 動 を除 くと、 す べ て の場 面 で

Vj‑Aj

Vj‑Aj

いず れ か の一 方 向性 の コ ミュニ ケー シ ョンが 交代 して生 起 して い た。

Vj‑Aj

の方 向性 と

Vj‑Aj

の方 向性 の頻 度 は ほ ぼ等 しか った。

( 2) また 、 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン活 動 にお け る 関係 性 をみ る と、 前 半 の活 動 ユ ニ ッ トⅤ まで は

、Vj

か ら

Aj

へ の接 近 行 動 が 頻発 して い たが 、音 楽 室 に入 室 して か らの後 半 にお い て は 回避 行 動 が頻 発 して い た。

( 3) コ ミュ ニ ケー シ ョ ン活 動 が 展 開 す る様 相 は、 当初 か ら

Vj

に とって は不 全 態 の ま ま推 移 して い た。

3 Vj

の コミュニケーシ ョン活動 に関す る トランスクリプ ト

活動ユニット 時 間 活 動 項 目 発信 .受信の 方 向 性 接近‑回避 ( +) ( ‑) 自全態‑不全態 ・ ( +) ( ‑)

Ⅰ 分: 秒: 秒 /1 0 0 <A とトランポリン上で跳ぶ> Vj ご Aj + +

Ⅱ 7 7 7 7 72 41l 3 3 41 7 6 5 l /オシマイ/と/交代/を告げられる Vj Vj ー

Aj Aj + ‑

0 6 ( A が トランポリンから降りる) ‑

2 8 A を追い トランポリンから降りる

1 5 A から再度/交代/の発信 Vj ー Aj

1 2 A から写真カー ドを見せ られ O Cを手渡される

Ⅲ 7 7 7 7 84 4 5 5 0 4 9 2 7 21 9 O Cを手にして A2 を見る Vj

Aj +

±

21 A を探す Vj

Aj +

‑‑

1 7 A を連れて トランポリンに戻ろうとする Vj

Aj +

01 A から再再度/交代/の発信 Vj ー Aj

2 9 靴の履き替えに向かう

±

( 靴を履き替える)

±

8 82 3 8 82 5 6 8 A2 A を探す をつれて トランポリンに戻ろうとする Vj Vj

Aj Aj + +

Ⅴ l 8 9 l42 2 2 2 1 1 6 4 9 6 50 5 A2 に促されて音楽室に向かう Vj ‑ Aj

±

2 3 ピアノの側に座る ( 手かざし) Vj ー Aj

1 8 顔を膝につける

l l 2 0 手遊びを始める ( A2 が手を合わせて くる) Vj ‑ Aj *

±

1 2 : 1 9 表情が険しくなり 、A2 の手を払う Vj

Aj

Ⅵ 1 1 1 2 3 5 : : : 4 2 2 3 6 5 : : : 1 0 0 8 5 8 なだめられる ( A2 が手を合わせてくる) Vj ー Aj

±

( 時折 り A2 の手を払う) ̲( Vj の回避 )

手遊びが激しくなる ( A2 が手を合わせてくる) Vj ー Aj

( 時折 り A2 の手を払う) ( Ⅵの回避)

A2 をたたく ( 断続的に 7 回繰 り返す) Vj

Aj

1 5 : 2 7: 0 0 なだめられる ( 断続的に繰 り返す) Vj ー Aj

たち上がって A2 をくり返したたく Vj

Aj

( 続けて 9 回繰 り返す)■

Ⅶ 1 6 : 3 0 : 1 5 A2 の手を引き音楽室を出ようとする Vj

Aj

i ±

1 6 : 4 5 : 0 8 O Cを手に A2 と音楽室を出る Vj Vj

Aj Aj

± ±

1 7: 2 7 : 2 5 教室に戻る

± ±

Aj から Vj への発信

Vj から Aj への発信

双方向の発信 ・受信

(5)

以 上 の結 果 か ら、 トラ ンポ リ ンを降 り、 音 楽 活 動 へ 向か う ように促 され てか らの Vj の コ ミュニケー シ ョン活動 の展 開 は、

まず トラ ンポ リ ンへ戻 ろ う と して

Aj

及 び

Aj2

を探 し、手 を引 く とい う接 近行動 を発現 させ たが 、 トラ ンポ リンへ戻 る こ とはか なわず、不全 態 で終 止 した展 開 となっていた と考 え られ る。 ま た音楽室 に入 ってか らは、 時 間 を経 るに したが い、手遊 び と顔 を膝 に打 ち付 け る嬢衝 行動 ( 梅 津

