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藤原 裕矢 学 位 の 種 類

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Academic year: 2021

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(1)

氏 名 ふじはら ゆうや

藤原 裕矢

学 位 の 種 類

博士(医学)

報 告 番 号

乙第 1852 号

学位授与の日付

令和 2 年 10 月 1 日

学位授与の要件

学位規則第 4 条第 2 項該当(論文博士)

学 位 論 文 題 目

High sex hormone-binding globulin concentration is a risk factor for high fibrosis-4 index in middle-aged Japanese men

(血中 SHBG 濃度高値は日本人中年男性における FIB-4 index 高 値の危険因子である)

論 文 審 査 委 員 (主 査) 福岡大学 教授

松永 彰

(副 査) 福岡大学 教授

安永 晋一郎

福岡大学 講師

森原 大輔

内 容 の 要 旨

【目的】

男性において内因性テストステロンおよび性ホルモン結合グロブリン(SHBG)濃度の 低値は、脂肪蓄積や慢性炎症を通じてインスリン抵抗性の増大と関連することによりメ タボリック症候群(MetS)および非アルコール性肝疾患(NAFLD)と関連することが報告 されている。テストステロンは SHBG 結合型(35–75%) 、アルブミン結合型(25–65%) 、 および遊離型(FT)の 3 つの形態で循環し、これら 3 つの合計が総テストステロン

(TT)である。 我々はこれまでに、これらのテストステロン指標の中から、SHBG 分画を 多く含む TT が、日本人中高年男性における MetS の最も鋭敏な指標となることを報告し た。一方で種々のテストステロン指標および SHBG と、NAFLD における肝線維症との関係 性については詳細が不明である。 本研究は、種々の血清テストステロン指標および SHBG 濃度と肝線維化指標である FIB-4 index との関係を明らかにすることを目的とした。

【対象と方法】

飯塚病院予防医学センターで健診を受けた日本人中高年男性 363 人(平均年齢 51.1±

8.7 歳)の早朝空腹時に採取した血液検体を用い、一般血液生化学項目、MetS 関連指標 および種々の血清テストステロン指標(TT、遊離テストステロン[cFT]、生物学的活性テ ストステロン [cbT]、および SHBG)を測定した。肝線維化指標である FIB-4 index は、

[年齢(年)×AST(IU / L)] / [血小板数 PLT(×10

9

/ L)]×√ALT(IU / L)]とし

(2)

て計算した。肝線維症の危険因子を検討するため、全体を FIB-4 index 高値群(≧1.3)

83 例と非高値群(<1.3)280 例の 2 群に分け、種々のテストステロン指標や一般血液生 化学項目、メタボリック症候群関連指標と FIB-4 index との関連性を調査した。

全ての統計分析は、SPSS(IBM)バージョン 18.0 を使用し、p <0.05 を統計学的に有意 とした。データは平均±標準偏差(SD)、四分位範囲の中央値(25%〜75%)として表し た。データの正規分布有無により、対応のない t 検定またはマンホイットニー検定を使 用して連続変数を評価し、カテゴリー変数はフィッシャーの正確検定を使用して評価し た。FIB-4 index と臨床変数の関係の評価のためピアソンの相関係数を使用し、 FIB-4 index≥1.3 の予測因子を特定するため、2 項ロジスティック回帰分析と ROC 曲線分析を使 用し評価した。

【結果】

FIB-4 index の全体中央値は 1.01(0.78-1.27)であった。FIB-4 index が 1.3 未満の 非高値群、1.3-2.6 の中等度高値群、2.6 以上の高度高値群は、それぞれ 280 人

(77.1%) 、80 人(22.0%) 、および 3 人(0.8%)であった。FIB-4 index 高値群では非 高値群と比し、HOMA-β(p = 0.002) 、cFT(p <0.001) 、cbT(p <0.001)、LDL-C(p = 0.013) 、白血球数(WBC)(p <0.001) 、赤血球数(RBC) (p = 0.004) 、PLT(p <0.001) 、 AAR(p <0.001)が有意に低値であり、SHBG(p <0.001) 、AST(p <0.001) 、尿素窒素

