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学位論文審査結果の要旨 専 攻 名

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Academic year: 2021

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(様式8号) 「課程博士用」

学 位 論 文 審 査 結 果 の 要 旨

専 攻 名 材 料 科 学 専 攻 氏 名 晝河 政希 学 位 論 文 題 目 エラスチンを用いた靭帯組織再建に関する研究

主査 ・ 副査

主 査 八尾 浩史 ○

副 査 冨田 昌弘 ○

副 査 鳥飼 直也 ○

副 査 湊元 幹太 ○

副 査 宮本 啓一 ○

審査結果の要旨

本学位論文は以下の内容で構成されている。

【緒言】

前十字靭帯(ACL)などの関節内靭帯は血管が乏しい環境下に存在しているため、自然治癒が望 めず、損傷した状態で長期間放置すると他の合併症を引き起こす可能性がある。先行研究より、靭 帯基質であるエラスチンの足場材料上で靭帯細胞を培養することにより骨基質の

I

型コラーゲンや 骨分化マーカーである

ALP

の遺伝子発現が増加することが明らかとなった。また、もう

1

つの靭帯 基質であるコラーゲン足場材料上での培養により

III

型コラーゲンや靭帯マーカーであるテノモジ ュリンの産生が促進されることを明らかにしてきた。本研究では、次の

3

点を主な目的とした。① 膝靭帯損傷動物モデルを用いてエラスチンの生体内での機能を明らかにする。②足場材料(エラス チン、コラーゲン)と生分解性合成材料および靭帯細胞を複合させた組織工学的人工靭帯を開発す る。③エラスチンがどのように細胞に認識されるかの解明のため、細胞が持つエラスチン結合性タ ンパク質を同定する

【方法・結果】

3 つの目的に合わせ、それぞれの研究に関して以下に記す。

① 靭帯損傷動物モデルへのエラスチン投与試験

エラスチンの損傷靭帯に対する薬理効果の検証を行うため、ジャパニーズホワイトラビットの内側 側副靭帯(MCL)を鈍的損傷させ、1 週間ごとに注射による局所投与試験を行った。投与

6

週間、

12

週間で靭帯組織を採取した。実験群はコントロール(生理食塩水投与)群、エラスチン投与群を

作製した。評価については採取した靭帯組織の損傷部および損傷部以外(靭帯―骨接合部、以下「接

合部」)について遺伝子およびタンパク質発現解析を行った。投与

6

週間において、エラスチン投与

群では靭帯基質遺伝子(コラーゲン、エラスチン)の発現が

4.9

倍以上に増加し、タンパク質では

1.6

倍以上に発現が増加した。また、組織の修復反応時に産生される分解酵素(MMP-13)の遺伝子

(2)

発現も

3.1

倍の増加が見られた(vs コントロール)。接合部への影響に関しても同様の解析を行った。

投与

6

週間において、エラスチン投与により骨関連遺伝子(I 型コラーゲン、ALP)の発現が

11

倍 に増加し、タンパク質では

1.4

倍以上の増加が見られた。さらに、靭帯組織の弾性率、破断荷重を測 定したところ、エラスチン投与

6

週間において組織の弾性率が

2

倍に、破断荷重が

1.3

倍に増加し た。以上より、エラスチンの投与は、損傷靭帯組織の細胞の基質産生を促し、組織強度を回復させ ることが示唆された。

②人工靭帯の開発および動物モデルへの移植による生体内評価

エラスチン投与により靭帯―骨接合強度が増加したため、エラスチンが人工靭帯と骨の接合強度 にも作用するか調査した。エラスチンを表面にコーティングしたポリジオキサノン(PDS)縫合糸 から作製した人工靭帯をウサギ脛骨へ移植し、

6

週間後に移植部の組織学的評価および引き抜き荷重 測定を行った。Safranin-O 染色により人工靭帯挿入部の軟骨基質を観察したが、エラスチンコーテ ィングの有無による差は見られなかった。引き抜き荷重測定においては、エラスチンコーティング により

3.7

倍の値を示し(vs コーティングなし)、エラスチンにより人工靭帯―骨の接合強度が増加 することが示された。

次に、エラスチン、コラーゲン、靭帯細胞と

PDS

を用いた組織学的人工靭帯の開発を試みた。

PDS

を中軸として骨に挿入する両端にはエラスチンファイバーを、中央部にはコラーゲンファイバーと エラスチンファイバーを巻きつけ、これを

3

本束ね、組織学的人工靭帯を作製した。作製の際に靭 帯細胞を播種したエラスチンファイバーを用いることで、細胞を複合させた人工靭帯を作製した。

この人工靭帯を

MCL

損傷動物モデルに移植し、6 週間後に評価を行った。Safranin-O 染色により 人工靭帯挿入部の軟骨基質を観察したが、細胞の有無による差は見られなかった。力学的試験とし ては靭帯組織の弾性率および破断荷重を測定した。弾性率において、細胞あり人工靭帯では

15.4MPa

を示し正常靭帯組織の

18.5MPa

に非常に近い強度を示した。破断荷重においても細胞あり人工靭帯 では

73N

を示し、細胞なし人工靭帯(48.1N)より高い値を示した(正常靭帯組織:104.8N)。

③エラスチン結合タンパク質の探索

培養靭帯細胞からタンパク質を抽出し、不溶性エラスチンを用いたアフィニティクロマトグラフ ィによって、エラスチン結合タンパク質を単離した。得られたエラスチン結合タンパク質の同定を 行った結果、エラスチンレセプターとしての報告がある

Galectin-3

CyPB、CAP18

などいくつか のタンパク質がエラスチン結合能を持つ可能性が示唆された。

【結論】

本研究によって、①エラスチンの損傷靭帯に対する効果が確認でき、エラスチンの投与は損傷靭 帯の修復反応を促進するように働くため、治療に有効であると考えられる。②エラスチンが人工靭 帯と骨の接合強化にも効果的であることが示唆された。また、足場材料と生分解性合成材料から作 製した人工靭帯に靭帯細胞を複合させることで、正常靭帯と同程度の強度を示す組織工学的人工靭 帯の開発に成功した。③エラスチン結合タンパク質の同定によっていくつかのタンパク質がエラス チン結合能を持つことが示唆された。今後、これらのタンパク質とエラスチンとの相互作用を検討 することで、より詳細な修復過程の理解が期待できる。

以上の研究成果は、工学研究科の研究として有意義であり、博士(工学)の学位を授与

するにふさわしく、合格と判定する。

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