、1976)

が頻発 し、相 手 をた た くとい う

Aj2

に対 す る回避行動 が発現 した。

そ して音 楽 室 にお け る不 全 態 の堆 積 状 況 の なか で

、Vj

は音 楽室 を出 る行動 を発現 させ た。 だが教 室 に戻 る と、 トラ ンポ リ ンに直行 す るの で はな く、 テー ブル上 のすべ ての オブ ジェク ト キュー を払 いの け、放 り投 げ

、Aj2

をた たい た

。Vj

は音 楽 室 の オブジェ ク トキー を捨 てたので はな く、 テー ブル上 におか れ た すべ ての オブ ジェク トキー を捨 てたのであ る。

この オブ ジェ ク トキ ューへ の強 い 回避 は何 を意味 してい るの だろ うか 。 これ まで に Vj に用 意 され て い た オ ブ ジ ェ ク トキ ー は食堂、体 育館 、音 楽室等へ の移動 を促 す もの であ った。 だが その使 われ方 をみ る と、 エ ピソー ドの記述 か ら窺 い知 る こ とが で きる よ うに

、Vj

が み ず か らオ ブ ジ ェ ク トキ ー を手 に し、 係 わ り手 に向 けて発信 す る とい う もので は なか った。 日常 の係 わ り合 い にお いて、 オ ブ ジェ ク トキ ュー は常 に係 わ り手 か ら手渡 され る とい う一 方 向 な発信 で使 われ てい たので あ る。 またエ ピ ソー ドにあ る よ うに、 係 わ り手 か らの オ ブ ジ ェ ク トキ ー の提 示 に よって 、Vj は トラ ンポ リ ンか ら降 りる こ とを余 儀 な くさ

れ た い た こ とか ら、 この事 態 で は オ ブ ジ ェ ク トキ ュー は Vj に とって不 全憩 を もた らす キ ューで あ った と考 え られ る。

Vj は音 楽 室 か ら教 室 に戻 っ たが トラ ンポ リ ンに直行 は しな か った。 つ ま り、 トラ ンポ リ ンの活動 を再 開で きれ ば よか った とい うの で は ない。 オ ブ ジェ ク トキ ューのすべ て を放 り投 げた こ とは、 オ ブ ジ ェ ク トキ ュー が 存 在 す る こ と、 オ ブ ジ ェ ク ト キ ュー を提示 され る こ と、 さ らには一 方 向的 な係 わ りを もたれ る こ とを拒 絶 した こ とを意 味 して い る と考 え られ る。

2)

結 果 と考察

(Vh)

基礎 資料

1‑2)

エ ピソー ド

Vh

に よ り作 成 した トラ ンス ク リ プ ト ( 表

4

を参 照 ) か ら

Vh

の コ ミュニ ケ ー シ ョン活 動 を捉 え る と以下 の ように整理 で きる。

( 1) 発 信 ・受 信 の 方 向性 に 関 して は、 当初 か ら

Vh‑Ah

Vh‑Aj

の方 向性 の コ ミュニ ケ ー シ ョンが頻 繁 に交代 す る と と もに、 発 信 ・受 信 の ほ ぼ半 数 は

Vh

Ah

の双 方 向性 の もの で あ った。

( 2) また、 コ ミュニ ケ ー シ ョン活 動 にお け る関係 性 をみ る と、 当初 か ら

Vh

Ah

の提 示 す る写真 カー ドに 目をや り、 それ まで の動 きを止 め

、Ah

と向 き合 い、 写 真 カー ドを両 手 で もち 合 い、一枚 ず つ め くって い くとい うよ うに

、Vh

か ら

Ah

へ の接 近行動 が頻発 していてい る。 また回避行動 はみ られ なか った。

( 3) コ ミュニ ケー シ ョン活動 が展 開す る様相 は、 当初 か ら V h に とって 自全 態 の まま推 移 してい た。

表 4

Vh

のコミュニケーシ ョン活動に関する トランスクリプ ト

活動ユニット 時 間 活 動 項 目 発信 .受信の 方 向 性 接近‑回避 ( +) ト ) 自全恵一不全感 ( +) (‑)