(BUN) (p = 0.002) 、および年齢(p <0.001)が有意に高値であった。一方で、HbA1c 値、空腹時血糖値、HOMA-R、IDF および日本基準での MetS の有病率に 2 群間で有意差は 認めなかった。また SHBG 同様に肝で合成される 25-(OH)VitD3 は、2 群間で有意差は認 めなかった。

全体を IDF 基準で判定した MetS の有無で群分けし比較したところ、以前の我々の報告 結果と一致して、血清 TT、SHBG、cFT、cbT、およびアディポネクチンは、非 MetS 群と比 し MetS 群において有意に低値であったが、FIB-4 index に有意差は認めなかった。

2 項ロジスティック回帰分析の結果、SHBG ≥52nmol / L(p = 0.022) 、cFT <8.0 ng / dL(p <0.001) 、WBC <5,800/μL(p = 0.004) 、RBC <480 × 10

4

/μL(p = 0.039) 、お よび LDL-C <140 mg/dL(p = 0.017)が FIB-4 index ≥1.3 の有意な危険因子であること が明らかになった。さらに ROC 解析の結果、cFT <7.62 ng / dL(曲線下面積[AUC] = 0.639)および SHBG≥49.8nmol / L(AUC = 0.649)が FIB-4 index ≥1.3 の最も強い予測 因子であることが明らかになった。

【結論】

肝線維化指標である FIB-4 index は、種々のテストステロン指標のうち cFT と負の相

関を示し、SHBG と正の関係を示した。これまでに NAFLD と血清 SHBG 濃度低値との関連が

報告されてきたこととは対照的であったが、SHBG は近年抗炎症および脂肪分解効果が報

告されていることから、SHBG の増加は肝線維症に対する保護メカニズムを表す可能性が

(3)

あり、血中 SHBG 濃度は肝線維化の有用な指標となり得る可能性が示唆された。

審査の結果の要旨

本論文は、日本人中高年男性健診受診者において、種々の血清テストステロン指標お よび血中性ホルモン結合グロブリン(SHBG)濃度と肝線維化指標である FIB-4 index と の関係を明らかにするために行った横断研究である。申請者らは、FIB-4 index≧1.3 を 規定する因子の解析を行い、血中 SHBG 濃度高値と、血中遊離テストステロン(cFT) 、白 血球数、赤血球数、血中 LDL-コレステロール、が低値であることが危険因子である事を 見出した。さらに、ROC 解析により SHBG≧49.8nmol / L および cFT <7.62 ng / dL が FIB-4 index ≧1.3 の最も強い予測因子であることを明らかにした。SHBG は性ホルモン 結合タンパクとしての働きだけではなく、近年抗炎症および脂肪分解効果が報告されて いることから、SHBG の増加は肝線維症に対する保護メカニズムを表す可能性があり、

SHBG 増加は肝線維化初期の悪化指標でもある可能性が示唆された。

1. 斬新さ

肝線維化指標である FIB-4 index と種々の血清テストステロン指標および血中 SHBG 濃 度との関係性の詳細な検討はなされていない。本研究は日本人中高年男性健診受診者に おいて、肝線維化指標である FIB-4 index 高値の危険因子として、血中 SHBG 濃度高値が 関係することを示した初めての報告である。肝線維化指標と SHBG を含む種々の血清テス トステロン指標との関係を検討した他に類のない研究であり、斬新さを認める。

2. 重要性

男性において内因性テストステロンおよび SHBG 濃度の低値は、脂肪蓄積や慢性炎症を 通じてインスリン抵抗性の増大と関連することによりメタボリック症候群および非アル コール性肝疾患(NAFLD)と関連することが報告されている。一方で NAFLD においては、

