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雑誌名 教育実践高度化専攻成果報告書抄録集

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児童の学校適応感を高める支援の在り方 : 図工を 切り口としたアプローチの検討

著者 吉田 研水

雑誌名 教育実践高度化専攻成果報告書抄録集

巻 9

ページ 115‑120

発行年 2019‑03

出版者 静岡大学大学院教育学研究科教育実践高度化専攻

URL http://doi.org/10.14945/00026898

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児童の学校適応感 を高 め る 支援の在 り 方

- 図 工 を切 り 口 と し た ア プ ロ ーチの検討ー 吉 田 研水

A Support System for Enhancing Children's Adaptation to Elem聞tary School:

1 問題の所在 と 研究の 目 的

An Arts and Crafts Class Kensui YOSHIDA

( 1 ) 児童生徒の学校適応 に関す る 現状

文部科学省の調査 (2017) に よ る と , 不登校児童生徒の割合が平成 24 年度か ら 再び増加傾 向 に あ る 。 増加の原 因 に は , 学校への適応に課題 を 抱 え る 児童生徒の増加や, 発達障害 に よ る 三次障 害, 周 囲 の 関わ り 方 ・ 集団の在 り 方 の 問題等が考 え ら れ る 。

ま た, 東京都教育委員会 (2013) が 行 っ た 「 自 尊感情や 自 己肯定感 に 関す る研究」 に よ る と , 自 分を肯定的に評価す る 感情が, 学年が上が る ご と に低下 し て い る 。 加藤 ら (2016) に よ る 「批判 的思考態度の発達が 自 尊心の低下 を 引 き 起 こ してい る 』 と い う 見方 も あ る が, 自 尊心が低下 し続 け る こ と は, 児童の学校適応感を低下 さ せ, 不登校や問題行動につな が る と 考え ら れ る 。

( 2 ) 実習校に お け る 児童の学校適応の現状 と 課題

実習校では, ssw を入れたケース 会議や sc に よ る 面談, 校 内 に あ る 通級指導教室 と の連携等, 学 校適応 に 問題を抱 え る 児童に対す る 校内体制は整っ てい る 。 し か し, 高学年を 中心に, 家庭環境 や学級での人間関係等 に 問題を抱 え, rたま に登校を しぶ る 」 児童が増 え て い る た め , そ れ ら 全て に組織的な対応 を 取 る こ と が難 しい状況 に あ る 。 低学年では, 学習や友人 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 困難を示 し, 継続的な支援を必要 と す る 児童が多 く , そ れ ら の児童が登校 しぶ り の予備軍に な っ てい く と 考え られ る 。

ま た, 実習校は校内の生徒指導において, r 自 己存在感 を味わわせ る こ と J r人間関係を重視す る こ と J r 自 己決定の場を設定する こ と 」 の 3 つ を 柱 と して位置づ け て い る 。 こ れ ら 3 つの 往 の 中 に あ る 「 自 己存在感J r人間関係の重視J r 自 己決定の場」 と い う 言葉は, 自 己決定理論 (Ryan &

Deci, 1999) で基本的心理欲求 と さ れる 「有能 さ の欲求J r関係性の欲求J r 自 律性の欲求」 と 結び 付 け て考 え る こ と が で き る 。 こ れ ら 3 つ の欲求 を, 児童の学校適応感 を 高 め て い く た めの支援の 視点 と して捉えて い く こ と と した。

( 3 ) 研究の 目 的

本研究では, 児童の学校適応感 を 高 め る た め に , r生徒指導が機能する授業づ く り 」 を可能にす る よ う な小学校段階での支援の在 り 方 を追究する こ と に し た。 そ の切 り 口 を 図 工 と し た理 由 は,

図工 と い う 教科の特性を生かそ う と 考 え た か ら で あ る 。 中央教育審議会答申 (2016) に よ る と , 芸術系教科 に お け る 「見方 ・ 考 え方」 には, r個別性の重視 に よ る 多様性の包容, 多様な価値を認 め る 柔軟な発想や他者 と の協働, 自 己表現 と と も に 自 己 を形成 して い く こ と , 自 分の感情の メ タ 認知 な どが含まれて い る 」 と 示 さ れて い る 。 そ こ で, 本研究では, こ れ ら の 図 工 と い う 教科の特 性を生か し, 自 己 と 他者の多様な価値 を認め合 う 中で学校適応感 を 高 め る よ う な授業実践を計画

し, 児童の 「有能感J r 関係性J r 自 律性」 の変化 を検討する こ と を 目 的 と した。

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か っ た が , r天使 と プ レゼ ン ト 」 の鑑賞では, 進 んで ワ ー ク シー ト に書き 込み, 全体の前で発表す る 姿ま で見 られた。 そ の 後 の 「わ り ば しベンで描こ う ! J では, 初 め て 自 分か ら絵を描き始め,