Ⅰ 分 :秒 :秒

<

「 歌の絵本」での活動への集中がとぎれてくる>

Vh Z Ah ±

00::0055::2363

/ソウダンショウカ/ともちかけられる 写真カー ドを見る :( 写真カー ド)を見せられる

VhVh AhAh

+ + + +

0:05:41

/ ド‑スルノ/と聞かれる

Vh Ah

0:05:52

写真カー ドボー ドに向かう

Vh Ah

0:05:57

/図書室カー ド/を手渡す

Vh Ah

+ +

0:06:13

写真カー ド入れを

A

に手渡す

Vh Ah

+ +

0:06:28

写真カー ド束をめくり合う

Vh Z Ah

+ +

0:06:38 <A

とアイコンタクト>

Vh 三三 Ah

十 十 + +

0:06:39 A

は/ワカッタヨ/と返す

Vh Ab

0:06:51

/教室巡りカー ド/をとる

Vh Ah

0:07:12

/教室巡 りカー ド/をカー ド入れへ

Vh Ah

+ +

00::0172::2318

教室巡りに手をつないで出かける

(A :

「 いっしょにいこうよ

) Vh 2 Ah

+ 1+

( 笑顔)

Vh i三 Ah

+ +

教室巡りから自教室前を通 り過ぎようとする

Vh 三三 Ah

000:::111222:::444291

/ソウダンショウカ/ともちかけられる 写真カー ド束を持ち合う

<A

:( 写真カー ド束)を見せられ畠 とアイコンタクト>

Vh 三Vh Z AhVh三 AhAh

+ + + +

0:12:53

写真カー ド束をめくり合う

Vh 三三 Ah

+ +

0:13:24

/ビュータクンカー ド/をとる

Vh Ah

+ + \

0:13:27 A

は/ワカッタヨ/と返す

Vh Ah

+

1:

Vh ‑ Ah

:

Ahか ら V h へ の発信

註 2 :

Vh ‑ Ah

:

Vhか ら A h へ の発信

註 3 :

Vh ご Ah

:

双方 向 の 発

・受信

(6)

土 谷 良 巳

以上の結果か ら、教室においても、また教室巡 りのなかで自 教室の前 を通 り過 ぎる際にも

、Ah

か ら 「 /ソウダンショウ / 」

と話 しかけられると

、Vh

はそれまでの活動 を止め

、Ah

の捷示 す る写真 カー ドに目をや り、

Ah

と向 き合い、写真 カー ドを両 手で もち合い、一枚ずつめ くり合 ってい くとい う一連の行動 を発現 させていた。 これ らの行動は

Vh

Ah

とのコミュニケー ションにおいて写真 カー ドが両者に共有 されていたことを示 し ている。

またエ ピソー ドの記述にあるように

、Vh

Ah

とのコミュ三 ケ‑シヲン活動において 、「 /ソウダンショウ / 」 、「 /ドゥスルノ

/ 」 と尋ね られるなかで、 自ら発信する機会 を積み重ねて きた。

そ して写真 カー ドを選ぶことによって、その発信 は

Ah

に受け 入れ られ、活動は十分に展開 し、 自全態を経て切 り替わってい た と考えられる。

さらに

、Ah

か ら 「 /ソウダンショウ / 」 と話 しかけられると、

Vh

はそれまでの活動 を止め、自ら視線 を

Ah

に向け

、Ah

か らの 発信 をまっている。このことか ら、写真 カー ドの共有に止 まら ず

、Ah

とのコミュニケーションを

Vh

が十分に受け入れていた ことがわかる。

Ⅳ 総合考察

1 コミュニケーションにおける関係性

Vj

Aj、Vh

Ah

がそれぞれ展開 したコミュニケーシ ョン活 動 を、表

2

に示 した枠組みを軸 にして位置づけてみると、 自全 態一不全態の軸 と一方向性一双方向性の軸を座標軸 とすること で、写真カー ドやオブジェク トキューのコミュニケーション ・ シテムに対する接近 と回避の関係性 を位置づ けることがで きる

( 図

2

参照) 0

すなわちコミュニケーション活動において、接近一回避の文 脈における関係性は、 コミュニケーションにおける方向性 ( 一 方向性か双方向性か) とコミュニケーション活動の展開におけ る様相 (自全態にいたる展開か、不全態 にいたる展開か) と相 互に関係 していることがわかる。