肝脂肪沈着(NALF)から脂肪肝炎(NASH) 、肝硬変・肝がんへ至る症例が健診受診者にお

いても 10%程度存在するため肝線維化の早期診断が重要であるが、確定診断のためには

病理組織学的な検査である肝生検が必要となるため、非侵襲的な肝線維化指標について

様々に検討されているという現状がある。本研究において、肝線維化指標である FIB-4

index 高値に関連する様々な危険因子を示すことができたと同時に、血中 SHBG 濃度高値

が肝線維化初期の悪化指標でもある可能性が示唆された、重要な研究である。

(4)

3. 研究方法の正確性

本研究は福岡大学医に関する倫理委員会(承認番号 11-5-08、13-12-06、2017M071)お よび飯塚病院倫理委員会(承認番号 11001、26277)で承認され、実施された。統計学的解 析は公平性、正確性を期すために独立した機関で行われ、その手法、結果の解釈も適切で あった。また、本論文は査読を経て Endocrine Journal にすでに掲載されており、研究方 法の正確性は担保されていると認められる。

4. 表現の明確さ

目的、方法、結果は、詳細かつ正確に表現されており、Table を用いて簡潔に表現され ている。結果に基づいた考察については、過去の論文を十分に検討し、対象者における FIB-4 index 高値と関連する危険因子を示し、血中 SHBG 濃度が肝線維化早期の有用な指 標となり得る可能性を明確に示している。

5. 主な質疑応答

Q:主論文では FIB-4index について NAFLD との関係で議論されているが、被験者の飲 酒歴については記載がなされていないが、副論文の limitation の中で全体の約 2/3 に飲酒歴があったことが記載されている。飲酒歴がない被験者でのみ解析をすると結 果に違いはでるか。

A:飲酒歴については詳細なアルコール摂取量は聴取できておらず、概要のみの聴取で あるが全体の約 2/3 に飲酒歴があったことから、飲酒歴を考慮にいれた解析や、飲酒 歴のある集団を除外して検討すれば、結果に影響がでる可能性は否定できないと考え られ、今後の課題と考えている。

Q:主論文の Table.3 の多変量解析の中で、単変量解析で有意差がでている AST や血小 板数は因子として入れられておらず、FIB-4 index を算出する式の中に AST、血小板数 が内包されていることが理由と思われるが、仮に多変量解析でそれら因子を含めて解 析を行うと結果に違いはでるのか。

A:AST、血小板数に加えて、テストステロン指標に影響があると思われる年齢につい ても結果への影響を考慮し解析を試みたが、FIB-4 index≧1.3 を規定する因子を検出 するための多変量解析おいて、FIB-4 index の算出式に内包されている因子を投入す ると、棄却され、式が成立せず、解析ができないという結果であった。

Q:SHBG が肝臓で産生されることは述べられているが、SHBG の代謝の概要について分

かっているのか。また転写因子などは判明しているのか。

(5)

A:SHBG については肝臓で産生されることは判明しており、炎症性サイトカインやア ディポネクチン高値、高インスリン血症で産生が低下することが判明している。ま た、SHBG は肝臓における脂肪蓄積抑制効果が報告されている。しかしながら、SHBG 自 体がどのように作用するかについては、受容体やシグナル伝達を含め未だ解明されて いないと状況であると認識している。

Q:SHBG と同じく肝臓で合成されるアルブミンや 25(OH)VitD3 と結果が乖離してい るのはなぜか。

A:本研究の対象である日本人健診中年男性の解析の結果からのみの考察であるが、表 には示していないが血中 SHBG 値と 25(OH)VitD3 値は相関を認めておらず、25(OH)

VitD3 は FIB-4 index、すなわち肝線維化に対して影響は少ないのではないかと考えら れた。言い換えれば、SHBG の肝線維化に対する効果は、SHBG に特異的な作用であるこ とを示唆する。一方で Alb 値は SHBG 値と有意な逆相関を示しており、肝線維化に伴い Alb 値が低下する臨床的な所見と併せて考えると、血中 SHBG 値の上昇は肝線維化に対 する保護的な上昇である可能性が考えられた。

