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伊藤 智祥 学 位 の 種 類

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Academic year: 2021

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氏 名 いとう ともよし

伊藤 智祥

学 位 の 種 類

博士(工学)

報 告 番 号

甲第 1801 号

学位授与の日付

令和 2 年 3 月 16 日

学位授与の要件

学位規則第 4 条第 1 項該当(課程博士)

学 位 論 文 題 目

浸出水脱塩処理に伴い発生する副生塩の消毒剤としての実用化 に関する研究

論 文 審 査 委 員 (主 査) 福岡大学 教授

樋口 壯太郎

(副 査) 福岡大学 教授

山本 俊浩

北九州市立大学大学院 教授

大矢 仁史

内 容 の 要 旨

松山市が運営する一般廃棄物最終処分場(以下,「埋立センター」という。)は,浸 出水中の塩化物イオンが高濃度化し,浸出水処理施設の取水口で当初計画の2000 mg/Lか ら約9000 mg/Lと約5倍の濃度となった。その結果,浸出水処理施設の膜処理効率が著し く低下し,施設全体の浸出水処理量が設計能力の3割程度まで落ち込んだことで,浸出水 貯留池の水位が上昇し,梅雨や台風など雨量の多い時期には未処理水が越流する危険性 が生じた。そこで,より経済的かつ合理的に処理能力の増強を図ること及び副生塩のリ サイクルを推進することを目的として,浸出水処理工程で発生する副生塩を無隔膜法に よる電気分解を行うことで消毒剤(以下「エコ次亜」という。)を生成し,下水処理場 で従来の市販消毒剤である次亜塩素酸ナトリウム(以下,「市販次亜」という。)の代 替品として有効利用する取り組みを計画した。副生塩から生成したエコ次亜の消毒効果 については,これまで塩類再利用システム研究会を始めとした様々な研究成果が報告さ れているものの,本方式による実用化については全国初の試みであり,エコ次亜は市販 次亜と比較して組成や有効塩素濃度等に違いがあることから,市販次亜と同様に下水処 理水の消毒剤として使用できるか,また,年間を通じて水量水質に変動がある下水処理 水に対しても安定して消毒効果を発揮できるかどうかを検証する必要が生じた。

本研究は,埋立センターの浸出水から無隔膜電解法によって生成したエコ次亜を用いて,

性状等を確認するエコ次亜生成試験,下水処理場内に設置した塩素混和池の試験水槽で試

験原水への影響や消毒効果等を確認するプレ試験,シオダマリミジンコを用いて放流先の

海産生物への影響の有無等を確認する生物影響試験,実際に稼働する下水処理場で処理水

量や水質の変動等に対して安定的に消毒効果を発揮できるかどうかを確認する消毒効果

等確認試験を実施した。試験の結果,生成されたエコ次亜は,有効塩素濃度が 1000~3000

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mg/L の範囲においてエコ次亜性状基準を満たし,プレ試験では,エコ次亜単独注入または エコ次亜と市販次亜の併用のいずれも消毒効果を有し,試験処理水は大腸菌群数が概ね数 十個/cm

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以下かつ放流基準を満たしていることが確認できた。また,エコ次亜単独注入,

エコ次亜と市販次亜の併用,市販次亜単独注入のいずれも,注入率の変動に対する試験処 理水の残留塩素濃度および pH の傾向は同程度であり,下水の処理方式の違いによる試験 原水への影響も違いがないことが確認できた。さらに,pH12 で生成したエコ次亜は,生成 から 6 日後の有効塩素濃度の低下率は 10%以内であり,エコ次亜の有効塩素濃度は市販次 亜と同様かそれ以下の分解速度であることが分かった。また,生物影響について,急性毒 性は市販次亜と同等または低く,繁殖阻害は,6 つの評価項目のうち,ノープリウスがコ ペポディドに変態するまでの日数,初産仔までの要した日数,生残の可否,成熟の可否,

ノープリウス期からコペポディド期への変態の可否の 5 項目は,エコ次亜によるシオダマ リミジンコへの影響は見られず,雌 1 匹あたりの産出幼生数は,処理水に対する希釈倍率 を 1,000 倍以上にして使用すれば海産生物に与える影響は非常に小さいことが判明した。

次に,浄化センターの処理水に対する消毒効果については,水量水質が変動し,汚水の処 理方式の違いにより消毒前の大腸菌群数が異なった場合でも,適量注入することで十分に 効果を発揮することが確認できた。また,遊離残留塩素濃度については,年間通じて概ね 0.05 mg/L であり,浄化センターの過年度の市販次亜のみによる消毒実績と同等の結果が 得られた。その他,放流水は,1 年間を通じて,放流水質基準に掲げるすべての項目で基 準を満たしていることが確認できた。