友 人 と 楽 し く 会話 を し な が ら画用紙いっ ぱいに表現する こ と が で き た。

r o o と ��す る ぼ く ・ わた し (紙版画を入れた絵画) J では, 作品 の 中 に入れる 自 分を納得い く ま で何度 も 描 き 直す様子が見 ら れた。 そ の後, そ こ での表現を基に 自 分のマー ク をっ く り 上げ て喜ぶ姿 も観察 さ れた。 写真で 自 分の顔を撮 ら れ る の を頑な に嫌が る ほ ど 自 分を否定的 に捉えて いた児童Aが, 自 分の マ ー ク をつ く る ほ ど に 自 分を受 け入れ ら れ る よ う に な っ た と 考 え ら れ る 。

こ の題材以降, 児童Aは, 個別に声 を か け な く て も 自 分か ら 進んで制作でき る よ う に な っ た。

実際, 全体指導後 に 「何 も してい ない児童 A に 芦 を かけ る 」 と い う こ と が一切無 く な っ た。

( 3 ) 3 年児童 B への支援

児童 B は友人 と の ト ラ ブ‘ルが多い。 学習では集中力 が続かず, 文章を書 く な どの好き ではない 活動では何 も や ろ う と し ない こ と が多かっ た。 し か し , 図 工は大好 き で, 生 き 生 き と 活動す る こ と が でき る 。 表現方法が題材 の ね ら い か らずれ る こ と が あ る が, 児童 B に と っ て 図工の時聞 は 『心 を解放す る 時間」 だ と 捉 え , あ る 程度は許容 し な が ら 自 分な り の表現を認め て い っ た。 そ して , 題材の ね ら い に合っ た表現が 見 ら れた時はそれを意図的に取 り 上げ, 全体の前で紹介する な ど し

て賞揚す る よ う に した。

児童 B は 自 分の思 う よ う にで き ない と パニ ッ ク に な る こ と が あ る 。 図 工で も , っ く り たい も の が思 う よ う に つ く れず, rや り 直 したい。 」 と 言 う こ と が何度か あ っ た。 そ こ で, 自 律性が十分発 揮で き る よ う , 材料を十分に用 意 してお き , 安心 してや り 直せる 環境を構成 した。 そ して , や り 直 し た こ と で ど う 「っ く り か えた」 の か を 明 ら かに し, 試行錯誤の過程ゃっ く り 直 し た こ と に よ っ て生ま れた新たな表現を価値付 け て い っ た。

ま た, 児童 B は整頓や片付け が う ま く で き な かっ た り , 初めてやる こ と に対 して抵抗 を感 じた り す る こ と が多い。 そ の た め , 用 具 を片付 け る 際や未経験の画材を扱 う 際は, 児 童 B に安心感 を 与 え ら れ る よ う 筆者が寄 り 添っ て一緒にや り な が ら や り 方等 を確認す る 支援を行っ た。

( 4 ) エ ピ ソー ド記述で 見 ら れ た 児 童 B の変容

児童 B は 自 分な り に表現 し な が ら題材のね ら い に合っ た表現を増や してい く こ と が で き た。

「ぬ り 方 を く ふ う して絵の具だけで表そ う ! J では, 混ぜすぎて灰色に濁っ て し ま っ た色を生 か し て ロ ボ ッ ト を描いた り , ピ ン ク で描いた花び ら か ら 想像を広げて桜の木の あ る 風景 を描いた り し ていた。 そ の 後の個人制作では, それま で に考 えた絵の具の工夫を生か し, 他の児童 を驚か す ほ ど の作品 を仕上げた。 完成後, 普段は文章を書 く こ と を嫌が る こ と の多い児童 B が , 作品カ ー ドい っ ぱいに進んで工夫 し た と こ ろ を書 く こ と がで き た。

「わ り ば しベンで描こ う ! J では, 前時に行 っ た 「天使 と プ レゼ ン ト ( ク レー) J の鑑賞を生か した表現が見 られた。 ま た, 日 頃, 児童B は ド ラ ゴンや戦いを主題 に した作品が多いが , 前時の 鑑賞で 「天使」 や 「プ レゼ ン ト 」 について話 し合っ た効果か ら か, こ の作品には, 仲 良 く 遊ぶ生

き 物た ち が描かれ, 近 く に 「みんな な か よ し」 と い う 言葉が書かれていた。

さ ら に, 友人 と の 関係性に も 変化 が 見 られ, 友人の た め に行動する 姿が何度か観察 さ れた。 絵

の具の片付け を一緒に行っ ていた際には, 他 の女子児童が忘れてい っ た雑 巾 を 「席が近い か ら 持

っ て い く よ 。 」 と 進んで届 け に行 く 姿が見 ら れた。

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考察と今後の展望

3 つの指標か ら , 学級全体 と 支援対象児 の ど ち ら にお い て も , 学校適応感を高め る 支援の効果 が認め ら れた。 本実践で 明 ら か と な っ た , 学校適応感を高め る た め に有効だ と 考 え られる支援の 概要 を図にま と めた (図 1 ) a

5

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124-136.

『生徒指導が機能す る捜案」 の全体構想図

図 1

参照

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