Q:Table.3 の多変量解析のオッズ比では SHBG 1.89、cFT 3.27 であり、Table.4 の ROC 解析では SHBG の AUC が cFT よりも高値であるが、SHBG と cFT はどちらが重要と考 えるのか。

A:オッズ比で考えると cFT の影響が大きく、ROC 解析の結果であれば SHBG が予測因子 として優れていることになる。臨床的には、cFT 低値はすでに報告されている通りメタ ボリック症候群と関連するなど重要な要素であり、また SHBG 高値については、本研究 で肝線維化への保護的な上昇の可能性が示唆されため、両者が重要であると考えてい る。

Q:主論文では FIB-4 index の高値に関連する因子として、SHBG 高値、cFT 低値が関係 するという結果であり、副論文では高尿酸血症に関連する因子として、SHBG 低値のみ が関連したという結果であったが、この差はなぜか。また、cFT/SHBG 比での検討はし たのか。

A:尿酸に関しては、活性型テストステロンは、抗メタボ作用という観点からは血清尿

酸値低下に寄与することが考えられるが、一方で筋肉量増加や尿酸排出抑制効果があ

ることから血清尿酸値上昇にも寄与することが考えられ、正と負の関係があり複雑で

あるため危険因子として検出されなかったと考えられる。cFT/SHBG 比については検討

できておらず今後の課題とさせて頂きたい。

(6)

Q:他の論文は SHBG 低値と NAFLD が関連していることが示唆されているが、今回は SHBG 高値と FIB-4 index と関連していたがなぜか。

A:SHBG はインスリン抵抗性との関連が強く(Met S などのインスリン抵抗性病態で低 下) 、同じく病因としてインスリン抵抗性との関連が強い NAFLD で SHBG が低下するの は、極めて reasonable である。一方、FIB-4 index は肝臓の線維化指標であって、イ ンスリン抵抗性と直接、リンクする指標ではない。そのため、肝臓繊維化の重症度に よって、SHBG との関係性が変化することはあり得ると考える。

本研究における対象者の大部分が FIB-4 index 正常範囲であり、今回の結果は、肝線 維化の初期段階での SHBG 高値との関係性を示していると考える。肝線維化が重度にな った場合、SHBG との関係性は変化してくる可能性があると考えている。一方、本研究 の課題点として、画像検査や病理組織学的な検討ができていないことがあげられる。

本研究は、年齢、AST、ALT、血小板数を用いた計算式から算出した値である FIB-4 index に寄与する因子の検討を行ったものであり、実際被験者にどの程度の肝線維化 が存在したのは不明である。この点について現在、牟田病院において、画像検査を加 えて、肝線維化マーカーと種々のテストステロン指標との関係を調べる臨床研究を倫 理委員会で承認いただき開始しようとしているところである。近年注目されているフ レイル・サルコペニア指標との関連についても検討する予定であり、今後報告をさせ て頂きたい

Q:この研究から今後の展開について考えていることはあるのか。SHBG 遺伝子多型に ついての検討も非常に興味深いと思われるがどうか。

A:本研究の後、最長 6 年間のメタボリック症候群発症と種々のテストステロン指標と の関連について縦断研究をさせて頂いており、その結果、観察開始時の血中 SHBG 濃度 が低値であることが、その後のメタボリック症候群発症のもっとも鋭敏な予測因子と して検出されている。しかし SHBG 遺伝子多型についての検討はできていないため、今 後の検討課題とさせて頂きたい。

以上の質疑を中心に活発な討議が行われ、申請者は適切に回答した。本論文は、肝線維化

指標である FIB-4 index と SHBG との関係性を示した初めての研究であり、学位論文に値

すると評価された。

参照

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