自全態

一方 向性

不全態

2 Vj、Vh

のコミュニケーション状況特性

双方向性

コミュニケーション活動において、 コミュニケーション ・シ テムは係わ り合 う二者 を繋 ぐものである。 したがって、 コミュ ニケーション ・システムに対する拒否は、 コミュニケーション 活動における関係性への拒否 と結びついているとみることがで きるのではないだろうか。同様に、コミュニケーション ・シス テムへの接近は、 コミュニケーシ ョン活動における関係性の受 容 とみることがで きると考えられる。

2 誰のためのコミュニケーションか

McLarty

( 2000) は、オブジェク トキューを使 うことが、盲 ろう二重障害や視覚障害 を伴 う重複障害の子 どもの コミュニ ケーション発達を支えるということが理解 されるようにな り、

実際 に使われる場 も広が って きているが、そ こには肯定的な 事実 ばか りではな く、オブジェク トキューの使い方へ の誤解 と混乱が散見 されると指摘 している。その誤解 とは、 1 )オ ブジェク トキューに代表 される

AAC(

拡大 ・代替 コミュニケー ション ・システム)の道具や機器が簡便 な実用的 レシピとして 受け止め られ、生活の場 に安易にそのまま適用 されがちである こと、 2)個人の尊厳や 自己決定 を支えるためのシステムであ I . 1 ることの理解が希薄なことであるとしているOその上で、かか わ り手に欠かせ ないのは、「 誰のためのコミュニケーシ ョンで あるのか」 という問いであ り、その問いに対する答は、「自己 決定において きわめて依存的、受動的にな りがちなひ とのた めである」 としている。 また、「 発達の状態への配慮はあるの か」 という間を立て、「 子 どもの障害 と発達の状態に関 して適 切であること」 を指摘 している。 さらに、「どこに意味がある のか」 とい う問いに関 しては、「 個別のニーズに応 えることで ある」 とし、「出来合い」のシステムを適用す るとい うことで はな く、個別性 にもとづ く 「 パーソン ・セ ンター ツドな係わ り 合い

(Person‑CenteredApproach)

」の理念 を強調 している

本研 究は、 この

McLarty

( 2000)の指摘 を超 えて、新 たな 視点 に焦点 をあててい る。

McLarty

( 2000) のい う

person‑

CenteredApproach

は、いわばオブジェク トキュー とい うコ ミュニケーション ・システムの個別オーダーメイ ドを意味 して いる。 しか し本研究において課題 としたように、 コミュニケー ション ・システムを係わ り合いにおける関係性 において捉 える ならば、そのシステムは 「 誰が、何のために、使 うシステムな のか ?」 という問いに答えなければならない。

本研究の結果は、まず 「 ユーザー」である子 どもが、 自分の

「 意思」を伝 えるために使 うのであるという答えを示 している と考えられる。

註 :1

)

「先天性盲 ろうの子 ども」 とは、生下時 または生後 1

歳頃までに、視覚聴覚二重障害 となった子 どものこと

を言 う。 またここで言 う 「 盲 ろう」は、国際盲ろう学

(Deafblind internationa

l )の定義 に したがった

もので、視覚聴覚二重障害の多様 な状態、例 えば盲 ろ

う、弱視 ろう、盲難聴、弱視難聴のすべてを含 む概念

である。なお、英語で表記す る場合 は

、Childwhois deafblind

、あるいは

Childwithdeafblindness

となる。

(7)

謝辞

Vj、Vh

のお二人、 また

Aj、Ah

のお二人の先生には対象事例 として、授業の場 を観察 し貴重 な資料 を得 る機会 を与 えていた だきました。そ して、本論で取 り上げたエ ピソー ドには、間壕 的にですが筆者が深 くかかわっていることを明 らかにする必要 があ ります。 とくに

、Vj

さんのオブジェク トキューによるコ ミュニケー シ ョンは、筆者が

Aj

先生 に捷案 して きた経緯があ り

、Vj

さんの行動 は筆者へ のメ ッセー ジで もある と受 け止 め ています。本論 をまとめることで、筆者は多 くのことを学ぶこ とがで きました。盲ろう二重障害の子 どもたちのコミュニケー ションに関する研究 をさらに深化 させ ることで、皆様のご厚意 にお応 えで きるように努めてまい ります。関係者の皆様に深 く 感謝申し上げます。

文献

Bloom,Y.(1990)ObjectSymbols:A CommunicationOption.