本研究によって,エコ次亜は,有効塩素濃度が 1000~3000 mg/L の範囲において,安全 かつ安定して生成でき,エコ次亜単独注入またはエコ次亜と市販次亜の併用のいずれも消 毒効果があり,試験処理水が放流基準を満たすことから,市販次亜と同様に下水の処理水 の消毒に使用できることが明らかになった。また,適量を注入することで放流先の海産生 物へ影響を与えず,年間を通じて水量水質に変動がある下水処理水に対しても安定して消 毒効果を発揮し,放流水質基準を満たすことから,下水処理場の消毒剤として実用化でき ることが明らかとなった。

審査の結果の要旨

焼却残造中には高濃度の塩類を含んでいるため、焼却残澄を埋立処分すると、浸出水

中の塩化物イオンが上昇する。塩化物イオンは環境規制項目ではないが農業用水として

利水されると水稲障害を引き起こす。このため、近年浸出水の脱塩処理を行うところが

増加している。脱塩処理を行うと副産物として副生塩が発生する。従来、副生塩は乾燥

させ、海洋投棄により処分されていたがロンドンダンピング条約により、海洋投棄がで

きなくなった。このため脱塩処理を行う自治体や事業者にとって処分先がなく保管する

しか方法がなく、大きな問題となっていた。このような背景下、本論文は無隔膜電解法

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により副生塩から次亜塩素酸ナトリウムを生成させ、世界で初めて下水道終末処理場の 消毒剤としてリサイクルするシステムを構築した。リサイクルシステム構築にあたって は無隔膜電解法による基礎実験、下水道終末処理施設におけるプレ試験を行い。さらに 消毒剤の安全性や性能を検証するため、海産性シオダマリミジンコを用いて、生物毒性 試験を実施し、市販の次亜塩素酸ナトリウムと同等の性能を確認した。この研究の結 果、以下のことを明らかにした。

① 無隔膜電解法は濃縮水中のカルシウムイオン濃度を100 mg/L 以下にすることにより 2,000~6,OOO mg/L の次亜塩素酸ナトリウムを生成することが可能である。

② 隔膜電解法では濃縮水中のカルシウムイオン濃度を100 ppb 以下にすることにより5

~6%の次亜塩素酸ナトリウムを生成することが可能であるがイオン交換膜が高価で あり、現時点では経済的に成立しない。

③ 生成した次亜塩素酸ナトリウムには次亜塩素酸カリウムが混在し、市販品としては 流通できないが、消毒効果は市販品と同等若しくは以上である。にのため申請者らは エコ次亜と命名、以下「エコ次亜」と称する)

④ エコ次亜を生成する最終処分場とこれを利用する下水道終末処理施設は約10 kmの距 離があるがエコ次亜のpH を10以上に保持することにより、10 kmの車両移動を行って も濃度劣化はなかった。

⑤ エコ次亜の性能と生物毒性評価をシオダマリミジンコを用いて行った。性能と生物 毒性は市販次亜と同等であった。

⑥ 下水道終末処理施設では市販次亜の削減、最終処分場では副生塩の委託処分費がな くなり、双方に経済的メリットが生じた。

審査会においては申請者による45分の説明の後、審査員により45分間の質疑、アドバ

イスが行われた。これらに対し、申請者は丁寧に回答、アドバイスに基づき、後日、論

文も修正された。審査会結論は本研究により、全国自治体や事業者に先駆けて副生塩リ

サイクルの先鞭をつけ、前例を作ったことは他の自治体や事業者にとって、利用先や処

理水放流先の利水関係者への説明が行いやすくなり、社会的有用性は非常に高いと判断

される。また前述した通り世界初のシステムであり、さらに経済性を高めるために副生

塩を乾燥させずに、濃縮水のまま無隔膜電解にかけることに成功し、乾燥させるための

重油費用を削除し、経済性と共に低炭素化社会にも貢献するなど独自性および学術的価

値も高い。これらのことから本論文は学位論文に値すると評価した。公聴会には15名の

出席者があり、申請者による45分の発表の後、出席者から5 件の質問があった。申請者

はすべての質疑に対して明確かつ丁寧な回答を行った。公聴会後、審査員による本分野

における知見確認、英語能力の試験を30分行い、合と判定した。

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