TheRoyalNew SouthWaleslnstituteforDeafandBlind ChildrenMonographSeriesNumber

1 .

細測富夫

(1988)

重度 ・重複障害児におけるコミュニケーシ ョ ン活動の発生 と展開.長野大学紀要,

10(2),5964.

アイブル‑アイベス フェル ト , Ⅰ( 伊谷純一郎 ・美濃 口坦訳)

(1978)

比較行動学 Ⅰ. みすず書房.

川住隆一

(1999)

生命活動の脆弱な重度 ・重複障害児への教育 的対応に関する実践的研究.風間書房.

松田 直

(1997)

障害重い子 どもの教育 とコミュニケーション 一子 どもの意思の表出 と係わ り手のあ り方‑.国立特殊教育 総合研究所特別研究報告書 「 重複障害児の意思表出と教育環 境 に関す る研究」 .国立特殊教育総合研究所.

McLarty,M.(2000)WhoseCommunicationisit?DbIReview

,

July‑December2000,1820.

文部省

(1992)

肢体不 自由児の コミュニケーシ ョンの指導.社 1会福祉法人 日本肢体不 自由児協会.

文部省

(2000)

盲学校、聾学校、養護学校学習指導要領解説‑

自立活動編‑.

新村 出 ( 編)

(1955)

広辞苑第

2

版. 岩波書店.

則松宏子

(2004)

共同注意 と文化 的文脈. 大鼓泰 ・田中み ど り ・伊藤英夫 ( 編著)共同注意の発達 と臨床一人開化の原点 の解明‑

,299336.

川島書店.I

Park

,

K.(1995)Usingobjectsofreference:areview ofthe Literature.EuropeanJournalof SpecialNeedsEducation

,

1

0 ,

1,4046.

Parten,M.B.(1932)Socialparticipationamongpreschool child.JournalofAbnormalandSocialPsychology,27,243 269.

菅原広一 ・松 田直 ・土谷良巳 ・中沢恵江

(199r2)

心身に障害が ある子 どもとのコミュニケーシ ョンーかかわ合いに視点 をお いた今後への提言‑.国立特殊教育総合研究所 特別研究報告 書 :心身障害児の言語行動の形成 と評価 に関す る研究

,109 116.

国立特殊教育総合研究所.

ティンバーゲ ン,N ( 永野為武訳)

(1975)

本能の研究.三共出版.

土谷良巳

(1993)

接近 ・回避状況に置ける関係的秩序の形成か らみた 「 や りとり」の成立一事例研究.重度 ・重複障害児の 事例研究第

17

集‑ 「 や りとり」 に視点 をおいて‑

,36

‑ 4 4.国立 特殊教育総合研究所.

土谷良

巳 (2006)

重症心身障害児 ・者 との コ ミュニケー シ ョ ン.発達障害研究

,28,238247.

梅津八三

(1974)

重度 ・重複障害者の教育のあ り方.特殊教育, 4

,25.

東洋館出版社.

梅津八三

(1976)

心理学的行動図.財団法人重複障害教育研究 所.

梅津八三

(1978)

各種障害事例 における自成 る信号系活動の促

進 と構成信号系活動の形成に関する研究‑ とくに盲ろう二重

障害事例 について‑.教育心理学年報

,17,101104.

参照

関連したドキュメント

基本目標2 一 人 ひとり が いきいきと活 動するに ぎわいのあるま ち づくり1.

基本目標2 一 人 ひとり が いきいきと活 動するに ぎわいのあるま ち づくり.

基本目標2 一人ひとりがいきいきと活動する にぎわいのあるまちづくり 基本目標3 安全で快適なうるおいのあるまちづくり..

基準の電力は,原則として次のいずれかを基準として決定するも

本判決が不合理だとした事実関係の︱つに原因となった暴行を裏づける診断書ないし患部写真の欠落がある︒この

第一の場合については︑同院はいわゆる留保付き合憲の手法を使い︑適用領域を限定した︒それに従うと︑将来に

第一五条 か︑と思われる︒ もとづいて適用される場合と異なり︑

 今日のセミナーは、人生の最終ステージまで芸術の力 でイキイキと生き抜くことができる社会をどのようにつ